JP2005181446A - プラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びにプラスチック光ファイバ - Google Patents
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Abstract
【課題】 プラスチック光学部材用プリフォーム中に気泡が含有することを抑制する。
【解決手段】 低屈折率のポリマー(PVDF)を用いて、所望の外径、厚み、長さに制御したクラッドとなる中空管12を形成する。中空管内に重合性組成物(MMA)27を投入して重合させる事でポリマーからなるコア部25を形成する。このとき形状を制御した中空管12によってコア部の重合時における気泡発生の要因を抑制するためコア部25には気泡が含有していない。
【選択図】 図5
【解決手段】 低屈折率のポリマー(PVDF)を用いて、所望の外径、厚み、長さに制御したクラッドとなる中空管12を形成する。中空管内に重合性組成物(MMA)27を投入して重合させる事でポリマーからなるコア部25を形成する。このとき形状を制御した中空管12によってコア部の重合時における気泡発生の要因を抑制するためコア部25には気泡が含有していない。
【選択図】 図5
Description
本発明は、プラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びにプラスチック光ファイバに関するものである。
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造及び加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれら光学部材の中でも、プラスチック光ファイバは、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して、口径の大きい光ファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(以下、コア部またはコアと称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的に低屈折率の)有機化合物からなる外殻(以下、クラッド部またはクラッドと称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型(以下、GI型と称する)プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている。この様なGI型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合法を利用して、プリフォーム(母材)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法などが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
クラッド部内にコア部を形成する方法としては図7に示す方法が知られている。図7(a)に示すようにパイプ状に形成されたクラッド(以下、クラッドパイプと称する)50内にコア部形成用重合性組成物(以下、コア液と称する)51を注入する。なお、コア液51には、主成分となる重合性モノマー,重合を開始させる重合開始剤などが含まれている。さらに、必要に応じて連鎖移動剤,屈折率調整剤なども含まれている。クラッドパイプ50を加熱したり、光を照射したりすることで、コア液51中の重合性モノマーの重合が開始され、重合体(以下、ポリマーと称する)が形成される。なお、重合性モノマーが重合することにより体積収縮が生じる(図7(b)参照)。また重合に伴い、コア液51には気体52が発生する。この気体52の多数は、液面から蒸発するがコア液51中に泡として溶存しているものも存在する。コア液51の体積が減少しつつ重合が進行すると、図7(c)に示すようにコア液51の液面は、V字型になる。これをV字収縮と称する。図7(d)に示すようにクラッドパイプ50内のコア液が全て重合するとポリマーからなるコア53が形成され、プリフォーム54が得られる。このコア53の上面は、V字収縮している。このように、クラッドパイプ50内にコア液51を注入して、そのなかで重合させる方法は、クラッドパイプ50とコア53との界面に不整が生じ難い方法として知られている。
しかしながら、図7の重合法は、モノマーがポリマーに重合されることにより必ずコア液の体積収縮が生じる。この場合にクラッドパイプ50の形態に適切なものを選択しないとコア53に気体52が含まれる状態で形成される場合がある。また、重合反応中でクラッドパイプ50の一部の径が細くなりコア径の変動が生じたり、プリフォームの一部に撓みが生じたりする。これらは、いずれも光ファイバの構造不整の原因となり、伝送されている光を散乱させ散乱損失を生じるという問題がある。
本発明の目的は、体積収縮が生じても構造不整が生じないプラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びにそのプラスチック光学部材用プリフォームから製造され、伝送損失の悪化が抑制されたプラスチック光ファイバを提供することである。
本発明のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法は、クラッド部を重合体からなる中空管として、前記中空管内に重合性組成物を注入、重合させてコア部を作製するプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、厚みが0.1mm以上3.4mm以下である中空管を用いる。前記中空管の長さが250mm以上2000mm以下のものを用いることが好ましい。前記中空管の外径が15mm以上60mm以下のものを用いることが好ましい。
本発明のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法は、クラッド部を重合体からなる中空管として、前記中空管内に重合性組成物を注入、重合させてコア部を作製するプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、外径が15mm以上60mm以下である中空管を用いる。
本発明のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法は、クラッド部を重合体からなる中空管として、前記中空管内に重合性組成物を注入、重合させてコア部を作製するプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、長さが250mm以上2000mm以下である中空管を用いる。前記中空管の外径が15mm以上60mm以下のものを用いることが好ましい。前記コア部の重合温度における前記中空管の弾性率が0.1MPa以上1000MPa以下のものを用いることが好ましい。前記コア部の重合温度が、30℃以上140℃以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上で前記重合体の原料モノマーの沸点以下であり、特に好ましくは50℃以上で得られるポリマーのガラス転移温度以下である。
前記コア部の重合を行う際に、前記中空管の軸を略水平にして回転させながら行うこともできる。前記プラスチック光学部材用プリフォームを加熱溶融延伸するとプラスチック光ファイバが得られる。
また、本発明には、前記プラスチック光学部材用プリフォームの製造方法により製造されたプラスチック光学部材用プリフォームも含まれる。本発明のプラスチック光学部材用プリフォームは、クラッド部として厚みが0.1mm以上3.4mm以下、かつ長さが250mm以上2000mm以下である中空管を用いる。本発明のプラスチック光学部材用プリフォームは、重合体からなる中空管から形成されたクラッド部と、前記中空管内に重合性組成物を注入、重合させて作製されたコア部とを有するプラスチック光学部材用プリフォームにおいて、前記コア部が中心から半径方向にかけて屈折率に分布を有する。本発明のプラスチック光学部材用プリフォームは、重合体からなる中空管から形成されたクラッド部と、前記中空管内に重合性組成物を注入し、重合させて作製されたコア部とを有するプラスチック光学部材用プリフォームにおいて、前記クラッド部となる中空管は厚みが0.1mm以上3.4mm以下、かつ長さが250mm以上2000mm以下である。前記コア部が中心から半径方向にかけて屈折率に分布を有することが好ましい。前記コア部が中心から半径方向にかけて連続的に低下する屈折率分布を有することが好ましい。前記クラッド部の屈折率が、前記コア部の屈折率より小さいことが好ましい。前記クラッド部が、含フッ素重合体を含むことが好ましい。さらに、本発明には、前記プラスチック光学部材用プリフォームを加熱延伸して得られるプラスチック光ファイバも含まれる。
前記中空管に厚みが0.1mm以上3.4mm以下、長さが250mm以上2000mm以下、外径が15mm以上60mm以下、のうちの少なくとも1つの条件を満たすものを用いるので、重合性組成物を重合している際に生じる気体が泡として残ることが抑制される。また、記コア部の重合温度における前記中空管の弾性率が0.1MPa以上1000MPa以下のものを用いるから、前記重合性組成物が体積収縮してもそれに応答して前記中空管の形態が一定のものに保持されるから界面不整の発生を抑制できる。このように、本発明は、中空管内に重合性組成物を重合させるプラスチック光学部材用プリフォームの製造に適しており、界面ゲル重合法を行うGI型プリフォームの製造に好ましく適用することができる。
また、本発明に係るプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法は、前記コア部の重合を行う際に、前記中空管の軸を略水平にして回転させながら行うと、コア部に泡が含有することが抑制される。これにより、前記プラスチック光学部材用プリフォームを加熱溶融延伸して得られるプラスチック光ファイバの伝送損失の悪化を極めて防止することができる。
本発明のプラスチック光学部材用プリフォームは、泡の含有が抑制されているため、そのプリフォームを加熱延伸して得られるプラスチック光ファイバ中に気泡の発生が生じることが極めて抑制される。
本発明に係るプラスチック光学部材用プリフォーム(以下、プリフォームと称する)の製造方法を図1に示す。クラッド作製工程11で中空円筒状のクラッドパイプ12を作製する。次に、重合性組成物を含むアウターコア形成用液(以下、アウターコア液と称する)を調製し、その液を用いてアウターコア重合工程13を行い、クラッドパイプ12の中空部にアウターコアを形成する。さらに、インナーコア重合工程14によりインナーコアを重合して形成して、プラスチック光学部材用プリフォーム(以下、プリフォームと称する)15を製造する。プリフォーム15を延伸工程16で加熱溶融延伸してプラスチック光ファイバ(以下、光ファイバと称する)17を得る。光ファイバ17は、そのままの素線の形態で光ファイバとして用いることができる。しかしながら、取り扱いを容易にしたり、光ファイバ17の外面の損傷を抑制したりするために保護層を形成することが好ましい。保護層を被覆工程18により形成して、光ファイバ17の外周面が被覆されたプラスチック光ファイバケーブル(以下、光ファイバケーブル)19を得ることができる。
図2(a)にプリフォーム15の断面の一形態を示す。インナーコア25は、高い伝送特性が得られるように、その中心部から外周部へ連続的に屈折率が小さくなるGI型とすることが好ましい(図2(b)参照)。また、アウターコア26は、インナーコア25を形成する際に、その中で界面ゲル重合が可能な素材から形成されている。また、クラッドパイプ12は、機械的強度に優れ、伝送される光をクラッドパイプ12外に放射しない素材から形成することが好ましい。図2に示すプリフォーム15の製造方法を例として本発明を詳細に説明する。始めにクラッド素材,コア素材及び所望の添加剤について説明し、その後にプリフォームの製造方法について説明する。なお、この例示はあくまでも本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
クラッド部の素材は、一般的に透明性を有する熱可塑性のポリマーであることが必要である。また、コア部を伝送する光がコア部とクラッド部との界面で全反射するようにコア部の屈折率より低い屈折率を有しているものを用いる。また、光学異方性が生じないように非晶性のポリマーを用いる。さらに、コア部と密着性が良く、タフネスに優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられる。
例えば、そのようなポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと称する)が挙げられる。また、メチルメタクリレート(以下、MMAと称する)とトリフルオロエチルメタクリレート(以下、3FMAと称する)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体を用いることもできる。また、tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体が挙げられる。さらには、ポリカーボネート,ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン社製)など),ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など),フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)を用いることもできる。また、フッ素樹脂の共重合体(例えば、PVDF系共重合体)や、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFA)ランダム共重合体,クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合系などを用いることもできる。また、これらポリマーの水素原子(H)を重水素原子(D)に置換して伝送損失の低減を図ることもできる。さらに、本発明においては、重合時におけるクラッド部内のコア液の収縮に対する応答性に優れているものを選択することが好ましく、この点については後に説明する。
コア部の素材は、光伝送の機能を損なわない限りにおいて特に限定されるものではない。特に好ましく用いられるものとしては、有機材料として光透過性が高い原料である。例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、ポリカーボーネート類の原料であるビスフェノールA等を例示することができ、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類を組成として含むものをより好ましく用いることができる。
以上に挙げた重合性モノマーとして具体的に、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3 −テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3 −ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5 −オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4 −ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類,組成比を組むことが好ましい。特に好ましいポリマーとしては、透明樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられる。
さらに、光ファイバまたは光ファイバケーブルに近赤外線を伝送する場合は、構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報などに記載されているような重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを始めとする、C−H結合の水素原子(H)を重水素原子(D)やフッ素(F)などで置換した重合体を用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。なお、原料モノマーは重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に低減することが望ましい。
重合性モノマーを重合させてポリマーを製造する際には、重合開始剤によって重合を行うことがある。この場合、モノマーの重合反応を開始させる開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、2種類以上を併用してもよい。
機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには連鎖移動剤を使う事ができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
コア部が、その中心から外周方向に向かって屈折率分布を有するGI型の場合には、伝送性能が向上するため、より広帯域の光通信を行うことができ、高性能通信用途に好ましく用いることができる。屈折率分布を付与する方法としては、コア部を形成する重合体に複数の屈折率を有する重合体の組合せやそれらを組合わせた共重合体を用いるか、または、ポリマーマトリクスに屈折率分布を付与するための添加剤である屈折率調整剤(以下、ドーパントと称する)を添加する必要がある。
ドーパントは、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm3 )1/2 以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、コア部形成用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成する方法を例示しているが、それ以外にもプリフォーム形成後に屈折率調整剤を拡散させる方法も知られている。以下、屈折率の分布を有するコア部をGI型コア部と称する。GI型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有するGI型プラスチック光学部材となる。
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、ドーパントの移動を抑えることができるので熱に対する屈折率分布の安定性の面では有利となる可能性がある。屈折率調整剤の、コア部における濃度および分布を調整することによって、プラスチック光ファイバの屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、使用用途、使用形態および組み合わされるコア部原料などに応じて適宜選ばれる。
その他、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部に含有させることができる。
プリフォームの製造は始めにクラッド作製工程11によりクラッドパイプ12を作製する。クラッドパイプ12の作製方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、クラッドパイプ12の原料に熱可塑性のポリマーを用いて、ポリマーを加熱溶融して中空管状に押し出す溶融押出し法で作製されたものを用いることができる。この方法では前述のポリマーであれば任意に用いることができるが、屈折率などの物性や性能からフッ素樹脂などを好ましく用いることができ、特にPVDFを好ましく用いることができる。PVDFは、機械的強度に優れ、屈折率が低いため光ファイバ内を伝送している光の閉じ込めの能力が高いためクラッドパイプの素材として好ましく用いられる。なお、クラッドパイプ12は、界面ゲル重合法でプリフォームを作製する場合には、それ自身が反応容器(重合容器)となる。そこで、溶融押出し法で製造された中空円筒状のクラッドパイプ12の一端にクラッドパイプの素材と同じポリマーを用いて底付けを行うか、コンタミネーション防止の観点から耐薬品性の高い素材(フッ素樹脂など)からなる栓で封止することが好ましい。なお、クラッドパイプ12の素材としては、PMMAなどのアクリル樹脂(メタクリル樹脂とも称される)を用いることもできる。
また、クラッドパイプ12は、回転重合法を用いるクラッド作製工程11により製造することもできる。例えば、クラッドパイプ12をPMMAを素材として形成する場合には、重合性モノマーとしてMMAを用いる。このMMAと反応開始剤、連鎖移動剤及びドーパント(屈折率調整剤)など所望の添加剤とを含有させたクラッド形成用液(以下、クラッド液と称する)を調製する。このクラッド液を所望のプリフォームの外径に対応する内径を有する充分な剛性を有する円筒状の重合容器に入れる。次に、重合容器を温水中で振盪を加えながら予備重合を行い、クラッド液の粘性を高めることが好ましい。その後に、重合容器を水平方向(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、加熱しながら回転重合を行う。なお、回転重合を行う際の重合容器の設置方向は、水平方向に限定されるものではない。例えば、重力と略平行の垂直方向や斜め方向に設置して回転させても良い。これにより、重合容器内面に壁を形成するように重合され、厚みt1が略均一のクラッドパイプ12を得ることができる。なお、クラッド液は、調製後に超音波処理や減圧処理により脱気させることが好ましい。また、重合する際には、ヘリウム,アルゴン,窒素などの不活性ガス雰囲気で行うことがより好ましい。なお、クラッドパイプには、市販のパイプ状の商品を用いることもできる。
また、本発明に用いられるクラッドパイプは、機械的強度向上や難燃性などの多種の機能性を付与させるために複層から形成されたものを用いても良い。クラッドパイプを複層で形成することで、コア部の重合性や耐湿性をそれぞれ別の層で提供することもできる。例えば、コア部と界面とを形成する中空管内壁部とその中空管内壁部を覆う中空管外壁部の2層からクラッドパイプを形成する場合、コア部の重合性を中空管内壁部で、耐湿性を中空管外壁部で提供することもできる。コア部の重合性を提供する際に好ましく用いることができる素材としては、コア部を界面ゲル重合で生成する際に中空管内壁部とコア部とで界面不整が起こらないようなものが好ましい。なお、各層が複層からなる場合、中空管内壁の素材や特性がコア部外層として用いられる場合にアウターコア、クラッドの1構成層として用いられる場合にインナークラッドと呼ぶこともある。
具体的には、中空管内壁部を構成する素材(ポリマー)の溶解度パラメーターとコア部を構成する素材(ポリマー)の溶解度パラメーターとの差が14000(J/m3 )1/2 [=7(cal/cm3 )1/2 ]以下、好ましくは10000(J/m3 )1/2 [=5(cal/cm3 )1/2 ]以下、より好ましくは6000(J/m3 )1/2 [=3(cal/cm3 )1/2 ]以下のものを用いることが好ましい。耐湿性を提供する層を有するクラッド部を選択した場合は、コア部との重合性は考えなくても良いので、前述の素材の他に吸水率が1.8%未満であるポリマーを任意に選択することができる。また、複層構成での中空管内壁部において好ましく用いることができる素材は、少なくともコア部の重合性を考慮すれば良く、前述の単層構成の場合の素材以外でも、コア部素材との溶解度パラメーターの差が上記範囲のものであれば、好ましく用いることができる。
本発明に用いられるクラッドパイプ12の端面の図及び断面図を図3,図4に示す。図3に示されるクラッドパイプ12の外径Dは、15mm以上60mm以下であることが好ましく、より好ましくは16mm以上50mm以下であり、最も好ましくは、19mm以上32mm以下のものを用いることである。径が小さ過ぎると製造条件の制御が困難になる上に生産性に劣る場合がある。また、径が大き過ぎると、厚みムラや真円度の制御が難しくなる場合があるうえに、後述のコア部の重合収縮の応答に対して対応しきれなくなる場合が生じ、発泡の原因となる場合もある。さらに、コア部に屈折率分布を与える場合には、径が大き過ぎても小さ過ぎても反応の制御が難しくなる場合がある。
また、厚みt1は、0.1mm以上3.4mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以上2.0mm以下であり、最も好ましくは、0.5mm以上1.4mm以下のものを用いることである。厚みが0.1mm未満となるとパイプ形状の維持が困難となる場合があり、厚すぎると厚みムラや真円度の制御が難しくなる場合が生じる。なお、厚みt1が薄いクラッドパイプ12を用いて回転重合を行う場合には、強度が不足する場合もある。そのときには、支持管内にクラッドパイプ12を挿入した後に反応を行うことが好ましい。
前記形態のクラッドパイプ12を界面ゲル重合法に用いることで、コア液は外周方向から中心に向かって収縮することが可能となる。例えば、MMAを含むコア液からPMMAを主成分とするコア部を重合すると、通常15%ほど体積が収縮することが知られている。クラッドパイプ12の外径Dと厚みt1が前記範囲内であると、クラッド部とコア部とに空隙が生じないようにコア液は、重合しつつその液の中心方向に向けて均一に収縮して、重合上部に界面不整が生じないV字収縮を形成することができる。
クラッドパイプ12の長さLは、250mm以上2000mm以下であることが好ましく、より好ましくは300mm以上1200mm以下であり、最も好ましくは、600mm以上900mm以下のものを用いることである。前記長さの範囲とすることで、コア液の収縮が起きる際に、発生した気体は液面から液体外に揮発しやすくなり、気泡の原因となる気体の含有が抑制される。長さLが、2000mmを超えると、その中に注液されるコア液の量が多くなる。それにより、コア液の収縮が大きくなるため、クラッド部とコア部とに空隙が生じないようにV字収縮を形成することが困難となる場合があり、回転重合法を用いる場合は偏心などによってコア部重合時のいわゆる波うちによる厚みのばらつきや歪みが生じるおそれがある。また、長さLが、250mm未満であると、V字収縮以外で形成されるプリフォーム15の長さが短くなり、光ファイバ17の母材として短すぎるため、この短いプリフォーム15から延伸工程16を行い、光ファイバ17を製造しても、効率が悪く生産性の悪化が生じ、製造適正に欠ける場合がある。
以下に、クラッド(中空管外壁部),アウターコア(中空管内壁部),インナーコアから形成されるプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法について説明する。
アウターコア重合工程13について説明する。アウターコア液は、例えば、MMAなどの重合性モノマーを主成分として、所望の添加剤(例えば、重合開始剤,連鎖移動剤,ドーパントなど)を添加して調製する。その後に、クラッドパイプ12内に注液する。アウターコア26は、クラッドパイプ12内面にインナーコア形成用の中空円筒状となるように回転重合法により形成する。回転重合法は、クラッドパイプ12を形成する方法と同様の条件で行うことで、略均一な厚みの中空円筒状としてクラッドパイプ12内面に形成される。なお、アウターコア液は、調製後に超音波処理や減圧処理により脱気を行うことが好ましい。
インナーコア重合工程14について図5を用いて説明する。インナーコア液27も、アウターコア液と同様に、重合性モノマーと所望の添加剤(例えば、重合開始剤,連鎖移動剤,ドーパントなど)とから調製される。このインナーコア液も調製後、超音波処理や減圧処理により脱気することが好ましい。図5(a)に示すようにアウターコア26が形成されているクラッドパイプ12内に、インナーコア液27を注入する。重合を開始させるために、クラッドパイプ12を加熱するか、光を照射する。重合が開始され進行すると、図5(b)に示すように重合性モノマーがポリマーになり、インナーコア液27の体積収縮が生じる。また、重合に伴い、インナーコア液27中に気体28が発生し、液面から蒸発する。図5(c)に示すように重合がさらに進行するとインナーコア液27の体積収縮がさらに進行する。重合反応に伴って生じたり、インナーコア液27中に溶存している気体28は、蒸発し続ける。インナーコア液27の重合が終了するとポリマーからなるインナーコア25が形成されプリフォーム15が得られる。本発明に用いられるクラッドパイプ12を用いることで、発生する気体28は、容易に液面から蒸発することでインナーコア25に泡として残ることが抑制される。このため、このプリフォーム15を延伸工程16にて延伸することで気泡(ボイドとも称される)の発生が極めて抑制された光ファイバ17を得ることができる。この光ファイバ17は、ボイドが極めて少ないために伝送損失の悪化が抑制される。
また、アウターコア26とインナーコア25との間及びクラッドパイプ12とアウターコア26との間それぞれに空隙が生じないように形成するには、アウターコア26及びクラッドパイプ12がインナーコア液27の体積収縮に対する応答性に優れる可撓性を有していること必要である。アウターコア26は、通常インナーコア25の界面ゲル重合を行うために設けられるため、それら素材の主成分は同じであり体積収縮の応答は優れている。そこで、本発明においては、クラッドパイプ12の素材に体積収縮の応答に優れる素材を選択することが重要である。例えば、コア部またはインナーコア部の素材をPMMAとするために界面ゲル重合法を行うと、重合温度は、30℃〜140℃の範囲となる。この温度範囲におけるクラッドパイプ12の素材の弾性率が0.1MPa以上1000MPa以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは1MPa以上600MPa以下のものを用い、最も好ましくは、10MPa以上400MPa以下のものを用いることである。なお、本発明においては、弾性率としてヤング率を用いる。このような素材としては、PMMA、PVDFなどが挙げられる。
本発明に係るプリフォームの製造方法により製造されるプリフォームの形態は、図2に示すものに限定されるものではない。例えば、図6に示すプリフォーム40のようにコア41とクラッド42とからなるものにも本発明は適用できる。この場合に、コア41は、GI型であっても良いし、屈折率分布を有さないステップインデックス型(SI)型であっても良い。さらには、マルチステップインデックス型(MSI型)であっても良い(いずれも図示しない)。
なお、本発明において、コア部の作製方法は、前記方法に限定されるものではない。例えば、図2に示すプリフォーム15のインナーコア25を回転させながら界面ゲル重合を行う回転重合法により形成することもできる。この場合には、アウターコア26が形成されているクラッドパイプ12の中空内にインナーコア液を注入した後に、その一端を密閉し回転重合装置内に水平状態(クラッドパイプの高さ方向が水平になる状態)として回転させながら重合を行う。このとき、インナーコア液の供給は一括でも良いし、逐次や連続して供給しても良い。このときにインナーコア用重合性組成物の供給量、組成、重合度を調整することで、連続した屈折率分布を有するGI型のほかに、階段状の屈折率分布を有するマルチステップ型の製造にも適用できる。なお、本発明において、この重合方法を回転ゲル重合法と称する。また、図6に示すプリフォーム40のコア41を形成する際にもコア部回転重合法を適用することができる。
前記コア部回転重合法は、重合を行っている際に、界面ゲル重合法に比べてコア液の表面積を大きく取れるので、コア液内から発生する気泡の脱気が容易に行われる。そのため、得られるプリフォーム内に泡の含有を抑制することが可能となる。また、コア部回転重合法によりコア部を形成するとその中心部が中空になるプリフォームが得られる場合がある。そのプリフォームをプラスチック光学部材、特に光ファイバに用いる際には、溶融延伸時にその中空が塞がれつつ延伸されるので特に問題は生じない。また、前記プリフォームを他の光学部材、例えばプラスチックレンズに用いる際には、プリフォームの中空部を塞ぐように溶融延伸を行うことで、中心部の中空が閉塞されたプリフォームを得ることができ、このプリフォームからプラスチックレンズなども作製することが可能となる。
前記方法で作製されるプリフォーム15を延伸することで、所望の直径、例えば100μm以上1000μm以下の光ファイバ17を得ることができる。延伸工程16で行われる製造方法に関しては、特に制限はなく、既知の方法を等しく適用することができる。なお、延伸工程16を行う前にプリフォーム15を減圧乾燥することで、プリフォーム中の残留モノマーや水分の低減を図ることができる。これにより、溶融加熱延伸時における残留モノマーや水分が揮発し発泡することにより生じる延伸泡の発生を抑制できる。
延伸工程16では、プリフォーム15を加熱溶融延伸する。加熱温度はプリフォーム15の材質等に応じて、適宜決定することができる。一般的には、180℃〜250℃中の雰囲気で行われることが好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、プリフォーム15の直径、光ファイバ17の直径および用いる材料等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されている様に、溶融したポリマーを配向させるために0.1N以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されている様に溶融延伸後に歪みを残さないようにするために1N以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されている様に、延伸の際に予備加熱を設ける方法等をとることもできる。以上の方法によって得られる光ファイバ17については、破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することで後に説明する光ファイバケーブル19の曲げや側圧特性を改善することができる。
素線である光ファイバ17は、そのままの形態でも、例えば光ファイバのような光伝送体として用いることができるが、通常は、その外周に保護層を設け、光ファイバ17を保護すると共に様々な機能を持たせる。例えば、光ファイバの曲げ・耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として光ファイバ17の表面に1層以上の保護層を被覆する被覆工程18を行いプラスチック光ファイバケーブル19として使用する。なお、保護層の材料及び光ファイバに保護層を形成する方法は、特に限定されるものではない。
保護層形成用の材料には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル,ポリビニルアルコール,ウレタン樹脂,ナイロンなどの一般的な素材を使うことができるが、被覆時の光ファイバ17に熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)を与えないものを選択することができ、以下の素材は熱ダメージの観点や機械特性などから好ましく使えることができる。具体的に以下の材料を挙げることができる。これらは高い弾性を有しているため、曲げなどの機械的な特性付与の観点でも効果がある。まず、ポリマーの一形態であるゴムを用いることもできる。具体的には、イソプレン系ゴム(例えば、天然ゴム,イソプレンゴムなど),ブタジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム,ブタジエンゴムなど),ジエン系特殊ゴム(例えば,ニトリルゴム,クロロプレンゴムなど),オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム,アクリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴムなど),エーテル系ゴム,ポリスルフィド系ゴム,ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
室温では流動性を示し、加熱することによりその流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
熱可塑性エラストマー(TPE)を用いることもできる。熱可塑性エラストマーは、室温ではゴム弾性を示し、高温では可塑化されて成形が容易である物質群である。具体的には、スチレン系TPE,オレフィン系TPE,塩化ビニル系TPE,ウレタン系TPE,エステル系TPE,アミド系TPEなどが挙げられる。なお、前記列記したポリマーは、光ファイバの素線のポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で成形可能なものであれば、特に上記材料に限定されず、各材料間もしくは上記以外の共重合体や混合ポリマーを用いることもできる。
また、ポリマー前駆体と反応剤などとを混合した液を熱硬化させるものを用いることができる。例えば、特開平10−158353号公報に記載のNCOブロックプレポリマーと微粉体コーティングアミンとから製造される1液型熱硬化性ウレタン組成物を挙げることができる。また、WO95/26374に記載のNCO基含有ウレタンプレポリマーと20μm以下の固形アミンとからなる1液型熱硬化性ウレタン組成物なども用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
さらに、必要に応じて多層の被覆層としても良い。1次被覆が充分な厚みを有している場合、光ファイバに与える熱ダメージが減少するため、光ファイバの硬化温度の制限は素線へ直接被覆する場合に比べて、緩くすることができる。2次被覆層には、難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよい。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を好ましく使うことができる。
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、前述の難燃化以外に、光ファイバの吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
また、ケーブルの形状は使用形態によって、光ファイバを同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じてその形態を選ぶことができる。
また、本発明の光ファイバを用いた光伝送体は、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型、F05型、MU型、FC型、SC型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84-C, No.3, MARCH 2001, p.339-344 「High-Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明(導光)、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料の種類, それらの割合,操作などは、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下にしめす具体例に制限されるものではない。
実施例1では、プリフォーム15及び光ファイバ17を製造する際に、(a)〜(d)の観察、測定を行った。それらの結果は表1にまとめて示す。(a)得られたプリフォーム15を目視で気泡(以下、ボイドと称する)の数を観察した。(b)延伸工程16を行っている際に、延伸された光ファイバ17に発生した泡(以下、延伸泡と称する)の数を目視で観察した。(c)得られた光ファイバ17の波長650nmの条件での伝送損失を測定した。(d)得られた光ファイバ17の先端からMINI Inc.社製のLWL−Fiberlightの光入射を行い、光ファイバの途中部分から光がもれ出る箇所を観察した。その部分を反射条件にて顕微鏡観察したところ、ラグビーボール状の小さな泡(以下、微小泡と称する)が長手方向でも0.5mm〜2mm程度の大きさのものが観察された。得られた光ファイバ17の50m当たりの微小泡の数を確認した。
実験1では、押し出し成形により作製した外径19.1mm,内径18.1mmすなわち、厚みt1が0.5mmであり,長さLが870mmのPVDFからなるクラッドパイプ12を用いた。このクラッドパイプ12を充分に剛性を有する内径20mm,長さ60cmの重合容器に挿入した。このクラッドパイプ12を純水にて洗浄、90℃にて乾燥させた。その後に、エタノールにて管内壁を洗浄した後に、80℃の熱オーブンにて減圧条件下(大気圧に対して−0.05MPa)で24時間、減圧処理を行った。
次に、アウターコア重合工程13を行った。三角フラスコ内に、メチルメタクリレート(MMA 和光純薬(株)社製)129.0gと、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.0645gと、1−ドデカンチオール(ラウリルメルカプタン)0.516gとをそれぞれ計量してアウターコア液を得た。このアウターコア液を井内盛栄堂(株)社製の超音波洗浄装置USK−3(38000MHz、出力360W)を用いて10分間超音波照射を行った。次に、クラッドパイプ12の一端をシリコン栓とシールテープにて封をし、クラッドパイプ12内にそのアウターコア液を注液した後に減圧濾過装置を用いてクラッドパイプ12内を大気圧に対して0.01MPa減圧した。減圧脱気しつつ前記超音波洗浄装置を用いて超音波処理を5分間行った。このクラッドパイプ12と同じものを更に作製して、試料長:約3cm,試料幅:0.4cmとしたサンプルを、線形領域強制伸張振動非共振型粘弾性測定器((株)東洋ボールドウィン製:レオバイブロン(Rheovibron) DDV−II−EA型)を用いて、各測定周波数(特記しないものは周波数110Hz),昇温速度:2℃/min,変位:16×10-4cmの条件で、100℃、120℃、140℃における弾性率(ヤング率)を測定したところ、それぞれ640MPa,460MPa,290MPaであった。
クラッドパイプ12の先端部分の空気をアルゴンにて置換後、クラッドパイプ12の先端部をシリコン栓とシールテープを用いて密閉した。アウターコア液を含んだクラッドパイプ12ごと、60℃の湯浴中にいれ、浸透させつつ2時間予備重合を行った。その後、前記予備重合を行ったクラッドパイプ12を水平状態(クラッドパイプの高さ方向が水平になる状態)で60℃の温度を保持しつつ3000rpmにて回転させながら1時間加熱重合(回転重合)を行った。その後に回転速度2000rpmで70℃,4時間、さらに1500rpmで90℃,20時間の回転重合を行った。クラッドパイプ12の内側にPMMAからなる厚みが4.0mmのアウターコア26を有する円筒管を得た。
次に、インナーコア重合工程14を行った。前述したアウターコア26が形成されているクラッドパイプ12を80℃の熱オーブンにて減圧条件下(大気圧に対して−0.05MPa)で4時間、減圧処理を行った。
さらに、三角フラスコ内に重水素化メチルメタクリレート(MMA−d8)60.0gと、ジ−tert−ブチルパーオキサイド10μLと、1−ドデカンチオール0.165gと、ドーパントとしてジフェニルスルフィド4.20gとをそれぞれ計量してインナーコア液27を調製した。その後に超音波洗浄装置USK−3を用いて10分間超音波照射を行った。アウターコア26が形成されているクラッドパイプ12を80℃で20分保温した後にインナーコア液27を中空部に注入した。クラッドパイプ12の一端をシールテープでその後そのクラッドパイプ12をオートクレーブ内にたて置きで設定(底付け部が下、シールテープで覆った部分が上で)した後、オートクレーブの蓋をセットした。オートクレーブ内の空気をアルゴンガスにて置換し、そのなかを0.05MPaの圧力が掛かった雰囲気とした。100℃で48時間界面ゲル重合法で加熱重合させた。その後120℃で更に24時間の加熱重合及び熱処理を行った。その後にオートクレーブ外にプリフォーム15を取り出した。得られたプリフォーム15内部には目視でボイドなしを確認した。なお、本実験によるプリフォーム15の製造方法をコア部静止重合法と称する。
プリフォーム15を延伸して光ファイバ17とする延伸工程16を行った。プリフォーム15を上下方向に4つの温度ゾーンを持つ電気炉(上から240℃,220℃,170℃,一番下は140℃)中に通して溶融した。プリフォーム15の先端が細くなったところで、径が470±10μmに安定させるべく延伸条件(延伸スピード,引っ張り条件)を調整しつつ延伸を連続して行った。その結果260mの光ファイバ17が得られた。延伸時には、電気炉中に置かれたプリフォーム15の先端部分及び得られた光ファイバ17では目視では問題が無かった。また、光ファイバ17に650nmのLD光(レーザーダイオード光)を通し輝点として観察される微小泡の数を測定したところ、50mあたり34個観察された。また、その光ファイバ17の伝送損失を公知の方法で測定したところ、163dB/kmであった。
実験2では、外径Dが19.1mm,内径17.1mmすなわち厚みt1が1.0mmのクラッドパイプ12を用い、アウターコア26の厚みを3.8mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験3では、外径Dが19.1mm,内径15.1mmすなわち厚みt1が2.0mmのクラッドパイプ12を用い、アウターコア26の厚みを3.3mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験4では、外径Dが19.1mm,内径11.1mmすなわち厚みt1が4.0mmのクラッドパイプ12を用い、アウターコア26の厚みを2.5mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験5では、外径Dが31.6mm,内径30.0mmすなわち厚みt1が0.8mmのクラッドパイプ12を用い、アウターコア26の厚みを5.2mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験6では、外径Dが48.2mm,内径45.6mmすなわち厚みt1が1.3mmのクラッドパイプ12を用い、アウターコア26の厚みを5.2mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験7では、外径Dが76.3mm,内径72.3mmすなわち厚みt1が2.0mmののクラッドパイプ12を用い、アウターコアの厚みを8.8mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験8では、長さLが、200mmのクラッドパイプ12を用いた以外は、実験1と同じ条件で実験を行ったなお、アウターコア液、インナーコア液27の調製量は適宜決定した。得られたプリフォームは、加熱溶融延伸することが困難であり、素線を得ることができなかった。
実験9では、長さLが、420mmのクラッドパイプ12を用いた以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験10では、長さLが、1410mmのクラッドパイプ12を用いた以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験11では、長さLが、2270mmのクラッドパイプ12を用いた以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液の調製量は適宜決定した。
実験12では、外径Dが31.6mm,内径が28.4mmすなわち厚みt1が1.6mmのクラッドパイプ12を用い、アウターコア26の厚みを4.9mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
実験13では、外径Dが31.6mm,内径が26.8mmすなわち厚みt1が2.4mmのクラッドパイプ12を用い、アウターコア26の厚みを4.6mmとした以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。なお、アウターコア液,インナーコア液27の調製量は適宜決定した。
表1中で、クラッドパイプ外径Dが76.3mmのものを用いた実験7では、プリフォーム中にボイドが多数見られ、光ファイバとして用いることができないため、延伸工程16は行わなかった。また、クラッドパイプ長さLが2270mmのものを用いた実験11では、得られたプリフォーム中に17個のボイドが見られた。このプリフォームを延伸したところ、延伸された光ファイバに多数の延伸泡が多数見られた。この光ファイバは、伝送損失の測定,微小泡の観察は不可能であった。クラッドパイプ長さLが200mmのものを用いた実験で8は、得られたプリフォーム中には、得られたプリフォーム中にボイドは見られなかった。しかしながら、クラッドパイプの長さが短すぎるため、延伸工程16の実施が困難であり、光ファイバを得ることはできなかった。この実験条件では、光ファイバのプリフォームの製造条件として好ましくないことが分かった。さらに、クラッドパイプ厚みt1が4.0mmのものを用いた実験4では、得られたプリフォーム中に5個のボイドが見られた。また、このプリフォームを延伸して得られた光ファイバでは延伸泡が10個見られ、微小泡が121個見られた。この実験では、クラッドパイプの厚みが厚過ぎるため、泡抜きが行われ難いことが分かった。
表1から、クラッドパイプ12の外径Dが、15mm〜60mm、厚みt1が、0.1mm〜3.4mm、長さLが、250mm〜2000mmの範囲のものを用いた本発明に係る実験1, 2,3,5,6,9,10,12,13では、泡の含有を抑制すると共に、伝送損失の悪化を抑制できることが分かった。
実施例2では、インナーコアをコア部回転重合法により作製したプリフォームを用いた以外は、実施例1と同じ実験を実験21ないし33として行った。下記に説明するインナーコア部の作製方法以外は、実験21ないし33は、実験1ないし13と同じ実験条件でそれぞれの実験を行った。なお、実験条件及び測定結果は後に表2にまとめて示す。
アウターコア部が形成されているクラッドパイプ12を80℃で20分保温した後にインナーコア液を中空部に注入した。クラッドパイプ12の一端をシールテープで覆い、その後そのクラッドパイプ12を回転重合装置内に水平状態(クラッドパイプの高さ方向が水平になる状態)で45℃の温度を保持しつつ2500rpmにて回転させながら2時間加熱重合(回転重合)を行った。その後に1000rpmで120℃、16時間の回転重合を行うコア部回転重合法によりインナーコア部を形成してプリフォームを得た。なお、回転重合装置内は窒素ガスに置換して実験を行った。
表2に示されたコア部回転重合法を適用した本発明に係る実験21,22,23,25,26,29,32,33は、コア部静止重合法で行った実験1,2,3,5,6,9,12,13とそれぞれを比較すると、伝送損失、微小泡の含有のいずれも良好な値が測定されている。これは、コア部(実施例2では、インナーコア部)を重合している際に、インナーコア液中に含まれていた気体及び重合時に発生した気体とが、回転により効率良く脱気されたと考えられる。そして、微小泡の減少に伴い、伝送損失の悪化も抑制されていることが分かる。また、実験30と実験10とを比較しても略同等の性質の光ファイバが得られているため、コア部回転重合法は本発明において好ましく適用可能であることが分かる。
12 クラッドパイプ
15 プリフォーム
17 プラスチック光ファイバ
t1 クラッドパイプ厚み
D クラッドパイプ外径
L クラッドパイプ長さ
15 プリフォーム
17 プラスチック光ファイバ
t1 クラッドパイプ厚み
D クラッドパイプ外径
L クラッドパイプ長さ
Claims (13)
- クラッド部を重合体からなる中空管として、
前記中空管内に重合性組成物を注入、重合させてコア部を作製するプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、
厚みが0.1mm以上3.4mm以下である中空管を用いることを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - クラッド部を重合体からなる中空管として、
前記中空管内に重合性組成物を注入、重合させてコア部を作製するプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法において、
外径が15mm以上60mm以下である中空管を用いることを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。 - 前記中空管の長さが250mm以上2000mm以下のものを用いることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。
- 前記コア部の重合温度における前記中空管の弾性率が0.1MPa以上1000MPa以下のものを用いることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。
- 前記コア部の重合温度が、30℃以上140℃以下の範囲であることを特徴とする請求項4記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。
- 前記コア部の重合を行う際に、前記中空管を回転させながら行うことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法。
- 請求項1ないし6いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォームの製造方法により製造したことを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォーム。
- 重合体からなる中空管から形成されたクラッド部と、
前記中空管内に重合性組成物を注入し、重合させて作製されたコア部とを有するプラスチック光学部材用プリフォームにおいて、
前記クラッド部となる中空管は厚みが0.1mm以上3.4mm以下、かつ長さが250mm以上2000mm以下であることを特徴とするプラスチック光学部材用プリフォーム。 - 前記コア部が中心から半径方向にかけて屈折率に分布を有することを特徴とする請求項8記載のプラスチック光学部材用プリフォーム。
- 前記コア部が中心から半径方向にかけて連続的に低下する屈折率分布を有することを特徴とする請求項8または9記載のプラスチック光学部材用プリフォーム。
- 前記クラッド部の屈折率が、前記コア部の屈折率より小さいことを特徴とする請求項8ないし10いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォーム。
- 前記クラッド部が、含フッ素重合体を含むことを特徴とする請求項8ないし11いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォーム。
- 請求項8ないし12いずれか1つ記載のプラスチック光学部材用プリフォームを加熱延伸して得られることを特徴とするプラスチック光ファイバ。
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JP2003418492A JP2005181446A (ja) | 2003-12-16 | 2003-12-16 | プラスチック光学部材用プリフォーム及びその製造方法並びにプラスチック光ファイバ |
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- 2003-12-16 JP JP2003418492A patent/JP2005181446A/ja active Pending
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