JP2005104840A - 消化管粘膜付着性マイクロスフェアー - Google Patents

消化管粘膜付着性マイクロスフェアー Download PDF

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恒司 永井
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Kozo Takayama
幸三 高山
Toshio Shimizu
俊夫 清水
Masatake Oraku
真健 大樂
Hiroshi Ninomiya
宏 二宮
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Abstract

【課題】 消化管粘膜における付着性および滞留性に優れ、含まれる薬効成分の消化管内での持続性が高い消化管粘膜付着性マイクロスフェアーを提供すること。
【解決手段】 アニオン性親水性高分子の粉末、カチオン性親水性高分子の粉末、疎水性基剤、および薬効成分を含むマイクロスフェアーであって、特に、前記アニオン性親水性高分子がカルボキシル基および/または硫酸基を含有する多糖または合成高分子であって、前記カチオン性親水性高分子がカチオン性の多糖、ポリペプタイドまたは合成高分子であることを特徴とする、マイクロスフェアー。
【選択図】 なし

Description

本発明は、消化管粘膜に対する付着性および消化管内における滞留性に優れるマイクロスフェアーであって、該マイクロスフェアーに含まれる薬効成分の消化管内における持続性が高いマイクロスフェアーに関する。
多くの薬物は消化管上部、すなわち胃および小腸において吸収され、大腸での吸収は少ない薬物が多い。また、内服された薬物が消化管上部を経て大腸付近に到達するまでにかかる時間は、人の場合、数時間以内である。したがって、薬物を通常の経口投与した場合、吸収部位すなわち、胃および小腸において薬物が滞留する時間には限界があり、薬物が効率よく吸収されず、吸収されないまま排泄されてしまうことが多い。また、直接作用により薬効を発現する薬物は、作用部位との接触時間が限られるため、有効に作用が発揮されないことが多い。
そこで、消化管粘膜に付着する性質を与え、消化管内での薬物の貯留性を高めた固形製剤の設計が試みられている。そのうちの一つとして、薬物を配合させたマイクロスフェアー製剤の設計が挙げられる。例えば、ゲル化剤を用いた液中乾燥法による製剤(特許文献1参照)、コアセルベーション剤を用いた相分離法(特許文献2参照)、薬効成分および粘性物質の膨潤剤(例えば、カードランおよび/または低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)を含む消化管付着性マトリックス粒子(特許文献3参照)が挙げられるが、いずれの場合も十分な消化管粘膜付着性を有するマイクロスフェアーは得られていない。
一方、デキストラン誘導体、特にデキストラン誘導体のポリアニオンおよびポリカチオンの物理混合物が粘膜付着性を有することを、本発明者等は報告している(非特許文献1参照)(宮崎、「固体状態におけるデキストラン誘導体の粘膜付着性の評価」、薬剤学、第62巻、第1号、p.4−22)。しかし、この物理混合物を利用した製剤についてはまったく報告がない。
特開2000−256182号 特開昭57−11851号 特開2000−26316号 宮崎、「固体状態におけるデキストラン誘導体の粘膜付着性の評価」、薬剤学、第62巻、第1号、p.4−22
本発明は、内服することができ、消化管粘膜に付着する性質を有し、消化管内での滞留時間が長いマイクロスフェアーであって、含まれる薬効成分の消化管内における吸収を促進させ、および/または薬効成分の消化管局所への直接作用を高めることができる消化管粘膜付着性マイクロスフェアーを提供することである。そして、該マイクロスフェアーを含有し、薬効をより高く発揮させることができる医薬製剤を提供する。
本発明者等は、アニオン性親水性高分子およびカチオン性親水性高分子の粉末からなる物理混合物(単に混ぜ合わされた混合物を意味し、混合されたものが化学変化を受けていない状態の混合物をいう)が、該アニオン性親水性高分子、該カチオン性親水性高分子、またはその他の中性水溶性高分子の単独の粉末よりも、胃内(pH1.2)における消化
管粘膜付着性に優れることを見出し、その知見に基づいて、該物理混合物を用いて消化管粘膜付着性に優れるマイクロスフェアーの設計を試みた。その結果、アニオン性親水性高分子の粉末、カチオン性親水性高分子の粉末、薬剤および疎水性基剤を含むマイクロスフェアーが、消化管粘膜に対する付着性が強く、消化管内での滞留時間が長いこと、さらに該マイクロスフェアーに含有される薬剤が、消化管内において効率的に吸収され、消化管局所への直接作用に優れ、その薬効をより高く発揮することを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) アニオン性親水性高分子の粉末、カチオン性親水性高分子の粉末、疎水性基剤、および薬効成分を含む消化管粘膜付着性のマイクロスフェアー。
(2) 前記アニオン性親水性高分子が、カルボキシル基および/または硫酸基を含有する多糖、ならびにカルボキシル基および/または硫酸基を含有する合成高分子からなる群から選ばれる、一種または複数種の高分子であることを特徴とする、(1)に記載のマイクロスフェアー。
(3) 前記カチオン性親水性高分子が、カチオン性の多糖、ポリペプタイドおよび合成高分子からなる群から選ばれる、一種または複数種の高分子であることを特徴とする、(1)に記載のマイクロスフェアー。
(4) 前記疎水性基剤が、セルロース誘導体、アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体、ビニルアセテート系重合体、脂質、炭化水素類、脂肪酸およびその塩、ならびに高級アルコールからなる群から選ばれる一種または複数種の基剤であることを特徴とする、(1)に記載のマイクロスフェアー。
(5) 前記アニオン性親水性高分子の粉末およびカチオン性親水性高分子の粉末は、それぞれが、いずれも平均粒径200μm以下の粉末であることを特徴とする、(1)に記載のマイクロスフェアー。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載のマイクロスフェアーを含む医薬品製剤。
本発明のマイクロスフェアーに含まれるアニオン性親水性高分子は、アニオン性基を含む任意の親水性高分子であり、その一部または全部が金属塩になっていてもよい。該金属塩とは、例えば、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、およびアルミニウム塩などの三価金属塩が挙げられる。
アニオン性親水性高分子は、好ましくは、硫酸基および/またはカルボキシル基を含む多糖、あるいは硫酸基および/またはカルボキシル基を含む合成高分子である。ここで合成高分子とは、1種又は2種以上の単量体を天然の助けを借りずに重合させて合成した高分子化合物を意味する。硫酸基を含む多糖としては、例えばデキストラン硫酸、カラギーナン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ラムナン硫酸、コンドロイチン硫酸、ムチン硫酸、ならびにローカストビンガム、トラガントガム、アラビアゴム、キトサン、プルラン、寒天、ペクチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびメチルセルロースなどの硫酸エステル及びこれらのナトリウム等の金属塩が挙げられ、カルボキシル基を含む多糖としては、例えばヒアルロン酸、キサンタンガム、アルギン酸、ポリグルタミン酸、コハク酸ゼラチン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カゼインナトリウム、カルボキシメチルスターチ、カルメロース、カルボキシルメチルデキストランおよびカルボキシルデキストラン及びこれらのナトリウム等の金属塩が挙げられる。カルボキシル基を含む合成高分子としては、例えば親水性のアクリル酸系重合体(カーボポール、カルシウムポリカーボフィルおよびポリアクリル酸など)及びこれらのナトリウム等の金属塩が挙げられ、硫酸基を含む合成高分子としては、例えばポリビニル硫酸及びそのナトリウム等の金属塩が挙げられる。これらアニオン性親水性高分子の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち好ましいアニオン性親水性高分子としてはデキストラン硫酸、ヘパラン硫
酸、プルランまたはペクチンの硫酸エステル、ヒアルロン酸、キサンタンガム、アルギン酸、カルメロース、カルボキシルメチルデキストラン、ポリアクリル酸及びこれらのナトリウム等の金属塩などが挙げられ、特に好ましくはデキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、ペクチンの硫酸エステル、アルギン酸、ポリグルタミン酸、カルボキシルメチルデキストラン、ポリアクリル酸及びデキストラン硫酸ナトリウムを始めとするこれらのナトリウム等の金属塩などが挙げられる。
カチオン性親水性高分子は、カチオン性基(好ましくはアミノ基またはアンモニウム基)を含む任意の親水性高分子であるが、その一部または全部が有機酸塩または無機酸塩になっていてもよい。有機酸塩とは例えば、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩などが挙げられ、無機酸塩とは例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などが挙げられる。
カチオン性親水性高分子とは、好ましくはカチオン性の多糖、ポリペプタイドまたは合成高分子である。ここで合成高分子とは、1種又は2種以上の単量体を天然の助けを借りずに重合させて合成した高分子化合物を意味する。また、カチオン性の多糖とは、元々カチオン性の天然多糖類の他、元々カチオン性でない天然多糖類をカチオン化した多糖類を含む。カチオン化とは、例えばアミノ化(アミノ基を導入することをいい、アミノアルキル化なども含む)または4級アンモニウム化(ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム化など)を意味する。
カチオン性の多糖としては、例えばキトサン、ポリグルコサミン、ポリガラクトサミン、カチオン化デキストラン(例えばデキストラン塩化ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムエーテルなどの4級アンモニウム塩、ジエチルアミノエチルデキストラン、アミノデキストランなど)、カチオン化セルロース、カチオン化スターチ、カチオン化アミロペクチン、カチオン化アミロース、カチオン化グアガム、カチオン化寒天が挙げられ、カチオン性のポリペプタイドとしては、例えばポリリジンが挙げられ、カチオン性の合成高分子としては、例えばカチオン化ポリビニルアルコール、カチオン化ポリアミド、カチオン化ポリアクリルアミド、カチオン化ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、カチオン化ポリビニルピロリドンが挙げられる。これらのカチオン性親水性高分子の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち好ましいカチオン性親水性高分子としては、キトサン、塩酸キトサン、ポリグルコサミン、ポリリジン、デキストラン塩化ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムエーテル、ジエチルアミノエチルデキストラン、アミノデキストラン、カチオン化スターチ、カチオン化アミロペクチン、カチオン化アミロース、カチオン化ポリメタクリレート、カチオン化ポリビニルピロリドンが挙げられ、特に好ましくは、キトサン、塩酸キトサン、ポリリジン、デキストラン塩化ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムエーテル、ジエチルアミノエチルデキストラン、カチオン化アミロペクチン、カチオン化ポリビニルピロリドンが挙げられる。
本発明のマイクロスフェアーに含まれるアニオン性親水性高分子の粉末とカチオン性親水性高分子の粉末は、物理的に混合されていればよく、化学的な変化が起こっていたり、錯体を形成している必要はない。
本発明のマイクロスフェアーに含まれるアニオン性親水性高分子の粉末、およびカチオン性親水性高分子の粉末はそれぞれ、マイクロスフェアーの粒度に応じて任意の大きさの粉末とすることができるが、好ましくは平均粒径200μm以下、さらに好ましくは100μm以下の粉末である。平均粒径200μm以下の粉末とすることにより望ましい粒度のマイクロスフェアーを得ることができる。
マイクロスフェアーの成形性は、マイクロスフェアーに含有される親水性高分子(アニオン性およびカチオン性の高分子を含む)の含有量によって影響を受ける。つまり、マイクロスフェアーにおいて非連続層として存在する親水性高分子の粉末の含有量が多いほど、マイクロスフェアーの成形性は低下すると考えられる。一方、マイクロスフェアーに粘膜付着性を付与するためには、一定量以上の親水性高分子(アニオン性およびカチオン性の高分子を含む)の粉末を含ませる必要がある。従って、アニオン性親水性高分子の粉末の含有量は、目安として、マイクロスフェアー全重量に対して好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%であり、カチオン性親水性高分子の粉末の含有量は、目安としてマイクロスフェアー全重量に対して好ましくは1〜60重量%、より好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
本発明のマイクロスフェアーは、含まれるアニオン性親水高分子とカチオン性親水性高分子の配合比率によって、その粘膜付着性が異なると考えられる。つまり、アニオン性ポリマーの配合比率が高いと塩基性である腸内における粘膜付着性が高くなり、カチオン性ポリマーの配合比率が高いと、酸性である胃内における粘膜付着性が高くなると考えることができる。従って、望ましいマイクロスフェアーの粘膜付着性に応じて、その配合比率を変えることができる。好ましい配合比率としては、アニオン性親水性高分子のモノマー1モル当たりの重量に対して、カチオン性親水性高分子の重量がモノマー当たり0.1〜1.0モル相当の重量、より好ましくは0.2〜0.8モル相当の重量、さらに好ましくは0.4〜0.6モル相当の重量、またはカチオン性親水性高分子のモノマー1モル当たりの重量に対して、アニオン性親水性高分子の重量がモノマー当たり0.1〜1.0相当の重量、より好ましくは0.2〜0.8モル相当の重量、さらに好ましくは0.4〜0.6モル相当の重量である。
本発明のマイクロスフェアーに含まれる疎水性基剤は、例えば、セルロース誘導体、アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体、ビニルアセテート系重合体、脂質、炭化水素類、脂肪酸もしくはその塩、高級アルコールが挙げられるが、これらに限定されず、本発明のマイクロスフェアーの壁材として作用するものであれば任意の疎水性基剤を用いることができる。
セルロース誘導体としては例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(日局11)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース(局外規)、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートフタレート(日局11)、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、及びエチルセルロースなどが挙げられる。
ここで、アクリル酸系重合体とは、アクリル酸もしくはアクリル酸エステルの単独重合体、またはアクリル酸もしくはアクリル酸エステルおよびこれと重合可能なモノマーとの共重合体、あるいはそれらの塩を意味する。好ましくは例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸シルクフィブロイン共重合樹脂、アクリル酸澱粉等が挙げられる。メタクリル酸系重合体とは、メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの単独重合体、またはメタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルおよびこれと重合可能なモノマーとの共重合体、あるいはそれらの塩を意味する。好ましくは例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットE100)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットE,RS,RN100L,RSPML,RN100,RSPM)、メタクリル酸コポリマーL(オイドラギットL100)、メタクリル酸コポリマーL−D(オイドラギットL−30−D−55)およびメタクリル酸コポリマーS(オイドラギットS−1
00)などが挙げられる。ビニルアセテート系重合体とは、ビニルアセテートの単独重合体、またはビニルアセテートおよびこれと重合可能なモノマーとの共重合体を意味する。好ましくは例えば、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(オイドラギットNE30−D)及び酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
また脂質とは、油脂類、ロウ類、ホスホリピッド類などを含む。油脂類としては例えば、植物油(ヒマシ油、綿実油、大豆油、菜種油など)もしくは動物油(牛脂など)の水素添加物(硬化油)、または脂肪酸グリセリンエステル(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、カプリン酸、ベヘニン酸などの、高級脂肪酸のモノ〜デカグリセリドなど)が挙げられ、ロウ類としては例えば、蜜ロウ、カルナバロウ、鯨ロウなどが挙げられ、ホスホリピッド類としては水添レシチンなどが挙げられる。
炭化水素類としてはパラフィン、マイクロクリスタリンワックスなど、高級アルコールとしてはセチルアルコール、ステアリルアルコールなどが挙げられる。これらの疎水性基剤を単独で、または複数のものを組み合わせて用いることができる。
本発明のマイクロスフェアーに含まれる疎水性基剤として好ましいのは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリ酢酸ビニル、硬化ヒマシ油、ステアリン酸グリセリンエステル、蜜ロウ、水添レシチン、マイクロクリスタリンワックス、ステアリルアルコールが挙げられ、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ酢酸ビニル、硬化ヒマシ油、ステアリン酸グリセリンエステル、マイクロクリスタリンワックスが挙げられる。
疎水性基剤は、マイクロスフェアーにおいて連続層として存在し、マイクロスフェアーの成形性を向上させると考えられる。従って、本発明のマイクロスフェアーに含まれる疎水性基剤の含有量を、マイクロスフェアー全量に対して好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは30〜50重量%とすることにより、マイクロスフェアーの成形性を良好にすることができる。
本発明のマイクロスフェアーに配合される薬物は、内服に供するものであれば特に限定されず、固体、半固体または液体であってもよく、その各科領域の全般にわたり特に限定されない。さらに、親水性または疎水性であってもよく、水可溶性または水不溶性であってもよく、イオン性または非イオン性であってもよい。
本発明のマイクロスフェアーに配合する薬物の量は、マイクロスフェアー全量に対して0.0002〜95重量%、より好ましくは0.05〜90重量%、更に好ましくは0.1〜85重量%である。
薬物はその性質により消化管内における溶解性、吸収部位などが異なる。例えば、ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシン、チアミンダイサルファイド、パパベリン、トルブタミド、ビンポセチン、クロルプロマジン、モルフィン、エフェドリン、キニジン、エスタゾラム、スコポラミン、ベラパミル等の塩基性薬物の溶解性は酸性側で高くアルカリ性側で低い。よって、そのマイクロスフェアーからの溶出速度は、酸性環境の胃内では早く、中性〜弱アルカリ性環境の腸では遅いことが予測される。一方、例えば
アスコルビン酸、サリチル酸、インドメタシン、アスピリン、ケトプロフェン、バルプロ酸、プロベネシド及びイブプロフェン等の酸性薬物では塩基性薬物と逆の傾向を示すことが予測される。そこで本発明のマイクロスフェアーには例えば、溶解度が低い1〜3価の金属の酸化物、水酸化物、無機酸塩または有機酸塩薬物等の粉末粒子を共存させることによって消化管内pHとは無関係に胃及び腸の全域において一定の速度で薬物を溶出させる調整を行ってもよい。
本発明のマイクロスフェアーには、その製造時に、薬物溶出性等の各種性状を調整する目的で、一般に固形製剤において汎用される添加剤、例えば、澱粉類、乳糖、蔗糖、マンニトール、エリスルトール、微結晶セルロース、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストリン、デキストラン、プルラン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、蔗糖脂肪酸エステル、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど、シリコーン等の帯電防止剤、医薬品添加物に収載されている矯味剤、色素、防腐剤、湿潤剤などを共存させてもよい。
本発明のマイクロスフェアーの平均粒子径は、目安として、800μm以下であることが好ましく、より好ましくは700μm以下、さらに好ましくは600μm以下である。平均粒子径800μm以下のマイクロスフェアーとすることにより、該マイクロスフェアーを服用したときのざらつき感を低減又は解消することができ、また、製剤化(錠剤化、散剤化、カプセル化等を含む)においてマイクロスフェアーを配合するのを容易にすることができる。
本発明のマイクロスフェアーの調製方法は、本発明の効果を損なわない限り、従来から知られている乳化溶媒蒸発法、噴霧乾燥法、各種造粒法、または溶融噴霧冷却法などのどのような手段を選択してもよく、特に限定されない。以下に調製方法の例を簡単に述べる。
例えば乳化溶媒蒸発法では、壁材である疎水性基剤を溶解するがその他の成分は溶解しない性質を有する有機溶媒(以下、「有機溶媒A」と称する)に疎水性基剤を溶解する。この溶液に任意の粒度に調整したアニオン性親水性高分子粉末、カチオン性親水性高分子粉末、および薬物の粉末をそれぞれ所定量添加し、懸濁液とする。一方、有機溶媒Aとは混和姓がなく、かつ上記3種の粉末のいずれをも溶解しない性質を有する有機溶媒(以下、「有機溶媒B」と称する)に対する界面活性剤の溶液を調製する。次に、この界面活性剤の溶液に、前記の懸濁液を撹拌下に注入し、乳化させる。十分に乳化した後、該乳化液を加熱して有機溶媒Aを蒸発除去する。残留した有機溶媒B中に生成し、懸濁しているマイクロスフェアーを傾斜法や濾過法によって分離し、有機溶媒Bとの混和性を有する揮発性の有機溶媒であって、かつ生成したマイクロスフェアーを溶解しない有機溶媒を用いて、前記分離したマイクロスフェアーを洗浄した。さらに、得られたマイクロスフェアーを真空乾燥し、篩過法により粒子径を整える。
また噴霧乾燥法では、壁材である疎水性基剤を有機溶媒Aに溶解し、この溶液に、任意の粒度に調整したアニオン性親水性高分子粉末、カチオン性親水性高分子粉末、および薬物の粉末をそれぞれ所定量添加し、懸濁液とする。この懸濁液を、各種仕様の噴霧乾燥機で噴霧乾燥してマイクロスフェアーを得て、篩過法により粒子径を整える。
また溶融噴霧冷却法では、例えば熱溶融性を有する疎水性基剤を加熱溶融し、この溶融液に任意の粒度に調整したアニオン性親水性高分子粉末、カチオン性親水性高分子粉末、および薬物の粉末をそれぞれ所定量加え、均一に混合する。この混合液を各種仕様の滴下装置により滴下または噴霧機により噴霧し、冷却することにより粉末としてマイクロスフェアーを得て、篩過法により粒子径を整える。
本発明のマイクロスフェアーはそのまま内服投与されてもよいが、該マイクロスフェアーを含む各種の形態の医薬品製剤に製剤化されて投与されてもよい。これらの製剤としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、ドライシロップ剤などの経口投与製剤、または軟膏および座剤などの外用製剤が挙げられる。製剤化にあたっては、通常の医薬製剤に用いられる任意の成分(例えば添加剤や賦形剤)を、任意の量で配合させることができる。製剤の総重量に対するマイクロスフェアーの含有量は、目安として5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。
本発明のマイクロスフェアーは消化管粘膜に対して付着性を示す。その理由は、含有させた高分子が水と接触することにより粒子の表面に滲出し、消化管粘膜に対する付着性を発揮するためであると考えることができるが、いずれにしても、下記の実施例においてその付着性が証明されている。この付着性により、消化管内での滞留時間が長くなり、含有される薬効成分が徐々に消化管中において放出され、効率的に吸収されることができる。
また、マイクロスフェアーの組成を適宜変えることにより、消化管内の特定の部位における付着性を上げることで、含まれる薬効成分との作用部位における接触時間を長くすることができ、薬物の薬理活性を直接作用的に持続させることができる。
以下に実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1
150メッシュ篩過処理したチアミンダイサルファイド(以下、「TDS」とも称する)(ICN Biomedicals,Inc、Aurora,OH ,USA)粉末0.30kg、同処理した平均分子量100万のカルボキシメチルデキストラン(名糖産業(株)製)粉末0.50g、および同処理した平均分子量50万の[2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン(Sigma Chemical Co.Stlouis.MO,USA)粉末1.9kgを、平均分子量3万の酢酸酪酸セルロース(CAB社製)1kgのアセトン溶液15Lに懸濁する。この懸濁液を、ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製・DK F-10)の流動パラフィン(日本薬局方)溶液(1w/v%)150L中に注入し、20℃で、300rpmで30分間撹拌して乳化させる。次にこの乳化液を50℃に加熱してアセトン(試薬特級)を蒸発除去する。流動パラフィン中に生成した粒子を傾斜法により摘出し、各50Lのヘキサン(試薬特級)で3回洗浄し、室温で真空乾燥する。さらに、30〜200メッシュに整粒してマイクロスフェアー(収率約85%)を得る。
実施例2
150メッシュ篩過処理したクラリスロマイシン(和光純薬(株)製)粉末0.30kg、同処理した平均分子量50万のデキストラン硫酸ナトリウム(Sigma Chemical Co.Stlouis.MO,USA)粉末0.40kg、および同処理した塩酸キトサン(光陽ケミカル(株)製)粉末2.5kgを、平均分子量3万の酢酸酪酸セルロース(CAB社製)1kgのアセトン溶液15Lに懸濁する。この懸濁液を、ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製・DK -10)の流動パラフィン(日本薬局方)溶液(1w/v%)150L中に注入し、2
0℃で、300rpmで30分間撹拌して乳化させる。次にこの乳化液を50℃に加熱してアセトン(試薬特級)を蒸発除去する。流動パラフィン中に生成した粒子を傾斜法により摘出し、各50Lのヘキサン(試薬特級)で3回洗浄し、室温で真空乾燥する。さらに、30〜200メッシュに整粒してマイクロスフェアー(収率約75%)を得る。
実施例3
各々200メッシュ以下の粒度のテイフィリン(Sigma Chemical Co.Stlouis.MO,USA)粉末0.25kg、平均分子量50万のデキストラン硫酸(Sigma Chemical Co.Stlouis.MO,USA)粉末0.31kg、および平均分子量50万の[2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン(Sigma Chemical Co.Stlouis.MO,USA)粉末0.94kgを、平均分子量3万の酢酸酪酸セルロース(CAB社製)1kgのアセトン(試薬特級)溶液15Lに懸濁してスラリー状の液を得る。このスラリー状の液をスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、得られた粉末を篩過により30〜200メッシュに整粒してマイクロスフェアー(収率約70%)を得る。
実施例4
150メッシュ篩過処理したチアミンダイサルファイド(ICN Biomedicals,Inc、Aurora,OH ,USA)粉末0.30kg、同処理した平均分子量100万のカルボキシメチルデキストラン(名糖産業(株)製)粉末0.50kg、および同処理した平均分子量100万の[2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン(Sigma Chemical Co.Stlouis.MO,USA)粉末1.9kgを、あらかじめ80〜90℃に加熱下に溶融したステアリン酸ペンタ(テトラ)グリセリド(坂本薬品(株)製)12kgおよびマイクロクリスタリンワックス(日本石油(株)製)4kgの混合物に添加し、混合して均一なスラリー状の液とする。このスラリー状の液を噴霧冷却機にて噴霧固化して得た粉末粒子に、ステアリン酸マグネシウム(日本油脂(株)製)を1重量%添加混合し、篩過により30〜200メッシュに整粒してマイクロスフェア(収率約85%)を得る。
比較例1〜4
実施例1において、カルボキシメチルデキストラン粉末および[2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン粉末を加える代わりに、その両粉末の合計の重量(2.4kg)の乳糖粉末(比較例1)、平均分子量50万の[2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン粉末(比較例2)、平均分子量100万のカルボキシメチルデキストラン粉末(比較例3)、またはコーンスターチ粉末(比較例4)を加えること以外は、それぞれ同様の手順により調製し、マイクロスフェアーを得た。
また、実施例2〜4についても同様に、アニオン性親水性高分子およびカチオン性親水性高分子の組み合わせに代えて、乳糖粉末、平均分子量50万の[2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン粉末、平均分子量100万のカルボキシメチルデキストラン粉末、またはコーンスターチ粉末を用いたマイクロスフェアーを比較例として調製した。
試験例1
薬物の試験管内における溶出性試験
日本薬局方XIV・一般試験法(pH1.2、37℃)に従って実施例1および比較例1〜3で得られたマイクロスフェアーからの薬剤(TDS)の溶出性を試験した。図1に、実施例1および比較例1〜3のマイクロスフェアーからの薬物の溶出率を示す。
図1に示された結果から、実施例1のマイクロスフェアーからの薬物の溶出速度は、比較例1のマイクロスフェアー(乳糖粉末を用いて調製したマイクロスフェアー)、比較例2のマイクロスフェアー([2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン粉末を単独で用いて調製したマイクロスフェアー)および比較例3のマイクロスフェアー(カルボキシ
メチルデキストラン粉末を単独で用いて調製したマイクロスフェアー)のいずれよりも遅いことが明らかになった。
またデータは示されていないが、同様に、実施例2〜4で得られたマイクロスフェアーも、それぞれ対応する比較例のマイクロスフェアー(乳糖粉末を用いたマイクロスフェアー、[2−(ジエチルアミノ)エチル]デキストラン粉末を単独で用いたマイクロスフェアー、カルボキシメチルデキストラン粉末を単独で用いたマイクロスフェアー)よりも、薬剤の溶出速度が遅いことがわかった。これらの結果から、本発明のマイクロスフェアーに含まれる薬物は、持続放出型の溶出曲線を示すことがわかる。
試験例2
消化管内における付着貯留性試験
24時間絶食させたラット(体重400〜500g、12週令)それぞれに、実施例1〜4で得られたマイクロスフェアー、または比較例4で得られたマイクロスフェアー(コーンスターチ粉末を用いて調製)を、100mg/kgの投与量で水0.2mlとともに、ポリエチレン胃ゾンデを用いて経口投与した。投与後1時間後および3時間後に開腹して胃および腸内におけるマイクロスフェアーの存在状態を観察した。
その結果、実施例1〜4のマイクロスフェアーは、投与1時間後には、全投与量に対するほぼ80%程度が胃内に付着貯留しており、主に胃表面の線状部位に分布していた。投与3時間後には投与したマイクロスフェアーの大部分が小腸下部に移行していた。
一方、比較例4のマイクロスフェアーは、投与1時間後には、全投与量に対する25%が胃内に付着貯留していたが、半分量は小腸中位部に移行していた。投与3時間後には投与したマイクロスフェアーの大部分が小腸下部に移行しており、小腸を通過していたマイクロスフェアーも若干量あった。
試験例3
経口投与後の血中濃度の測定
実施例1で得られたマイクロスフェアー、比較例1〜3で得られたマイクロスフェアー、またはTDSの水溶液を、TDSとして一匹あたり1mgの投与量で水0.2mlとともに、それぞれの試料につき3匹の24時間絶食させたラット(体重400〜500g、12週令、n=3)にポリエチレン胃ゾンデを用いて経口投与した。投与後0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、および6時間後に尾静脈より経時的に血液をサンプリングして、TDSの血中濃度(μg/ml)を測定した。その測定結果から、それぞれの試料に関して、TDSの最大血中濃度、最大血中濃度到達時間、血中濃度時間曲線下面積、平均貯留時間を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2005104840
表1に示された結果から、実施例1で得られたマイクロスフェアーを投与した場合は、比較例1〜3で得られたマイクロスフェアーまたはTDS水溶液を投与した場合よりも、TDSの平均貯留時間が長く、TDSの血中濃度時間曲線下面積の値が高いことがわかり、TDSが持続的に吸収されていることがわかる。このことは本発明のマイクロスフェアーが消化管内での付着残留性が高いことを示す。
本発明のマイクロスフェアーを用いて、消化管内で吸収させたい薬物の有効な製剤を提供することができる。すなわち、消化管内での滞留時間が長く、薬物を消化管中で徐々に吸収させる製剤を提供することができる。
日本薬局方XIV・一般試験法(pH1.2、37℃)に従って、実施例1および比較例1〜3で得られたマイクロスフェアーからの薬剤(チアミンダイサルファイド)の溶出性を試験した結果である。

Claims (6)

  1. アニオン性親水性高分子の粉末、カチオン性親水性高分子の粉末、疎水性基剤、および薬効成分を含む消化管粘膜付着性のマイクロスフェアー。
  2. 前記アニオン性親水性高分子が、カルボキシル基および/または硫酸基を含有する多糖、ならびにカルボキシル基および/または硫酸基を含有する合成高分子からなる群から選ばれる、一種または複数種の高分子であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロスフェアー。
  3. 前記カチオン性親水性高分子が、カチオン性の多糖、ポリペプタイドおよび合成高分子からなる群から選ばれる、一種または複数種の高分子であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロスフェアー。
  4. 前記疎水性基剤が、セルロース誘導体、アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体、ビニルアセテート系重合体、脂質、炭化水素類、脂肪酸およびその塩、ならびに高級アルコールからなる群から選ばれる一種または複数種の基剤であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロスフェアー。
  5. 前記アニオン性親水性高分子の粉末およびカチオン性親水性高分子の粉末は、それぞれが、いずれも平均粒径200μm以下の粉末であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロスフェアー。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロスフェアーを含む医薬品製剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018002513A (ja) * 2016-06-29 2018-01-11 Dic株式会社 無水アルカリ金属硫化物の製造方法

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