JP2005105366A - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、前記一対の冷却ローラによって前記アルミニウム合金溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成させる鋳造工程と、得られたアルミニウム合金板の表面に、少なくとも、アルカリエッチング処理とその後の電気化学的粗面化処理とを含む粗面化処理を施して、平版印刷版用支持体を得る、粗面化処理工程とを有する平版印刷版用支持体の製造方法であって、前記アルカリエッチング処理におけるアルミニウム溶解量と、前記電気化学的粗面化処理におけるアノード反応時の総電気量とが、下記式(1)を満足する関係にある、平版印刷版用支持体の製造方法。
1000>Y≧10X (1)
【選択図】なし
Description
そのような駆動鋳型を用いる連続鋳造法としては、例えば、ハズレー法に代表される一対のベルト状駆動鋳型を用いる方法、および、ハンター法、3C法に代表される一対のロール状駆動鋳型を用いる方法が知られている。ハンター法は、一対の冷却ローラを水平面から15°程度傾けて配置し、アルミニウム合金板を斜め上方に向かって鋳造する方法である。3C法は、一対の冷却ローラを鉛直に配置し、アルミニウム合金板を水平方向に向かって鋳造する方法である。これらの駆動鋳型を用いる方法は、設備がコンパクトにできるという利点を有する。中でも、ロール状駆動鋳型を用いる方法がその点で優れている。
したがって、本発明は、表面の色ムラが生じない平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明者は、その場合であっても、その後の電気化学的粗面化処理のアノード反応時の総電気量を多くすると、生じた表面の色ムラを減少させることができることを見出した。本発明者は、更に、電気化学的粗面化処理のアノード反応時の総電気量が多すぎると、表面の色ムラを減少させる効果が小さくなってしまうことを見出した。
そして、本発明者は、これらの知見に基づき、粗面化処理において、アルカリエッチング処理でのアルミニウム溶解量に応じて、その後の電気化学的粗面化処理のアノード反応時の総電気量を決定すること、および、電気化学的粗面化処理のアノード反応時の総電気量を特定範囲以下にすることにより、表面の色ムラが生じないという効果を奏する本発明の平版印刷版用支持体の製造方法を完成させた。
得られたアルミニウム合金板の表面に、少なくとも、アルカリエッチング処理とその後の電気化学的粗面化処理とを含む粗面化処理を施して、平版印刷版用支持体を得る、粗面化処理工程と
を有する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記アルカリエッチング処理における前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される側の前記表面の面積1m2 あたりのアルミニウム溶解量:X(g/m2 )と、前記電気化学的粗面化処理における前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される側の前記表面の面積1dm2 あたりのアノード反応時の総電気量:Y(C/dm2 )とが、下記式(1)を満足する関係にある、平版印刷版用支持体の製造方法。
前記アルミニウム合金溶湯を溶解保持炉から流路を経由して前記溶湯供給ノズルに供給する供給工程
を具備する、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記流路の底面に形成された凹部に設けられたかくはん手段が、前記凹部の近傍の前記アルミニウム合金溶湯をかくはんする、平版印刷版用支持体の製造方法。
まず、必要に応じて、所定の成分に調整されたAl溶湯に、常法に従い、清浄化処理を施す。清浄化処理には、Al溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
清浄化処理は、必須ではないが、Al溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、Al溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。
供給工程は、Al溶湯を溶解炉から流路を経由して溶湯供給ノズルに供給する工程であり、必要に応じて行われる。ここで、流路の底面に形成された凹部に設けられたかくはん手段が、凹部の近傍のAl溶湯をかくはんするのが好ましい。
溶湯供給ノズルに供給されるAl溶湯中に、上流から結晶粒微細化材、耐火材の一部等の粗大粒子が混入すると、連続鋳造により得られるアルミニウム合金板中に粗大粒子が埋めこまれ、アルカリエッチング処理および電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を行った際に、黒または黒褐色のスジ状の色ムラが発生する。
したがって、溶湯供給ノズルに供給される直前のAl溶湯をかくはんすることにより、Al溶湯のよどみの発生を防止し、よどみに粗大粒子が沈降し蓄積することを防止するのが好ましい。以下、具体的に説明する。
鋳造を長時間続けると、凹部30の底に比重の大きい不純物等が沈降するとともに、凹部30の上部にできるよどみにAl溶湯が捕捉され一次滞留しやすくなる。そこで、図2に示されるように、凹部30にセラミック等の多孔質材料からなるガス放出部43から、アルゴンガス等のAl溶湯22と反応しないガスが細かい気泡46にして放出され、凹部30内のAl溶湯22がかくはんされる。これにより、よどみの発生が防止される。
図3は、かくはん手段を設けられた凹部の別の例を示す模式図である。図3に示されるように、凹部30に回転式のローター45から、アルゴンガス等のAl溶湯22と反応しないガスが細かい気泡46にして放出され、凹部30内のAl溶湯22がかくはんされる。これにより、よどみの発生が防止される。
これらについては、特開2000−24762号公報に詳細に記載されている。
鋳造工程は、Al溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、前記一対の冷却ローラによって前記Al溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成させる工程である。
図1に示されるように、鋳造装置10において、Al溶湯22は、溶湯供給ノズル16を介して一対の冷却ローラ18の間に供給される。この冷却ローラ18によってAl溶湯22が凝固しつつ圧延され、アルミニウム合金板36が形成される。得られるアルミニウム合金板36の厚さは、0.1〜0.5mmであるのが好ましいが、後述する圧延工程を行う場合は、通常、1〜10mmとする。
結晶組織の成長が不均一になると、縞模様状の粗大結晶故障が発生し、圧延や熱処理を行って平版印刷版用支持体にした場合、粗面化処理を施した際、その条件によらず、表面の色ムラ等の致命的な外観故障になる場合がある。
そこで、冷却ローラの周速:V(m/min)と、アルミニウム合金板の板厚:t(m)と、冷却ローラの径:D(m)とが、下記式(2)を満足する関係にするのが好ましい。これにより、表面の色ムラが発生しにくくなる。
また、これらは、下記式(2′)を満足する関係にするのが好ましい。
これらについては、特開2002−143988号公報に詳細に記載されている。
V≦8×10-5×(D/t2 ) (2′)
溶湯供給ノズルと冷却ローラとを接触させる場合、接触させる箇所が常に一定でなければ、溶湯供給ノズルの先端と冷却ローラとの間隔が不安定になる。この場合も同様に平版印刷版用支持体の外観故障となる。
同様に、図12においても、ノズル9aとしてその形状が一般的なものが使用され、ノズル9aと冷却ローラ18とが接触せず、隙間11bを設けて配置されている。この場合も、上記と同様の理由により、溶湯メニスカス部が変動しやすくなり、結晶組織の成長の不均一が発生しやすくなる。
そこで、本発明においては、前記溶湯供給ノズルの口部外縁が前記冷却ローラに接触し、前記溶湯供給ノズルの口部外周に前記冷却ローラとの接触を避ける逃げ部が凹設されているのが好ましい。これにような構成にすると、常に溶湯供給ノズルの先端部のみが冷却ローラに接することになり、先端部での溶湯の安定性が高まる点で、極めて好ましい。
図5においては、溶湯供給ノズル16の口部外縁が冷却ローラ18に接触し、溶湯供給ノズル16の口部外周に冷却ローラ18との接触を避ける逃げ部(面取り部)8が凹設されている。即ち、溶湯供給ノズル16は先端部Tのみで冷却ローラ18と接触している。逃げ部(面取り部)は、溶湯供給ノズル16の全幅にわたって設けられているのが好ましい。
このような構造にすることで、溶湯メニスカス部が変動するスペースとなる隙間が与えられないので、外観故障が発生しないアルミニウム合金板を得ることができ、外観故障がより抑制された平版印刷版用支持体を得ることができる。
図13は、溶湯供給ノズルの先端部が破損した場合の例を示す模式図である。溶湯メニスカス部は、通常、図4に示されるような領域にある。しかしながら、応力等の外的要因によって、ノズル先端14aおよび14bが破損すると、溶湯メニスカス部は、図13に示されるような領域に変わり、メニスカスが不安定になるとともに、溶湯メニスカス部の溶湯滞留時間が変わるため、粗大結晶等の結晶の不均一が発生しやすくなる。外的要因としては、鋳造開始直後の凝固の不安定、圧延荷重の異常、鋳造板の蛇行および波打ち、振動等が挙げられる。
耐熱材料としては、曲げ強度が10MPa以上であるものが好ましい。具体的には、エンジニアリング用のファインセラミックスが、耐熱性と強度とを両立することができる点で好ましい。具体的な材料としては、例えば、ZrO2 、Al2 O3 、Si3 N4 、SiC、SiO2 およびアルミノリチウムシリケートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むセラミック材料が、強度および耐熱性の点で、好ましい。中でも、ノズル内のアルミニウム合金溶湯を不必要に冷却させない点で、熱伝導率が低いものがよい。その点で、ZrO2 、Al2 O3 、アルミノリチウムシリケートが好ましい。アルミノリチウムシリケートはケイ酸カルシウムと混合して用いるのが、熱伝導率を低くする点で、好ましい。
溶湯供給ノズルはすべてが上記耐熱材料で構成されていてもよい。
図6は、支持部材を有する溶湯供給ノズルの例を示す模式図である。図6(A)は側面図であり、図6(B)は平面図である。図6に示されるように、溶湯供給ノズル16は、支持部材15aに支持されている。支持部材15aは、溶湯供給ノズル16を構成する材料より曲げ強度が大きい材料からなる。
支持部材15aの間隔は、支持の効果を高くするために、200mm以下とするのが好ましい。また、支持部材15aの1箇所毎の支持を確実なものとするため、20mm以上とするのが好ましい。これにより、溶湯供給ノズル16に、マリナイト、ケイ酸カルシウム等の比較的強度の弱い耐火材(例えば、曲げ強度10MPa未満)を使用しても、先端部の破損防止を確実にすることができる。
そこで、本発明においては、前記溶湯供給ノズルが、その前記Al溶湯に接する内面に、あらかじめ、骨材粒子を含む離型剤を塗布されているのが好ましい。
骨材粒子に用いられる骨材としては、窒化ホウ素が好ましい。骨材粒子は、メジアン径が5〜20μmであり、モード径が4〜12μmである粒度分布を有するのが好ましい。
これにより、Al溶湯が溶湯供給ノズルの内面に固着するのを防止することができ、溶湯供給ノズル内で流れが乱れることがないので、スジ状の結晶組織の成長の不均一を防止することができる。
これらについては、特開平11−192537号公報に詳細に記載されている。
これにより、溶湯供給ノズルの先端部と冷却ロールとが常に接し、その結果、溶湯メニスカス部の形状が一定状態で維持されるため、外観故障がより抑制された平版印刷版用支持体を得ることができる。
図7に示される溶湯供給ノズル16Aは、上板部材40および下板部材42をボルト90で固定することにより、上板部材40および下板部材42の先端が、Al溶湯の圧力に応じて軽度に動くことができるようになっている。したがって、Al溶湯の圧力により、上板部材40および下板部材42の先端をそれぞれ冷却ロールに接触させることができる。
図8に示される溶湯供給ノズル16Bは、上板部材40および下板部材42を棒部材92で固定することにより、上板部材40および下板部材42の先端が、棒部材92を支点として、Al溶湯の圧力に応じて軽度に動くことができるようになっている。したがって、Al溶湯の圧力により、上板部材40および下板部材42の先端をそれぞれ冷却ロールに接触させることができる。
これらについては、特開2000−117402号公報に詳細に記載されている。
上述した鋳造工程の後、好ましくは、アルミニウム合金板に冷間圧延を施して所望の厚さにする圧延工程を行う。鋳造工程で得られたアルミニウム合金板は、冷間圧延により更に厚さを薄くされる。冷間圧延の効率の点で、鋳造後のアルミニウム合金板の厚さは薄い方が好ましい。
図9は、冷間圧延に用いられる冷間圧延機の例を示す模式図である。図9に示される冷間圧延機50は、送り出しコイル52および巻き取りコイル54の間で搬送されるアルミニウム合金板36に、それぞれ支持ローラ58により回転される一対の圧延ローラ56により圧力を加えて、冷間圧延を行う。
冷間圧延の後、中間焼鈍と呼ばれる熱処理を行い、アルミ金属結晶組織を微細化したうえで、再度冷間圧延を行うのも好ましい。
この圧延工程により、アルミニウム合金板の厚さを平版印刷版用支持体に用いるのに好適な0.1〜0.5mmに仕上げるのが好ましい。
図10は、矯正装置の例を示す模式図である。図10に示される矯正装置70は、送り出しコイル82および巻き取りコイル84の間で搬送されるアルミニウム合金板36に、ワークロール86を含むレベラ部80にて、張力を加えながら平面性を改善する。その後、スリッタ88により板幅が所定の幅に調整される。
粗面化処理工程は、得られたアルミニウム合金板の表面に、少なくとも、アルカリエッチング処理とその後の電気化学的粗面化処理とを含む粗面化処理を施して、平版印刷版用支持体を得る工程である。
既に、鋳造工程において、色ムラを抑制する種々の方法について述べた。しかしながら、これらの方法だけでは、粗面化処理前における結晶組織は均一に見えるものの、粗面化処理後、特にアルカリエッチング量が多い場合に、結晶組織の不均一の履歴が顕在化しやすかった。
本発明者は、アルカリエッチング処理におけるアルミニウム溶解量と、電気化学的粗面化処理におけるアノード反応時の総電気量とを特定の関係にすることにより、粗面化処理後においても結晶組織が均一となることを見出し、本発明を完成させたのである。そして、本発明においては、電気化学的粗面化処理におけるアノード反応時の総電気量とを特定の関係にすることに、更に、上述した鋳造工程における種々の方法を組み合わせることにより、色ムラの発生をより抑制することができるのである。
本発明においては、粗面化処理として、アルカリエッチング処理とその後の電気化学的粗面化処理の二つの処理が必須であるが、その他の処理を含んでいてもよい。以下、粗面化処理が含むことができる各種の処理について説明する。
機械的粗面化処理は、アルミニウム合金板の表面を、平均表面粗さ0.35〜1.0μmとする目的で行われる。機械的粗面化処理としては、例えば、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されている方法を用いることができる。機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理(電気化学的粗面化処理を複数回行う場合は1回目の電気化学的粗面化処理)の前に行うことが好ましい。
機械的粗面化処理としては、毛径が0.2〜0.9mmである回転するナイロンブラシロールと、アルミニウム合金板の表面に供給される研磨剤のスラリー液とを用いる方法が好ましい。また、スラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いた方式を用いることもできる。また、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム合金板に転写する方式を用いることもできる。この方法は、ブラシや研磨剤を用いる方法に比べて、局所的に深い部分が生じにくい点で優れている。
なお、平均表面粗さを0.35μm未満にする場合は、通常、機械的粗面化処理は行われない。
化学的エッチング処理は、アルカリ水溶液中または酸性水溶液中でアルミニウム合金板の表面を化学的にエッチングする処理である。本発明においては、溶解効率に優れる、アルカリ水溶液を用いたアルカリエッチング処理を行う。アルカリエッチング処理としては、従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、1回目の電気化学的粗面化処理の前にアルカリエッチング処理を行う。
また、アルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行わなかった場合には、アルミニウム合金板の表面に残存する圧延油等の異物を除去する目的で行われる。
アルカリ水溶液の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。
機械的粗面化処理を行わなかった場合には、アルミニウム溶解量は、粗面化処理を施される側の表面において、1〜6g/m2 であるのが好ましい。
上述したように、アルミニウム合金板の粗面化処理を施される側の表面におけるアルミニウム溶解量を1g/m2 以上とすることで、アルミニウム合金板の表層付近の不純物を完全に除去することができ、均一な電気化学的粗面化処理を行うことができる。
裏面は、平版印刷版の性能には直接関係しない。しかしながら、平版印刷版用支持体に画像記録層を設けて平版印刷版原版とした後、コイル状に巻き取ったり、シート状にカットして積み重ねたりした場合に、裏面の表層付近の不純物が、隣接する画像記録層に接して、画像記録層の不良を発生させることがある。よって、裏面のアルミニウム溶解量を上記範囲とすることにより、裏面の表層付近の不純物を除去して、そのような画像記録層の不良を防止することができる。
電気化学的粗面化処理は、酸性水溶液中で、アルミニウム合金板を電極として交流電流または直流電流を通じ、アルミニウム合金板の表面を電気化学的に粗面化する処理である。電気化学的粗面化処理としては、従来公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理は、平均直径約0.05〜20μmのクレーター状またはハニカム状のピットをアルミニウム合金板の表面に30〜100%の面積率で生成する目的で行われる。電気化学的粗面化処理により、平版印刷版の非画像部の汚れにくさ(耐汚れ性)と耐刷性とが向上する。
塩酸を含有する酸性水溶液としては、例えば、塩酸濃度1〜100g/Lの塩酸水溶液に、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを、0.01g/Lから飽和するまでの濃度で、添加して使用することができる。塩酸を含有する酸性水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
電気化学的粗面化処理におけるアルミニウム合金板の粗面化処理を施される側の表面のアノード反応時の総電気量は、50C/dm2 以上であるのが好ましい。上記範囲であると、平版印刷版用支持体の表面の色ムラの発生をより確実に抑制することができる。
また、電気化学的粗面化処理におけるアノード反応時の平均電流密度は、5A/dm2 以上であるのが好ましい。上記範囲であると、電気化学的粗面化処理におけるピットの分散性が良好となる。
電解研磨処理は、酸性水溶液中で、アルミニウム合金板を電極として電解する処理である。電解研磨処理としては、従来公知の方法を用いることができる。
電解研磨処理または2回目の化学的エッチング処理は、上述した電気化学的粗面化処理で生成した、水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を滑らかにし、平版印刷版としたときの耐汚れ性を向上させる目的で行われる。
陽極酸化処理は、アルミニウム合金板の表面の耐磨耗性を高めるために施される。陽極酸化処理は、この分野で従来行われている方法で行うことができる。例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液は、アルミニウム合金板に酸化皮膜を形成させることができるものであれば特に限定されず、例えば、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混合液が挙げられる。電解質の濃度は、電解質の種類によって適宣決められる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10〜300秒であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
封孔処理は、陽極酸化処理により生成した陽極酸化皮膜のマイクロポアの開口をふさぐことを目的として行われる。
封孔処理としては、例えば、熱水および無機塩または有機塩を含む水溶液へ浸せきさせる方法、水蒸気浴を通過させる方法が挙げられる。
親水化処理は、平版印刷版用支持体の表面を親水化させる処理である。
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、アルミニウム合金板をケイ酸ナトリウム水溶液中で浸せきし、または電解処理する。
また、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウム、および、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法を用いることもできる。
上述したようにして得られる平版印刷版用支持体は、画像記録層を設けて、平版印刷版原版とされる。
画像記録層は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、リスフィルムと組み合わせて露光する従来の感光層、レーザを用いて直接画像形成できるサーマル型感熱層、レーザ露光後の現像処理が不要な無処理型画像記録層、レーザ露光後に印刷機上で現像することができる画像記録層が挙げられる。画像記録層は、ネガ型でもポジ型でもよい。
具体的には、特開平6−135175号公報に記載されている各種の画像記録層を用いることができる。また、サーマル型感熱層としては、特開2003−21906号公報に記載されている画像記録層を用いることができる。
(実施例1〜8および比較例1〜10)
以下に示すように、供給工程、鋳造工程、圧延工程および粗面化処理工程を経て、平版印刷版用支持体を製造した。
初めに、図1に示される装置を用いてアルミニウム合金板を連続鋳造した。具体的には、まず、清浄化処理後のAl溶湯を溶解炉から、図3に示されるかくはん手段を凹部に有する流路を経由して溶湯供給ノズルに供給した(供給工程)。ついで、Al溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、一対の冷却ローラによってAl溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成させた(鋳造工程)。
溶湯供給ノズルの口部外縁と冷却ローラとの接触および非接触は、第1表に示されるとおりであった。接触の場合、図7に示されるような、溶湯供給ノズルを構成する部材のうち、Al溶湯に上面から接触する上板部材と、Al溶湯に下面から接触する下板部材とが、それぞれ上下方向に可動であり、上板部材および下板部材が、それぞれ、Al溶湯の圧力によって加圧され、隣接する冷却ローラの表面に押しつけられる、溶湯供給ノズルを用いた。
溶湯供給ノズルの材料は、第1表に示されるとおりであった。なお、第1表に示される符号の意味は、第2表に示されているとおりである。
溶湯供給ノズルの支持部材の有無は、第1表に示されるとおりであった。支持部材がある場合、その幅方向において180mmの間隔で複数個配置されていた。
溶湯供給ノズルのAl溶湯に接する内面における離型剤は、第1表に示されるとおりであった。なお、第1表に示される符号の意味は、第3表に示されているとおりである。
まず、水酸化ナトリウム水溶液を用いてアルカリエッチング処理を行った。水溶液の濃度および温度ならびに処理時間を変えることにより、種々のアルミニウム溶解量とした。粗面化処理を施される側の表面のアルミニウム溶解量Xおよび裏面のアルミニウム溶解量は、それぞれ第1表に示されるとおりであった。
水洗後、1質量%の硝酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。
更に、170g/Lの硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。
その後、170g/Lの硫酸水溶液を用いて、陽極酸化皮膜量が、2.7g/m2 になるように、陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。
上述した供給工程、鋳造工程、圧延工程および粗面化処理工程からなる平版印刷版用支持体の製造を各実施例および比較例について3回ずつ行い、以下に示す各種の評価を行った。
(1)色ムラの発生
平版印刷版用支持体の表面の色ムラの発生の有無を目視で観察した。ここで、「色ムラ」とは、平版印刷版用支持体の表面において、光沢感や色合いが周囲と異なる部分があることを意味する。3回分の試料において、色ムラが1回以上発生したものを「あり」、発生したが、軽微で問題なかったものを「軽微」、まったく発生しなかったものを「なし」と評価した。
結果を第4表に示す。
平版印刷版用支持体の表面の面質を目視で観察し、6段階評価した。ここで、「面質」は、平版印刷版用支持体の表面のザラツキ、スジおよび色ムラの3種類の項目から総合的に判断した。また、6段階評価は、極めてよかったものを「6」、よかったものを「5」、実用上許容することができるものを「4」、実用上許容することができないものを「3」、悪かったものを「2」、極めて悪かったものを「1」とした。
結果を第4表に示す。第4表中、3回分の試料において、最も悪い評価を記載した。
面質の安定性は、上述した面質の評価において、3回分の試料において、すべて同じ評価であったものを「3」、二つの異なる評価があったものを「2」、三つの異なる評価があったものを「1」と評価した。
結果を第4表に示す。第4表中、数字が大きいほど面質の安定性が優れていることを示す。
製造安定性は、鋳造工程において、鋳造されたアルミニウム合金板に異常を生じずに、安定して鋳造することができるか否かに関する評価である。3回の鋳造工程のうち、異常が生じて鋳造を停止したのが1回以上あったものを「1」、鋳造を停止するまでには至らなかったが異常が生じたのが1回以上あったものを「2」、異常が生じなかったものを「3」と評価した。
結果を第4表に示す。第4表中、数字が大きいほど製造安定性が優れていることを示す。
4a、4b ノズル板
9a、9b ノズル
10 鋳造装置
11a、11b 隙間
12 溶解炉
14 流路
14a、14b ノズル先端
16、16A、16B 溶湯供給ノズル
15a 支持部材
18 冷却ローラ
22 Al溶湯
30 凹部
36 アルミニウム合金板
40 上板部材
42 下板部材
43 ガス放出部
45 ローター
46 気泡
50 冷間圧延機
52、82 送り出しコイル
54、84 巻き取りコイル
56 圧延ローラ
58 支持ローラ
70 矯正装置
80 レベラ部
86 ワークロール
88 スリッタ
90 ボルト
92 棒部材
C クリアランス
D 冷却ローラの径
T 溶湯供給ノズルの先端部
t アルミニウム合金板の板厚
Claims (10)
- アルミニウム合金溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、前記一対の冷却ローラによって前記アルミニウム合金溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成させる鋳造工程と、
得られたアルミニウム合金板の表面に、少なくとも、アルカリエッチング処理とその後の電気化学的粗面化処理とを含む粗面化処理を施して、平版印刷版用支持体を得る、粗面化処理工程と
を有する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記アルカリエッチング処理における前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される側の前記表面の面積1m2 あたりのアルミニウム溶解量:X(g/m2 )と、前記電気化学的粗面化処理における前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される側の前記表面の面積1dm2 あたりのアノード反応時の総電気量:Y(C/dm2 )とが、下記式(1)を満足する関係にある、平版印刷版用支持体の製造方法。
1000>Y≧10X (1) - 前記鋳造工程における前記冷却ローラの周速:V(m/min)と、前記アルミニウム合金板の板厚:t(m)と、前記冷却ローラの径:D(m)とが、下記式(2)を満足する関係にある、請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
V≧5×10-5×(D/t2 ) (2) - 前記溶湯供給ノズルの口部外縁が前記冷却ローラに接触し、前記溶湯供給ノズルの口部外周に前記冷却ローラとの接触を避ける逃げ部が凹設されている、請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記溶湯供給ノズルの少なくとも一部が、耐熱材料で構成されており、かつ、前記溶湯供給ノズルを構成する材料より曲げ強度が大きい材料からなる支持部材が、前記溶湯供給ノズルの幅方向において200mm以下の間隔で複数個配置され、前記溶湯供給ノズルの先端部を支持している、請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記溶湯供給ノズルの少なくとも一部が、曲げ強度が10MPa以上である耐熱材料で構成される、請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記溶湯供給ノズルが、その前記アルミニウム合金溶湯に接する内面に、あらかじめ、メジアン径が5〜20μmであり、モード径が4〜12μmである粒度分布の骨材粒子を含む離型剤を塗布されている、請求項1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記溶湯供給ノズルを構成する部材のうち、前記アルミニウム合金溶湯に上面から接触する上板部材と、前記アルミニウム合金溶湯に下面から接触する下板部材とが、それぞれ上下方向に可動であり、前記上板部材および前記下板部材が、それぞれ、前記アルミニウム合金溶湯の圧力によって加圧され、隣接する前記冷却ローラの表面に押しつけられる、請求項1〜6のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記鋳造工程の前に、更に、
前記アルミニウム合金溶湯を溶解保持炉から流路を経由して前記溶湯供給ノズルに供給する供給工程
を具備する、請求項1〜7のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記流路の底面に形成された凹部に設けられたかくはん手段が、前記凹部の近傍の前記アルミニウム合金溶湯をかくはんする、平版印刷版用支持体の製造方法。 - 前記アルカリエッチング処理において、前記Xが1g/m2 以上であり、かつ、前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施されない側の前記表面の面積1m2 あたりのアルミニウム溶解量が1g/m2 以上であり、前記電気化学的粗面化処理における前記Yが50C/dm2 以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記アルカリエッチング処理において、前記Xが1〜13g/m2 であり、かつ、前記電気化学的粗面化処理におけるアノード反応時の平均電流密度が5A/dm2 以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
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