JP2005122085A - 精密スリーブの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】極めて簡単な方法を用いて、精密スリーブの内周面および同心度の精度を向上させるとともに、精密スリーブの製造にかかる費用や時間を大幅に短縮化する。
【解決手段】高精度の内径を有する略円筒状の精密スリーブの製造方法であって、円筒状成形体の内周部に円柱体700を長手方向に挿入し、前記円筒状成形体を、その内周面の少なくとも一部が前記円柱体700の外周面に当接するように収縮させ、円筒状硬化体1000の外周を研削した後、円筒状成形体と円柱体700の平均線膨張係数の差により、前記円柱体700を抜脱する。
【選択図】図3

Description

本発明は、光コネクタや光モジュールなどにおいて、光ファイバを保持したフェルール同士を接続するために用いる精密スリーブの製造方法に関するものである。
光ファイバ同士を接続する一般的な光コネクタの断面構造は、図6(a)に示すように光ファイバ2を挿通したフェルール3同士を精密スリーブ1の両端から挿入して突き合わせるようになっている。フェルール3、精密スリーブ1の材質としてアルミナやジルコニアなどのセラミックスまたは金属、プラスチックスなどが用いられている。
図6(b)に、に開示される一般的な三点精密スリーブの斜視図を示す。精密スリーブ1の内周面4はフェルール3の外径よりわずかに大きく精密研磨されている。この精密スリーブ1にフェルール3を挿入することで精密スリーブ1の内周面4でフェルール3に挿通された光ファイバ2を光学的に当接させることが出来る。なお、内周面4に突起4aを設けてフェルール3を支持するようにしても良く、内周面に三箇所の突起4aが設けられている。
また、この精密スリーブ1を形成する材料としては、耐摩耗性に優れ、適度な弾性を有するジルコニアなどのセラミックスが好適に用いられる。その製造方法としては、セラミック原料粉末を押出成形もしくは射出成形などの方法によって円筒状に成形し、高純度のムライトからなる平板上に円筒状成形体を長手方向に載置して焼成することで円筒状焼結体を得る。その後、内周面4および外周面5、全長を所定の寸法に加工する。(特許文献1参照)
なお、このような製造方法により得られる精密スリーブ1は、光ファイバ2を挿通した一対のフェルール3同士を精密スリーブ1の両端から挿入して当接させたときに、精密スリーブ1の内周面4の精度がばらつくため、フェルール3同士の光学結合にずれが生じ、接続損失がばらつくという問題があった。
この問題を解決するため、精密スリーブ1の内周面4を高精度に加工することが工夫されている。例えば、出願人は、ホーニング加工で荒研磨をした後、精密ホーニング加工またはピン研磨で最終仕上げ加工する方法について開示した。これによって、光通信用精密スリーブ1の内周面4の真円度を1μm以下および内周面4の長手方向の真直度を1μm以下に仕上げることを可能としている。(特許文献2参照)
なお、ホーニング加工とは、図7(a)に示すように、先端部がテーパ形状となったホーン8のテーパ部にダイヤモンド砥石9を貼り付け、該ホーン8を回転させながら、固定治具10に固定された精密スリーブ1の内径に該ホーン8のダイヤモンド砥石9を接触させ、荷重を精密スリーブ1の内径に印加して、荒削りする加工方法である。また、ピン研磨とは、図7(b)に示すように、先端部をテーパ形状に形成したピン11に油性スラリ−に混合したダイヤモンドパウダ12を塗付し、該ピン11を回転させながら、固定治具10に固定された精密スリーブ1の内周面4に該ピン11のテーパ面から荷重を印加して、研磨する方法である。
図8は、従来の製造方法によりジルコニアセラミックス製の精密スリーブ1を形成する手順を説明したフロー図である。このように、焼成によって円筒状硬化体を得た後に、二種類の内周加工と外周加工、全長加工を経て精密スリーブ1を形成していた。
更に、上記に示した製造方法ではスリーブ内周部の加工工数が非常に多く、低価格なスリーブを供給することが困難であったため、スリーブ内周面を高精度に成形する方法が工夫されている。
例えば、出願人はプレス成形もしくは押出成形により得た円筒状成形体にピンを挿入し、焼結時の収縮をピンにより規制した後、スリーブにスリットをいれピンを引き抜くことで内径精度の高い磁器を成形する方法を提案している(特許文献3参照)。
特開平6−27348号公報 特開平2001−91783号公報 特開平1−176277号公報
特許文献1、2のような図8のフローチャートに示す製造方法では、特に、スリーブ内周部を任意の寸法に仕上げるために荒加工と仕上げ加工の2回の加工を行う必要があり、大幅な加工時間を必要とするという問題があった。
また、特許文献3の成形方法ではピンを抜く際にスリーブにスリットを形成する必要があり、スリットが無い精密スリーブには用いることができないため、精密スリーブでは製造から出荷までのリードタイムが大幅にかかり、短納期で顧客の要求に応えることが難しかった。
また、スリーブを光レセプタクルに組み込んだ場合、コネクタを挿入した際にスリーブの同心度が悪いとフェルールが斜めに挿入され横加重がかかるため接続損失が悪くなっていた。
上記に鑑みて本発明の精密スリーブ製造方法は、精密スリーブの円筒状成形体の内周部に円柱体を挿入後、前記円筒状成形体の内周面を加熱収縮により前記円柱体の外周面の少なくとも一部と当接した状態で硬化し、硬化後に円筒状硬化体の外周を研削してから前記円柱体を除去する精密スリーブの製造方法において、室温から前記円筒状成形体の硬化温度までの範囲における平均線膨張係数は、加熱収縮後の前記円筒状成形体よりも前記円柱体のほうが大きく、且つ、前記円柱体の軟化温度が前記円筒状成形体の硬化温度以上であることを特徴とするものである。
また、前記円柱体は、ムライト、アルミナ、チタン酸ジルコニウム、スピネル、チタニア、ジルコン酸カルシウム、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムのいずれか1種以上を主成分とするセラミックス焼結体またはステンレス、パラジウム、白金、ジュラルミンのいずれか1種以上の金属よりなり、前記円筒状成形体は、ムライト、アルミナ、チタン酸ジルコニウム、スピネル、チタニア、ジルコン酸カルシウム、ジルコニアの少なくとも一種以上を主成分とする成形体またはポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂のいずれか一種以上であることを特徴とする。
また、前記円柱体の断面の真円度が1μm以下であり、かつ前記円柱体外周面の長手方向の真直度が1μm以下であることを特徴とする。
また、前記円筒状成形体に円柱体を挿入した後、円柱体の両端をそれぞれ底板に立設された支持体で支持し、円筒状成形体を底板から離隔した状態で円柱体の外周面に円筒状成形体が当接するように収縮させることを特徴とする。
また、前記円筒状成形体に円柱体を挿入した後、円柱体を長手方向に立設した状態でその外周面に円筒状成形体が当接するように収縮させることを特徴とする。
前記円柱体の一端を平板に開口した穴溝に挿入して支持することを特徴とする。
前記円柱体を挿入した状態で前記円筒状成形体を硬化した円筒状硬化体において、上記円柱体の両端部を回転可能な保持手段で保持し、回転させて円筒状硬化体の外周面を研磨することを特徴とする。
また、前記円柱体と円筒状硬化体を加熱して両者をかしめた状態で円筒状硬化体の両端にワックスを塗布し、これを冷却固定後に円筒状硬化体の外周を研磨してからワックスを加熱溶融して円柱体と円筒状硬化体を分離することを特徴とする。
以上のように本発明によれば、高精度の内径を有する略円筒状の精密スリーブの製造方法について、円筒状成形体の内部に円柱体を長手方向に挿入しその後、円筒状成形体を、その内周面の少なくとも一部が円柱体の外周面に当接するように加熱収縮させた後、円筒状硬化体の外周、全長を研削加工する。(以降加熱収縮後の円筒状成形体を円筒状硬化体と言う。)そして、最後に、該円柱体を抜脱することによって、本発明の精密スリーブを形成する。このとき、円筒状成形体を円柱体の外周面に当接するように収縮させるため、円柱体の寸法および表面状態が円筒状成形体の内周面にそのまま転写される。したがって、あらかじめ所定の寸法精度ならびに表面状態を有する円柱体を用いることによって、収縮後の円筒状硬化体の内周面は、後加工を行うことなく、必要な寸法精度、表面状態にすることが可能となり、手間をかけずに信頼性の高い製品が提供できる。
また、円筒状成形体を円柱体の外周面に当接するように収縮させる方法として、円柱体を長手方向に立設した状態でその外周面に円筒状成形体を当接するように収縮させることで、寸法精度が1.0μm以下となり、かつ加工をほとんどしないで信頼性の高い製品が提供できる。
更に、円筒状成形体を収縮させて得た円筒状硬化体と円柱体を固定し、円柱体を両側より保持しながら回転させることで外周を研削する際に円柱体より等距離で外周を研削できるので外周と内周の同心度の優れたスリーブを得ることができる。
以下本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるジルコニア製の精密スリーブの製造方法の手順を説明したフロー図である。
まず、ジルコニアを主成分とする出発原料の不純物を除去し、安定化剤や焼結助剤などを混合して、成型用のバインダーを添加し、成形前原料を調合する。この成形前原料を、セラミックス焼結体の特定個所が所望の寸法になるように平均的な収縮率に基づき成形金型を選定して、押出成形、射出成形などの成型方法によって成形を行い、ジルコニア原料粉末からなるジルコニアの円筒状成形体800を得る。
図2(a)に、上記の方法により作製したジルコニアの円筒状成形体800の断面図を示す。
また、図2(b)は、ジルコニアの円筒状成形体800の内周面400に三箇所の突起400aを設けた場合の断面図である。
以降の説明は、この三箇所の突起400aを設けた三点精密スリーブについて行うことにする。
図3の(a)〜(d)は、本発明のジルコニアの三点精密スリーブ100の製造方法を示す図である。
まず、図3(a)に示すように、ジルコニア原料粉末からなる円筒状成形体800の内周面400の長手方向にジルコニアセラミックス焼結体の円柱体700を挿入する。
次に、図3(b)に示すように、上記円柱体700が挿入された状態で、ジルコニアの円筒状成形体800を所定の条件で焼成する。
次に、図3(c)に示すように、円筒状硬化体1000の外周加工を行う。外周加工の方法としては、周知のセンタレス加工やラップ加工などを用いることができるが、円筒状硬化体1000と円柱体700を加熱することで円筒状硬化体1000と円柱体700をかしめ固定しながら長手方向両側より円筒状硬化体1000と円柱体700をワックス1100にて固定する。
加熱しながら固定することで円筒状硬化体1000の内径と円柱体700の外径のクリアランスが小さくなり、より円筒状硬化体1000の内径中心で円柱体700を保持することができるため、円柱体700を両端より保持し円柱体700を軸に回転させることで外周面600を研削した場合に同心度の優れた精密スリーブ100を得ることが出来る。
円柱体700の保持方法は、回転機構を備えたチャック1200により円柱体700の片端を保持し、もう一端にダイヤルゲージを当てながら偏心が2μm以下になるようにチャック1200を位置調整する。チャック1200の位置調整後、ダイヤルゲージを外し、もう一端側も回転可能なチャック1200で保持する。
その後、円柱体700を回転させながら、回転したダイヤモンド砥石1300に円筒状硬化体1000を押当て外周を研削する。
この時、ダイヤモンド砥石1300の幅は、円筒状硬化体1000よりも厚くする必要があるが、ダイヤモンド砥石1300を円筒状硬化体1000の長手方向に揺動可能にすることでダイヤモンド砥石の幅を薄くすることができ、ダイヤモンド砥石が摩耗しても円筒状硬化体の外周を長手方向に高精度に加工することができる。
このように、通常のセンタレス加工では、円筒状硬化体1000の外周600から均一に研削するため、円筒状硬化体1000の内周と外周の同心度は押出成形後の磁器同心度そのままであるため20〜50μmである。
しかし前述の円柱体700と円筒状硬化体1000を固定した後、円柱体700を軸に外周面を研削することで、内径から均一な距離で外周が研削される為、同心度が20μm以下のスリーブを容易に製造することができる。
最後に、ワックスを80〜300℃で加熱し軟化させた後、図3(d)に示すように、円柱体700を抜き取って、ジルコニア製の精密スリーブ100を得る。
ワックス1100を軟化させる温度はジルコニア製精密スリーブ100の焼結温度に比べ十分に低いため、ジルコニアの相変化による強度劣化が起こらない。
また、円柱体700のジルコニアの方が平均線膨張係数が高く、また、軟化温度が円筒状成形体800の硬化温度よりも高いため、円筒状成形体800の硬化時に変形が無く、円筒状成形体800の硬化温度では円筒状成形体800の内周面400と円柱体700の外周面600が密接している。
ここで、硬化温度とは例えばジルコニアでは円筒状成形体が焼結する温度であり、軟化温度とは例えば円柱体が溶融する前にその硬度を失って変形するときの温度をいう。
常温ではその平均線膨張係数の差から、円筒状硬化体1000の内周面400と円柱体700の外周面600の間に5μm前後のクリアランスができるため、円柱体700を精密スリーブ100から極めて容易に抜脱ことができ、しかも円柱体700にはダメージを与えないので、円柱体700を何度も繰り返して使用することができるという作用を有している。
ここで円筒状成形体800の硬化温度よりも円柱体700の軟化温度が低いと、ジルコニア同士が反応してしまい円筒状硬化体1000と円柱体700がくっついてしまうため容易に円柱体700を抜脱することが出来ないので、円柱体700の軟化温度が円筒状成形体800の硬化温度以上である必要がある。。
また平均線膨張係数が円筒状成形体800の方が高いと焼成が終わり収縮した際に、常温で円柱体700の外径より円筒状硬化体1000内径の方が小さくなってしまい、円柱体700が抜脱ができないばかりか、場合によっては収縮応力で円筒状硬化体1000が割れてしまうことがある。
通常、ジルコニアセラミックスの焼成温度は、1300〜1450℃である。このとき、円柱体700として軟化温度が高い材料を選定することで、円筒状成形体800が焼結する温度近傍において、全く変形や反応を生じず、その形状がそのまま保たれる。
そして、円柱体700の外周面600に当接するように、ジルコニアの円筒状成形体800は焼成収縮し、所定の内周面寸法精度を有する円筒状硬化体1000を得ることができる。なお、必要に応じてバインダー除去のため、大気中で仮焼成を行っても良い。
また、安定化剤の量を多く含むジルコニアは、熱膨張が大きく、円筒状成形体800と円柱体700の平均線膨張係数の差により、前記円柱体700を抜脱することがより容易となる。
また上述の例では精密スリーブ100を形成するための円筒状成形体800及び円柱体700の材料として、ジルコニアセラミックス原料粉末を用いて説明したが、これに限るものではなく、円筒状成形体800の材料として、チタン酸バリウム原料粉末よりなる成形体を用い、円柱体700として、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムを用いても良く、円筒状成形体800の材料として、ムライトよりなる成形体を用い、円柱体700として、ムライト、アルミナなどの焼結体材料を用いても良い。
さらに、円筒状成形体800の材料として、ポリスチレン等のプラスチックよりなる成形体を用い、円柱体700として、ムライト、アルミナ、チタン酸ジルコニウム、スピネル、チタニア、ジルコン酸カルシウム、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムいずれか少なくとも一種以上より選ばれたセラミックス焼結体またはステンレス、パラジウム、白金、ジュラルミンの金属を用いても、全く同様の効果を得ることができる。
また、上記円筒状成形体800にポリスチレン樹脂原料を用い、上記円柱体700には、ステンレス材料を用いても本発明と全く同様な効果が得られる。
すなわち、上記円柱体700の材料として、上記円筒状成形体800の硬化温度において、変形したり反応したりすることがない材料から選択すれば、本発明の効果を得ることができることは言うまでもない。
また、円柱体700の外周面600はあらかじめ、真円度を1μm以下とし、長手方向の真直度を1μm以下の精度に仕上げておくことによって、作製する精密スリーブ100の内周面400にその精度を転写し、高精度に仕上げることが可能となる。円柱体700の外周面600の真円度が1μm以上、長手方向の進直度が1μm以上であると、円筒状硬化体1000の内周面400に転写されても精度が悪く、再加工が必要となる。
特に、円筒状硬化体1000の外周加工を行う際に、真円度に優れた円柱体700の外周面600を加工の基準とできるので、精密スリーブ100の外周加工精度が格段に向上するという優れた効果を奏する。
なお、上述の焼成方法として、図4(a)に示すように、円筒状成形体800に円柱体700を挿入した後、円柱体700の両端をそれぞれアルミナ系のセラミックス等からなる底板16に立設された支持体16aで支持し、円筒状成形体800を底板16から離隔した状態で円柱体700の外周面600に円筒状成形体800が当接するように焼成することが好ましい。この場合、円筒状成形体800の外周面600が焼成時に変形することがなく寸法精度の高い円筒状硬化体1000を得ることができる。
さらに、他の焼成方法として図4(b)に示すように、円筒状成形体800に円柱体700を挿入した後、円柱体700を長手方向に立設した状態でその外周面600に円筒状成形体800が当接するように配設して焼成することが好ましい。
この場合、図4(a)に示すように、支持体16aにのせる手間や底板16のコストがかかることはなく、また、円筒状成形体800の自重負荷を全く受けずに焼成することができる。
また、円柱体700の一端は、平板14に開口した穴溝15に挿入して長手方向に立設した状態で焼成することがより好ましく、円筒状成形体800が焼結する際に、円柱体700の外周面600に習って、均一に収縮し、円筒状成形体800の内周面400に直接的なの自重負荷が無い為、焼成時に円筒状成形体800の内周面400は中心へと均一に収縮して、寸法精度の高い円筒状焼結体1000ことができる。
なお、前記平板14の反りは1μm以下、穴溝15の寸法は円柱体700の外径より1〜5μm大きく、深さは3〜5mm程度とすることが好ましく、多少の振動においても円柱体700を挿入してある円筒状成形体800が倒れないように設ける。
また、平板14の材質は、アルミナ系、ムライト系、ジルコニア系等のセラミックスからなることが好ましいが、特に高純度のムライト系の材質で形成することがより好ましく、安価でかつ熱に対し曲げ応力が優れた材料であるため、焼成を数回繰返しても反りの発生が少ない。
図5(a)(b)に本発明の製造方法による精密スリーブ100の斜視図および側面図を示す。上記精密スリーブ100の内周面400は嵌装するフェルール300の外径よりわずかに大きく、内周面400の長手方向に3箇所の突起400aが設けられている。
また、図5(c)に、上記精密スリーブ100に光ファイバ200を挿通したフェルール300同士を精密スリーブ100の両端から挿入して突き合わせた断面図を示す。この精密スリーブ100にフェルール300を挿入すると、図5(a)、(b)の精密スリーブ100の内周面400に備えられた3箇所の突起400aでフェルール300を保持することができるようになっている。
本発明の製造方法による精密スリーブ100は、円柱体700を所定の寸法精度に設定しておけば、時間をかけずに、内周面400を必要な精度にすることができる。そのため製造にかかる時間や費用を少なく抑えて、さらに従来問題となっていた精密スリーブの長手方向の反りやうねりも改善され、信頼性の高い製品を提供することが可能となる。
また、従来の加工方法を用いると、円筒状硬化体1000の内周加工する際にホーニング加工、ピン研磨をするため、内周面400に研磨カスが残り、さらにピン研磨においては、油性のスラリ−を使用しているので、油性スラリ−も残る。そのため、アルカリ洗浄液などを用いた大がかりな洗浄工程を設けて、研磨カスや油性スラリ−を除去する必要があるが、本発明においては、内周加工をしないので、洗浄する必要がないという利点もある。
また、突起400aが3箇所の三点精密スリーブの例で説明を行ったが、突起400aの箇所は3箇所以上でも良く、さらに、突起400aがないノーマル精密スリーブでも良く、本発明と全く同様な効果を得ることができる。なお、突起400aの高さは5μm〜70μmとすることが好ましく、この範囲を超えると精密スリーブ100の肉厚が薄くなり、強度が低下するという問題があり、この範囲より小さいと成形用の金型を精度良く加工することが困難で形状バラツキが生じるという問題がある。
さらに、上記突起400aの上面の角部にR形状を設けてもよく、これにより、角部のカケを防止することが可能となる。
さらに、円柱体700の外径については、ジルコニアの円筒状成形体800が焼成収縮したときに、その内周面400が円柱体700の外周面600と当接して隙間なく嵌め合うように、上記円筒状成形体800の内径は、円柱体700の外径よりも焼結時の温度領域で1〜5μmの範囲で小さくなるように成形されている。この範囲を外れると、円筒状成形体800が焼成収縮したときに、円柱体700と収縮後の円筒状硬化体1000との間に隙間ができてしまったり、円筒状成形体800の焼成収縮が円柱体700によって阻害され、円筒状硬化体1000や円柱体700にクラックが生じたりする恐れがあるからである。
さらに、この円柱体700の外周面600の表面粗さは、算術平均粗さRaを0.5μm以下とすることが望ましく、この場合、円柱体700の外周面600に当接するように収縮成形された精密スリーブ100の内周面400および突起400aの表面粗さについても、算術平均粗さRaが0.5μm以下になるので接続損失を低減することができる。
なお、本発明の製造方法によれば、精密スリーブ100の内周面400を加工することなく、高い寸法精度に仕上げることができるため、基本的には後から加工する必要はない。
しかしながら、必要に応じて、内周面400を精密ホーニング加工やピン研磨などの方法によって研磨加工しても良い。特に本発明の製造方法では、必要な寸法精度に対して、従来よりも内径を高精度に形成することが可能であるため必要最低限の研磨しろを残して精密スリーブ100を形成することが可能であるため、さらに高精度に仕上げる際にも、ほとんど手間をかけずに加工ができるという優れた特徴を有する。
なお、本発明の実施形態は上述の例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
以下本発明の実施例を説明する。
本発明の図1と図3に示す製造方法によって、安定化ジルコニア原料を使用して三点精密スリーブの作製を行った。該ジルコニア原料の組成は、ZrOの出発原料のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl・8HO)と安定化剤として塩化イットリウムをY換算でZrOに対して3〜5モル%添加混合し、加水分解により反応・固溶させ作製したZrO粉末に、バインダーを混合させて、外径φ3.2mm、内径φ2.5mm、長さ11.4mmの外形寸法を有する本発明の製造方法にかかるジルコニアの三点精密スリーブ100を100個作製した。硬化温度は1350℃、線膨張係数は11.0×10−6/℃である。(原料には不純物としてAl、CaO、NaO、Feが含まれている。)
なお、図3に示すジルコニアの円筒状成形体800の各寸法は、外径φ5.0mm、内径φ3.33mmとなるように、あらかじめ押出成形で円筒状成形体800を成形した。
また、円柱体700は、円筒状成形体800に用いたジルコニアより安定化剤としてYを多く添加混合することで平均線膨張係数を11.8×10−6/℃とあげ、比表面積の小さいジルコニア原料粉末を用いることで焼結温度を1450℃と高くしたジルコニア粉末を成形、焼成した。上記円柱体700を使用して、その外径がφ2.5mmで、真円度0.9μm、真直度0.9μmのものをジルコニアの円筒状成形体800の内周面400に挿入して、長手方向にV溝を有する焼成板に円筒状成形体800を長手方向にして並べて焼成させることによって、上記ジルコニア焼結体からなる円柱体700の外周面600に当接した円筒状硬化体1000を得た。
なお、ジルコニアの円柱体700の外形寸法は、円筒状成形体800の焼結が終わる前、すなわち完全変態前の状態に於いて円筒状成形体800の内径よりも1〜5μm大きくすることによって、焼成収縮後、円筒状成形体800が円柱体700の外周面600に隙間なく当接し、強く噛み込んだ円筒状硬化体1000が形成されているが、冷却することで、その平均線膨張係数の差から常温では円柱体700の外周面600と円筒状成形体800の内周部400には10μm前後のクリアランスができ、円柱体700を無理なく抜脱することが可能である。
なお、従来例として、図8に示す製造方法によって、外径φ3.2mm、内径φ2.5mm、長さ11.4mmのジルコニアの三点精密スリーブ1を100個作製した。円筒状成形体は、図6に示す方法によって、あらかじめ押出成形を行い、焼成、外周加工、内周加工を施してジルコニアの三点精密スリーブ100を作製した。外周加工は、ラップ加工を用いて、内周加工においては、図7(a)(b)に示す方法でホーニング加工、ピン研磨を行って精度を出した。
これらの三点精密スリーブの内周面の真円度、真直度、表面粗さ、接続損失を測定し、本発明と従来例とを焼成後から製品化までの加工時間の比較を行った。また、接続損失の測定は、図5(c)に示す方法にて三点精密スリーブに光ファイバ200を挿通したフェルール300同士を両端から挿入して突き合わせて光学損失を測定した。
なお、真円度と真直度、表面粗さは三点精密スリーブの内周について測定した。
本発明および従来例の真円度、真直度、表面粗さ、接続損失は各100個のサンプルの平均値で、加工時間については、各100個のサンプルを作製したときの円柱体抜脱工程後から加工工程を終了するまでのタクトである。また比較例として、外径を2.5mm、真円度を1.1μm、真直度を1.1μmに加工した上記円柱体700を挿入し焼成した3点精密スリーブ100を100個、また、外径を2.5mm、真円度を0.9μm、進直度を0.9μmに加工したアルミナ円柱体700(軟化温度2040℃、平均線膨張係数8.2×10−6/℃)を挿入し焼成した3点精密スリーブ100を100個用意し、スリーブ内周の真円度、真直度、表面粗さ及び接続損失を測定した。
Figure 2005122085
表1に示すように、従来の製造方法により作製した比較例1の精密スリーブでは、平均真円度0.8μm、平均真直度0.9μm、算術平均粗さRa0.4μm、平均接続損失0.2dBとなり、その製造時間が45分であるのに対し、本発明の製造方法により作製した実施例1の精密スリーブの最良のものは、平均真円度0.7μm、平均真直度0.8μm、算術平均粗さRa0.3μm、接続損失0.2dBとなり、製造時間は10〜15分であった。
また、実施例2として作製した精密スリーブでは、平均真円度1.1μm、平均真直度1.1μmとなっており、ひとなめ程度の内周加工が必要であるため製造時間が30分とかかり大きな時間短縮までには至らなかった。
さらに、比較例2の円筒状成形体800より円柱体700の平均膨張係数が低い場合には、円筒状成形体800の硬化温度で円柱体700の外周面600と円筒状成形体800の内周面400が密接するように焼成した場合、常温時に噛み込みが大きく円筒状成形体1000にクラックが発生してしまった。
また、比較例3の円筒状成形体800硬化温度より円柱体700の軟化温度が低い場合には、円柱体700の変形により円筒状成形体800が変形してしまった。
このように、本発明は従来と比較して、寸法値及び接続損失を同等以上に保ちながら、精密スリーブの内周面の加工をする手間を省くことができたため、製造時間を、約1/4とすることができた。
さらに、円筒状成形体800にポリスチレン樹脂原料(軟化温度200℃、平均線膨張係数30.2×10−6/℃)を用い、円柱体としてジュラルミン(軟化温度1130℃、平均線膨張係数32.6×10−6/℃)を用いて、樹脂を収縮成形させた場合においても、上記と同様の結果となり、従来と比較して、寸法値及び接続損失を同等以上に保ちながら、加工時間を短縮する効果を得ることができた。
また、円柱体700の真円度を1μm以下、真直度を1μm以下に加工することで、接続損失の良いスリーブを加工することが出来る。
円柱体700の真円度、真直度が1μmより大きいと、そのままの精度が円筒状成形体800に転写されてしまい好ましくない。
また、円筒状成形体800の硬化方法の違いによる寸法精度を比較するため、表1における本発明の実施例である円筒状成形体800をジルコニアで、円柱体700をアルミナで形成した場合の試料を実施例1と同様な方法で作製した。なお、焼成方法として、図4(a)に示す方法にて底板16の支持体16aに円柱体700を固定したもの、また図4(b)に示す方法にて円柱体700を平板14の穴溝15に立てたもの、また、比較例として長手方向にV溝を有する焼成板上に円筒状成形体800を長手方向にして並べて焼成したものとする。
そして、各焼成方法で焼成した後、寸法精度の比較を行った。
なお、底板16、支持体16aは、アルミナを使用し、平板14はムライトを使用した。このときの寸法精度の比較は、平均真円度、平均進直度であり、各データは、サンプル100個の平均値である。
Figure 2005122085
表2から明らかなように、本発明の実施例3である底板16に支持体16aを設けた治具を用いて焼成した場合には、平均真円度0.6μm、平均真直度0.6μm、接続損失0.1dBとなり、また平板14に設けた穴溝15に立てて焼成した場合には、平均真円度0.5μm、平均真直度0.6μm、接続損失0.1dBと寸法精度の高いものとなった。
これに対し、比較例4である溝を有する焼成板によって焼成した場合には、平均真円度1.0μm、平均真直度2.0μm、接続損失0.3dBと大きいものであった。このように、支持体16aを用いた場合、さらに立てて焼成した場合においては、平均真円度、平均真直度が改善され、接続損失においても更なる改善することができた。
さらに、実施例4として円筒状硬化体1000の外周加工の違いによる寸法精度を比較するため、円柱体700と円筒状硬化体1000をワックスにより固定し、円柱体1000を両側より保持し回転させ外周600を加工したサンプル100個と比較例5として従来のようにセンタレス加工により加工したサンプル100個について、その同心度とレセプタクルに組み込んだときの接続損失を測定した。
Figure 2005122085
表3から明らかなように、本発明の実施例4である円柱体700を軸に回転させ外周600を加工した場合には、平均同心度が6μm、平均接続損失が0.15dBとなり寸法精度の優れたスリーブを作成することができた。
これに対し比較例5である外周面をセンタレス加工により加工した場合には、平均同心度が25μm、平均接続損失が0.22dBと損失が悪くなっていた。
このように外周加工において円柱体700を軸に回転させ外周面600を加工した場合、平均同心度を改善することができ、接続損失においても改善することができた。
本発明の精密スリーブの製造方法のフロー図である。 (a)は本発明の精密スリーブの製造方法を説明するためのジルコニアノーマル精密スリーブの断面図であり、(b)はジルコニアの三点精密スリーブの断面図である。 (a)(b)(c)(d)は、それぞれ本発明の精密スリーブの製造方法を説明するための斜視図である。 (a)、(b)は、本発明の精密スリーブの製造方法における焼成工程の一実施形態を示す模式図である。 (a)は本発明の精密スリーブの製造方法により作製された精密スリーブの斜視図であり、(b)は側面図である。また、(c)は、本発明の精密スリーブを用いて光ファイバ同士を接続する一般的な光コネクタの構造断面図である。 (a)光ファイバ同士を接続する一般的な光コネクタの構造断面図であり、(b)精密スリーブの斜視図である。 (a)は、従来の精密スリーブ内周加工に用いるホーニング加工の断面模式図であり、(b)ピン研磨加工の断面模式図である。 従来の精密スリーブの製造方法のフロー図である。
符号の説明
1:精密スリーブ
2:光ファイバ
3:フェルール
4:内周面
4a:突起
5:外周面(円筒体)
6:外周面(円柱体)
7:円筒状成形体
8:ホーン
9:ダイヤモンド砥石
10:固定治具
11:ピン
12:ダイヤモンドパウダ
14:平板
15:穴溝
16:底板
16a:支持体
100:精密スリーブ
200:光ファイバ
300:フェルール
400:内周面
400a:突起
500:外周面(円筒体)
600:外周面(円柱体)
700:円柱体
800:円筒状成形体
1000:円筒状硬化体
1100:ワックス
1200:チャック
1300:ダイヤモンド砥石

Claims (8)

  1. 精密スリーブの円筒状成形体の内周部に円柱体を挿入後、前記円筒状成形体の内周面を加熱収縮により前記円柱体の外周面の少なくとも一部と当接した状態で硬化し、硬化後に円筒状硬化体の外周を研削してから前記円柱体を除去する精密スリーブの製造方法において、室温から前記円筒状成形体の硬化温度までの範囲における平均線膨張係数は、加熱収縮後の前記円筒状成形体よりも前記円柱体のほうが大きく、且つ、前記円柱体の軟化温度が前記円筒状成形体の硬化温度以上であることを特徴とする精密スリーブの製造方法。
  2. 前記円柱体は、ムライト、アルミナ、チタン酸ジルコニウム、スピネル、チタニア、ジルコン酸カルシウム、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムのいずれか1種以上を主成分とするセラミックス焼結体またはステンレス、パラジウム、白金、ジュラルミンのいずれか1種以上の金属よりなり、前記円筒状成形体は、ムライト、アルミナ、チタン酸ジルコニウム、スピネル、チタニア、ジルコン酸カルシウム、ジルコニアの少なくとも一種以上を主成分とする成形体またはポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂のいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の精密スリーブの製造方法。
  3. 前記円柱体の断面の真円度が1μm以下であり、かつ前記円柱体外周面の長手方向の真直度が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の精密スリーブの製造方法。
  4. 前記円筒状成形体に円柱体を挿入した後、円柱体の両端をそれぞれ底板に立設された支持体で支持し、円筒状成形体を底板から離隔した状態で円柱体の外周面に円筒状成形体が当接するように収縮させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の精密スリーブの製造方法。
  5. 前記円筒状成形体に円柱体を挿入した後、円柱体を長手方向に立設した状態でその外周面に円筒状成形体が当接するように収縮させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の精密スリーブの製造方法。
  6. 前記円柱体の一端を平板に開口した穴溝に挿入して支持することを特徴とする請求項1〜5記載の精密スリーブの製造方法。
  7. 前記円柱体を挿入した状態で前記円筒状成形体を硬化した円筒状硬化体において、上記円柱体の両端部を回転可能な保持手段で保持し、回転させて円筒状硬化体の外周面を研磨することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の精密スリーブの製造方法。
  8. 前記円柱体と円筒状硬化体を加熱して両者をかしめた状態で円筒状硬化体の両端にワックスを塗布し、これを冷却固定後に円筒状硬化体の外周を研磨してからワックスを加熱溶融して円柱体と円筒状硬化体を分離することを特徴とする請求項7記載の精密スリーブの製造方法。
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