JP2005099129A - プラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びにプラスチック光ファイバ - Google Patents
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Abstract
【課題】 プラスチック光ファイバ母材中に気泡が生じることを抑制する。
【解決手段】 母材のコア部を形成するためにMMAと所望の添加剤とからコア液を調製する。コア液の溶存酸素量を同一温度の純水の飽和溶存酸素量の2.8倍以下とする処理を行う。(1)コア液の溶存酸素量を同一コア液1cm3 当たり1.8kW・s以上のエネルギーの超音波を10分間照射する。(2)0.005MPa〜0.03MPaの減圧下で5分以上減圧処理する。(1)(2)いずれかの処理を行うことで、母材中の気泡発生の原因となるコア液の溶存酸素を低減できる。
【選択図】 なし
【解決手段】 母材のコア部を形成するためにMMAと所望の添加剤とからコア液を調製する。コア液の溶存酸素量を同一温度の純水の飽和溶存酸素量の2.8倍以下とする処理を行う。(1)コア液の溶存酸素量を同一コア液1cm3 当たり1.8kW・s以上のエネルギーの超音波を10分間照射する。(2)0.005MPa〜0.03MPaの減圧下で5分以上減圧処理する。(1)(2)いずれかの処理を行うことで、母材中の気泡発生の原因となるコア液の溶存酸素を低減できる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、プラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びにプラスチック光ファイバに関するものである。
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造及び加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれら光学部材の中でも、プラスチック光ファイバは、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して、口径の大きい光ファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(以下、コア部またはコアと称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(以下、クラッド部またはクラッドと称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型(以下、GI型と称する)プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている。この様なGI型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合法を利用して、プリフォーム(母材)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法などが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
プラスチック光学部材プリフォームは、重合性モノマーなど含む重合性組成物より製造される。重合性組成物は、通常液体であるため空気を含んでいる。重合性組成物に一定以上の空気、特に酸素が含まれていると、その酸素が重合開始剤として機能し重合性組成物から副生成物を生じる場合がある。また、溶存している空気の発泡による欠陥の発生が起こる事がある。副生成物や欠陥が生じると光の散乱を起こすため光学部材としての性能低下および生産性の低下を引き起こすため問題となっている。
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、重合反応に起因する発泡を抑制し、プリフォーム内の気泡の発生の抑制したプラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びに前記プラスチック光学部材用プリフォームから製造されるプラスチック光ファイバを提供することを課題とする。
本発明のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法は、重合性組成物を重合させてなるプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、前記重合性組成物の隔膜ガルバニ電池法によって測定した溶存酸素量の指示値の少なくとも1つが、同一温度下における純水の飽和溶存酸素量の指示値の3.3倍以下である重合性組成物を用いて製造する。
本発明のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法は、重合性組成物を重合させてなるプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、前記重合性組成物の少なくとも1つを重合前に1.8kW・s/cm3 以上の超音波照射処理を施す。
本発明のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法は、重合性組成物を重合させてなるプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、前記重合性組成物の少なくとも1つを重合前に0.005MPa以上0.03MPa以下の減圧下にて5分以上減圧処理する。前記重合性組成物の超音波処理または減圧処理の後に、前記重合性組成物に含まれている空気を不活性ガスに置換させる置換処理を行うことが好ましい。
少なくともいずれか1つの前記処理を行い、前記重合性組成物の隔膜ガルバニ電池法によって測定した重合前の溶存酸素量の指示値の少なくとも1つを同一温度下における純水の飽和溶存酸素量の指示値の3.3倍以下に低減させることが好ましく、2.8倍以下にすることがより好ましい。前記いずれか1つ記載の処理を行った重合性組成物を不活性ガス雰囲気下で重合した領域を少なくとも1つ形成することが好ましい。前記プラスチック光学部材用プリフォームが、透光性を有するコア部と、前記コア部の屈折率よりも小さい屈折率を持つクラッド部とを有しており、前記コア部の形成を塊状重合法によって行うことが好ましい。
本発明には、前記プラスチック光学部材用プリフォームの製造方法により製造されたプラスチック光学部材用プリフォームも含まれる。前記プラスチック光学部材用プリフォームが、中心から半径方向にかけて屈折率が連続的に低下する分布を示すコア部と、前記コア部の屈折率よりも小さい屈折率を持つクラッド部と、を有する屈折率分布型プラスチック光学部材用プリフォームであるものも含まれる。前記プラスチック光学部材用プリフォームを延伸して得られるプラスチック光ファイバも含まれる。
本発明の光学部材用プリフォームの製造方法によれば、重合性組成物に溶存している空気を一定量以下とするので、溶存空気、特に溶存酸素に起因する副生成物の生成やそれに伴う発泡を抑制できる。そのために、プリフォーム中の気泡の発生を抑制できる。そのプリフォームを延伸して得られる光ファイバの伝送損失の低下を図ることができると共に、不良品の発生を低減できるために高い生産性で光ファイバが得られる。
また、溶存酸素量の低減には、特別な装置を必要とせず、重合性組成物を超音波処理,減圧処理の少なくともいずれかの処理を行うことで達成できる。そのため、プリフォームの製造に際して、生産性の悪化やコスト高となるおそれが無い。さらに、それら処理を行った後に、重合性組成物中に不活性ガスを送り、残留している溶存酸素を不活性ガスに置換することでより本発明の効果である副生成物の発生,発泡をさらに防止できる。重合性組成物を用いてコア部,クラッド部となるように重合反応を行っている際に、不活性ガス雰囲気下で行うことで、重合反応中に副生成物の発生,発泡を極めて抑制できる。このようにして得られるプリフォームを延伸して得られるプラスチック光ファイバは、良好な光伝送性能を有する。また、品質にも優れているため高い生産性で光ファイバを得ることができる。
本発明に係る光学部材用プリフォームの製造方法を図1に示す。クラッド作製工程12で中空円筒状のクラッドパイプ13を作製する。この時、クラッドパイプ13は、後述するコア部のように重合性組成物を重合させる方法や、既に重合した樹脂を溶融押出しするなど既知のいかなる方法で作製しても良い。次に、この中空円筒状のクラッドパイプ13内にコア部を作製する工程を行うが、クラッド部とコア部との間に素材の緩衝または作業性の向上のための緩衝層を設けることもできる。以降、本発明においてはこの様な態様を取る場合、このクラッドに隣接する緩衝層をアウターコア部、アウターコア部の内側の主に導光に関与する部分をインナーコア部と称する。アウターコア部を設ける場合は、クラッドパイプ作製後、アウターコア液調製工程14を行い、その液(以下、アウターコア液と称する)を用いてクラッドパイプ13内面にアウターコア重合工程15によりアウターコア部を形成する。さらに、インナーコア液調製工程16を行い、その液(以下、インナーコア液と称する)を用いてインナーコア重合工程17によりインナーコア部を形成する。これにより光学部材用プリフォーム(以下、プリフォームと称する)18が得られる。プリフォーム18を加工することで光ファイバやレンズなど様々な光学部材を作製することができる。以降は光ファイバを作製する場合を例として記述する。例えば、プリフォーム18を延伸工程19で加熱溶融延伸してプラスチック光ファイバ(以下、光ファイバと称する)20とする。光ファイバ20は、そのままの素線の形態で光ファイバとして用いることができる。しかしながら、取り扱いを容易にしたり、光ファイバ20の外面の損傷を抑制するために保護層を形成することが好ましい。保護層は、被覆工程21により形成され光ファイバ20の外周が被覆されたプラスチック光ファイバケーブル(以下、光ファイバケーブルと称する)22を得ることができる。
図2(a)にプリフォーム18の断面の一形態を示す。インナーコア30は、高い伝送特性が得られるようにその中心部から外周部へ連続的に屈折率が小さくなるGI型とすることが好ましい(図2(b)参照)。また、アウターコア31は、インナーコア30を形成する際に、その中で塊状重合の一種である界面ゲル重合が可能な素材から形成されている。また、クラッドパイプ13は、機械的強度に優れ、伝送される光をクラッドパイプ13外に放射しない素材から形成することが好ましい。図2に示すプリフォーム18の製造方法を例として本発明を詳細に説明する。始めにクラッド素材,コア素材及び所望の添加剤について説明し、その後にプリフォームの製造方法について説明する。なお、この例示はあくまでも本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
クラッドの素材は、一般的に透明性を有する熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリマー)であることが必要である。また、コア部を伝送する光がコア部とクラッド部との界面で全反射するようにコア部の屈折率より低い屈折率を有しているものを用いる。また、光学異方性が生じないように非晶性のポリマーを用いる。さらに、コア部との密着性が良く、タフネス等に示される機械的特性に優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられる。
例えば、そのようなポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと称する)が挙げられる。また、メチルメタクリレート(以下、MMAと称する)とトリフルオロエチルメタクリレート(以下、FMAと称する)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体を用いることもできる。また、tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体が挙げられる。さらには、ポリカーボネート,ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン社製)など),ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など),フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)を用いることもできる。また、フッ素樹脂の共重合体(例えば、PVDF系共重合体)や、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFA)ランダム共重合体,クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合系などを用いることもできる。また、これらポリマーの水素原子(H)を重水素原子(D)に置換して伝送損失の低減を図ることもできる。
コア部の素材は、光伝送の機能を損なわない限りにおいて特に限定されるものではない。特に好ましく用いられるものとしては、有機材料として光透過性が高い原料である。例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、ポリカーボーネート類の原料であるビスフェノールA等を例示することができ、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類を組成として含むものがより好ましく用いることができる。なお、アウターコア部に用いられる素材としてはコア部と同じものを用いても良いし、クラッド部との素材間の親和性を考慮した素材を選択しても良い。
以上に挙げた重合性モノマーとして具体的に、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3 −テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3 −ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5 −オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4 −ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類,組成比を組むことが好ましい。特に好ましいポリマーとしては、透明樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられる。
さらに、光ファイバまたは光ファイバケーブルに近赤外線を伝送する場合は、構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを始めとする、C−H結合の水素原子(H)を重水素原子(D)やフッ素(F)などで置換した重合体を用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。なお、原料モノマーは重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去することが望ましい。
重合性モノマーを重合させてポリマーを製造する際には、重合開始剤によって重合を行うことがある。この場合、モノマーの重合反応を開始させる開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、2種類以上を併用してもよい。
機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには連鎖移動剤を使う事ができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
コア部が、その中心から外周方向に向かって屈折率分布を有するGI型の場合には、伝送性能が向上するため、より広帯域の光通信を行うことができ、高性能通信用途に好ましく用いることができる。屈折率分布を付与する方法としては、コア部を形成する重合体に複数の屈折率を有する重合体の組合せやそれらを組合わせた共重合体を用いるか、または、ポリマーマトリクスに屈折率分布を付与するための添加剤(連鎖移動剤。以下、ドーパントと称する)を添加する必要がある。
ドーパントは、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm3 )1/2 以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、コア部形成用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を形成する工程において塊状重合の一種である界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成する方法を例示しているが、それ以外にもプリフォーム形成後に屈折率調整剤を拡散させる方法も知られている。以下、屈折率の分布を有するコア部をGI型コア部と称する。GI型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有するGI型プラスチック光学部材となる。
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。屈折率調整剤の、コア部における濃度および分布を調整することによって、プラスチック光ファイバの屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされるコア部原料などに応じて適宜選ばれる。
その他、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部に含有させることができる。
プリフォームの製造は前述の様に図1の工程を行う。始めに、(インナー)コア部用の重合性組成物を注入するための円筒状中空管を得る工程を行う。円筒状中空管はクラッドのみからなっても良いし、クラッド部内にアウターコア部を設けた構成であっても良い。クラッド部および/またはアウターコア部を重合性モノマーと必要な添加剤とを混合攪拌を行った重合性組成物から作製する場合は、以下の操作を行ってクラッド用重合性組成物液とアウターコア用重合性組成物液をそれぞれ調製する。なお、以降はクラッド用重合性組成物液とアウターコア用重合性組成物液をまとめて中空管用重合性組成物液と称する。次に、中空管用重合性組成物液の溶存酸素量を低減する処理を行う。低減処理は、公知の様々な方法を適用できるが、本発明では(1)超音波処理又は(2)減圧処理のいずれか1つの処理を行うことが好ましい。なお、添加剤は、後に説明するクラッド作製工程および/またはアウターコア作製工程で中空管用重合性組成物液に添加しても良い。
(1)超音波処理では、中空管用重合性組成物液1cm3 当たり1.8kW・s以上のエネルギーを有する超音波を照射することで溶存酸素量の低減を行う。より好ましくは3.6kW・s以上のエネルギーを有する超音波を照射することであり、最も好ましくは7.2kW・s以上のものである。上限値は特に限られるものではないが、大きなエネルギーの超音波を中空管用重合性組成物液に照射すると、中空管用重合性組成物液の成分が変成するおそれがある。そこで、21.6kW・s以下のエネルギーを有する超音波を照射することが好ましい。また、操作時における中空管用重合性組成物液の温度は、特に限定されるものではないが、略室温である15℃〜45℃の範囲とすることが好ましい。その温度範囲内で、より高い温度であれば気体の溶解,溶存が行われ難くなるのでより好ましい。ただし、中空管用重合性組成物液の温度が45℃を超えると、中空管用重合性組成物液の反応が生じて副生成物である不純物が生成されるおそれがある。また、照射する超音波の強度や時間の最適値は、中空管用重合性組成物液の成分により異なる。例えば、屈折率1.49のPMMAを製造する場合には、MMAに30000MHz以上、好ましくは35000MHz〜45000MHzの超音波を照射する。出力は、250W〜450Wとし、照射時間は500s〜4000sとすることで溶存酸素量の低減を図ると共にMMAの変成も抑制できる。
(2)減圧処理は、中空管用重合性組成物液を所望の減圧下におくことで、溶存酸素量の低減を行う。中空管用重合性組成物液を絶対圧力で0.005MPa以上0.03MPa以下の減圧下におくことで溶存酸素量を低減できる。より好ましくは0.005MPa以上0.02MPa以下の範囲の減圧下におくことである。圧力を0.005MPaより低くすると、素材の重合性モノマーや添加剤の揮発が無視できなくなる場合がある。
減圧下におく時間は、1分以上が好ましく、より好ましくは5分以上である。脱気時間の上限は、特に限定されるものではないが、20分以下であることが、工程時間の短縮の点から有利である。減圧処理の後に、中空管用重合性組成物液に不活性ガスを流し、中空管用重合性組成物液の残存気体、特に残存酸素と置換することがより好ましい。なお、不活性ガスには、ヘリウム,アルゴンなどの希ガスまたは窒素などを用いる。
処理後の中空管用重合性組成物液の溶存酸素量は、隔膜ガルバニ電池法により測定する。測定により得られる指示値(通常の装置では、電圧値として得られるので、以下電圧値と称する)を溶存酸素量電圧値V1とする。また、同一温度で共栄製薬(株)製の精製水(pH7.1)の飽和溶存酸素量を測定し、その電圧値を飽和溶存酸素量電圧値V0とする。溶存酸素量電圧値V1が、V1≦3.3×V0の関係となるように前記処理を行う。溶存酸素量電圧値V1が前記関係を満たさない場合には、前記処理の少なくともいずれかを繰り返し行う。これにより、クラッド作製工程12におけるボイドの発生,延伸工程19の延伸時に生じる光ファイバ中の泡の低減及び光ファイバ20の伝送損失の悪化などが生じることを防止する。なお、以下の説明において純水の飽和溶存酸素量電圧値V0と、中空管用重合性組成物(クラッド液,アウターコア液)、インナーコア液の溶存酸素量電圧値V1,V2,V3との比R(=Vn/V)を溶存酸素量比と称する。
クラッド作製工程12によってクラッドパイプ13を作製する。以下にその作製方法を説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。処理済のクラッド用重合性組成物液を所望のプリフォームの外径に対応する内径を有する充分な剛性を有する円筒状の重合容器に入れる。このときに添加剤、例えば重合開始剤,連鎖移動剤などを添加しても良い。次に、重合容器を温水中で振盪を加えながら予備重合を行い、クラッド用重合性組成物液の粘性を高めることが好ましい。
その後に、重合容器を水平方向(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、加熱しながら回転重合を行う。なお、回転重合を行う際の重合容器の設置方向は、水平方向に限定されるものではない。例えば、重力と略平行の垂直方向や斜め方向に設置して回転させても良い。これにより、重合容器内面に壁を形成するように重合され、厚みt1が略均一のクラッドパイプ13を得ることができる。さらに、温度を所望の温度まで昇温して熱処理を行なうことが好ましい。また、クラッド用重合性組成物液から重合によりクラッドパイプを作製するときに、不活性ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウム,アルゴン,窒素などが挙げられる。
本発明では、溶融押出し法で作製されたクラッドパイプ13を用いることもできる。例えば、クラッドの原料にPVDFを用いる場合が例示できる。PVDFは、機械的強度に優れ、光ファイバ内を伝送している光の閉じ込めの能力が高いためクラッドパイプに好ましく用いることができる。プリフォームを製造する際には、その円筒中空内で重合を行うため、クラッドパイプ13自身が重合容器となる。そのため、溶融押出し法で製造された中空円筒状のクラッドパイプ13の一端にPVDFを原料とする底付けを行うことが好ましい。なお、PVDFから形成されるクラッドパイプ13は、市販のパイプ状の商品を用いることもできる。また、クラッドパイプ13の洗浄、特にその内周面の洗浄を行うことが好ましい。洗浄方法は、特に限定されるものではないが、例えば、純水,エタノールなどを用いて行うことがクラッドパイプ内周面の劣化を抑制するために好ましい。
また、本発明に用いられるクラッドパイプは、機械的強度向上や難燃性などの多種の機能性を付与させるために複層から形成されたものを用いても良い。クラッドパイプを複層で形成することで、コア部の重合性と耐湿性をそれぞれ別の層で提供することもできる。例えば、コア部と界面を形成するクラッド部内層とそのクラッド部内層を覆うクラッド部外層の2層からクラッドパイプを形成する場合、耐湿性クラッド部内層で、機械的特性をクラッド部外層で提供する。コア部の重合性を提供する際に好ましく用いることができる素材としては、コア部を界面ゲル重合で生成させる際にクラッド部内層とコア部とで界面不整が起こらないようなものが好ましい。
具体的には、アウターコア部を構成する素材(ポリマー)の溶解度パラメーターとコア部を構成する素材(ポリマー)の溶解度パラメーターとの差が14000(J/m3 )1/2 [=7(cal/cm3 )1/2 ]以下、好ましくは10000(J/m3 )1/2 [=5(cal/cm3 )1/2 ]以下、より好ましくは6000(J/m3 )1/2 [=3(cal/cm3 )1/2 ]以下のものを用いることが好ましい。耐湿性を提供するアウタークラッド部は、コア部の重合性は考えなくても良いので、前述の素材の他に吸水率が1.8%未満であるポリマーを任意に選択することができる。また、複層構成でのアウターコア部において好ましく用いることができる素材は、少なくともコア部の重合性を考慮すれば良く、前述の単層構成の場合の素材以外でも、コア部素材との溶解度パラメーターの差が上記範囲のものであれば、好ましく用いることができる。
また、多層からなる中空管を回転重合法により作製する場合には、複数の中空管用重合性組成物(例えば、アウターコア液とクラッド液)を前記中空管用重合性組成液調製工程の方法で調製することが好ましい。特にコア部と界面を形成するアウターコア液の溶存酸素量比Rを3.3以下とすると、気泡などの発生を抑制できる。また、クラッド部は、光の伝送路には直接ならないため、溶存酸素量はアウターコア部よりも多くても光学特性に影響を及ぼすおそれは少ない。しかしながら、アウターコア部とクラッド部との界面で不正が生じると機械的強度の劣化を招くおそれもある。そこで、クラッド液の溶存酸素量比Rも3.3以下とすることがより好ましい。アウターコア液、クラッド液の溶存酸素量比Rは2.8以下であることがより好ましい。
本発明に用いられる多層からなるクラッドパイプは、前述のクラッドパイプ内に重合性組成物を注入して回転重合によって設ける方法以外に、共押出しによる溶融押出し法で製造されるものを用いることもできる。
アウターコア31を形成するためにアウターコア液をクラッドパイプ13内に注液する。このときに、(2)減圧処理を行いつつ、(1)超音波処理をクラッドパイプ13ごと行うことで、アウターコア液中の溶存酸素量を低減することもできる。
アウターコア31は、クラッドパイプ内面にインナーコア形成用の中空円筒状となるように回転重合法で形成する。回転重合法は、クラッドパイプ13を形成する方法と同様の条件で行うことで、略均一な厚みt2の中空円筒状としてクラッドパイプ13内面に形成される。
インナーコア液調製工程16も、アウターコア液調製工程14と同様に行われる。液体状の重合性モノマーに所望の添加剤を添加する。GI型プリフォーム18は、屈折率分布が中心部から外周に向けて低下する分布を有している(図2(b))。これは、添加剤として重合開始剤,連鎖移動剤,ドーパントを予めインナーコア液に入れておくことにより得られる。しかしながら、これら添加剤は低分子化合物であったり、反応性が良いため、厳しい条件下でインナーコア液の溶存酸素量の低減処理を行うと、インナーコア液中で反応,分解などが生じるおそれがある。また、GI型光ファイバ20では、光の大部はインナーコア30を伝送する。そのため、インナーコア30の欠陥を極めて少なくする必要がある。そこで、インナーコア液の溶存酸素量の低減処理を充分に行うと共に、分解などの副反応が生じないように処理の制御を行うことが最も好ましい。低減処理方法は、公知のいずれの方法を用いても良いが、本発明では前記(1)超音波処理,(2)減圧処理の少なくともいずれかの処理を行うことが好ましい。
(1)超音波処理では、インナーコア液1cm3 あたり1.8kW・s以上21.6kW・s以下のエネルギーを有する超音波を照射することが好ましく、より好ましくは3.6kW・s以上16.0kW・s以下であり、最も好ましくは、7.2kW・s以上14.4kW・s以下のものを照射することである。この範囲であれば、重合性モノマーや添加剤などが分解したり反応したりするおそれがなく、溶存酸素量の低減を図ることができる。この場合のインナーコア液の温度も特に限定されるものではないが、15℃〜45℃の範囲であることが好ましく、副反応を抑制するために、25℃〜35℃の範囲であることがより好ましい。
例えば、重合性モノマーにMMAを用い、重合開始剤と連鎖移動剤とドーパント(例えば、ジフェニルスルフィド)を含む27℃のインナーコア液に超音波を照射する際には、35000MHz〜45000MHzの超音波を出力は、250W〜450Wの範囲とし、照射時間は500s〜4000sの範囲とすることが好ましい。
(2)減圧処理は、インナーコア液を所望の減圧下におくことで行われる。前述したがインナーコア液中には予め所望の添加剤が含有されている。そのため、減圧度を上げ過ぎるとそれら添加剤の揮発が生じるおそれもある。そこで、インナーコア液を0.005MPa以上0.03MPa以下の減圧下におくことが好ましく、より好ましくは0.005MPa以上0.02MPa以下であり、最も好ましくは、0.008MPa以上0.015MPa以下とすることである。なお、脱気時間及びその後の不活性ガス置換処理は、中空管用重合性組成液と同様の条件で行うことが好ましい。
処理済のインナーコア液の溶存酸素量も隔膜ガルバニ電池法により測定する。測定された値を溶存酸素量電圧値V3とする。本発明において溶存酸素量電圧値V3が、V3≦3.3×V0の関係となるように処理を行うことが好ましく、より好ましくはV3≦2.7×V0の関係とすることであり、最も好ましくはV3≦2.5×V0の関係とすることである。前記式を満たすように、(1)超音波処理,(2)減圧処理の少なくともいずれか1つの処理を繰り返して行う。
本発明の光学部材のプリフォームの製造方法は、例えば特許3332922号公報に記載されているように、クラッド部となる樹脂の中空管を作成し、その管内にコア部を形成する樹脂組成物を注入し、塊状重合の一種である界面ゲル重合法によりポリマーを重合することによりコア部を形成する方法を例示することができる。この場合重合温度および重合時間は、用いるモノマーや重合開始剤によって異なるが、一般的には、重合温度は60℃以上で生成されるポリマーのTg(ガラス転移温度)以下であることが好ましく、60℃〜150℃であることがより好ましい。重合時間は5時間〜48時間であることが好ましく、5〜24時間であることがより好ましい。不活性ガス雰囲気中で重合反応を行うことが好ましく、必要に応じて加圧,減圧を行っても良い。他にも国際公開第03/19252号パンフレットに記載の重合条件で重合を行うことで密度揺らぎの少ないコア部を得ることができる。またその他には、重合後の屈折率が異なる重合性組成物を逐次添加するコア部の形成法も知られている。なお、本発明に用いられる光ファイバのプリフォームの製造方法は、前述の如く界面ゲル重合法に限定されるものではない。また、樹脂組成物は前述のように、単一の屈折率を持つ樹脂組成物に屈折率調整剤を添加するものや、屈折率の異なる樹脂を混合するもの、共重合などが用いられる。
本発明の製造方法で作製されるプリフォームは、図2に示されたものに限定されるものではない。例えば、図3に示すプリフォーム40のようにコア41とクラッド42とからなるものにも本発明は適用できる。この場合にも、コア41を形成するコア液は、前記溶存酸素量の低減を行う処理する。処理方法は、前記(1)超音波処理,(2)減圧処理の少なくともいずれかで行うことが好ましい。また、コア41は、屈折率分布を有さないステップインデックス型(SI型),その中心から外周方向に屈折率が低減するグレーデッドインデックス型(GI)型であっても良い。さらには、その中心から外周方向に屈折率が階段状に低減するマルチステップインデックス型(MSI型)であっても良い(いずれも図示しない)。
前記方法で作製されるプリフォーム18を加工することで、レンズや光ファイバとすることができる。光ファイバを作製する場合は、プリフォーム18を延伸することで、所望の直径、例えば200μm以上1000μm以下の光ファイバ20を得ることができる。延伸工程19で行われる製造方法に関しては、特に制限はなく、既知の方法を等しく適用することができる。なお、延伸工程19を行う前にプリフォーム18を減圧乾燥することで、プリフォーム中の残留モノマーや水分の低減を図ることができる。これにより、溶融加熱延伸時における残留モノマーや水分が揮発し発泡することにより生じる延伸泡の発生を抑制できる。この場合、残留モノマーとして0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下であること、水分としては600ppm以下、より好ましくは400ppm以下であるのがよい。
延伸工程19では、プリフォーム18を加熱溶融延伸する。加熱温度はプリフォーム18の材質等に応じて、適宜決定することができる。一般的には、180℃〜250℃中の雰囲気で行われることが好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、プリフォーム18の直径、光ファイバ20の直径および用いる材料等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されている様に、溶融したポリマーを配向させるために0.1N以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されている様に溶融延伸後に歪みを残さないようにするために1N以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されている様に、延伸の際に予備加熱を設ける方法等をとることもできる。以上の方法によって得られる光ファイバ20については、破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することで後に説明する光ファイバケーブル22の曲げや側圧特性を改善することができる。
素線である光ファイバ20は、そのままの形態でも、例えば光ファイバのような光伝送体として用いることができるが、通常は、その外周に保護層を設け、光ファイバ20を保護すると共に様々な機能を持たせる。例えば、光ファイバの曲げ・耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として光ファイバ20の表面に1層以上の保護層を被覆する被覆工程21を行いプラスチック光ファイバケーブル22として使用する。保護層の材料及び光ファイバに保護層を形成する方法は、特に限定されるものではない。
保護層形成用の材料には、光ファイバ20に熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)を与えないものを選択する。具体的に以下の材料を挙げることができる。これらは高い弾性を有しているため、曲げなどの機械的な特性付与の観点でも効果がある。まず、ポリマーの一形態であるゴムを用いることもできる。具体的には、イソプレン系ゴム(例えば、天然ゴム,イソプレンゴムなど),ブタジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム,ブタジエンゴムなど),ジエン系特殊ゴム(例えば,ニトリルゴム,クロロプレンゴムなど),オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム,アクリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴムなど),エーテル系ゴム,ポリスルフィド系ゴム,ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
室温では流動性を示し、加熱することによりその流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
熱可塑性エラストマー(TPE)を用いることもできる。熱可塑性エラストマーは、室温ではゴム弾性を示し、高温では可塑化されて成形が容易である物質群である。具体的には、スチレン系TPE,オレフィン系TPE,塩化ビニル系TPE,ウレタン系TPE,エステル系TPE,アミド系TPEなどが挙げられる。なお、前記列記したポリマーは、光ファイバの素線のポリマーのガラス転移温度Tg以下で成形可能なものであれば、特に上記材料に限定されず、各材料間もしくは上記以外の共重合体や混合ポリマーを用いることもできる。
また、ポリマー前駆体と反応剤などとを混合した液を熱硬化させるものを用いることができる。例えば、特開平10−158353号公報に記載のNCOブロックプレポリマーと微粉体コーティングアミンとから製造される1液型熱硬化性ウレタン組成物を挙げることができる。また、国際公開第95/26374号パンフレットに記載のNCO基含有ウレタンプレポリマーと20μm以下の固形アミンとからなる1液型熱硬化性ウレタン組成物なども用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
被覆の構造としては、光ファイバの素線を被覆することによりプラスチック光ファイバケーブル製造が可能となる。その際にその被覆の形態として、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆と、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面に空隙を有するルース型被覆がある。ルース型被覆では、たとえばコネクタとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、ルース型の被覆の場合、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、素線にかかるダメージを軽減させることができるため、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することで、端面からの水分伝播を防止でき、かつ、これらの半固体や粉粒体に耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能をあわせ持つようにすることでより高い性能の被覆を形成できる。ルース型の被覆を製造するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
さらに、必要に応じて被覆層(1次被覆層)の外周にさらに被覆層(2次被覆層)を設けても良い。2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層にも導入は可能である。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を加える主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の対透湿性被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、難燃化以外に、素線の吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じてその形態を選ぶことができる。
また、本発明の光ファイバを用いたケーブルは、軸ずれに対して従来の光ファイバに比べて許容度が高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA 型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84-C, No.3, MARCH 2001, p.339-344 「High-Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号等公報に記載の導光路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
実施例1でプリフォーム18及び光ファイバ20を製造する際に、(a)〜(d)の観察,測定を行い、それらの結果は表1にまとめて示す。(a)得られたプリフォーム18を目視で気泡(以下、ボイドと称する)の数を観察した。(b)延伸工程19を行っている際に、電気炉中に置かれたプリフォーム18の先端部分に発生した泡(以下、延伸泡と称する)の数を目視で観察した。(c)得られた光ファイバ20の波長650nmの条件での伝送損失を測定した。(d)得られた光ファイバ20の先端からMINI Inc.社製のLWL−Fiberlightの光入射を行い、光ファイバの途中部分から光がもれ出る箇所を観察した。その部分を顕微鏡観察したところ、ラグビーボール状の小さな泡(以下、微小泡と称する)が長手方向でも0.5mm〜2mm程度の大きさのものが観察された。得られた光ファイバ20の50m当たりの微小泡の数を確認した。
実験1では、押し出し成形により作製した外径20mm,内径19mm、長さ60cmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなるクラッドパイプ13を用いた。このクラッドパイプ13を充分に剛性を有する内径20mm,長さ60cmの重合容器に挿入した。このクラッドパイプ13を純水にて洗浄、90℃にて乾燥させた。その後にK850ペレット(呉羽化学(株)社製)を用いて片方の端に200℃,30分かけて底付けを行った。さらに、エタノールにて管内壁を洗浄後、80℃の熱オーブンにて減圧条件下(大気圧に対して−0.05MPa)で熱アニール処理を行った。
始めに、アウターコア液調製工程14を行った。三角フラスコ内に、重水素化メチルメタクリレート(以下、MMA−d8と称する;和光純薬(株)社製)129.0g(カールフィッシャー法による測定で水分量350ppmを確認。)と、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.0645gと、1−ドデカンチオール(ラウリルメルカプタン)0.516gとをそれぞれ計量してアウターコア液を得た。このアウターコア液を井内盛栄堂(株)社製の超音波洗浄装置USK−3(38000MHz、出力360W)を用いて、10分間超音波照射を行った。次に、クラッドパイプ13中にそのアウターコア液を注液した後に減圧濾過装置を用いてクラッドパイプ13内を大気圧に対して0.01MPa減圧した。減圧脱気しつつ前記超音波洗浄装置を用いて超音波処理を5分間、クラッドパイプ13を水平にして行った。アウターコア液の溶存酸素量は、飯島電子工業(株)製酸素検知ユニットGU−2(隔膜形ガルバニ電池)用いて測定し、その電圧値V2を得た。そして、同温度(30℃)の純水の飽和溶存酸素量も同じ条件で測定し、電圧値V0を得た。これら電圧値から算出される溶存酸素量比R(=V2/V0)は、2.7であった。
次に、アウターコア重合工程15を行った。クラッドパイプ13の先端部分の空気をアルゴンにて置換した後に、クラッドパイプ13の先端部をシリコン栓にて密閉した。アウターコア液が入れられているクラッドパイプ13を60℃の湯浴中にいれ、浸透させつつ2時間、予備重合を行った。その後、クラッドパイプ13を水平状態(クラッドパイプの高さ方向が水平となる状態)で60℃の温度を保持しつつ3000rpmにて回転させながら1時間加熱重合(回転重合)を行った。その後に回転速度3000rpmで70℃,4時間、さらに3000rpmで90℃,20時間の回転重合を行った。クラッドパイプ13の内側にMMA−d8ポリマーの重合体からなるアウターコア31を有する円筒管を得た。(残存モノマー量0.1重量%を確認した。)
さらに、インナーコア液調製工程16を行った。三角フラスコ内に重水素化メチルメタクリレート(MMA−d8)60.0gと、ジ−tert−ブチルパーオキサイド10μLと、1−ドデカンチオール0.165gと、ドーパントとしてジフェニルスルフィド4.20gとをそれぞれ計量してインナーコア液を調製した。その後に超音波洗浄装置USK−3を用いてインナーコア液1cm3 当たり約2.2kW・sのエネルギーで超音波照射したこととなるような条件下で10分間超音波照射を行った。このインナーコア液の溶存酸素量も前記酸素検知ユニットGU−2を用いて測定し、電圧値V3を得た。インナーコア液の溶存酸素量比R(=V3/V0)は、2.7であった。このインナーコア液を不活性ガス(アルゴン)下で40℃まで温度上昇させ、同様の溶存酸素量比Rの測定を行ったところ、2.8であった。
次に、インナーコア重合工程17を行った。アウターコア部が形成されているクラッドパイプ13を80℃で20分保温した後にインナーコア液を中空部に注入した。クラッドパイプ13の一端をシールテープで覆った。その後、そのクラッドパイプ13をオートクレーブ内にたて置きで設定(底付け部が下、シールテープで覆った部分が上で)した後にオートクレーブ上部の蓋をセットした。オートクレーブ内の空気を窒素ガスにて置換し、0.05MPaの圧力を掛けた雰囲気とした。その後、オートクレーブを用いて100℃で48時間の加熱重合、さらには120℃で24時間の熱処理を行った。最後に室温放置させた後にオートクレーブ外にプリフォーム18を取り出した。得られたプリフォーム18の内部を目視で観察したところボイドは、見られなかった。(又、インナーコア重合部分の残存モノマー量0.1重量%を確認した。)
プリフォーム18を延伸して光ファイバ20とする延伸工程19を行った。プリフォーム18を上下方向に4つの温度ゾーンを持つ電気炉(上から240℃,220℃,170℃,一番下は140℃)中に通して溶融した。プリフォーム18の先端が細くなったところで、径が470±10μmに安定させるべく延伸条件(延伸スピード,引張条件)を調整しつつ延伸を連続して行った。その結果、550mの光ファイバ20が得られた。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォームの先端部分及び得られた光ファイバでは目視では問題が無かった。
なお、光ファイバの径を315±10μmとして延伸した場合にも、同等の伝送性能を有する光ファイバを製造することができた。
実験2では、インナーコア液1cm3 当たり約6.6kW・sのエネルギーで超音波照射したことに相当する条件下で超音波照射時間を30分とした以外は、実験1と同じ条件でインナーコア液を調製した。このインナーコア液の溶存酸素量比Rは、2.5であった。また、光ファイバ20を得る延伸工程19も実験1と同じ条件で行い、580mの光ファイバ20を得た。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォームの先端部分及び得られた光ファイバでは目視では問題が無かった。
実験3では、実験1で示した方法と同じ条件でプリフォーム18を作製した。インナーコア重合工程17で得られたこのインナーコア液の溶存酸素量比Rは、2.8であった。その後、実験1と同じ条件でインナーコア重合工程17を行いプリフォーム18を得た。得られたプリフォーム18内部には、目視でボイドなしを確認した。延伸工程19も実験1と同じ条件で行い、550mの光ファイバ20を得た。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォーム18の先端部分に1個の延伸泡が観察された。この延伸泡による光ファイバ損失は30mであった。
実験4は、実験2と同じ条件でインナーコア液処理工程16まで行った。インナーコア液の溶存酸素量比Rは、2.5であった。その後、実験1と同じ条件でインナーコア重合工程17を行いプリフォーム18を得た。得られたプリフォーム18内部には、目視でボイドなしを確認した。延伸工程19も実験1と同じ条件で行い、580mの光ファイバ20を得た。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォーム18の先端部分及び得られた光ファイバ20を目視では問題が無かった。
実験5は、インナーコア液調製工程16でインナーコア液1cm3 当たり約1.1kW・sのエネルギーで超音波照射した条件下で超音波照射時間を5分とした以外は、実験1と同じ条件で行った。このインナーコア液の溶存酸素量比Rは、3.3であった。その後は、実験1と同じ条件でインナーコア重合工程17を行いプリフォーム18を得た。プリフォーム18内部には、目視でボイドなしを確認した。また、延伸工程19も実験1と同じ条件で行い400mの光ファイバ20を得た。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォームの先端部分に6個の延伸泡が観察された。この延伸泡による光ファイバの損失は180mほどであった。
実験6は、アウターコア液調製工程14でアウターコア液に超音波照射時間を3分とした以外は、実験1と同じ条件で行った。このアウターコア液の溶存酸素量比Rは、3.2であった。その後は、実験1と同じ条件でインナーコア重合工程17を行いプリフォーム18を得た。得られたプリフォーム18には2個のボイドが観察された。また、延伸工程19も実験1と同じ条件で行った。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォームの先端部分に6個の延伸泡が観察された。この延伸泡による光ファイバ損失、前述のボイドによる光ファイバ損失により得られた光ファイバは280mに留まった。
実験7は、アウターコア液調製工程14でアウターコア液への超音波照射時間を3分とした。このアウターコア液の溶存酸素量比Rは、3.3であった。クラッドパイプ13の先端部の空気をそのままにした以外は、実験1と同じ条件でインナーコア重合工程17を行った。得られたプリフォーム18には3個のボイドが観察された。延伸工程19も実験1と同じ条件で行い、光ファイバ20を得た。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォームの先端部分に8個の延伸泡が観察された。この泡による光ファイバ損失、前述のボイドによる光ファイバ損失を含め得られた光ファイバ20は220mに留まった。
比較実験を次に示す方法で実験Aとして行った。実験Aは、インナーコア液調製工程14でインナーコア液への超音波照射を行わなかった。このインナーコア液の溶存酸素量比Rは、3.5であった。クラッドパイプ13の先端部の空気をそのままにした以外は、実験1と同じ条件でインナーコア重合工程17を行った。得られたプリフォーム18には多数のボイドが観察された。延伸工程19も実験1と同じ条件で行い、光ファイバ20を得た。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォームの先端部分で激しい発泡が観察され、この泡によって延伸された光ファイバが断線してしまった。
本発明に係るプリフォームの製造方法を行った実験1ないし7では、比較実験である実験Aと比較してプリフォーム中のボイドの数,延伸時の延伸泡が極めて少なく、さらには実験1ないし4では実験5ないし7に比べてより良い効果があることが分かる。また、本発明のプリフォームを延伸して得られた光ファバーの伝送損失は低く、微小泡の数も少ないことから伝送性能に優れた光ファイバを生産性良く製造できることが分かった。
実施例2では、実験1を基本条件としてインナーコア重合工程17を行う際のオートクレーブ中の雰囲気を代えて実験8ないし10を行った。観察及び測定は実施例1と同じ条件で行い、実験1の結果と併せて表2にまとめて示す。
実験8では、オートクレーブ中の雰囲気をアルゴンとした以外は、実験1と同じ条件で行った。得られたプリフォーム18内部には、目視で観察したところボイドは、見られなかった。また、延伸工程19も実験1と同じ条件で行い550mの光ファイバ20を得た。延伸時には電気炉中に置かれたプリフォーム先端部に1個の延伸泡が見られた。延伸泡による光ファイバ損失は30mほどであった。
実験9では、オートクレーブ中の雰囲気をヘリウムとした以外は、実験1と同じ条件で行った。得られたプリフォーム18内部には、目視で観察したところボイドは見られなかった。また、延伸工程19も実験1と同じ条件で行い580mの光ファイバ20を得た。延伸時には電気炉中に置かれたプリフォーム中には延伸泡の発生が無かった。
実験10では、オートクレーブ中の雰囲気を置換せず、空気のままとした以外は実験1と同じ条件で行った。得られたプリフォーム18内部には、目視で直径0.5cm〜0.8cmほどのボイドが5個確認された。延伸工程19も実験1と同じ条件で行ったが、延伸時に電気炉中に置かれたプリフォームには合計10個の延伸泡の発生が確認された。そのため、光ファイバ20は、280mしか得られなかった。
オートクレーブ中の雰囲気を窒素(実験1),アルゴン(実験8),ヘリウム(実験9)とした場合には、伝送損失の低下が抑制され、微小泡の数も少ないことから伝送性能に優れた光ファイバを生産性良く製造できることが分かった。
13 クラッドパイプ
18 プリフォーム
30 インナーコア
31 アウターコア
18 プリフォーム
30 インナーコア
31 アウターコア
Claims (10)
- 重合性組成物を重合させてなるプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、
前記重合性組成物の隔膜ガルバニ電池法によって測定した溶存酸素量の指示値の少なくとも1つが、
同一温度下における純水の飽和溶存酸素量の指示値の3.3倍以下である重合性組成物を用いて製造することを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - 重合性組成物を重合させてなるプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、
前記重合性組成物の少なくとも1つを重合前に1.8kW・s/cm3 以上の超音波照射処理を施すことを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - 重合性組成物を重合させてなるプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、
前記重合性組成物の少なくとも1つを重合前に0.005MPa以上0.03MPa以下の減圧下にて5分以上減圧処理することを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - 前記重合性組成物の超音波処理または減圧処理の後に、
前記重合性組成物に含まれている空気を不活性ガスに置換させる置換処理を行うことを特徴とする請求項2または3記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - 請求項2ないし4記載の少なくともいずれか1つの処理を行い、
前記重合性組成物の隔膜ガルバニ電池法によって測定した重合前の溶存酸素量の指示値の少なくとも1つを
同一温度下における純水の飽和溶存酸素量の指示値の3.3倍以下に低減させることを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - 前記いずれか1つ記載の処理を行った重合性組成物を不活性ガス雰囲気下で重合した領域を少なくとも1つ形成すること特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。
- 前記プラスチック光学部材用プリフォームが、透光性を有するコア部と、前記コア部の屈折率よりも小さい屈折率を持つクラッド部とを有しており、
前記コア部の形成を塊状重合法によって行うことを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - 請求項1ないし7いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法により製造されたことを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォーム。
- 前記プラスチック光学部材用プリフォームが、中心から半径方向にかけて屈折率が連続的に低下する分布を示すコア部と、前記コア部の屈折率よりも小さい屈折率を持つクラッド部と、を有する屈折率分布型プラスチック光学部材用プリフォームであることを特徴とする請求項8記載のプラスチック光学部材用プリフォーム。
- 請求項8または請求項9に記載のプラスチック光学部材用プリフォームを延伸して得られることを特徴とするプラスチック光ファイバ。
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JP2003329964A JP2005099129A (ja) | 2003-09-22 | 2003-09-22 | プラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びにプラスチック光ファイバ |
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WO2007032051A1 (ja) * | 2005-09-12 | 2007-03-22 | Tadahiro Ohmi | 重合体の製造方法及び重合体材料 |
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2003
- 2003-09-22 JP JP2003329964A patent/JP2005099129A/ja active Pending
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