JP2005120061A - 発声向上剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】黒豆を利用した発声障害予防効果及び/または発声障害改善効果を有する発声向上剤を提供する。特に、食品や、経口的若しくは経鼻的に使用される医薬品や医薬部外品に有効に利用できる発声向上剤を提供する。
【課題解決手段】発声向上剤またはその有効成分として、黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分、特に黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行って得られる画分を利用する。
【選択図】なし
【課題解決手段】発声向上剤またはその有効成分として、黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分、特に黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行って得られる画分を利用する。
【選択図】なし
Description
本発明は、発声向上剤に関する。より詳細には、黒豆の成分を利用した発声向上剤に関する。
黒豆の煮汁が古くから声嗄れの抑制や鎮咳を目的として民間薬として使用されているように、黒豆には、喉や声に良いなどの効果があることが伝承的に知られている(例えば、非特許文献1等参照のこと)。このため、黒豆から抽出したエキスを、そのまま液体あるいはスプレードライ等の常法により粉末化し、それを食品素材として配合した食品が、声嗄れ抑制や鎮咳効果のある食品として提案されている。
その一方、黒豆から抽出したエキスは、原料の黒豆に起因して、特有の豆臭あるいはカラメル的な匂い、及びやや甘味のある苦味を有し、しかも黒褐色を呈しているため、特に経口的に用いられる食品に配合して使用する場合に、その風味、味または色調に悪影響を及ぼす場合がある。
最近、黒豆に限らず、各種豆類についてその生理活性機能が注目されており、有効成分の抽出、単離、精製、並びにその解明が行われている。豆類から有効成分を抽出する方法としては、例えば、原料大豆をアルカリ液に浸漬した後、煮熟破砕して弱酸性〜中性に調整し、次いで各種酵素を加えて大豆の細胞組織を分解し、さらに煮沸して酵素を失活させて反応液を分離ろ過する方法(例えば、特許文献1等参照のこと);大豆を24時間水に浸漬し、80℃で24時間煮た後、粉砕し、澱粉及び蛋白質分解酵素を加え、24時間55〜65℃に保温して醗酵後、布で濾過し、その濾液面に送風して濾液に空気を触れさせながら85℃以下で加熱濃縮する方法(例えば、特許文献2等参照のこと);水を吸収して膨潤した大豆を磨砕した後、水性溶媒中で加熱抽出処理して大豆エキスを製造する方法(例えば、特許文献3等参照のこと);黒大豆種皮を原料とし、水、水溶性有機溶媒又は含水水溶性有機溶媒の何れかによりpH1〜5で抽出・濃縮して、抗酸化作用を有するシアニジン−3−グルコシドを調製する方法(例えば、特許文献4等参照のこと);焙煎豆類の水抽出液をセルラーゼ処理して風味がよく濁りのない清澄液を得る方法(例えば、特許文献5等参照のこと)等が開示されている。
しかしながら、これらの方法は、豆類の原料に由来する臭い、味または色の除去を目的とするものではなく、食品等の製品に配合した場合の悪影響が十分解消されていないのが実情である。
臨床と研究, 75,No.12, 2625(1998). 特開平06−217726号公報
特開平06−276980号公報
特開平09−176033号公報
特開2002−128689号公報
特開昭61−293371号公報
臨床と研究, 75,No.12, 2625(1998).
本発明は、第1に黒豆を有効成分とする発声向上剤を提供することを目的とする。また本発明は、第2に黒豆に由来する特有の豆臭あるいはカラメル的な匂い、苦味、または色が低減されてなる発声向上剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、第3に加熱、保存、またはアルコールの配合によっても、沈殿の発生などの不都合が生じない発声向上剤を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、かかる発声向上剤の調製方法、並びに当該発声向上剤を含有する食品など、経口的もしくは経鼻的に摂取ないしは投与される製品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、黒豆の水抽出物の特定分子量画分に、発声向上作用成分が多く含まれていることを見いだした。また、本発明者らは、黒豆の水抽出物に特定の処理を施して当該分子量画分を取得することによって、黒豆に由来する好ましくない香気成分が効果的に除去されて、無臭若しくは臭いが極めて低減された黒豆エキスが調製できること、しかも当該黒豆エキスは、加熱や長期保存によっても臭いが発生せず、臭い戻りが有意に抑制されていること、さらに当該方法によれば黒豆に由来する好ましくない沈殿発生成分も除去されており、加熱処理、保存、並びにアルコールの配合によっても不都合な沈殿を生じず、臭いや味が重要視され且つこうした処理を施す可能性の多い食品の原料として極めて有用なものであることを確認した。本発明は、かかる知見に基づいて、完成したものである。
すなわち、本発明は下記項1〜5に掲げる、黒豆を利用した発声向上剤である。
項1. 黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分からなるか、または当該画分を有効成分とする発声向上剤。
項2. 黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分が、黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行って得られるものである、項1に記載する発声向上剤。
項3. 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項1または2に記載する発声向上剤。
項4. 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である項1乃至3のいずれかに記載する発声向上剤。
項5. 実質的に無味無臭で、加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる、項1乃至4のいずれかに記載する発声向上剤。
項1. 黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分からなるか、または当該画分を有効成分とする発声向上剤。
項2. 黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分が、黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行って得られるものである、項1に記載する発声向上剤。
項3. 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項1または2に記載する発声向上剤。
項4. 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である項1乃至3のいずれかに記載する発声向上剤。
項5. 実質的に無味無臭で、加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる、項1乃至4のいずれかに記載する発声向上剤。
当該発声向上剤に係る発明には、下記の態様のものも含まれる:
(1) 酵素処理が、多糖類分解活性または/および蛋白質分解活性を有する酵素による処理である項1乃至5のいずれかに記載する発声向上剤。
(2) アルコール配合、またはアルコール存在下での加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる、項1乃至4のいずれかに記載する発声向上剤。
(1) 酵素処理が、多糖類分解活性または/および蛋白質分解活性を有する酵素による処理である項1乃至5のいずれかに記載する発声向上剤。
(2) アルコール配合、またはアルコール存在下での加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる、項1乃至4のいずれかに記載する発声向上剤。
さらに本発明は、下記項6に掲げる、黒豆を利用した発声向上剤の調製方法である。
項6. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、実質的に無味無臭で、加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、実質的に無味無臭で、加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
なお、当該発声向上剤またはその有効成分の調製方法には、下記の態様が含まれる:
項6−1. 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項6に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6−2. 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である項6または項6−1に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6−3. 酵素処理が、多糖類分解活性を有する酵素による処理である項6−2に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6−4. 発声向上剤またはその有効成分が、アルコール配合、またはアルコール存在下での加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなるものである、項6乃至項6−3に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6−1. 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項6に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6−2. 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である項6または項6−1に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6−3. 酵素処理が、多糖類分解活性を有する酵素による処理である項6−2に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
項6−4. 発声向上剤またはその有効成分が、アルコール配合、またはアルコール存在下での加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなるものである、項6乃至項6−3に記載する発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
また、本発明は、項7及び8に記載する、上記発声向上剤を含有する経口的もしくは経鼻的に摂取ないしは投与される製品である
項7. 項1乃至5のいずれかに記載する発声向上剤を含有する食品、経口的もしくは経鼻的に使用される医薬品または医薬部外品。
項8. 食品が、飲料、菓子、またはサプリメントである項7に記載する食品、経口的もしくは経鼻的に使用される医薬品または医薬部外品。
項7. 項1乃至5のいずれかに記載する発声向上剤を含有する食品、経口的もしくは経鼻的に使用される医薬品または医薬部外品。
項8. 食品が、飲料、菓子、またはサプリメントである項7に記載する食品、経口的もしくは経鼻的に使用される医薬品または医薬部外品。
黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分に含む本発明の発声向上剤は、喉が嗄れやすい、喉が疲れやすい、または発声しにくい等といった喉の症状(発生障害)を改善する効果、またはそうした障害が発生するのを事前に予防する効果に優れている。中でも、黒豆の水溶性抽出物を、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理することによって調製した成分を含む本発明の発声向上剤は、当該発声向上作用に加えて、黒豆由来の好ましくない臭い、味または色が有意に低減されているため、これらの臭い等を気にせず食品等に適用できるなど、経口的若しくは経鼻的使用に好適に使用することができる。さらに、かかる本発明の発声向上剤は、加熱、長期保存、アルコール配合などによっても、不都合な沈殿の発生や臭いの発生が抑制されており、かかる処理を施す必要があるか、もしくはその可能性の高い食品、医薬品若しくは医薬部外品に広く好適に適用することができる。
本発明の発声向上剤は、黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000の画分を有効成分とすることを特徴とするものである。
本発明でいう「発声向上剤」とは、会話などで日常的に用いられる話声や歌唱に用いられる歌声における発声を正常な状態(滑らかな発声)に維持する効果を奏するもの、あるいは発声を異常な状態から正常な状態に速やかに復帰させる効果を奏するものを意味する。なお「発声を正常な状態に維持する」とは、換言すれば「正常発声から異常発声(発声障害)に至るのを予防する効果」(本発明において「発声障害予防効果」ともいう)を意味し、また「発声を異常な状態から正常な状態に速やかに復帰させる効果」とは、換言すれば「異常発声(発声障害)から正常発声に改善する効果」(本発明において「発声障害改善効果」ともいう)を意味する。
なお、発声について異常か正常かの別を評価する方法としては、例えば、実験例1に示すように、一定時間fの強さで母音のア(/a/)を持続発声させた音声をデジタル録音して、声の音質(嗄声度)を聴覚的に評価する方法(聴覚的評価)、当該声の音質(嗄声度)をサウンドスペクトログラフィによって音響分析する方法、及び被験者本人の嗄声に関する自覚から評価する方法(自覚的評価)を挙げることができる。このうち、サウンドスペクトログラフィによる音響分析及び聴覚的評価は、発声の異常/正常の別を客観的に評価する方法として、また自覚的評価は発声の異常/正常の別を主観的に評価する方法として、いずれも有効に利用することができる。これらのいずれか1の方法で判断することができるが、2以上を組み合わせて総合的に判断することが好ましい。
本発明が対象とする当該「発声向上剤」は、経口的に服用もしくは摂取して、上記効果を奏するものである。
本発明において用いられる黒豆とは、マメ科ダイズ属 Glycine max (L.) Merrill に属する短日性の一年生草木の黒い種子(子実)(黒大豆)である。黒豆には、例えば中生光黒、トカチクロ、いわいくろ、玉大黒、丹波黒、信濃黒及び雁喰などの品種があるが、黒豆であればどの品種の種子を使用しても良い。
黒豆の水溶性抽出物は、上記黒豆を水溶性溶媒を用いて抽出することによって調製することができる。かかる水溶性溶媒としては、特に制限されないが、水、低級アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールを例示することができる。好ましくは水、または含水アルコール(特に、含水エタノール)であり、より好ましくは水である。なお、水溶性溶媒として含水アルコールを用いる場合、それに含まれるアルコール量は40容量%以下であることが好ましい。
なお、当該水溶性溶媒は酸性に調整されていてもよい。酸性への調整は、塩酸、硫酸若しくはリン酸等の無機酸、またはクエン酸やリンゴ酸等の有機酸を用いてpH2〜5.5程度の範囲となるように行うことができる。
抽出方法としては、一般に用いられる方法を採用することができる。制限はされないが、例えば水溶性溶媒中に生または乾燥処理した黒豆(そのままの形状、若しくは粗末、細切物)を低温、加温または煮沸条件下で浸漬する方法;低温、加温または煮沸条件下で攪拌しながら抽出を行う方法;またはパーコレーション法等を挙げることができる。好ましくは、乾燥処理した黒豆(そのままの形状、若しくは粗末、細切物)を水に、高温若しくは煮沸条件下で浸漬し、必要に応じて攪拌しながら、抽出する方法である(熱水抽出法)。
得られた水溶性抽出物は、必要に応じて濾過、共沈または遠心分離によって固形物を除去した後、そのまま若しくは濃縮して、次の処理工程に供することができる。
斯くして得られる水溶性抽出物から、分子量5000〜25000の画分を取得する方法としては、ゲル濾過方法、膜分離方法、または吸着処理方法などを挙げることができる。好ましくは膜分離方法である。ここで用いる膜分離方法は、黒豆の水溶性抽出物から、結果として分子量5000〜25000の画分が取得できる方法であれば特に制限されない。具体的には、設定分画分子量が、例えば約20,000〜30,000の範囲、好ましくは約22,000〜28,000の範囲、より好ましくは25,000前後にある膜を用いて高分子化合物を分離除去する処理方法と、設定分画分子量が、例えば約1,000〜8,000の範囲、好ましくは約3,000〜7,000の範囲、より好ましくは5,000前後にある膜を用いて低分子化合物を分離除去する処理方法とを組み合わせて行うことが好ましい。
前者の高分子化合物を分離除去する方法として、具体的には分画分子量が上記の範囲にあるNTU-3150膜, NTU-3250膜, NTU-3550膜, NTU-3800 UF膜(以上、日東電工製);Cefilt-UF(日本ガイシ製);AHP-2013膜, AHP-3013膜, AHP-1010膜(以上、旭化成製);等を利用した限外濾過(UF)膜処理を挙げることができる。また後者の低分子化合物を分離除去する方法として、具体的には分画分子量が上記の範囲にあるNTR-7250膜, NTR-7410膜, NTR-7430膜, NTR-7450膜(以上、日東電工製)、AIP-3013膜, ACP-3013膜, ACP-2013膜, AIP-2013膜, AIO-1010膜(以上、旭化成製)などの膜を利用した逆浸透膜(ナノフィルトレーション膜)処理、または限外濾過(UF)膜処理を挙げることができる。
かかる膜分離法に用いられる膜材料としては、天然、合成、半合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジアセテート若しくはトリアセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。なお、分画処理に使用される膜として、上記限外濾過膜、及び逆浸透膜の他、精密濾過(MF)膜等を用いることもできる。
斯くして得られる黒豆の水溶性抽出物、好ましくは熱水抽出物、の分子量5000〜25000画分(以下、「黒豆の有効画分」ともいう)には、後述する実験例に示すように、発声障害予防作用および発声障害改善作用を有する成分(以下、これらの成分を総称して「発声向上作用成分」ともいう)が多く含まれている。従って、当該黒豆の有効画分は発声向上剤として、また発声向上剤の有効成分として好適に使用することができる。当該黒豆の有効画分は、分子量分画処理後の処理液を、そのまま若しくは濃縮して、発声向上剤またはその有効成分として使用することもできるし、また濃縮乾固または噴霧乾燥などの定法に従って固形物に調製した状態で、またそれを更に水やエタノールまたはそれらの混合液に分散または溶解した状態で、発声向上剤またはその有効成分として使用することもできる。
なお、本発明の発声向上剤は、黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分に含まれる発声向上作用成分を含むものであればよいが、経口的に摂取して用いられることに鑑みれば、好ましくない臭いや味、または/及び色が除去されたものであることが好ましい。
こうした要望に適うためには、発声向上剤またはその有効成分として用いる、黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分(黒豆の有効画分)として、前述する黒豆の水溶性抽出物に対して、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を任意に組み合わせて行い、斯くして得られるものを用いることが好ましい。
ここで酵素処理に用いられる酵素としては、糖質または/および蛋白質を分解する作用を有する酵素を挙げることができる。具体的には、例えば、前者の糖質分解酵素として、クライスターゼY(大和化成製)、スミチームS(新日本化学工業製)などのアミラーゼ、セルラーゼA(天野エンザイム製)、及びセルロシンAC40(エイチビィアイ製)などのセルラーゼ;スクラーゼS(三共製)、及びスミチームX(新日本化学工業製)などのヘミセルラーゼ等の糖質分解活性を有する酵素を使用することができる。また、後者の蛋白質分解酵素としては、ニューラーゼA(天野エンザイム製)、及びプロテアーゼYP-SS(ヤクルト薬品工業製)などの酸性プロテアーゼ;スミチーム FP(新日本化学工業製)、及びエンチロンNBS(洛東化成工業製)などの中性プロテアーゼ;ノボザイムFM(ノボザイムズ製)やビオプラーゼSP-4FG(ナガセケムテックス製)などのアルカリ性プロテアーゼ等の蛋白質分解活性を有する酵素を使用することができる。
かかる糖質分解活性を有する酵素、及び蛋白質分解活性を有する酵素は、それぞれ1種単独で使用してもよく、また両者を組み合わせて使用することもできる。また使用する酵素は単一酵素でも良いが、各種の酵素を組み合わせて使用することもできる。
好ましい酵素は糖質分解活性を有する酵素であり、特に上記セルラーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等の多糖を分解する活性を有する酵素が好適に使用できる。
酵素処理は、使用する各酵素に適した所定の条件で実施することができる。酵素処理を行う温度条件は、特に制限されないが、通常30〜80℃の範囲を用いることができる。好ましくは35〜60℃である。
分子量5000〜25000の分画処理としては、前述の方法を挙げることができる。上記酵素処理と分子量分画処理は、前述する黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、連続的または非連続的に任意に組み合わせて行うことができる。その組み合わせの順番は特に制限されず、酵素処理に次いで分子量分画処理の順、分子量分画処理に次いで酵素処理の順のいずれでもよいが、好ましくは前者の方法である。
なお、本発明は、上記酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理に加えて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、さらに、酸処理、抽出処理、吸着処理、イオン交換処理または膜処理等の通常精製に使用される処理を行うことを制限するものではない。これらの処理は、一種または任意に2種以上組み合わせて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して行うことができる。
ここで酸処理は、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物をpH2〜5.5、好ましくはpH4〜4.5の酸性条件下に曝することによって実施することができる。酸処理は、具体的には黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に酸を添加配合することによって簡便に行うことができる。かかる酸としては、食品添加物として通常使用される酸であれば特に制限されず、かかる中から任意に選択使用することができる。例えばクエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸または硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸等を例示することができる。好ましくは食品添加物として通常使用される無機酸を用いた酸処理である。
酸処理温度は特に制限されず、通常5〜100℃の範囲から適宜選択使用することができる。例えば20〜100℃、40〜100℃、または40〜80℃の範囲を例示することができる。酸処理時間も特に制限されず、通常1分〜12時間の範囲から適宜選択することができる。一般に加温〜高温下での酸処理であればより短い処理時間で十分である。よって例えば40〜100℃での酸処理の場合は5〜60分の範囲から処理時間を採択することができる。なおこの時、酸処理中、処理液は撹拌してもしなくてもいずれでもよく、特に制限されない。
抽出処理も、特に制限はされず、定法に従って行うことができる。例えば、炭酸ガス、エチレン、プロパン等の液体を、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、臨界点以上の温度、圧力下の密閉系装置内で接触させる方法も使用することができる。
吸着処理もまた、常法に従って行うことができる。例えば活性炭、シリカゲルまたは多孔質セラミックなどによる吸着処理;スチレン系のデュオライトS-861(商標「Duolite」, U.S.A.ダイヤモンド・シャムロック社製、以下同じ)、デュオライトS-862、デュオライトS-863又はデュオライトS-866;芳香族系のセパビーズSP70(商標「セパビーズ」、三菱化学(株)製、以下同じ)、セパビーズSP700、セパビーズSP825;ダイアイオンHP10(商標「ダイアイオン」、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイアイオンHP20、ダイアイオンHP21、ダイアイオンHP40、及びダイアイオンHP50;あるいはアンバーライトXAD-4(商標「アンバーライト」、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトXAD-7、アンバーライトXAD-2000などの合成吸着樹脂を用いた吸着樹脂処理を挙げることができる。
かかる処理において、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物を樹脂担体に通過させて、夾雑物を樹脂に吸着させて除去し、有効成分を含有する通過液を得る。場合によっては、更に水および低濃度の含水アルコールを通液して有効成分を回収する。ここで、通液(溶出液)として含水アルコールを使用する場合、含水アルコールとして、通常1〜20容量%程度のエタノール含有水溶液を好適に例示することができる。
イオン交換処理も、特に制限されず慣用の樹脂を用いて常法に従って陽イオン交換処理または陰イオン交換処理を行うことができる。例えば陽イオン交換樹脂としては、制限されないがダイアイオンSK1B(商標「ダイアイオン」、三菱化学(株)製、以下同じ) 、ダイアイオンSK102、ダイアイオンSK116、ダイアイオンPK 208、ダイアイオンWK10、ダイアイオンWK20などが、また陰イオン交換樹脂としては、制限されないがダイアイオンSA10A(商標「ダイアイオン」、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイアイオンSA12A、ダイアイオンSA20A、ダイアイオンPA306、ダイアイオンWA10、ダイアイオンWA20などが例示される。
膜処理としては、例えばメンブレンフィルター(MF)膜や電気透析膜などの機能性高分子膜を用いた濾過処理を挙げることができる。またイオン選別膜による濃度勾配を利用した透析法、隔膜としてイオン交換膜を使用し電圧を印加する電気透析法なども用いることができる。かかる膜処理に用いられる膜材料としては、天然、合成、半合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジアセテート若しくはトリアセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
斯くして得られる黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分(黒豆の有効画分)には、発声向上作用を有する成分が多く含まれているとともに、臭いの原因となる黒豆に由来する香気成分や苦味が有意に除去されているため、特に経口的に用いられる発声向上剤として、またはその有効成分として好適に使用することができる。また、当該黒豆の有効画分は色素濃度が低減されているため、色調に悪影響をあたえることなく、食品や医薬品などの各種の製品の添加成分として用いることができる。
更に、上記方法によって得られる黒豆の有効画分は、後述する実験例で示すように、加熱したり長期保存によっても沈澱や臭い戻りといった不都合の発生が有意に抑制されており、またアルコールを配合した場合やアルコール存在下で加熱や保存を行った場合でも沈殿といった不都合の発生が有意に抑制されている。このため、加熱処理、保存、またはアルコール配合が予想される各種の製品、例えば食品や経口的もしくは経鼻的に投与または摂取される製品(例えば医薬部外品、医薬品)に好適に適用することができる。
なお、上記黒豆に由来する香気成分とは、マメ科ダイズ属 Glycine max (L.) Merrillに属する草木の黒色種子(黒豆)に含まれる香気成分であり、特に制限されないが、具体的には、酢酸、イソ吉草酸、マルトール、フェノール、4-ビニルグワヤコールおよび4-ビニルフェノールを挙げることができる。
斯くして得られる黒豆の有効画分は、水、アルコール(例えば、エタノール)、その他の溶媒に溶解若しくは分散した溶液状態、若しくは公知の方法により調製・成形した固体状態(粉状、顆粒状、錠剤状、丸剤状など)の、経口的若しくは経鼻的に服用または摂取される各種の製剤(食品[例えば、サプリメント]、医薬品または医薬部外品)とすることができる。かかる製剤形態を有する食品としては、例えば各種形状のサプリメント、飴(のど飴など)、トローチ、及びドリンクなどを;また医薬品または医薬部外品としては、例えばマウスウォッシュ等の口腔用の各種製品、うがい薬,トローチ,ドリンク,噴射剤,吸引剤または吸入剤等の喉用の各種製品、及び点鼻剤等を挙げることができる。
なお、かかる製剤には、上記黒豆の有効画分に加えて、その製品形態に応じて、食品衛生上または薬学的に許容される担体や添加剤が配合されていてもよい。かかる担体及び添加剤として具体的には、例えばデキストリン、乳糖、粉末水飴の他、これらの製品に通常用いられる保存剤、安定剤、香料、甘味料または酸化防止剤などの食品添加物または薬学的に許容される添加物を挙げることができる。
前述するように、上記方法で調製される本発明の黒豆の有効画分は、臭い、苦味及び色が有意に低減されており、また加熱処理、保存またはアルコール配合によっても、臭い戻りや沈殿等の不都合の発生が抑制されてなるものである。ゆえに、黒豆の有効画分は、こうした観点からも、かかる処理が行われることの多い食品や、経口もしくは経鼻的に投与される医薬部外品や医薬品の成分(原料)として好適に用いることができる。
ゆえに、本発明は、また、上記方法で調製される本発明の黒豆の有効画分を含むことによって、発声向上作用を奏する食品(機能性食品)、ならびに経口もしくは経鼻的に投与される医薬部外品及び医薬品を提供するものである。
かかる食品としては、(1)乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、茶飲料などの飲料;(2)カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;(3)アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;(4)チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);(5)マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;(6)ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等の飴類;(7)ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;(以上、(2)〜(7)を総合して菓子という);赤ワイン等の果実酒、リキュール、チュウハイ、炭酸アルコール飲料等のアルコール類を挙げることができる。好ましくは、上記清涼飲料水などの飲料、及び菓子である。なかでも菓子としては、(4)ガム類、(5)チョコレート類、(6)飴類及び(7)焼き菓子類を好適に例示することができる。
これらの食品に配合する黒豆の有効画分の割合としては、清涼飲料等の飲料として調製する場合、黒豆の有効画分の乾燥物重量に換算して0.001〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%;ガムとして調製する場合、黒豆の有効画分の乾燥物重量に換算して0.1〜10重量%;クッキー等の焼き菓子として調製する場合、黒豆の有効画分の乾燥物重量に換算して0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜5重量%;キャンディ等の飴類として調製する場合、黒豆の有効画分の乾燥物重量に換算して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%を例示することができる。
また医薬部外品及び医薬品としては、前述するマウスウォッシュ等の口腔用の各種製品、うがい薬,トローチ,ドリンク,噴射剤,吸引剤または吸入剤等の喉用の各種製品、及び点鼻剤を挙げることができる。これらの製品に配合する黒豆の有効画分の割合としては、黒豆の有効画分の乾燥物重量に換算して0.001〜80重量%、好ましくは0.1〜50重量%を例示することができる。
以下に、本発明の構成ならびに効果をより明確にするために、実施例、比較例及び実験例を記載する。但し本発明は、これらの実施例等に何ら影響されるものではない。
比較例1
水70Lにマメ科植物(黒豆)の種子10 kgを投入し、室温下に一夜放置し、つづいて煮沸を2時間行って抽出した。抽出混合物を固液分離して、得られた抽出液に、濾過助剤及び珪藻土を配合して吸引濾過し、濾液を約55L(pH 5.8)を得た。次いでこの濾液を減圧濃縮して、固形分濃度が70重量%のエキス2.1 kg を得た。このエキスのうち90 gに、水70 gとエチルアルコール40 gを加えて、黒豆エキス製剤(比較品1)200 gを調製した。この黒豆エキス製剤(比較品1)を嗅ぐと、豆類特有の強い豆臭あるいは穀物臭及び苦味を有していた。
水70Lにマメ科植物(黒豆)の種子10 kgを投入し、室温下に一夜放置し、つづいて煮沸を2時間行って抽出した。抽出混合物を固液分離して、得られた抽出液に、濾過助剤及び珪藻土を配合して吸引濾過し、濾液を約55L(pH 5.8)を得た。次いでこの濾液を減圧濃縮して、固形分濃度が70重量%のエキス2.1 kg を得た。このエキスのうち90 gに、水70 gとエチルアルコール40 gを加えて、黒豆エキス製剤(比較品1)200 gを調製した。この黒豆エキス製剤(比較品1)を嗅ぐと、豆類特有の強い豆臭あるいは穀物臭及び苦味を有していた。
比較例2
比較例1で使用した黒豆の種子に代えて、黄大豆の種子を用いる以外は、比較例1と同様に操作して黄大豆エキス製剤(比較品2)を調製した。この黄大豆エキス製剤(比較品2)は、豆臭及び苦味を有していた。
比較例1で使用した黒豆の種子に代えて、黄大豆の種子を用いる以外は、比較例1と同様に操作して黄大豆エキス製剤(比較品2)を調製した。この黄大豆エキス製剤(比較品2)は、豆臭及び苦味を有していた。
実施例1
マメ科植物(黒豆)の種子10 kgについて、比較例1と同一の方法で得られた熱水抽出濾液55L(pH 5.8)に、酵素・セルラーゼ(セルロシン AC40(エイチビィアイ製)、力価 4,000units/g)を10g添加し、40〜55℃でゆっくり攪拌して処理を行い酵素処理液を得た。次いで得られた酵素処理液を、限外濾過膜(NTU−3250−C4K膜:日東電工製、分画分子量20,000)を用いて3.5 kg/cm2, 20℃で処理した。この限外濾過膜処理の透過液を、続いて逆浸透膜処理(NTR-7250膜:日東電工製、分画分子量 約3,000程度)に供し、膜濃縮処理液1 Lを得た。次いでこの膜濃縮処理液を、減圧下で濃縮して、濃縮エキス 80 g(固形分60%)を得た。この濃縮エキス80 gに、水80 gとエチルアルコール40 gを加えて黒豆エキス製剤(発明品)200 gを調製した。この黒豆エキス製剤(発明品)は全く臭いがせず、無味で色素濃度も低減されていた。
マメ科植物(黒豆)の種子10 kgについて、比較例1と同一の方法で得られた熱水抽出濾液55L(pH 5.8)に、酵素・セルラーゼ(セルロシン AC40(エイチビィアイ製)、力価 4,000units/g)を10g添加し、40〜55℃でゆっくり攪拌して処理を行い酵素処理液を得た。次いで得られた酵素処理液を、限外濾過膜(NTU−3250−C4K膜:日東電工製、分画分子量20,000)を用いて3.5 kg/cm2, 20℃で処理した。この限外濾過膜処理の透過液を、続いて逆浸透膜処理(NTR-7250膜:日東電工製、分画分子量 約3,000程度)に供し、膜濃縮処理液1 Lを得た。次いでこの膜濃縮処理液を、減圧下で濃縮して、濃縮エキス 80 g(固形分60%)を得た。この濃縮エキス80 gに、水80 gとエチルアルコール40 gを加えて黒豆エキス製剤(発明品)200 gを調製した。この黒豆エキス製剤(発明品)は全く臭いがせず、無味で色素濃度も低減されていた。
実験例1 発声障害予防効果の評価
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)を凍結乾燥して、凍結乾燥粉末を得た。これを用いて声の障害(発声障害)に対する予防効果(すなわち、発声を正常な状態に維持する効果)を評価した。当該黒豆エキス製剤(発明品)の発声障害予防効果は、比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)及び比較例2で調製した黄大豆エキス製剤(比較品2)の発声障害予防効果と対比することで評価を行った。なお、黒豆エキス製剤(比較品1)及び黄大豆エキス製剤(比較品2)も、黒豆エキス製剤(発明品)と同様に凍結乾燥して、凍結乾燥粉末として以下の実験に使用した。
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)を凍結乾燥して、凍結乾燥粉末を得た。これを用いて声の障害(発声障害)に対する予防効果(すなわち、発声を正常な状態に維持する効果)を評価した。当該黒豆エキス製剤(発明品)の発声障害予防効果は、比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)及び比較例2で調製した黄大豆エキス製剤(比較品2)の発声障害予防効果と対比することで評価を行った。なお、黒豆エキス製剤(比較品1)及び黄大豆エキス製剤(比較品2)も、黒豆エキス製剤(発明品)と同様に凍結乾燥して、凍結乾燥粉末として以下の実験に使用した。
<実験手順>
日常、持続発声を行うと声の障害を自覚する健常な成人男性3例(25〜55歳)を対象にして下記の試験を行った。黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥物1.6 mgをそのまま被験者の口腔内に自由摂取させた後、被験者が自由意志で選んだ書籍をf(フォルテ)の強さで長時間持続的に朗読させることにより声の障害を惹起した。
日常、持続発声を行うと声の障害を自覚する健常な成人男性3例(25〜55歳)を対象にして下記の試験を行った。黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥物1.6 mgをそのまま被験者の口腔内に自由摂取させた後、被験者が自由意志で選んだ書籍をf(フォルテ)の強さで長時間持続的に朗読させることにより声の障害を惹起した。
朗読開始前と終了後において、約3秒間fの強さで母音のア(/a/)を持続発声させた音声をデジタル録音し、声の音質(嗄声度)の聴覚的評価およびサウンドスペクトログラフィによる他覚的な音響分析を行った。加えて、各被験者に、朗読終了時における発声の悪化(声が嗄れやすい、のどが疲れて発声しにくい)の有無を、被験者本人の自覚(認識)に基づいて評価してもらい、上記と併せて総合的評価を行った。
また、日を改めて、上記健常な成人男性3例(25〜55歳)に対して、黒豆エキス製剤(発明品)に代えて、比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)の凍結乾燥物210mg、比較例2で調製した黄大豆エキス製剤(比較品2)の凍結乾燥物210mg、及びコントロールとして砂糖210mg(比較品3)についても、同様に摂取させて、書籍朗読させて声の障害を惹起させた後に、発声障害の程度を評価した。
<結果>
(1)声の音質(嗄声度)の聴覚的評価
声の音質(嗄声度)の聴覚的評価は、上記被験者とは異なる10名の評定者に収録音声を聞かせ、音声の嗄れの程度を、5段階評価〔0(全くない)、1(ややある)、2(ある)、3(かなりある)、4(極めて強くある)〕に従って、いずれかの点数を記入させる評定尺度法に基づいて行った。朗読前(声の障害惹起前)及び朗読終了時における各被験者の評価の平均値(嗄声度評価平均値)から、発声障害に対する予防度を、下式により算出した:
(1)声の音質(嗄声度)の聴覚的評価
声の音質(嗄声度)の聴覚的評価は、上記被験者とは異なる10名の評定者に収録音声を聞かせ、音声の嗄れの程度を、5段階評価〔0(全くない)、1(ややある)、2(ある)、3(かなりある)、4(極めて強くある)〕に従って、いずれかの点数を記入させる評定尺度法に基づいて行った。朗読前(声の障害惹起前)及び朗読終了時における各被験者の評価の平均値(嗄声度評価平均値)から、発声障害に対する予防度を、下式により算出した:
一方、黄大豆エキス製剤(比較品2)を210mg摂取させた場合の発声障害予防度は0.19、砂糖(比較品3)を210mg摂取させた場合の発声障害予防度は0.13であった。このことから、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)は、比較品1だけでなく、比較品2及び3と比べても、高い発声障害予防効果を示すことが確認された。さらに、比較品1と、比較品2及び3との対比から、発声の障害に対する予防効果(発声向上作用)は豆類の中でも黒豆に特徴的な効果であることが確認された。
以上の結果から、実施例1で調製された黒豆エキス製剤(発明品)は、少量で発声障害に対して顕著な予防効果(著効)を示すことが確認された。
(2)サウンドスペクトログラフィによる音響分析
収録した音声のサウンドスペクトログラフィによる音響分析は、発声された音声信号の増幅から、コンピュータへの取り込み、デジタルデータ(音声波形)の収録、サウンドスペクトログラフィ解析に至るまで、全てKAY Elemetrics社製CSL4400コンピュータスピーチラボを用いて行った。
収録した音声のサウンドスペクトログラフィによる音響分析は、発声された音声信号の増幅から、コンピュータへの取り込み、デジタルデータ(音声波形)の収録、サウンドスペクトログラフィ解析に至るまで、全てKAY Elemetrics社製CSL4400コンピュータスピーチラボを用いて行った。
なお、サウンドスペクトログラフィとは、声のパワースペクトルを解析する方法である。声に限らず音などの時系列データ、波形データは、種々の振幅、位相を持った種々の周波数の正弦波、つまり部分音が重なってできている。部分音の位相は波形や音源定位を議論する場合には重要であるものの、声質や音韻性などは主として周波数と振幅(正確にはパワー)の関係に左右される。多くの声は時々刻々変化するため、声を構成する部分音も変化する。この時間変化を表すために、音声をフーリエ変換(FFT)により部分音の周波数とパワーに分解し、横軸に時間、縦軸に周波数をとって、部分音のパワーを濃さで現したものがサウンドスペクトログラフィである。また、サウンドスペクトログラフィにより解析されたグラフをサウンドスペクトログラムと呼ぶ(「第2版 声の検査法 臨床編」、音声言語医学会編、1999年、164頁参照のこと)。
図1に黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末1.6mg(図A)、黒豆エキス製剤(比較品1)の凍結乾燥粉末210mg(図B)、黄大豆エキス製剤(比較品2)の凍結乾燥粉末210mg(図C)、及び砂糖(比較品3)210mg(図D)を、それぞれ摂取させた場合における朗読開始前と終了(声の障害惹起)後の音声のサウンドスペクトログラムを、1名の同一被験者を例にとって示した。朗読開始前の音声のサウンドスペクトログラム(各図中、左)において、基本周波数と倍音のゆらぎは少なく、ゆらぎ幅もほぼ一定の横縞として観察された。
一方、朗読終了時(声の障害惹起後)のサウンドスペクトログラムにおいて(各図中、右)、砂糖を210mg摂取した場合(コントロール、比較品3)では基本周波数の変動幅は大きく、高周波における倍音成分の横縞は極めて不明瞭で確認できなかったことから(図D参照)、音声に声門雑音が多く含まれることが示された。これに対して、黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末を1.6mg摂取した場合では、朗読前と同様の少ない基本周波数と倍音成分のゆらぎが明瞭な横縞として検出されていることから(図A参照)、朗読終了時(声の障害惹起後)においても正常な音声が維持されていることが明らかとなった。また、この結果は、上記(1)で示した、発明品における聴覚評価の結果と一致しており、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)が声の障害に対して優れた予防効果(発声を正常状態に維持する効果)を有することがサウンドスペクトログラフィ解析においても確認された。
(3)被験者本人の自覚(認識)評価
各被験者に、朗読終了時(発声障害惹起後)における発声の悪化の有無を、〔0(全くない)、1(わずかに悪化した)、2(少し悪化した)、3(悪化した)、4(極めて悪化した)〕の5段階の基準に従って評価させた結果を表2に示す。
各被験者に、朗読終了時(発声障害惹起後)における発声の悪化の有無を、〔0(全くない)、1(わずかに悪化した)、2(少し悪化した)、3(悪化した)、4(極めて悪化した)〕の5段階の基準に従って評価させた結果を表2に示す。
実験例2 発声障害改善効果の評価
実験例1で用いた黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末を用いて声の障害(発声障害)に対する改善効果(異常発声(発声障害)を正常発声に改善する効果)を評価した。当該黒豆エキス製剤(発明品)の発声障害効果効果は、当該製剤を摂取した場合の異常発声から正常音声に回復するまでの時間を、当該製剤を摂取しない場合(コントロール)のその時間と比較し、その短長の程度から評価した。
実験例1で用いた黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末を用いて声の障害(発声障害)に対する改善効果(異常発声(発声障害)を正常発声に改善する効果)を評価した。当該黒豆エキス製剤(発明品)の発声障害効果効果は、当該製剤を摂取した場合の異常発声から正常音声に回復するまでの時間を、当該製剤を摂取しない場合(コントロール)のその時間と比較し、その短長の程度から評価した。
<実験手順>
実験例1と同じ被験者3名を対象にして下記の試験を行った。被験者が自由意志で選んだ書籍をf(フォルテ)の強さで長時間持続的に朗読させることにより声の障害を惹起した直後、黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥物1.6 mgをそのまま被験者の口腔内に自由摂取させた。
実験例1と同じ被験者3名を対象にして下記の試験を行った。被験者が自由意志で選んだ書籍をf(フォルテ)の強さで長時間持続的に朗読させることにより声の障害を惹起した直後、黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥物1.6 mgをそのまま被験者の口腔内に自由摂取させた。
朗読開始前、終了直後(製剤摂取直前)、終了(製剤摂取)から5分後、及び120分後において、約3秒間fの強さで母音のア(/a/)を持続発声させた音声をデジタル録音し、声の音質(嗄声度)をサウンドスペクトログラフィによって他覚的に音響分析し、発声障害の程度を評価した。
<結果>
図2に黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末1.6mgを摂取させた場合(図A)と試料を摂取しない場合(コントロール)(図B)における朗読開始前、終了(声の障害惹起)後、終了から(試料摂取から)5分後、および120分後の音声のサウンドスペクトログラムを、1名の同一被験者を例にとって示した。朗読開始前の音声のサウンドスペクトログラムにおいて、基本周波数と倍音のゆらぎは少なく、ゆらぎ幅もほぼ一定の横縞として観察された。一方、朗読終了時(声の障害惹起後)のサウンドスペクトログラムにおいて、試料を摂取しない場合(コントロール)では雑音成分が観察され、朗読終了120分後においても正常な音声のゆらぎに回復しなかった。これに対して、黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末を1.6mg摂取した場合では、朗読終了(試料摂取)から5分後で朗読開始前と同様の周波数ゆらぎが検出されていた。
図2に黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末1.6mgを摂取させた場合(図A)と試料を摂取しない場合(コントロール)(図B)における朗読開始前、終了(声の障害惹起)後、終了から(試料摂取から)5分後、および120分後の音声のサウンドスペクトログラムを、1名の同一被験者を例にとって示した。朗読開始前の音声のサウンドスペクトログラムにおいて、基本周波数と倍音のゆらぎは少なく、ゆらぎ幅もほぼ一定の横縞として観察された。一方、朗読終了時(声の障害惹起後)のサウンドスペクトログラムにおいて、試料を摂取しない場合(コントロール)では雑音成分が観察され、朗読終了120分後においても正常な音声のゆらぎに回復しなかった。これに対して、黒豆エキス製剤(発明品)の凍結乾燥粉末を1.6mg摂取した場合では、朗読終了(試料摂取)から5分後で朗読開始前と同様の周波数ゆらぎが検出されていた。
このことから、黒豆エキス製剤(発明品)摂取により、声の障害惹起による異常音声から正常音声への回復時間が顕著に短縮されること、すなわち、サウンドスペクトログラフィ解析において、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)が声の障害に対して優れた改善効果(異常発声を正常状態に回復する効果)を有することが確認された。また、この結果から、黒豆エキス製剤(発明品)は、実験例1で示された声の障害に対する予防効果だけでなく、声の障害に対する改善効果を併せ持つことが明らかとなった。
実験例3 香気成分分析
比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)および実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)に含まれる香気成分量を、ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)を用いて比較した。
比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)および実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)に含まれる香気成分量を、ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)を用いて比較した。
<測定方法>
具体的には、それぞれの黒豆エキス製剤10 gを、内部標準物質(IS:ブチルヒドロキシトルエン[BHT] 0.4mgおよびジエチルフタレート[DEP]1.0mg) を含むジエチルエーテル200 mlで抽出し、次いで得られたジエチルエーテル抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた濃縮液を下記の条件のガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)に供して、香気成分量を測定した。結果を図3に示す。
具体的には、それぞれの黒豆エキス製剤10 gを、内部標準物質(IS:ブチルヒドロキシトルエン[BHT] 0.4mgおよびジエチルフタレート[DEP]1.0mg) を含むジエチルエーテル200 mlで抽出し、次いで得られたジエチルエーテル抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた濃縮液を下記の条件のガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)に供して、香気成分量を測定した。結果を図3に示す。
<GC-MS測定条件>
GC/MS: Hewlett-Packard 5973 Mass Selective Detector,
カラム: J&W製 DB-WAX(0.25mm x 60m)、
温度条件:注入口250℃、インターフェース230℃、カラム温度50℃(2分)−
220℃、昇温3℃/分、
スプリット比: 70:1、
イオン化電圧: 70eV。
GC/MS: Hewlett-Packard 5973 Mass Selective Detector,
カラム: J&W製 DB-WAX(0.25mm x 60m)、
温度条件:注入口250℃、インターフェース230℃、カラム温度50℃(2分)−
220℃、昇温3℃/分、
スプリット比: 70:1、
イオン化電圧: 70eV。
図3のB(下図)に、実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)のトータルイオンクロマトグラムを、A(上図)に、比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)のトータルイオンクロマトグラムをそれぞれ示す。図3からわかるように、比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)には数多くの揮発性成分が含まれている(総量約320ppm)のに対し、実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)には内部標準物質(IS)以外の成分は極微量(5ppm以下)しか含まれていなかった。この結果は、比較品1の黒豆エキス製剤が豆類特有の強い豆臭あるいは穀物臭を有していたのに対して、発明品1の黒豆エキス製品は無臭であったという、上記比較例1と実施例1で得られた結果と一致するものであった。
なお、図3のA中、1)のピークはマルトール、2)のピークは4-ビニルフェノール、ISのピークは内部標準物質であるブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびジエチルフタレート(DEP)をそれぞれ示す。
実験例4 香味評価および安定性テスト
前述するように、上記実験例3及び実施例1から、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)(調製直後)は無臭であることが確認された。そこで次に、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)について、長期保存処理(38℃)及び加熱処理を行い、香味(臭いと苦味)に対する影響を調べた。
前述するように、上記実験例3及び実施例1から、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)(調製直後)は無臭であることが確認された。そこで次に、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)について、長期保存処理(38℃)及び加熱処理を行い、香味(臭いと苦味)に対する影響を調べた。
具体的には、実施例1で調製した黒豆エキス製剤(本発明品)及び比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)(各製剤について、調製直後のものと38℃で30日間保存したもの)を用いて、下記処方の飲料タイプの溶液(本発明溶液、比較溶液)を調製した。なお、当該溶液は、下記成分を混合した後、瓶に充填し、90℃ 1気圧の条件で5分間、加熱殺菌処理を施した。得られた各溶液を、良く訓練されたフレーバーリスト10名にそれぞれ飲んでもらって、後述する基準に従って香味(臭いと苦味)を評価してもらった。
<溶液処方> pH3.5
黒豆エキス製剤 1g
0.2重量% クエン酸水溶液 残部
全量 100mL。
黒豆エキス製剤 1g
0.2重量% クエン酸水溶液 残部
全量 100mL。
結果を表3に示す。なお、表中の数字はフレーバーリストの人数である。
臭いと苦味がかなり強い :+++
臭いと苦味がある :++
臭いと味がかすかにある :+
臭いと味が殆ど気にならない :±
臭いと味が全くない :−。
表3に示す結果から分かるように、発明品(調製直後、38℃30日保存後)を用いて調製した飲料タイプ溶液(本発明溶液)は、比較品1(調製直後、38℃30日保存後)を用いて調製した飲料タイプ溶液(比較溶液)に比べて、臭いと苦味が著しく少なく、ほぼ無臭無味の溶液であった。また、比較溶液については、黒豆エキス製剤(比較品1)として38℃30日保存後の製剤を用いることによって、調製直後の製剤を用いた場合に比して、香味の発現が強くなったのに対して、本発明溶液については、使用する黒豆エキス製剤(本発明品)の保存の有無に関わらず、無臭状態を維持していた。
これらのことから、実施例1の方法で製造された本発明の黒豆エキス製剤(本発明品)には、それ自体に臭気を発揮する香気成分や苦味成分が全く若しくはほとんど含まれていないだけでなく、保存や加熱処理によって臭気や苦味を発生する原因となる、香味成分または苦味の前駆体となる夾雑物も含まれていないことが示された。
実験例5
比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)と実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) にかけた。
比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)と実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) にかけた。
具体的には、各黒豆エキス製剤(比較品1、発明品)を0.2%(W/V)になるように水に溶解したサンプル105μlに、2-メルカプトエタノール10μl、0.5M Tris-HCl(pH6.8) 25μl、10重量% SDS 40μl及び70重量%グリセリン20μlを混合して、3分間煮沸加熱して調製した試料を、供試サンプルとして用いた。これをLaemmli 法(Nature, 227, 680 (1970))に準拠した条件下で電気泳動し、得られた電気泳動ゲルを常法に従ってCBB染色した。
具体的な電気泳動(SDS-PAGE)条件は下記の通りである:
・分析試料:10〜0.1μl/レーン
・Buffer :0.025M Tris-0.192M glycine (pH8.3)、0.1% SDS。
・分析試料:10〜0.1μl/レーン
・Buffer :0.025M Tris-0.192M glycine (pH8.3)、0.1% SDS。
結果を電気泳動像として図4に示す。図中、レーン左から、(1)比較品1(左から10, 5, 1, 0.1μl)、(2)分子量マーカー(上から、97kDa,66.2kDa,45kDa,31kDa,21.5kDa,14.4kDa)、(3)本発明品(左から10, 5, 1, 0.1μl)の泳動結果を示す。電気泳動の結果から、実施例1で製造した黒豆エキス製剤(発明品)について約5〜25kDa分子量範囲にバンドが確認された。このことから、実験例1及び実験例2で示した発声障害予防効果及び発声障害改善効果(すなわち、発声向上効果)を示す有効成分は、分子量は5000〜25,000の画分に存在していることが示された。
実験例6 色素濃度
比較例1および実施例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1、発明品)をそれぞれ水で希釈して、固形分換算濃度 4mg/100mlの水溶液とした。これをそれぞれ分光光度計(日本分光社製)により吸収波形を測定し、図5のチャートを得た。図5から分かるように、実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)の吸収曲線(例えば、500nmの吸光度:0.0984)は、比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)の吸収曲線(例えば、500nmの吸光度:0.4621)に比して、極めて低く、色素成分が除去されていることがわかる。
比較例1および実施例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1、発明品)をそれぞれ水で希釈して、固形分換算濃度 4mg/100mlの水溶液とした。これをそれぞれ分光光度計(日本分光社製)により吸収波形を測定し、図5のチャートを得た。図5から分かるように、実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)の吸収曲線(例えば、500nmの吸光度:0.0984)は、比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)の吸収曲線(例えば、500nmの吸光度:0.4621)に比して、極めて低く、色素成分が除去されていることがわかる。
実験例7 経時的沈殿の有無
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)について、経時的沈殿の有無を確認した。具体的には、黒豆エキス製剤(発明品、および比較品1)を用いて実験例3と同様の処方及び方法で調製した飲料タイプの溶液(本発明溶液、比較溶液)(500mL×10)を500mLペットボトルに各10本ずつ充填して、明所で5℃で6ヶ月間保存した。沈殿の発生状況を目視によって観察した結果を表4に示す。
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)について、経時的沈殿の有無を確認した。具体的には、黒豆エキス製剤(発明品、および比較品1)を用いて実験例3と同様の処方及び方法で調製した飲料タイプの溶液(本発明溶液、比較溶液)(500mL×10)を500mLペットボトルに各10本ずつ充填して、明所で5℃で6ヶ月間保存した。沈殿の発生状況を目視によって観察した結果を表4に示す。
実験例8
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)について、アルコール飲料へ配合した場合の経時的沈殿の有無を、実験例7と同様の方法で確認した。具体的には、まず、黒豆エキス製剤(発明品、および比較品1)を用いて、下記の処方に従って溶液(100g×10)を調製し、これを100mL容量のガラス瓶10本に充填して65℃で10分間加熱殺菌し、アルコール飲料を調製した(発明飲料、比較飲料)。これを、明所で5℃、6ヶ月間保存して沈殿の発生状況を目視によって観察した。結果を表5に示す。
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)について、アルコール飲料へ配合した場合の経時的沈殿の有無を、実験例7と同様の方法で確認した。具体的には、まず、黒豆エキス製剤(発明品、および比較品1)を用いて、下記の処方に従って溶液(100g×10)を調製し、これを100mL容量のガラス瓶10本に充填して65℃で10分間加熱殺菌し、アルコール飲料を調製した(発明飲料、比較飲料)。これを、明所で5℃、6ヶ月間保存して沈殿の発生状況を目視によって観察した。結果を表5に示す。
<アルコール飲料処方> アルコール濃度:7%
黒豆エキス製剤(発明品、比較品1) 1g
焼酎(アルコール濃度35%) 20g
水 34g
炭酸水 45g
全量 100g。
黒豆エキス製剤(発明品、比較品1) 1g
焼酎(アルコール濃度35%) 20g
水 34g
炭酸水 45g
全量 100g。
以上の実験例の結果から、酵素処理及び分子量分画処理を施すことによって、長期保存、加熱処理、アルコール配合、アルコール存在下での加熱及び保存においても、沈殿または臭いの発生が有意に抑制されてなる黒豆エキス製剤が調製できることがわかった。
酵素処理及び分子量分画処理を行って調製された、分子量5000〜25000画分の水溶性黒豆抽出物を有効成分とする本発明の発声向上剤は、香気成分、苦味及び色が有意に低減されているため、その臭い、味及び色が適用する商品に及ぼす影響を心配することなく、食品、医薬部外品や医薬品等の経口若しくは経鼻的に使用される製品に広く使用することができる。また、当該本発明の発声向上剤は、加熱や長期保存、並びにアルコールの存在によって沈殿物が発生することが極めて少ないため、滅菌加熱処理や保存が不可欠な飲料やアルコールを配合した各種食品を始めとする各種の製品に広く使用することが可能である。また、本発明の発声向上剤は、その発声向上作用(発声障害予防作用または/及び発声障害改善作用)を期待した医薬品やサプリメント製剤としての使用も可能である。
Claims (8)
- 黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分からなるか、または当該画分を有効成分とする発声向上剤。
- 黒豆の水溶性抽出物の分子量5000〜25000画分が、黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行って得られるものである、請求項1に記載する発声向上剤。
- 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、請求項1または2に記載する発声向上剤。
- 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である請求項1乃至3のいずれかに記載する発声向上剤。
- 実質的に無味無臭で、加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる、請求項1乃至4のいずれかに記載する発声向上剤。
- 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、実質的に無味無臭で、加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる発声向上剤またはその有効成分の調製方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載する発声向上剤を含有する食品、または経口若しくは経鼻的に使用される医薬品もしくは医薬部外品。
- 食品が、飲料、菓子、またはサプリメントである請求項7に記載する食品、または経口若しくは経鼻的に使用される医薬品もしくは医薬部外品。
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---|---|---|---|---|
JP2007204436A (ja) * | 2006-02-02 | 2007-08-16 | Bio Yakuhin Kk | 発声改良剤および発声改良方法 |
WO2008053942A1 (fr) * | 2006-10-31 | 2008-05-08 | San-Ei Gen F.F.I., Inc. | Composition pour la gorge |
KR20200070887A (ko) | 2018-12-10 | 2020-06-18 | 경기도 | 베이커리 소재용 효소 처리 콩 분말 제조 및 이를 이용한 마카롱의 제조방법 |
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2003
- 2003-10-20 JP JP2003359807A patent/JP2005120061A/ja active Pending
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KR102161247B1 (ko) * | 2018-12-10 | 2020-09-29 | 경기도 | 베이커리 소재용 효소 처리 콩 분말 제조 및 이를 이용한 마카롱의 제조방법 |
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