JP3781211B2 - 平版印刷版用支持体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用アルミニウム支持体及びその製造方法に関する、特に結晶微細化の目的でアルミニウム又はアルミニウム合金に添加したTi粒子の存在に起因するスジ故障の発生が防止された平版印刷版用アルミニウム支持体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷版用アルミニウム支持体、とくにオフセット印刷版用支持体としてはアルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)が用いられている。
一般にアルミニウム板をオフセット印刷版用支持体として使用するためには、感光材料との適度な接着性と保水性を有していることが必要である。
このためにはアルミニウム板の表面を均一かつ緻密な砂目を有するように粗面化しなければならない。この粗面化処理は製版後実際にオフセット印刷を行ったときに版材の印刷性能や耐刷力に著しい影響をおよぼすので、その良否は版材製造上重要な要素となっている。
【0003】
印刷版用アルミニウム支持体の粗面化法としては、交流電解エッチング法が一般的に採用されており、電流としては、普通の正弦並み交流電流、矩形波などの特殊交番波形電流が用いられている。そして、黒鉛等の適当な電極を対極として交流電流により、アルミニウム板の粗面化処理を行うもので、通常一回の処理で行われているが、そこで得られるピット深さは全体的に浅く、耐刷性能に劣るものであった。このため、その直径に比べて深さの深いピットが均一かつ緻密に存在する砂目を有する印刷版用支持体として好適なアルミニウム板が得られるように、数々の方法が提案されている。その方法としては、特殊電解電源波形を使った粗面化方法(特開昭53−67507号公報)、交流を使った電解粗面化時の陽極時と陰極時の電気量の比率(特開昭54−65607号公報)、電源波形(特開昭55−25381号公報)、単位面積あたりの通電量の組み合わせ(特開昭56−29699号公報)などが知られている。
また、機械的な粗面化との組み合わせ(特開昭55−142695号公報)なども知られている。
【0004】
一方、アルミニウム支持体の製造方法としては、アルミニウムのインゴットを溶解保持してスラブ(厚さ400〜600mm,幅1000〜2000mm,長さ2000〜6000mm)を鋳造し、スラブ表面の不純物組織部分を面削機にかけて3〜10mmづつ切削する面削工程を経た後、スラブ内部の応力の除去と組織の均一化の為、均熱炉において480〜540℃,6〜12時間保持する均熱化処理工程を行い、しかる後に熱間圧延を480〜540℃で行う。熱間圧延で5〜40mmの厚みに圧延した後、室温で所定の厚みに冷間圧延を行う。またその後組織の均一化のため焼鈍を行い圧延組織等を均質化した後、規定の厚みに冷間圧延を行い、平坦度の良い板にするため矯正する。この様にして作られたアルミニウム支持体を平版印刷版用支持体としていた。
【0005】
しかしながら、電解粗面化処理の場合は特に対象となるアルミニウム支持体の影響を受けやすく、アルミニウム支持体を溶解保持→鋳造→面削→均熱という工程を通して製造する場合、加熱,冷却をくり返し、面削という表面層を削り取る工程があったとしても、表面層に金属合金成分などのばらつきを生じて平板印刷版としては得率低下の原因となっていた。
【0006】
これに対して、本出願人は先にアルミニウム支持体の材質のバラツキを少くし、電解粗面化処理の得率を向上させることによって品質の優れた得率のよい平板印刷版を作れる方法として、アルミニウム溶湯から鋳造,熱間圧延を連続して行い、薄板の熱間圧延コイルを形成させた後、冷間圧延,熱処理、矯正を行ったアルミニウム支持体を粗面化処理することを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法を提案した。(特開平3−79798号公報)
さらに、特に電解粗面化性の良いアルミニウム支持体の製造方法として、アルミニウム溶湯を鋳造した後、圧延、熱処理を行い、さらに矯正と粗面化する平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法において、アルミニウム溶湯供給ノズルにおける溶湯の温度分布がノズル先端において30℃以内とする製造方法を提案した。(特開平6−262308号公報)
また、同様な目的で、アルミニウム溶湯を連続鋳造圧延後、冷間圧延、熱処理を一回以上行い、さらに矯正と粗面化する平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法において、連続鋳造機鋳造直前の溶湯温度を鋳造開始時の温度が定常運転の温度より20℃以上高くなるようにして連続鋳造圧延を行う製造方法を提案した。(特開平7−40017号公報)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一方、本出願人は、先に上記したような、平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法において、結晶粒微細化剤としてのチタン(Ti)を、Al−Ti合金またAl−Ti−B合金としてアルミニウム溶湯中に添加してから鋳造または連続鋳造するを提案した。(例えば、特願平6−184900号、特願平6−212878号、特願平6−226735号参照)
しかしながら、Tiを含有するアルミニウムまたはアルミニウム合金を前記したような平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法による場合には、アルミニウム板の圧延方向にTiに起因するスジ状欠陥が断続的に発生し、このような欠陥を防ぐことは出来なかった。
また、特開平3−294490号公報には、アルミニウム板の表面をアルカリエッチングする方法が記載されているが、この方法によってもTiに起因するスジ状欠陥の発生を防ぐことは出来なかった。即ち、圧延方向にTiに起因したスジ状欠陥が発生しているアルミニウム板にアルカリエッチングを施すと、白いこすれきず状のスジとなり、これが平版印刷版用アルミニウム支持体の裏面に現れた場合には、アルミニウム傷として認知されるために、商品価値を低下させる。また、平版印刷版として必要な粗面化処理を施すと、その部分は粗面化されにくく、黒いスジ故障となり、平版印刷版としての性能(インキ汚れ防止性、検版性)を著しく低下させ、商品価値を低下させるという不具合があった。
【0008】
本発明の目的は、アルミニウム溶湯を連続鋳造圧延し、該鋳造板に冷間圧延及び/又は熱処理を行い、次いで矯正及び粗面化して平版印刷版用アルミニウム支持体を製造する方法において、結晶粒微細化剤として加えたTiに起因してアルミニウム板の圧延方向に断続的に発生するスジ状欠陥のない平版印刷版用アルミニウム支持体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために種々検討の結果、上記目的は、以下に述べる本発明によって達成されることを見い出した。
即ち、本発明は、Tiを含有するアルミニウムを鋳造し、冷間圧延及び/又は、熱処理を行い、矯正・粗面化して得た平版印刷版用アルミニウム支持体において、アルミニウム板の表層の0〜20μmの範囲に存在する圧延方向にそってレンズ状に伸ばされたTi粒子の巾が100μm以下であることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体およびアルミニウム溶湯にTi又はTiとBを含むアルミニウム合金を添加し、一対の冷却ロールで直接厚さ10mm以下の鋳造板を連続鋳造圧延し、該鋳造板に冷間圧延と熱処理のいずれかまたは両方を行って、厚さ0.1〜0.5mmのアルミニウム合金板とし、次いで矯正及び粗面化して平版印刷版用アルミニウム支持体を製造する方法において、Ti粒子径が1.0mm未満の粒子からなるAl−Ti合金またはAl−Ti−B合金を用いることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明における連続鋳造圧延装置の1例を示す略図であって、アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を溶解保持炉1に保持し、炉1を溶解保持炉傾動モーター9で傾け、アルミニウム溶湯を樋2に注ぎ、溶湯供給ノズル3から冷却ロール4a,4bを有する双ロール連続鋳造圧延機4に送り、冷却ロール間で凝固・冷却しながらアルミニウム板を連続鋳造圧延し、コイラー6に巻き取る。なお、7は溶湯のレベル計で、樋上の溶湯のレベルを検知し、アンプ8から傾動モーター9にレベルの情報を送り、樋2上のアルミニウム溶湯を一定のレベルに保持する。また、5はカッターで、一定量のアルミニウム圧延板をコイラーに巻き取った後にアルミニウム板を切断する。
本発明においては、前記したように、結晶粒微細化剤として、Tiを例えば図1の装置において、Ti粒子径が1.0mm(1000μm)未満の粒子からなるAl−Ti合金ワイヤまたはAl−Ti−B合金ワイヤ10としてアルミニウム溶湯に加える。この場合、アルミニウム支持体に含まれるTiの総量が0.005〜0.03%、好ましくは0.008〜0.02%になるようにAl−Ti合金ワイヤまたはAl−Ti−B合金ワイヤをアルミニウム溶湯中に加える。なお、添加する合金としては、Al−Ti−B合金を用いることが好ましい。
ワイヤに含まれるTi粒子の大きさは、ワイヤの断面を電子ブロックマイクロアナライザーで分析することにより確認できる。Ti粒子の大きさは1.0mm以下のワイヤを使用することが必須である。ここで、Ti粒子とはAlTi3 、TiB2 等の化合物や単体Tiあるいはそれらの集合体を意味する。
なお、ワイヤに含まれるTi粒子の大きさを1.0mm以下にするには、例えば、溶解したAl溶湯(例えば、Al99.7重量%)に金属Tiを溶解した後に、線状あるいはブロック状に凝固させることでAl−Ti合金を製造するのであるが、凝固前に、1mm以上のTi粒子を除去できるようなフィルタ(例えばグラスフィルタ等)をかける方法、又は凝固前の溶湯に剪断力与えられる攪拌処理を施す方法等を利用することができる。
また、上記連続鋳造圧延装置により得られるアルミニウム鋳造板の厚さは1〜7mmが好ましい。
コイラー6に巻き取られたアルミニウム板は、次いで図2に例示する冷間圧延機11及び図3に例示する熱処理機12(a)によって、冷間圧延及び熱処理を行う。なお、本発明においては、必要に応じて、冷間圧延及び熱処理のいずれか一方のみを行ってもよい。
冷間圧延及び/又は熱処理は、連続鋳造圧延して得られたアルミニウム板の組織の均一化と平坦化のために行う操作であって、本発明においては、上記冷間圧延と熱処理の両方を行う場合は3mm〜0.5mmになるように圧延し、引続き熱処理を行い、さらに冷間圧延を行って厚さ0.5〜0.1mmのアルミニウム板に仕上げる。熱処理を行わない場合は、冷間圧延で厚さ0.5mm〜0.1mmのアルミニウム板に仕上げる。熱処理方法には、図3に示すような連続焼鈍装置12(a)と図4に示すバッチ焼鈍装置12(b)の2方式があり、そのいずれを選んでもよい。連続焼鈍方式の場合、温度は400℃〜600℃、時間は1秒〜600秒間熱処理を行う。バッチ焼鈍方式の場合は300℃〜600℃、時間は1時間〜12時間熱処理を行う。
次いで、アルミニウム板を図5に例示する矯正装置13によって矯正を行い、アルミニウム支持体を作る。
本発明においては、さらに、矯正されたアルミニウム支持体を粗面化し、平版印刷版用支持体とする。
本発明におけるアルミニウム支持体の粗面化の方法は機械的粗面化,化学的粗面化,電気化学的粗面化及びそれらの組合わせ等各種用いられる。
機械的な砂目立て法としては、例えばボールグレイン,ワイヤーグレイン,ブラッシグレイン,液体ホーニング法などがある。また電気化学的砂目立て方法としては、交流電解エッチング法が一般的に採用されており、電流としては、普通の正弦波交流電流あるいは矩形波など、特殊交番電流が用いられている。またこの電気化学的砂目立ての前処理として、苛性ソーダなどでエッチング処理をしても良い。
【0011】
また電気化学的粗面化を行う場合、塩酸または硝酸主体の水溶液で交番電流によって粗面化されるのが良い。以下詳細に説明する。
先ず、アルミニウム支持体は、まずアルカリエッチングされる。好ましいアルカリ剤は、苛性ソーダ,苛性カリ,メタ珪酸ソーダ,炭酸ソーダ,アルミン酸ソーダ,グルコン酸ソーダ等である。濃度0.01〜20%,温度は20〜90℃,時間は5sec〜5min間の範囲から選択されるのが適当であり、好ましいエッチング量としては0.1〜5g/m2 である。
特に不純物の多い支持体の場合、0.01〜1g/m2 が適当である。(特開平1−237197号公報)。引き続き、アルカリエッチングしたアルミニウム板の表面にアルカリに不溶な物質(スマット)が残存するので、必要に応じてデスマット処理を行っても良い。
【0012】
前処理は上記の通りであるが、引き続き、本発明として塩酸,または硝酸を主体とする電解液中で交流電解エッチングされる。交流電解電流の周波としては、0.1〜100Hz,より好ましくは0.1〜1.0又は10〜60Hzである。
液濃度としては、3〜150g/l,より好ましくは5〜50g/l,浴内のアルミニウムの溶解量としては50g/l以下が適当であり、より好ましくは2〜20g/lである。必要によって添加物を入れても良いが、大量生産をする場合は、液濃度制御などが難しくなる。
また、電流密度は、5〜100A/dm2 が適当であるが、10〜80A/dm2 がより好ましい。また、電源波形としては、求める品質,使用されるアルミニウム支持体の成分によって適時選択されるが、特公昭56−19280号,特公昭55−19191号各公報に記載の特殊交番波形を用いるのがより好ましい。この様な波形,液条件は、電気量と共に求める品質,使用されるアルミニウム支持体の成分などによって適時選択される。
【0013】
電解粗面化されたアルミニウムは、次にスマット処理の一部としてアルカリ溶液に浸漬しスマットを溶解する。アルカリ剤としては、苛性ソーダなど各種あるが、PH10以上,温度25〜60℃、浸漬時間1〜10secの極めて短時間で行うことが好ましい。
次に硫酸主体の液に浸漬する。硫酸の液条件としては、従来より一段と低い濃度50〜400g/l,温度25〜65℃が好ましい。硫酸の濃度を400g/l以上,又は温度を65℃以上にすると処理槽などの腐食が大きくなり、しかも、マンガンが0.3%以上あるアルミニウム合金では、電気化学的に粗面化された砂目が崩れてしまう。また、アルミニウム素地の溶解量が0.2g/m2 以上エッチングされると、耐刷力が低下して来るので、0.2g/m2 以下にすることが好ましい。
【0014】
陽極酸化被膜は、0.1〜10g/m2 、より好ましくは0.3〜5g/m2 を表面に形成するが良い。
陽極酸化の処理条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概には決定されていないが、一般的には電解液の濃度が1〜80重量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/cm2 、電圧1〜100V、電解時間1秒〜5分の範囲が適当である。
この様にして得られた陽極酸化皮膜を持つ砂目のアルミニウム板はそれ自身安定で親水性に優れたものであるから、直ちに感光性塗膜を上に設ける事も出来るが、必要により更に表面処理を施す事が出来る。
【0015】
たとえば、先に記載したアルカリ金属珪酸塩によるシリケート層あるいは、親水性高分子化合物よりなる下塗層を設けることができる。下塗層の塗布量は5〜150mg/m2 が好ましい。
【0016】
次に、このように処理したアルミニウム支持体上に感光性塗膜を設け、画像露光、現像して製版した後に、印刷機にセットし、印刷を開始する。
上記の方法によって得られた平版印刷版用アルミニウム支持体は、支持体の表層0〜20μm,好ましくは1〜10μmの範囲に存在する圧延方向にそってレンズ状に伸ばされたTi粒子の巾が100μm以下、好ましくは70μm以下にすることで、アルミニウム板の圧延方向に断続的に発生するTi起因のスジ状欠陥を防止することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例−1、−2及び比較例−1、−2、−3
図1に示す連続鋳造圧延装置を用いて、次のように、アルミニウム板を連続鋳造圧延した。
まず、溶解保持炉1でFe: 0.30 重量%(以下同様)、Si: 0.05%、Cu: 0.01% 残りAl と不可避不純物となるようにアルミニウム溶湯を調製し、775℃に保持した。溶解保持炉1を傾けて、樋2にアルミニウム溶湯を注ぎ、溶湯供給ノズルから冷却ロール4a,4bを持つ連続鋳造圧延1に送り、冷却ロール間で凝固・冷却しながら厚さ7.0mmのアルミニウム板を連続鋳造圧延した。
この際、Al-Ti(5%)-B(1%) の合金ワイヤを結晶微細化剤として10の位置から樋2のアルミニウム溶湯に供給し、アルミニウム溶湯中のTi濃度が0.01%になるように供給速度を設定して溶解させた。(実施例1)
また、他の実施例サンプルと比較例サンプルを作製するために、前記結晶微細化剤としてのアルミニウム合金の供給速度を変えたり、溶解保持炉にAl-Ti(5%)-B(1%) の合金ブロックを投入溶解した。
ここで、実施例−2は、実施例−1と同様な方法でAl−Ti(5%)−B(10%)の合金ワイヤを用い、アルミニウム溶湯中のTi濃度が0.04%になるように供給速度を設定し作製した。
比較例−1は、実施例−2と同様にして、溶湯中にTi濃度が0.07%になるように供給速度を設定し作製した。
比較例−2は溶解保持炉にAl−Ti(50%)−B(1%)の合金ブロックを投入溶解し、アルミニウム溶湯中のTi濃度が0.04%になるようにして作製した。
比較例−3は、比較例−2と同様の方法で、アルミニウム溶湯中のTi濃度が0.1%になるように供給速度を設定して作製した。
鋳造中は樋2の溶湯面レベルをレベル計7で測定し、アンプ8を介して溶解保持炉の保持炉傾動モーター9を制御し、溶湯の供給量を一定にした。
このように作製したサンプルをコイラ6で巻き取り、カッター5で適宜カットしてサンプルウェブとした。
次いで、図2に示す冷間圧延機で厚み1.5mmまで圧延し、図4に示すバッチ式熱処理(焼鈍)装置で480℃×10時間保持の熱処理を行い、再度冷間圧延機で厚み0.24mmに仕上げた。このようにして仕上げたサンプルをAl-Ti(5%)-B(1%) 合金の投入方法毎に分類し、アルミニウム板表面のTi の分布状況を確認して本発明の実施例−1、−2及び比較例−1、−2、−3のアルミニウム板とした。
まず、Ti起因のスジのレベルを確認するため、上記各アルミニウム板をアルミン酸ソーダ(Al3+ 10%, NaOH 30%)液を用いて60℃、30秒間のエッチング処理を行って外観評価を行った。
また、印刷性能を評価するため、上記実施例−1、−2、比較例−1、−2、−3のアルミニウム板を別途用意し、平版印刷版用支持体として用い、まず、5%苛性イソーダ水溶液でエッチング量が5g/m2 になるように温度50℃でエッチングし、水洗後、150g/リットル、50℃の硫酸中に10秒間浸漬してデスマットし、水洗した。
さらに、支持体を16g/リットルの硝酸水溶液中で、特公昭55−19191号公報に記載の交番波形電流を用いて、電気化学的に粗面化した。電解条件としては、アノード電圧VA =14ボルト、カソード電圧VC =12ボルトとして、陽極時の電気量が、350クーロン/dm2 となるようにした。
次いで、水酸化ナトリウム5%水溶液中でアルミニウム合金板の溶解量が0.5g/dm2 となるように化学的なエッチング処理を行った後、60℃、300g/リットルの硫酸水溶液中に20秒間浸漬してデスマット処理を行った。
さらに、硫酸150g/リットル、アルミニウムイオン濃度2.5g/リットルの水溶液中で極間距離150mmにおいて電圧22ボルトの直流によって60秒間陽極酸化処理を行った。
【0018】
以上の如くして作製した実施例−1、ー2及び比較例−1、−2、−3で得たアルミニウム支持体に下記組成物を、乾燥後の塗布重量が2.0g/m2 になる様に塗布して感光層を設けた。
感光液
N−(4−ヒドロキシフェニル),メタクリルアミド/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリロニトリル/メチルメタクリレート/メタクリル酸(=15:10:30:38:7モル比)共重合体(平均分子量60000)・・・5.0g
4−ジアジゾフェニルアミンとホルムアルデヒドの縮合物の六弗化燐酸塩・・・0.5g
亜燐酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05g
ジクトリアピュアーブル−BOH(保土ケ谷化学(株)社製)・・・0.1g
2−メトキシエタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・100.0g
このようにして作製して感光性平版印刷版に、真空焼枠中で透明ネガティブフィルムを通して、1mの距離から3kwのメタルハライドランプにより50秒間露光を行なったのち、下記組成の現像液で現像しアラビアガム水溶液でガム引きして平版印刷版とした。
【0019】
現像液
亜流酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0g
ベンジルアルコール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30.0g
炭酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0g
イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム・・・・・・・・12.0g
純水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1000.0g
この様にして製版された平版印刷版を用いて、通常の手順で印刷評価した。
以上のアルカリ処理後の外観評価の結果と印刷評価の結果を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
上記の結果から明らかなように、本発明のサンプルは、アルミニウム支持体の表面に分布するTi の巾を100μm以下のすることによってスジ状の欠陥が発生せず、印刷結果も良好であることが分かる。
実施例−3、−4、−5、−6及び比較例−4、−5
図1に示す溶解保存炉でFe: 0.20%, Si: 0.03%, Cu: 0.003% 残りAl 及び不可避不純物からなるアルミニウム溶湯を調製し、775℃に保持した。
以下、実施例1と同様な操作で、厚さ7.0mmのアルミニウム板を連続鋳造圧延した。
この際、6種類のAl-Ti(5%)-B(1%) のAl合金ワイヤを、その中に含まれるTiの分散状態(Ti の粒子径) を変えて作製した。即ち、Ti の粒子径が本発明の範囲内にあるものを4種類と本発明の範囲外のも2種類を作り、それぞれを、実施例−3、−4、−5、−6用及び比較例−4、−5用に使用した。
次いで、図2に示す冷間圧延機で厚さ0.24mmに仕上げた。
このように仕上げたアルミニウム板を前記実施例と同様な方法で評価し、併せてアルミニウム板面にTiの分布状態を確認した。結果を表2に示した。
【0022】
【表2】
【0023】
以上の結果から明らかなように、本発明の実施例では、Ti起因のスジ故障発生が少なくなり、外観、印刷結果共に優れた平版印刷版用支持体を製造することができる。
なお、上記の実施例−1〜−6及び各比較例に共通して、アルミニウム板表面のTi分布巾、 Al-Ti(5%)-B(1%) のアルミニウム合金ワイヤ内のTi粒子径の測定には、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)(JXA−8800M、日本電子(株)製)を使用し、加速電圧20kV,平均電流1.0×10-6Aの条件でマッピング分析をする方法を用いた。
また、図6は本発明の実施例−2でえられたアルミニウム支持体の表面の金属組織を示すEPMA写真で約90μm巾のTiが検出された。図7は同比較例−2(従来品)のアルミニウム支持体の表面の金属組織を示すEPMA写真で約400μm巾のTiが検出された。写真中に白く見える部分はTiの濃度が大きいことを示す。両図を比較して明らかなように、本発明によるアルミニウム支持体の表面にはTi起因のスジ故障の発生が極めて少ないことが分かる。
【発明の効果】
上記のように、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法によって製造された平版印刷版は、従来のものに比べ、Ti起因のスジ故障野発生が少なく、外観不良の発生を防止できると共に印刷性能が優れたものとなる。
更にアルミニウム支持体の製造工程が合理化されたことによる原材料コストの低減の効果も大きく、特に平版印刷版用支持体の品質向上及びコスト低減に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法の一実施例の一部の工程である双ロール連続鋳造圧延装置の側面図
【図2】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法の冷間圧延工程の側面図
【図3】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法の熱処理工程(連続焼鈍装置)の側面図
【図4】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法の熱処理工程(バッチ焼鈍装置)の側面図
【図5】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法の矯正工程の側面図
【図6】本発明の実施例2により得られたアルミニウム支持体の表面の金属組織(Tiの分布)を示すEPMA写真
【図7】従来方法(比較例2)により得られたアルミニウム支持体の表面の金属組織(Tiの分布)を示すEPMA写真
【符号の説明】
1 溶解保持炉
2 溶湯
3 溶湯保持ノズル
4 双ロール連続鋳造圧延機
5 カッター
6 コイラー
7 溶湯レベル計
8 アンプ
9 溶解保持炉傾動モータ
10 微細化剤ワイヤ供給位置
11 冷間圧延機
12 熱処理機
13 矯正装置
Claims (2)
- アルミニウム溶湯にTi又はTiとBを含むアルミニウム合金を添加し、一対の冷却ロールで直接厚さ10mm以下の鋳造板を連続鋳造圧延し、該鋳造板に冷間圧延と熱処理のいずれかまたは両方を行って、厚さ0.1〜0.5mmのアルミニウム合金板とし、次いで矯正及び粗面化して平版印刷版用アルミニウム支持体を製造する方法において、該Ti又はTiとBを含むアルミニウム合金として、含まれるTi粒子径が1.0mm未満であるAl−Ti合金またはAl−Ti−B合金を用いることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
- 平版印刷版用支持体の表層の0〜20μmの範囲に存在する圧延方向に沿ってレンズ状に伸ばされたTi粒子の巾が100μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法により製造された平版印刷版用支持体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12771296A JP3781211B2 (ja) | 1996-04-25 | 1996-04-25 | 平版印刷版用支持体及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12771296A JP3781211B2 (ja) | 1996-04-25 | 1996-04-25 | 平版印刷版用支持体及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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