JP3994426B2 - アルミニウムの連続鋳造圧延装置及びその方法 - Google Patents

アルミニウムの連続鋳造圧延装置及びその方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造圧延装置に係り、特にアルミニウム合金を溶解した溶湯を連続鋳造圧延して鋳造板を形成する連続鋳造圧延装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造圧延装置は、感光性平版印刷版の平版印刷版用支持体の製造に用いられており、特開平8─49034号公報や特開平8─73974号公報に開示されるように、アルミニウム合金の溶湯を溶湯供給ノズルから一対の回転ロール間に供給して、一対の回転ロールの回転によって前記溶湯を鋳造圧延して鋳造板を形成する。
【0003】
ところで、前記連続鋳造圧延装置では、アルミニウム合金の溶湯に含まれる、TiB2 (不純物)のようなチタンとホウ素との化合物粒子が偏在して鋳造された板に圧延や焼純、あるいはそのいずれかを行って薄板に仕上げたとき、板の表面に断続的に筋状の故障が発生する問題がある。鋳造板の良否は感光性平版印刷版を製造する上で重要な要件であり、筋の発生を防止する必要がある。
【0004】
このような筋の発生を防止する鋳造圧延装置は、特開平9−291329号公報、特開昭60─230944号公報、特開平10−52740号公報、特開平9−245418号公報に開示され、また、本願出願人は、特願平9−203552号において、筋の発生を防止した連続鋳造圧延装置を提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−291329号公報の連続鋳造圧延装置は、結晶粒微細化材中のTi粒子を100μm以下にしたものの、長時間運転を行うと粗大TiB2 が発生する確率が増すという欠点がある。
また、特開昭60─230944号公報の装置では、溶湯をセラミックチューブフィルターに通過させてTiB2 の粒子を除去しているが、長時間運転を行うとセラミックチューブフィルタの隙間を粗大なTiB2 の粒子がすり抜ける確率が増加するため、根本的な解決にはならない。
【0006】
更に、特開平10−52740号公報の装置は、前記特開昭60─230944号公報の装置よりも改善がみられたが、やはり同様の不具合が生じた。
また、特開平9−245418号公報の装置は、結晶粒微細化材に振動を与えてTiB2 粒子の分散性を向上させているが、長時間運転を行うとTiB2 粒子起因の筋故障が発生するという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、長時間運転してもTiとBの化合物粒子に起因する筋の発生を防止することができる連続鋳造圧延装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、前記目的を達成するために、チタンとホウ素の化合物を含むアルミニウム合金を溶解した溶湯を溶湯供給ノズルから鋳造圧延手段に供給し、前記鋳造圧延手段にて前記溶湯を鋳造圧延して鋳造板を形成する連続鋳造圧延装置において、前記溶湯供給ノズル手前の、溶湯が流れる流路の底面に形成された凹部に攪拌手段を設け、該攪拌手段によって凹部近傍の溶湯を攪拌することにより、凹部の上部に生じる溶湯のよどみを防止することを特徴とする。
また、本発明は、前記溶湯が、Al - Ti - B合金を溶解して得られるアルミニウム溶湯であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、溶湯が流路に沿って溶湯供給ノズルまで流れる際に、溶湯に含まれるTi、B(不純物)が凹部に沈降し、除去される。この凹部に係る発明は、本願出願人が特願平9−203552号において提案している。しかし、特願平9−203552号の装置は、不純物を沈降捕獲する効果はあるが、長時間鋳造を行ったときには、かえって筋故障が発生し易いという不具合があった。この原因は、凹部の上側に凹部に起因する流れのよどみができるためであり、底に沈降捕獲される以外に、よどみの部分に捕獲されるTiB2 等の不純物があることがシミュレーション実験によって判明した。そのよどみから不純物が放出されることや、特に溶湯の流れが変化したときに、よどみが乱れてよどみ中の不純物が多量に放出されることが判明した。
【0010】
凹部を無くすことも考えられるが、実際のアルミニウム連続鋳造設備には、アルミニウム溶湯を流す流路中に、溶湯液面制御装置やフィルタ装置や脱ガス装置等が設置されることにより、構造的に凹部が生じることが多いため現実的ではない。
そこで、本発明は、前記凹部に攪拌手段を設け、攪拌手段によって凹部近傍の溶湯を攪拌することにより溶湯のよどみを防止した。これにより、凹部に起因する流れのよどみを解消することができるので、長時間運転してもTiとBの化合物粒子に起因する筋の発生を防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る連続鋳造圧延装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本実施の形態の連続鋳造圧延装置の全体構成を示す説明図である。同図に示すように、連続鋳造圧延装置10は、主として溶解保持炉12、樋14、溶湯供給ノズル16、一対の回転ローラ18、18、及びコイラー20を備えている。
【0012】
溶解保持炉12には、アルミニウム合金のインゴットが溶解された溶湯22が溜められている。また、前記溶解保持炉12は、溶解保持炉傾動機24を備え、この溶解保持炉傾動機24の電動モーターを駆動することによって傾動される。これにより、溶解保持炉12内に溜められた溶湯22が樋14に注入される。
溶湯22が注入される樋14の底面には、後述する凹部30が形成されている。また、樋14には樋14内の液位を検出するレベル計32が設けられ、このレベル計32は、制御装置34を介して溶解保持炉傾動機24に接続されている。制御装置34は、レベル計32の検出液位に基づいて溶解保持炉傾動機24を制御して樋14内の液位を調整する。
【0013】
溶湯供給ノズル16は、前記樋14の図中右端に設けられ、樋14内の溶湯22を図中右方向に吐出する。一対の回転ローラ18、18は、溶湯供給ノズル16の先端部を挟んで図中上下方向に配設され、溶湯供給ノズル16から吐出された溶湯22をその回転によって凝固させながら圧延して鋳造板36を形成すると共に、形成された鋳造板36を挟持して搬送する。コイラー20は、一対の回転ローラ18、18によって搬送される鋳造板36を、切断機38によって一定の長さに切断された後に巻き取る。
【0014】
その際、長い時間鋳造を続けると、凹部30の底に比重の大きい不純物が沈降するが、同時に、凹部30の上部にできるよどみにTiB2 のような不純物が蓄積されやすくなるので、図2〜図4に示す攪拌装置でよどみの発生を防止する。図2の攪拌装置40は、凹部30にセラミック等の多孔質の材料43から、アルゴンガス等のAl溶湯と反応しないガスを細かい気泡46にして放出することで凹部30内の溶湯を攪拌する。
【0015】
図3の攪拌装置41は、耐熱性の攪拌具44を用いて溶湯を機械的に攪拌する。攪拌具44には、カーボンや耐熱セラミック、及び耐熱性のコーティングを施した材料等が使用できる。
図4の攪拌装置45は、回転しながら微細なガスの気泡46を放出することで溶湯を攪拌する。
【0016】
本実施の形態では、図2〜図4に示した攪拌装置を例示したが、これに限られるものではなく、溶湯に悪影響を及ぼさずに溶湯を攪拌することができる攪拌装置であれば適用することができる。
図5は、冷間圧延機50の構成を示す説明図である。冷間圧延機50は、供給ローラ52と巻取ローラ54との間に設けられ、鋳造板36を挟んで設けられた一対の小径ローラ56、56と、一対の小径ローラ56、56に転接された大径ローラ58とから構成される。供給ローラ52から巻取ローラ54まで搬送される鋳造板36は、一対の小径ローラ56、56の回転によって冷間圧延が行われる。
【0017】
図6は、連続焼鈍装置60の構成を示す説明図である。連続焼鈍装置60は、供給ローラ62と巻取ローラ64との間に設けられ、供給ローラ62から巻取ローラ64まで搬送される鋳造板36は、連続焼鈍装置60を通過する際に熱処理が行われる。
図7は、バッチ焼鈍装置70の構成を示す説明図である。バッチ焼鈍装置70は、支持板72とその図中上面に設けられた一対のストッパー74、74とを備えている。図1のコイラー20に巻き取られた鋳造板36は、支持板72に載置されて熱処理が行われる。
【0018】
図8は、矯正装置80の構成を示す説明図である。矯正装置80は、供給ローラ82と巻取ローラ84との間に設けられ、複数の矯正ローラ86、86…が鋳造板36の搬送径路に沿って設けられる。供給ローラ62から巻取ローラ64まで搬送される鋳造板36は、複数の矯正ローラ86、86…の回転によってその巻き癖が矯正される。同時にスリッタ88で耳部を切断することができる。
【0019】
次に、上記の如く構成された連続鋳造圧延装置の作用について説明する。
図1の溶解保持炉12は、アルミニウム合金のインゴットが溶解された溶湯22を保持する。
レベル計32は樋14内の液位を検出し、制御装置34は該検出液位に基づいて溶解保持炉傾動機24を制御して溶解保持炉12を電動モーター駆動によって傾動して、溶解保持炉12内の溶湯22を樋14に注入する。
【0020】
樋14内に注入された溶湯22は図中右方向に流れて、溶湯供給ノズル16から一対の回転ローラ18、18間に吐出される。
一対の回転ローラ18、18は、溶湯供給ノズル16から吐出された溶湯をその回転によって凝固させながら圧延して鋳造板36を形成する。この時、筋発生の原因となるTiB2 の粗大粒子が混入しないので、筋のない表面品質の高い鋳造板36を得ることができる。
【0021】
回転する一対の回転ローラ18、18は鋳造板36を挟持搬送して、鋳造板36は切断機38によって一定の長さに切断された後コイラー20に巻き取られる。
次に、コイラー20に巻き取られた鋳造板36に対して、図5に示す冷間圧延機50によって冷間圧延を行い、図6に示す連続焼鈍装置60又は図7に示すバッチ焼鈍装置70によって熱処理を行う。冷間圧延と熱処理は、鋳造板36の組織の均一化と平坦化のために行われ、必要に応じて何れか一方のみを行ってもよい。冷間圧延と熱処理を両方行う場合には0.5〜3mm厚に鋳造圧延された鋳造板36を0.1〜0.5mm厚に仕上げる。熱処理を行わない場合には、冷間圧延のみで0.1〜0.5mm厚に仕上げる。熱処理に連続焼鈍装置60を使用する場合には400〜600°で1〜600秒行い、バッチ焼鈍装置70を使用する場合には300〜600°で1〜12時間行う。
【0022】
次いで、図8に示す矯正装置80で鋳造板36の巻き癖を矯正する。その後、鋳造板36の表面を機械的、或いは電気的、或いは化学的、或いは電気化学的、もしくはそれら2種以上を組み合わせて粗面化して、平版印刷版用支持体に仕上げる。
この平版印刷版用支持体に感光性塗膜を設け、画像露光し、現像して製版し、感光性平版印刷版が完成する。この感光性平版印刷版は、鋳造板36の表面品質の向上に伴い、高品質に製造することができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
図1に示す連続鋳造圧延装置10を用いて、次のように鋳造板36を連続鋳造圧延した。
まず、溶解保持炉12でFe:0.3重量%(以下同様)、Si:0.08%、Cu:0.013%、残りAlと不可避不純物となるように溶湯22を調整し、775℃に維持した。溶解保持炉12を傾けて、樋14に溶湯22を注ぎ、溶湯供給ノズル16から一対の回転ローラ18、18間に吐出させ、回転ローラ18、18間で凝固・冷却しながら厚さ7.0mmの鋳造板36を連続鋳造圧延した。
【0024】
この際、Al−Ti(5%)−B(1%)の合金ワイヤ23を結晶微細化剤として樋14の溶湯22に供給し、溶湯22中のTi濃度が0.02%になるように供給速度を設定して溶解させた。
その際、凹部30に設置した攪拌装置40(41、42)を作動させて300Kgの鋳造板36を作成し、本発明の実施例−1(サンプル)とした。また、攪拌装置40(41、42)を作動させずに300Kgの鋳造板36を作成し、比較例─1(サンプル)とした。
【0025】
次いで、各サンプルについて鋳造開始後50Kgの鋳造板、鋳造開始後300Kgの鋳造板を使用して図5に示した冷間圧延機50で、2mmまで圧延し、図7に示したバッチ式焼純装置70で550度で10時間保持し中間焼純処理を行った。そして、再度図5に示した冷間圧延機50で、0.24mmまで圧延した。
【0026】
次に、各サンプルをアルカリ溶液(Al3+10%;NaOH30%)を用いて60℃で30秒間のアルカリエッチング処理と、10%硫酸溶液でデスマット処理を行い、表面を観察した。その結果、本発明の実施例−1のサンプルは、筋の発生が無いことが確認できた。また、比較例−1のサンプルでは、鋳造開始後50Kgでは筋の発生はないものの、鋳造開始後300Kgでは筋が多発した。
【0027】
なお、前記筋は、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ、日本電子製JXA─8800M)で面分析を行い、Ti、Bが集中していることを確認した。
なお、本実施例のAl合金はJIS1000系材料、又はJIS3000系材料であり、例えばJIS1000系材料のAl合金の成分は、Fe:0.03〜0.8%、Si:0.02〜0.3%、Cu:0〜0.05%、Ti:0.005〜0.1%が好ましい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の連続鋳造圧延装置によれば、流路の底面に形成された凹部に攪拌手段を設け、この攪拌装置で凹部近傍の溶湯を攪拌することにより、溶湯のよどみを防止したので、長時間運転してもTiとBの化合物粒子に起因する筋の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の連続鋳造圧延装置の全体構成を示す説明図
【図2】図1の連続鋳造圧延装置に適用された第1の実施の形態に係る攪拌装置の拡大図
【図3】第2の実施の形態に係る攪拌装置の拡大図
【図4】第3の実施の形態に係る攪拌装置の拡大図
【図5】冷間圧延機の説明図
【図6】連続焼鈍装置の説明図
【図7】バッチ焼鈍装置の説明図
【図8】矯正装置の説明図
【符号の説明】
10…連続鋳造圧延装置
12…溶解保持炉
14…樋
16…溶湯供給ノズル
18…回転ローラ
22…溶湯
30…凹部
36…鋳造板
40、41、42…攪拌装置

Claims (4)

  1. チタンとホウ素の化合物を含むアルミニウム合金を溶解した溶湯を溶湯供給ノズルから鋳造圧延手段に供給し、前記鋳造圧延手段にて前記溶湯を鋳造圧延して鋳造板を形成する連続鋳造圧延装置において、
    前記溶湯供給ノズル手前の、溶湯が流れる流路の底面に形成された凹部に攪拌手段を設け、該攪拌手段によって凹部近傍の溶湯を攪拌することにより、凹部の上部に生じる溶湯のよどみを防止することを特徴とするアルミニウムの連続鋳造圧延装置。
  2. 前記溶湯が、Al - Ti - B合金を溶解して得られるアルミニウム溶湯である請求項1のアルミニウムの連続鋳造圧延装置。
  3. チタンとホウ素の化合物を含むアルミニウム合金を溶解した溶湯を溶湯供給ノズルから鋳造圧延手段に供給し、前記鋳造圧延手段にて前記溶湯を鋳造圧延して鋳造板を形成する連続鋳造圧延方法において、
    前記溶湯供給ノズル手前の、溶湯が流れる流路の底面に形成された凹部に攪拌手段を設け、該攪拌手段によって凹部近傍の溶湯を攪拌することにより、凹部の上部に生じる溶湯のよどみを防止することを特徴とするアルミニウムの連続鋳造圧延方法。
  4. 前記溶湯が、Al - Ti - B合金を溶解して得られるアルミニウム溶湯である請求項3のアルミニウムの連続鋳造圧延方法。
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