JP3613357B2 - 光散乱型液晶デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大面積になし得る液晶デバイスの製造方法に関し、更に詳しくは、光の遮断、透過を電気的又は熱的に操作し得るものであって、文字や図形を表示し、高速応答を以って電気的に表示を切り換えることによって、広告板、案内板、装飾表示板等の表示体、OA器材などのディスプレイ等のハイインフォメーション表示体として利用される液晶デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
偏光板や配向処理を要さず、明るくコントラストの良い、大型で廉価な液晶デバイスが、特表昭58−501631号公報、米国特許第4435047号明細書に開示されている。この液晶デバイスは、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール等のカプセル化物質を用いて液晶をカプセル化し、ポリマー中に液晶滴を分散させ、そのポリマーをフィルム化して成るものである。ポリビニルアルコールでカプセル化された液晶分子は、それが薄層中で正の誘電異方性を有するものであれば、電界の存在下でその液晶分子が電界の方向に配列し、液晶の屈折率n0 とポリマーの屈折率np が等しいときには、透明性を発現する。電界が除かれると、液晶はランダム配列に戻り、液晶滴の屈折率n0 よりずれるため、液晶滴は、その境界面で光を散乱し、光の透過を遮断するので、薄層体は白濁する。
【0003】
このように、液晶滴を分散包蔵したポリマーを薄膜としている技術は、上記のもの以外にもいくつか知られており、例えば、特表昭61−502128号公報には、液晶エポキシ樹脂中に分散したもの、特開昭62−2231号公報には、特殊な紫外線硬化ポリマー中に液晶が分散したもの、特開昭63−271233号公報には、光硬化性ビニル系化合物と液晶との溶解物において、上記光硬化性ビニル系化合物の光硬化に伴う液晶物質の相分離を利用し調光層を形成させた技術が開示されている。
【0004】
また、液晶デバイスの実用化に要求される重要な特性である低電圧駆動特性、高コントラストを可能にするために、特開平1−198725号公報には、液晶材料の連続層中にポリマーを三次元網目状構造に形成せしめ、液晶デバイスの低電圧駆動を可能にした技術が開示されている。
【0005】
これら液晶材料と透明性高分子物質からなる調光層を有する液晶デバイスは、調光層の特性及び形状変化による品質の低下を防止するために、液晶デバイスの周囲をシールする必要がある。シール剤としては、熱硬化型のエポキシ樹脂等が一般的に用いられているが、紫外線硬化型の樹脂も提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液晶材料の連続層中に三次元網目構造を有するポリマーを形成して成る調光層を有する液晶デバイスをはじめとして、液晶と透明性高分子物質とから成る調光層を有する液晶デバイスにおいては、加熱冷却等の熱変化によりシール剤付近の調光層のポリマー部分にクラックが発生し、表示特性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、熱変化によっても液晶とポリマーからなる調光層にクラックが発生しない液晶デバイスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は上記課題を解決するために、電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板を電極層を内側にして一定の間隔で対向させ、2枚の基板の周縁部をシール剤を用いて貼り合わせてなるセルと、これらの基板とシール剤とによって形成された空間に調光層を有し、該調光層が液晶材料及び透明性高分子物質を含有する液晶デバイスにおいて、シール剤が、室温から調光層中の液晶材料の液晶相−等方性液体相転移温度よりも30度高温側の範囲で、シール剤の硬化物の下式(1)で表わされる線膨張率Lが0〜0.5%の範囲にある材料である液晶デバイスを提供する。
【0010】
【数2】
【0011】
(式中、L1 はシール剤の硬化物から成る厚さ50μm、幅5mm、長さ20mmのフィルムの25℃における長さを表わし、L2 は同じ材料を長さ方向に0.1g重の荷重で引っ張り、25℃から2℃/分の昇温速度で温度上昇させた時に各温度で測定した長さを表わす。)
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する基板は、堅固な材料、例えば、ガラス、金属等であっても良く、柔軟性を有する材料、例えば、プラスチックフィルムの如きものであっても良い。そして、基板は2枚が対向して適当な間隔を隔てて得るものであり、その少なくとも一方は透明性を有し、その2枚の間に挟持される液晶層及び透明性高分子物質を有する層からなる調光層を外界から視覚させるものでなければならない。但し、完全な透明性を必須とするものではない。
【0013】
もし、この液晶デバイスが、デバイスの一方の側から他方の側へ通過する光に対して作用させるために使用される場合は、共に適宜な透明性が与えられる。この基板には、目的に応じて透明、不透明の適宜な電極が、その前面又は部分的に配置されても良い。
【0014】
また、2枚の基板間には、通常、周知の液晶デバイスと同様、間隔保持用のスペーサーを介在させるのが望ましい。
【0015】
スペーサーとしては、例えば、マイラー、アルミナ、ロッドタイプのガラスファイバー、ガラスビーズ、ポリマービーズ等種々の液晶セル用のものを用いることができる。
【0016】
さらに2枚の基板間には間隔保持用のスペーサーの他、調光層を保護する為、周縁部にシール剤によりシールを施す。この際、シール剤に前記スペーサーを混入する方法を採用することもできる。
【0017】
シール剤は、室温から調光層中の液晶材料の液晶相−等方性液体相転移温度よりも30度高温側の範囲で、シール剤の硬化物の上式(1)で表わされる線膨張率Lが0〜0.5%の範囲にある材料を使用する。
【0018】
線膨張率Lの測定には、シール剤の硬化物から成る厚さ50μm、幅5mm、長さ20mmのフィルムを用意し、25℃における長さL1 を精密に測定する。次に、同フィルムを長さ方向に0.1g重の荷重で引っ張り、25℃から2℃/分の昇温速度で温度上昇させた時に各温度で測定した長さL2 を測定する。L1 及び各測定温度におけるL2 の値から上式(1)によって線膨張率Lを得る。本発明において、線膨張率の測定装置として、セイコー電子工業社製の「TMA/SS120C」を用いた。
【0019】
本発明で用いる重合性シール剤は、高分子形成性オリゴマー、プレポリマーを含有する重合性組成物であり、熱硬化型樹脂であるエポキシ樹脂等を用いることもできる。また、製造時間の短縮化等のため、紫外線硬化型樹脂又は熱硬化・紫外線硬化併用型樹脂等を用いることも有効である。
【0020】
これら硬化されたシール剤は、熱変化により膨張又は収縮をする。特に高温から冷却する時のシール剤の熱変化による膨張、収縮が大きい場合には、調光層内の透明性高分子物質が破損されクラックが発生することがある。
【0021】
このシール剤の熱膨張・収縮による調光層内の透明性高分子物質の破損をなくすためには、シール剤の硬化物の上式(1)で表わされる線膨張率が0〜0.5%の範囲にあるシール剤を用いることが効果的である。シール剤の線膨張率が0〜0.5%である条件を満たす温度範囲は、液晶デバイスの使用温度範囲を満たすことは勿論のこと、信頼性の面から、使用温度より高い温度でも満たされていることが好ましい。
【0022】
液晶デバイスの使用温度範囲は、調光層中の液晶材料の液晶相−等方性液体相転移温度、液晶相−結晶相転移温度によって制限され、高温側は液晶相−等方性液体相転移温度に依存する。シール剤の線膨張率が0〜0.5%である条件を満たす温度は、調光層中の液晶材料の液晶相−等方性液体相転移温度より30度高い温度まで満たすことが好ましく、さらに高い温度でも満たされていることがより好ましい。このようなシール剤を用いることにより、温度変化によって調光層内の透明性高分子物質が破損しクラックが発生することがない液晶デバイスを作製することができる。
【0023】
本発明で使用可能なシール剤の市販品としては、使用する液晶材料の液晶相−等方性液体相転移温度によって異なるが、例えば、スリーボンド社製の紫外線及び熱併用硬化型シール剤「3025B」、スリーボンド社製の紫外線硬化型シール剤「3052C」、「30Y−184K2」、三井東圧化学社製の熱硬化型シール剤「XN−5A」等が挙げられる。
【0024】
この2枚の基板とシール剤により形成される空間に、(1)液晶材料、(2)重合性組成物、(3)光重合開始剤及び(4)任意成分として、連鎖移動剤、光増感剤、染料、架橋剤等を含有する調光層形成材料を介在させ、この調光層形成材料に活性光線を照射して前記重合性組成物を重合させることにより、液晶材料及び透明性高分子物質を含有する調光層を形成する。この調光層は、液晶材料を分散させた構造を有する透明性高分子物質を形成して成るものであっても、液晶材料の連続層中に三次元網目構造を有する透明性高分子物質を形成して成るものであっても良い。
【0025】
本発明で使用する液晶材料は、単一の液晶性化合物であることを要しないのは勿論で、2種以上の液晶化合物や液晶化合物以外の物質も含んだ混合物であっても良く、通常この技術分野で液晶材料として認識されるものであれば良く、そのうちの正の誘電異方性を有するものが好ましい。用いる液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶が好ましく、ネマチック液晶が特に好ましい。その性能を改善するために、コレステリック液晶、カイラルネマチック液晶、カイラルスメクチック液晶等やカイラル化合物が適宜含まれていてもよい。
【0026】
本発明で使用する液晶材料は、以下に示した化合物群から選ばれる1種類以上の化合物から成る配合組成物が好ましく、液晶材料の特性、即ち、抵抗値、等方性液体と液晶の相転移温度、融点、粘度、屈折率異方性(Δn)、誘電率異方性(Δε)及び重合性組成物等との溶解性等を改善することを目的として適宜選択、配合して用いることができる。
【0027】
液晶材料としては、安息香酸エステル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ピリジン系、ジオキサン系、シクロヘキサンシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、トラン系、アルケニル系等の各種液晶化合物が使用される。
【0028】
液晶材料の具体例としては、4−置換安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換ビフェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−シクロヘキシルエステル、4−置換4’−置換ビフェニル、4−置換フェニル4’−置換シクロヘキサン、4−置換4”−置換ターフェニル、4−置換ビフェニル4’−置換シクロヘキサン、2−(4−置換フェニル)5−置換ピリジン、4−置換(4−置換フェニルエチニル)フェニル等を挙げることができる。
【0029】
調光層形成材料中の液晶材料の含有率は、60〜98重量%の範囲が好ましく、70〜90重量%の範囲が特に好ましい。
【0030】
前記調光層中に形成される透明性高分子物質は、その中に液晶材料を分散する構造のものでもよいが、三次元網目状構造を有するものがより好ましい。
【0031】
この透明性高分子物質の三次元網目状構造には液晶材料が充填され、かつ、液晶材料が連続層を形成することが好ましく、液晶材料の無秩序な状態を形成することにより光学境界面を形成し、光の散乱を発現させる。
【0032】
この透明性高分子物質は、堅固なものに限らず、目的に応じ得る限り可撓性、柔軟性、弾性を有するものであっても良い。
【0033】
本発明で使用する透明性高分子物質を形成する重合性組成物は、重合体形成モノマー、オリゴマーであって、これらのモノマー及びオリゴマーは2種類以上併用することもできる。
【0034】
重合体形成モノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン;置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、アルリル、メタリル、グリシジル、2−ヒドリキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチルの如き基を有するアクリレート、メタクリレート又はフマレート;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールトリメチロールプロパン、グリセリン及びペンタエリスリトール等のモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、酪酸ビニル又は安息香酸ビニル、アクリロニトリル、セチルビニルエーテル、リモネン、シクロヘキセン、ジアリルフタレート、2−、3−又は4−ビニルピリジン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド又はN−ヒドロキシエチルメタクリルアミド及びそれらのアルキルエーテル化合物;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに2モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート1モルとフェニルイソシアネート若しくはn−ブチルイソシアネート1モルとの反応生成物;ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;トリスー(ヒドロキシエチル)ーイソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート;トリスー(ヒドロキシエチル)ーリン酸のポリ(メタ)アクリレート;ジー(ヒドロキシエチル)ージシクロペンタジエンのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート;ピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート;直鎖脂肪族ジアクリレート;ポリオレフィン変性ネオペンチルグリコールジアクリレート等を挙げることができる。
【0035】
重合体形成オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等、各種アクリレートオリゴマーを用いることができる。
【0036】
重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ガイギー社製「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(チバ・ガイギー社製「イルガキュア907」)、ベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製「イルガキュア651」)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)、とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワードプレキンソツプ社製「カンタキュアーITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)等が挙げられる。
【0037】
重合開始剤の使用割合は、重合性組成物総量の0.1〜10.0重量%範囲が好ましい。
【0038】
重合用エネルギーとしては、重合性組成物が適切に重合できるものであれば良く、例えば、紫外線、可視光線、電子線等の放射線や熱等が挙げられる。
【0039】
特に、紫外線による方法は好適である。また、調光層形成材料の等方性液体状態を保持しながら紫外線を照射することは、均一な調光層を形成する上で好ましい。
【0040】
液晶材料中で重合性組成物を重合させるには、一定の強さ以上の光強度及び照射量を必要とするが、それは重合性組成物の反応性及び光重合開始剤の種類、濃度によって左右され、適切な光強度の選択により三次元網目状構造の形成、及びその網目の大きさを均一にすることができる。
【0041】
更に、時間的、平面的に均一に照射することは、基板間に介在する重合性組成物に瞬間的に強い光を照射して重合を進行させ、これによって網目の大きさを均一にする上で効果的である。即ち、適切な強度でパルス上に紫外線を照射することにより、均一な三次元網目状構造を有する透明性高分子物質を液晶材料の連続層中に形成することができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
ガラス基板(EHC社製)の周縁部にディスペンサーを用いて紫外線及び熱併用硬化型シール剤「3025B」(スリーボンド社製)を塗布し、11μmのスペーサーを介してもう一方のガラス基板と貼り合わせた後、40mW/cm2 の紫外線を30秒間照射し、さらに90℃で1時間加熱してシール剤を硬化させて空セルを得た。
【0044】
得られたセル内に下記調光層形成材料Aを注入した後、40mW/cm2 の紫外線を60秒間照射して、重合性化合物を硬化させて液晶材料と透明性高分子物質からなる調光層を有する液晶デバイスを得た。
【0045】
このようにして得た液晶デバイスを、60℃、80℃、100℃、120℃及び150℃にそれぞれ加熱し、再び室温に戻したところ、調光層内にクラックの発生が認められなかった。
【0046】
また、このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察した結果、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0047】
(調光層形成材料Aの組成)
【0048】
(液晶組成物Cの組成)
【化1】
【0049】
液晶組成物Cの液晶相−等方性液体相転移温度は、90.3℃であった。
【0050】
使用した紫外線及び熱併用硬化型シール剤「3025B」の硬化物を厚さ50μm、幅5mm、長さ20mmのフィルムに加工し、25℃における長さL1 を測定し、同じ材料を長さ方向に0.1g重の荷重で引っ張り、25℃から2℃/分の昇温速度で温度上昇させ、60℃、80℃、100℃、120℃、150℃の各温度における長さL2 を測定することによって、各温度における線膨張率を求めた結果、60℃で0.1895%、80℃で0.3130%、100℃で0.4565%、120℃で0.4780%、150℃で0.4780%であった。
【0051】
(実施例2)
ガラス基板(EHC社製)の周縁部にディスペンサーを用いて紫外線硬化型シール剤「3052C」(スリーボンド社製)を塗布し、11μmのスペーサーを介してもう一方のガラス基板と貼り合わせた後、40mW/cm2 の紫外線を60秒間照射してシール剤を硬化させ手、空セルを得た。
【0052】
得られたセル内に上記調光層形成材料Aを注入した後、40mW/cm2 の紫外線を60秒間照射して、重合性化合物を硬化させて液晶材料と透明性高分子物質からなる調光層を有する液晶デバイスを得た。
【0053】
このようにして得た液晶デバイスを、60℃、80℃、100℃、120℃及び150℃にそれぞれ加熱し、再び室温に戻したところ、調光層内にクラックの発生が認められなかった。
【0054】
また、このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察した結果、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0055】
使用した紫外線硬化型シール剤「3025C」について、実施例1と同様にして線膨張率を求めた結果、60℃で0.4156%、80℃で0.4116%、100℃で0.4139%、120℃で0.4154%、150℃で0.4161%であった。
【0056】
(実施例3)
ガラス基板(EHC社製)の周縁部にディスペンサーを用いて熱硬化型シール剤「XN−5A」(三井東圧化学社製)を塗布し、80℃で30分加熱して溶媒を除いた後、11μmのスペーサーを介してもう一方のガラス基板と貼り合わせた後、150℃で90分加熱してシール剤を硬化させて空セルを得た。
【0057】
得られたセル内に下記調光層形成材料Bを注入した後、40mW/cm2 の紫外線を60秒間照射して、重合性化合物を硬化させて液晶材料と透明性高分子物質からなる調光層を有する液晶デバイスを得た。
【0058】
このようにして得た液晶デバイスを、60℃、80℃及び100℃にそれぞれ加熱し、再び室温に戻したところ、調光層内にクラックの発生が認められなかった。
【0059】
また、このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察した結果、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0060】
(調光層形成材料Bの組成)
【0061】
(液晶組成物Dの組成)
【化2】
【0062】
液晶組成物Dの液晶相−等方性液体相転移温度は、59.5℃であった。
【0063】
使用した熱硬化型シール剤「XN−5A」について、実施例1と同様にして線膨張率を求めた結果、60℃で0.1165%、80℃で0.2225%、100℃で0.3925%であった。
【0064】
(実施例4)
ガラス基板(EHC社製)の周縁部にディスペンサーを用いて紫外線硬化型シール剤「30Y−184K2」(スリーボンド製)を塗布し、11μmのスペーサーを介してもう一方のガラス基板と貼り合わせた後、100mW/cm2 の紫外線を40秒間照射してシール剤を硬化させて空セルを得た。
【0065】
得られたセル内に上記調光層形成材料Bを注入した後、40mW/cm2 の紫外線を60秒間照射して、重合性化合物を硬化させて液晶材料と透明性高分子物質からなる調光層を有する液晶デバイスを得た。
【0066】
このようにして得た液晶デバイスを、60℃、80℃及び100℃にそれぞれ加熱し、再び室温に戻したところ、調光層内にクラックの発生が認められなかった。
【0067】
また、このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察した結果、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0068】
使用した紫外線硬化型シール剤「30Y−184K2」について、実施例1と同様にして線膨張率を求めた結果、60℃で0.1186%、80℃で0.2323%、100℃で0.3937%であった。
【0069】
(比較例1)
ガラス基板(EHC社製)の周縁部にディスペンサーを用いて熱硬化型シール剤「XN−5A」(三井東圧社製)を塗布し、80℃で30分加熱して溶媒を除いた後、11μmのスペーサーを介してもう一方のガラス基板と貼り合わせた後、150℃で90分加熱してシール剤を硬化させて、空セルを得た。
【0070】
得られたセル内に上記調光層形成材料Aを注入した後、40mW/cm2 の紫外線を60秒間照射して、重合性化合物を硬化させて液晶材料と透明性高分子物質からなる調光層を有する液晶デバイスを得た。
【0071】
このようにして得た液晶デバイスを、120℃及び150℃にそれぞれ加熱し、再び室温に戻したところ、調光層内にクラックの発生が認められた。
【0072】
また、このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察した結果、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0073】
使用した熱硬化型シール剤「XN−5A」について、実施例1と同様にして線膨張率を求めた結果、120℃で0.7800%、150℃で1.365%であった。
【0074】
(比較例2)
ガラス基板(EHC社製)の周縁部にディスペンサーを用いて紫外線硬化型シール剤「30Y−184K2」(スリーボンド製)を塗布し、11μmのスペーサーを介してもう一方のガラス基板と貼り合わせた後、100mW/cm2 の紫外線を40秒間照射してシール剤を硬化させて、空セルを得た。
【0075】
得られたセル内に上記調光層形成材料Aを注入した後、40mW/cm2 の紫外線を60秒間照射して、重合性化合物を硬化させて液晶材料と透明性高分子物質からなる調光層を有する液晶デバイスを得た。
【0076】
このようにして得た液晶デバイスを、120℃及び150℃にそれぞれ加熱し、再び室温に戻したところ、調光層内にクラックの発生が認められた。
【0077】
また、このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察した結果、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0078】
使用した紫外線硬化型シール剤「30Y−184K2」について、実施例1と同様にして線膨張率を求めた結果、120℃で0.7200%、150℃で1.566%であった。
【0079】
以上、各実施例及び各比較例の結果を下記表1にまとめて示した。
【0080】
【表1】
【0081】
上表中、○はクラックが発生しなかったもの、×はクラックが発生したものをそれぞれ示す。
【0082】
表1に示した結果から、加熱した温度におけるシール剤の線膨張率が0.5%以内の範囲であれば、室温に戻しても調光層内にクラックが発生しないことが理解できる。
【0083】
【発明の効果】
本発明の光散乱型液晶デバイスは、偏光板が不要で明るい表示画面のものであり、大面積で薄膜型のものであって、熱変化によっても調光層内の透明性高分子物質が破損せず、クラックの発生がない優れた液晶デバイスである。
Claims (2)
- 電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板を電極層を内側にして一定の間隔で対向させ、2枚の基板の周縁部をシール剤を用いて貼り合わせてなるセルと、これらの基板とシール剤とによって形成された空間に調光層を有し、該調光層が液晶材料及び透明性高分子物質を含有する液晶デバイスにおいて、
シール剤が、室温から調光層中の液晶材料の液晶相−等方性液体相転移温度よりも30度高温側の範囲で、シール剤の硬化物の下式(1)で表わされる線膨張率Lが0〜0.5%の範囲にある材料であることを特徴とする液晶デバイス。
- 電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板を電極層を内側にして一定の間隔で対向させ、2枚の基板の周縁部をシール剤を用いて貼り合わせてなるセルと、これらの基板とシール剤とによって形成された空間に調光層を有し、該調光層が液晶材料及び透明性高分子物質を含有する液晶デバイスに使用するシール剤の選択方法であって、
シール剤として、室温から調光層中の液晶材料の液晶相−等方性液体相転移温度よりも30度高温側の範囲で、シール剤の硬化物の下式(1)で表わされる線膨張率Lが0〜0.5%の範囲にある材料を使用することを特徴とするシール剤の選択方法。
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