JP2005105083A - タンク目地充填用接着剤およびこれを用いた既設貯水タンクの漏水補修方法と新設貯水タンクの漏水防止方法 - Google Patents

タンク目地充填用接着剤およびこれを用いた既設貯水タンクの漏水補修方法と新設貯水タンクの漏水防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 貯水タンクの漏水補修の作業環境を改善し、施工性を向上し、施工時間を短縮する。
【解決手段】 シートモールディングコンパウンド製の複数のパネル2を連結して組み立てられた貯水タンクのパネル2,2間の目地部分1に、一液湿気硬化型樹脂を主成分とし、接着付与剤としてシランカップリング剤を含み、且つ繊維系充填材を含む接着剤13を充填する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、接着剤およびこれを使用して貯水タンクの漏水を補修する又は予防する方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、タンク目地充填用接着剤およびこれを用いた既設貯水タンクの漏水補修方法と新設貯水タンクの漏水防止方法に関する。
従来、屋外に配置されて飲料水等の貯水に用いられるタンクは、その概略構成を図8に示すように、シートモールディングコンパウンド(以下、本明細書ではSMCと略記する。)製の複数のパネル2を連結することで組み立てられている。パネル2,2の接合部分すなわち目地部分1には、水漏れを防止するブチルゴム製のパッキング3が設けられている。より具体的には図9に示すように、パネル2のフランジ部分2aがパッキング3を挟んで突き合わせられ、これらのフランジ部分2a,2aがボルト6およびナット5で締結されている。フランジ部分2aはタンク外側8に向かって突出するように設けられている。尚、図中の符号4は金属製の押さえ部材を示す。
一方、上記のタンクは、パッキング3の劣化により水漏れを生じ得る。この水漏れに対する従来の補修方法としては、タンク内側7から目地部分1に対して、不飽和ポリエステルの一種であるビニルエステル樹脂をガラスマットと一緒に現場ライニングすることが行なわれている。
しかしながら、パッキング3として用いられるブチルゴムは石油製品であり、飲料水の衛生の点からは貯水タンク内に使用する材料として好ましくない。ところが、SMC製パネル2は型成形により製造されるため、製造上不可欠である離型剤がパネル2の表面に付着しており、例えば既存の接着剤を目地部分1に充填させても離型剤が邪魔をして接着剤がパネル2に密着せず、止水効果が得られない。このため、優れた止水効果を示すブチルゴム製パッキング3を用いざるを得ないのが現状である。
一方、パッキング3の劣化に起因する漏水に対する従来の補修方法では、接着性を悪化させる離型剤を除去するために目地部分1を研磨する必要があり、狭く閉鎖された空間であるタンク内に粉塵が飛散して作業環境が非常に悪くなってしまう。加えて、この従来工法で使用するビニルエステル樹脂は多量のスチレンを含有しており、このスチレンが施工時に飛散してタンク内に充満する為、悪臭等により作業環境がさらに悪くなる。また飲料水にスチレン等の溶剤臭が残ってしまう問題もある。また、手作業でガラスマットを積層するため工程が嵩み、コスト高となるし、水分の存在はビニルエステル樹脂の硬化不良を招くため、タンク内を完全に乾燥させる時間や手間も要する。
そこで、本発明は、SMC製パネルに良好に密着して優れた止水効果を示すタンク目地充填用接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、ブチルゴム製パッキングを用いずに貯水タンクの漏水を防止する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、作業環境を改善できると共に施工性を向上でき施工時間を短縮できる貯水タンクの漏水補修方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、シートモールディングコンパウンド製の複数のパネルを連結して組み立てられる貯水タンクのパネル間の接合部分に充填されるタンク目地充填用接着剤であり、一液湿気硬化型樹脂を主成分とし、接着付与剤としてシランカップリング剤を含み、且つ繊維系充填材を含むものである。
接着付与剤として含まれるシランカップリング剤は、SMC製パネルとの密着性を良好にする働きをする。水分を含まない一液湿気硬化型樹脂を主成分とするため、この接着付与剤は主成分中で加水分解することなく、接着剤をパネル上に塗布した際に良好に作用する。また、繊維系充填材は接着剤の伸縮を抑えて、接着剤がSMC製パネルから剥がれてしまうことを防止する。従って、貯水タンクのパネル間の接合部分に充填された接着剤は、湿気により硬化してこの接合部分を密封し、優れた止水効果を示す。
ここで、タンク目地充填用接着剤の主成分には、請求項2記載の発明のように、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーと、主鎖がポリメタクリル酸エステルとの共重合体で分子中にジメトキシシリル基を有するポリマーが用いられることが好ましい。この物質は、衛生上安全であると共にタンク目地充填用接着剤の主成分として必要とされる強度等の諸性能を満足する。
また、接着付与剤は、請求項3記載の発明のように、主成分100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲で含まれることが好ましく、0.3〜10質量部の範囲で含まれることがより好ましい。これにより接着付与剤が良好に作用し、タンク目地充填用接着剤がSMC製パネルに密着する。
また、請求項4記載の発明のように、主成分100質量部に対して、繊維系充填材を1〜30質量部の範囲で含み、尚且つ粉体系充填材を1〜200質量部の範囲で含むことが好ましい。粉体系充填材は接着剤の粘度を調整して接着剤の液だれを防止する等の効果を奏し、これによりパネル間の接合部分への接着剤の充填作業を効率的に行なうことができる。
また、請求項5記載の既設貯水タンクの漏水補修方法は、シートモールディングコンパウンド製の複数のパネルを連結して組み立てられた既設貯水タンクのパネル間の接合部分に、請求項1から4のいずれかに記載のタンク目地充填用接着剤を充填するようにしている。
したがって、パネル間の接合部分へ接着剤を充填するという単純作業によって、接合部分を密封でき、貯水タンクの漏水補修を行なえる。タンク目地充填用接着剤はSMC製パネルに良好に密着するため、パネル表面を研磨するような必要は無く、狭く閉鎖されたタンク内に粉塵が飛散してしまうことはない。また、タンク目地充填用接着剤は一液で湿気により硬化するものであり、有機溶剤が蒸発することで接着力を発現する所謂溶剤型接着剤ではないため、施工時に溶剤が飛散してタンク内に充満してしまうことはない。また、接着剤は湿気により硬化するため、タンク内を完全に乾燥させる必要は無い。従って、作業環境を改善できると共に施工性を向上でき施工時間を短縮できる。
また、請求項6記載の新設貯水タンクの漏水防止方法は、シートモールディングコンパウンド製の複数のパネルを連結して組み立てられる新設貯水タンクのパネル間の接合部分に、請求項1から4のいずれかに記載のタンク目地充填用接着剤を充填するようにしている。
したがって、貯水タンクの漏水防止に従来用いられてきたブチルゴム製パッキングを用いることなく、タンク目地充填用接着剤によって接合部分を密封でき、貯水タンクの漏水を防止できる。タンク目地充填用接着剤を構成する各成分には衛生上安全な物質を採用できるので、タンク目地充填用接着剤をより安全な漏水防止手段として利用できる。
請求項1〜4記載のタンク目地充填用接着剤によれば、水分を含まない一液湿気硬化型樹脂を主成分とするため、接着付与剤が主成分中で加水分解することなく接着剤の使用時に良好に作用してSMC製パネルとの密着性を良好にすると共に、繊維系充填材が接着剤の伸縮を抑えて接着剤がSMC製パネルから剥がれてしまうことを防止する。従って、貯水タンクのパネル間の接合部分に充填された接着剤が湿気により硬化して接合部分を密封し、接合部分からの漏水を防ぐことができる。
そして、このタンク目地充填用接着剤を用いた請求項5記載の既設貯水タンクの漏水補修方法によれば、従来法よりも遥かに単純な作業で漏水の補修を行なえる。また、接着剤は湿気により硬化するため、タンク内を完全に乾燥させる時間や手間は要らない。従って、従来法よりも施工時間を短縮でき、コストも抑えることができる。しかも、施工時にタンク内に粉塵や溶剤が飛散することがないため、作業環境も良好となる。また飲料水に溶剤臭が残ってしまうこともない。
そして、このタンク目地充填用接着剤を用いた請求項6記載の新設貯水タンクの漏水防止方法によれば、石油製品であるブチルゴム製パッキングを用いずに、衛生上より好ましい手段で貯水タンクの漏水を防止することができる。
以下に、本発明のタンク目地充填用接着剤の実施の一形態について説明する。このタンク目地充填用接着剤は、SMC製の複数のパネルを連結して組み立てられる貯水タンクのパネル間の接合部分に充填されるものである。このタンク目地充填用接着剤は、一液湿気硬化型樹脂を主成分とし、接着付与剤としてシランカップリング剤を含み、且つ繊維系充填材を含むものとしている。
タンク目地充填用接着剤の主成分には、衛生上安全であって一液で湿気による硬化を示すシリコーンポリマー、例えば湿気の存在下で縮合反応を起こす加水分解性シリル基ポリマーの利用が好ましく、更に必要とされる強度を満足させるために、アクリルが含まれる物が好ましい。特に、タンク目地充填用接着剤の主成分として必要とされる性能を満足する物質として、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーと、主鎖がポリメタクリル酸エステルとの共重合体で分子中にジメトキシシリル基を有するポリマーとの混合物が好適である。この混合物として、例えば鐘淵化学工業株式会社製「サイリルMA440」を利用できる。ここで、上記混合物のみで主成分を構成しても良いのは勿論であるが、上記混合物は高価であるため、これのみで主成分を構成するとコスト高となる。そこで、必要性能を満足させつつコスト低減を図るために、上記混合物に、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーを更に加えた物を主成分とすることがより好ましい。加える量の範囲としては、主成分の合計を100質量部として、0〜30質量部の範囲が好適である。主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーとしては、例えば鐘淵化学工業株式会社製「サイリルSAT400」を利用できる。例えば本実施形態においては、サイリルMA440を70質量部、サイリルSAT400を30質量部、の割合で混合した物を主成分として用いる。尚、当該割合は好適な一例であって、この例に限定されるものではない。
接着付与剤は、SMC製パネルとの密着性を良好にするために、主成分に添加される。この接着付与剤としては、シランカップリング剤が有効であり、例えばアミノアルコキシシランであるn−(2‐アミノエチル)3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン等が利用できる。接着付与剤の配合量は、主成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.3〜10質量部であることがより好ましい。例えば本実施形態では、主成分100質量部に対して、2質量部の接着付与剤を配合している。
繊維系充填材は、接着剤の伸縮を抑えるために、主成分に添加される。繊維系充填材が接着剤の伸縮を抑えることで、接着剤がSMC製パネルから剥がれてしまうことが防止される。この繊維系充填材としては、例えばガラス繊維、ボロン繊維、タングステン繊維、シリカ繊維などが利用できる。ここで、接着剤の塗布作業時に液だれしないための粘度調整および増量によるコスト低減などの観点から、粉体系充填材をさらに配合することが好ましい。この粉体系充填材としては、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、脂肪酸処理炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化亜鉛、カオリン、シリカ、珪酸アルミニウム、シラスバルーン、ガラスバルーンなどの粉粒状物質が利用できる。尚、充填材としては、上記に例示列挙したように無機物の利用が好ましいが、有機系の充填材、例えば塩化ビニールバルーン、アラミド繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などを使用しても良い。繊維系充填材の配合量は、主成分100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。また、粉体系充填材の配合量は、主成分100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、10〜120質量部であることがより好ましい。例えば本実施形態では、主成分100質量部に対して、ガラス繊維を1.5質量部、脂肪酸処理炭酸カルシウムを60質量部、配合している。
タンク目地充填用接着剤には、上記の主成分、接着付与剤、充填材以外に、必要性能を得るため又は更なる性能向上のために他の成分が含まれていても良い。例えば本実施形態の接着剤には、さらに可塑剤、硬化触媒、脱水剤、酸化防止剤が配合される。
可塑剤としては、例えばフタル酸ジアルキル(ジイソデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなど)、アジピン酸ジアルキル(ジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ‐n‐ヘキシルなど)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが、衛生上安全であり好ましい。可塑剤の配合量は、主成分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。例えば本実施形態では、主成分100質量部に対して、15〜20質量部のポリプロピレングリコールを配合している。
硬化触媒としては、例えば有機錫化合物(ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレート、ジブチルスズフタレート、オクチル酸第一スズ、ジブチルスズメチキシド、ジブチルスズジアセチルアセテート、ジブチルスズジバーサテートなど)、有機チタネート化合物(テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチアネート、トリエタノールアミンチタネートなど)が好適である。硬化触媒の配合量は、主成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。例えば本実施形態では、主成分100質量部に対して、2質量部の有機錫化合物を配合している。
脱水剤としては、シランカップリング剤の利用が好ましく、例えばアルコキシシランであるメチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを利用できる。脱水剤の配合量は、主成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。例えば本実施形態では、主成分100質量部に対して、3質量部の脱水剤を配合している。
また、酸化防止剤の配合量は、主成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。例えば本実施形態では、主成分100質量部に対して、1質量部の酸化防止剤を配合している。尚、上記に挙げた物以外の添加剤、例えば光安定剤や紫外線吸収剤、有機無機顔料などを更に接着剤に添加しても良い。光安定剤としては、例えばヒンダートアミン、ヒンダートフェノール、ベンザトリアゾールなどを利用できる。
以上に説明したタンク目地充填用接着剤の好ましい性状の一例を表1に示し、好ましい組成の一例を表2に示す。少なくとも表1に示す性状を満足する範囲であれば、貯水タンクのパネル間の接合部分に接着剤を充填する作業を良好に行なうことができ、また、少なくとも表2に示す組成であればタンク目地充填用接着剤として必要とされる強度等の諸性能を充分に満足でき、且つ食品衛生法にも適合し衛生上安全である。
Figure 2005105083
Figure 2005105083
次に、タンク目地充填用接着剤の製造方法について説明する。当該製造方法は、湿気の影響を極力抑えるために真空下で製造するなどの既存の製法を用いて良い。例えば、バッチ式2軸混練ミキサーなどを用いて主成分、充填材、可塑剤、酸化防止剤を混合し、真空下で加熱し脱泡を行い、反応終了の確認のため水分量を確認した後、硬化触媒、脱水剤、接着付与剤を加えて、室温下で約5分間、減圧して混合および脱泡を行う。これによりタンク目地充填用接着剤が製造される。但し、タンク目地充填用接着剤の製造方法は、この例に限定されるものではない。
以上に説明したタンク目地充填用接着剤によれば、水分を含まない一液湿気硬化型樹脂を主成分とするため、接着付与剤が主成分中で加水分解することなく接着剤の使用時に良好に作用してSMC製パネルとの密着性を良好にすると共に、繊維系充填材が接着剤の伸縮を抑えて接着剤がSMC製パネルから剥がれてしまうことを防止する。従って、貯水タンクのパネル間の接合部分に充填された接着剤が湿気により硬化して接合部分を密封して、接合部分からの漏水を防ぐことができる。
次に、上記のタンク目地充填用接着剤を用いた既設貯水タンクの漏水補修方法の一例を、図1〜図4を用いて説明する。尚、図1〜図4に示す貯水タンクの構造について、図9と同一の構成要素については同一符号を用いて、詳細な説明は省略する。
図2は、パッキング3の劣化により水漏れが生じている貯水タンクを示す。先ず、この貯水タンクから水を抜き、タンク内側7を乾燥させる。例えば貯水タンクから水を抜いた後、約12時間程度放置して貯水タンク内部を乾燥させる。そして、タンク内側7より、劣化したパッキング3を目地部分1からカッターやスクレッパー等を用いて削り取る。例えば図3に示すように、パッキング3のタンク内側7にはみ出た部分が取り除かれ、またフランジ部2a,2aの対向する面の一部が露出する程度に、パッキング3を削り取る。また、換気をしながら、溶剤を用いて目地部分1の周囲を拭き、目地部分1の周辺の脱脂及び汚れ除去を行なう。例えば、溶剤としてアセトン及び酢酸エチルを用いて、目地部分1の両側3cm程度の範囲を拭いて目地部分1の周辺の脱脂及び汚れ除去を行なう。次に、タンク内側7より、目地部分1にタンク目地充填用接着剤13を充填する。この際、目地部分1に対して、一定幅および一定厚で接着剤13を塗布できるように、バッキング材12を用いることが好ましい。例えば目地部分1の両側であって目地部分1から10mm離れた位置に、バッキング材12として厚さ2mmのアクリル板を目地部分1と平行に、マスキングテープ11で貼り付ける。そして、図4に示すように、一対のバッキング材12,12の間に、カートリッジ化した接着剤13を充填し、且つ接着剤13をヘラで延ばして目地部分1に接着剤13を充填する。また、バッキング材12からはみ出た接着剤13はヘラで掻き取る。以上の処理をすべての目地部分1に対して行う。これにより、目地部分1に沿って20mmの一定幅および2mmの一定厚で接着剤13が塗布され、且つ目地部分1すなわちパネル2,2間の隙間に接着剤13が充填される。接着剤13がある程度硬化した後、図1に示すように、バッキング材12およびマスキングテープ11を除去する。そして、12〜24時間程度の養生を行なって接着剤13を完全に硬化させる。接着剤13の硬化後、貯水タンクに注水して竣工となる。尚、上述した方法は好適な一例であるが、本発明がこの例に限定されるものではない。
この既設貯水タンクの漏水補修方法によれば、目地部分1への接着剤13の充填という単純な作業により漏水の補修を行なえる。また、接着剤13は湿気により硬化するため、タンク内を完全に乾燥させる時間や手間は要らない。従って、従来法よりも施工時間を短縮でき、コストも抑えることができる。しかも、パネル2の表面から離型剤を除去するためにパネル2を研磨する必要は無く、また接着剤13は有機溶剤が蒸発する溶剤型接着剤ではないため、施工時にタンク内に粉塵や溶剤が飛散することがなく、作業環境も良好となる。また飲料水に溶剤臭が残ってしまうこともない。
次に、タンク目地充填用接着剤を用いた新設貯水タンクの漏水防止方法の一例を、図5〜図7を用いて説明する。尚、図5〜図7に示す貯水タンクの構造について、図9と同一の構成要素については同一符号を用いて、詳細な説明は省略する。
先ず、ブチルゴム製パッキングを使用せずに、複数のSMC製パネル2を連結して貯水タンクを組み立てる。即ち、図5に示すように、タンク外側8に向かって突出するパネル2のフランジ部分2a,2a同士を突き合わせて、これらのフランジ部分2a,2aをボルト6およびナット5で締結して、パネル2,2同士を連結する。そして、タンク内側7より、溶剤を用いて目地部分1の周囲を拭き、目地部分1の周辺の脱脂を行なう。例えば、溶剤としてアセトン及び酢酸エチルを用いて、目地部分1の両側3cm程度の範囲を拭いて目地部分1の周辺の脱脂を行なう。次に、タンク内側7より、目地部分1にタンク目地充填用接着剤13を充填する。この際、目地部分1に対して、一定幅および一定厚で接着剤を塗布できるように、バッキング材12を用いることが好ましい。例えば目地部分1の両側であって目地部分1から10mm離れた位置に、バッキング材12として厚さ2mmのアクリル板を目地部分1と平行に、マスキングテープ11で貼り付ける。そして、図6に示すように、一対のバッキング材12,12の間に、カートリッジ化した接着剤13を充填し、且つ接着剤13をヘラで延ばして目地部分1に接着剤13を充填する。また、バッキング材12からはみ出た接着剤13はヘラで掻き取る。以上の処理をすべての目地部分1に対して行う。これにより、目地部分1に沿って20mmの一定幅および2mmの一定厚で接着剤13が塗布され、且つ目地部分1すなわちパネル2,2間の隙間に接着剤13が充填される。接着剤13がある程度硬化した後、図7に示すようにバッキング材12およびマスキングテープ11を除去する。そして、12〜24時間程度の養生を行なって接着剤13を完全に硬化させる。接着剤13の硬化後、貯水タンクは注水可能となる。尚、上述した方法は好適な一例であるが、本発明がこの例に限定されるものではない。
この新設貯水タンクの漏水防止方法によれば、石油製品であるブチルゴム製パッキングを用いずに、衛生上安全であるタンク目地充填用接着剤13により貯水タンクの漏水を防止することができる。
表2に示す組成の接着剤を上述した製造方法により製造した。即ち、バッチ式2軸混練ミキサーを用いて主成分、充填材、可塑剤、酸化防止剤を混合し、真空下で加熱し脱泡を行い、反応終了の確認のため水分量を確認した後、硬化触媒、脱水剤、接着付与剤を加え、室温下で約5分間、減圧して混合および脱泡を行って、タンク目地充填用接着剤を製造した。この接着剤を実施例1とする。また、比較例として、表3に示す組成の接着剤を同様の製造方法により製造した。比較例は、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーのみで主成分が構成されるものである。
Figure 2005105083
尚、本実施例では、主成分のうち、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーと、主鎖がポリメタクリル酸エステルとの共重合体で分子中にジメトキシシリル基を有するポリマーとの混合物には、鐘淵化学工業株式会社製のサイリルMA440を用いた。主成分のうち、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーには、鐘淵化学工業株式会社製のサイリルSAT400を用いた。可塑剤には、ポリプロピレングリコール(武田薬品工業株式会社製 タケラックP37)を用いた。粉体系充填材には脂肪酸処理炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製 ネオライトSP)を用い、繊維系充填材にはガラス繊維(日東紡績株式会社製 CS3E−227S)を用いた。硬化触媒には、有機錫化合物として、日東化成株式会社製のネオスタンU−220を用いた。接着付与剤には、シランカップリング剤として、信越化学工業株式会社製のKBM−603を用いた。脱水剤には、シランカップリング剤として、日本ユニカー株式会社製のA‐171を用いた。酸化防止剤には、旭電化工業株式会社製のMARK AO−50を用いた。
実施例1の接着剤を用いて製造直後のSMC製部材を接着したものと、比較例の接着剤を用いて製造直後のSMC製の部材を接着したものとを、それぞれ試験体として強度試験を行なった。具体的には、JIS K 6854に準拠したピール試験と、JIS K 5548に準拠した引張り試験を行なった。両試験とも、試験体を20℃および40℃の水中にそれぞれ一定時間浸漬した後に、試験を行なった。浸漬時間は、0時間(即ち浸漬する前の状態)、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月の4種類とした。
ピール試験結果である剥離強さ[N/25mm]について、実施例1の結果を表4に示し、比較例の結果を表5に示す。また引張り試験結果である引張り強さ[MPa]について、実施例1の結果を表6に示し、比較例の結果を表7に示す。
Figure 2005105083
Figure 2005105083
Figure 2005105083
Figure 2005105083
実施例1の接着剤については、表4に示すように浸漬時間の経過に従って剥離強さが劣化することが確認されたが、表6に示すように引張り強さについては浸漬時間の経過による劣化が見られなかった。パネルの目地部分に充填される接着剤に対して、剥離の力が加わることは通常考え難い為、実施例1の接着剤によれば貯水タンクの目地充填用接着剤として充分使用に耐えると判断できる。
一方、比較例の接着剤については、表5および表7に示されるように、水中に浸漬される以前から既に接着力が弱く、且つ浸漬後の劣化も早いことが確認された。実施例1と比較例の主たる違いは主成分にある。この結果から、接着剤の主成分に含まれるアクリルが強度向上及び強度の劣化防止に寄与していると考えられる。また、この結果から、主成分には、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーと、主鎖がポリメタクリル酸エステルとの共重合体で分子中にジメトキシシリル基を有するポリマーを用いる事が有効であることが確認された。
図5に示すようにブチルゴム製パッキングを使用せずに組み立てた新設貯水タンクに対して、実施例1の接着剤を用いて漏水防止処理を施した。具体的には、図5に示す貯水タンクの内側7から、アセトン及び酢酸エチルを用いて目地部分1の両側3cm程度の範囲を拭いて目地部分1の周辺の脱脂を行なった後、図6に示すように、目地部分1の両側であって目地部分1から10mm離れた位置に、バッキング材12として厚さ2mmのアクリル板を目地部分1と平行に、マスキングテープ11で貼り付け、一対のバッキング材12,12の間に、カートリッジ化した接着剤13を充填し、且つ接着剤13をヘラで延ばして目地部分1に接着剤13を充填した。また、バッキング材12からはみ出た接着剤13はヘラで掻き取った。以上の処理をすべての目地部分1に対して行った後、図7に示すように、バッキング材12およびマスキングテープ11を除去し、12時間放置して接着剤13を硬化させた。その後、この貯水タンクに注水した。注水後、1ヶ月経過しても漏水は全く見られなかった。この結果から、ブチルゴム製パッキングの代わりにタンク目地充填用接着剤を貯水タンクの漏水防止手段として使用しても充分実用に耐えると判断できる。
図2に示すようにパッキングの劣化により水漏れが生じた既設貯水タンクに対して、実施例1の接着剤を用いて補修を施した。この貯水タンクは、5m×5m×2mの20トンタンクであり、目地の総延長は大凡100mであった。施工前日に、この貯水タンクから水を抜き、12時間程度放置して貯水タンク内部を乾燥させた。そして、図3に示すように、タンク内側7より、劣化したパッキング3をSMC製パネル2,2の目地部分1からカッターとスクレッパーを用いて削り取った。また、換気をしながら、アセトン及び酢酸エチルを用いて、目地部分1の両側3cm程度の範囲を拭いて目地部分1の周辺の脱脂及び汚れ除去を行なった。次いで図4に示すように、目地部分1の両側であって目地部分1から10mm離れた位置に、バッキング材12として厚さ2mmのアクリル板を目地部分1と平行に、マスキングテープ11で貼り付け、一対のバッキング材12,12の間に、カートリッジ化した接着剤13を充填し、且つ接着剤13をヘラで延ばして目地部分1に接着剤13を充填した。また、バッキング材12からはみ出た接着剤13はヘラで掻き取った。以上の処理をすべての目地部分1に対して行った後、図1に示すように、バッキング材12およびマスキングテープ11を除去し、24時間放置して接着剤13を硬化させた。その後、この貯水タンクに注水して竣工とした。この工法によれば、従来工法であるビニルエステル樹脂現場ライニングと比較して、約半分の時間で施工を終了することが出来た。また、注水後、3ヶ月経過しても漏水は全く見られなかった。従って、タンク目地充填用接着剤を用いた漏水補修方法は充分実用に耐えると判断できる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上記に示した、タンク目地充填用接着剤の組成は好適な一例であって、この例に必ずしも限定されるものではなく、例えば下記の表8に示す組成としても良い。
Figure 2005105083
本発明の既設貯水タンクの漏水補修方法の実施の一形態を示し、竣工後の貯水タンクの断面を示す図である。 パッキングの劣化により水漏れを生じている貯水タンクの断面図である。 図2の貯水タンクに対し、劣化したパッキングを削り取る様子を示す貯水タンクの断面図である。 図3の貯水タンクの目地部分に、タンク目地充填用接着剤を充填する様子を示す貯水タンクの断面図である。 パッキングを用いずにSMC製の複数のパネルを連結して組み立てられた貯水タンクの断面を示す図である。 図5の貯水タンクの目地部分に、タンク目地充填用接着剤を充填する様子を示す貯水タンクの断面図である。 本発明の新設貯水タンクの漏水防水方法の実施の一形態を示し、竣工後の貯水タンクの断面図である。 従来の貯水タンクの概略構成を示す斜視図である。 従来の貯水タンクの構造を示す断面図である。
符号の説明
1 目地部分(接合部分)
2 SMC製パネル
2a フランジ部分
3 パッキング
4 押さえ部材
5 ナット
6 ボルト
7 タンク内側
8 タンク外側
11 マスキングテープ
12 バッキング材
13 タンク目地充填用接着剤

Claims (6)

  1. シートモールディングコンパウンド製の複数のパネルを連結して組み立てられる貯水タンクの前記パネル間の接合部分に充填される接着剤であり、一液湿気硬化型樹脂を主成分とし、接着付与剤としてシランカップリング剤を含み、且つ繊維系充填材を含むことを特徴とするタンク目地充填用接着剤。
  2. 前記主成分には、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシ基を有するポリマーと、主鎖がポリメタクリル酸エステルとの共重合体で分子中にジメトキシシリル基を有するポリマーが用いられることを特徴とする請求項1記載のタンク目地充填用接着剤。
  3. 前記主成分100質量部に対して、前記接着付与剤を0.1〜20質量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1または2記載のタンク目地充填用接着剤。
  4. 前記主成分100質量部に対して、前記繊維系充填材を1〜30質量部の範囲で含み、尚且つ粉体系充填材を1〜200質量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタンク目地充填用接着剤。
  5. シートモールディングコンパウンド製の複数のパネルを連結して組み立てられた既設貯水タンクの前記パネル間の接合部分に、請求項1から4のいずれかに記載のタンク目地充填用接着剤を充填することを特徴とする既設貯水タンクの漏水補修方法。
  6. シートモールディングコンパウンド製の複数のパネルを連結して組み立てられる新設貯水タンクの前記パネル間の接合部分に、請求項1から4のいずれかに記載のタンク目地充填用接着剤を充填することを特徴とする新設貯水タンクの漏水防止方法。
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