JP2005132833A - N−長鎖アシルグリシン塩の結晶及びその製造方法、並びに、該n−長鎖アシルグリシン塩の結晶を用いた洗浄料組成物 - Google Patents

N−長鎖アシルグリシン塩の結晶及びその製造方法、並びに、該n−長鎖アシルグリシン塩の結晶を用いた洗浄料組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 高純度のN−長鎖アシルグリシン塩を簡便にかつ高収率に製造する方法を提供する、また、水への溶解性及び分散性に優れた新規な結晶型と、該結晶を含有する洗浄料組成物を提供する。
【解決手段】 グリシンと飽和又は不飽和の炭素数8〜22の脂肪酸ハライドとを親水性有機溶媒と水との特定の混合溶媒中でアルカリ物質の存在下に特定のpH領域で反応させ、その親水性有機溶媒と水との特定の混合溶媒比である反応液を直接晶析させることによって、N−長鎖アシルグリシン塩の結晶を極めて簡便に、高晶析回収率、高アシル化純度、無機塩含量の少ない高純度で得られることを見出した。こうして得られるN−長鎖アシルグリシン塩の結晶は、CuKα線による粉末X線回折分析において、24.0°、25.5°、28.0°及び40.5°から選ばれる少なくとも2つ以上の回折角度(2θ±0.3°)に回折ピークを示し、従来公知のN−長鎖アシルグリシン塩とは異なる結晶形態となり、その粉砕物は取り扱い性に優れ、水への溶解性及び分散性に優れたものである。
【選択図】 なし

Description

本発明はN−長鎖アシルグリシン塩の結晶及びその製造方法、並びに、該N−長鎖アシルグリシン塩の結晶又はその粉砕物を含有する洗浄料組成物に関する。
N−長鎖アシルグリシン塩は、優れた界面活性作用と静菌作用を有し、かつ低刺激性であるため、洗浄成分として、各種の洗浄料に使用される。
N−長鎖アシルグリシン塩のようなN−長鎖アシルアミノ酸塩の製造法としては、一般に、アミノ酸と脂肪酸ハライドを、水溶液中、アルカリ条件下で縮合させるショッテンバウマン反応が広く知られている。この方法によれば、N−長鎖アシルアミノ酸塩とともに無機塩等の副生物が生成し、これが洗浄剤組成物中に混入すると剤型の安定性に影響を与えることから、アシル化反応液に対し、無機塩等の副生物を除去するための種々の試みがなされている。その中でも、アシル化反応液に強酸を加えて複分解し、脱塩したN−長鎖アシルアミノ酸を分取する方法が一般的である(特許文献1)。N−長鎖アシルアミノ酸塩は、このようにして精製されたN−長鎖アシルアミノ酸を塩基性物質と反応させることによって調製するのが通常である。
しかし、このような水のみを溶媒とする反応では、アシル化の反応率はせいぜい90%強程度で、脂肪酸が比較的多く残存する。残存した脂肪酸は、N−長鎖アシルアミノ酸に夾雑物として混入し、N−長鎖アシルアミノ酸塩の物性に影響を与え、更に臭いの原因となる。また、製造工程の点においても、液性が強アルカリ性から強酸性まで変化するため、反応設備の材質に制約があるほか、反応液の粘度が上昇するため、攪拌が不充分となって、純度を更に低下させるなどの欠点がある。
また、N−長鎖アシルβ−アラニンの製造に特に適したショッテンバウマン反応の変法として、アルカリとして水酸化カリウムを用い、かつ、従来よりも高温条件を選択することによって、中間物質としてのカリウム塩の析出を抑制してN−長鎖アシルアラニンの結晶を高純度・高収率で得る、という方法が報告されている(特許文献2)が、この方法は、N−長鎖アシル中性アミノ酸であればいずれの種類にも適用できるわけではなく、N−長鎖中性アシルアミノ酸の種類によっては結晶が十分に析出しない場合や水洗工程に時間がかかり過ぎる場合がある等、必ずしも有効とはいえない。例えば、グリシンを原料とした場合、本発明者等の実験によれば、生成するアシルグリシンは結晶が細かくろ別は困難であった。
さらに、水と親水性有機溶媒の混合溶媒中でアミノ酸と脂肪酸ハライドとを反応させて得た反応液を無機酸で酸性とし、分離した有機層を回収することで粗N−長鎖アシルアミノ酸を得、その後、粗N−長鎖アシルアミノ酸を再結晶溶媒に溶解させて、冷却晶析により高純度のN−長鎖アシルアミノ酸を得る、また、このようにして得た粗N−長鎖アシルアミノ酸を塩基性物質で中和度1以下にした後に、アセトン等の親水性有機溶媒を加えて溶解させ、冷却晶析により高純度のN−長鎖アシルアミノ酸塩を得る方法(特許文献3、4)、N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノアルカリ塩の製造方法として、酸性アミノ酸と長鎖脂肪酸ハライドをアルカリの存在下に反応させた後、30〜50℃でpH4〜6とし、その後5〜15℃に冷却してモノアルカリ塩を晶出させる方法(特許文献5)等が知られている。
しかし、特許文献3及び4におけるN−長鎖アシルアミノ酸塩の製造は、N−長鎖アシルアミノ酸製造の製造過程において生成するN−長鎖アシルアミノ酸塩を含む反応溶液を酸性としてN−長鎖アシルアミノ酸を得、該酸を溶液中で再びアルカリ性とするというものであるため、工程が複雑で、かつ、広範なpH領域に対応した材質の反応容器を要するなどの問題があった。
また、特許文献5の方法は、酸性アミノ酸を原料とする方法であって、グリシンのような中性アミノ酸のN−長鎖アシル化合物塩を得るための方法として適さない。
洗顔フォーム、洗顔パウダー、固形石鹸等の洗浄成分として使用されるN−長鎖アシルグリシン塩は、上記のようにして製造された塩を、その含有溶液から、スプレードライヤーやドラムドライヤー等によって乾燥粉体として取り出し、必要に応じてさらに細かく粉砕して使用するのが通常であるが、アシル基が長鎖長となるほど水への溶解性が低いため、鎖長分布によっては乾燥工程の生産性が悪く、経済的に不利となることがある。また、スプレードライヤー法による乾燥粉末は、洗浄組成物の調製及び使用時において、粉立ちの問題があり、さらに、水への分散性が必ずしも十分でなかった。
したがって、より高品質で取り扱い性のよいN−長鎖アシルグリシン塩が求められており、また、その製造方法としても、反応容器の材質による制限を受けず、簡便な手法で、高品質・高収率に製造する方法が求められていた。
特開平5−70418号公報 特開平7−157795号公報 特開2003−96038号公報 特開2003−96039号公報 特開平5−4952号公報
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、その解決しようとする課題は、高純度のN−長鎖アシルグリシン塩を簡便にかつ高収率に製造する方法を提供すること、また、水への溶解性及び分散性に優れた結晶と、該結晶を含有する洗浄料組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、グリシンと脂肪酸ハライドを、親水性有機溶媒と水との特定の混合溶媒中でアルカリ物質の存在下に特定のpH領域で反応させ、その親水性有機溶媒と水との特定の混合溶媒比である反応液を直接晶析させることによって、N−長鎖アシルグリシン塩の結晶を極めて簡便に、高晶析回収率、高アシル化純度、無機塩含量の少ない高純度で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)CuKα線による粉末X線回折分析において、24.1°、25.5°、28.1°及び40.5°から選ばれる少なくとも2つ以上の回折角度(2θ±0.3°)に回折ピークを示すことを特徴とする、一般式(I):
Figure 2005132833
(式中、Rは炭素数7〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属又は塩基性アミノ酸を示す。)で表されるN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
(2)CuKα線による粉末X線回折分析において、14°〜46°領域内の最大ピークが24.1°〜28.1°の回折角度(2θ±0.3°)に現われることを特徴とする、上記(1)に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
(3)CuKα線による粉末X線回折分析において、14°〜46°領域内の最大ピークが24.1又は28.1°の回折角度(2θ±0.3°)に現われることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
(4)CuKα線による粉末X線回折分析において、14°〜46°の領域内に現われる強度の強い順に4番目までの回折ピークのうち少なくとも3つが、21.6°、23.1°、24.1°、25.5°、28.1°、31.5°、及び40.5°の回折角度(2θ±0.3°)のいずれかに合致することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか1に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
(5)Rが炭素数11〜15のアルキル基である、上記(1)〜(4)のいずれか1に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
(6)アルカリ金属がナトリウム又はカリウムである、上記(1)又は(2)に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶又はその粉砕物を含有することを特徴とする洗浄料組成物。
(8)グリシンと飽和又は不飽和の炭素数8〜22の脂肪酸ハライドを、親水性有機溶媒の含有率が5〜30wt%である親水性有機溶媒と水との混合溶媒中、アルカリ物質の存在下、pH9〜13で縮合させ、ついで、反応液中のN−長鎖アシルグリシン塩濃度を7〜20wt%、親水性有機溶媒の含有率を3〜75wt%、pHを7〜11に調整し、該反応液よりN−長鎖アシルグリシン塩を冷却晶析させることを特徴とする、N−長鎖アシルグリシン塩結晶の製造方法。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶は、従来のスプレードライヤー法などによって得られる粉末に比較して取り扱い性に優れ、また、分散性及び溶解性に優れる。さらに、該結晶は所望の粒子サイズに粉砕可能であり、粉砕によって得られる粉末は飛散しにくく、分散性及び溶解性に優れる。従って、該結晶あるいは必要に応じて該結晶を粉砕して得た粉末を原材料にすれば、各種の洗浄料組成物の生産性を著しく向上させるばかりでなく、得られた各種洗浄料は分散性及び溶解性に優れ、また、粉末洗浄料である場合には、飛散性が抑制されるなど、優れた効果を奏する。
また、本発明の製造方法によれば、従来、アシル化反応後に副生する塩類などを除去するために反応液を酸性とし、一旦長鎖アシルグリシンを単離したのち、該長鎖アシルグリシンを塩基性物質と反応させるという煩雑な工程を経て製造していたN−長鎖アシルグリシン塩を、簡便に、また、高いアシル化率かつ高回収率で、しかも、塩含有量が少なく高純度の結晶として製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩結晶は、一般式(I):
Figure 2005132833
(式中、Rは炭素数7〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属、または塩基性アミノ酸を示す。)で表されるN−長鎖アシルグリシン塩であって、CuKα線による粉末X線回折分析において、24.1°、25.5°、28.1°及び40.5°から選ばれる少なくとも2つ以上の回折角度(2θ±0.3°)に回折ピークを示す。結晶性の高さが顕著であるという観点でCuKα線による粉末X線回折分析において14°〜46°の領域における最大ピークが24.1°〜28.1°(2θ±0.3°)に現われるものが好ましく、最大ピークが24.1°又は28.1°(2θ±0.3°)に現われるものがより好ましい。さらに、CuKα線による粉末X線回折分析において14°〜46°の領域内に現われる強度の強い順に4番目までの回折ピークのうち少なくとも3つが、21.6°、23.1°、24.1°、25.5°、28.1°、31.5°、40.5°(2θ±0.3°)のいずれかに合致することが更に好ましく、14°〜46°の間に現われる強度の強い順に3番目までの回折ピークの全てが、21.6°、23.1°、24.1°、25.5°、28.1°、31.5°、40.5°(2θ±0.3°)のいずれかに合致することが最も好ましい。
式(I)中のRで表される炭素数が7〜21のアルキル基又はアルケニル基としては、例えば、ヘプチル基、ノニル基、デシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセニル基等が挙げられ、中でも、炭素数が7〜19が好ましく、7〜17がより好ましく、さらには11〜15がとくに好ましい。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩結晶は、式(I)中のR−CO−で表されるアシル基が単一のアシル基である化合物の塩であってもよく、また、異なる複数種類のアシル基を有する化合物よりなる塩であってもよい。すなわち、原料の脂肪酸ハライドとして、ヤシ油脂肪酸ハライド、牛脂脂肪酸ハライド、硬化牛脂脂肪酸ハライド、ヒマシ油脂肪酸ハライド、オリーブ油脂肪酸ハライド、パーム油脂肪酸ハライド等の混合脂肪酸のハライドを使用することで、アシル基が異なる化合物の混合物よりなるN−長鎖アシルグリシン塩結晶が得られる。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩結晶において、中和塩基(式(I)中のM)としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)、塩基性アミノ酸(リジン、オルニチン、アルギニン等)が挙げられる。中でも、生成する塩の結晶性状と汎用性を考慮すると、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムが好ましく、塩基性アミノ酸としてはリジン、アルギニンが好ましい。
前記した従来公知の方法で製造されるN−長鎖アシルグリシン塩結晶(以下「A型結晶」と称する。)の場合、粉末X線回折(CuKα線)で得られる回折ピークはピーク強度が弱く、最大ピークは24.0°以下の回折角度(2θ±0.3°)に現われ(通常、少なくとも21.5°及び23.4°の2つの回折角度(2θ±0.3°)に現われる。)、24.0°、25.5°、28.0°及び40.5°の回折角度(2θ±0.3°)に目立った回折ピークは現れない。これに対し、本発明のN−長鎖アシルグリシン塩結晶(以下、「B型結晶」と称する。)は結晶性が高く、24.0°、25.5°、28.0°及び40.5°から選ばれる少なくとも2つ以上の回折角度(2θ±0.3°)に特徴的な回折ピークを示すものであり、従来公知のA型結晶とは明らかに異なる結晶形態を有している。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶は、親水性有機溶媒と水との混合溶媒中でグリシンと飽和又は不飽和の炭素数8〜22の脂肪酸ハライドとをアルカリ物質の存在下で縮合させ、その反応液よりN−長鎖アシルグリシン塩を晶析させることによって製造され、晶析回収率が96%以上、アシル化純度が98wt%以上、無機塩含量が2%以下という高純度の結晶性アシルグリシン塩として取得される。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶は、後述の実施例及び比較例に示されるように、水への分散性及び溶解性、並びに、粉立ち性が従来よりも大きく改善された粉末を与える。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶の製造において、炭素数が8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸ハライドとしては、直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、例えば、カプリル酸ハライド、カプリン酸ハライド、ラウリン酸ハライド、ミリスチン酸ハライド、パルミチン酸ハライド、ステアリン酸ハライド、オレイン酸ハライド等の単一組成脂肪酸ハライド;ヤシ油脂肪酸ハライド、牛脂脂肪酸ハライド、硬化牛脂脂肪酸ハライド、ヒマシ油脂肪酸ハライド、オリーブ油脂肪酸ハライド、パーム油脂肪酸ハライド等の混合脂肪酸ハライド等が挙げられるが、中でも、ラウリン酸ハライド、ミリスチン酸ハライド、パルミチン酸ハライドが好ましい。
反応溶媒である水と親水性有機溶媒との混合溶媒における親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、s−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒がリサイクルのしやすさ、晶析性の点から好ましい。特に好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、t−ブタノールである。当該親水性有機溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
また、反応溶媒中に存在させるアルカリ物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。
本発明において、アルカリ物質はグリシンと脂肪酸ハライドとの縮合反応における反応系(反応溶媒中)のpHが9〜13、好ましくは9〜11、より好ましくは10〜11となるように反応系に存在させる。アルカリ物質は、グリシンと脂肪酸ハライドの反応中に、pHが9〜13、好ましくは9〜11、より好ましくは10〜11にコントロールされるように逐次的に添加してもよく、または、反応資材の仕込み時に、予め算出された反応に必要な全ての量のアルカリ物質を、グリシン及び反応溶媒とともに混合し、その混合系に脂肪酸ハライドを添加する態様のいずれでもよい。
グリシンと脂肪酸ハライドとの縮合反応における反応温度は5〜60℃が好ましく、より好ましくは10〜55℃の範囲である。5℃未満では、反応液の粘度が上昇するため、攪拌が不充分となり、60℃を超える場合は、純度低下の虞があり好ましくない。
また、反応溶媒における親水性有機溶媒の含有率は5〜30wt%であり、10〜20wt%程度が好ましい。親水性有機溶媒の含有率が5wt%未満では反応液の粘度が上昇し、高濃度での反応が困難になり好ましくない。一方、親水性有機溶媒の含有率が30wt%を超えても、反応収率、反応液の粘度に実質的に影響しないので、縮合反応時においては親水性有機溶媒をその含有率が30wt%を超える量を使用する必要はない。
グリシンと脂肪酸ハライドの縮合反応(アシル化反応)における反応濃度は、アシル化反応終了後の反応液中のN−長鎖アシルグリシン塩の濃度が7〜40wt%、好ましくは7〜35wt%となるようにするのがよい。すなわち、脂肪酸ハライドの種類、親水性有機溶媒の種類、水と親水性有機溶媒の混合割合、アルカリの種類等を考慮して、アシル化反応終了後の反応液中のN−長鎖アシルグリシン塩の濃度が7〜40wt%、好ましくは7〜35wt%となるように、原料化合物(グリシン、脂肪酸ハライド)及びアルカリの量を決定する。反応濃度が7wt%未満では、経済的に不利であり、また、40wt%を超える場合は反応液の粘度が上昇して設備的な負荷がかかり、また攪拌不足によって目的物であるN−長鎖アシルグリシン塩が純度低下を起こす虞がある。なお、反応濃度が7〜40wt%の範囲内であれば反応途中でN−長鎖アシルグリシン塩の結晶が析出しても何ら差し支えない。
グリシンと脂肪酸ハライドの縮合反応(アシル化反応)は、本反応の溶媒系によれば殆ど定量的に反応は進行するので、グリシンと脂肪酸ハライドとのモル比は通常1:1で構わないが、使用する脂肪酸ハライドや溶媒系によっては、グリシン過剰の場合も脂肪酸ハライド過剰の場合も収率や経済性も考慮しながら選択することができる。このため本反応のアシル化反応率は、脂肪酸ハライドの転化率として記載している。
アシル化反応後、反応液を冷却することによって、N−長鎖アシルグリシン塩B型結晶を析出させる。該晶析工程において、反応液中のN−長鎖アシルグリシン塩の濃度は、晶析工程終了時点でスラリー(当該反応液)が攪拌できる状態であれば特に制限は無いが7〜20wt%が好ましく、より好ましくは7〜15wt%である。20wt%を超える場合、晶析工程途中で攪拌できない場合があるため、好ましくない。反応液中の目的物(N−長鎖アシルグリシン塩)の濃度が20wt%を超える場合、反応液に水又は水と親水性有機溶媒との混合液を加えて、目的物(N−長鎖アシルグリシン塩)の濃度を低下させるのが好ましい。また、目的物の濃度が7wt%未満では経済的に不利であり、好ましくない。
晶析工程において濃度調整のために追加的に添加する親水性有機溶媒は、アシル化工程において使用したものと同じ溶媒でもよく、あるいは、異なる種類を使用してもよい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、s−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒がリサイクルのしやすさ、晶析性の点から好ましい。特に好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、t−ブタノールである。当該親水性有機溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
晶析工程において、反応液中の親水性有機溶媒の含有率は3〜75wt%であり、特に3〜65wt%程度が好ましい。親水性有機溶媒の含有率がこの範囲より多くても、少なくても、回収率が低下し、あるいは結晶の分離が困難となる可能性がある。
本発明方法においては、有機溶媒と水の混合溶媒系で晶析を行うため、N−長鎖アシルグリシン塩の結晶化時に、脂肪酸などの副生物が結晶中に混入することが少なく、また、無機塩などの副生物は洗浄によって除去できることから、酸型を介さず反応液から直接採取するにも拘わらず、高品質のN−長鎖アシルグリシン塩を得ることができる。
また、かかる晶析工程における反応液の冷却最終温度は、脂肪酸ハライドの種類、親水性有機溶媒の種類、親水性有機溶媒と水との混合割合等によっても異なるが、−5〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。また、反応液のpHは7以上であることが好ましく、7〜11の範囲が好ましい。pHが7未満になるとN−長鎖アシルグリシンの沈殿が生成し、固液分離が困難になり好ましくない。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶は塩基性アミノ酸塩であってもよい。塩基性アミノ酸からなる本発明のN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶を得る場合は、アリカリ物質としてアリカリ金属水酸化物を使用してグリシンのアシル化反応を行った後、その反応液に塩基性アミノ酸またはその塩酸塩を添加してから、必要に応じpHを調整して、該反応液を冷却することで、N−長鎖アシルグリシンの塩基性アミノ酸塩の結晶を析出させる。使用するアミノ酸としては、塩基性アミノ酸が通常用いられ、天然に存在するしないに関わらず、また、L体、D体、DL体のいずれでも構わない。生成してくる塩としての安定性や性状を考慮すると、アルギニンやリジンが特に好ましい。
本発明において、反応液より析出したN−長鎖アシルグリシン塩の結晶は、通常の方法、例えば減圧又は加圧ろ過、遠心分離等の方法で分離回収することができる。回収物はアシル化反応及びpH調整時に副生した無機塩や有機溶剤を含んでいるので、必要に応じて、水、水と親水性有機溶媒との混合液、または5%未満の塩溶液で洗浄するのが好ましい。なお、この際の液体(洗浄液)の温度は晶析温度以下であることが好ましい。なお、ここでの「塩溶液」とは、反応及び晶析工程で副生する無機の塩が溶解した水溶液のことである。
以上のとおり、本発明の方法は、アシル化反応後の反応液から連続的に直接N−長鎖アシルグリシン塩を得ることができるため、酸型を介して製造する従来法に比較して極めて簡便であり、しかも、N−長鎖アシルグリシン塩結晶は、晶析回収率が96%以上、アシル化純度が98wt%以上、無機塩含量が2%以下という高純度品として得ることができる。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶は、その使用形態に応じて、適宜粉砕して(さらに必要に応じて分級(篩い分け)して)使用するのが好ましい。粉砕、分級は自体公知の手段、方法で行うことができる。
本発明のN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶は各種洗浄料の洗浄成分として使用できる。
本発明における洗浄料組成物としては、シャンプー、リンスインシャンプー、コンディショニングシャンプー、洗顔料、メイク落とし、洗顔フォーム、洗顔パウダー、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ハンドソープ、固形石鹸、口腔内洗浄料、シェービングフォーム、ボディーシャンプー等が挙げられる。
本発明における洗浄料組成物には、通常洗浄料に用いられる油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、生理活性成分、酸化防止剤、抗炎症剤、抗菌剤、制汗剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤等の成分を、洗浄料の具体的用途や剤形態に応じ配合することができる。
本明細書中の特性(物性)は以下の方法で測定した。
[CuKα線による粉末X線回折分析]
Cu−Kα線による粉末X線回折分析は、PANalytical社製、粉末X線回折装置(X′pert)を用いて、対陰極Cu−Kα(1.5405Å)、40KV、55mA(電圧、電流)、サン
プリング幅0.020°、走査速度3.0°/min、測定回折角範囲(2θ):10〜50°の条件で測定した。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度=1.00、最小ピークチップ=0.01°、最大ピークチップ=1.00°、ピークベース幅=2.00°、方法=2次微分の最小値」の条件で行った。
[平均粒径の測定]
GILSON(株)GILSONIC AUTOSIEVER(GA-6)を用い、粗砕した試料約2g(425μパス)を5分
間篩分し、分級した夫々の重量より平均粒径を求めた。
[晶析回収率の算出]
高速液体クロマトグラフィーの測定で求めたアシル化反応液中のアシルグリシン塩重量を基準とし、下記の算出式より晶析回収率を求めた。
晶析回収率の算出式
晶析回収率(%)=〔結晶重量/(反応液重量×反応液アシルグリシン塩濃度)〕×1
00
[アシル化純度の測定]
高速液体クロマトグラフィー(カラム:YMC-PACK A-312、温度:40℃、溶離液:CH3OH/30mMNaH2PO4(pH=3)=77/23〜84/16、検出:210nm)を用いて測定し、アシルグリシン重量
と脂肪酸重量より下記の算出式より結晶または粉末中のアシル化純度を求めた。
アシル化純度の算出式
アシル化純度(%)
=[アシルグリシン重量/(アシルグリシン重量+脂肪酸重量)]×100
[無機塩含量の測定]
Dionex社製DX-100イオンクロマトグラフィー(カラム:AG11-HC-2mm、AS11-HC-2mm、温
度:40℃、溶離液:30mM NaOH、再生液:0.01N硫酸)を用いて測定した。Cl及びSO4をNaCl、KCl及びNa2SO4に換算し、結晶または粉末中の無機塩含量として表示した。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
実施例1(N−ラウロイルグリシンナトリウム塩の製造)
グリシン30.0gを、水130g、アセトン30.6g(有機溶媒含有率19.1wt%)及び水酸化
ナトリウム8.2gに溶解し、pH10の水溶液とした。次いで、これにラウロイルクロライド87.4gと27%水酸化ナトリウム水溶液をpH10に保ちながら約1時間で添加した。この時反応温度は25℃を保った。酸クロライド添加後、約1時間同温度で攪拌し、反応液368.3gを得た。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−ラウロイルグリシンナトリウムが約30.0%含有されていた。アシル化反応率は97%であった。得られ
た反応液150gに同量の33%アセトン水溶液を添加して40℃に加温した(該希釈溶液中のアシルグリシン塩濃度は約15 wt%、有機溶媒含有率は20.6wt%、pHは9.8)。この希釈溶液を16℃で数時間保持した後、5℃まで冷却した。析出した結晶を遠心分離して乾燥した
ところ、43.6g(晶析回収率:97%)の結晶が得られた。
この結晶の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は10.4、13.9、21.5、23.3、23.4、24.1
、24.5、25.6、28.0、31.6、42.6、46.3である。
実施例2(N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム塩の製造)
グリシン30.0gを、水136g、アセトン30.8g(有機溶媒含有率18.5wt%)及び水酸化
ナトリウム8.6gに溶解し、pHl0の水溶液とした。次いで、これにヤシ油脂肪酸クロライ
ド87.9gと27%水酸化ナトリウム水溶液をpH10に保ちながら約1時間で添加した。この時
反応温度は25℃を保った。酸クロライド添加後、約1時間同温度で攪拌し、反応液385.2gを得た。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムが約28.5%含有されていた。またアシル化反応率は97%
であった。得られた反応液150gに同量の50%アセトン水溶液を添加して30℃に加温した(該希釈溶液中のアシルグリシン塩濃度は約14.3 wt%、有機溶媒含有率は29.0wt%、pH
は9.4)。この希釈溶液を20℃で数時間保持した後、5℃まで冷却した。析出した結晶を遠心分離して乾燥したところ、41.5g(晶析回収率:97%)の結晶が得られた。
この結晶の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は10.2、19.5、23.1、24.1、25.7、28.2
、30.9、31.7、33.6、39.0、41.4である。
実施例3(N−ミリストイルグリシンナトリウム塩の製造−1)
グリシン30.0gを、水230.5g、イソプロパノール37.5g(有機溶媒含有率14.0wt%)
及び水酸化ナトリウム9.5gに溶解し、pH10の溶液とした。この溶液にミリストイルクロライド98.6gと27%水酸化ナトリウム水溶液をpH10に保ちながら約1時間で添加した。この時反応温度は25〜30℃を保った。酸クロライド添加後、約1時間同温度で攪拌し、反応液482gを得た。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−ミリス
トイルグリシンナトリウムが約25.0%含有されていた。またアシル化反応率は98%であ
った。得られた反応液200gに同量の水を添加して40℃に加温した(該希釈溶液中のアシルグリシン塩濃度は約12.5 wt%、有機溶媒含有率は3.9wt%、pHは9.4)。希釈溶液を26
℃で2時間保持した後、5℃まで冷却した。析出した結晶を遠心分離して乾燥したところ、49.6g(晶析回収率:99%)の結晶が得られた。
この結晶の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は15.6、21.4、21.9、23.3、24.1、25.0
、28.2、31.4、44.6である。
実施例4(N−ミリストイルグリシンナトリウム塩の製造−2)
実施例3と同様に行った反応液(アシル化反応率98%)280gに同量の2%イソプロパノ
ールを添加して40℃に加温した(該希釈溶液中のアシルグリシン塩濃度は約12.5wt%、有機溶媒含有率は4.9wt%、pHは9.5)。希釈溶液を29℃で2時間保持した後、5℃まで冷
却した。析出した結晶を遠心分離し、次に1%食塩水80gにて洗浄分離してから乾燥した
ところ、67.2g(晶析回収率:96%)の結晶が得られた。
この結晶の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は実施例3と同一であった。
実施例5(N−ミリストイルグリシンカリウム塩の製造)
グリシン30.0gを、水220.5g、アセトン37.5g(有機溶媒含有率14.5wt%)及び水酸化カリウム14.9gに溶解し、pH10の溶液とした。この溶液にミリストイルクロライド98.6g
と48%水酸化カリウム水溶液をpH10に保ちながら約2時間で添加した。この時反応温度は25〜40℃を保った。酸クロライド添加後、約1時間同温度で攪拌し、反応液450gを得た。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−ミリストイルグリシンカリウムが約27.9%含有されていた。またアシル化反応率は98%以上であった。得られた反応液200gに60%アセトン水溶液350gを添加して40℃に加温した(該希釈溶液中のアシ
ルグリシン塩濃度は約10.1wt%、有機溶媒含有率は41.2wt%、pHは9.4)。希釈溶液を23℃で2時間保持した後、5℃まで冷却した。析出した結晶を遠心分離して乾燥したところ
、54.7g(晶析回収率:98%)の結晶が得られた。
この結晶の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は21.3、23.4、28.3、40.5である。
実施例6(N−パルミトイルグリシンナトリウム塩の製造)
グリシン30.0gを、水250g、t−ブタノール55g(有機溶媒含有率18.0wt%)及び水酸
化ナトリウム9.7gに溶解し、pH10の水溶液とした。次いで、これにパルミトイルクロラ
イド109.8gと27%水酸化ナトリウム水溶液をpH10に保ちながら約1時間で添加した。この時反応温度は25〜30℃を保った。酸クロライド添加後、約1時間同温度で攪拌し、反応液531gを得た。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−パル
ミトイルグリシンナトリウムが約24.9%含有されていた。またアシル化反応率は97%で
あった。得られた反応液200gに同量の水を添加して50℃に加温した(該希釈溶液中のアシルグリシン塩濃度は約12.5wt%、有機溶媒含有率は5.2wt%、pHは9.5)。希釈溶液を34℃で数時間保持した後、10℃まで冷却した。析出した結晶を遠心分離して乾燥したところ、48.8g(晶析回収率:98%)の結晶が得られた。
この結晶の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は14.1、16.9、19.7、21.2、21.8、23.2
、24.0、24.9、25.5、26.4、28.3、31.3、40.2、46.2である。
実施例7(N−ラウロイルグリシンアルギニン塩の製造)
実施例1と同様に行った反応液(アシル化反応率97%)200gに15%アセトン水溶液300g及びアルギニン塩酸塩45.3gを加えた希釈溶液(該希釈溶液中のアシルグリシン塩濃度は約18.5wt%、有機溶媒含有率は12.2wt%、pHは7.1)を5℃まで冷却した。析出した結晶を
遠心分離して乾燥したところ、88.9g(晶析回収率:96%)の結晶が得られた。
この結晶の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は10.4、13.8、21.4、23.3、24.0、24.4、25.5、27.9、31.5である。
比較例1(水溶媒のN−ミリストイルグリシン塩の製造)
グリシン18.2gを、水362.3g及び水酸化ナトリウム5.7gに溶解し、pH10の溶液とした。
この溶液にミリストイルクロライド59.7gと27%水酸化ナトリウム水溶液をpH10に保ちな
がら約1時間で添加した。この時反応温度は増粘のため30〜60℃で行った。酸クロライド
添加後、約1時間同温度で攪拌し、反応液502gを得た。得られた反応液を高速液体クロマ
トグラフィーで分析したところ、N−ミリストイルグリシンナトリウムが約12.3%含有されていた。またアシル化反応率は82.3%であった。この反応液は粘度が高く、又微細結晶が析出したために分離不能であった。
比較例2(N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム塩のスプレードライ法による製造)
実施例2と同様に反応を行い、得られた反応液に75%硫酸水溶液30.5gを添加してpH1.8とし、70℃に加熱した。15分攪拌して静置すると数分で有機層と水層に分離した。この
有機層に27%水酸化ナトリウムを加えてpH8.3に中和し、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム液とし、次いで減圧濃縮によりアセトンを留去した。得られた液を水でN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムが30%になるように濃度を調整した。このN−ヤ
シ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム液をスプレードライ乾燥して、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム塩の粉末を得た。
この粉末の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は19.3、20.1、21.4、23.5、25.0、26.4
、31.7である。
比較例3(水溶媒のN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム塩のスプレードライ法による製造)
グリシン30.0gを水230g、水酸化ナトリウム9.5gに溶解し、pH10の水溶液とした。次いで、これにヤシ油脂肪酸クロライド87.6gを、27%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整しながら約1時間で添加した。この時反応温度は25℃から酸クロライド添加と共に徐々に上昇させた。酸クロライド添加後の反応温度は50℃であった。その後、約1時間同
温度で攪拌した。得られた反応液435gにN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンは約22%含有さ
れていた。又、アシル化反応率は92%であった。この反応液に水130gを添加し、N−ヤシ
油脂肪酸アシルグリシン濃度を約17%にした。これに75%硫酸水溶液31gを添加し、75℃まで加熱し、15分攪拌後、30分静置したところ有機層は乳化状態ではあるが、水層部分は139g除去できた。そこに更に139gの水を添加し、80℃に加熱後15分攪拌した。15分静置で有機層は油状に分層した。水層371gを除去し、得られた有機層225gを27%水酸化ナトリウム
でpH8.3に中和した。その後、濃度30%に調整したN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム液を345g得た。このN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム液をスプレードライ乾燥して、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム塩の粉末を得た。
この粉末の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は19.3、20.0、21.3、23.2である。
比較例4(N−ラウロイルグリシンナトリウム塩の凍結乾燥法による製造)
実施例1と同様に反応を行い、得られた反応液に75%硫酸水溶液33.2gを添加してpH1.8とし、70℃に加熱した。15分攪拌して静置すると数分で有機層と水層に分離した。この有機層に27%水酸化ナトリウムを加えてpH8.3に中和し、N−ラウロイルグリシンナトリウ
ム液とし、次いで減圧濃縮によりアセトンを留去した。得られた液を水でN−ラウロイルグリシンナトリウムが30%になるように濃度を調整した。このN−ラウロイルグリシンナ
トリウム液を凍結乾燥し、N−ラウロイルグリシンナトリウム塩の固体を得た。
この粉末の粉末X線回折の主なピーク(2θ)は20.4、20.9、21.6、22.8である。
上記実施例1〜7及び比較例2〜4で得られたN−長鎖アシルグリシン塩結晶又は粉末の晶析回収率、アシル化純度(実施例1〜7については、晶析後純度)、無機塩含量、及びX線回析角度(14°〜46°領域内において強度の強い順)を下記表1に示す。
Figure 2005132833
また、図1〜6は実施例1〜3、6及び比較例2、4で得たN−長鎖アシルグリシン塩の粉末X線回折パターンである。
実施例1〜7で晶析して得られたN−アシルグリシン塩は、いずれも、24.0°、25.5°、28.0°及び40.5°から選ばれる少なくとも2つ以上の回折角度(2θ±0.3°)に回折ピークを示しているのに対し、比較例2〜4で得たN−アシルグリシン塩は、上記4種の回折角度には回折ピークを示さず、本発明方法で製造されるN−アシルグリシン塩B型結晶は、従来公知のN−アシルグリシン塩とは明らかに異なる結晶形態を有するものであることが分かった。
実施例1〜3で得られた結晶の粉砕物、及び比較例2で得られた粉末について、粉立ち性(飛散性)と、水への溶解性及び分散性を調ベた。またこの粉末を箭分けして平均粒径を調べた結果を表2に示す。
Figure 2005132833
表2から明らかなごとく、実施例のN−アシルグリシン塩B型結晶の粉末は比較例2によるN−アシルグリシン塩の粉末に比ベ、水への溶解性及び水への分散性、並びに、粉立ち性(飛散性)のいずれにおいても優れていることが分かった。
尚、この検査において、溶解性は30℃の水100gに対する粉末1.5gの溶解時間である。
また、飛散性は円柱(直径12.5cm)上部より粉末5gを1.2m落下させ、落下2秒後に円
柱底面上部の吸引口から飛散した粉末をブロアーで6秒間吸引し、ブロアー面に取り付け
たろ紙(アドバンテスト社製GB100R)の粉末重量を測定し、比較例の粉末重量を1とした
場合の相対割合で示した。
分散性の評価はパネラー5人で行った。手の平に粉末1gをとり、少量の水を加えて揉む
ことにより観察し、ダマにならなければ良好(○)、ダマが少量生じた時は許容できる(△)、多量生じた時は不良(×)と評価した。
配合例(洗顔フォーム)
下記表3に示す配合物を70〜80℃で溶解し、その後、室温まで冷却晶析し、下記表3右欄の組成(重量%表示、総量100%)の洗顔フォームを調製した。製造時、粉立つことなく、すばやく溶解した。本品は臭いが殆どなく、豊かできめ細かな泡立ちであった。また、洗顔後はサッパリした感触であった。
Figure 2005132833
本発明の製造方法によれば、従来、アシル化反応後に副生する塩類などを除去するために反応液を酸性とし、一旦長鎖アシルグリシンを単離したのち、該長鎖アシルグリシンを塩基性物質と反応させるという煩雑な工程を経て製造していたN−長鎖アシルグリシン塩を、簡便に、また、高いアシル化率で、しかも、塩含有量が少なく高純度の結晶として製造することができるため極めて有利である。また、該方法によって得られるN−長鎖アシルグリシン塩B型結晶は所望の粒子サイズに粉砕可能であり、その粉砕物は、従来のスプレードライヤー法などによって得られる粉末に比較して飛散しにくく、取り扱い性に優れる。また、水中での分散性及び溶解性にも優れるため、各種の洗浄料組成物の原材料として極めて有利である。
実施例1で得たN−ラウロイルグリシンナトリウム塩のCuKα線による粉末X線回折パターンである。 実施例2で得たN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム塩のCuKα線による粉末X線回折パターンである。 実施例3で得たN−ミリストイルグリシンナトリウム塩のCuKα線による粉末X線回折パターンである。 実施例6で得たN−パルミトイルグリシンナトリウム塩のCuKα線による粉末X線回折パターンである。 比較例2で得たN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム塩のCuKα線による粉末X線回折パターンである。 比較例4で得たN−ラウロイルグリシンナトリウム塩のCuKα線による粉末X線回折パターンである。

Claims (8)

  1. CuKα線による粉末X線回折分析において、24.1°、25.5°、28.1°及び40.5°から選ばれる少なくとも2つ以上の回折角度(2θ±0.3°)に回折ピークを有することを特徴とする、一般式(I):
    Figure 2005132833

    (式中、Rは炭素数7〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属又は塩基性アミノ酸を示す。)で表されるN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
  2. CuKα線による粉末X線回折分析において、14°〜46°領域内の最大ピークが24.1°〜28.1°の回折角度(2θ±0.3°)に現われることを特徴とする、請求項1に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
  3. CuKα線による粉末X線回折分析において、14°〜46°領域内の最大ピークが24.1又は28.1°の回折角度(2θ±0.3°)に現われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
  4. CuKα線による粉末X線回折分析において、14°〜46°の領域内に現れる強度の強い順に4番目までの回折ピークのうち少なくとも3つが、21.6°、23.1°、24.1°、25.5°、28.1°、31.5°、及び40.5°の回折角度(2θ±0.3°)のいずれかに合致することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
  5. Rが炭素数11〜15のアルキル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
  6. アルカリ金属がナトリウム又はカリウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグリシン塩の結晶又はその粉砕物を含有することを特徴とする洗浄料組成物。
  8. グリシンと飽和又は不飽和の炭素数8〜22の脂肪酸ハライドを、親水性有機溶媒の含有率が5〜30wt%である親水性有機溶媒と水との混合溶媒中、アルカリ物質の存在下、pH9〜13で縮合させ、ついで、反応液中のN−長鎖アシルグリシン塩濃度を7〜20wt%、親水性有機溶媒の含有率を3〜75wt%、pHを7〜11に調整し、該反応液よりN−長鎖アシルグリシン塩を冷却晶析させることを特徴とする、N−長鎖アシルグリシン塩結晶の製造方法。
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