ところで、上述したデグッサCは、α−アルミナよりも粒径が小さいことから、α−アルミナよりも分子間力が大きく、発光管の内面と蛍光体膜との間の接触強度が高い。そのため、デグッサCを結着剤として用いると、α−アルミナを結着剤として用いた場合と比べて、蛍光体膜の発光管からの剥離を抑制する効果が高い。
しかしながら、その反面、デグッサCを結着剤として用いた蛍光ランプは、ランプ始動初期の光束が小さく、良好な光束立上がり特性が得られ難いという問題がある。これは、デグッサCが表面に多くの空孔を有しており、この表面に分子を物理吸着し易いためであると考えられている。すなわち、ランプ始動直後において発光管内に存在する水銀蒸気が放電によるエネルギーで管壁方向に拡散すると、水銀蒸気が蛍光体膜中のデグッサCに物理吸着され、正味の水銀量が減少してしまう。また、表面に分子を物理吸着し易いデグッサCを結着剤として用いた蛍光ランプは、その製造工程中において、発光管の排気状態を悪化させ易いということもわかってきている。発光管の排気状態の悪化は、光束立上がりを遅らせる要因となるため好ましくない。
一方、α−アルミナは、粒径がデグッサCよりも大きく、しかも、BET比表面積値が小さい。そのため、α−アルミナを結着剤として用いた蛍光ランプは、デグッサCを結着剤として用いた蛍光ランプと比べて良好な光束立上がり特性を得ることができる。
しかしながら、その反面、α−アルミナを添加した蛍光体膜は、その膜強度が低いという問題がある。すなわち、蛍光体膜は、結着剤粒子の分子間力によって蛍光体粒子間の結着を高めることで、その膜強度を高めている。ところが、粒径が大きいα−アルミナでは、蛍光体粒子間に入り込み難く、蛍光体膜に良好な膜強度を与えることが難しい。また、結着剤粒子は、粒径が大きくなる程、水銀が発する紫外線や蛍光体粒子が発する可視光線を吸収し易くなる。よって、結着剤としてα−アルミナを用いると、蛍光ランプの全光束が低くなるという問題もある。
先行技術の特許文献2には、アルミナの結着剤を用いることが記載されていて、その場合にそのアルミナ粒子の長径aと短径bの比a/bを0.5ないし1.0の範囲とすることが記載されている。しかし、ここには好適なアルミナはα−アルミナ結晶構造であると記載されていることからも分かるように、これはもっぱら蛍光体膜の剥離防止を目的としたものと解される。これに対して、本願発明は、蛍光体膜の剥離を防止しながら、安定点灯時の高い全光束と、ランプ始動直後の高い初期光束を、全て満足したものである点でこの先行技術とは相違するものである。
本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、結着剤入り蛍光体膜を有する蛍光ランプにおいて、安定点灯時の高い全光束、ランプ始動直後の高い初期光束、十分な膜強度の全てを満足した蛍光ランプ、電球形蛍光ランプ、及び照明器具の提供を目的とする。
請求項1に係る発明の蛍光ランプは、透光性を有する発光管の内面に設けられる蛍光体膜の中に、γ−アルミナ、セリア、シリカ、ジルコニアおよびイットリアの少なくとも一種からなる金属酸化物の粒子を含み、その金属酸化物粒子の形状が実質的に真球状であることを特徴とする。
請求項2に係る発明の蛍光ランプは、前記金属酸化物粒子が、その投影像の面積をS1、該投影像の外接円の面積をS2とした場合に、S1/S2が0.7〜1.0であることを特徴とする。
本発明及び以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義及び技術的意味は以下の通りである。
透光性を有する発光管は、例えば、ガラスや、透光性気密容器を形成可能なセラミックス等の材質で形成することができる。発光管は、直管単体、環状管単体、或いは屈曲管単体で構成される他、複数の屈曲管の端部同士を連通管を介してつなぎ合わせることで内部に少なくとも1本の放電路が形成されるように併設したもの等、周知の構成が適用可能である。
発光管が屈曲管を有する場合、この屈曲管は、直管状のガラスバルブの略中央部を加熱溶解して屈曲させるか、又は、ガラスバルブをモールド成形することによってU字状に屈曲させることで形成可能である。ここで、U字状に屈曲された屈曲管とは、放電路が折り返されて放電が屈曲するように屈曲管が形成されていることを意味し、曲管部が湾曲状または円弧状に形成されたものに限定されず、角形状や尖鋭状に形成されたものも含む。要するに、放電路が屈曲するように直管部の一端部同士を連続させて形成したバルブを意味する。また、屈曲管は、略平行な2本の直管部の一端部同士を吹き破り等によって形成された連通管によって接続したものや、スパイラル状に形成されたものであってもよい。
発光管の内部には、放電媒体が封入されている。放電媒体としては、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスや、水銀等を用いることができる。発光管内の放電媒体(封入ガス)中で放電を生起させる放電生起手段としては、放電路を形成する発光管の両端部に対向して封装された一対の電極を用いるのが一般的であるが、発光管の外部に配置された少なくとも一方の電極を放電生起手段としても構わない。
また、蛍光体膜は、紫外線によって促進される発光管と水銀との反応に伴う発光管の着色抑止、光束維持率低下の抑止、発光管の強度低下抑止等のため、発光管の内面に蛍光体膜の下地として保護層を含むようにしてもよい。
金属酸化物は、蛍光体膜に含まれる(蛍光体に添加される)ことで、結着剤として好適に作用する。金属酸化物は、蛍光体に対して0.5重量%以上5重量%以下の範囲内で添加されるのが好ましい。その理由は、0.5重量%未満では結着力が不足するおそれがあり、5重量%を超えると全光束低下及び光束立上がり特性が損なわれ易い傾向を呈するからである。
本発明の金属酸化物の粒子は、その形状が真球状である。図4は、本発明で用いる金属酸化物の形状を、従来の金属酸化物の形状と比較して模式的に示したものである。図4で(C)が本発明の金属酸化物の粒子形状、(A)が従来の粒子(デグッサCなど)形状、(B)がその中間の形状をした金属酸化物である。(A)は、その一次粒子の粒子表面に窪みや細孔が多数ある。このためにこの粒子は凝集して表面に窪みや細孔のある2次粒子を形成しやすい。図4で(C)は表面に窪みや細孔がほとんどない真球状の金属酸化物粒子である。本発明の金属酸化物を、高倍率の顕微鏡、例えばTEM(透過形電子顕微鏡)で観察すると、その70%以上はこの(C)のような真球状をなし、それ以外に図(B)のような形状や、その他ほんの一部に(A)のような粒子が混在しているものである。
本発明で用いる金属酸化物の粒子を高倍率の顕微鏡、例えばTEMで観測して、その金属酸化物粒子の2次元に投影された像の面積をS1、前記像の外接円の面積をS2とした場合に、0.7≦S1/S2≦1.0の関係式を満足する形状とするのが好ましい。すなわち、金属酸化物は、その粒子の表面に窪みや細孔が少なく、真の球体に近いのが好ましい。
本発明で金属酸化物の表面に窪みや細孔が少ないことの利点は、その粒径に対して表面積を小さくすることができることである。つまり、従来結着剤として用いられている上記デグッサCよりも少し大きい程度にまで粒径を小さくしても、上記デグッサCと比べてBET比表面積値を半分程度或いはそれ以下に抑制することができる。このような金属酸化物を結着剤として用いることで、発光管からの蛍光体膜の剥離及び全光束低下を抑制しつつ、点灯直後の光束立上がりを向上させることが可能となる。
本発明の蛍光体膜に含まれる真球状の金属酸化物としては、アルミナ(酸化アルミニウム、Al203)、シリカ(酸化珪素、SiO2)、セリア(酸化セリウム、CeO2)、ジルコニア(酸化ジルコニウム、ZrO2)、及びイットリア(酸化イットリウム、Y2O3)のうちの少なくとも1つを含む。アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、及びイットリアは、水銀原子が放出する紫外線や、蛍光体膜をなす蛍光体が発する可視光の波長に対して吸収が殆ど無い(すなわち、無色である)。したがって、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、及びイットリアを蛍光体膜に含ませると、発光管からの蛍光体膜の剥離を抑制できるとともに、良好な光束立上がり特性が得られるだけでなく、蛍光ランプの全光束の低下を抑制できるといった効果がある。また、球状の金属酸化物は、アルミナと、シリカ、セリア、ジルコニア及びイットリアのうち少なくとも1つを含むようにしてもよい。
真球状の金属酸化物にアルミナが含まれる場合、その結晶構造は、γ型であるのが好ましい。具体的には、アルミナは、全結晶のうち、50%以上がγ結晶であればよく、好ましくは80%以上がγ結晶がよい。γ−アルミナの粒径は、一般にα−アルミナの粒径と比べて小さい。つまり、γ−アルミナは、α−アルミナよりも分子間力が大きいため、発光管の内面と蛍光体膜との間の接触強度(蛍光体膜の膜強度)を高めることができる。しかも、γ−アルミナは、紫外線に対して非常に安定であるため、蛍光ランプの全光束を低減させ難く、しかも光束維持率を向上させることができるという効果がある。さらに、γ−アルミナは、カラーセンターが出来難いという性質を有しているため、ランプ点灯時の着色を抑制することができる。
請求項1及び2に係る発明の蛍光ランプによれば、結着剤として好適に機能する金属酸化物の粒子形状を真球状とすることで、BET比表面積値の増大を抑制しつつ、粒径を小さく設定することができる。よって、発光管からの蛍光体膜の剥離を抑制でき、しかも、良好な光束立上がり特性が得られる。
真球状の金属酸化物としては、ガス状或いは液状とした金属を、酸素を含むガス雰囲気中で酸化させる方法を用いて形成したものを用いるのが好ましい。
ガス状或いは液状とした金属を、酸素を含むガス雰囲気中で酸化させる方法としては、例えば、溶融した金属を、酸素を含むガス雰囲気中に噴霧することで、霧状の溶融金属を酸化させる方法(金属メタル溶融法)や、金属に熱エネルギーを与えて金属原子の蒸気とし、この金属原子の蒸気を、酸素を含むガスと接触させることで酸化させるとともに、生成した金属酸化物(クラスター)を瞬時に冷却する方法(物理気相合成法)等があるが、これらに限定されない。
微粒子状のアルミナは、塩化アルミニウムを火炎中に投入する、或いは、溶液中で硝酸沈降させることにより形成される。しかしながら、このように形成したアルミナは、粒径が大きくなりやすくなる(BET比表面積値が大きくなる。)とともに、結晶化が促進されてα−アルミナとなり易い。また、塩化アルミニウムを火炎中に投入する、或いは、溶液中で硝酸沈降させる方法でγ−アルミナを形成することは可能だが、自然空孔が多いことには変わりないので、BET比表面積値が増大する。
これに対し、金属アルミニウムを気相中で酸化させてなるアルミナは、粒子形状が球状であり、しかも、自然空孔が少ないアルミナが得られる。つまり、気相法を用いると、例えば、α−アルミナと比べて粒径が小さく、しかも、デグッサCと比べて自然空孔の少ない真球状のアルミナを得ることができる。珪素、セリウム、及びイットリウムもまた、同様に形成することで、真球状の金属酸化物とすることが可能である。
このように、気相法では、粒径が小さい割には、BET比表面積値の小さい球状粒子を得ることができる。よって、気相法で形成された金属酸化物を蛍光体膜に含ませることで、発光管の内面と蛍光体膜との間の接触強度(蛍光体膜の膜強度)を良好に高めることができる。
金属酸化物のBET比表面積値Sは、30[m2/g]以上100[m2/g]以下とするのが好ましい。これは、金属酸化物のBET比表面積値Sが30[m2/g]未満となると、蛍光体膜と発光管との間の結着力を不足させるおそれがあり、金属酸化物のBET比表面積値Sが100[m2/g]を越えると、点灯直後の発光管内における水銀の拡散速度が遅くなったり、蛍光ランプの製造工程において排気状態が悪化する等して、光束を低下させたり、光束立上がり特性を損ねたりし易い傾向を呈するためである。
なお、金属酸化物のBET比表面積値Sとは、金属酸化物全体のBET比表面積値を指しており、金属酸化物に含まれる個々の化合物についてのBET比表面積値を指すものではない。すなわち、例えば、金属酸化物がアルミナとシリカとを含んでいる場合、BET比表面積値Sとは、アルミナとシリカとを含む金属酸化物全体のBET比表面積値であり、アルミナやシリカといった個々の化合物のBET比表面積値ではない。
また、金属酸化物のBET比表面積値Sと金属酸化物の分子量Mとの積S×Mは、2000[m2/mol]以上12000[m2/mol]以下とするこが好ましい。最適には4000[m2/mol]以上8000[m2/mol]以下であることが好ましい。BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが2000[m2/mol]未満となると、蛍光体膜と発光管との間の結着力を不足させるおそれがあり、BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが12000[m2/mol]を越えると、光束立上がり特性が損なわれ易い傾向を呈するためである。
なお、金属酸化物のBET比表面積値Sとは、金属酸化物全体のBET比表面積値を指しており、金属酸化物に含まれる個々の化合物についてのBET比表面積値を指すものではない。すなわち、例えば、金属酸化物がアルミナとシリカとを含んでいる場合、BET比表面積値Sとは、アルミナとシリカとを含む金属酸化物全体のBET比表面積値であり、アルミナやシリカといった個々の化合物のBET比表面積値ではない。
また、金属酸化物の分子量Mは、金属酸化物全体の分子量を指しており、金属酸化物に含まれる個々の化合物についての分子量を指すものではない。また、金属酸化物のBET比表面積値Sと金属酸化物の分子量Mとの積S×Mとは、金属酸化物全体のBET比表面積値と金属酸化物全体の分子量Mとの積を指している。
金属酸化物は、平均粒径を5[nm]以上100[nm]以下とすることが好ましい。さらに、金属酸化物を含んだ蛍光体膜のBET比表面積値S0は、0.5[m2/g]以上3.5[m2/g]以下となるようにするのが好ましい。これは、蛍光体膜のBET比表面積値S0が0.5[m2/g]未満となると、蛍光体膜と発光管との間の結着力を不足させるおそれがあるためであり、蛍光体膜のBET比表面積値S0が3.5[m2/g]を越えると、光束立上がり特性が損なわれ易い傾向を呈するためである。
蛍光体膜が含む蛍光体としては、例えば、希土類金属酸化物蛍光体、ハロリン酸塩蛍光体等が挙げられるがこれに限らない。しかし、発光効率を向上させるためには、蛍光体膜には、赤、青、緑の各色に発光する蛍光体を混合した三波長発光形の蛍光体を使用するのが好ましい。
なお、蛍光体膜のBET比表面積値S0は、金属酸化物や蛍光体を含む蛍光体膜全体のBET比表面積値を指している。蛍光体膜が保護層を含むような場合には、この保護層も含んだ蛍光体膜全体のBET比表面積値をS0とする。
請求項6は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蛍光ランプにおいて、蛍光ランプの発光管内に主アマルガムが設けれていることを特徴とするものである。
主アマルガムは、安定点灯時に適切な水銀蒸気圧に制御するためのものである。すなわち、本発明では、主アマルガムを設けることで、蛍光ランプ内に水銀が封入されるようになっている。主アマルガムとしては、安定点灯時の水銀蒸気圧が適正な値に制御可能な特性を有するものであればよい。主アマルガムの水銀蒸気圧特性は、アマルガム形成金属の組成と水銀含有量で決定されるが、例えば、アマルガム形成金属としては、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、及び錫(Sn)を挙げることができる。主アマルガムとしては、その他にも、例えば、ビスマス(Bi)−錫(Sn)−水銀(Hg)合金、ビスマス(Bi)−錫(Sn)−鉛(Pb)−水銀(Hg)合金、亜鉛(Zn)−水銀(Hg)合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
主アマルガムは、上述のように、安定点灯時に適切な水銀蒸気圧に制御するものである。よって、光束立上がり特性を改善するためには、安定点灯時の主アマルガムの温度は低い方が好ましい。
すなわち、電球形蛍光ランプでは、従来、主アマルガムとして、高温化(90℃〜130℃程度)であっても、発光管の水銀蒸気圧を最適値である1Pa前後となるように制御するものが用いられている。しかしながら、このような主アマルガムは、純水銀よりも水銀蒸気圧が一桁以上低い特性を有しているため、周囲温度が約25℃の雰囲気で消灯し、発光管内の温度が外部雰囲気の温度と平衡状態となる程度まで放置した後の点灯瞬時の水銀蒸気圧は0.1Pa前後であり、自己発熱によって高温雰囲気に至るまでは光束が低いという問題がある。この問題を解決するためには、安定点灯時の主アマルガムの温度を低くできればよく、このようにすれば、主アマルガムによって水銀蒸気圧を過度に低く制御する必要がなくなり、点灯瞬時の水銀蒸気圧を高くできるので、光束の立上がりを改善することが可能となる。
請求項6に係る発明の蛍光ランプによれば、上述のように配置された主アマルガムと球状の金属酸化物とを併用することで、さらなる光束立上がり特性の改善を図ることができる。
また、請求項1ないし6のいずれか1項に係る発明の蛍光ランプを実現させる際、請求項7に係る発明の蛍光ランプのように、発光管内に、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、又は、錫(Sn)を主成分として形成される補助アマルガムを設けるのが好ましい。
点灯開始直後に加熱されやすい部分にアマルガムを配置することで、点灯開始直後の水銀蒸気圧を速やかに上昇させることができる。加熱されやすい部分とは、例えば、電極近傍や放電密度の高い部分である。すなわち、発光管内に配置され、実質的に安定時の水銀蒸気圧をコントロールするアマルガム(いわゆる主アマルガム)は、点灯開始直後の水銀蒸気圧を速やかに上昇させるアマルガム(いわゆる補助アマルガム)には含まれない。
点灯開始直後の水銀蒸気圧を速やかに上昇させるアマルガム(いわゆる補助アマルガム)として、例えば、インジウムのように水銀の吸着力が高いアマルガムを用いると、消灯中に水銀蒸気圧を低下させ易く、点灯開始直後の蛍光ランプ内の水銀蒸気圧を良好に補うことが難しい。これに対し、金、銀、パラジウム、白金、鉛、亜鉛、ビスマス、ニッケル、アルミニウム、又は、錫を主成分として形成される補助アマルガムは、インジウム等と比べて水銀の吸着力が低い。そのため、金、銀、パラジウム、白金、鉛、亜鉛、ビスマス、ニッケル、アルミニウム、又は、錫を主成分として形成される補助アマルガムを用いると、点灯開始直後の蛍光ランプ内の水銀蒸気圧を良好に補い、光束立ち上がり特性を改善することができる。
ここで、金、銀、パラジウム、白金、鉛、亜鉛、ビスマス、ニッケル、アルミニウム、又は、錫を主成分とするとは、金、銀、パラジウム、白金、鉛、亜鉛、ビスマス、ニッケル、アルミニウム、又は、錫を概ね90%以上含むものであって、不純物等が許容されることは勿論のこと、他の金属や非金属を10%未満程度混入させたものを含むことを意味している。
請求項7に係る発明の蛍光ランプによれば、上記主アマルガムと上記補助アマルガムと真球状の金属酸化物とを併用することで、さらなる光束立上がり特性の改善を図ることができる。
請求項8に係る発明の電球形蛍光ランプによれば、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の蛍光ランプを具備しているので、発光管から蛍光体膜が剥離し難く、しかも、点灯直後の光束立上がり特性の良好な電球形蛍光ランプが得られる。しかも、電球形蛍光ランプは、白熱電球よりも消費電力が少なく、白熱電球と置換して照明器具等に適用することで、省エネルギー化が図れる。
請求項9に係る発明の電球形蛍光ランプを実現させる際、請求項8に係る発明の電球形蛍光ランプのように、蛍光ランプの発光管の端部に、口金側に向いカバー体内の口金側空間まで延在する中空の突出部が設け、この突出部内に主アマルガムを設けるのが好ましい。
本発明者らにより、点灯装置の主要部品が集まっている空間の温度は100℃程度或いはそれ以上の高温となるが、それら主要部品よりも口金側の空間の温度は40〜50℃程度と比較的低くなっていることが突き止められている。そのため、本発明のように、発光管の端部に、口金側に向いカバー体の口金側空間まで延在する中空の突出部を設け、この突出部内に主アマルガムを設けることで、光束の立上がりを改善することができる。
突出部は、発光管の端部の外径よりも細く形成された中空の細管とするのが好ましい。さらに、突出部は、その中間部に屈曲部を設け、この屈曲部より先端側部分を発光管側の根元部よりも口金の中心を通る軸線に近づけるように形成するのが好ましい。これにより、突出部をカバー体と当接しないように先端側部分を前記軸線側に寄せながらこの先端側部分を口金側に延在させることができるので、蛍光ランプの大型化を抑制しつつ主アマルガムの基板面からの離間距離を確保できる。
請求項9に係る発明の電球形蛍光ランプによれば、上述のように配置された主アマルガムと真球状の金属酸化物とを併用することで、さらなる光束立上がり特性の改善を図ることができる。
請求項10に係る発明の照明器具は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の蛍光ランプ、または請求項8若しくは請求項9に記載の電球形蛍光ランプのいずれか1つが装着される器具本体と、を具備している。
器具本体としては、蛍光ランプの規格、形状、寸法、用途などに応じて、一般的に使用されている器具本体の中から選ぶことができる。器具本体としては、例えば、ダウンライト等の埋込器具や直付器具等の器具本体を用いてもよい。また、器具本体としては、既設の照明器具の器具本体を用いてもよい。
請求項10に係る発明の照明器具によれば、発光管からの蛍光体膜の剥離が抑制され、しかも、点灯直後の光束立上がりが良好な高品質の照明器具が得られる。
請求項1ないし7に係る発明によれば、蛍光体膜の発光管からの剥離及び全光束低下を抑制でき、しかも、良好な光束立上がり特性が得られる蛍光ランプが得られる。
請求項8および9に係る発明によれば、蛍光体膜の発光管からの剥離及び全光束低下を抑制でき、しかも、良好な光束立上がり特性が得られる電球形蛍光ランプが得られる。
請求項10に係る発明によれば、発光管からの蛍光体膜の剥離が抑制され、しかも、点灯直後の光束立上がりが良好な高品質の照明器具が得られる。
以下、本発明の第1の実施形態を、電球形蛍光ランプ20に適用した図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、電球形蛍光ランプ20は、トリプルU形蛍光ランプ30と、基板50及び電子部品51を有する点灯装置31と、口金60及び保持部としてのホルダ61を有するカバー体32と、グローブ33とを備えている。カバー体32とグローブ33とから構成される外囲器34は、定格電力が40W形相当の白熱電球等の一般照明用電球の規格寸法に近似する外形に形成されている。すなわち、口金60を含む高さH1は110〜125[mm]程度、直径すなわちグローブ33の外径D2が50〜60[mm]程度、カバー体32の外径D1が40[mm]程度に形成されている。なお、一般照明用電球とは、JIS C 7501で規格化されているものである。
蛍光ランプ30は、透光性を有する発光管40、及び発光管40の内面に設けられた蛍光体膜13等を備えている。発光管40は、図2に示すように、外形が略同形状の複数本例えば3本の屈曲管41a,41b,41cを備えている。これら屈曲管41a,41b,41cを所定の位置に配置し、連通管42を介して順次連結することによって、1本の放電路が形成される。3本の屈曲管41a,41b,41cは夫々、互いに略平行な一対の直管部43及びこれら直管部43の一端同士を連続させる曲管部44を有してU字状に形成されている。これら屈曲管41a,41b,41cは、夫々の直管部43が円周上に位置するように配設して、3つの曲管部44が三角形状をなすトリプルU形に形成されている。なお、屈曲管を4つ使用して曲管部が四角形状をなすように形成してもよい。
各屈曲管41a,41b,41cは、管外径が約11[mm]、管内径が約9.4[mm]、肉厚が約0.8[mm]の無鉛ガラスバルブで、110〜130[mm]程度の直管の中間部を滑らかに湾曲するように屈曲形成したものである。屈曲管41a,41b,41cの曲管部44は、直管の中間部を加熱して屈曲させた後、屈曲管41a,41b,41cの屈曲箇所を成形型に入れ、その内部を加圧することによって所望形状に成形される。この成形型の形状によって、曲管部44の形状を任意に成形することが可能である。
なお、屈曲管41a,41b,41cの管外径は9.0〜13[mm]、肉厚は0.5〜1.5[mm]とするのが好ましく、また、発光管40の放電路長は250〜500[mm]の範囲とし、ランプ入力電力は8〜25[W]とするのが好ましい。屈曲管41a,41b,41cは、製造工程における加熱や点滅温度差によって変形し易く、連通管42の機械的強度が弱くなる条件は、使用するガラス管の管外径と肉厚との関係に大きく依存する。管外径が9.0[mm]よりも小さい場合または肉厚が0.5[mm]よりも小さい場合には、屈曲管41a,41b,41cの変形以外の要因に基づき発光管40が破損しやすいため好ましくない。また、管外径が13[mm]を超えた場合または肉厚が1.5[mm]を超えた場合には、連通管42の機械的強度がある程度確保できる。管外径が9.0〜13[mm]、肉厚が0.5〜1.5[mm]のガラス管を用いた発光管40としては、放電路長が250[mm]〜500[mm]、ランプ入力電力が8〜25[W]として設計することで、白熱電球形状に近似した電球形の蛍光ランプ30を構成することが可能となる。
屈曲管41a,41b,41cは、ピンチシール等により一端部が封着されているとともに、他端部には、管外径2〜5[mm]、管内径1.2〜4.2[mm]の中空の細管45a〜45cがピンチシール等によって発光管40の端部から突出するように封着されている。一側に配置される屈曲管41aの細管45aはダミーであり、中間に配置される屈曲管41bの細管45bは発光管40中の排気を行なうためのものである。また、他側に配置される屈曲管41cに設けられた突出部としての細管45cは、その中間部に屈曲部46aを有しており、口金60側に向いカバー体32内の口金60側空間まで延在している。したがって、屈曲部46aより先端側部分46bは、発光管40側の根元部によりも口金60の中心Cを通る軸線Lに近い位置に設けられることとなる。細管45c内には、電球形蛍光ランプ20が組立てられた状態において基板50の前記口金60側の面との間が5[mm]以上50[mm]以下となる位置に主アマルガム71が封入されている。主アマルガム71としては、例えば、ビスマス(Bi)が50〜60重量%、錫(Sn)が35〜50重量%からなる合金板に水銀を12〜25重量%含有させたものが用いられている。
発光管40の両側に位置する屈曲管41a,41bの連通管42側とは反対側の端部には、電極としてのフィラメントコイル47が一対のウエルズ48に支持された状態で封止されている。一対のウエルズ48は、両側の屈曲管41a,41cの端部にマウントを用いないピンチシール等により封着されたジュメット線(図示せず)を介して、発光管40から導出されたワイヤー49に接続されている。そして、発光管40から導出された2対すなわち4本のワイヤー49は、点灯装置31に電気的に接続されている。
屈曲管41a,41b,41c内には、補助アマルガム72が設けられている。中間の屈曲管41bに設けられた補助アマルガム72は、ピンチシール等により封着されたウエルズ73に取付けられており、放電路の中間位置に配置されている。一端の屈曲管41aに設けられた補助アマルガム72は、一対のウエルズ48のうちの一方に取付けられている。他端の屈曲管41cに設けられた補助アマルガムもまた、一対のウエルズ48のうちの一方に取付けられている。補助アマルガム72としては、ステンレス板に金を主成分とする金属をメッキしたものを用いている。
この実施形態では、発光管40は、屈曲管41a,41b,41cの高さH2が50〜60[mm]、放電路長が200〜350[mm]、屈曲管41a,41b,41cの並設方向の最大幅が32〜43[mm]に形成されている。そして、この発光管40には、封入ガス比率が99%以上のアルゴンガスが封入圧力400〜800[Pa]で封入されている。
蛍光体膜13は、図3に模式的に示すように、三波長発光形の蛍光体14と、結着剤として機能する粒子形状が球状の金属酸化物(以下、真球状金属酸化物という)15とを含んでいる。三波長発光形の蛍光体14の赤色発光蛍光体としては、610[nm]付近にピーク波長を有するユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y2O3:Eu)等が挙げられる。青色発光蛍光体としては、450[nm]付近にピーク波長を有するユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム発光体(BaMg2Al16O27:Eu)等が挙げられる。緑色発光蛍光体としては、540[nm]付近にピーク波長を有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン発光体(LaPO4:Ce,Tb)等が挙げられる。なお、三波長発光形蛍光体には、赤、青、緑の各色に発光する上記発光体以外に、他の色を発光する蛍光体を混合して所望の色度に発光するように調製してもよい。蛍光体14のBET比表面積値は、0.5[m2/g]である。
真球状の金属酸化物15としては、表1−1に示すように、例えばBET比表面積値Sが、それぞれ55,45,80[m2/g]、BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが、それぞれ5608,4588,8157[m2/mol]、平均粒径が30[nm]であり、その結晶構造の80%がγ型となっている真球状のアルミナ(以下、真球状アルミナという。)を用いる(後述する試料A,F,Gに対応)。なお、真球状金属酸化物15としては、この他に、例えばBET比表面積値Sが35[m2/g]、BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが7903[m2/mol]、平均粒径が30[nm]である真球状のイットリア(以下、真球状イットリアという。)(後述する試料Bに対応)、BET比表面積値Sが110[m2/g]、BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが6609[m2/mol]、平均粒径が25[nm]である球状のシリカ(以下、真球状シリカという。)(後述する試料Hに対応)、BET比表面積値Sが60[m2/g]、BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが10327[m2/mol]、平均粒径が15[nm]である球状のセリア(以下、真球状セリアという。)(後述する試料Iに対応)、BET比表面積値Sが80[m2/g]、BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが9858[m2/mol]である球状のジルコニア(以下、真球状ジルコニアという。)(後述する試料Jに対応)などを用いる。
なお、BET比表面積値は、窒素分子を利用したガス吸着法により測定している。また、平均粒径は、例えば、動的散乱法により測定された粒度分布から求めている。粒度分布は、例えば、「動的散乱式粒子径分布測定装置、LB−550(堀場製作所製)」により測定することができる。
真球状金属酸化物15は、酸素を含む気相中に溶融金属を噴霧することで、金属を気相中で酸化させてなる金属メタル溶融法により形成されたものを用いている。蛍光体膜13は、蛍光体14に対し真球状金属酸化物15を2重量%相当量添加し、水性バインダーを混合・調製した蛍光体14混合液を塗布・焼き付けることで、発光管11の内面に形成されている。
以下、口金60側を上側、グローブ33側を下側として説明する。
カバー体32は、カバー本体62を備えている。カバー本体62は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の耐熱性合成樹脂等により形成されており、図1に示すように、下側に向かって拡開する略円筒状をなしている。カバー本体62の内部は、点灯装置31を収容する空間となる。カバー本体62の上端側にはE26型等の口金60が被せられ、接着剤またはかしめ等により固定されている。なお、口金60は、カバー本体62に直接装着される必要はなく、間接的に装着されるものやカバー本体62の一部が口金60を構成するものであってもよい。
カバー本体62の下端側には、発光管40を支持するホルダ61が設けられている。ホルダ61は、発光管固定部材であるとともに点灯装置固定部材でもある。このホルダ61は、発光管40の端部が挿通可能な発光管挿通部61aを有しており、発光管40は、このホルダ61に支持されている。また、ホルダ61には、点灯装置31の基板50が嵌合手段(図示せず)により取付けられている。このホルダ61がカバー本体62の下側の開口を覆うようにカバー本体62に装着されている。これにより、点灯装置31は、カバー本体62内に収容される。なお、カバー本体62とホルダ61とは別体に形成するのが好ましいが、一体構造であっても構わない。
点灯装置31は、図1に示すように、口金60の中心Cを通る軸線Lに対して略垂直に配置される基板50及びこの基板50に実装された複数の電子部品51を有して、高周波点灯を行なうインバータ回路(高周波点灯回路)を構成している。この点灯装置31は、電子部品51の大部分が口金60側に配置されるように基板50が装着されてカバー体32に収容されている。この点灯装置31は、口金60及び蛍光ランプ30と電気的に接続され、口金60を介して給電されることにより動作し、電極に高周波電力を入力させて、蛍光ランプ30を点灯させる。点灯装置31は、平滑用電解コンデンサを備えるものが一般的であるが、これに限定されない。
基板50は、略円板状で、発光管40の最大幅の1.2倍以下の直径(最大幅寸法)に形成されている。基板50の口金60側の一面には、平滑用電解コンデンサ、インダクタ、トランス、抵抗やフィルムコンデンサ等からなる電子部品51の大部分が実装されている。基板50の発光管40側の他面には、電界効果型トランジスタ(FET)や整流ダイオード(REC)、チップ抵抗等が実装されている。
グローブ33は、透明或いは光拡散性を有する乳白色等であって透光性を有している。このグローブ33は、ガラス或いは合成樹脂等により、一般照明電球のガラス球と略同形状の滑らかな曲面状に形成されている。このグローブ33は、蛍光ランプ30を内包するとともに、開口部をカバー体32の下端側に嵌合させた状態で、このカバー体32の下端側に取付けられている。なお、グローブ33は、拡散膜等の別部材を組み合わせ、輝度の均一性を向上させることもできる。
そして、点灯装置31は、例えば、7〜15Wのランプ電力により発光管40を点灯させるように構成されている。本実施形態の電球形蛍光ランプ20は入力電力規格13[W]で、発光管40には12[W]の電力の高周波で加わり、ランプ電流は200[mA]、ランプ電圧は80[V]となっている。
表1の試料A,B,F,G,H,I,Jに用いる結着剤としての金属酸化物と、この金属酸化物を含む蛍光体膜の膜強度との関係を測定・評価した。この他に、比較例として、以下のような試料C,D,E,K,L,Mに用いる結着剤としての金属酸化物と、この比較例の金属酸化物を含む蛍光体膜の膜強度との関係を測定・評価した。
試料A,F,Gは、蛍光体膜の結着剤として上述した真球状のアルミナを用いた実施形態の電球形蛍光ランプ、試料Bは、蛍光体膜の結着剤として上述した真球状のイットリウムを用いた本実施形態の電球形蛍光ランプ、試料Hは、蛍光体膜の結着剤として上述した真球状のシリカを用いた本実施形態の電球形蛍光ランプ、試料Iは、蛍光体膜の結着剤として上述した真球状のセリアを用いた本実施形態の電球形蛍光ランプ、試料Jは、蛍光体膜の結着剤として上述した真球状のジルコニアを用いた本実施形態の電球形蛍光ランプである。
比較例の試料Cは、蛍光体膜の結着剤としてγ−アルミナ(針状、板状、角状等の混合体)を用いた従来の電球形蛍光ランプ、比較例の試料Dは、蛍光体膜の結着剤として平均粒径100nmのα−アルミナ(針状、板状、角状等の混合体)を用いた従来の電球形蛍光ランプ、試料Eは、蛍光体膜の結着剤として試料Dとは平均粒径が異なる(平均粒径300nm)のα−アルミナ(針状、板状、角状等の混合体)を用いた従来の電球形蛍光ランプである。比較例の試料Kは、蛍光体膜の結着剤として真球状のチタニアを用いた電球形蛍光ランプである。比較例の試料Lは、蛍光体膜の結着剤として酸化亜鉛を用いた電球形蛍光ランプである。比較例の試料Mは、蛍光体膜の結着剤として、BET比表面積値Sが220[m2/g]、BET比表面積値Sと分子量Mとの積S×Mが27108[m2/mol]であるジルコニアを用いた電球形蛍光ランプである。
蛍光体膜の膜強度の測定は、次の通りである。まず、直径1.2[mm]、長さ100[mm]の高炭素鋼線(いわゆるピアノ線)を用意する。高炭素鋼線の一端部を固定するとともに、他端部が60[mm]の高さに位置するように高炭素鋼線を撓らせた状態で、高炭素鋼線の他端部を蛍光ランプ10の表面に叩きつける治具を用意する。高炭素鋼線の他端部の下方に蛍光ランプ10を配置し、高炭素鋼線の他端部が蛍光ランプ10の表面に叩きつけられることによる衝撃によって、蛍光体膜13が発光管11から剥離するか否かを判定する。結果は、以下の表1−1のとおりである。なお、○は、全面にわたり蛍光体膜の剥れが無いことを示し、×は、蛍光体膜が剥れたことを示している。また、△は蛍光体膜の一部が剥がれたことを示している。
表1に示すように、試料A,B,C,F,G,H,I,J,K,Mでは、他端部が60[mm]の高さに位置するように高炭素鋼線を撓らせた状態で高炭素鋼線の他端部を蛍光ランプの表面に叩きつける程度の衝撃では、蛍光体膜の剥れが生じないが、比較例にあたる試料D,Eでは、前記衝撃で蛍光体膜に剥れが生じることがわかった。このように、真球状のアルミナ、イットリア、シリカ、セリア、ジルコニア、チタニアを結着剤として用いると、蛍光体膜の膜強度を高め、発光管の内面に良好に定着させることができる。これに対して、真球状でないα−アルミナを用いた試料D,Eでは、蛍光体膜の剥離が生ずることが分かる。また、酸化亜鉛を用いた試料Lも十分でないことがわかる。この状態は図7にまとめて図で示した。
また、試料A,B,C,F,G,H,I,J,K,Mを用いたものについて、安定時間経過後の光束を100%としたときの光束(相対光束)の時間変化を測定・評価した。
図5は、点灯開始からの時間[秒]と、安定時間経過後の光束を100%としたときの相対光束[%]との関係を示している。図5に示すように、球形度が低くBET値が大きい試料Cは、球形度が高くBET値が小さい試料Aと比べて著しく光束立上がり特性が悪いことがわかった。また、試料Aでは、BET値が同等であるものの、粒径が大きく球形度の低い試料Dや試料Eよりも光束立上がり特性が良好であることがわかった。また、試料Bでも、試料Dや試料Eと同程度の光束立上がり特性が得られることがわかった。また、粒径も小さく真球の試料Kは、紫外線を吸収しやすいため、相対光束および全光束は比較的低い傾向にある。このように、真球状のアルミナやイットリアを結着剤として用いると、良好な光束立上がり特性が得られる。
さらに、試料A〜試料Mを用いて、BET比表面積値S及び分子量Mの積が相対光束に与える影響について実験・評価した。この結果を、表1,表2にBET比表面積値S及び分子量Mの積S×Mと、30秒後における相対光束との関係で示している。また、この結果を図6に示した。
表1,表2及び図6に示すように、粒子形状が針状、板状、角状等の混合体であるアルミナ(α−アルミナ、γ−アルミナ)を結着剤として用いた蛍光ランプ(試料C,D,E)では、S×Mの値が大きい程、これに比例するように光束立上がり特性が低くなることがわかった。これに対し、真球状アルミナや真球状イットリアを結着剤として用いた蛍光ランプ(試料A及び試料B)は、BET比表面積値S×Mの値がα−アルミナ(試料D及び試料E)程は小さくないにもかかわらず、α−アルミナを結着剤として用いた蛍光ランプと同程度の良好な光束立上がり特性を得られることがわかった。
以上の測定結果から、粒子形状が針状、板状、角状等の混合体であるγ−アルミナを結着剤として用いた従来の蛍光ランプは、蛍光体膜の発光管からの剥離が若干抑制できるものの、ランプ始動初期の光束が小さいことがわかった。また、粒子形状が針状、板状、角状等の混合体であるα−アルミナを結着剤として用いた従来の蛍光ランプは、光束立上がり特性は良好であるものの、蛍光体膜に良好な膜強度を与えることができず、蛍光体が発光管から簡単に剥離してしまうことがわかった。
これに対し、本実施形態の球状アルミナや球状イットリアといった球状金属酸化物15を結着剤として用いた蛍光ランプは、上記γ−アルミナを結着剤として用いた従来の蛍光ランプよりも蛍光体膜の発光管からの剥離を抑止する能力が高く、しかも、上記α−アルミナを結着剤として用いた従来の蛍光ランプと同程度に良好な光束立上がり特性を得られることがわかった。
さらに、試料A〜試料Mを用いて、点灯3時間後における全光束と、点灯100時間後における全光束とを測定・評価した。結果は表1のとおりである。
表2に示すように、粒径の大きい試料D及び試料Eは、3時間後における全光束、100時間後における全光束、及び、3時間後を100とした時の100時間後の光束維持率ともに、他の試料よりも低いことがわかった。また、真球状で粒径が比較的小さい試料A及び試料Bの光束維持率は、球状でないが粒径の小さい試料Cよりも優れていることがわかった。
このように、粒径が小さい試料A及び試料Bは、光束立上がり特性に優れるだけでなく、長期間良好な光束を維持することができる。
以上のように、本実施形態の蛍光ランプ30及びこれを用いた電球形蛍光ランプ20によれば、蛍光体膜13の発光管40からの剥離及び全光束低下を抑制でき、しかも、良好な光束立上がり特性が得られる。
また、本実施形態では、蛍光ランプ30の発光管40の端部に、口金60側に向いカバー体32内の口金60側空間まで延在する中空の細管45cを設けるとともに、この細管45c内の基板50の口金60側の面との間が5[mm]以上50[mm]以下となる位置に主アマルガム71を設けているため、安定点灯時の主アマルガム71の温度を低くできる。よって、光束立上がり特性を改善することができる。
さらに、本実施形態では、発光管40内に、水銀の吸着率が低い金を主成分とする補助アマルガム72が設けられているため、光束立上がり特性をさらに改善することができる。
以下、本発明の第2の実施形態を、直管形蛍光ランプ10に適用した図8を参照して説明する。
本実施形態の蛍光ランプ10は、透光性を有する直管形の発光管11、この発光管11の両端部に設けられた一対の口金12、及び、発光管11の内面に設けられた蛍光体膜13等を備えている。発光管11内には、希ガスが封入されているとともに、両端部に一対の電極(図示せず)が設けられている。一対の電極は、口金12と各々電気的に接続して封装されている。発光管11の両端部には、一対の排気管(図示せず)が設けられており、一対の排気管のうちの一方の排気管内に、Bi-Sn-Hgアマルガム(図示せず)が封入されている。
発光管11は、管径16[mm]、管長540[mm]のソーダライムガラスバルブである。蛍光体膜13は、三波長発光形の蛍光体14と、結着剤として機能する真球状のアルミナとを含んでいる(図3参照)。なお、蛍光体膜13は、第1の実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
本実施形態のように、直管形蛍光ランプ10であっても、蛍光体膜13に、結着剤として機能する真球状のアルミナを含ませることで、第1の実施形態と同様の効果が得られる。電球形蛍光ランプ20や直管形蛍光ランプ10は、照明器具に適用することができる。
図9は、第1の実施形態の電球形蛍光ランプ20を備えた照明器具1を例示している。この照明器具1は、天井Xに埋め込まれたダウンライトであり、器具本体2に取付けられたソケット3に蛍光ランプ30が取付けられている。
上述のように規定された電球形蛍光ランプ20を一般照明用電球の照明器具に用いた場合、蛍光ランプ30の配光が一般照明用電球の配光と近似することで、器具本体2内に配設されたソケット3近傍の反射体への光照射量が十分に確保され、反射体の光学設計どおりの機器特性を得ることができる。しかも電球スタンドのように内部光源のイメージが布製等の光拡散性カバーに映し出される照明器具1であっても、蛍光ランプ30の配光が一般照明用電球の配光と近似することで違和感なく使用できる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲でいろいろの変形を採ることができる。例えば、発光管40の材質、形状、蛍光ランプ30の仕様等は、その用途などに応じて適宜選ぶことができる。また、上記実施形態では、電球形蛍光ランプを装着してなる照明器具1について説明したが、照明器具1は、装着する蛍光ランプの形状に応じて器具本体2を適宜選ぶことで、種々に実施できる。
1…照明器具、 2…器具本体、 10,30…蛍光ランプ、 20…電球形蛍光ランプ、 11,40…発光管、 13…蛍光体膜、 14…蛍光体、15…金属酸化物、 31…点灯装置、 32…カバー体、 60…口金、 61…保持部(ホルダ)、 71…主アマルガム、 72…補助アマルガム