JP2005111816A - 溶液製膜方法及びポリマーフイルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 光学等方性に優れた薄手のフイルムを得る。
【解決手段】 ジクロロメタンと貧溶媒であるアルコールとを混合した溶媒を用いてドープ12を調製する。インライン配管16中のドープにアルコール20を送液してスタティックミキサ30で混合し、アルコールの組成比が高まった流延ドープ18とする。回転ドラム32の温度を−7℃に調整する。流延ドープ18を流延ダイ31から膜厚が40μmとなるように回転ドラム32へ流延し、流延膜33を形成する。アルコール組成比が高く、冷却された流延膜33の貯蔵弾性率は15万Pa以上となるため、剥ぎ取り時の剥取不良の発生が無く、延伸も最小限に抑えられた軟膜38を得る。軟膜38をテンタ式乾燥機50で乾燥し、延伸率を110%以下となるように延伸する。フイルム51は、膜厚が薄く面状に優れかつ光学等方性にも優れている。
【選択図】 図1

Description

本発明は溶液製膜方法及びポリマーフイルムに関し、更に詳しくは液晶表示装置などの光学フイルムに用いられる薄手のポリマーフイルム及びそのフイルムを製膜する溶液製膜方法に関するものである。
液晶表示装置は薄手化が可能であり、かつ低電圧、低消費電力で駆動するという多大な利点から、携帯電話、ノートパソコン等を中心に表示装置として広く採用されている。かかる液晶表示装置は、液晶分子を有する液晶セルの両側に互いに垂直に配置される2枚の偏光板を有するのが最も基本的な構成である。近年、液晶表示装置は、更なる軽量化, 薄手化が進行する傾向にあり、それに伴って、液晶表示装置を構成する偏光板等についても薄手化が求められている。
セルロースアシレートフイルムはその優れた光学的等方性、耐湿性から液晶表示装置を構成する偏光板の保護フイルムとして一般的に使用されている。偏光板はポリビニルアルコールとヨウ素の錯体から成る偏光膜の両側にセルロースアシレートフイルムを貼り付けた構成を有する(非特許文献1参照。)。
発明協会公開技報公技番号2001−1745号
液晶表示装置1台について少なくとも4枚のセルロースアシレートフイルムが使用されることとなる。したがって、液晶表示装置の薄手化、軽量化という時代の流れにともなう、セルロースアシレートフイルムの薄手化の必要性は非常に高い。
また、液晶表示装置の視野角特性を維持したまま、セルロースアシレートフイルムを薄手化にするには、薄手化に伴ってセルロースアシレートフイルムの光学特性を損なわないことが必要である。しかしながら、従来と同一の製造方法によって薄手のセルロースアシレートフイルムを製造すると、容易に光学特性を損なってしまい、光学特性を維持するには生産性を犠牲にしなければならない状況であった。
本発明は、優れた光学特性を有する10μm〜60μmの膜厚のフイルムが得られる溶液製膜方法及びそのフイルムを提供することを目的とする。また、前記フイルムから構成される偏光板,偏光板保護フイルム,光学補償フイルム,液晶表示装置を提供することも目的とする。
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成した後に前記支持体から剥ぎ取り、膜厚10μm以上60μm以下のフイルムを製膜する溶液製膜方法において、前記支持体から剥ぎ取る際の前記流延膜の貯蔵弾性率を150000Pa以上とする。前記支持体の温度を−5℃以下とすることが好ましく、より好ましくは−7℃以下であり、最も好ましくは−10℃以下とすることである。前記流延する際のドープを構成する溶媒のうち5重量%以上50重量%以下が貧溶媒であることが好ましい。
前記ドープを調製した後から、前記流延を行う前の間で、前記ドープに少なくとも貧溶媒を含む溶媒を添加することが好ましい。前記貧溶媒を含む溶媒の添加をインラインで行い、混合機で混合することが好ましい。前記混合機にはスタティックミキサを用いることがより好ましい。前記ドープ中の溶媒100重量%に対して前記貧溶媒を20重量%以下添加することが好ましい。前記貧溶媒に少なくとも一種類のアルコールを含むものを用いることが好ましい。前記フイルムの搬送方向における延伸率を110%以下として延伸することが好ましい。前記フイルムの重量をWfとし、前記フイルムに含有している溶媒の重量をWsとしたときに、前記残留溶媒量((Ws/Wf)×100)が、10重量%以上ときに延伸を行うことが好ましい。
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成した後に前記支持体から剥ぎ取り、膜厚10μm以上60μm以下のフイルムを製膜する溶液製膜方法において、前記フイルムの搬送方向における延伸率を110%以下とする。前記フイルムの重量をWfとし、前記フイルムに含有している溶媒の重量をWsとしたときに、前記残留溶媒量((Ws/Wf)×100)が、10重量%以上ときに延伸を行うことが好ましい。
前記ポリマーにセルロースアシレートを用いることが好ましく、より好ましくはセルロースアセテートであり、最も好ましくはセルローストリアセテートを用いることである。前記ドープを構成する溶媒が、全て非塩素系有機溶媒からなるものを用いることも好ましく、塩素系有機溶媒を含む溶媒を用いることも好ましい。
前記流延する際に共流延法,逐次流延法,逐次共流延法のいずれの方法を行うことも本発明には含まれる。本発明には、前記溶液製膜方法により製膜されたフイルムも含まれる。
本発明のポリマーフイルムは、ポリマーフイルムを製膜した際の搬送方向の音波伝達速度が2.65km/sec以下でありかつ、前記ポリマーフイルム面に沿い前記搬送方向に対して垂直方向の音波伝達速度が2.20km/sec以上であることが好ましい。前記搬送方向の音波伝達速度C1と、前記垂直方向の音波伝達速度C2と、の比(C1/C2)が0.8<(C1/C2)<1.5の関係を有することが好ましい。
前記搬送方向の偏光(I(A))と、前記搬送方向に対して垂直方向の偏光(I(B))と、を使用して測定する赤外分光スペクトルが下記の式(1)を満たすことが好ましい。
1050(I(A))/A1050(I(B))≦1.2・・(1)
1050(I(A)))は、I(A)を用いて測定される1050cm-1の吸光度、
1050(I(B)))は、I(B)を用いて測定される1050cm-1の吸光度を意味する。
前記搬送方向の偏光(I(A))と、前記搬送方向に対して垂直方向の偏光(I(B))と、を使用して測定する赤外分光スペクトルが下記の式(2)を満たすことが好ましい。
1760(I(A))/A1760(I(B))≦1・・(2)
1760(I(A)))は、I(A)を用いて測定される1760cm-1の吸光度、
1760(I(B)))は、I(B)を用いて測定される1760cm-1の吸光度を意味する。
Reが10nm以下であることが好ましい。Reとは以下の式(3)に示すフイルムの面内レタデーション値を意味する。
Re=(Nx−Ny)×d・・(3)
Nx=前記ポリマーフイルムの搬送方向の複屈折率、
Ny=前記ポリマーフイルムの垂直方向の複屈折率、
d=前記ポリマーフイルムの膜厚(nm)。
前記ポリマーはセルロースアシレートであることが好ましく、より好ましくはセルロースアセテートであり、最も好ましくはセルローストリアセテートである。偏光板を保護する保護フイルムとして用いられることが好ましい。前記偏光板は、液晶表示装置に用いられることが好ましい。光学補償フイルムに用いられることが好ましい。前記光学補償フイルムは、液晶表示装置に用いられることが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成した後に前記支持体から剥ぎ取り、膜厚10μm以上60μm以下のフイルムを製膜する溶液製膜方法において、前記支持体から剥ぎ取る際の前記流延膜の貯蔵弾性率を150000Pa以上とするから、剥ぎ取る際に加えられる剥取応力による延伸を抑制でき、ポリマー分子の配列がランダム状になるためポリマー分子の配向性による偏光が生じ難く、光学等方性に優れたフイルムを得ることができる。また、前記支持体の温度を−5℃以下とすることで、流延膜の貯蔵弾性率を容易に大きくできる。
前記流延する際のドープを構成する溶媒のうち5重量%以上50重量%以下が貧溶媒とすることが好ましく、この場合にも前記流延膜の貯蔵弾性率を大きくすることができる。また、前記ドープを調製した後から、前記流延を行う前の間で、前記ドープに少なくとも貧溶媒を含む溶媒を添加することで、ドープを調製する際には、良溶媒の組成比が高い溶媒を用いるので調製時間を短縮することができ、ドープから形成される流延膜は、貧溶媒の比率が高い溶媒を含むため貯蔵弾性率を高くできる。また、前記貧溶媒を含む溶媒の添加をインラインで行い、混合機で混合するから、連続して製膜することが可能となるとともに、均一な組成のドープを連続して調製できる。
また、本発明の溶液製膜方法は、ポリマーを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成した後に前記支持体から剥ぎ取り、膜厚10μm以上60μm以下のフイルムを製膜する溶液製膜方法において、前記フイルムの搬送方向における延伸率を110%以下とするから、ポリマー分子の配列をランダム状とすることが可能となり、配向したポリマーにより偏光が生じることを防止する。なお、前記フイルムの残留溶媒量が、製膜されたフイルムの乾量基準で10重量%以上含まれている際に延伸を行うことで、フイルム面上に生じたツレシワなどの矯正が可能となる。この場合には、前述したようにポリマーの配向を抑制するため延伸率を110%以下とする。
前記ポリマーにセルロースアシレートを用いることで、光学等方性に優れたTACフイルムを得ることができる。この場合には、セルロースのアシル化の置換位置および側鎖の長さなどを適宜選択することで、ポリマーの配向が生じることを更に抑制できる。また、前記ドープを構成する溶媒が、全て非塩素系有機溶媒からなるものにも本発明は適用可能であるので、環境保全に優れている。
本発明の溶液製膜方法は、共流延法,逐次流延法,逐次共流延法などの重層流延にも適用可能であるので、ニーズに応じた様々な種類のフイルムを製膜できる。
本発明のポリマーフイルムは、
a)前記フイルムを製膜する際の搬送方向の音波伝達速度が2.65km/sec以下でありかつ、前記フイルム面に沿い前記搬送方向に対して垂直方向の音波伝達速度が2.20km/sec以上。
b)前記フイルムを製膜する際の搬送方向の偏光(I(A))と、前記フイルム面に沿い前記搬送方向に対して垂直方向の偏光(I(B))と、を使用して測定する赤外分光スペクトルが下記の式(1)を満たす。
1050(I(A))/A1050(I(B))≦1.2・・(1)
1050(I(A)))は、I(A)を用いて測定される1050cm-1の吸光度、
1050(I(B)))は、I(B)を用いて測定される1050cm-1の吸光度を意味する。
c)前記フイルムを製膜する際の搬送方向の偏光(I(A))と、前記フイルム面に沿い前記搬送方向に対して垂直方向の偏光(I(B))と、を使用して測定する赤外分光スペクトルが下記の式(2)式を満たす。
1760(I(A))/A1760(I(B))≦1・・(2)
1760(I(A)))は、I(A)を用いて測定される1760cm-1の吸光度、
1760(I(B)))は、I(B)を用いて測定される1760cm-1の吸光度を意味する。
以上のパラメーターのうち、少なくとも1つを満たすTACフイルムは、TAC分子がランダムに配列しており、Reが10nm以下となり、光学等方性に優れている。
本発明の製品である偏光板,液晶表示装置,光学補償フイルムは、光学等方性に優れたフイルムを用いるので、光学特性が優れている。また、本発明の溶液製膜方法により製膜されるフイルムの膜厚は10μm〜60μmの範囲であるので、前記製品に本発明のフイルムを用いることで、製品を薄くすることが可能となる。この場合には、ポリマーにTACを用いたTACフイルムを用いることで、光学等方性に更に優れたものを提供することが可能となる。
[ポリマー]
製膜されるフイルムを液晶表示装置(LCD)用光学フイルムに用いる際には、光学等方性に優れ、透水性が低く、安定した視野角特性を持ち、膜厚が薄い(例えば、10μm〜60μm)ものが求められる。以下の説明において、膜厚が10μm〜60μmのフイルムを薄手フイルムと称する。そのようなフイルムの原料ポリマーには、セルロースアシレートを用いることが好ましく、特に、セルロースアセテートを使用することが好ましい。さらに、このセルロースアセテートの中では、その平均酢化度が57.5%ないし62.5%(アセチル置換度:2.6ないし3.0)のセルローストリアセテートを使用することが好ましく、より好ましくは平均酢化度が58.8ないし61.3%(アセチル置換度:2.7ないし2.9)のものを用いることである。なお、以下の説明でセルロースアシレートをTACと総称する。
ドープの溶媒に塩素系有機溶媒を用いる際には、アセチル置換度が2.8以上2.85以下のものを用いることがより好ましい。また、その場合に、6位のアセチル置換度は0.8以上0.97以下のものを用いることがより好ましい。なお、セルローストリアセテートを用いる場合には、その原料が綿花リンタのものと木材パルプのものがあり、本発明では綿花リンタ、木材パルプのいずれをも用いることが可能であり、それらを混合したものを用いてもよい。酢化度とは、セルロースアセテート中の結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。また、置換度は、前記酢化度から算出された値を用いる。
本発明で用いられるTACは、粒子形状のものが好ましい。この場合には、使用する粒子の90重量%以上が0.1mmないし4mmの粒子径、好ましくは1mmないし4mmを有する。また、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上の粒子が0.1mmないし4mmの粒子径を有する。さらに、使用する粒子の50重量%以上が2mmないし3mmの粒子径を有することが好ましい。より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の粒子が2mmないし3mmの粒子径を有する。TACの粒子形状は、なるべく球に近い形状を有することが好ましい。
[溶媒]
(ドープ調製用溶媒)
ドープを調製する際には、塩素系有機溶媒、非塩素系有機溶媒のいずれをも用いることができる。なお、調製されたドープを以下の説明において、調製ドープと称する。塩素系有機溶媒とは、一般的にハロゲン化炭化水素化合物を意味しており、代表的な例として、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩素系有機溶媒は、TACの溶解性が優れており、良溶媒と称される。また、アルコール類(例えば、メタノール,エタノール,n−ブタノール(なお、本発明において、特に限定しない限り、ブタノールとは、n−ブタノールを意味する)など)は、TACの溶解性が塩素系有機溶媒よりも低いため貧溶媒と称される。塩素系有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)を主溶媒とし、他の溶媒を混合させた混合溶媒として用いても良いし、塩素系有機溶媒を単独(100重量%)で用いても良い。
ドープを調製する溶媒として非塩素系有機溶媒のみを用いることもできる。前述した塩素系有機溶媒(ジクロロメタンなど)は、TACを容易に溶解する良溶媒であるが、近年は人体への影響や環境への影響も懸念されている。そこで、塩素系有機溶媒を用いずに、非塩素系有機溶媒のみを使用してドープを調製しても良い。非塩素系有機溶媒としては、例えば、エステル類(例えば、酢酸メチル,メチルホルメート,エチルアセテート,アミルアセテート,ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン,ジオキソラン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,メチル−tert−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール,エタノール,ブタノールなど)などがあるが、これらに限定されるものではない。非塩素系有機溶媒のなかでTACの溶解性が優れている良溶媒には、エステル類(主に酢酸メチル)とケトン類(主にアセトン)が挙げられ、貧溶媒としてはアルコール類が挙げられる。良溶媒と他の溶媒とを混合させた混合溶媒として用いても良いし、良溶媒のみで使用しても良い。また、非塩素系有機溶媒は、通常、水を含み易い性質を有しているので、製膜に影響を及ぼさない程度まで脱水処理を行ったものを用いることがより好ましい。
(添加溶媒)
ドープに貧溶媒組成比を上昇させるため貧溶媒を添加することが好ましい。以下の説明において添加する溶媒を添加溶媒と称する。これは、ドープを調製する際には、良溶媒の比率を高くしTACを溶媒に容易に溶解させ調製時間を短縮する。流延するドープ(以下、流延ドープと称する)から形成される流延膜を剥ぎ取る際に含まれている溶媒の貧溶媒比率が高いと貯蔵弾性率が大きくなり、剥ぎ取り不良の発生を防止できる。なお、この点については、後に詳細に説明する。また、本発明で用いられるドープ調製用溶媒及び添加溶媒は、市販品や回収した溶媒を用いることができる。なお、これら溶媒には、製膜されるフイルムの特性に影響を及ぼさない程度に精製させたものを用いる。
添加溶媒には、アルコールを用いることが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜4のアルコール(例えば、メタノール,エタノール,ブタノールなど)が挙げられる。アルコールは、TACと親和性が高く、TACの変成などが生じるおそれがない。また、ポリマーを溶解する溶媒(例えば、ジクロロメタン,酢酸メチル)と広い組成比の混合溶媒を得ることができ、比較的人体への影響が小さく、環境保全に優れている。さらに、他の溶媒と比較して蒸気圧が高く、流延膜中に残留しやすいため流延膜を剥ぎ取る際に貯蔵弾性率を向上させる効果が得られやすい。添加溶媒は、貧溶媒のみであっても良いし、良溶媒と混合された溶媒でも良い。また、添加溶媒には、実験条件に応じてTACなどのポリマーや添加剤などを添加しておいても良い。なお、添加溶媒の添加量は、調製ドープの溶媒組成比と好ましい流延ドープの溶媒組成比とから適宜決定する。
[添加剤]
ドープ中には添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤などがある。具体的な可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
具体的な紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物,ベンゾトリアゾール系化合物,サリチル酸エステル系化合物,ベンゾフェノン系化合物,シアノアクリレート系化合物,ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースアシレートに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。さらには、特開平8−29619号公報に記載されているベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、あるいは同8−239509号公報に記載されている紫外線吸収剤も添加することができる。その他、公知の紫外線吸収剤を添加しても良い。なお、紫外線吸収剤は一種類の化合物を用いても良いし、二種類以上の紫外線吸収剤を用いても良い。また、液晶表示装置用フイルムに用いられる紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
好ましい紫外線吸収剤のより具体的なものとしては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール,ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が最も好ましい。また例えば、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどのヒドラジン系化合物の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系加工安定剤を併用してもよい。
ドープには、フイルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のためにマット剤(微粒子粉体)を含有させることができる。マット剤の表面の突起物の平均高さは0.005μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01μm〜5μmである。その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。また、1次粒子径が、1nm〜500nmの範囲のものを用いることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。使用されるマット剤としては、無機化合物、有機化合物ともに使用可能である。無機化合物としては、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、酸化ケイ素系(例えば、二酸化ケイ素など)、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。
また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動濾過、風力分級など)することによっても得られる。有機化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。また、微粒子粉体は、あまり多量に添加するとフイルムの柔軟性が損なわれるなどの弊害も生じるため、ドープ中のポリマーに対して0.01重量%〜5重量%を含むように調製することが望ましい。
(離型剤)
また、ドープには、離型操作を容易にするための離型剤を添加することもできる。離型剤には、高融点のワックス類、高級脂肪酸およびその塩やエステル類、シリコーン油、ポリビニルアルコール、低分子量ポリエチレン、植物性タンパク質誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。離型剤の添加量は、フイルムの表面の光沢や平滑性に影響を及ぼすため、ドープ中のポリマーに対して0.001重量%〜1重量%を含むように調製することが望ましい。
(フッ素系界面活性剤)
ドープには、フッ素系界面活性剤を添加することもできる。フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボン鎖を疎水基とする界面活性剤であり、表面張力を著しく低下させるため有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として用いられる。フッ素系界面活性剤としては、C8 17CH2 CH2 O−(CH2 CH2 O)10−OSO3 Na、C8 17SO2 N(C3 7 )(CH2 CH2 O)16−H、C8 17SO2 N(C3 7 )CH2 COOK、C7 15COONH4 、C8 17SO2 N(C3 7 )(CH2 CH2 O)4 −(CH2 4 −SO3 Na、C8 17SO2 N(C3 7 )−(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- 、C8 17SO2 N(C3 7 )CH2 CH2 CH2 + (CH3 2 −CH2 COO- 、C8 17CH2 CH2 O(CH2 CH2 O)16−H、C8 17CH2 CH2 O(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- 、H(CF2 8 −CH2 CH2 OCOCH2 CH(SO3 )COOCH2 CH2 CH2 CH2 −(CF2 8 −H、H(CF2 6 CH2 CH2 O(CH2 CH2 O)16−H、H(CF2 8 CH2 CH2 O(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- 、H(CF2 8 CH2 CH2 OCOCH2 CH(SO3 )COOCH2 CH2 CH2 CH2 8 17、C9 17−C6 4 −SO2 N(C3 7 )(CH2 CH2 O)16−H、C9 17−C6 4 −CSO2 N(C3 7 )−(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ドープ中のポリマーに対して0.001重量%〜1重量%を含むように調製することが望ましい。
(剥離促進剤)
さらに、剥離時の荷重を小さくするための剥離促進剤も、ドープに添加してもよい。それらは、界面活性剤が有効であり、リン酸系,スルフォン酸系,カルボン酸系,ノニオン系,カチオン系などがあるが、これらに特に限定されない。これらの剥離促進剤は、例えば特開昭61−243837号などに記載されている。特開昭57−500833号にはポリエトキシル化リン酸エステルが剥離促進剤として開示されている。特開昭61−69845号には非エステル化ヒドロキシ基が遊離酸の形であるモノまたはジリン酸アルキルエステルをセルロースエステルに添加することにより迅速に剥離できることが開示されている。また、特開平1−299847号には非エステル化ヒドロキシル基およびプロピレンオキシド鎖を含むリン酸エステル化合物と無機物粒子を添加することにより剥離荷重が低減できることが開示されており、それらを用いることも可能である。また、ドープ中のポリマーに対して0.001重量%〜1重量%を含むように調製することが望ましい。
(劣化防止剤)
さらに、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤, 過酸化物分解剤, ラジカル禁止剤,金属不活性化剤,酸捕獲剤,アミンなど)や紫外線防止剤をドープに添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。また、ドープ中のポリマーに対して0.01重量%〜5重量%を含むように調製することが望ましい。
(レターデーション制御剤)
また、光学異方性をコントロールするためのレターデーション制御剤も、ドープに添加してもよい。それらは、セルロースアシレートフイルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション制御剤として使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。なお、ドープ中のポリマーに対して0.01重量%〜10重量%を含むように調製することが望ましい。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
(オイルゲル化剤)
本発明では、後に詳細に説明するが、ドープの物性を変えるためにオイルゲル化剤をドープに添加することが好ましい。オイルゲル化剤は、公知のいずれをも用いることが可能であるが、以下に示すものを用いることが本発明では好ましい。オイルゲル化剤である化合物については、公知文献(例えば、J.Chem.Soc.Japan,Ind.Chem.Soc.,46,779(1943) 、J.Am.Chem.Soc.,111,5542(1989) 、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,390 、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,1949(1996) 、Chem.Lett.,1996,885 、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1997,545 )に記載されている。また、高分子論文集(VOL.55,No.10,585-589(Oct.,1998))、表面(VOL.36,No.6,291-303(1998))、繊維と工業(VOL.56,No.11,329-332(2000))、特開平7−247473号、特開平7−247474号、特開平7−247475号、特開平7−300578号、特開平10−265761号、特開平7−208446号、特開2000−3003号、特開平5−230435号、および特開平5−320617号の各公報に、「ゲル化剤」または「オイルゲル化剤」として記載されている素材も適用できる。または、表面(VOL.36,No.6,291-303(1998))、繊維と工業(VOL.56,No.11,329-332(2000)に記載されているものを用いることも可能である。
また、オイルゲル化剤には、前述したもの以外で下記に示すものも用いることが可能であるが、本発明のオイルゲル化剤は、それらに限定されるものではない。例えば、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している糖、炭素原子数が5乃至100の脂肪酸、炭素原子数が5乃至100のアミノ酸、炭素原子数が5乃至100の環状ジペプチド、炭素原子数が5乃至100のアミド、ステロイド構造を有するエステル、炭素原子数が6乃至100のフェノール、炭素原子数が5乃至100のエーテル、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合しているラクトン、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している尿素、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合しているビオチン(ビタミンH)、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合しているアルドン酸、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合しているバルビツール酸、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している芳香族ヘテロ環化合物および炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している脂環式化合物が好ましく用いられる。
前述した脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基を意味する。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。置換アルキル基、置換アルケニル基および置換アルキニル基のアルキル部分、アルケニル部分およびアルキニル部分は、それぞれ、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基と同様である。置換アルキル基、置換アルケニル基および置換アルキニル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、ホルミル、カルボキシル、アミノ、カルバモイル、スルファモイル、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−CO−O−R、−O−CO−R、−NH−R、−NR・R’、−CO−NH−R、−CO−NR・R’、−SO2 −NH−Rおよび−SO2 −NR・R’が含まれる。R、R’は、脂肪族基、芳香族基または複素環基であり、それらは同一の置換基であっても良いし、異なった置換基であっても良い。
前記芳香族基は、アリール基または置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニルまたはナフチルであることが好ましい。置換アリール基のアリール部分は、アリール基と同様である。置換アリール基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、ホルミル、カルボキシル、アミノ、カルバモイル、スルファモイル、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−CO−O−R、−O−CO−R、−NH−R、−NR・R’、−CO−NH−R、−CO−NR・R’、−SO2 −NH−Rおよび−SO2 −NR・R’が含まれる。R、R’は、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。複素環基は、無置換複素環基または置換複素環基を意味する。複素環基の複素環は、5員環、6員環またはそれらの縮合環であることが好ましい。置換複素環基の置換基の例は、置換アリール基の置換基の例と同様である。
前記芳香族基または脂肪族基は、糖アルコール、ラクトン、尿素、ビオチン、アルドン酸、バルビツール酸、芳香族ヘテロ環化合物または脂環式化合物に、直結または連結基を介して結合できる。連結基は、−NH−、−O−、−CO−またはこれらの組み合わせからなることが好ましい。
前記糖は、糖アルコールであってもよい。糖は、グルコースおよびがラクトースが好ましい。糖アルコールは、ソルビトールが好ましい。炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している糖(および糖アルコール)の例には、1,2,3,4−ジベンジリデン−D−ソルビトール、4−アミノフェニル−α−D−グルコピラノシド、4−アミノフェニル−α−D−ガラクトピラノシド、4−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシド、4−アミノフェニル−β−D−グルコピラノシド、4−アミノフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、2−アミノフェニル−β−D−グルコピラノシド、2−アミノフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、4−アミノフェニル−2−O,3−O,4−O,6−O−テトラアセチル−β−D−グルコピラノシド、4−アミノフェニル−2−O,3−O,4−O,6−O−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシド、4−アミノフェニル−4−O,6−O−ベンジリデン−α−D−グルコピラノシド、4−アミノフェニル−4−O,6−O−ベンジリデン−α−D−ガラクトピラノシド、4−アミノフェニル−4−O,6−O−ベンジリデン−β−D−グルコピラノシド、メチル−4−O,6−O−ベンジリデン−α−D−グルコピラノシド、メチル−4−O,6−O−ベンジリデン−β−D−グルコピラノシド、メチル−4−O,6−O−ベンジリデン−α−D−ガラクトピラノシド、メチル−4−O,6−O−ベンジリデン−β−D−ガラクトピラノシド、メチル−4−O,6−O−ベンジリデン−α−D−マンノピラノシド、1−O,3−O:2−O,4−O−ビス(ベンジリデン)−D−ソルビトール、1−O,3−O:2−O,4−O−ビス(ベンジリデン)−5−O−メチル−D−ソルビトール、1−O,3−O:2−O,4−O−ビス(ベンジリデン)−6−O−メチル−D−ソルビトールが含まれる。
脂肪酸は、置換基(例、ヒドロキシル)を有していてもよい。炭素原子数が5乃至100の脂肪酸の例には、12−ヒドロキシステアリン酸が含まれる。
炭素原子数が5乃至100のアミノ酸は、通常の(天然の)アミノ酸に、芳香族基または脂肪族基が結合している分子構造を有していてもよい。炭素原子数が5乃至100のアミノ酸の例には、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α、ラウロイルグルタミン酸ラウリルアミン塩、ラウロイルグルタミン酸ジラウリルエステル、ジカプリロイルリジンラウリルアミン塩、ジカプリロイルリジンラウリルエステル、ラウロイルフェニルアラニンラウリルアミン塩が含まれる。
炭素原子数が5乃至100の環状ジペプチド(2,5−ジケトピペラジン誘導体)は、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、アスパラギン酸エステル、グルタミン酸、グルタミン酸エステルおよびフェニルアラニンからなる群より選ばれる二個のアミノ酸から形成されることが好ましい。炭素原子数が5乃至100の環状ジペプチドの例には、3α−メチルピペラジン−2,5−ジオン、3α−イソプロピルピペラジン−2,5−ジオン、3α−(2−メチルプロピル)ピペラジン−2,5−ジオン、3α−ベンジルピペラジン−2,5−ジオン、3α−フェニルピペラジン−2,5−ジオン、3α,6α−ジイソプロピルピペラジン−2,5−ジオン、3α−(2−メチルプロピル)−6α−イソプロピルピペラジン−2,5−ジオン、3α,6α−ビス(2−メチルプロピル)ピペラジン−2,5−ジオン、3α−(2−メチルプロピル)−6α−ベンジルピペラジン−2,5−ジオン、3α,6α−ジベンジルピペラジン−2,5−ジオン、3−(3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル)プロパン酸エチル、3−(5β−イソプロピル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル)プロパン酸エチル、3−(5β−イソプロピル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル)プロパン酸ドデシル、3−(5β−イソプロピル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル)プロパン酸オクタデシル、3−(5β−イソプロピル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル)プロパン酸−3,7−ジメチルオクチル、3−(5β−イソプロピル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル)プロパン酸−2−エチルヘキシル、3−[5β−(2−メチルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル]プロパン酸、3−[5β−(2−メチルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル]プロパン酸エチル、3−[5β−(2−メチルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル]プロパン酸ドデシル、3−[5β−(2−メチルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル]プロパン酸−3,7−ジメチルオクチル、3−[5β−(2−メチルプロピル)−3,6−ジオキソピペラジン−2β−イル]プロパン酸ベンジル、5β−ベンジル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−酢酸、5β−ベンジル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−酢酸ブチル、5β−ベンジル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−酢酸ドデシル、5β−ベンジル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−酢酸−3,7−ジメチルオクチル、5β−ベンジル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−酢酸−2−エチルヘキシル、5β−ベンジル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−酢酸−3,5,5−トリメチルヘキシル、5β−ベンジル−3,6−ジオキソピペラジン−2β−酢酸−2−エチルブチルが含まれる。
炭素原子数が5乃至100のアミドの例には、γ−ビス−n−ブチルアミド、3,5−トリス[フェニル[4−[(1−オキソオクタデシル)アミノ]フェニル]アミノ]ベンゼン、トリス[4−[フェニル[4−[(1−オキソオクタデシル)アミノ]フェニル]アミノ]フェニル]アミン、5,5−ジメチルヒダントイン、N,N’−(1,12−ドデカンジイル)ビス[N−α−(ベンジルオキシカルボニル)−L−バリンアミド]、N,N’−(1,12−ドデカンジイル)ビス[N−α−(エトキシカルボニル)−L−バリンアミド]、N,N’−(1,12−ドデカンジイル)ビス[N−α−(ベンジルオキシカルボニル)−L−イソロイシンアミド]、N,N’−(1,12−ドデカンジイル)ビス[N−α−(エトキシカルボニル)−L−イソロイシンアミド]、N,N’−エチレンビス[N−α−(エトキシカルボニル)−L−バリンアミド]、N,N’,N’’−トリプロピルベンゼン−1,3,5−トリカルボアミド、N,N’,N’’−トリオクチルベンゼン−1,3,5−トリカルボアミド、N,N’,N’’−トリドデシルベンゼン−1,3,5−トリカルボアミド、N,N’,N’’−トリオクタデシルベンゼン−1,3,5−トリカルボアミド、N,N’,N’’−トリス(3,7−ジメチルオクチル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボアミド、N,N’,N’’−トリス(1−ヘキシルノニル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボアミド、ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミド、ラウロイルグルタミン酸ジステアリルアミド、ラウロイルバリンブチルアミド、ラウロイルフェニルアラニンラウリルアミド、ジカプリロイルリジンラウリルアミド、が含まれる。
ステロイド構造を有するエステルは、スピンラベル化ステロイド、コレステロール誘導体やコール酸誘導体を含む。ステロイド構造を有するエステルの例には、N−ε−ラウロイル−N−α−ステアリルアミノカルボニル−L−リジンエチル(4−α−D−グルコピラノシルフェニル)カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、(4−α−D−ガラクトピラノシルフェニル)カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、(4−α−D−マンノピラノシルフェニル)カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、(4−β−D−グルコピラノシルフェニル)カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、(4−β−D−ガラクトピラノシルフェニル)カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、(2−β−D−グルコピラノシルフェニル)カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、(2−β−D−ガラクトピラノシルフェニル)カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、[4−(2−O,3−O,4−O,6−O−テトラアセチル−β−D−グルコピラノシル)フェニル]カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、[4−(2−O,3−O,4−O,6−O−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシル)フェニル]カルバミド酸コレスタ−5−エン−3β−イル、N,N’−ヘキサメチレンビス[4−[(3β−コレステリル)オキシ]−4−オキソブタンアミド]、N,N’−(ヘプタン−1,7−ジイル)ビス[4−[(3β−コレステリル)オキシ]−4−オキソブタンアミド]、N,N’−(オクタン−1,8−ジイル)ビス[4−[(3β−コレステリル)オキシ]−4−オキソブタンアミド]、N,N’−(ノナン−1,9−ジイル)ビス[4−[(3β−コレステリル)オキシ]−4−オキソブタンアミド]、N,N’−(デカン−1,10−ジイル)ビス[4−[(3β−コレステリル)オキシ]−4−オキソブタンアミド]、N,N’−(ドデカン−1,12−ジイル)ビス[4−[(3β−コレステリル)オキシ]−4−オキソブタンアミド]、N,N’−[トリメチレンビス[カルボニルイミノ(ピリジン−2,6−ジイル)]]ビス(カルバミド酸−3−コレステリル)、N,N’−[m−フェニレンビス[カルボニルイミノ(ピリジン−2,6−ジイル)]]ビス(カルバミド酸−3−コレステリル)が含まれる。
炭素原子数が6乃至100のフェノールは、環状オリゴマーを形成していてもよい。炭素原子数が5乃至100のエーテルの例には、2,3−ビス−n−ヘキサデシロキシアントラセンが含まれる。炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合しているラクトンにおいて、ラクトンは、ブチロラクトンが特に好ましい。
、炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している尿素の例には、1,1’−ベンジリデンビス(3−ブチル尿素)、1,1’−ベンジリデンビス(3−ベンジル尿素)、1,1’−(4−クロロベンジリデン)ビス(3−ブチル尿素)、1,1’−(4−メトキシベンジリデン)ビス(3−ブチル尿素)、1,1’−[4−(ジメチルアミノ)ベンジリデン]ビス(3−ブチル尿素)、1,1’−(4−ニトロベンジリデン)ビス(3−ブチル尿素)、1,1’−ベンジリデンビス(3−メチル尿素)、1,1’−[(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル]ビス(3−ウンデシル尿素)、1,1’−[(1R,2R)−シクロヘキサン−1,2−ジイル]ビス(3−ウンデシル尿素)、1,1’−[(1R,2R)−シクロヘキサン−1,2−ジイル]ビス[3−(1−エチルペンチル)尿素]、1,1’−[(1R,2R)−シクロヘキサン−1,2−ジイル]ビス[3−[3−(2−チエニル)プロピル]尿素]、4,4’−[[(1R,2R)−シクロヘキサン−1,2−ジイル]ビス(イミノカルボニルイミノ)]ビス[ブタン酸2−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニルオキシ)エチル]、1,1’−[(1R,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル]ビス(3−ウンデシル尿素)、1,1’−(1,2−フェニレン)ビス(3−ウンデシル尿素)、1,1’−(1,2−フェニレン)ビス(3−シクロヘキシル尿素)、1,1’−(1,2−フェニレン)ビス[3−(3−フェニルプロピル)尿素]、1,1’−(1,2−フェニレン)ビス[3−[3−(2−チエニル)プロピル]尿素]、1,1’−(1,3−フェニレン)ビス(3−ウンデシル尿素)、1,1’−(1,4−フェニレン)ビス(3−ウンデシル尿素)、1−ベンジル−3−オクチル尿素、1−ベンジル−3−シクロヘキシル尿素、1−ベンジル−3−(1−フェニルエチル)尿素、3,3’−(プロパン−1,3−ジイル)ビス(1−ベンジル尿素)、3,3’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−ベンジル尿素)、3,3’−(ノナン−1,9−ジイル)ビス(1−ベンジル尿素)、3,3’−(ドデカン−1,12−ジイル)ビス(1−ベンジル尿素)が含まれる。
炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合しているアルドン酸において、アルドン酸は、グルコン酸が好ましい。炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している芳香族ヘテロ環化合物において、芳香族ヘテロ環化合物は、トリアミノピリミジンが特に好ましい。炭素原子数が6乃至100の芳香族基または炭素原子数が5乃至100の脂肪族基が結合している脂環式化合物において、脂環式化合物は、シクロヘキサンが特に好ましい。
オイルゲル化剤は、α―アミノラクタム構造を有することが特に好ましい。また、rac−(4aα*,8aβ*)−テトラヒドロ−2α*,6β*−ジフェニル−4β*−[(R*)−1,2−ジヒドロキシエチル][1,3]ジオキシノ[5,4−d]−1,3−ジオキシンも、オイルゲル化剤として使用できる。また、本発明において、ドープ中に添加するオイルゲル化剤の量は、特に限定されるものではない。
添加剤は、ポリマーを溶媒に溶解させる際に添加しても良いし、ポリマーを溶媒に溶解させた後に溶解させても良い。さらには、添加剤を溶媒に溶解させた溶液を調製ドープに添加しても良く、この場合にはバッチ式で添加しても良いし、インライン式で連続的に添加しても良い。
[ドープの調製]
ポリマー及び必要な添加剤を溶媒に入れた後に、公知のいずれかの溶解方法により溶解させ調製ドープを製造する。この調製ドープは濾過により異物を除去することが一般的である。濾過には濾紙,濾布,不織布,金属メッシュ,焼結金属,多孔板などの公知の各種濾材を用いることが可能である。濾過することにより、調製ドープ中の異物,未溶解物を除去することができ、フイルム中の異物による欠陥を軽減することができる。
また、一度溶解した調製ドープを加熱して、さらに溶解度の向上を図ることもできる。加熱には静置したタンク内で撹拌しながら加熱する方法、多管式、静止型混合器付きジャケット配管等の各種熱交換器を用いて調製ドープを移送しながら加熱する方法などがある。また、加熱工程の後に冷却工程を実施することも可能である。また、装置の内部を加圧することにより、調製ドープの沸点以上の温度に加熱することも可能である。これらの処理を施すことにより、溶解性の低い未溶解物を完全に溶解することができ、フイルムの異物の減少、濾過の負荷軽減を図ることができる。
調製ドープのポリマー濃度(=(ポリマー重量/ドープ重量)×100)は、特に限定されないが、15重量%〜25重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、19重量%〜23重量%である。また、調製ドープの溶媒中の良溶媒の重量組成比は、ジクロロメタンを用いる際には60重量%〜100重量%とする。また、非塩素系有機溶媒を用いる際には、良溶媒である酢酸メチル60重量%〜100重量%とすることが好ましい。またアセトンを0重量%〜40重量%混合させても良い。
(酸物質の添加)
なお、調製ドープを製造する際に、ドープ中には存在するが、製膜されたフイルムには影響を及ぼさない程度のサイズの不純物による濾過装置の閉塞が生じないように、酸物質を調製ドープ中に微量添加することが好ましい。酸物質は、具体的には、無機酸(例えば、塩酸など)、有機酸(例えば、フェノールなど)、有機カルボン酸(例えば、酢酸、乳酸など)、多価有機カルボン酸(例えば、クエン酸、酒石酸など)、多価有機カルボン酸誘導体、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。多価有機カルボン酸誘導体の基本骨格は、脂肪族炭化水素系(例えば、直鎖飽和、分岐飽和、直鎖不飽和、分岐不飽和、単環式、芳香族、縮合多環式、橋かけ環式、スピロ、環集合、テルペンなど)や、芳香族系炭化水素系(芳香族、縮合多環式など)や、複素環式(ヘテロ環)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、多価有機カルボン酸誘導体は、少なくとも1つのカルボン酸基(−COOH)と、少なくとも1つのカルボン酸塩(−COOM;なお、Mは解離すると陽イオンとなるものを意味している)とを有しているものを用いることもできる。より具体的には、クエン酸−1−エチルエステル(1位の炭素のカルボン酸基をエステル化したもの)が挙げられ、以下の説明においてクエン酸エチルエステルと称する。なお、2位の炭素のカルボン酸基をエステル化したクエン酸−2−エチルエステルも用いることができる。本発明においては、いずれのクエン酸エチルエステルを用いることができ、クエン酸モノエチルエステル(1位または2位のいずれをも含む)、ジエチルエステル(1,2位または1,3位のいずれをも含む)、トリエチルエステルの混合物でも良く、より好ましくはモノエチルエステル及びジエチルエステルの混合物や、モノエチルエステル、ジエチルエステルのいずれかを用いることである。また、TACの重量に対して、クエン酸またはクエン酸エチルエステルのいずれかの添加重量比を10ppm〜1000ppmの範囲とすることが好ましく、好ましくは50ppm〜800ppm、更に好ましくは100ppm〜600ppmとすることである。ドープに酸物質を添加する方法については、本発明者らが詳細に検討した結果を、特願2002−304754号に記載している。
[溶液製膜方法]
図1は本発明に係る溶液製膜方法を実施するために用いられるフイルム製膜ライン10の概略図を示している。また、図2にその要部を示す。ミキシングタンク11内には、前述した方法で調製された調製ドープ12が入れられ、図示しないモータで回転する撹拌翼13で撹拌されて均一になっている。調製ドープ12は、送液ポンプ14により濾過装置15に送られて不純物が除去されて、インライン配管16に送り込まれる。また、添加溶媒20は、他のミキシングタンク21に入れられて攪拌翼22で攪拌されている。そして、送液ポンプ23で配管24を介してインライン配管16に送り込まれる。
図2に示すように、配管24の配管吐出口24aは、インライン配管16内を流れる調製ドープ12内に配置している。その先端から添加溶媒20が送液される。なお、添加溶媒20の流速S1(m/min)と調製ドープ12の流速S2(m/min)との比(S1/S2)は、1.0≦(S1/S2)≦1.5の範囲であることが好ましい。また、調製ドープ12のせん断速度S’は、20(1/sec)以上が好ましく、30(1/sec)以上がより好ましく、40( 1/sec)以上が最も好ましい。
調製ドープ12に添加溶媒20を混合して、ドープ中の貧溶媒の組成比を大きくする。主溶媒に塩素系有機溶媒、非塩素系有機溶媒のいずれを用いた場合であっても、流延する際のドープ中の混合溶媒の重量比で、貧溶媒は、5重量%以上50重量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上45重量%以下の範囲であり、最も好ましくは、20重量%以上40重量%以下である。5重量%未満であると貧溶媒を含むことによる流延膜の貯蔵弾性率の向上の効果が充分に発現しないおそれがある。また、50重量%を超えると、ポリマーの溶解性が劣る貧溶媒の組成比が高くなり過ぎてポリマーや添加剤などが析出するおそれがある。
調製ドープ12中に添加溶媒を添加させる方法は、一度に必要量の全てを混合しても良いし、多数回に分割して混合させても良い。この場合には、ドープ中での貧溶媒の組成比が段階的に増加するため、TACの溶解性を効率良く維持することができる。また、始めから貧溶媒の比率が高い混合溶媒にTACを溶解させるよりも、調製ドープに貧溶媒を含む添加溶媒を添加した方が、高濃度でポリマーを含む流延ドープを短時間で調製できる。また、貧溶媒を含む添加溶媒には、1種類の貧溶媒のみ,複数の貧溶媒の混合溶媒,貧溶媒と良溶媒との混合溶媒のいずれをも用いることができるが、調製ドープ中で局所的に貧溶媒の比率が増加してTACの溶解性が局所的に低減することを防止するため、貧溶媒と良溶媒との混合溶媒を用いることが最も好ましい。
添加溶媒20を調製ドープ12に添加する際には、インライン配管16を用いるインライン添加方式で行うことが好ましい。インライン添加方式は、1ラインのフイルム製膜ラインによりフイルムの多品種製造する場合や,品種切り替え時の時間短縮および添加溶媒の添加比率などを変更する際の時間短縮に優れている。調製ドープ12と添加溶媒20とを混合した後には、スタティックミキサ30を用いて均一な流延ドープ18とする。なお、本発明において用いられる混合機は、スタティックミキサに限定されるものではない。また、本発明において、添加溶媒を調製ドープに添加する方法としてバッチ混合方式で行うこともできる。
調製ドープ12の重量を100重量%とした場合に、添加される貧溶媒量は、20重量%以下であることが好ましい。貧溶媒は、TACなどのポリマーの溶解性が良溶媒に対して劣るため、多量に添加すると溶解していたポリマー、添加剤の析出が生じるおそれがあるためである。
添加溶媒20の混合位置は、濾過装置15と流延ダイ31との間に設けられたインライン配管16で行うものに限定されず、例えばミキシングタンク11と濾過装置15との間の配管17をインライン配管とし、その配管17に配管25を取り付けても良い。
スタティックミキサ30により、調製ドープ12と添加溶媒20とが均一に混合して流延ドープ18となる。スタティックミキサのエレメント数は、特に限定されるものではないが、混合能力や送液圧力の上昇などの実験条件を考慮し20個以上80個以下であることが好ましい。流延ドープ18を流延ダイ31から回転ドラム32上に乾燥後のフイルムが薄手フイルム(膜厚が10μm以上60μm以下)となるように流延する。また、流延ドープ18の流延幅は、2000mm以上が好ましく、より好ましくは1400mm以上とすることである。回転ドラム32は図示しない駆動装置により無端で回転駆動している。流延されたドープ18は、回転ドラム32上で流延膜33を形成する。
回転ドラム32に温度調整装置34を接続し、その表面温度を調整することが可能となっていることが好ましい。本発明の溶液製膜方法では、流延膜33の貯蔵弾性率を大きくすることで、剥ぎ取り時の不良の発生を抑制している。貯蔵弾性率は、温度依存性があり、ポリマーがTACである流延膜33では、温度低下と共に指数関数的に増加する特性を有する。そこで、回転ドラム32を冷却することで、従来の設備に特別な改造などを施すことなく容易に貯蔵弾性率を上昇させることができる。回転ドラム32の温度は、−5℃以下が好ましく、より好ましくは−7℃以下、最も好ましくは−10℃以下とすることである。
流延膜33を乾燥させるため、乾燥風35を流延膜33に吹き付ける乾燥機36を配置することが好ましい。乾燥風35の温度は、特に限定されるものではないが、その露点を回転ドラム32の温度以下とし、結露の発生を抑制することが好ましい。なお、より好ましくは、ドープ中の溶媒の液化を防止するため、溶媒の露点以下とした乾燥風35を吹き付けることである。
溶液製膜方法によるフイルムの製造は、高速かつ安定な剥ぎ取りを達成することが不可欠である。そこで、流延膜33を回転ドラム32から剥ぎ取る際に、流延膜33と回転ドラム32との密着力または剥ぎ取る際の流延膜の弾性率に応じて、適切な剥ぎ取り応力を流延膜33に与える必要がある。また、流延膜33の弾性率が剥ぎ取り応力と比較して小さい場合には、剥ぎ取り応力により流延膜33が延伸されて、TACフイルムに光学的異方性が生じて光学特性が悪化する場合がある。この現象は、薄手フイルムを製造する場合に、顕著に現れ問題が生じる。そこで、剥ぎ取り時の流延膜33の貯蔵弾性率G’を15万Pa以上とすることで剥ぎ取り時の不良の発生を防止できることを見出した。より好ましくは、20万Pa以上であり、最も好ましくは30万Pa以上である。
貯蔵弾性率G’は、温度に依存する物性値であるが、本発明では剥ぎ取り時の温度における流延膜33の貯蔵弾性率G’の値を用いる。貯蔵弾性率G’の制御は、流延膜33中の溶媒の種類及び残留量,貧溶媒の種類及び残留量,回転ドラム32の温度,流延膜33の剥取角度及び搬送速度,TACの種類及び含有量,添加剤の種類及び含有量などの実験条件から最適なものを選択することで本発明を実施できる。
流延膜33の乾燥またはゲル化が進行して自己支持性を有するものとなり、貯蔵弾性率G’が15万Pa以上のときに、剥取ローラ37で支持しながら、回転ドラム32より軟膜38として剥ぎ取る。本発明では、ドープ調製時の溶媒には、良溶媒の組成比を高めたものを用い、流延するまでにドープ中の貧溶媒の組成比を高めることで、ドープ調製時間の短縮を図ると共に、流延膜の貯蔵弾性率G’を高め、剥ぎ取り不良の発生を防止できる。
本発明において、貯蔵弾性率(動的貯蔵弾性率を意味している)G’は、流延膜33を1mL秤取りレオメーターを用いて、直径4cm/2°の測定器(Steel Cone)により測定する。測定モードをOscillation Step/ Temperatuer Rampにして40℃〜−10℃の範囲を2℃/minで可変しながら測定する。なお、試料である流延膜は、あらかじめ測定開始温度になるまで保温する。以上の測定方法により測定を5回行い、その平均値を貯蔵弾性率G’とする。なお、この測定における精度は、±3%以内である。
軟膜38は、多数のローラ40,41,42,43,44により搬送されてテンタ式乾燥機50に送られる。これら多数のローラ40〜44が配置されている箇所は、通常渡り部と称される。ローラ40〜44も回転ドラム32と同様に温度調整装置45を取り付けて温度調整することが好ましい。例えば、各ローラ40〜44にそれぞれジャケットを取り付け、そのジャケット内に冷却用媒体を循環させる方法などが挙げられる。また、各ローラ40〜44の温度も、回転ドラム32の温度と同様に−5℃以下が好ましく、より好ましくは−7℃以下であり、最も好ましくは−10℃以下とすることである。また、各ローラ40〜44は、軟膜38の物性が変化しないように略同一温度に保持されていることが好ましい。なお、このように渡り部においても軟膜38を冷却することにより、貯蔵弾性率を高く保持することができ、搬送時の不良の発生を防止できる。なお、渡り部に設けられるローラは、図1では5本を示しているが、本発明はその本数に限定されるものではない。例えば、1本〜10本配置することが好ましいが、その本数に限定されるものではない。
テンタ式乾燥機50により軟膜38を乾燥してフイルム51を得る。テンタ式乾燥機50による乾燥は、テンタ式乾燥機50内を50℃〜140℃の範囲に保持し、そこを2分〜20分間搬送させることで乾燥を進行させる。なお、必要に応じてテンタ式乾燥機50内に乾燥風発生装置を設け、乾燥風による乾燥を併用することもできる。
TACフイルムの光学特性は、フイルム中のTAC分子の配列状態に依存する。TAC分子の配列を制御するために、最も有効な方法としては、TACフイルムが完全に乾燥する前に、延伸する方法である。フイルムの搬送方向及び/またはフイルム面に沿いフイルムの搬送方向に対して垂直方向(以下、垂直方向と称する)に延伸することにより、TAC分子の2次元配列を制御できる。
フイルム製膜中に延伸を行うと、TAC分子の配列状態が特定の方向に揃い光学異方性が生じて光学特性の悪化を招くおそれがある。このことは、従来の約80μmの膜厚を有するフイルムの製膜と比較した場合に、薄手フイルム製膜では顕著に現れてしまう。そこで、本発明においては、搬送方向の延伸率を110%以下とすることが好ましい。延伸率を110%以下とすることにより、延伸により軟膜38表面に発生するツレシワなどの面状の矯正を行いつつ、光学特性を損なうことない程度までTAC分子の配列の制御を行うことができる。なお、本発明において延伸は、テンタ式乾燥機50で搬送しながら延伸するものに限定されない。その他にも、流延膜33を軟膜38として回転ドラム32から剥ぎ取る際に延伸される延伸量、及びローラ40〜44により渡り部搬送中に生じる延伸量もある。そこで、本発明ではそれらの延伸量も含めて110%以下であることが光学特性を良好なものとするために好ましく、より好ましくは107%以下であり、最も好ましくは105%以下とする。
軟膜38の延伸は、残留溶媒量が10重量%以上のときに行うことが好ましく、より好ましくは30重量%以上であり、最も好ましくは50重量%以上である。残留溶媒とは、ドープを調製した際に用いられた溶媒であって、延伸を行う際に軟膜38中に含まれているものを意味している。残留溶媒量は、下記の式で定義される値を用いる。
残留溶媒量=
[(軟膜(フイルムとみなせる場合も含める)中に含有している溶媒の重量;Ws)/
(溶媒を含んだ軟膜の重量;Wf)]×100 (%)
軟膜の重量は、それぞれ単位面積あたりのものを用いる。なお、本発明において軟膜38と後に説明するフイルムとは、含有している溶媒量により使い分けているが厳密に定義されるものではなく、軟膜とはフイルムの一態様である。
残留溶媒量が、10重量%未満であると、軟膜38の乾燥が進行し過ぎており、延伸を行ってもTAC分子の配列制御を行うことが困難になる。さらには、軟膜38に引き裂きなどの不良が発生するおそれもある。
軟膜38は、乾燥されフイルム51としてテンタ式乾燥機50から送り出される。フイルム51は、多数のローラ52が配置されている乾燥室53に送り込まれる。フイルム51は、それらローラ52に巻き掛かりながら搬送され、乾燥される。乾燥室53の温度が90℃〜145℃の範囲であり、乾燥時間が2min〜30minの範囲であることが好ましいが、これら範囲内に限定されるものではない。さらに、冷却室54でフイルム51は室温程度まで冷却された後に、巻取機55で巻き取られる。なお、冷却室54での冷却温度は室温程度(約25℃)にすることが好ましいが、本発明においてフイルムの冷却温度はそれに限定されるものではなく、例えば約60℃程度まで冷却しても良い。また、本発明において、フイルム51は巻き取られる前に、耳切りが行われたり、ナーリングが付与されたりしても良い。なお、本発明の溶液製膜方法を実施するために用いられるフイルム製膜ライン10は、図1に示したものに限定されるものではない。
図3に本発明の溶液製膜方法に用いられる他の実施形態であるフイルム製膜ライン60を示す。なお、フイルム製膜ライン10と同じ箇所には、同一の符号を付し、説明は省略する。調製ドープ12に添加溶媒20を混合した後に、スタティックミキサ30で均一な流延ドープとした後に流延ダイ61から流延ベルト62上に流延する。流延ベルト62は、図示しない駆動装置で回転駆動している回転ローラ63,64に伴い無端走行している。流延ベルト62上に形成された流延膜65の貯蔵弾性率が15万Pa以上、好ましくは20万Pa以上、最も好ましくは30万Pa以上になった後に、剥取ローラ66で支持しながら剥ぎ取る。その後に渡り部に設けられているローラ40〜44で搬送し、テンタ式乾燥機50で延伸乾燥された後に、乾燥室,冷却室を通り巻取機で巻き取られる。
また、本実施形態においても、貯蔵弾性率G’を所望の値とするため、ドープの組成比などを調整すると共に、支持体である流延ベルト62を−5℃以下とすることが好ましく、より好ましくは−7℃以下、最も好ましくは−10℃以下とする。なお、流延室67内に乾燥機や冷却機を適宜設けることもできる。
図4を用いてマルチマニホールド流延ダイ70による共流延方法について説明する。マルチマニホールド流延ダイ70のマニホールド71,72,73に給液管(図示しない)からドープ74,75,76が給液される。なお、ドープ74〜76の少なくともいずれか1つに貧溶媒の組成比を高めた流延ドープを用いる。ドープ74〜76を流路77で合流させた後に、回転ドラム78上に共流延を行い、流延膜79を形成する。なお、回転ドラム78に温度調整機構80を取り付け温度調整を行うことがより好ましい。その後は、図1に示しているフイルム製膜ライン10と同様に、自己支持性を有する流延膜79を回転ドラム78から剥ぎ取り,乾燥,延伸,冷却などを行った後にフイルムとして巻き取る。本実施形態においても、ドープ74〜76のうち少なくとも1つに流延ドープを用いるので、形成される流延膜79の貯蔵弾性率G’を15万Pa以上のものに容易にできる。また、回転ドラム78を冷却することでも、貯蔵弾性率G’の向上を図ることができ、剥ぎ取り時の不良の発生を防止できる。
共流延方法の他の実施形態の概略を図5に示し説明する。流延ダイ90の上流側にフィードブロック91を取り付ける。フィードブロック91に取り付けられている配管91a,91b,91cに給液装置(図示しない)からドープ92,93,94を送液する。これらドープ92〜94をフィードブロック91で合流させた後に、流延ダイ90から回転ドラム95上に流延して流延膜96を形成する。本実施形態においても、回転ドラム95に温度調整機構97を取り付け温度制御を行うことが好ましい。これらドープ92〜94の少なくともいずれか1つに貧溶媒の組成比を高めた流延ドープを用いることで、流延膜96の貯蔵弾性率G’を15万Pa以上とすることができる。また、回転ドラム95を冷却(例えば、−5℃)とすることでも、貯蔵弾性率G’を向上させることができる。その流延膜96を回転ドラム95から剥ぎ取り,乾燥,延伸,冷却などを行いフイルムとして巻き取る。なお、本発明において、共流延方法によりフイルムを製膜する際に、支持体として回転ドラムに代えて流延ベルトを用いても良い(図3参照)。
図6に本発明に係る溶液製膜方法のさらに他の実施形態を図示して説明する。3基の流延ダイ100,101,102が流延ベルト103上に配置されている。各流延ダイ100〜102には、図示しない給液装置からドープ104,105,106が送液される。流延ダイ100〜102からドープ104〜106を流延ベルト103上に逐次的に流延する逐次流延法を行い、流延膜107を形成する。これらドープ104〜106の少なくともいずれか1つに貧溶媒の組成比を高めた流延ドープを用いることで、流延膜107の貯蔵弾性率G’を15万Pa以上とすることができる。その流延膜107を流延ベルト103から剥ぎ取り,乾燥,延伸,冷却などを行いフイルムとして巻き取る(図3参照)。また、本発明の溶液製膜方法を行う際に、共流延法と逐次流延法とを組合わせた多層流延法である逐次共流延法を行うこともできる。
[フイルム]
本発明には、前記溶液製膜方法により製膜されたフイルムも含まれる。なお、ポリマーにTACを用いたTACフイルムの用途の1つに偏光板保護フイルムが挙げられる。偏光板は、ヨウ素などの二色性材料を吸着させ偏光機能を持ったポリビニルアルコール(PVA)のフイルム(偏光膜)をTACフイルムで挟む構造となっている。TACフイルムは、PVAフイルムを保護するとともにヨウ素の昇華を防止している。また、TACフイルムには、偏光膜の偏光度を良好なものとするため光学異方性が小さいものが求められている。その光学異方性は、面内レタデーション(Re)値の大小により判断できる。
面内レターデーション(Re)値は、エリプソメーター(M−150,日本分光(株)製)を用いて波長580nmで測定される値を用いる。また、算出式は、
Re=(Nx−Ny)×d・・(3)
である。
Nxは、フイルムの搬送方向の複屈折率,
Nyは、フイルム面に沿い搬送方向に垂直方向の複屈折率,
dは、フイルムの膜厚(nm)をそれぞれ意味している。
また、フイルムの膜厚dは、マイクロメーターで測定する。そして、フイルムの幅方向の任意の20点(1点は、3cm×4cmのサイズ)について測定し、平均値をRe値とする。
本発明において、Re値は、10nm以下が好ましく、より好ましくは6.5nm以下であり、最も好ましくは3nm以下である。本発明において、光学特性に優れたフイルム、すなわち光学等方性に優れたフイルムは、貯蔵弾性率の制御または製膜時の延伸率の制御のいずれかを行うことで得られる。しかしながら、最も好ましくは、貯蔵弾性率及び製膜時の延伸率の制御の両方を行うことである。なお、遅相軸は、10°以下が好ましく、より好ましくは5°以下であり、最も好ましくは3°以下である。
Re値を小さくするためには、フイルムを構成するポリマーがランダム状に配列していることが必要である。すなわち、ポリマーの配向性が良いとその配向に従って複屈折が生じるおそれがある。TACは、分子中に2重結合などの強い結合が無く、また、極性基が少なく、フェニル基など嵩高い官能基を有していないため、分子の配列自由度が高い。また、セルビオーズ基中の6個の水酸基は、エ高い置換度でステル結合により末端がアルキル基となっている。そのため、水酸基の水素による水素結合の寄与も小さく、分子同士が規則的に配列することを防止していると思われる。
TACの原料であるセルロースのグルコース単位中の水酸基(−OH)をアシル化(−C−CO−R1 )する置換度を2.7〜2.9とする。これは、置換度を2.9より大きくすると、溶媒への溶解性が減少するからである。残っている水酸基がグルコース単位中で平均して0〜0.1であれば水素結合の発生が生じないか、発生してもTAC配列の自由度を妨げることがないからである。また、グルコース単位中の6位の水酸基(− 6CH2 −OH)のアシル化置換度を0.8〜0.97の範囲とする。また,場合によっては、R1 がメチル基(−CH3 )のアセチル化に代えて、炭素数が2以上のアルキル基を導入するアシル化により、TAC分子の配列を制御することもできる。グルコース単位中の6位の炭素は、セルロースを主鎖とみなした場合に側鎖となる。この側鎖に嵩高い官能基を導入して分子間凝集力を弱めたり、分子間凝集力が強い官能基を導入することにより、TAC分子の配列を制御することができる。
また、本発明において、TAC分子の配列を制御するために、流延膜,軟膜を乾燥させる際に、貧溶媒(主にアルコール類)を含有させている。そのため、TAC分子中に存在している水酸基は、アルコール中の水酸基と水素結合が生じやすくなり、TAC分子同士の水素結合の発生を抑制し、TACの配向性を低下させていると思われる。
TACフイルムは、音波伝達速度を用いて分子の配列状況を知ることができ、光学特性、主に光学等方性を推定することが可能となる。それにより、偏光板保護フイルムのような光学フイルムに適するものか否かの判断を行うことができる。
音波伝達速度の測定方法は、2つの振動子(発信振動子,受信振動子)を150mmの間隔L1で接触させ、発信振動子より縦波(超音波パルス)を発生させ、受信振動子が縦波を受信するまでの時間T(μs)を測定する。なお、本発明では、測定装置としては、SST−110(野村商事株式会社)を用いる。サンプルであるフイルムは、25℃,55%RHで2時間調温調湿する。以下の式により伝達速度C(km/s)を算出する。
C(km/s)=L1(km)/T(s)
なお、伝達速度は、2つの振動子の取り付け位置を代えて、5回測定を行い、平均値を伝達速度Cとみなす。ランダムに配列している分子があると音波の進行が妨げられるため伝達速度は遅くなる。そこで、伝達速度Cが速いと、分子の配向性が優れていると判断できる。
本発明に係るセルロースアシレートフイルムは、フイルムの搬送方向の音波伝達速度C1を2.65km/s以下とし、フイルムの垂直方向の音波伝達速度C2を2.20km/s以上とする。溶液製膜方法によるフイルムの製造では、フイルムの搬送方向に分子の配列が生じやすくなる。そこで、搬送方向の伝達速度C1と垂直方向の伝達速度C2との比(C1/C2)が、0.8<(C1/C2)<1.5の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.0<(C1/C2)≦1.3の範囲となるように製膜を行う。
また、本発明のセルロースアシレートのフイルムの光学特性の良否は、赤外吸収スペクトルにより判断することもできる。赤外吸収スペクトルの測定は、搬送方向の偏光(以下、I(A)と称する)と、垂直方向の偏光(以下、I(B)と称する)とを用いて、それぞれ1050cm-1の波数における吸光度を測定する。赤外吸収スペクトルの測定は、Niclet社 MAGNA−R 560を用いて測定する。測定方法は、透過法でも良いし、ATR(attenuated total reflectance)法でも良いが、本発明においては、ATR法により測定される値を用いる。測定は、プリズムには、(KRS−5 45度 2mm厚)を用い、アタッチメントには、(S.T. JAPAN Inc. 製 MODEL ATR-117 )を使用して、測定条件は、積算回数 50回,分解能 4cm-1とする。
本発明においては、測定する1050cm-1の吸光度は、セルビオーズ基中の6員環の(−C−O−C−)のC−O結合の伸縮振動由来と思われる。この結合に着目することで、主鎖の配列を推定することができる。I(A)の偏光を用いて測定する1050cm-1における吸光度をA1050(I(A))とし、I(B)の偏光を用いて測定する1050cm-1における吸光度をA1050(I(B))とした場合に、
1050(I(A))/A1050(I(B))≦1.2・・(1)
であれば、搬送方向におけるTAC分子の配列、特に主鎖がランダム状であることが推定され、Re値が低いフイルムが得られる。
アシル基(−O−(C=O)−R1 )のC=O結合の伸縮振動であると思われる1760cm-1の吸光度を測定することで、副鎖の配列を推定できる。なお、測定方法は、1050cm-1の吸光度の測定と同じである。
1760(I(A))/A1760(I(B))≦1・・(2)
前記式(1)と式(2)とを同時に満たすことにより、TACフイルム中のTAC分子の配列がランダム状になっていることを知ることができる。
本発明のフイルムは、前記式(1),(2)及び音波伝達速度C1,C2のいずれかのパラメーターで規定され、そのパラメーターを満たすことによりRe値の数値を推定できる。通常、ポリマーは単結晶が得られ難いため、その構造(分子の配列)を特定することは、容易でない。そこで、本発明では、TAC分子が赤外線領域(1050cm-1及び/または1760cm-1)で特徴的に有する吸光度,フイルム中の搬送方向及び垂直方向の音波伝達速度C1,C2を測定することで、TAC分子の配列の判断を容易としている。それらパラメーターを満たすことで、TAC分子の配列がフイルム中でランダム状であることが推定でき、光学等方性に優れたフイルムであることが分かる。
そこで、本発明のフイルムには、式(1),式(1)及び(2),音波伝達速度C1,C2のうち少なくとも1つのパラメーターを満たしたものが含まれる。パラメーターを満たすフイルムのTAC分子の配列は、ランダム状であると推定でき、光学等方性に優れている。
[フイルムを用いた各種製品]
本発明に係るフイルム、特にTACフイルムは、偏光板保護フイルムとして好ましく用いることができ、本発明にはその保護フイルムを用いた偏光板も含まれる。さらに、TACフイルム上に光学補償シートを設けた光学補償フイルム,防眩層をフイルム上に積層させた反射防止膜などの光学フイルムとして好ましく用いることができる。さらに、偏光板、光学補償フイルムを用いて構成される液晶表示装置も本発明には含まれる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
(ドープAの調製)
ジクロロメタン:メタノール:ブタノール=85重量%:12重量%:3重量%の組成比の塩素系有機溶媒である混合溶媒を調製した。セルローストリアセテート(TAC)の原料は、木材パルプ:綿花リンターを3:1で用いた。なお、木材パルプ原料は、酢化度60.9%,重合度300,粒径2mm〜3mmのものを用い、綿花リンター原料は、酢化度60.9%,重合度360,粒径2mm〜3mmのものを用いた。可塑剤は、TPP:BDP=3:1(重量比)の混合物を用い、紫外線吸収剤(UV吸収剤)には、ベンゾトリアゾール系化合物を用いた。そして、混合溶媒:ポリマー:可塑剤:紫外線吸収剤=63重量%:23重量%:12重量%:2重量%の組成比で混合した。クエン酸モノエチルとクエン酸ジエチルとが1:3(重量比)で混合しているクエン酸エチルエステルをTACの重量に対して600ppmを添加した。これら混合物を35℃に保温しつつ1時間攪拌を行った後に室温程度まで自然冷却を行い、溶液を得た。この溶液を平均孔径50μmのフィルタでろ過し溶液を得た。不純物や析出物が存在しないことをレーザー光散乱法で確認した後に、この溶液100重量%に対してシリカ微粒子(平均粒径0.2μm)を0.13重量%混合させて、均一に分散させてドープAを得た。
(ドープBの調製)
酢酸メチル:アセトン:メタノール:エタノール:ブタノール=74重量%:7重量%:5重量%:10重量%:4重量%の組成比の非塩素系有機溶媒である混合溶媒を調製した。セルローストリアセテートの原料は、木材パルプを用いた。この木材パルプ原料は、酢化度60.1%,重合度300,6位アセチル置換度0.9,粒径2mm〜3mmであった。添加剤は、ドープAと同じ組成比のものを用いた。また、ドープ調製方法もドープAと同じ条件で行い、不純物や析出物が存在しないことも確認した後に、溶液100重量%に対してシリカ微粒子(平均粒径0.2μm)を0.13重量%混合させ均一に分散させてドープBを得た。
実施例1では、延伸率と光学特性との関係について、本発明に係る実験1ないし3並びに比較例である実験4及び5を行なった。実験条件の説明は、実験1で詳細に行い、実験2ないし5について、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。
実験1では、図1に示すフイルム製膜ライン10を用いて製膜を行った。なお、ライン10のスタティックミキサ30は取り外して、濾過装置15と流延ダイ31とを直接、配管で接続した。回転ドラム32は、ハードクロム鍍金が施され、表面粗さRa=0.02μmとなるように鏡面仕上げされたものを用いた。また、回転ドラム32の表面温度が−7℃となるように温度調整装置34を用いて調整した。
ミキシングタンク11に入れられたドープAを図示しない温度調整装置を用いて35℃に保持した。ドープAを乾燥後のフイルム51の膜厚が40μmとなるように回転ドラム32上に流延し、流延膜33を形成した。その後に剥取ローラ37で支持しながら流延膜33を軟膜38として剥ぎ取った。そして、温度調整装置45により−7℃に温度調整されているローラ40〜44で搬送し、テンタ式乾燥機50に送り込んだ。テンタ式乾燥機50で120℃,3分間乾燥した。なお、乾燥すると共に延伸を流延幅方向に2%行った。さらに、140℃の乾燥室53で10分間乾燥させた後に、フイルム51として巻取機55で巻き取った。また、Re値を前述した方法で測定したところ5nmであった。
なお、搬送方向に延伸を付与するために、回転ドラム32の搬送速度を100%とした場合に、ローラ37が101%,ローラ40が102%,ローラ41が103%,ローラ42が104%,ローラ43が105%,ローラ44が106%,テンタ式乾燥機が107%の搬送速度となるように予め調整した。このように、搬送方向へ延伸を付与する方法を以下の説明において搬送速度調整と称する。
回転ドラム32上から剥ぎ取られる流延膜33の位置から上流側に1mの長さを測定し、始点及び終点それぞれにマーキングを施す。そして、巻取機55で巻き取られる直前のフイルム51でその始点から終点の長さを測定し、搬送方向の延伸率を算出した。実施例1では、107%であり、前述した調整方法が適切であることを確認した。
実験2では、搬送方向への延伸率が104%となるように前記搬送速度調整を行った以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。実験3では、ドープAに代えてドープBを用いた以外は、実験2と同じ条件で実験を行った。また、実験4では、搬送方向への延伸率が113%となるように前記搬送速度調整を行った以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。実験5では、乾燥後のフイルムの膜厚が80μmとなるように流延を行い、また搬送方向への延伸率が113%となるように前記搬送速度調整を行った以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。溶媒組成比と膜厚と搬送方向への延伸率とRe値とを併せて表1に示す。
Figure 2005111816
表1から、膜厚を薄くした場合には、延伸率の増加に伴いRe値の増加が顕著に見られることが分かる。これは、延伸することで、フイルム(軟膜の状態も含む)中のTAC分子の配列状態が揃う方向に働くために光学異方性が増加するものであると考えられる。そのため、薄手フイルムを製膜する際には、延伸を極力行わないことが光学特性に優れたフイルムを得ることができることが分かる。なお、実験3から、非塩素系有機溶媒を用いたドープBからフイルムを製膜する際も延伸率を110%以下とすることで、Re値を3nmとすることができることが分かる。
実施例2では、流延膜の貯蔵弾性率と光学特性との関係について、本発明に係る実験6ないし8並びに比較例として実験9及び10についてそれぞれ実験を行なった。実験条件の説明は、実験6で詳細に行い、実験7ないし10について、実験6と同じ条件の箇所の説明は省略する。
実験6では、回転ドラム32の温度を−10℃とした以外は、実験1と同じ条件で製膜を行った。フイルムのRe値を前出した方法で測定したところ4nmであった。また、貯蔵弾性率の測定も併せて行った。流延する調製ドープ12のレオメーター測定から算出したところ、剥ぎ取り時の軟膜38(流延膜の意味も含む)の貯蔵弾性率G’は、22万Paであった。
実験7では、回転ドラム32の温度を−15℃とした以外は、実験6と同じ条件で実験を行った。実験8では、ドープAに代えてドープBを用い、回転ドラム32の温度を−30℃とした以外は、実験6と同じ条件で実験を行った。また、実験9では、回転ドラム32の温度を−3℃とした以外は、実験6と同じ実験条件で行った。実験10では、乾燥後のフイルムの膜厚が80μmとなるように−3℃の回転ドラム32上に流延を行った。ドープ種類と膜厚と貯蔵弾性率G’とRe値とを併せて表2に示す。
Figure 2005111816
表2から、膜厚を薄くした場合には、貯蔵弾性率G’の減少に伴いRe値の増加が見られる。これは、フイルムの貯蔵弾性率G’が小さいと、流延膜33を剥ぎ取りする際の剥ぎ取り応力により軟膜38が延伸される。その延伸の履歴がフイルム51に残りフイルム中でTAC分子の配列が揃う方向に働くため、光学異方性が大きくなると思われる。また、実験10の結果と実験6ないし8との比較から、この現象は薄手フイルムを製膜する際に顕著に現れることも分かる。そこで、剥ぎ取り時の貯蔵弾性率G’が15万Pa以上となるように支持体である回転ドラム32の温度を−5℃以下とすることが好ましいことが分かる。
実施例3では、流延膜の貯蔵弾性率及び延伸率と光学特性との関係について、本発明に係る実験11ないし13並びに比較例である実験14及び15についてそれぞれ実験を行なった。実験条件の説明は、実験11で詳細に行い、実験12ないし15について、実験11と同じ条件の箇所の説明は省略する。
実験11では、回転ドラム32の温度を−15℃とし、搬送方向への延伸率が104%となるように、前記搬送速度調整を行った以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。貯蔵弾性率G’は、31万Paであり、Re値は、2nmであった。実験12では、ドープAに代えてドープBを用い、回転ドラム32の温度を−30℃とした以外は、実験11と同じ条件で実験を行った。実験13では、回転ドラム32の温度を−10℃とした以外は、実験11と同じ条件で実験を行った。実験14では、回転ドラム32の温度を−3℃とし、搬送方向への延伸率が113%となるように前記搬送速度調整を行った以外は、実験11と同じ実験条件で行った。実験15では、乾燥後のフイルムの膜厚が80μmとなるように−3℃の回転ドラム32上へ流延を行い、搬送方向への延伸率が113%となるように前記搬送速度調整を行った以外は、実験11と同じ条件で実験を行った。ドープ種類と膜厚と貯蔵弾性率G’と搬送方向への延伸率とRe値と光学特性の評価を併せて表3に示す。なお、光学特性の評価は、Re値が3nm以下のものは極めて優れている(◎),10nm以下のものは優れている(○),10nmより大きいものは不良である(×)の3段階で評価した。
Figure 2005111816
表3から、薄手フイルムを製膜する際には、貯蔵弾性率G’の減少、延伸率の増加に伴いRe値の増加が見られる。これは、流延膜33の貯蔵弾性率が小さいと、流延膜33の剥ぎ取り時の剥ぎ取り応力により流延膜33が延伸され、その履歴がフイルム51に残るためであると思われる。また、実験14から延伸率を増加させると、フイルム中のTAC分子の配向が揃う効果が顕著に現れ、Re値が増加する。実験11ないし13から本発明では、流延膜の貯蔵弾性率G’を15万Pa以上とし、延伸率を110%以下とすることにより光学特性が極めて優れている薄手フイルムを得ることができることが分かる。
実施例4では、支持体である回転ドラムの温度と流延膜の貯蔵弾性率と光学特性との関係について、それぞれ実験を行なった。実験16では、回転ドラム32の温度を温度調整装置34を用いて−15℃となるように調整した以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。このときの貯蔵弾性率G’は31万Paであり、得られたフイルムのRe値は、2nmであり、光学特性が極めて優れたフイルムを得ることができた。また、実験17では回転ドラム32の温度を−10℃とした以外は、実験16と同じ実験条件で行った。実験18では、ドープAに代えて、ドープBを用い、回転ドラム32の温度を−30℃とし以外は、実験16と同じ実験条件で行った。比較例である実験19では、回転ドラム32の温度を−3℃とした以外は、実験16と同じ実験条件で行った。比較例である実験20では、乾燥後のフイルムの膜厚が80μmとなるように−3℃の回転ドラム32上へ流延を行った以外は、実験16と同じ実験条件で行った。各実験における回転ドラムの温度と貯蔵弾性率G’とRe値とを併せて表4に示す。
Figure 2005111816
表4から、流延膜33の貯蔵弾性率G’は温度依存性があることが明確に分かる。そこで、支持体である回転ドラム32の温度を調整して流延膜33を冷却させることで、貯蔵弾性率G’を増加させることができる。それにより、流延膜33を回転ドラム32から剥ぎ取る時の剥ぎ取り応力を小さくすることが可能となり、剥ぎ取り時に延伸が加えられることを抑制できる。
実施例5では、軟膜38の残留溶媒量と延伸との関係について、本発明に係る実験21ないし23並びに比較例である実験24及び25を行なった。実験条件の説明は、実験21で詳細に行い、実験22ないし25については、実験21と同じ条件の箇所の説明は省略する。
実験21では、実験1と同じフイルム製膜ラインを用いた。ミキシングタンク11に入れられたドープAを図示しない温度調整装置を用いて35℃に保持した。ドープAを乾燥後のフイルム51の膜厚が40μmとなるように回転ドラム32上に流延し、流延膜33を形成した。流延膜33に40℃の乾燥風35をあてて、乾燥を進行させた。その後に、剥取ローラ37で支持しながら流延膜33を軟膜38として剥ぎ取った。このときの流延膜33(軟膜38とみなすこともできる)の残留溶媒量は60重量%であった。なお、残留溶媒量の測定方法は後に説明する。そして、温度調整装置45により−7℃に温度調整されているローラ40〜44で搬送し、テンタ式乾燥機50に送り込んだ。テンタ式乾燥機50で120℃,3分間乾燥した。また、軟膜38は、搬送方向への延伸率が104%となるように、前記搬送速度調整を行った。さらに、140℃の乾燥室53で10分間乾燥させた後に、フイルム51として巻取機55で巻き取った。フイルム51のRe値は3nmの光学特性に極めて優れたフイルムが得られた。
(残留溶媒量)
本発明において、残留溶媒量とは、ドープを調製する際に用いた溶媒がフイルム(流延膜,軟膜も含む)に残留している量を意味している。フイルム中に含まれている溶媒量を直接測定することは、困難である。そこで、フイルムの一部を切り取り、その重量を測定しフイルム重量Wfとする。そして、そのフイルムを加熱して残留している溶媒を揮発除去する。この際に、フイルム中に含有している溶媒はできる限り揮発させる温度であることが好ましいが、あまりに高温にすると、フイルムを構成するポリマーが分解して揮発したり、原料中に含まれていたオリゴマーなどが揮発するおそれがあり、厳密に残留溶媒量を算出することが困難になる。そこで、減圧下で行う方法を適用することもできる。
ポリマーにTACを用いた本実験では、フイルムの一部を50mm×100mmに切断しその重量を測定し、フイルム重量Wfとする。そのフイルムを容器に入れ、120℃の温度で90分間加熱することで、フイルム中の溶媒全てを揮発させたとみなすことができる。このように溶媒を揮発させたフイルムを乾膜と称し、その重量をW0とする。この場合に、サンプルとして用いたフイルム中には、(Wf−W0)の重量の溶媒が含まれている。この溶媒の重量をWsとする。そして、下記の式から残留溶媒量を算出できる。
残留溶媒量=(Ws/Wf)×100 (%)
実験22では、搬送方向への延伸率が107%となるように調整した以外は、実験21と同じ条件で行った。実験23では、ドープAに代えてドープBを用い、搬送方向への延伸率が102%となるように調整した以外は、実験21と同じ条件で実験を行った。また、実験24では、搬送方向への延伸率を113%に調整した以外は、実験21と同じ条件で実験を行った。実験25では、乾燥後のフイルムの膜厚が80μmとなるように流延を行い、搬送方向への延伸率を113%へ調整した以外は、実験21と同じ条件で実験を行った。ドープ種類と膜厚と残留溶媒量と搬送方向への延伸率とRe値を併せて表5に示す。
Figure 2005111816
実施例6では、ドープ調製用の溶媒の組成比を変更した実験を実験26及び27として行った。なお、溶媒の組成比を変更した以外は、実験2(延伸率104%)と同じ条件でそれぞれ製膜を行った。実験26では、溶媒をジクロロメタン:メタノール:n−ブタノール=85重量%:12重量%:3重量%とした。実験27では、ジクロロメタン:メタノール:n−ブタノール=60重量%:28重量%:12重量%とした。なお、ドープ調製時間は、実験27では、実験26の2倍の時間を必要とした。溶媒組成比と流延ドープの貧溶媒比率と貯蔵弾性率G’と膜厚とRe値とを併せて表6に示す。
Figure 2005111816
表6から流延ドープの貧溶媒比率を高めた、実験27では、貯蔵弾性率が32万Paと大きいためRe値が2nmと小さい光学等方性に優れたフイルムを得ることができた。しかしながら、ドープ中の貧溶媒の比率が高いため、実験26と比較してドープを調製する時間が2倍必要であった。そこで、本発明のフイルム製膜ライン10を用いることで、調製ドープ12は、ドープ調製を容易に行えるように貧溶媒比率を低くしたドープを調製し、流延するまでの間に貧溶媒比率を高めた流延ドープを調製することで、その流延ドープから得られる軟膜38(流延膜33とみなすこともできる)の貯蔵弾性率G’を向上させることができる。貯蔵弾性率G’が大きい軟膜38は、延伸に伴う光学異方性の増加を抑制することができる。このような製造方法を行うことで、迅速にドープを調製しつつ、フイルムの生産速度を向上させることができる。
実施例7では、調製ドープに貧溶媒を添加し流延ドープの調製方法についての実験を行った。さらにそれらドープを用いて製膜を行い得られたフイルムの面内レターデーション(Re),音波伝達速度及び赤外吸収スペクトルの測定を行った。本発明に係る実験28ないし31並びに比較例である実験32及び33についてそれぞれ実験を行なった。実験条件の説明は、実験28で詳細に行い、実験29ないし33について、実験28と同じ条件の箇所の説明は省略する。なお、添加溶媒,流延ドープの溶媒組成比は表7に、添加条件,回転ドラムの温度などは表8に、音波伝達速度,赤外吸収スペクトルの測定結果は表9に、それぞれ後にまとめて示す。
実験28では、図1に示すフイルム製膜ライン10を用いて製膜を行った。なお、添加溶媒20が送液可能であり、スタティックミキサ30も接続した。調製ドープには、ドープA(混合溶媒比;ジクロロメタン:メタノール:n−ブタノール=85重量%:12重量%:3重量%)を用いた。ミキシングタンク11に入れられた調製ドープを図示しない温度調整装置を用いて35℃に保持した。また、添加溶媒20として、メタノール/ブタノール混合溶媒(混合比1:1)を用い、調製ドープの溶媒100重量%に対して5重量%となるように、送液ポンプ23でインライン配管16中に送液した。これら混合液は、スタティックミキサ(エレメント数48個)30により均一に混合した。なお、この際の添加条件は、インライン添加(添加方式1)とした。また、添加溶媒20の流速S1(m/min)と調製ドープ12の流速S2との比(以下、流速比と称する)を1.2とし、調製ドープ12の剪断速度を30(1/sec)とした。その後にドープを乾燥後のフイルム51の膜厚が40μmとなるように−7℃の回転ドラム32上に流延した。なお、回転ドラム32には、ハードクロム鍍金が施され、表面粗さRa=0.02μmのものを用いた。流延ドープ18の溶媒組成比は、ジクロロメタン:メタノール:ブタノール=81重量%:14重量%:5重量%であった。この場合、貧溶媒であるメタノール及びブタノールの重量比(貧溶媒重量比)は、19重量%であった。流延ドープ18から流延膜33を形成し、40℃で、5m/minの流速の乾燥風35をあてて、乾燥を進行させた。その後に、剥取ローラ37で支持しながら流延膜33を軟膜38として剥ぎ取った。このときの流延膜33(軟膜38と見なすこともできる)の貯蔵弾性率G’は25万Paであり、残留溶媒量は70重量%であった。そして、温度調整装置45により−7℃に温度調整されているローラ40〜44で搬送した。なお、ローラ40〜44の回転速度は搬送方向への延伸率が104%となるように調整した。テンタ式乾燥機50に送り込んだ。テンタ式乾燥機50で120℃,3分間乾燥した。さらに、140℃の乾燥室53で10分間乾燥させた後に、フイルム51として巻取機55で巻き取った。フイルムのRe値は、2.5nmであった。
実験29ではジクロロメタン:メタノール=1:1の混合溶媒を添加溶媒20とした。また、流速比を1.1としてスタティックミキサ(エレメント数48)30で混合させて均一な流延ドープ18とした。流延ドープ18の貧溶媒(メタノール及びブタノール)の重量比は19重量%であった。この流延ドープ18を−15℃に温度調整がされた回転ドラム32上に流延した。また、流延膜33を剥ぎ取るときの貯蔵弾性率G’は、25万Paであり、残留溶媒量は70重量%であった。それ以外の実験条件は、実験28と同じ条件で行った。得られたフイルム51のRe値は、2.5nmであった。
実験30ではメタノール10重量%を添加溶媒20とした。また、流速比を1.3としてスタティックミキサ(エレメント数48)30で混合させて均一な流延ドープ18とした。流延ドープ18の貧溶媒(メタノール及びブタノール)の重量比は23重量%であった。この流延ドープ18を−7℃に温度調整がされた回転ドラム32上に流延した。また、流延膜33を剥ぎ取るときの貯蔵弾性率G’は、35万Paであり、残留溶媒量は70重量%であった。それ以外の実験条件は、実験28と同じ条件で行った。得られたフイルム51のRe値は、2nmであった。
実験31では、ブタノール5重量%を添加溶媒20とした。また、流速比を1.5としてスタティックミキサ(エレメント数48)30で混合させて均一な流延ドープ18とした。流延ドープ18の貧溶媒(メタノール及びブタノール)の重量比は19重量%であった。この流延ドープ18を−30℃に温度調整された回転ドラム32上に流延した。また、流延膜33を剥ぎ取るときの貯蔵弾性率G’は25万Paであり、残留溶媒量は70重量%であった。ローラ40〜44の回転速度は、搬送方向への延伸率が102%となるように調整した。それ以外の実験条件は、実験28と同じ条件で行った。得られたフイルム51のRe値は、2.5nmであった。
実験32では、メタノールを添加溶媒に用いた。添加溶媒を調製ドープ12中の溶媒100重量%に対して15重量%となるように、調製ドープ12を100kg,添加溶媒20を20kgをバッチ式(添加方式2)で混合させた。混合方法は、ミキシングタンク内に調製ドープ12,添加溶媒20の順に注ぎ、マックスブレンド型の攪拌翼を用いて回転速度を50rpmで30分間攪拌した。なお、攪拌は室温下で行い、特に温度の制御は行わなかった。攪拌中にドープが固化して製膜に用いることができなかった。
実験33では、ドープAを流延ドープ18として用いた。その他の実験条件は、搬送方向の延伸率が113%となるようにローラ40〜44の回転速度を調整した以外は、実験28と同じ条件で実験を行った。また、流延膜33を剥ぎ取るときの貯蔵弾性率G’は15万Paであり、残留溶媒量は70重量%であった。得られたフイルムのRe値は、10nmであった。
Figure 2005111816
Figure 2005111816
表7及び表8から添加溶媒20を調製ドープ12へ添加して貧溶媒重量比を高めた場合に、貯蔵弾性率G’が大きくなることにより、延伸が生じ難くなるためRe値が低下した光学等方性に優れたフイルムが得られることが分かった。また、貧溶媒を添加する方法は、インライン方式で行うことが好ましいことが分かった。
さらに、本発明に係る実験28ないし31で得られたフイルムの物性と光学特性との関係について、音波伝達速度と赤外吸収スペクトルとの測定を行った。
実験28で得られたフイルムの搬送方向音波伝達速度C1は、2.60km/secであり、垂直方向音波伝達速度C2は、2.25km/secであった。なお、音波伝達速度の測定は、前述した装置を用いて行った。偏光I(A)とI(B)とを用い1050cm-1における吸光度A1050(I(A))とA1050(I(A))との比F1は、1.12であった。また、1760cm-1における吸光度A1760(I(A))とA1760(I(A))との比F2は、0.88であった。なお、吸光度の測定も前述した装置を用いて行った。実験29ないし31で得られた各フイルムも同じ条件で測定した。搬送方向音波伝達速度C1,垂直方向音波伝達速度C2,1050cm-1の吸光度比F1,1760cm-1の吸光度比F2を表9にそれぞれ併せて示す。
Figure 2005111816
表9から本発明に係る実験28ないし実験31により製膜されたフイルムは、搬送方向音波伝達速度C1は、2.65km/sec以下であり垂直方向音波伝達速度C2は、2.20km/sec以上であった。この場合に、速度比(C1/C2)は、いずれも1.15であった。そして、1050cm-1の偏光を用いた赤外スペクトル比F1≦1.2,1760cm-1の偏光を用いた赤外スペクトル比F2≦1のいずれをも満たしていた。このようなフイルムは、表8に示したように面内レターデーション値(Re)が2nmまたは2.5nmであり光学等方性に優れるものであることが分かった。
本発明の溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの概略図である。 図1のラインの要部概略図である。 本発明の溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの他の実施形態の要部概略図である。 本発明の溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの他の実施形態の要部概略図である。 本発明の溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの他の実施形態の要部概略図である。 本発明の溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの他の実施形態の要部概略図である。
符号の説明
10 フイルム製膜ライン
12 調製ドープ
16 インライン配管
18 流延ドープ
20 添加溶媒
30 スタティックミキサ
33 流延膜
38 軟膜
50 テンタ式乾燥機
51 フイルム
G’ 貯蔵弾性率
Re 面内レタデーション値

Claims (25)

  1. ポリマーを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成した後に前記支持体から剥ぎ取り、膜厚10μm以上60μm以下のフイルムを製膜する溶液製膜方法において、
    前記支持体から剥ぎ取る際の前記流延膜の貯蔵弾性率を150000Pa以上とすることを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記支持体の温度を−5℃以下とすることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記流延する際のドープを構成する溶媒のうち5重量%以上50重量%以下が貧溶媒であることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記ドープを調製した後から、前記流延を行う前の間で、
    前記ドープに少なくとも貧溶媒を含む溶媒を添加することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  5. 前記貧溶媒を含む溶媒の添加を
    インラインで行い、混合機で混合することを特徴とする請求項4記載の溶液製膜方法。
  6. 前記ドープ中の溶媒100重量%に対して前記貧溶媒を20重量%以下添加することを特徴とする請求項4または5記載の溶液製膜方法。
  7. 前記貧溶媒に少なくとも一種類のアルコールを含むものを用いることを特徴とする請求項3ないし6いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  8. 前記フイルムの搬送方向における延伸率を110%以下として延伸することを特徴とする請求項1ないし7いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  9. 前記フイルムの重量をWfとし、前記フイルムに含有している溶媒の重量をWsとしたときに、
    前記フイルムの残留溶媒量((Ws/Wf)×100)が、10重量%以上のときに延伸を行うことを特徴とする請求項8記載の溶液製膜方法。
  10. ポリマーを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成した後に前記支持体から剥ぎ取り、膜厚10μm以上60μm以下のフイルムを製膜する溶液製膜方法において、
    前記フイルムの搬送方向における延伸率を110%以下として延伸することを特徴とする溶液製膜方法。
  11. 前記フイルムの重量をWfとし、前記フイルムに含有している溶媒の重量をWsとしたときに、
    前記フイルムの残留溶媒量((Ws/Wf)×100)が、10重量%以上のときに延伸を行うことを特徴とする請求項10記載の溶液製膜方法。
  12. 前記ポリマーにセルロースアシレートを用いることを特徴とする請求項1ないし11いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  13. 前記ドープを構成する溶媒が、全て非塩素系有機溶媒からなることを特徴とする請求項1ないし12いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  14. 前記流延する際に共流延法を行うことを特徴とする請求項1ないし13いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  15. 前記流延する際に逐次流延法を行うことを特徴とする請求項1ないし14いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  16. ポリマーフイルムを製膜した際の搬送方向の音波伝達速度が2.65km/sec以下でありかつ、
    前記ポリマーフイルム面に沿い前記搬送方向に対して垂直方向の音波伝達速度が2.20km/sec以上であることを特徴とするポリマーフイルム。
  17. 前記搬送方向の音波伝達速度C1と、
    前記垂直方向の音波伝達速度C2と、の比(C1/C2)が、
    0.8<(C1/C2)<1.5の関係を有することを特徴とする請求項16記載のポリマーフイルム。
  18. 前記搬送方向の偏光(I(A))と、
    前記垂直方向の偏光(I(B))と、を使用して測定する赤外分光スペクトルが下記の式(1)を満たすことを特徴とする請求項16または17記載のポリマーフイルム。
    1050(I(A))/A1050(I(B))≦1.2・・(1)
    1050(I(A)))は、I(A)を用いて測定される1050cm-1の吸光度、
    1050(I(B)))は、I(B)を用いて測定される1050cm-1の吸光度を意味する。
  19. 前記搬送方向の偏光(I(A))と、
    前記垂直方向の偏光(I(B))と、を使用して測定する赤外分光スペクトルが下記の式(2)を満たすことを特徴とする請求項16ないし18いずれか1つ記載のポリマーフイルム。
    1760(I(A))/A1760(I(B))≦1・・(2)
    1760(I(A)))は、I(A)を用いて測定される1760cm-1の吸光度、
    1760(I(B)))は、I(B)を用いて測定される1760cm-1の吸光度を意味する。
  20. Reが10nm以下であることを特徴とする請求項16ないし19いずれか 1つ記載のポリマーフイルム。
    Reとは以下の式(3)に示す前記ポリマーフイルムの面内レタデーション値を意味する。
    Re=(Nx−Ny)×d・・(3)
    Nx=前記ポリマーフイルムの搬送方向の複屈折率、
    Ny=前記ポリマーフイルムの垂直方向の複屈折率、
    d=前記ポリマーフイルムの膜厚(nm)。
  21. 前記ポリマーはセルロースアシレートであることを特徴とする請求項16ないし20いずれか1つ記載のポリマーフイルム。
  22. 偏光板を保護するための保護フイルムとして用いられることを特徴とする請求項16ないし21いずれか1つ記載のポリマーフイルム。
  23. 前記偏光板は、液晶表示装置に用いられることを特徴とする請求項22記載のポリマーフイルム。
  24. 光学補償フイルムとして用いられることを特徴とする請求項16ないし21いずれか1つ記載のポリマーフイルム。
  25. 前記光学補償フイルムは、液晶表示装置に用いられることを特徴とする請求項23記載のポリマーフイルム。
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