前記したように、従来のイオン注入装置では、ウェーハを真空槽に導入する前にノッチが正しい方向を向いているかどうかを確認している。しかしながら、真空槽の手前までのウェーハが正しく方向決めされていても、プラテンに設置される際にずれが生じる可能性がある。前記したように、プラテンには回転機構が設けられているが、設置時にノッチのずれを検出するようにしなければ、そのずれを補正するのは不可能である。
したがって、イオン注入処理を精度良く行うには、プラテンにウェーハを設置した後にノッチの方向を検出するのが望ましい。
また、前記特許文献1に開示されたようなノッチ検出の手法を真空槽内で実行する場合、プラテンの周囲の部材がカメラの視野に入ったり、撮像領域の一部に影が生じるなどすると、エッジ抽出や画像の明暗の抽出結果にノイズが混入し、ノッチを正しく検出できなくなるおそれがある。また、ウェーハ本体に比べてノッチは微小なものであるから、ウェーハ全体をカメラの視野に含めると、画像上のノッチはきわめて小さくなる。このため、ノッチの位置を高い精度で検出するのは困難である。
この発明は上記問題に着目してなされたもので、真空槽内のプラテンにウェーハを設置した後にそのノッチが正確な方向からどれだけずれているかを検出することにより、イオン注入処理直前にウェーハの方向を精度良く調整し、高精度のイオン注入処理を行えるようにすることを目的とする。
また、この発明では、前記ノッチを正確な方向に合わせるのに必要なプラテンの回転角度(この明細書では、この角度を「補正角度」という。)を精度良く求め、ウェーハの方向調整を簡単かつ精度良く行うことを目的とする。
また、この発明は、ノッチの置かれるべき方向が検出に適さない場合でも、精度の良い検出を実行できるようにして、ウェーハの方向調整を精度良く行うことを目的とする。
さらに、この発明は、ノッチについて十分な解像度を持つ画像が生成できるように撮像手段の視野を調整することにより、より高い精度でノッチの検出処理を実行し、ウェーハの方向調整をより精度良く行うことを目的とする。
この発明にかかるノッチのずれ補正のための補正角度検出方法および真空槽における半導体ウェーハの方向調整方法は、いずれも、イオン注入装置の真空槽に導入された半導体ウェーハに対して実施されるものである。この発明にかかる補正角度検出方法は、真空槽内のプラテンに保持された半導体ウェーハを撮像する第1ステップと、前記撮像により得られた画像を処理して、半導体ウェーハのノッチの位置を検出する第2ステップと、前記第2ステップの処理結果に基づき、所定の基準点から見たノッチの方向を示す角度を求める第3ステップと、前記第3ステップで得られた角度と、あらかじめ設定された基準方向を示す基準角度との差を求めることにより、前記基準方向にノッチを合わせるのに必要な補正角度を検出する第4ステップとを、実行することを特徴とする。
上記方法において、第1ステップでは、たとえば真空槽の上方に窓部を設け、この窓部を介してプラテン上のウェーハを撮像することができる。この場合の撮像手段の視野は、ウェーハ全体を含むように設定することができるが、これに限らず、後記するように、ウェーハの中心部と周縁部の一部とが含まれるようにしてもよい。
第2ステップでは、たとえば、前記撮像により得られた画像中に含まれるエッジ(輪郭線)を抽出し、この抽出により得られたエッジ画像において、ノッチのモデルに相当する略V字状のパターンを走査して、画像上のノッチを抽出する。また、前記エッジ画像中の各エッジ画素につき、そのエッジの向き(濃度勾配の方向に直交する方向)を求め、隣接のエッジ画素から向きが大きく変化した画素を抽出することにより、切り込みの始端位置を抽出することもできる。
また、下記の特許文献2に記載された方法によれば、エッジ抽出画像の中から円弧を構成する点を抽出することができる。したがって、ウェーハの円弧状のエッジを構成する点を抽出した後にこれらの点を消去し、残されたエッジの中からノッチの輪郭に相当するものを抽出するようにしてもよい。なお、いずれの方法でノッチを検出する場合にも、最終的なノッチの位置は、V字パターンの重心など、所定の代表点の座標として検出するのが望ましい。
特開2002−140713号 公報 (段落[0034]〜[0042] 図3〜5参照。)
第3ステップでは、画像上の所定の点を基準点として、この基準点から前記第2ステップで求められたノッチの検出位置に向かうベクトルを設定し、このベクトルの示す方向をノッチの方向として認識することができる。また、このノッチの方向は、前記基準点を始点として所定方向(たとえば水平方向)に向かうベクトルに対する角度として表すことができる。
なお、前記基準点は、画像上のウェーハの中心点であるのが望ましい。この発明にかかる半導体ウェーハは、イオン注入の設計データに適した方向に向けて設置されるべきものであるが、そのように設置するには、ウェーハの中心点を基準とした相対的な角度によりノッチの方向を表すのが望ましいからである。
第4ステップにおいて、「基準方向」とは、前記プラテン上のウェーハにおいて、前記基準点から見てノッチがあるべき方向と考えることができる。すなわち、この基準方向を示す基準角度も、上記ノッチの方向と同様の方法で表すことができる。
第4ステップで求められるノッチの方向を示す角度と基準角度との差は、基準方向に対するノッチのずれ量であると考えることができる。したがって、ウェーハの中心点を軸にして、前記ずれ量分だけウェーハを回転させることにより、ノッチを基準方向に合わせることが可能となる。
ここで、実際のウェーハはプラテンの中心点を軸として回転することになるから、前記ノッチのずれを補正するには、ウェーハの中心点がプラテンの中心点に正しく位置合わせされている必要がある、と考えることができる。しかしながら、この発明によれば、画像上のウェーハの中心点を前記基準点とした場合には、ウェーハの中心点とプラテンの中心点との位置関係にかかわらず、基準角度とノッチの方向を示す角度との差を、基準方向にノッチを合わせるのに必要なプラテンの回転角度(補正角度)とすることができる。以下、その根拠について述べる。
図10は、ウェーハを撮像して得られた画像におけるノッチの方向と基準方向との関係を模式的に示す。
図中のOはウェーハの中心点、Rはプラテンの中心点であり、この例では、両者は一致しているものとしている。また、処理対象のウェーハの輪郭線を円Wとして表すとともに、画像上で検出されたノッチの位置を点N、正しいノッチの位置を点Tとして、それぞれ示す。また、プラテンおよびウェーハは、図中の矢印Fの方向(反時計回り)を正方向として回転するものとする(つぎの図11でも同じ。)。
上記において、ウェーハの中心点Oを基準点とすると、この点Oから点Nに向かうベクトルをノッチの方向と考えることができる。同様に、点Oから点Tに向かうベクトルを基準方向とすることができる。そこで、この例では、中心点Oからx軸の正方向に向けて線分OQ(Qはウェーハの輪郭線上の点)を設定し、この線分OQから反時計回りに見た角度により、ノッチの方向を示す角度θN(以下、「ノッチ角度θN」という。)や基準方向を示す角度θTを表している。すなわち、θN=∠NOQであり、θT=∠TOQである。
したがって、この例の場合には、基準角度θTとノッチ角度θNとの差θ(∠NOT)がノッチのずれ量となる。また、この例では、ウェーハの中心点Oはプラテンの中心点Rに一致しているから、中心点Rを軸に角度θだけウェーハを回転させることにより、前記点Nを点Tの位置に合わせることができる。よって、前記ノッチ角度θNと基準角度θTとの差分演算による差の値は、ノッチを基準方向に合わせるための補正角度に相当することになる。
つぎに、図11は、ウェーハの中心点Oがプラテンの中心点Rから位置ずれしている例を示す。図中、Nは、前図と同様に、画像上で検出されたノッチの位置を示すもので、∠NOQの大きさθNがノッチ角度として求められる。
この例でも、前記中心点Oに対し基準角度θTに対応する方向にノッチを位置合わせしなければならない点は、図10の例と同様である。すなわち、中心点Oに対し、基準角度θTとノッチ角度θNとの差θだけノッチを移動させる必要がある。
図11の例では、点Rを軸にして、ウェーハを前記角度θだけ正方向に回転させるものと仮定している。図中、点線で示す円WCは、この角度θ回転した後のウェーハの輪郭線である。また、この回転により、点Oは点OCに、点Nは点NCに、それぞれ移動する。また、回転前のウェーハにおいて、前記中心点R,Oを結ぶ直線とウェーハの輪郭線Wとの交点をPとすると、前記ウェーハの回転により、この点Pは、図中の点PCに移動する。
上記によれば、回転後の点OC,PC,NCは、回転前の点O,P,Nと同じ関係をもって位置するはずであるから、
∠PcOcNc=∠PON ・・・(1) となる。
また、中心点Rを基準にx軸の正方向に向けて線分RQ´を設定すると、
∠PcRQ´=∠PRQ´+θ ・・・(2) となる。
さらに、点Ocからx軸の正方向に向かう線分OcQc(Qcはウェーハ上の点)を設定すると、線分OQ、線分OcQc、線分RQ´は、いずれもx軸に平行であるから、同位角の関係により、
∠POQ=∠PRQ´ ∠PCOCQC=∠PCRQ´ ・・・(3) となる。
よって、(2)(3)式により下記の関係が成り立つ。
∠PCOCQC=∠POQ+θ ・・・(4)
さらに、上記の(4)式から前記(1)式を差し引くと、
∠NCOCQC=∠NOQ+θ
=θN+θ ・・・(5) となる。
したがって、∠NCOCQC=θTであるから、前記点OCから見た点Ncは、図10の点Oから見た点Tと同じ方向に位置すると考えることができる。
上記によれば、ウェーハの中心点Oが中心点Rからずれている場合にも、プラテンの中心点Rを軸にしてウェーハを角度θだけ回転させることにより、ノッチを基準方向θTに対応する位置に移動させることができる。すなわち、基準角度θTとノッチ角度θNとの差θを補正角度としてプラテンを回転させることにより、ノッチを基準方向に正しく合わせることができるのである。
したがって、前記基準点を画像上のウェーハの中心点とすれば、前記第1〜4の各ステップにより求められた補正角度θだけプラテンを回転させることにより、ウェーハの中心点とプラテンの中心点との位置関係を考慮することなく、ウェーハの方向を適正な方向に調整することができる。ただし、ウェーハの中心点とプラテンの中心点との距離が常に誤差の範囲であり、かつ撮像手段の視野が固定されているならば、あらかじめウェーハの中心点の座標を求めて基準点として登録し、第2ステップの撮像の後に、登録された基準点に基づき第3のステップを実行するようにしてもよい。
つぎに、この発明にかかる半導体ウェーハの方向調整方法では、真空槽内のプラテンに対し、イオン注入対象の半導体ウェーハを、そのノッチがあらかじめ定められた基準方向を向くようにして設置する第1ステップと、前記プラテンに保持された半導体ウェーハを撮像する第2ステップと、前記撮像により得られた画像を処理して、半導体ウェーハのノッチの位置を検出する第3ステップと、前記第3ステップの処理結果に基づき、所定の基準点から見たノッチの方向を示す角度を求める第4ステップと、前記第4ステップで得られた角度と前記基準方向を示す基準角度との差を求めることにより、前記基準方向にノッチを合わせるのに必要な補正角度を検出する第5ステップと、前記第5ステップで検出された補正角度だけプラテンを回転させて、前記半導体ウェーハの方向を調整する第6ステップとを、実行するようにしている。
上記において、第1ステップは、イオン注入処理対象のウェーハを真空槽の外から内部に搬入し、プラテンに設置する処理に相当するもので、ロボットアームなどにより行うことができる。第2〜第5の各ステップは、それぞれ前記補正角度検出方法にかかる第1〜第4のステップに対応するもので、同様の処理を実行することができる。
また、この方法でも、前記基準点は画像上のウェーハの中心点とするのが望ましい。ただし、撮像手段の視野が固定されており、かつウェーハの中心点とプラテンとの中心点との距離が許容できる誤差の範囲であるならば、あらかじめプラテンの中心点の座標を抽出し、これを基準点として使用してもよい。
第6ステップでは、第5ステップで検出された補正角度だけプラテンを回転させることにより、半導体ウェーハの方向を適正な方向に調整することができる。なお、前記図10,11の例のように、基準方向θTやノッチ角度θNを計測する方向をプラテンの回転の正方向に合わせている場合には、第5ステップでは、基準角度θTからノッチ角度θNを差し引くようにするのが望ましい。この場合、得られた補正角度θがプラスであれば、プラテンを正方向に回転し、補正角度θがマイナスであれば、プラテンを負の方向に回転させることができる。
好ましい態様にかかる半導体ウェーハの方向調整方法では、前記基準方向を、前記半導体ウェーハの中心点から見たノッチのあるべき方向とする。そして、第3ステップでは、画像上の半導体ウェーハについて、前記ノッチの位置を示す代表点の座標とともに半導体ウェーハの中心点の座標を検出する。また、第4ステップでは、前記第3ステップで検出された半導体ウェーハの中心点から見たノッチの方向を示す角度を求める。
上記態様によれば、ウェーハの中心点がプラテンの中心点からずれている場合でも、前記図11に示した原理に基づき、第5ステップで検出された補正角度θだけプラテンを回転させることにより、ウェーハの方向を適正な方向に調整することができる。よって、ウェーハの中心点とプラテンの中心点との位置ずれを考慮することなく、簡単に、また常に同じ内容の制御により、ウェーハの方向調整を行うことができる。
なお、第2ステップで半導体ウェーハの中心点の座標を検出する際には、たとえば、前出の特許文献1の段落[0008]に開示された方法を適用することができる。ただし、下記の特許文献3に記載された方法によれば、後記するようにウェーハの一部分を撮像対象とする場合にも、その中心点を精度良く求めることができる。
国際公開特許 WO99/52072号 パンフレット
さらに、この発明にかかる半導体ウェーハの方向調整方法には、つぎの2つの態様を設定することができる。
まず一の態様では、前記第1ステップの前または第1ステップと第2ステップとの間に、前記基準方向が所定の適正領域に含まれるかどうかを判別するステップを実行する。また、前記基準方向が適正領域外であると判別されたとき、第2ステップにおいて、前記適正領域と基準方向の角度差分だけプラテンを回転させてから撮像を実行する。
上記態様において、適正領域は、撮像手段の視野に含まれる領域であって、ノッチの検出を精度良く行うことが可能な領域と考えることができる。たとえば、照明状態が良好な領域、周辺部材などの邪魔物が含まれない領域などを適正領域と考えることができる。
上記の判別のステップでは、たとえば、ウェーハの中心点Oがプラテンの中心点Rに一致すると仮定して、プラテンの中心点Rから見た適正領域の角度範囲に基準角度が含まれるかどうかを判別することができる。より好ましくは、前記適正領域の両側の境界をノッチの考えられ得るずれ量の分だけ狭めて、この狭められた境界が示す角度範囲に基準角度が含まれるかどうかを判別するとよい。なお、基準方向または基準角度は、あらかじめ製造するウェーハの種毎に設定されていると考えられるので、その設定データから取得することができる。
基準方向が適正領域外であると判別された場合の第2ステップでは、プラテンの中心点から適正領域の所定の代表点(たとえば、領域の中央位置)を見た方向を表す角度と前記基準角度θTとの差αを求め、この角度αだけプラテンを回転させることができる。このようにすれば、ノッチが基準方向から極端にずれていない限り、プラテンの回転によってノッチを適正領域に入れることができる。よって、この回転処理後のウェーハを撮像し、第3ステップおよび第4ステップを実行することにより、適正領域内に移動したノッチを精度良く検出し、その検出位置に対応する角度データを求めることができる。
ノッチを適正領域に入れるためにプラテンを回転させた場合、第5ステップで検出されるずれ量は、基準方向に対するノッチの本来のずれ量θに前記プラテンの回転角度αを加味したものとなる。すなわち第5ステップでは、角度(α+θ)のずれが検出される。また、回転前のノッチが基準方向からずれていない場合でも、第5ステップでは、角度αのずれが検出されることになる。
よって、第6ステップでは、検出されたずれの分だけプラテンを回転させることにより、ノッチを基準方向に合わせることができる。
上記態様によれば、ノッチがその検出が困難な領域に定められる場合でも、ノッチが適正領域に入るようにプラテンを回転させてから検出処理を行い、その回転角度が加味された補正量を得ることができる。よって、ノッチの基準方向がどのように定められていても、その基準方向にノッチを合わせるのに必要な補正角度を精度良く検出し、ウェーハの方向を正確に調整することができる。
なお、上記態様において、ノッチの方向が正しいかどうかの判別を行う必要がある場合には、基準角度を前記検出前の回転角度αにより補正してからずれ量を求めるとよい。ただし、この場合の第6ステップでは、検出された補正角度を前記角度αにより補正してからプラテンを回転させる必要がある。これは、つぎの態様でも同様である。
つぎに、他の好ましい態様では、プラテン上の半導体ウェーハの中心部と端縁の一部とを含む領域が撮像されるように、あらかじめ撮像手段の視野が調整される。そして、この視野に含まれる所定大きさの領域を適正領域として、前記第1ステップの前または第1ステップと第2ステップとの間に、前記基準方向が適正領域に含まれるかどうかを判別するステップを実行する。さらに、この判別処理において、前記基準方向が適正領域外であると判別されると、第2ステップにおいて、前記適正領域と基準方向の角度差分だけプラテンを回転させてから撮像を実行する。
上記態様では、半導体ウェーハの全体画像ではなく、中心部および端縁の一部を含む部分画像が生成されることになるから、ノッチの部分について、十分な解像度を持つ画像を得ることができる。また基準方向が適正領域に含まれるかどうかの判別処理や、基準方向が適正領域に含まれないと判別された場合の第2ステップの処理は、前記第2の態様におけるのと同様である。したがって、撮像手段の視野内の適正領域外の方向が基準方向となっている場合には、プラテンを回転させることにより、適正領域にノッチを入れてから撮像し、回転角度が加味された補正角度を得ることができる。
なお、適正領域は、視野全体とすることもできるが、ノッチが視野の端縁近傍に現れることがないように、視野の両側縁から所定距離だけ狭められた範囲に設定されるのが望ましい。
上記の態様によれば、ノッチについて、十分な解像度を持つ画像を生成することが可能となるから、その位置を高精度で検出することができる。よって、補正角度をより精度良く求めることが可能となり、ウェーハの方向調整の精度を向上することができる。
つぎに、この発明にかかるノッチのずれ補正のための補正角度検出装置は、真空槽内のプラテンに保持された半導体ウェーハを撮像して得られた画像を入力する画像入力手段;前記画像入力手段により入力された画像を処理して、半導体ウェーハのノッチの位置を検出する画像処理手段;前記画像処理手段の処理結果に基づき、所定の基準点から見たノッチの方向を表す角度データを求める角度データ算出手段;前記ノッチが位置すべき基準方向を示す基準角度を取得し、この基準角度と前記角度算出手段により求められた角度との差を求める差分演算手段;前記差分演算手段により算出された角度差を、前記基準方向にノッチを合わせるのに必要な補正角度として出力する出力手段;の各手段を具備する。
上記において、画像入力手段は、ウェーハを撮像するカメラからの画像信号を受け付けるインターフェース回路や、処理用のディジタル画像を生成するためのA/D変換回路などから構成することができる。画像処理手段、角度算出手段、差分演算手段は、それぞれその手段による処理のためのプログラムが組み込まれたコンピュータにより設定することができる。これらの手段は、1つのコンピュータにより実現することができる。また、画像処理手段は、ASIC(特定用途向けIC)または画像処理専用のプロセッサにより構成することができる。また、画像処理手段のうちの一部の処理を専用の回路で行い、残りの処理は、角度算出手段や差分演算手段が設定されたのと同じコンピュータで行うようにしてもよい。
出力手段は、前記補正角度をディジタル信号またはアナログ信号として出力するためのインターフェース回路として構成することができる。なお、この補正角度検出装置はイオン注入装置に組み込まれるものであるから、前記出力手段による出力の対象は、イオン注入装置の主制御部、またはプラテンの駆動部とすることができる。また、差分演算手段は、イオン注入処理装置の主制御部から基準角度を取得することができる。
さらに、上記の補正角度検出装置には、前記画像入力手段により取り込まれた入力画像や、その画像の各画素に対する画像処理の結果を表す処理結果画像(たとえばエッジ抽出により生成されたエッジ画像など)を保存するための画像メモリが設けられるのが望ましい。
上記構成の装置によれば、前記した補正角度検出方法を実行することが可能となるから、イオン注入処理の直前の半導体ウェーハの向きを調整するのに必要なプラテンの回転角度を、精度良く求めることができる。
つぎに、この発明にかかる半導体ウェーハの方向調整装置は、真空槽内に設置されたプラテンに、イオン注入対象の半導体ウェーハを、そのノッチがあらかじめ定められた基準方向を向くようにして設置する半導体ウェーハ設置手段;前記プラテンに保持された半導体ウェーハを撮像するための撮像手段;前記撮像手段により得られた画像を処理して、半導体ウェーハのノッチの位置を検出する画像処理手段;前記画像処理手段の処理結果に基づき、所定の基準点から見たノッチの方向を表す角度を求める角度算出手段;前記基準方向を示す基準角度と前記角度算出手段により求められた角度との差を求める差分演算手段;前記差分演算手段により求められた差の値に相当する角度だけプラテンを回転させて、前記半導体ウェーハの方向を調整する方向調整手段;の各手段を具備する。
半導体ウェーハ設置手段は、前記したロボットアームなどにより構成することができる。撮像手段は、たとえばシャッタカメラであって、真空槽の適所に形成された窓部に対応づけて設置することができる。
画像処理手段、角度算出手段、差分演算手段は、前記した補正角度検出装置におけるものと同様の構成にすることができる。方向調整手段は、差分演算手段により求められた差の値に相当する角度(すなわち補正角度)を入力して、プラテンのモータに対する制御を行うもので、制御のためのコンピュータを含むものとすることもできる。
上記構成によれば、前記した半導体ウェーハの方向調整方法を実行して、プラテンに設置された後のウェーハの方向を精度良く調整することができる。
なお、この半導体ウェーハの方向調整装置には、各種ウェーハについての前記基準角度が登録されたメモリが設けられるのが望ましい。ただし、基準角度は、上位のシステムなどからの入力を受け付けることによって、取得することもできる。
上記装置の好ましい態様では、前記基準方向は、前記ウェーハの中心点から見たノッチのあるべき方向として設定される。また、画像処理手段は、前記画像入力手段により入力された画像において、前記ノッチの位置を示す代表点の座標とともに半導体ウェーハの中心点の座標を検出する。また、角度算出手段は、前記画像処理手段により検出された中心点を基準点として、前記角度を算出するように構成される。
上記の構成によれば、ウェーハの中心点とプラテンの中心点とが位置合わせされているか否かに関わらず、常に差分演算手段により得られた補正角度に基づき、ウェーハの方向を適正な方向に調整することができる。
さらに、上記の装置には、撮像手段による撮像が開始されるより前に、前記基準方向が所定の適正領域に含まれるかどうかを判別する判別手段と、前記判別手段により基準方向が適正領域外であると判別されたとき、前記撮像手段による撮像に先立ち、前記半導体ウェーハが設置されたプラテンを前記適正領域と基準方向の角度差分だけ回転させる回転調整手段とを設けることができる。
上記において、判別手段は、基準方向が適正領域に含まれるかどうかを判別するためのプログラムが組み込まれたコンピュータにより構成することができる。この構成によれば、前記半導体ウェーハの方向調整方法にかかる一の態様を実施することができるから、ノッチが検出に適さない場所に置かれる場合でも、ウェーハの方向調整を精度良く行うことができる。
さらに、前記撮像手段は、プラテン上の半導体ウェーハの中心部と端縁の一部とを含む領域を撮像するように調整することができる。この場合の判別手段は、前記撮像手段の視野に含まれる所定大きさの領域を前記適正領域として判別処理を実行するように設定される。
この構成によれば、ノッチの部分について、十分な解像度を持つ画像を生成することができるから、ノッチの位置を精度良く求めることができる。もって補正角度をより正確に求め、高精度の方向調整を行うことが可能となる。
この発明によれば、イオン注入対象のウェーハを真空槽のプラテンに設置した際に、基準方向に対するノッチの回転ずれ量を検出するので、ウェーハの方向を正しく調整した上でイオン注入処理を行うことが可能となり、イオン注入処理の精度を保証することができる。
また、この発明では、ウェーハの中心点がプラテンの中心点から位置ずれしている場合にも、画像上のウェーハの中心点を基準点として求めた補正角度により、簡単かつ精度良く、ウェーハの方向を調整することができる。
さらに、この発明では、ノッチが検出に適していない領域に置かれる場合でも、補正角度を精度良く求めてウェーハの方向を調整することが可能となる。また、ノッチについて十分な解像度を確保できるように撮像手段の視野を絞り込み、この視野内において、精度の高い検出処理を実行することも可能になる。よって、ウェーハの方向調整を高精度で行うことが可能となるから、ウェーハ注入処理の精度を向上することができる。
図1は、この発明が適用されたイオン注入装置の電気構成を示す。
このイオン注入装置は、複数枚のウェーハを順に真空槽に導いてイオン注入処理を施すもので、コンピュータによる主制御装置1に、メモリ部2、入力部3、モニタ装置4、ウェーハ搬出入処理装置5、プラテン制御装置6、イオン発生処理装置7、真空槽制御装置8、安全管理装置9、および検査装置10などが接続されて成る。
前記メモリ部2は、たとえばハードディスク装置であって、主制御装置1の処理に必要なプログラムのほか、処理対象のウェーハの種類や各種設定データ(ウェーハをプラテンに設置する際のノッチの方向を示すデータ、イオンの注入角度、ウェーハの向き検査に使用する基準データなど)の保存に使用される。入力部3は、キーボードなどであって、前記メモリ部2へのデータ保存作業やコマンドなどの入力に用いられる。モニタ装置4は、前記設定データの内容や処理結果(検査装置10による検査結果や、イオン注入処理が適正に行われたかどうかの情報など)を表示するほか、後記するカメラ110により得られたウェーハの画像やそのエッジ画像を表示できるように設定される。
ウェーハ搬出入処理装置5は、複数枚のウェーハを収容可能なウェーハカセットや、ウェーハ搬送用のロボットアーム、ロボットアームの駆動機構などにより構成される。プラテン制御装置6は、後記するプラテン22のモータ23やアーム部24などの動作を制御するためのものである。イオン発生処理装置7は、イオンビームの発生源、質量分析機、高電圧発生回路、イオンビームの加速器、ビーム収束のためのレンズ、ビーム走査のための回路などにより構成される。真空槽制御装置8には、真空槽のドアの開閉装置、真空ポンプおよびその駆動部、真空度の計測部などが含められる。
安全管理装置9は、異常発生時に各種装置を緊急停止させるためのもので、緊急停止スイッチ、インターロック部、人検知用のセンサ、上記した各装置における異常検出用のセンサなどを具備する。なお、この安全管理装置9には、独立の制御用コンピュータが設けられており、異常検知時には、主制御装置1との通信により前記の緊急停止処理を実行したり、装置の主電源を遮断するようにしている。
前記検査装置10は、真空槽内のプラテンに設置されたウェーハが正しい向きに設置されたかどうかを判別するためのもので、安全管理装置9と同様に、独立の制御用コンピュータを具備し、主制御装置1との通信により処理を実行する。また、この検査装置10では、向きが正しくないと判別した場合には、その向きを正しくするのに必要な補正角度(プラテンの回転角度)を算出して、主制御装置に出力するようにしている。
図2は、検査装置10の詳細な構成を示す。この検査装置10は基板100を本体とするもので、イオン注入装置の機体適所に取り付けられる。この基板100には、CPU102、ROM103、RAM104から成る制御部101のほか、画像入力部105、画像メモリ106、タイミング制御部107、エッジ抽出部108、通信インターフェース109(図ではI/Fと記載。)などが搭載される。
さらに、この実施例の検査装置10は、周辺機器として、CCDを具備するシャッタカメラ110(以下、単に「カメラ110」という。)を具備する。前記画像入力部105は、このカメラ110に接続されるもので、カメラ用のインターフェース回路や、濃淡画像をディジタル変換するためのA/D変換回路などを含む。エッジ抽出部108は、シフトレジスタや微分回路などを具備する専用ICであって、画像入力部105により入力され、変換された各画素データを順に取り込みつつ、エッジ抽出処理を実行する。なお、この実施例のエッジ抽出処理では、周囲近傍との濃度差が所定値以上となる画素を抽出することにより、ウェーハの周縁部について、数画素分の幅を持つエッジを抽出することができる。
画像メモリ106は、前記画像入力部105により変換された後のディジタル画像や、エッジ抽出部108のエッジ抽出処理により生成されたエッジ画像を個別に保存するように設定される。通信インターフェース109は、前記主制御装置1との通信を行うためのもので、主制御装置1から検査開始コマンドを受信したり、主制御装置1に検査結果や補正量などのデータ(詳細は後記する。)を返送するために使用される。また、この通信インターフェース109は、画像メモリ106に保存された画像を送信することもできる。
CPU102は、主制御装置1から検査開始のコマンドを受けると、ROM103内のプログラムに基づいて後記する検査手順を実行し、ウェーハの向きの適否の検査や補正角度の算出処理を行う。なお、この検査装置10のROM103には、真空槽内のプラテンの回転動作をチェックするためのプログラムも組み込まれている。このプラテンの動作チェックは、イオン注入処理の開始前に実施されるもので、プラテンに設定された2つのマーク(詳細は後記する。)を用いて行われる。
図3は、真空槽の内部構成を前記カメラ110の設置例とともに示す。
図示例の真空槽21では、床板21bの中央に支持台23が設けられ、その上面にアーム部24およびモータ25を介して円盤状のプラテン22が取り付けられる。なお、処理対象のウェーハ11は、静電気によりプラテン22の上面に固定支持される。
アーム部24は、ジャッキ部24aや図示しない関節部を具備するもので、通常はプラテン22の面を水平状態で支持し、イオン注入処理時に、プラテン22の面を垂直に起立させる。なお、支持台23には中空の制御室(図示せず。)が設けられ、その内部に、前記モータ25やアーム部24の駆動回路などが収容される。
前記カメラ110は、真空槽21の天井裏に、プラテン22の真上に位置するように設置される。このカメラ110は、光軸を鉛直方向に向け、プラテン22の周縁よりやや外側までの範囲を撮像するように、視野範囲が調整される。また、このカメラ110は、ズームアップ機能を具備するもので、検査対象のウェーハ11の種類によっては、光軸の方向や倍率を調整して、ウェーハ11の一部分のみを撮像するように視野を絞り込むことにより、通常よりも解像度の高い画像を生成するようにしている。
さらに、天井裏には、所定長さの2個の蛍光灯30,31が、カメラ110を中央に挟むようにして、奥行き方向(図の紙面に直交する方向)に平行に配備される。
前記真空槽21の天井板21aは不透明であるが、カメラ110および蛍光灯30,31の設置位置に対応する位置にのみ、透明ガラスが嵌め込まれた窓部が(図示せず。)が形成される。なお、これら窓部の周縁は、裏側から金属枠体26,27,28により補強されており、金属枠体26,27,28の上方にそれぞれカメラ110、蛍光灯30,31が配備される。
また、真空槽21の床板21bの上面には、蛍光灯30,31からの光を拡散反射させるために、全面にわたって微小凸部29が形成される。さらに、カメラ110側の窓部の大きさは、ウェーハ11からの鏡面反射光が窓外に逃げるように調整されている(図中の点線矢印を参照。)。これにより、検査時には、ウェーハ11の画像が暗く、背景部分が明るい画像が生成される。なお、照明の方法は上記に限らず、たとえば、床板21bを介しての透過照明を行うようにしてもよい。
前記プラテン22の上面には、図4(1)に示すように、中心部および周縁近傍の一箇所に、それぞれ同心円状のマークM1,M2が設けられる。これらのマークM1,M2は、印刷またはプラテン22の表面への刻印処理により形成されるもので、同心円の半径やその比率は、マーク毎に異なる値になるように設定されている。これらのマークM1,M2は、真空槽21へのウェーハ11の導入に先立ち、プラテン22が正しく回転しているかどうかを検査するために用いられる。
図4(2)は、プラテン22の回転に伴うマークM2の位置の変化を模式的に示す。図中のa1は、プラテン22が回転する前のマークM2の位置を、a2は、プラテン22が180°回転した後のマークM2の位置を、それぞれ示す。プラテン22が180°回転すれば、マークM2も180°回転した位置に動くはずであるから、a1とa2との中間に位置する点bは、前記中央のマークM1の位置に対応する、と考えることができる。
検査装置10は、カメラ110によりプラテン22を撮像し、上記図4(2)の原理に基づき回転動作の適否にかかる検査を実行する。この検査では、まず、静止した状態のプラテン22を撮影した後、さらに、プラテン22を90°回転させて撮影する処理を3サイクル実行する。すなわち、最初の撮影におけるプラテン22の回転角度を0°とすると、0°,90°,180°,270°の各回転角度に対応する画像が得られることになる。
検査装置10は、中央のマークM1については、4枚の画像の少なくとも1枚(たとえば回転角度0°のときの画像)について抽出処理を行い、マークM1の中心点の座標を算出する。一方、外側のマークM2については、前記4枚の画像すべてにおいて、それぞれ個別に抽出処理を行って、マークM2の中心点の座標を算出する。さらに、回転角度に180°の開きがある画像同士を組み合わせる(回転角度0°に対応する画像と180°に対応する画像、および回転角度90°に対応する画像と270°に対応する画像が組み合わせられることになる。)。そして、各組毎に、前記マークM2の中心点として抽出された2点(前記図5(2)の点a1,a2に相当する。)を結ぶ線分を設定し、この線分の中点の座標を前記マークM1の中心点と比較する。ここで前記線分の中点の座標とマークM1の中心点の座標との距離が所定の誤差の範囲内であれば、プラテン22は正常に回転していると判断されることになる。
なお、上記の検査では、前記カメラ110から入力した画像に対するパターンマッチング処理によって、各マークM1,M2を抽出した後、その中心点の座標を抽出するようにしている。
上記の検査において、プラテン22が正しく回転していると判断された場合には、ウェーハの向き検査において、プラテン22上のウェーハ11の向きが適正でないと判断されても、補正角度に基づき、ウェーハ11の向きを正しく調整することが可能となる。すなわち、プラテン22が正しく回転していることが確認されて初めて、ウェーハ11の方向を精度良く調整してイオン注入処理を行うことが可能となるのである。
イオン注入処理では、ウェーハのいずれの位置にイオンを打ち込むかによって、ウェーハの結晶軸の方位を変更する必要がある。すなわち、前記プラテン22上のウェーハ11におけるノッチの方向は、そのウェーハ11の設計データに基づき決定されることになる。この実施例のイオン注入装置では、ノッチのあるべき方向(基準方向)をウェーハ11の中心点から見た方向として規定している。そして、製造される予定のウェーハの種類毎に、あらかじめ上位のシステム(図示せず。)や入力部3から前記基準方向を示す基準角度を入力し、メモリ部2に登録するようにしている。
図5は、前記ノッチの方向およびその方向を示すノッチ角度の設定例を示す。図中のOは、ウェーハの中心点である。また、この実施例では、略V字状の切り欠きパターンの重心の座標をノッチの位置を示す代表点としている。図中のNは、抽出された代表点を示す。
この実施例では、中心点Oから点Nに向かうベクトルPNをノッチの方向とする。また、前記中心点Oからx軸の正方向に沿う方向にベクトルX0を設定し、このベクトルX0に対してベクトルPNがなす角度θNをノッチ角度とする。なお、この実施例のプラテン22は、反時計回りを正方向として回転するので、これに合わせてノッチ角度θNも反時計回りに計測される。
基準方向も、上記のベクトルPNと同様に、中心点Oからノッチの代表点があるべき座標位置に向かうベクトルとして表される。また、基準角度も、前記のベクトルがベクトルX0に対してなす角度として表される。
前記検査装置は、カメラ110により得た画像において、ウェーハ11の中心点とノッチの代表点Nの座標とを検出する。そして、これらの検出結果を用いて、図5の原理に基づきノッチ角度を算出する。さらに、検査対象のウェーハに対応する基準角度と算出したノッチ角度との差を求め、その値が所定の誤差範囲内にあるか否かによって、ウェーハの方向の適否を判断する。また、ここでウェーハの方向が正しくないと判断した場合には、前記基準角度とノッチ角度との差を、ノッチを基準方向に合わせるための補正角度として、主制御装置1に出力する。主制御装置1は、この補正角度の示す方向および角度に従ってプラテン22を回転させることにより、ウェーハの方向を調整し、しかる後にイオン注入処理を開始する。
さらに、この実施例では、所定種類のウェーハについて、前記したように、カメラ110の視野を絞り込んで撮像を行い、その画像を用いて検査を行うようにしている。また主制御装置1は、詳細は後記するが、検査対象のウェーハ11の基準方向が前記カメラ110の視野に含まれていない場合には、ノッチの撮像が可能になるようにプラテン22を回転してから検査装置10を作動させ、検査を行わせるようにしている。なお、主制御装置1は、プラテン制御装置6に回転の方向および回転角度を示す制御信号を出力することにより、目的とする方向および角度によるプラテン22の回転動作を実現させる。
図6は、前記視野が限定されたカメラ110により得られる画像の例である。この例では、検査対象のウェーハ11について、前記中心点Oやノッチの全体像N1を含む部分画像が生成されている。また、図中のI1,I2は、カメラ110の視野の両側縁に対応する。
以下、前記図6のように、カメラ110の視野を限定して検査を行うウェーハを例にして、一連の処理の流れを説明する。
図7は、前記イオン注入装置の主制御装置1において実行される処理手順を示す。なお、図中のSTはSTEP(ステップ)の略である。以下の説明でも、これに倣って、各ステップを「ST」と示す。また、図7の角度θや角度αは、いずれも正の値をとるものとする。
まず、処理開始時には、図示しない上位システムからの生産指示コマンドに待機する。この生産指示には、生産すべきウェーハの種類や生産枚数などが含まれている。生産指示コマンドを受けると、ST1からST2に進み、前記メモリ部2より、生産指示に対応するウェーハの処理に必要な設定データを読み出し、内部RAMなどにセットする。なお、この設定データには、前記した基準角度や、検査のためのデータが含まれる。
つぎに、ST3では、前記ウェーハ搬出入処理装置5を駆動して、ウェーハカセットから1枚目のウェーハ11を取り出し、真空槽21へと搬入する。つぎのST4では、前記ウェーハ11をプラテン22に設置する。なお、ST3およびST4では、ウェーハ11のノッチが前記基準角度データに対応する方向を向いた状態でプラテン22上に位置するように、ロボットアームの動きが制御される。
つぎのST5では、前記ウェーハ11のノッチを撮像することが可能であるかどうかを判断する。この判断は、カメラ110の視野の範囲を示す角度範囲とノッチの基準角度θTとを比較することにより行われる。なお、視野の範囲は、プラテンの中心点から見た視野の両側縁I1,I2(図6に示す。)の方向を示す角度δ1,δ2により表すことができる。すなわち、視野の両側縁に対し、それぞれプラテンの中心点から見た方向を示すベクトルを設定し、これらのベクトルを前記図5と同様の方法で角度に置き換える。そして、大きい方の角度を上限値δ1、小さい方の角度を下限値δ2とすることができる。
ノッチの代表点を精度良く検出するには、前記図6に示すように、視野の両側縁I1,I2から十分な距離を隔てた位置にノッチの画像を結像させるのが望ましい。そこで、ST5では、前記基準角度θTについて、δ2<θT<δ1であり、かつ前記(δ1−θT)および(θT−δ2)が、いずれも所定のしきい値を超えるときに、「YES」の判定を行う。この「YES」判定があれば、ST6に進み、前記ノッチの基準角度θTを検査装置に送信する。さらに、ST7では、前記検査装置10を用いて、ウェーハが正しい向きに設置されているかどうかを検査する。ここで、検査装置10は、後記する処理を実行し、その処理における最終の判断結果を主制御装置1に送信する。
検査装置10からウェーハの向きが正しいとする判断結果(「OK」フラグ)が送信されると、ST8が「YES」となってST19に進む。ST19では、前記プラテン制御装置6を駆動してプラテン22の面を垂直に起立させた後、イオン発生処理装置7を駆動し、設計データに基づく一連のイオン注入処理を実行する。
一方、検査装置10からウェーハ11の向きが不適であるとする判断結果(「NG」フラグ)が送信された場合、ST8が「NO」となってST9に進む。このST9では、前記NGフラグとともに、ウェーハの方向調整に必要な補正角度が送信されたかどうかをチェックする。ここで補正角度θが送信されていれば、ST9からST10に進み、その補正角度θ分だけプラテン22を回転させることにより、ウェーハ11の向きが正しくなるように調整する。なお、この補正角度θは、基準角度θTからノッチ角度θNを差し引いたものとして表される。この例では、θが正の値をとると想定しているので、ST10では、プラテンは正方向に回転することになる。
このようにして補正角度分だけプラテンを回転させることにより、ノッチが基準方向に合わせられる。この後は、ST19に進み、イオン注入処理を開始する。
つぎに、前記ST5の判定が「NO」の場合、すなわち、ノッチがカメラの視野内に適切に含まれないと判断されたときは、ST11に進み、前記ノッチをカメラの視野に入れるのに必要な回転角度α(以下、「調整角度α」という。)を算出する。このST11では、たとえば、前記δ1とδ2との平均値δ3を求め、さらに、この平均値δ3から基準角度θTを差し引いた値(δ3−θT)を調整角度αとする。
つぎのST12では、前記調整角度α分だけプラテン22を回転する。なお、この例では、αについても正の値をとると考えているので、ST12では、プラテン22を、正方向に回転させることになる。
つぎのST13では、前記ノッチの基準角度θTを前記調整角度αを加えた値に補正し、これを検査装置10に送信する。そして、ST14では、ウェーハの向き検査を開始する。この検査の手順はST7と同様であるが、前記調整角度αにより補正された基準角度θTにより、ノッチの方向の適否や補正角度の算出処理が行われることになる。この検査により「OK」フラグが送信されると、ST15が「YES」となってST16に進み、プラテンを前記角度αだけ負の方向に回転させる。これにより、ノッチは、検査前の位置に戻ることになる。
また、検査装置10より「NG」フラグと補正角度とが送信された場合には、ST15が「NO」、ST17が「YES」となって、ST18に進む。このST18では、前記調整角度αから補正角度θを差し引いた分だけプラテンを負の方向に回転させる。これにより、ノッチは、検査前の位置からプラテンの中心点Rを軸としてθ回転した位置に移動することになる。
このように、検査前にプラテンを回転させた場合には、検査後は、「OK」,「NG」のいずれの結果を得た場合にも、プラテンを負の方向に回転させ、しかる後にST19に進む。
ST19では、設計データに基づきイオン注入処理を実行する。一連の処理が終了すると、ST20に進み、正常に処理が完了した旨をメモリ部2に保存する。そして、続くST21において、前記ウェーハ11をプラテン22から取り外し、真空槽21外に搬出する処理を実行する。
なお、検査装置10が、NGフラグとともに補正が不可能であることを示すエラーコードを送信した場合(ST9が「NO」の場合またはST17が「NO」の場合)には、ST23に進み、前記エラーコードをメモリ部2に書き込む処理(エラー処理)を実行する。この後は、ST21に進み、ウェーハ11をプラテン22から取り外して、真空槽21外に搬出する処理を実行する。
ウェーハの搬出後は、ST22に進み、生産が終了したかどうかをチェックする。ここで、処理すべきウェーハが残っている場合には、ST22が「NO」となってST3に戻り、つぎのウェーハを真空槽21内に導入して以下同様の手順を実行する。前記生産指示により指示された数のウェーハを処理した場合には、ST22が「YES」となり、処理を終了する。
なお、上記の処理を経たウェーハ11は、正常な処理が行われたかどうかに関わらず、同一のウェーハカセット(処理済み用のウェーハを格納するもの)に収容される。ただし、ST20やST23では、保存する情報にウェーハ11の識別番号を対応づけるようにしているので、仮に不良のウェーハ11があっても、そのウェーハ11が後段の工程に流れるのを防止することができる。
つぎに、前記ST7,ST14のウェーハの向き検査について、図8を用いて、検査装置10側で実行される具体的な処理を説明する。なお、この図8では、ST101から処理が開始されるものとする。
この手順を実行するに先立ち、検査装置10のCPU102は、前記主制御装置1より各種検査用データの送信を受け、これらをRAM104内に保存する。この後、最初のST101では、前記タイミング制御部107よりカメラ110に駆動信号を与えて撮像を行わせる。この撮像動作に伴い、画像入力部105によるA/D変換処理およびエッジ抽出部108によるエッジ抽出処理が実行され、所定階調の濃淡画像データ、および2値のエッジ画像データが、画像メモリ106に格納される。なお、カメラ110の視野は、あらかじめ限定された範囲に調整されているものとする。
ST102〜104の処理は、エッジ画像を対象として行われる。
ST102では、前記エッジ画像において、ウェーハの中心点を抽出する処理を実行する。この処理は、前出の特許文献3の方法に基づき行われる。簡単に言うと、画像上の各エッジ画素につき、それぞれその濃度勾配に沿う方向(明るい部分から暗い部分に向かう方向)にウェーハの半径よりやや長い線分を設定する。これにより、前記画像上に含まれるウェーハの周縁のエッジのうち、ノッチ以外の円弧の部分を構成する各エッジ画素からの線分が中心点Oの付近で交わるようになる。よって、所定数以上の線分が交わった点の集合の中から代表点を抽出し、これをウェーハの中心点Oとする。
上記の方法によれば、生成された画像にウェーハ11の一部分しか含まれていなくとも、中心点Oの位置を精度良く求めることができる。中心点Oの抽出に成功すると、ST103が「YES」となってST104に進み、前記エッジ画像上でノッチを検出する処理を実行する。以下、この処理について簡単に説明する。
この検出処理では、前出の特許文献2の方法に基づき、画像上で円弧の構成点に相当するエッジ画素を抽出する。この抽出処理により、ウェーハの輪郭線の構成点のうち、ノッチ以外の構成点が抽出されることになる。
つぎに、抽出された円弧の構成点を消去し、残されたエッジの中からノッチの特徴を反映したエッジ画素の集合を抽出する。ウェーハのノッチは、完全なV字状ではなく、先端部分(切り込みの最も奥の部分)が面取りされた状態で形成される(図6のN1を参照。)ので、先端部分を構成する画素は円弧の構成点とみなされる可能性が高い。一方、V字パターンの両側縁は直線状であるので、それぞれ所定数のエッジ画素が連なった状態にあるものと考えられる。
よって、円弧の構成点を消去する処理により、ノッチの部分については、図9に示すように、先端部分のエッジ13cが消失し、両側縁のエッジ13a,13bが分離した状態で残されるようになる。そこで、ST104では、円弧の構成点を消去した後のエッジ画像から前記エッジ13a,13bに対応する一対のエッジ集合を抽出する。さらに、これら一対の集合毎に重心を求め、各重心間の中点の座標を求めることにより、ノッチの位置を検出するようにしている。なお、ノッチの位置の算出方法は上記に限定されるものではなく、たとえば、一対のエッジ集合をその間にある画素(エッジ画素以外の画素)も含めて統合し、この統合された集合体において、重心などの代表点を求めるようにしてもよい。
また、ノッチの検出処理は上記に限定されるものではない。たとえば、エッジ画素に対する輪郭追跡処理を行って、エッジの向きが大きく変化する変曲点を抽出するようにしてもよい。画像上のエッジ画素の大半は円弧の構成点であり、しかも拡大されていることから、これら円弧の部分で向きが大きく変化することはない。これに対し、ノッチに相当する略V字状のパターンについては、2つの切り込み開始点や、先端の部分(切り込みの奥部)において、エッジの向きが大きく変化するから、ノッチを精度良く検出することができる。
このようにしてノッチの位置を検出すると、ST105が「YES」となってST106に進む。このST106では、前記図5に示した方法に基づきノッチ角度を算出する。続くST107では、このノッチ角度と主制御装置から送信された基準角度との差を求め、その差が所定の誤差範囲であるかどうかをチェックする。この差が誤差範囲内であれば、ST107が「YES」となってST108に進み、前記した「OK」フラグをオン設定して主制御装置1に送信する。
また、前記の差が誤差を越える場合には、ST107からST109に進む。このST109では、ウェーハの向きが不適であったことを示す「NG」フラグをオン設定するとともに、前記の差を補正角度として設定し、NGフラグとともに主制御装置1に送信する。なお、補正角度は、基準角度からノッチ角度を差し引いたものとするので、この差が負値となった場合は、プラテン22を逆回転させる必要があることを意味するものになる。
前記ST102において、中心点の抽出処理に失敗した場合には、ST103が「NO」となって、ST110に進む。またST104において、ノッチを検出できなかった場合には、ST105が「NO」となり、同様にST110に進む。
ST110では、前記「NG」フラグをセットするとともに、補正ができない理由を示すエラーコードを設定し、これらを主制御装置1に送信する。なお、ST103、ST105のいずれが「NO」となったかによって、前記エラーコードの値は異なるものとなる。
上記の実施例によれば、画像上のウェーハ11の中心点Oを基準としてノッチ角度や基準角度を示し、これらの角度の差を補正角度としてプラテン22を回転させている。既に図10,11を用いて説明したように、ウェーハ11の中心点Oとプラテン22の中心点Rとが一致している場合にも、両者が一致しない場合にも、上記の方法で求めた補正角度分だけプラテン22を回転させることにより、ノッチを基準方向に合わせることができる。
また、前記図7,8の手順では、カメラ110の視野を絞り込むことにより、ウェーハ11の部分画像を生成しているので、ウェーハ全体を撮像するよりも、ノッチの部分の解像度が高い画像を得ることができる。また、前出の特許文献3の方法によれば、部分円であっても中心点を精度良く求めることができるから、中心点、ノッチの位置をともに精度良く検出して、ノッチ角度を正確に求めることができる。よって、補正角度を高い精度で求めることができ、ウェーハの方向を精度良く調整することができる。
なお、図7,8の手順では、ウェーハが正しい方向を向いているか否かを検査する都合上、基準角度θTを調整角度αにより補正するようにしたが、ウェーハの方向の適否判別の結果をフラグデータとして出力する必要がない場合には、撮影前にプラテン22を回転させた場合でも、本来の基準角度θTを用いて補正角度θを求め、その角度θ分だけプラテン22を回転させればよい。
さらに、ウェーハ11の全体が撮像される場合にも、照明ムラや周囲部材との位置関係などの要因により、カメラ110の視野内にノッチの検出に適した領域と適さない領域とが存在する場合には、図7と同様の方法で検査を行うことができる。すなわち、検査対象のウェーハ11の基準方向が検出に適さない領域に含まれる場合には、このノッチが検出に適した領域に含まれるように所定の調整角度分だけプラテン22を回転させて検査を実行すればよい。また、この検査によりずれ量が検出された場合には、ずれ量に前記調整角度を加えた値を補正角度としてプラテン22を回転させることにより、前記ノッチを基準方向に位置合わせすることができる。
ところで、ウェーハの側面(周縁の厚み方向の面)は垂直面ではなく、曲面状に形成される。上記の実施例では、カメラ110や光源を図3のように配置することにより、ウェーハ11の表面からの鏡面反射光がカメラ110に入射しないようにしたが、ウェーハ11の側面からの鏡面反射光がカメラ110に入り込む可能性がある。この側面の全周にわたる曲率は一様なものではなく、固体間でのばらつきもあるので、光学系の調整により鏡面反射光の入射を防ぐのは困難である。
ウェーハ11の側面からの鏡面反射光がカメラ110に入ると、ウェーハの周縁でハレーションが生じ、ノッチとして誤検出されるおそれがある。前記図8の手順は、ノッチが1つだけ検出されることを前提としており、ノッチとみなされる部分が複数検出された場合には、ST105が「NO」となって、向き調整が不可能と判断されてしまう。このような不具合を防止するには、プラテン22にウェーハ11を設置した後に、つぎのような処理を行うとよい。なお、この処理では、説明を簡単にするために、ウェーハ11の全体が撮像される場合を前提とする。
まず、プラテン22にウェーハ11が設置された直後に撮像を行い、得られた画像上のノッチを検出する。検出されたノッチ角度は、検査装置10のRAM104などに保存される。つぎに、プラテン22を所定角度回転させ、再度の撮像を行い、得られた画像上で2度目のノッチ検出処理を実行する。ここで、2度目の処理で検出されたノッチ角度を最初に検出されたノッチ角度と比較すると、本来のノッチについては、プラテンの回転角度に相当する角度差が得られるはずである。これに対し、ハレーションについては、ウェーハ11の回転により光源との関係が変化すると、2度目の撮像時には、前回のハレーション発生部位からの反射光がカメラ110に入らなくなったり、別の部位からの反射光がカメラ110に入射するなど、プラテン22の回転に追従した角度差が得られない可能性が高い。よって、1回目に得た画像と2回目に得た画像との間で、ノッチ角度の差がプラテン22の回転角度に対応するノッチ候補の組をノッチとみなし、それ以外のものをハレーションによるノイズとみなすことにより、ウェーハ11の側面からの鏡面反射光による影響を取り除いて、本来のノッチを精度良く特定することができる。
なお、上記2つの画像において、ノッチ角度の差がプラテン22の回転角度に対応するノッチ候補の組が複数見つかった場合には、再度プラテン22を回転させて、同様の処理を行うとよい。ただし、この処理を複数回繰り返しても、なお、複数組のノッチ候補が存在する場合には、処理を打ち切ってエラー処理に進むのが望ましい。
また、前記図7の手順のように、ウェーハ11の一部分を撮像する場合には、ノッチをカメラ110の視野に入れるためにプラテン22を回転させた後の撮像に続き、ノッチがカメラ110の視野から出ない範囲でプラテン22を回転させて2度目の撮像を行うことにより、上記と同様に、ノッチとハレーションの発生部位とを切り分けて判断することができる。ノッチをカメラ110の視野に入れるための調整が必要でない場合も、同様である。
このようにして、ノッチとハレーションの発生部位とを識別し、最終的にノッチが特定されると、そのノッチについて、1回目に検出されたノッチ角度を基準角度と照合することにより、ウェーハ11の向きの適否を判別することができる。さらに、向きが適正でない場合には、前記実施例と同様に、基準角度とノッチ角度との差に相当する角度だけプラテン22を回転することにより、ウェーハ11の向きを調整することができる。