JP2005121883A - メモリー性を有する光散乱型液晶デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い白色度を有し、駆動電圧が低く、且つ高いメモリー性を有する光散乱型液晶デバイスを提供すること。
【解決手段】 透明電極層を有し少なくとも片方が透明であり、該透明電極層を対向させた状態で一定間隔を保った二枚の基板間に、ポリマーマトリックス及び液晶組成物からなる調光層を挟持させてなり、透明電極層に電圧を印加して調光層に画像を表示させたまま該液晶デバイスを冷却して液晶分子の配向を固定化し、この状態を保持したまま電圧印加を停止することによって調光層へ画像を書き込む操作と、該液晶デバイスに熱を加えて液晶分子の配向を解除することによって調光層の画像を消去する操作とを行う光散乱型液晶デバイスであって、該ポリマーマトリックスが炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有する、メモリー性を有する光散乱型液晶デバイス。
【選択図】 なし


Description

本発明はメモリー性を有する光散乱型液晶デバイスに関する。
現在、情報化社会の進展に伴い、液晶デバイスや情報通信用光学素子の需要がますます高まっている。特に光散乱型の液晶デバイスは、偏光板が不要なことや視野角依存性が少ないことから、広告板や装飾表示板、時計、コンピューターやプロジェクション等の液晶表示素子、デジタルペーパー等の表示メディア、携帯用情報端末、光シャッターなどの光学素子への応用が期待されている。
光散乱型液晶デバイスは、ポリマーマトリックス中に液晶を分散させた調光層を有し、外部光を散乱させて表示を行う。電圧無印加状態では、調光層内の液晶はポリマーマトリックスとの界面において平行又はチルト角を有する配向状態となるため、全体としてランダムな配向状態となり、液晶ドメイン間で屈折率差が生じる。更に、液晶とポリマーマトリックスの間にも屈折率差が存在する。このため調光層は外部光を散乱し、白色表示が得られる。一方、調光層に十分に高い電圧を印加すると、調光層内の液晶は電界方向に一様に配向するため、液晶ドメイン間の屈折率差は消失する。あらかじめポリマーマトリックスの屈折率を配向時の液晶の常光屈折率(n)と一致させておくと、液晶とポリマーマトリックスの間の屈折率差も消失するので、調光層内の屈折率はほぼ同一となり、調光層は透明状態なる。
近年、光散乱型液晶デバイスに、メモリー性を付与する試みがなされている。例えば、末端が自由端である側鎖として、−(CH−OH(nは1〜20の整数)を有する直鎖状高分子の直鎖同士を架橋剤を介して違いに結合してなる網目構造を有し、且つ上記側鎖の長さと架橋剤残基の長さとが、0.25<(側鎖の長さ/架橋剤残基の長さ)<2 を満たし、二周波駆動液晶を分散してなる、メモリー性を有する高分子分散型液晶素子が知られている。(例えば、特許文献1参照 特開2002−72182号公報)画像表示と非表示とを、印加する電圧の周波数によって切り替えることができ、透明性に優れる。
しかし、前記高分子分散型液晶素子は、2周波駆動液晶を用いるので大きな屈折率異方性を有する液晶を用いることが困難であり、白色度に劣る傾向があった。また、液晶の選択範囲が非常に狭いという問題点も有している。さらに駆動する電圧が80Vと高く、また2周波駆動より動作させるため、マトリックス駆動が困難であり、駆動回路等も非常に複雑になるという問題点を有していた。
特開2002−72182号公報
本発明が解決しようとする課題は、高い白色度を有し、駆動電圧が低く、且つ高いメモリー性を有する光散乱型液晶デバイスを提供することにある。
本発明者らは、ポリマーマトリックスの側鎖として長鎖の直鎖アルキル基を有するポリマーマトリックスと液晶組成物とからなる光散乱型液晶デバイスが、上記課題を解決できることを見いだした。
直鎖アルキル基は水酸基を有する側鎖に比べて、良好なメモリー性と低電圧駆動性を得ることができる。
また、使用する液晶が限定されないので、大きな屈折率異方性を有する液晶を使用して特に白色度に優れるデバイスを得ることができる。
更に本発明の光散乱型液晶デバイスは、電圧の周波数によって表示のオンオフを切り替えるのではなく、熱によって記録された情報を消去するので、液晶を駆動するドライバーとして一般的に使用されているドライバーや回路を使用することができる。
即ち本発明は、透明電極層を有し少なくとも片方が透明であり、該透明電極層を対向させた状態で一定間隔を保った二枚の基板間に、ポリマーマトリックス及び液晶組成物からなる調光層を挟持させてなり、透明電極層に電圧を印加して調光層に画像を表示させたまま該液晶デバイスを冷却して液晶分子の配向を固定化し、この状態を保持したまま電圧印加を停止することによって調光層へ画像を書き込む操作と、該液晶デバイスに熱を加えて液晶分子の配向を解除することによって調光層の画像を消去する操作とを行う光散乱型液晶デバイスであって、該ポリマーマトリックスが炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有する、メモリー性を有する光散乱型液晶デバイスを提供する。
本発明の光散乱型液晶デバイスは、高い白色度を有し、電圧を印加する事により散乱状態から透明状態に変える駆動電圧が低く、且つ高いメモリー性を有する。
図1に本発明の光散乱型液晶デバイスの具体的な形態を示す。1及び2は透明基板を示し、3及び4は透明電極層を示す。5は液晶材料とポリマーマトリックスからなる調光層を示す。調光層5は、透明電極層3と透明電極層4との間に挟持されている。
動作方法
本発明の光散乱型液晶デバイスは、電圧を印加して調光層に表示させた画像を、電圧無印加の状態で一定時間保持させることができ、且つ、該画像を熱により容易に消去することができる。具体的な操作方法を1〜3に述べる。
操作1.
本発明の光散乱型液晶デバイスに電圧を印加して調光層に画像を表示する。このときの書き込み温度(T)は、使用する液晶が液晶相を示す温度範囲内である。例えば使用する液晶が40℃で液晶相を示す場合は液晶デバイスを加温する必要があり、液晶が25℃で液晶相を示す場合は特に加温せずに操作することができる。電圧を印加すると、液晶分子は電界方向に配向して、液晶ドメイン間あるいは液晶とポリマーマトリックス間の屈折率差が消失し、調光層内の屈折率はほぼ同一となる。従って電圧を印加した部分は透明状態となり、画像を表示することができる。
操作2.
電圧を印加したまま該光散乱型液晶デバイスを冷却する。メモリー保持温度(T)は、使用する液晶が固相とならない温度で、書き込み温度(T)より10〜50℃低い温度範囲内、即ち温度幅(ΔT=T−T)が10〜50℃の範囲内であることが好ましい。この冷却した状態で電圧印加を停止しても、該光散乱型液晶デバイスは画像を保持することができる。
該光散乱型液晶デバイスを冷却すると直鎖アルキル基の自由度が減少し、直鎖アルキル基の周辺に存在する液晶分子の自由度が束縛され、固定化されると考えられる。液晶分子が直鎖アルキル基に束縛されているので、電圧印加を停止してもその配向は維持され、画像が保持できるものと考えられる。
操作3.
該光散乱型液晶デバイスの冷却を解除し熱を加えると、直鎖アルキル基の自由度は復活し液晶分子の束縛が解かれる。電界方向に配向していた液晶分子は配向が解除されるので、調光層に表示された画像は消去される。
このときのメモリーを消去する温度(メモリー消去温度)は、書き込み温度と同じ温度範囲又はそれよりも高い温度が好ましい。具体的には、メモリー性が発現する最も高い温度より、10℃以上加熱することによりメモリー性は解除される。
直鎖アルキル基の炭素原子数
本発明の光散乱型液晶デバイスのポリマーマトリックスが有する直鎖アルキル基の炭素原子数は、16〜28の範囲内である。炭素原子数が16未満であると、冷却した状態での液晶分子を固定化する力が弱く、前記操作3.の工程、即ち冷却した状態で電圧の印加を停止しても、液晶分子はランダム配向に戻ってしまい、メモリー性を発現することができない。また、炭素原子数が29を越えてしまうと、原料である炭素原子数29以上のアルキル基を有するラジカルモノマーの反応性が下がり、調光層を作成する際、ポリマーマトリックスの網目構造が大きくなりすぎる傾向にあり、白色度の高い液晶デバイスを得ることができない。
加熱 冷却
本発明の光散乱型液晶デバイスを加熱する場合、熱源としては、加熱後、直ちに温度が低下するものが好ましく、且つ、該デバイスが均一に加熱できるものが好ましい。例えば、発熱体の熱容量の小さい、ヒートロール等の面状発熱体を使用することができる。また、光を照射してそのエネルギーを熱に変換する方法を用いてもよい。特に画像を消去する際に使用する熱については、発光時間が極短時間であるフラッシュ光を照射する方法が、非接触であり、加熱後直ちに温度が低下する等の点で好ましい。光源としては、例えば、赤外ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、レーザー等が挙げられる。このときの光照射時間や照射強度は、光源の発光波長、光吸収物資の吸収波長、得られる光散乱型液晶デバイスの熱容量等によって最適値が異なるので、適切な条件を選択すればよい。
一方、該光散乱型液晶デバイスを冷却する際の冷却源は、冷却後、直ちに温度が上昇するものが好ましく、且つ均一に冷却できるものが好ましい。例えば、冷却体の熱容量が小さい、面状電子冷却装置などの面状冷却体等を使用することができる。
調光層 マトリックス
本発明の光散乱型液晶デバイスの調光層は、例えば、片面に透明電極層を有する透明基板1と、片面に透明電極層を有する透明基板2とを、電極層を有する面を、一定の間隔を保持して対向させた液晶表示セル内に、液晶材料と炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有するラジカル重合性化合物を含有するラジカル重合性組成物の相溶物を注入し、液晶材料を等方性液体状態に保持した状態で、ラジカル重合性組成物を硬化させることにより得ることができる。このとき、ラジカル重合性化合物の総重量に対する、炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基の原子量の総和の比が0.5〜0.75の範囲内となるように、組成比を調整するのが好ましい。前記直鎖アルキル基の原子量の総和の比が0.5未満であると、メモリーの保持時間が小さくなるおそれがあり、総和の比が0.75以上であると、画像が上手く消去できないことがある。中でも、0.5〜0.65の範囲が好ましく、0.5〜0.65の範囲が最も好ましい。
ラジカル重合性組成物
炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基が化学的に結合しているポリマーマトリックスは、炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有するラジカル重合性化合物を含有するラジカル重合性組成物の重合体からなる。炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、ステアリルアクリレート、エイコシルアクリレート、テトラコシルアクリレート等の炭素原子数16〜28のアルキル基を有する単官能アクリレート、一般式(1)で表される多官能アクリレートが挙げられる。中でも、一般式(1)で表される多官能アクリレートは、未反応化合物の発生率が少なく、得られる光散乱型液晶デバイスの電気光学特性の変化が小さくなり、信頼性が向上するためより好ましい。
Figure 2005121883

一般式(1)
式中、Xは−O−、−O−CH−、−O−CH−CH−CO−O−CH−、−O−CHCH−CO−O−を表す。中でも−O−CH−が好ましい。Rは、置換基を有していてもよく、炭素原子数2〜28のアルキレン基、炭素原子数2〜28のアルキルトリイル基、炭素原子数2〜28のアルキルテトライル基(但し、これらの基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)、アリーレン基、シクロアルキレン基、2個以上の芳香環又脂環が、単結合又はアルキレン基(但し、アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)で連結された基を表す。中でも、炭素原子数4〜22のアルキレン基が好ましい。Rの具体的な例としては、ブチレン基、ヘキシレン基、7,12−ジメチルオクタデシレン基、7−エチルヘキサデシレン基、2,2’−ジメチル−プロピレン基、繰り返し数が2〜10のポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリオキシテトラメチレン基、シクロヘキシレン基、6−フェニルドデシレン基、ビフェニレンジイル基等が挙げられる。
は、ヘキサデカニル基、オクタデカニル基、イコシル基、ドコシル基、オクタコシル基等の炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を表す。R、Rは、各々独立して、水素又はメチル基を表し、Xはメチレン基、エーテル結合又はエステル結合を表し、Xは、単結合、メチレン基、エーテル結合又はエステル結合を表し、mは2〜4の整数を表し、a、bは、0又は1を表す。Rは、中でも、炭素原子数16〜22の直鎖アルキル基が好ましく、Xはエステル結合が好ましく、Xは、エーテル結合が好ましい。
前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物は、丹羽らによる「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett)30巻、4985頁、1989年」に開示されているような公知の方法で合成することができる。具体的には、エポキシ基を複数有する化合物と、エポキシ基と反応し得る活性水素を有するラジカル重合性化合物とを反応させ、水酸基を有するラジカル重合性化合物を合成し、次に、Rで表される基、及び水酸基と反応し得る基を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。
一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性組成物全量に対して60〜95%含有することが好ましく、70〜90%含有することが最も好ましい。この範囲であると未反応化合物の発生量が少なく、製作後の電気光学特性の変化を小さくすることができる。
その他、本発明の効果を損なわない範囲で、公知慣用のラジカル重合性化合物を含有することができる。
ラジカル重合性化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジマレイミド等が挙げられる。これらのラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性組成物全量に対して5〜40%含有することが好ましく、10〜30%が最も好ましい。
前記ラジカル重合性組成物は、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−イソプロピルチオキサントン等の光重合開始剤や、過酸化ベンゾイル、N,N’−アゾビスイソブチロニトリルなどの熱重合開始剤を添加することが好ましい。これらの重合開始剤の添加率はラジカル重合性組成物に対し0.01〜10%が好ましく、1〜5%がより好ましい。
液晶組成物
本発明で使用する液晶組成物は、通常の液晶デバイス分野で液晶相と認識される相を示す組成物であり、中でも、液晶相としてネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、カイラルネマチック液晶、カイラルスメクチック液晶を発現するものが好ましい。そのような液晶相を示す組成物としては、例えば、安息香酸エステル系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、フェニルシクロヘキサン酸系、ピリミジン系、ピリジン系、ジオキサン系、シクロヘキサンシクロヘキサンエステル系、トラン系、アルケニル系、フルオロ系、シアノ系、ナフタレン系等の液晶化合物からなる組成物や、該液晶化合物を含有する組成物が挙げられ、例えば特開平08−053674号公報や特開平08−188775号公報及び特開平09−059630号公報に記載の液晶組成物等が挙げられる。特に高い白色度を得るためには、屈折率異方性の大きい液晶組成物が好ましく、トラン系のネマチック液晶化合物を含有する組成物がより好ましい。トラン系のネマチック液晶化合物の例として、例えば、下記一般式(2)で表される化合物があげられる。
Figure 2005121883
(2)
(式中、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、又はアルケニル基を表し、この基中に存在する1個の−CH−あるいは隣接していない−CH−は−O−で置き換えられてもよく、Zは、炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、−F、−Cl、−CN、−CF、−OCFH、又は−OCFを表す。AおよびAは各々独立して、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表し(但し該基は1〜2個のフッ素を有してもよい)、XおよびXは各々独立して、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、又は−CH=CH−を表す。Y〜Yは各々独立して水素原子、フッ素原子、又は−OCHを表し、o+pは0〜2の整数を表す。)
前記液晶組成物と前記ラジカル重合性組成物の混合比は、液晶組成物:ラジカル重合性組成物が5.5:4.5〜9:1の範囲にあることが好ましく、6.5:3.5〜8:2の範囲が最も好ましい。液晶組成物の比率が高いと、得られるポリマーマトリックスの網目の大きさが大きくなりすぎ、逆に液晶組成物の比率が低いと網目の大きさが小さくなりすぎてしまい、光がうまく散乱せず、駆動電圧も極端に上昇するおそれがある。
また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜、添加しても良い。
光源
ラジカル重合性組成物を硬化させるには、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線、可視光線、マイクロ波、高周波等のエネルギー線を利用することができる。中でも紫外線は、液晶組成物とラジカル重合性組成物の相溶物を等方性液体状態に保持した状態で、瞬間的にラジカル重合性組成物の重合を進行させ、調光層内の網目の大きさを均一な大きさにできるので好ましい。具体的には、光照射の光源として高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いる。紫外線照射量としては、10〜60000J/mの範囲が好ましく、100〜3000J/mの範囲が最も好ましい。また強度は、1〜1000W/mの範囲が好ましく、5〜600W/mの範囲が最も好ましい。この際、ラジカル重合性組成物には前記光重合開始剤を添加しておくことが好ましい。紫外線照射後、液晶組成物が変質しない範囲で加熱重合をすることも可能であり、その際は、前記熱重合開始剤を添加しておくことが好ましい。
本発明に使用する透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムチンオキシド(ITO)を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングすることにより得られる。透明基板としては、その他、ほうけい酸ガラス等のガラス板、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム等のプラスチックフィルムなどを使用することもできる。
また、該基板上には、配向膜やカラーフィルターを配置することもできる。配向膜としては、例えば、ポリイミド配向膜、光配向膜等が使用できる。配向膜の形成方法としては、例えばポリイミド配向膜の場合、ポリイミド樹脂組成物を該透明基板上に塗布し、180℃以上の温度で熱硬化させ、更に綿布やレーヨン布でラビング処理することで得ることができる。
片面に透明電極層を有する透明基板1と、片面に透明電極層を有する透明基板2との間隔を制御するために、2枚の基板間には、間隔保持用のスペーサーを介在させてもよい。スペーサーは調光層材料に混合してもよいし、透明基板1又は2に塗布しても良い。スペーサーとしては、液晶デバイスに通常使用されているような、マイラー、アルミナ、ロッドタイプのガラスファイバー、ガラスビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。
また、必要に応じて、紫外線吸収層、反射防止層、光吸収層を設けることもできる。紫外線吸収層は、駆動電圧の変化や液晶組成物の劣化を防止するために使用し、堅固な材料のガラスや、柔軟性を有する材料の高分子フィルムを使用することができる。例えば、富士写真フィルム社製のSC38,SC39,SC40,SC41、HOYA社製のL8、L39、L40、オーエムジー社製のL41等が挙げられる。紫外線吸収層は、透明基板1の透明電極層とは反対側の面に貼り付ければよい。
反射防止層は、外部光のぎらつきや表示画像のコントラストをおさえ、画像の見づらさを低減するために使用し、屈折率の異なる無機酸化物の多層コート膜やフッ素系化合物等の低屈折材料のコート膜等からなる干渉膜を使用することができる。これらは、例えば、透明基板1に貼り付けた紫外線吸収層の上に直接スパッタリング等で形成することができる。
光吸収層は、コントラストをあげるために使用し、黒色板、カラー着色板、カラー着色フィルム板等、あるいは、表面に光吸収剤やカラー塗料を塗布又は印刷したガラス、プラスチック、金属基板等が使用できる。光吸収層の色は黒色に限らず、目的に応じて選択することができる。これらの光吸収層は、例えば、透明基板2の透明電極層とは反対側の面に、スパッタリング方式、蒸着方式あるいは印刷方式等で形成できる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「%」及び「部」は各々「質量%」及び「質量部」を表わす。
(実施例1)
ITO電極付きガラス基板2枚に、積水ケミカル社製のスペーサー「ミクロパールSP−211」を散布し、該ガラス基板の周囲に三井化学社製のシール剤[XN−5A]を塗布し、電極層を有する面を対向させ、張り合わせた後、120℃で2時間加熱してシール剤を硬化させ、ガラス基板間の間隔が約12μmのセルを作成した。該セルに、大日本インキ化学工業社製のトラン骨格を有する液晶化合物を含有する液晶組成物「PAL746」70%、下記式(3)で表される、炭素原子数16のアルキル基を有するラジカル重合性化合物(大日本インキ化学工業合成品)29.4%、
Figure 2005121883
(3)
及び東亞合成社製の光重合開始剤「C101」0.6%からなる組成物を注入し、セル全体を約25℃に保持した。フュージョン社製のランプを使用し、400W/mの紫外線を旭テクノグラス社製のUVカットフィルター「UV35」を通して60秒間照射し、調光層を形成して光散乱型液晶デバイスAを得た。式(3)のラジカル重合性化合物の総重量に対するアルキル基の原子量の総和の比は、0.51であった。
光路中に光を入れない状態を100%とした時、光散乱型液晶デバイスAの光透過率は3.3%であった。周波数1KHZの矩形波、約±15V印加した時の光透過率は86.3%であった。コントラストは26.2であった。
ヒューレットパッカード社製のインクジェットプリンターを用い、ヒューレットパッカード社製のグロッシーペーパー(GLOSSYPAPER)に黒を印刷し、光吸収層を作成した。この光吸収層を光散乱型液晶デバイスAの観察者側とは反対側のガラス基板面にスペーサーを分散した後、ガラス基板と該光吸収層とを対向させて張りつけ、ガラス基板と光吸収層との間隔が約50μmの光散乱型液晶デバイスBを得た。
光散乱型液晶デバイスBの一部分に、25℃で、周波数1KHZの矩形波約±15Vを印加し、液晶分子を配向させることで調光層に画像を表示させた。
次に液晶デバイスを面状冷却素子により0℃に冷却した後、電圧の印加を解除した。電圧を印加した部分は十分な透明性が得られ、視覚的には光吸収層の黒が観察された。電圧を印加しない部分は、光散乱状態で視覚的には白色が観察された。この状態で7日間放置したが、目視での変化は見られなかった。
次に電圧を印加しない状態で、面状冷却素子による冷却を解除すると、約15℃でメモリー性は解除され、均一な光散乱状態が得られ、視覚的には白色が観察された。
(実施例2)
下記式(4)で表される炭素原子数25のアルキル基を有するラジカル重合性化合物(大日本インキ化学工業合成品)29.4%、
Figure 2005121883
(4)
を用いる以外はすべて実施例1と同様にして光散乱型液晶デバイスCを得た。式(4)のラジカル重合性化合物の総重量に対するアルキル基の原子量の総和の比は、0.51であった。光路中に光を入れない状態を100%とした時、光散乱型液晶デバイスCの光透過率は3.8%であった。周波数1KHZの矩形波、約±18V印加した時の光透過率は87.2%であった。コントラストは22.9であった。
さらに富士写真フィルム社製の紫外線吸収層「SC39」、旭硝子社製の反射防止層、「アークトップUR―21CRNF」をお互い張り合わせた膜を、光散乱型液晶デバイスCの観察者側のガラス基板面に紫外線吸収層がくるように張りつけ、光散乱型液晶デバイスDを得た。
光散乱型液晶デバイスDの一部分に、30℃で周波数1KHZの矩形波、約±18Vを印加し、液晶分子を配向させることで調光層に画像を表示させた。
次に液晶デバイスを面状冷却素子により0℃に冷却した後、電圧の印加を解除した。電圧を印加した部分は十分な透明性が得られ、視覚的には光吸収層の黒が観察された。電圧を印加しない部分は、光散乱状態で視覚的には白色が観察された。この状態で7日間放置したが目視での変化は見られなかった。次に電圧を印加しない状態で、面状冷却素子による冷却を解除すると、20℃でメモリー性は解除され、均一な光散乱状態が得られ、視覚的には白色が観察された。
(実施例3)
式(5)で表される炭素原子数25のアルキル基を有するラジカル重合性化合物(大日本インキ化学工業合成品)29.4%、
Figure 2005121883

(5)
を用いる以外はすべて実施例1と同様にして光散乱型液晶デバイスEを得た。式(5)のラジカル重合性化合物の総重量に対する、アルキル基の原子量の総和の比は0.63であった。光路中に光を入れない状態を100%とした時、光散乱型液晶デバイスEの光透過率は4.6%であった。周波数1KHZの矩形波、約±18V印加した時の光透過率は87.7%であった。コントラストは、19.1であった。
さらに富士写真フィルム社製の紫外線吸収層「SC39」、旭硝子社製の反射防止層、「アークトップUR―21CRNF」をお互い張り合わせた膜を、光散乱型液晶デバイスEの観察者側のガラス基板面に紫外線吸収層がくるように張りつけ、光散乱型液晶デバイスFを得た。
光散乱型液晶デバイスFを面状発熱体で50℃に加熱しながら、一部分に周波数1KHZの矩形波、約±18Vを印加した後、加熱を解除し、25℃で電圧の印加を解除した。電圧を印加した部分は十分な透明性が得られ、視覚的には光吸収層の黒が観察され、電圧を印加しない部分は光散乱状態で視覚的には白色が観察され、メモリー性が確認された。この状態で7日間放置したが、目視での変化は見られなかった。
次に電圧を印加しない状態で、光散乱型液晶デバイスFを面状発熱体で50℃に加熱し加熱を解除すると、メモリー性は解除され、均一な光散乱状態が得られ、視覚的には白色が観察された。
(比較例1)
式(6)で表される炭素原子数10のアルキル基を有するラジカル重合性化合物(大日本インキ化学工業合成品)29.4%、
Figure 2005121883
(6)
を用いる以外はすべて実施例1と同様にして光散乱型液晶デバイスGを得た。式(6)のラジカル重合性化合物の総重量に対する、アルキル基の原子量の総和の比は、0.4であった。
光路中に光を入れない状態を100%とした時、光散乱型液晶デバイスGの光透過率は2.3%であった。周波数1KHZの矩形波、約±18V印加した時の光透過率は86.7%であった。コントラストは37.7であった。
光散乱型液晶デバイスGの一部分に25℃で周波数1KHZの矩形波、約±18Vを印加し、液晶分子を配向させることで調光層に画像を表示させた。次に液晶デバイスを面状冷却素子により0℃に冷却しながら、電圧の印加を解除した。電圧を印加した部分は光散乱状態になり、メモリー性は確認されなかった。
(比較例2)
式(7)で表される炭素原子数29のアルキル基を有するラジカル重合性化合物(大日本インキ化学工業合成品)29.4%、
Figure 2005121883

(7)
を用いる以外はすべて実施例1と同様にして光散乱型液晶デバイスHを得た。式(7)のラジカル重合性化合物の総重量に対する、アルキル基の原子量の総和の比は、0.66であった。
光路中に光を入れない状態を100%とした時、光散乱型液晶デバイスHの光透過率は11.3%であった。周波数1KHZの矩形波、約±18V印加した時の光透過率は84.1%であった。コントラストは7.4であった。光散乱型液晶デバイスHは、十分な光散乱状態が得られず、視覚的には白色の低いものであった。
本発明のメモリー性を有する光散乱型液晶デバイスは、紙に匹敵する白さの表示が得られるので、メモリー性を有するデジタルペーパーや電子新聞、電子ブック等のペーパーライクディスプレイ、低消費電力のコンピューター端末、広告板、時計、電卓等の表示装置や、その他明るい画面を必要とする表示装置として利用することができる。
本発明の光散乱型液晶デバイスの代表的な構造の模式図である。
符号の説明
1:透明基板
2:透明基板
3:透明電極層
4:透明電極層
5:調光層


Claims (5)

  1. 透明電極層を有し少なくとも片方が透明であり、該透明電極層を対向させた状態で一定間隔を保った二枚の基板間に、ポリマーマトリックス及び液晶組成物からなる調光層を挟持させてなり、透明電極層に電圧を印加して調光層に画像を表示させたまま該液晶デバイスを冷却して液晶分子の配向を固定化し、この状態を保持したまま電圧印加を停止することによって調光層へ画像を書き込む操作と、該液晶デバイスに熱を加えて液晶分子の配向を解除することによって調光層の画像を消去する操作とを行う光散乱型液晶デバイスであって、該ポリマーマトリックスが炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有することを特徴とする、メモリー性を有する光散乱型液晶デバイス。
  2. 透明電極層に電圧を印加して液晶分子を配向させるときの温度(T)と、電圧印加を停止した後も液晶分子が前記配向した状態のメモリー性を有するときの温度(T)の温度幅(ΔT=T−T)が、10〜50℃の範囲である、請求項1に記載のメモリー性を有する光散乱型液晶デバイス。
  3. 前記ポリマーマトリックスが、炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有するラジカル重合性化合物を含有するラジカル重合性組成物の重合体からなり、且つ、該ラジカル重合性化合物の総重量に対する、該アルキル基の原子量の総和の比が0.5〜0.75の範囲内である、請求項1に記載のメモリー性を有する光散乱型液晶デバイス。
  4. 炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を有するラジカル重合性化合物が、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物である請求項3に記載のメモリー性を有する光散乱型液晶デバイス。
    Figure 2005121883

    一般式(1)
    (式中、Xは−O−、−O−CH−、−O−CH−CH−CO−O−CH−、−O−CHCH−CO−O−を表し、Rは、置換基を有していてもよく、炭素原子数2〜28のアルキレン基、炭素原子数2〜28のアルキルトリイル基、炭素原子数2〜28のアルキルテトライル基(但し、これらの基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)、アリーレン基、シクロアルキレン基、2個以上の芳香環又は脂環が、単結合又はアルキレン基(但し、アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)で連結された基を表す。Rは、炭素原子数16〜28の直鎖アルキル基を表し、R、Rは、各々独立して水素又はメチル基を表し、Xはメチレン基、エーテル結合又はエステル結合を表し、Xは、単結合、メチレン基、エーテル結合又はエステル結合を表し、mは2〜4の整数を表し、a、bは、0又は1を表す。)
  5. 前記ポリマーマトリックスが、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を60〜95%含有するラジカル重合性組成物の重合体からなる、請求項3又は4に記載のメモリー性を有する光散乱型液晶デバイス。
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