JP2005112878A - 重合体の水系分散体の製造方法 - Google Patents

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Shigefumi Kuramoto
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Abstract

【課題】 シードポリマー形成過程で副生する水溶性ポリマーが与える悪影響を抑え、分散安定性等に優れた重合体の水系分散体を得ることができる、シード重合法による重合体の水系分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のアニオン性重合体の水系分散体の製造方法は、アニオン性不飽和単量体(A)と、単量体(A)と共重合可能な疎水性不飽和単量体(C)とを用い、水性媒体中でラジカル重合させてアニオン性重合体の水系分散体を製造する方法において、(1)使用する全単量体成分の一部であって単量体(A)を必須に含む単量体成分を、特定の化合物(X)の存在下、重合させてシードポリマーを生成させ、(2)生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加して重合させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種用途に有用な重合体の水系分散体の製造方法に関する。詳しくは、特定化合物の特異な反応性を利用したシード重合法により重合体の水系分散体を製造する方法に関する。
ポリマー微粒子を水系媒体に分散させた、いわゆる重合体の水系分散体は、塗料や接着剤の材料として古くから広範な分野で使用されており、最近では医療用の診断薬や電子材料の一部に特殊な重合体の水系分散体が使用されている。
最近、分散安定性の高い重合体の水系分散体の製造方法として、シード重合法によりシードポリマーを経由して重合体の水系分散体を製造する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。この方法はまた、乳化剤を用いなくても分散安定性の高い重合体の水系分散体が得られるため、乳化剤による水系分散体ポリマーの耐水性の低下や染色性の阻害などの問題を解消することもできる。
ところが、従来のシード重合による重合体の水系分散体の製造方法においては、ラジカル重合によるシードポリマーの形成過程で水溶性ポリマーが水性媒体中に溶けた状態で副生する。この水溶性ポリマーは、最終的に得られる重合体の水系分散体の水性媒体中にそのまま残存するため、重合体の水系分散体の使用に際しては不純物として作用し、耐水性や接着性など重合体の水系分散体の各種性能に悪影響を及ぼす。また、水溶性ポリマーが水性媒体中に存在する重合体の水系分散体は、その分散安定性にも悪影響を及ぼし、凝集等の問題を引き起こしてしまう。
特開昭61−261302号公報
本発明が解決しようとする課題は、シードポリマーの形成過程において副生する水溶性ポリマーが重合体の水系分散体の各種性能に与える影響を抑えることができ、且つ、分散安定性や各種物性に優れた重合体の水系分散体を得ることができる、シード重合法による重合体の水系分散体の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。
まず、一般式(1)で表される化合物(X)という特定化合物をラジカル重合の際に共存させた時に起こる特異なラジカル重合反応挙動に着目した。
Figure 2005112878
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、−COR基、−COOR基、または−N(R)R基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表し、Rは、芳香族基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基を表す。)
ラジカル重合において化合物(X)を共存させておくと、生成するポリマー鎖は必ずその末端に不飽和二重結合を有することが、最近の研究で明らかになっている(CHEMISTRY LETTERS,1089−1092頁,1993年)。そこで、ラジカル重合によるシードポリマーの形成過程において化合物(X)を共存させておけば、副生する水溶性ポリマーはそのポリマー鎖の末端に必ず不飽和二重結合を有することになる。このため、シードポリマーにさらに疎水性不飽和単量体を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させて重合体の水系分散体を製造する際、水溶性ポリマー末端の不飽和二重結合にさらに疎水性不飽和単量体を必須に含む単量体成分が共重合して疎水性ポリマーとなり、水性媒体中の水溶性ポリマーが激減することになると考えた。
また、ラジカル重合によるシードポリマーの形成過程において化合物(X)を共存させておけば、シードポリマーのポリマー鎖の末端にも必ず不飽和二重結合が導入される。したがって、シードポリマーにさらに疎水性不飽和単量体を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させて重合体の水系分散体を製造すると、シードポリマー末端の不飽和二重結合にさらに疎水性不飽和単量体を必須に含む単量体成分が共重合することになる。このため、従来のシード重合法で得られるいわゆるコアシェル構造の不均一組成のポリマー微粒子ではなく、共重合体構造の均一組成のポリマー微粒子が得られ、分散安定性や各種物性に優れた重合体の水系分散体が得られると考えた。
本発明は以上のようにして完成された。
本発明にかかるアニオン性重合体の水系分散体の製造方法は、アニオン性不飽和単量体(A)と、単量体(A)と共重合可能な疎水性不飽和単量体(C)とを用い、水性媒体中でラジカル重合させてアニオン性重合体の水系分散体を製造する方法において、(1)使用する全単量体成分の一部であって単量体(A)を必須に含む単量体成分を、当該単量体成分に対して0.05〜30質量%の一般式(1)で表される化合物(X)の存在下、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させてシードポリマーを生成させ、(2)生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる、ことを特徴とする。
Figure 2005112878
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、−COR基、−COOR基、または−N(R)R基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表し、Rは、芳香族基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基を表す。)
本発明にかかるカチオン性重合体の水系分散体の製造方法は、カチオン性不飽和単量体(B)と、単量体(B)と共重合可能な疎水性不飽和単量体(C)とを用い、水性媒体中でラジカル重合させてカチオン性重合体の水系分散体を製造する方法において、(1)使用する全単量体成分の一部であって単量体(B)を必須に含む単量体成分を、当該単量体成分に対して0.05〜30質量%の一般式(1)で表される化合物(X)の存在下、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させてシードポリマーを生成させ、(2)生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる、ことを特徴とする。
Figure 2005112878
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、−COR基、−COOR基、または−N(R)R基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表し、Rは、芳香族基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基を表す。)
本発明によれば、シードポリマーの形成過程において副生する水溶性ポリマーが重合体の水系分散体の各種性能に与える影響を抑えることができ、且つ、分散安定性や各種物性に優れた重合体の水系分散体を得ることができる。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔原料等〕
本発明において用いることができるアニオン性不飽和単量体(A)は、アニオン性を付与できる官能基を有する不飽和単量体であれば特に限定されないが、好ましくは、カルボキシル基あるいはスルホ基を有する不飽和単量体である。
カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、好ましくは、遊離カルボキシル基を1分子あたり1個以上有する、炭素数3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸である。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などの不飽和ジカルボン酸やその無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどの不飽和ジカルボン酸のモノエステルやその誘導体;などが挙げられ、これらの1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
スルホ基を有する不飽和単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸;2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレート;などのスルホン酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体が挙げられ、これらの1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
アニオン性不飽和単量体(A)は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明において用いることができるカチオン性不飽和単量体(B)は、カチオン性を付与できる官能基を有する不飽和単量体であれば特に限定されないが、好ましくは、第2級または第3級アミノ基、あるいは第4級アンモニウム塩を有する不飽和単量体である。
第2級または第3級アミノ基を有する不飽和単量体としては、例えば、一般式(2)で表される単量体、複素環式含窒素不飽和単量体などが挙げられる。
Figure 2005112878
(一般式(2)中、Rは水素またはメチル基を、RはC〜C10のアルキレン基を、RおよびRは水素またはC〜C12のアルキル基を、Aは−COO−基、−CONH−基、または−O−基を表す。)
一般式(2)で示される単量体としては、例えば、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル;メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド;アミノエチルビニルエーテル、メチルアミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなどのアミノアルキルビニルエーテル;などが挙げられる。
複素環式含窒素不飽和単量体としては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2,4−ジメチルビニルピリジン、1−メチル−2−ビニルキノリン、N−ビニル−N´−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
第4級アンモニウム塩を有する不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルプロピルトリエチルアンモニウムブロマイド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリブチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルエチルブチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルジメチルフェニルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルジメチルシクロヘキシルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
カチオン性不飽和単量体(B)は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明において用いることができる疎水性不飽和単量体(C)は、アニオン性不飽和単量体(A)またはカチオン性不飽和単量体(B)と共重合可能な、非イオン性の疎水性不飽和単量体であれば特に限定されない。
疎水性不飽和単量体(C)としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和モノカルボン酸エステル;ジメチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルイタコネートなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド及びそのN置換誘導体;などが挙げられる。
疎水性不飽和単量体(C)は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明において用いることができる水性媒体としては、例えば、水;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。好ましくは水である。
本発明において用いることができるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)塩酸塩などのアゾ化合物類;前記のハイドロパーオキサイド類とアスコルビン酸、多価金属塩、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤;過硫酸アンモニウム;などが挙げられる。
〔アニオン性重合体の水系分散体の製造方法〕
本発明にかかるアニオン性重合体の水系分散体の製造方法は、アニオン性不飽和単量体(A)と、単量体(A)と共重合可能な疎水性不飽和単量体(C)とを用い、特定のシード重合法によって、水性媒体中でラジカル重合させてアニオン性重合体の水系分散体を製造する。
本発明にかかるアニオン性重合体の水系分散体の製造方法においては、まず、シードポリマーを生成させる(以下、アニオン性重合体の水系分散体の製造方法においてシードポリマーを生成させる工程を「アニオン性シードポリマー生成工程」と称することがある)ため、使用する全単量体成分の一部であって単量体(A)を必須に含む単量体成分を、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させる。
アニオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分は、単量体(A)を必須に含み、単量体(C)を任意成分として含んでいても良い。また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の不飽和単量体を含んでいても良い。好ましくは、単量体(A)と(C)の両方を含む。
アニオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分の量は、好ましくは、使用する全単量体成分の1〜90質量%であり、より好ましくは3〜80質量%、さらに好ましくは5〜70質量%である。90質量%よりも多いと、シードポリマー生成工程において、アニオン性不飽和単量体の含有量が多い場合には水溶性ポリマーが多量に生成し、目的の微粒子が合成できないおそれがある。また、アニオン性不飽和単量体の含有量が少ない場合には微粒子は合成できるがアニオン性が極めて低くなるおそれがある。1質量%よりも少ないと、添加できるアニオン性不飽和単量体の量が少なくなるため、アニオン性が極めて低い微粒子となるおそれがある。
アニオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分中の単量体(A)の含有割合は、好ましくは、1〜95質量%であり、より好ましくは2〜90質量%、さらに好ましくは3〜85質量%である。95質量%よりも多いと、得られるポリマーの水溶性が高くなり、シードポリマーが得られ難い。1質量%よりも少ないと、最終的に得られる重合体の水系分散体中のポリマー粒子にアニオン性を付与し難くなる。
アニオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分中の単量体(C)の含有割合は、好ましくは、5〜99質量%であり、より好ましくは10〜98質量%、さらに好ましくは15〜97質量%である。99質量%よりも多いと、最終的に得られる重合体の水系分散体中のポリマー粒子にアニオン性を付与し難くなる。5質量%よりも少ないと、得られるポリマーの水溶性が高くなり、シードポリマーが得られ難い。
アニオン性シードポリマー生成工程においては、当該工程で用いる単量体成分を、ラジカル重合開始剤を用いて水性媒体中でラジカル重合を行うが、その際に、当該工程で用いる単量体成分に対して0.05〜30質量%の一般式(1)で表される化合物(X)を存在させることが重要である。
Figure 2005112878
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、−COR基、−COOR基、または−N(R)R基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表し、Rは、芳香族基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基を表す。)
一般式(1)中の脂肪族基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基;などが挙げられる。
一般式(1)中の芳香族基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基;メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、クロロフェニル基などの置換フェニル基;ナフチル基;などが挙げられる。
一般式(1)で表される化合物(X)としては、R〜Rの中の少なくとも1種が芳香族基であり、Rが芳香族基である化合物が特に好ましい。最も好ましくは、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンである。
化合物(X)の使用量は、好ましくは、アニオン性シードポリマー生成工程で用いる単量体成分に対して0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。化合物(X)の使用量が上記範囲を外れると、本発明の効果が十分に発揮できない。
アニオン性シードポリマー生成工程におけるラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、アニオン性シードポリマー生成工程で用いる単量体成分に対して0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。上記範囲を外れると、ラジカル重合が十分に進行しないおそれがある。
アニオン性シードポリマー生成工程における水性媒体の使用量は、特に限定されないが、アニオン性シードポリマー生成工程で用いる単量体成分の濃度として1〜40質量%となるような量を用いることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。上記範囲を外れると、シードポリマーが十分に得られないおそれがある。
アニオン性シードポリマー生成工程におけるラジカル重合の際には、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤、連鎖移動剤など、その他の添加剤を使用しても良い。連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
アニオン性シードポリマー生成工程におけるラジカル重合の重合方法は、特に限定されず、従来公知の重合方法を行えば良い。また、重合温度も特に限定されないが、好ましくは20〜95℃、より好ましくは40〜90℃である。重合時間は1〜10時間が好ましい。
アニオン性シードポリマー生成工程で得られるシードポリマーの構造は特に限定されないが、水分散性の水系分散体粒子の形態が好ましい。また、水溶性あるいは水と混和性のある有機溶剤に可溶であるものでも良い。
本発明にかかるアニオン性重合体の水系分散体の製造方法においては、アニオン性シードポリマー生成工程で生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる(以下、シードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる工程を「アニオン性重合体の水系分散体生成工程」と称することがある)ことによって、アニオン性重合体の水系分散体を得る。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分は、単量体(C)を必須に含み、単量体(A)を任意成分として含んでいても良い。また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の不飽和単量体を含んでいても良い。好ましくは、単量体(C)のみである。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分の量は、使用する全単量体成分の中でアニオン性シードポリマー生成工程において用いた残りの量である。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分中の単量体(C)の含有割合は、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは5〜100質量%、さらに好ましくは10〜100質量%、特に好ましくは20〜100質量%である。1質量%よりも少ないと、分散安定性や各種物性に優れた重合体の水系分散体を得ることができない。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分中の単量体(A)の含有割合は、好ましくは、0〜99質量%であり、より好ましくは0〜80質量%、さらに好ましくは0〜60質量%、特に好ましくは0〜50質量%である。99質量%よりも多いと、分散安定性や各種物性に優れた重合体の水系分散体を得ることができない。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程においてラジカル重合を行う際には、ラジカル重合開始剤をさらに追加してもよい。追加するラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、アニオン性重合体の水系分散体生成工程で用いる単量体成分に対して0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。上記範囲を外れると、ラジカル重合が十分に進行しないおそれがある。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程におけるラジカル重合の際には、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤、連鎖移動剤、架橋モノマーなど、その他の添加剤を使用しても良い。また、水性媒体を追加してもよい。架橋モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程において単量体成分を添加する方法については特に限定されないが、例えば、単量体成分とラジカル重合開始剤とを別々に一括添加する、単量体成分とラジカル重合開始剤とを別々に滴下する、乳化した単量体成分とラジカル重合開始剤とを別々に一括添加する、乳化した単量体成分とラジカル重合開始剤とを別々に滴下する、などが挙げられる。
アニオン性重合体の水系分散体生成工程におけるラジカル重合の重合方法は、特に限定されず、従来公知の重合方法を行えば良い。また、重合温度も特に限定されないが、好ましくは20〜95℃、より好ましくは40〜90℃である。重合時間は1〜10時間が好ましい。
〔カチオン性重合体の水系分散体の製造方法〕
本発明にかかるカチオン性重合体の水系分散体の製造方法は、カチオン性不飽和単量体(B)と、単量体(B)と共重合可能な疎水性不飽和単量体(C)とを用い、特定のシード重合法によって、水性媒体中でラジカル重合させてカチオン性重合体の水系分散体を製造する。
本発明にかかるカチオン性重合体の水系分散体の製造方法においては、まず、シードポリマーを生成させる(以下、カチオン性重合体の水系分散体の製造方法においてシードポリマーを生成させる工程を「カチオン性シードポリマー生成工程」と称することがある)ため、使用する全単量体成分の一部であって単量体(B)を必須に含む単量体成分を、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させる。
カチオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分は、単量体(B)を必須に含み、単量体(C)を任意成分として含んでいても良い。また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の不飽和単量体を含んでいても良い。好ましくは、単量体(B)と(C)の両方を含む。
カチオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分の量は、アニオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分の量と同様である。
カチオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分中の単量体(B)の含有割合は、アニオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分中の単量体(A)の含有割合と同様である。95質量%よりも多いと、得られるポリマーの水溶性が高くなり、シードポリマーが得られ難い。1質量%よりも少ないと、最終的に得られる重合体の水系分散体中のポリマー粒子にカチオン性を付与し難くなる。
カチオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分中の単量体(C)の含有割合は、アニオン性シードポリマー生成工程において用いる単量体成分中の単量体(C)の含有割合と同様である。99質量%よりも多いと、最終的に得られる重合体の水系分散体中のポリマー粒子にカチオン性を付与し難くなる。5質量%よりも少ないと、得られるポリマーの水溶性が高くなり、シードポリマーが得られ難い。
カチオン性シードポリマー生成工程においては、当該工程で用いる単量体成分を、ラジカル重合開始剤を用いて水性媒体中でラジカル重合を行うが、その際に、アニオン性シードポリマー生成工程と同様、カチオン性シードポリマー生成工程で用いる単量体成分に対して0.05〜30質量%の化合物(X)を存在させることが重要である。化合物(X)の使用量は、アニオン性シードポリマー生成工程での使用量と同様である。
カチオン性シードポリマー生成工程におけるラジカル重合開始剤の使用量、水性媒体の使用量は、アニオン性シードポリマー生成工程での使用量と同様である。
カチオン性シードポリマー生成工程におけるラジカル重合の際には、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤、連鎖移動剤など、その他の添加剤を使用しても良い。連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
カチオン性シードポリマー生成工程におけるラジカル重合の重合方法は、アニオン性シードポリマー生成工程における方法と同様である。
カチオン性シードポリマー生成工程で得られるシードポリマーの構造は特に限定されないが、水分散性の水系分散体粒子の形態が好ましい。また、水溶性あるいは水と混和性のある有機溶剤に可溶であるものでも良い。
本発明にかかるカチオン性重合体の水系分散体の製造方法においては、カチオン性シードポリマー生成工程で生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる(以下、シードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる工程を「カチオン性重合体の水系分散体生成工程」と称することがある)ことによって、カチオン性重合体の水系分散体を得る。
カチオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分は、単量体(C)を必須に含み、単量体(B)を任意成分として含んでいても良い。また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の不飽和単量体を含んでいても良い。好ましくは、単量体(C)のみである。
カチオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分の量は、使用する全単量体成分の中でカチオン性シードポリマー生成工程において用いた残りの量である。
カチオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分中の単量体(C)の含有割合は、アニオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分中の単量体(C)の含有割合と同様である。
カチオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分中の単量体(B)の含有割合は、アニオン性重合体の水系分散体生成工程において用いる単量体成分中の単量体(A)の含有割合と同様である。
カチオン性重合体の水系分散体生成工程においてラジカル重合を行う際には、ラジカル重合開始剤をさらに追加してもよい。追加するラジカル重合開始剤の使用量は、アニオン性重合体の水系分散体生成工程における使用量と同様である。
カチオン性重合体の水系分散体生成工程におけるラジカル重合の際には、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤、連鎖移動剤、架橋モノマーなど、その他の添加剤を使用しても良い。また、水性媒体を追加してもよい。架橋モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
カチオン性重合体の水系分散体生成工程におけるラジカル重合の重合方法、重合温度、単量体成分を添加する方法は、アニオン性重合体の水系分散体生成工程における方法、温度と同様である。
〔重合体の水系分散体〕
本発明にかかるカチオン性またはアニオン性重合体の水系分散体の製造方法によれば、化合物(X)の特異な作用によってシードポリマー生成工程において副生した水溶性ポリマー末端に不飽和二重結合が導入されるため、重合体の水系分散体生成工程において疎水性不飽和単量体が添加されることにより、その末端二重結合にさらに疎水性不飽和単量体が共重合し、疎水性ポリマーとなる。このため、最終的に得られる重合体の水系分散体の水性媒体中に水溶性ポリマーがほとんど存在しない。したがって、水溶性ポリマーの存在による耐水性や接着性など重合体の水系分散体の各種性能への悪影響を抑えることができるとともに、優れた分散安定性も発現でき、凝集等の問題も回避できる。
また、本発明にかかるカチオン性またはアニオン性重合体の水系分散体の製造方法によれば、化合物(X)の特異な作用によってシードポリマー生成工程において生成したシードポリマーのポリマー鎖の末端にも必ず不飽和二重結合が導入されるため、重合体の水系分散体生成工程において疎水性不飽和単量体が添加されることにより、その末端二重結合にさらに疎水性不飽和単量体が共重合することになる。このため、従来のシード重合法で得られるいわゆるコアシェル構造の不均一組成のポリマー微粒子ではなく、共重合体構造の均一組成のポリマー微粒子が得られ、分散安定性や各種物性に優れた重合体の水系分散体が得られる。
本発明にかかるカチオン性またはアニオン性重合体の水系分散体の製造方法によって得られる重合体の水系分散体中のポリマー粒子の質量平均粒子径は、好ましくは10〜10000nmであり、より好ましくは20〜8000nm、さらに好ましくは30〜6000nmである。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<質量平均粒子径>
動的光散乱装置(堀場製作所製、LA−910)を用いて測定した。
〔実施例1〕
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた2000mL四つ口フラスコに、イオン交換水900g、ジメチルアミノエチルメタクリレート33gを仕込んだ後、塩酸にて系中のpHを3に調整した。次に、スチレン67g、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1.0gを仕込み、60℃に加温して2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩(和光純薬工業株式会社製、V−50)4%水溶液50gを添加し、反応を開始した。重合転化率98%以上(重量法により測定)まで重合を行い、シードポリマーを生成させた。
生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、スチレン200gを60℃で4時間にわたって連続的に添加した。なお、前記スチレン200gの添加と同時に、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩4%水溶液100gを追加添加した。前記スチレン200gの添加終了後、75℃に昇温して2時間反応を継続し、乳白色の重合体の水系分散体(1)を得た。
重合体の水系分散体(1)は、凝集物が全く見られない分散安定性に優れた水系分散体であった。
得られた重合体の水系分散体(1)を超遠心分離機(30000G、1時間)によって遠沈を行い、微粒子と媒体を完全に分離した。得られた上澄みについて、GPC測定を行った。また、得られた上澄みについて、150℃のホットプレート上で水分を蒸発させた後にポリマー等の残存物が存在するかどうかを質量測定で確認した。その結果、GPC測定でのピークは観察されず、ホットプレート上の残存物も確認されなかった。したがって、重合体の水系分散体(1)中に水溶性ポリマーの存在は確認されなかった。
重合体の水系分散体(1)中のポリマー粒子の質量平均粒子径は230nmであった。
〔実施例2〕
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた2000mL四つ口フラスコに、イオン交換水900g、アクリル酸33gを仕込んだ後、塩酸にて系中のpHを3に調整した。次に、スチレン67g、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1.0gを仕込み、70℃に加温して過硫酸アンモニウム4%水溶液50gを添加し、反応を開始した。重合転化率98%以上(重量法により測定)まで重合を行い、シードポリマーを生成させた。
生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、スチレン200gを70℃で4時間にわたって連続的に添加した。なお、前記スチレン200gの添加と同時に、過硫酸アンモニウム4%水溶液100gを追加添加した。前記スチレン200gの添加終了後、75℃に昇温して2時間反応を継続し、乳白色の重合体の水系分散体(2)を得た。
重合体の水系分散体(2)は、凝集物が全く見られない分散安定性に優れた水系分散体であった。
得られた重合体の水系分散体(2)を超遠心分離機(30000G、1時間)によって遠沈を行い、微粒子と媒体を完全に分離した。得られた上澄みについて、GPC測定を行った。また、得られた上澄みについて、150℃のホットプレート上で水分を蒸発させた後にポリマー等の残存物が存在するかどうかを質量測定で確認した。その結果、GPC測定でのピークは観察されず、ホットプレート上の残存物も確認されなかった。したがって、重合体の水系分散体(2)中に水溶性ポリマーの存在は確認されなかった。
重合体の水系分散体(2)中のポリマー粒子の質量平均粒子径は175nmであった。
〔実施例3〕
実施例2において、スチレンの代わりにn−メタクリル酸ブチルを用いた以外は実施例2と同様に行い、乳白色の重合体の水系分散体(3)を得た。
重合体の水系分散体(3)は、凝集物が全く見られない分散安定性に優れた水系分散体であった。
得られた重合体の水系分散体(3)を超遠心分離機(30000G、1時間)によって遠沈を行い、微粒子と媒体を完全に分離した。得られた上澄みについて、GPC測定を行った。また、得られた上澄みについて、150℃のホットプレート上で水分を蒸発させた後にポリマー等の残存物が存在するかどうかを質量測定で確認した。その結果、GPC測定でのピークは観察されず、ホットプレート上の残存物も確認されなかった。したがって、重合体の水系分散体(3)中に水溶性ポリマーの存在は確認されなかった。
重合体の水系分散体(3)中のポリマー粒子の質量平均粒子径は203nmであった。
〔比較例1〕
実施例1において、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを用いない以外は実施例1と同様に行い、乳白色の重合体の水系分散体(c1)を得た。
重合体の水系分散体(c1)は、分散安定性が十分でなく、ところどころに凝集物が見られた。凝集物の量は重合体の水系分散体に対して6質量%であった。
得られた重合体の水系分散体(c1)を超遠心分離機(30000G、1時間)によって遠沈を行い、微粒子と媒体を完全に分離した。得られた上澄みについて、GPC測定を行った。また、得られた上澄みについて、150℃のホットプレート上で水分を蒸発させた後にポリマー等の残存物が存在するかどうかを質量測定で確認した。その結果、GPC測定により、媒体中に水溶性ポリマーが存在することが確認でき、その含有量は重合体の水系分散体に対して1質量%であった。
〔比較例2〕
実施例2において、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを用いない以外は実施例1と同様に行い、乳白色の重合体の水系分散体(c2)を得た。
重合体の水系分散体(c2)は、分散安定性が十分でなく、ところどころに凝集物が見られた。凝集物の量は重合体の水系分散体に対して2質量%であった。
得られた重合体の水系分散体(c2)を超遠心分離機(30000G、1時間)によって遠沈を行い、微粒子と媒体を完全に分離した。得られた上澄みについて、GPC測定を行った。また、得られた上澄みについて、150℃のホットプレート上で水分を蒸発させた後にポリマー等の残存物が存在するかどうかを質量測定で確認した。その結果、GPC測定により、媒体中に水溶性ポリマーが存在することが確認でき、その含有量は重合体の水系分散体に対して2質量%であった。
本発明にかかるカチオン性またはアニオン性重合体の水系分散体の製造方法によって得られる重合体の水系分散体は、例えば、塗料や接着剤の材料、医療用の診断薬や電子材料の一部として好適に使用することができる。

Claims (2)

  1. アニオン性不飽和単量体(A)と、単量体(A)と共重合可能な疎水性不飽和単量体(C)とを用い、水性媒体中でラジカル重合させてアニオン性重合体の水系分散体を製造する方法において、
    (1)使用する全単量体成分の一部であって単量体(A)を必須に含む単量体成分を、当該単量体成分に対して0.05〜30質量%の一般式(1)で表される化合物(X)の存在下、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させてシードポリマーを生成させ、
    (2)生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる、
    ことを特徴とする、アニオン性重合体の水系分散体の製造方法。
    Figure 2005112878
    (一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、−COR基、−COOR基、または−N(R)R基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表し、Rは、芳香族基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基を表す。)
  2. カチオン性不飽和単量体(B)と、単量体(B)と共重合可能な疎水性不飽和単量体(C)とを用い、水性媒体中でラジカル重合させてカチオン性重合体の水系分散体を製造する方法において、
    (1)使用する全単量体成分の一部であって単量体(B)を必須に含む単量体成分を、当該単量体成分に対して0.05〜30質量%の一般式(1)で表される化合物(X)の存在下、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させてシードポリマーを生成させ、
    (2)生成したシードポリマーが存在する水性媒体中に、残りの単量体成分であって単量体(C)を必須に含む単量体成分を添加してラジカル重合させる、
    ことを特徴とする、カチオン性重合体の水系分散体の製造方法。
    Figure 2005112878
    (一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、−COR基、−COOR基、または−N(R)R基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表し、Rは、芳香族基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基を表す。)

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