JP2004331865A - 水溶性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、酸価60〜200を有する水溶性樹脂及び水を含有してなる水溶性樹脂組成物で、前記した水溶性樹脂が、一般式(A)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60重量%、及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性化合物と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95重量%を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和させて得られる水溶性樹脂組成物に関するものである
【選択図】なし
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、有機溶剤含有量の少ない又は有機溶剤を全く含まないにもかかわらず低粘度である水溶性樹脂組成物に関するもので、高外観が要求される水性塗料や水性印刷インキとして適用することのできる水溶性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水溶性樹脂は、メタクリル酸またはアクリル酸に代表されるカルボキシル基を含有するラジカル重合性単量体と、これと共重合可能なラジカル重合性化合物とを、塊状重合、溶液重合又は乳化重合によって共重合させ、次いで、塩基性化合物を用いて中和させることによって製造されている。樹脂を水に溶解させる方法としては、例えば、樹脂中にカルボキシル基を多く導入する方法が挙げられる。しかし、樹脂を水に溶解させることができる程度にまでカルボキシル基を含有するラジカル重合性単量体を樹脂中に導入した場合、得られる水溶性樹脂の、実用の濃度、例えば30重量%の濃度における水溶液の粘度が、著しく高くなるという問題がある。その結果、水溶性樹脂の製造工程及びこれを用いた製品の製造工程での作業効率が著しく低下する。
【0003】
そこで、水溶性樹脂の水溶液の、粘度の増加を抑制する方法としては、例えば、水溶性樹脂を水溶性の有機溶剤に溶解し、これに水を添加する方法がある。しかし、有機溶剤は、VOC(揮発性有機化合物)として、昨今の環境負荷低減及び作業環境改善等の観点から、敬遠されつつあるものであり、その含有量を低減させる又は全く含有させないことが望まれている。
【0004】
そこで、有機溶剤の含有量を低減、且つ樹脂中にカルボキシル基を多く導入しても、著しい粘度増加を引き起こさない樹脂組成物が検討され、かかる樹脂組成物としては、特定のカルボキシル基含有不飽和化合物を乳化重合させて得られる乳化重合体組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照)。特定のカルボキシル基含有不飽和化合物は、不飽和基とカルボキシル基とが比較的離れた構造をしていることから、ここでいう乳化重合体組成物は凝集しにくく、(メタ)アクリル酸を単独で用いて得られる乳化重合体組成物と比較した場合に、より多くのカルボキシル基を導入することができることから、有機溶剤を低減した場合でも乳化重合体組成物を水中に安定して分散させることができる。
【0005】
しかし、前記した乳化重合体組成物を水に分散させて得られるエマルジョンは、乳白色をしており、粒子径約80〜150nmの粒子が、実質的に水に分散されているものである。この乳白色をしたエマルジョンを水性塗料や水性印刷インキなどに適用した場合、その塗膜の外観及び光沢に問題が生ずる可能性がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−345825号公報(請求項1、実施例1〜6)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、有機溶剤含有量を低減又は有機溶剤を全く使用せずとも、その実用的な濃度、例えば約30〜45重量%の濃度において著しい粘度上昇を引き起こすことがなく、且つ光沢に優れた塗膜を得ることのできる水溶性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、特定のカルボキシル基含有不飽和化合物を用いて得られる樹脂の酸価を特定の範囲に調整することで、樹脂を水に溶解させることができると考え、検討を行った。その結果、有機溶剤の使用量を低減又は有機溶剤を全く使用せずとも、樹脂を水に溶解させることができただけでなく、透明性に優れ、且つ粘度の著しい増加を起こすことのない水溶性樹脂組成物を得ることができた。
【0009】
即ち、本発明は、酸価60〜200を有する水溶性樹脂及び水からなり、前記した水溶性樹脂が、一般式(A)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性化合物、及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体を水性媒体中で乳化重合させた後、塩基性化合物で中和させて得られる水溶性樹脂組成物に関するものであり、好ましくは前記水溶性樹脂の重量平均分子量が5,000〜50,000であり、好ましくは前記水溶性樹脂の濃度が25〜50重量%であり、且つJIS K7105に基づいて測定した光線透過率が、60%以上であり、好ましくは前記水溶性樹脂の濃度が25〜50重量%であり、且つ粘度が、10〜2,000mPa・sであり、好ましくは(A)式のR2がC5H10であり、nが1以上5以下である水溶性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の水溶性樹脂組成物は、酸価60〜200を有する水溶性樹脂及び水からなるものである。水溶性樹脂組成物中の水溶性樹脂の濃度は、実用的な濃度、例えば20〜50重量%程度が好ましく、30〜45重量%程度がより好ましい。
【0012】
【化2】
一般式(A)
[式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数2〜18の置換もしくは無置換アルキレン基であり、nは1〜10の整数である。]
【0013】
ここで、酸価60〜200を有する水溶性樹脂は、一般式(A)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体5〜60重量%、及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性化合物と共重合可能なラジカル重合性単量体40〜95重量%を水性媒体中で乳化重合させて得られる共重合体の酸基の一部又は全部を、塩基性化合物で中和させて得られるものである。
【0014】
一般式(A)で表されるカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体は、例えば、(a)ω−ヒドロキシカルボン酸とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(b)α,ω−ポリエステルジカルボン酸とヒドロキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(c)酸無水物とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とエポキシ化合物とを反応させる方法および(d)特公平3−21536号公報に示されているようなカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とラクトンとを酸性触媒の存在下で反応させる方法等の、当業者に周知の方法で製造されるものである。しかしながら、前記(a)〜(c)の方法では、ラジカル重合性官能基が全くないもの、あるいは2個入ったものなどが副生成物として多量に生じることから、ラジカル重合性官能基を必ず1個含むカプロラクトンポリエステル不飽和単量体が得られる(d)の方法で長鎖カルボキシル基含有単量体を製造することが好ましい。
【0015】
特に(d)の方法では、1分子中のε−カプロラクトン単位数が1〜5なる長鎖カルボキシル基含有単量体であるα−ハイドロ−ω−((1−オキソ−2−プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル))が主に得られる。1分子中のε−カプロラクトン単位数については、塗料の塗膜の外観を考慮すれば、1〜10の範囲内が好ましく、更には1以上5以下がより好ましい。具体的には、1分子中のε−カプロラクトン単位の平均数が2なる商品名アロニクスM−5300(東亜合成化学工業(株))を、水性アクリル樹脂(A)に好適に用いることができる。
【0016】
前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸エステル類;
【0017】
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;
【0018】
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;
【0019】
メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有単量体;
【0020】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチル、クロトン酸等の、一般式(A)に表されるカルボキシル基含有単量体以外のカルボキシル基含有単量体;
【0021】
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)エチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)ブチル、(メタ)アクリル酸(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き水酸基を含有するアリル化合物;
【0022】
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基を含有するビニルエーテル化合物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールクロトン酸アミドの如き水酸基を有する不飽和カルボン酸アミド化合物;
【0023】
リシノール酸等の水酸基含有不飽和脂肪酸類;リシノール酸アルキル等の水酸基含有不飽和脂肪酸エステル類;
【0024】
水酸基含有モノマーをエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの如きアルキレンオキサイドと付加反応せしめて得られる単量体等;
【0025】
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の3級アミノ基含有単量体;
【0026】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体類;
【0027】
フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の1分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体類などが挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、これと共重合可能なラジカル重合性単量体との共重合比率は、5/95〜60/40(重量比)となるような範囲が好ましく、10/90〜50/50の範囲がより好ましい。この範囲であれば、水溶性樹脂を水に容易に溶解させることができ、且つ水溶性樹脂の水溶液の粘度を低くより保つことができる。
【0029】
また、水溶性樹脂組成物中の水溶性樹脂の酸価は、60〜200の範囲が好ましく、80〜150の範囲がより好ましい。この範囲であれば、水溶性樹脂を水に容易に溶解させることができ、且つ水溶性樹脂の水溶液の粘度を低く維持することができる。
【0030】
水溶性樹脂に使用することのできる、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体、及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体を用いて得られる共重合体の重合方法は、得られる共重合体の重合反応操作及び分子量調節が容易であることから、例えば、乳化重合法、有機溶剤を用いた溶剤重合法及び塊状重合法等のラジカル重合開始剤を用いた方法が挙げられる。特に、有機溶剤量を削減できる観点、操作性の観点から、乳化重合法が好ましい。
【0031】
共重合体の製造方法である乳化重合法は、乳化剤を添加した水中でモノマーを添加、撹拌しながら乳化分散させ、重合反応させる方法である。例えば、水又は必要に応じてアルコールなどのような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を添加し、加熱撹拌の下、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体、前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体及びラジカル重合開始剤等を一括仕込み、連続滴下又は分割添加し、重合反応させる方法である。このとき、乳化剤と水とを用いて予め乳化させた各種ラジカル重合性単量体を同様に滴下してもよい。
【0032】
乳化重合法で使用することのできる乳化剤としては、一般的な乳化重合に用いられているものであれば、アニオン性、カチオン性及びノニオン性のいずれの乳化剤でも特に制限なく使用することができる。
【0033】
特に、アニオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0034】
また、カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0035】
またノニオン性乳化剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
また、一般的に、反応性乳化剤と称されるラジカル重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤も使用することができる。それらのうち特に代表的なものとしては、例えばスルホン酸基またはその塩を有する「ラテムルS−180A」[花王(株)製]または「エレミノールJS−2」[三洋化成(株)製]、硫酸基またはその塩を有する「アクアロンKH−1025」[第一工業製薬(株)製]または「アデカリアソープSR−10」[旭電化工業(株)製]、リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」[第一工業製薬(株)製]等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。しかし、一般式(A)で示すカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体のカルボキシル基を中和させたものを、反応性乳化剤として使用する方が、乳化剤の使用量を減らすことができるためより好ましい。
【0037】
乳化剤の使用量は、一般的に乳化重合法において使用されているような量、すなわち、水溶性樹脂に使用するカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体の合計100重量部に対し、0.1〜10重量部なる範囲内が好ましく、0.2〜5重量部なる範囲内がより好ましい。
【0038】
共重合体の製造方法である乳化重合法の重合条件のうち、反応温度は、使用するラジカル重合開始剤のラジカル発生方法によって決定されるものであり、例えば熱分解反応でラジカルを発生させる場合は60〜90℃であり、過硫酸系・過酸化物系開始剤と還元剤との組み合わせたレドックス反応の場合では30〜70℃であること好ましい。また、反応時間は、1〜10時間であることが好ましい。
【0039】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルまたはその塩酸塩、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドあるいは過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。また、これらのラジカル重合開始剤と共に、還元剤を併用することも可能であり、例えば、ナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等を使用することができる。
【0040】
ラジカル重合開始剤の使用量は、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体及び前記したカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体の合計100重量部に対して、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜2重量%がより好ましい。
【0041】
ラジカル重合開始剤と併用可能な還元剤としては、例えば、ナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸などが挙げられる。
【0042】
水溶性樹脂に使用する共重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤を使用することができる。それらのうち代表的なものとしては、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ヘキサデシルメルカプタンなどのような各種のアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンなどのような各種のアルキルベンジルメルカプタン類;チオグリコール酸、チオリンゴ酸などのような各種のチオカルボン酸類あるいはその塩類;n−ブチルチオグリコネート、ドデシル−3−メルカプトプロピオネートなどのような各種のチオカルボン酸アルキルエステル類;モノエタノールアミンチオグリコレートのような、各種の含窒素チオール類;トリメトキシシリルプロピルメルカプタンなどに代表されるような各種の反応性官能基含有メルカプタン類;α−メチルスチレンダイマーなどのような各種のダイマー型連鎖移動剤などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0043】
また、共重合体の製造方法である乳化重合法としては、前記した乳化重合法に加えて、例えば無乳化剤乳化重合法、シード乳化重合法、マイクロエマルション重合法、パワーフィード法、ショットグロース法などのような種々の方法を適用することも可能である。
【0044】
次に、得られた共重合体の酸基の一部又は全部を中和させるのに使用する塩基性化合物について説明する。
【0045】
本発明に使用することのできる塩基化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのような各種の無機塩基;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、イソブチルアミン、またはジプロピルアミンのような各種のアルキルアミンなどをはじめ、さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような各種のアミノアルコール類、またはモルホリンなどのような各種の有機アミン類;あるいはアンモニアなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物で使用することができる。
【0046】
特に、塩基性化合物としてアンモニアを使用すると、本発明の水溶性樹脂組成物中に有機溶剤を全く含まないものとすることができることから好ましい。
【0047】
塩基性化合物の添加量は、水溶性樹脂の酸価に対して0.5〜1.5当量となる範囲内で用いることが好ましく、0.8〜1.2当量の範囲で用いることがより好ましい。
【0048】
かくして得られる水溶性樹脂の重量平均分子量は、5,000〜50,000となるような範囲が好ましく、5,000〜30,000となる範囲がより好ましい。この範囲であれば、水溶性樹脂を水に容易に溶解させることができ、且つ水溶性樹脂の水溶液の粘度を低く維持することができる。
【0049】
水溶性樹脂の濃度が25〜50重量%である水溶性樹脂組成物のJIS K7105に基づいて測定した光線透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。かかる範囲の光線透過率を有する水溶性樹脂組成物を用いることで、光沢及び外観の優れた塗膜を得ることができる。
【0050】
ここで光線透過率とは、水溶性樹脂の濃度が25〜50重量%であるとき、村上色彩技術研究所製の変角全光線透過率計「HG−200」で、JIS K7105に関する液状サンプルの測定方法に基づき、全光線透過率および拡散透過率を算出し、その全光線透過率と拡散透過率の差である平行光線透過率のことである。
【0051】
水溶性樹脂の濃度が25〜50重量%であるときの水溶性樹脂組成物の粘度は、10〜2,000mPa・sの範囲が好ましく、10〜1,000の範囲がより好ましい。前記した水溶性樹脂は、水に溶解しているものの、その水溶液の粘度は、著しく増粘せず、作業性に優れた水溶性樹脂組成物を得ることができる。
【0052】
本発明の水溶性樹脂組成物は、環境負荷の低減と高外観が要求される水性塗料や水性印刷インキ等の用途として有用に使用することができる。
【0053】
本発明の水溶性樹脂組成物には、その用途に応じて顔料、造膜助剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、増粘剤などの添加剤を添加することができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、以下の部及び%はいずれも重量に基づく値である。
【0055】
実施例1
アロニクスM5300(東亞合成化学製、以下M5300と略記)の75部、メタクリル酸(以下MAAと略記)の24部、スチレン(以下STと略記)の60部、メタクリル酸メチル(以下MMAと略記)の105部、アクリル酸ブチル(以下BAと略記)の36部、n−ラウリルメルカプタン(以下LSHと略記)の9部を混合しラジカル重合性単量体混合液(A)とした。
【0056】
しかるのち、攪拌機、温度計、冷却器および滴下漏斗を取り付けた2リットル反応容器にイオン交換水の620部と、ニューコール707SF(日本乳化剤(株)製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム、有効成分=約30%)の9部を仕込み、窒素ガスを送り込みつつ攪拌しながら釜内温度を80℃に昇温した。昇温後、重合開始剤としての過硫酸ナトリウムの1.5部を添加し、次いでラジカル重合性単量体混合液(A)の滴下を開始した。2時間で滴下し、滴下終了後80℃で1時間攪拌した。その後、25℃まで冷却し、アンモニア水によって中和することにより、目的とする水溶性樹脂組成物を得た。上記の水溶性樹脂組成物は、下記の性状を示した。固形分:30.2%、粘度:112mPa・s、pH:8.0。前記水溶性樹脂組成物中の水溶性樹脂の酸価:、105.0、重量平均分子量:11,300、光線透過率(固形分を25%に調整):90%
【0057】
実施例2〜3
以上を実施例1とすると、以下の第1表に示すように、使用するラジカル重合性単量体混合液の組成を変更し、反応終了後に加えるアンモニア水の量に応じて、最初に仕込むイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にして乳化重合を行い、水溶性樹脂組成物を製造した。
【0058】
比較例1,2
以下の第1表に示すように、使用するラジカル重合性単量体混合液の組成を変更し、反応終了後に加えるアンモニア水の量に応じて、最初に仕込むイオン交換水の量を調整した以外は、実施例1と同様にして乳化重合を行い、樹脂組成物を製造した。
【0059】
【表1】
【0060】
顔料、及び実施例1〜3で得られた水溶性樹脂組成物又は比較例1,2で得られた樹脂組成物を用いて、第2表に記載の割合となるように練合し、水性インキ用顔料分散体を調製した。これをコートボール紙上に、バーコーター#4を用いてそれぞれ塗布した。次いで、熱風乾燥機を使用して100℃で10秒間乾燥させ、得られた塗膜の光沢を評価した。
【0061】
【表2】
第2表 配合処方
【0062】
1)大日本インキ化学工業(株)製 顔料、B15−3(銅フタロシアニンブルー)
【0063】
【表3】
第3表
【0064】
光沢値 :反射光沢計Micro−TRI−gloss(BYK Gardner社製)を用いて、60度反射光沢を測定し、評価判定した。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、有機溶剤の含有量を低減又は有機溶剤を全く含まなくても、著しい粘度の増加を起こさず、環境負荷の低減と高外観が要求される水性塗料や水性印刷インキ等に適用可能な水溶性樹脂組成物を得ることができる。
Claims (5)
- 前記水溶性樹脂の重量平均分子量が、5,000〜50,000である請求項1記載の水溶性樹脂組成物。
- 前記水溶性樹脂の濃度が25〜50重量%であり、且つJIS K7105に基づいて測定した光線透過率が、60%以上である請求項1又は2に記載の水溶性樹脂組成物。
- 前記水溶性樹脂の濃度が25〜50重量%であり、且つ粘度が、10〜2,000mPa・sである請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性樹脂組成物。
- 前記したR2がC5H10であり、nが1以上5以下である請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性樹脂組成物。
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