JP2005089411A - プロピレンオキサイドの製造方法 - Google Patents

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Noriaki Oku
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Abstract

【課題】 クメンハイドロパーオキサイドとプロピレンによりプロピレンオキサイドを製造する方法であって、経済的にかつ安定的に高収率下に実施することができる。
【解決手段】 クメン回収工程で生成する反応物の一部をプロピレンオキサイド分離工程にリサイクルする。
酸化工程:クメンを酸化することによりクメンハイドロパーオキサイドを得る
エポキシ化工程:クメンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させ、プロピレンオキサイド及びクミルアルコールを得る
プロピレン回収工程:エポキシ化工程の反応液中から未反応プロピレンを回収する
プロピレンオキサイド分離工程:未反応プロピレン回収後のエポキシ化工程反応液から蒸留でプロピレンオキサイドとクミルアルコールを分離する
クメン回収工程:エポキシ化工程で得たクミルアルコールをクメンに変換してクメンを得、クメンを精製後、酸化工程へリサイクルする
【選択図】 なし

Description

本発明は、プロピレンオキサイドの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、クメンを酸化し、クメンハイドロパーオキサイドを含有する酸化液を得、次に、プロピレンと反応させ、プロピレンオキサイドを含む反応液を得、次に、未反応のプロピレンを回収した後、プロピレンオキサイドを分離し、エポキシ化工程で生成したクミルアルコールをクメンに変換し、当該クメンを酸化工程へリサイクルすることにより得られるプロピレンオキサイドの製造方法に関するものであり、経済的にかつ安定的に高収率でプロピレンオキサイドを製造する方法に係るものである。
プロピレンオキサイドの製造方法として、クメンを酸化し、クメンハイドロパーオキサイドを含有する酸化液を得、次に、プロピレンと反応させ、プロピレンオキサイドを生成させる方法は公知である。また、エポキシ化工程で使用されなかった未反応プロピレンを回収し、エポキシ化工程へリサイクルする方法も公知である。ところが、エポキシ化工程で得られた反応液からプロピレンを回収した後のプロピレンオキサイドを含む液には、有機酸や水が存在し、本反応液を蒸留によりプロピレンオキサイドを分離しようとすると、蒸留塔内で有機酸や水が濃縮し、塔内の材質の腐食やプロピレンオキサイドと水の反応によるプロピレングリコールの生成により、プロピレンオキサイドが損失する問題がある。
該反応液からプロピレンオキサイドを回収する方法として、特許文献1のように、炭素数2〜4の脂肪族飽和アルコールの共存下に実施する方法が記載されている。しかしながら、このようなアルコールを添加剤として使用した場合、回収するための新たな設備や、使用するアルコールのエステル化反応によるロス等が懸念され、工業的実施の観点から経済的に不利である。また、特許文献2には、アセトン又はメタノール混合物を添加して蒸留を行う方法が提案されているが、添加剤の量が多大であり、アセトンとメタノールはプロピレンオキサイドと沸点が近く、プロピレンオキサイドの品質が悪化する懸念がある。
特開平8−104682号公報 米国特許第3715284号明細書
かかる現状において、本発明が解決しようとする課題は、クメンハイドロパーオキサイドとプロピレンとからプロピレンオキサイドを製造する方法であって、経済的にかつ安定的に高収率下に実施することができるという優れた特徴を有するプロピレンオキサイドの製造方法を提供することである。
すなわち、本発明は、下記の工程を含むプロピレンオキサイドの製造方法であって、クメン回収工程で生成する反応物の一部をプロピレンオキサイド分離工程にリサイクルすることを特徴とするプロピレンオキサイドの製造方法に係るものである。
酸化工程:クメンを酸化することによりクメンハイドロパーオキサイドを得る工程
エポキシ化工程:酸化工程で得たクメンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させることによりプロピレンオキサイド及びクミルアルコールを得る工程
プロピレン回収工程:エポキシ化工程で得た反応液中から未反応プロピレンを回収する工程
プロピレンオキサイド分離工程:プロピレン回収工程で得た未反応プロピレン回収後のエポキシ化工程反応液から蒸留によりプロピレンオキサイドとクミルアルコールを分離する工程
クメン回収工程:エポキシ化工程で得たクミルアルコールをクメンに変換することによりクメンを得、該クメンを精製後、酸化工程の原料として酸化工程へリサイクルする工程
本発明により、クメンハイドロパーオキサイドとプロピレンによりプロピレンオキサイドを製造する方法であって、経済的にかつ安定的に高収率下に実施することができるという優れた特徴を有するプロピレンオキサイドの製造方法を提供することができた。
本発明の酸化工程は、クメンを酸化することによりクメンハイドロパーオキサイドを得る工程である。クメンの酸化は、通常、空気や酸素濃縮空気などの含酸素ガスによる自動酸化で行われる。特に、水/アルカリ性エマルジョン中での乳化酸化法が、クメンハイドロパーオキサイドの収率を向上させる観点から好ましい。また、反応液中のクメンハイドロパーオキサイド濃度は50重量%以下であり、クメンハイドロパーオキサイド濃度が50重量%を超えると、クメンハイドロパーオキサイドの収率が悪化する。通常の反応温度は50〜200℃であり、反応圧力は大気圧から5MPaの間である。乳化酸化法の場合、アルカリ性試薬としては、NaOH、KOHのようなアルカリ金属化合物や、アルカリ土類金属化合物又はNa2CO3、NaHCO3のようなアルカリ金属炭酸塩又はアンモニア及びNH4CO3、アルカリ金属炭酸アンモニウム塩等が用いられる。また、エポキシ化工程に該酸化反応液を供給する前に、水、アルカリ水による洗浄や脱水処理を施すことが、エポキシ化工程における収率や触媒寿命の観点から好ましい。
本発明のエポキシ化工程は、酸化工程で得たクメンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させることによりプロピレンオキサイド及びクミルアルコールを得る工程である。エポキシ化工程は、目的物を高収率及び高選択率下に得る観点から、チタン含有珪素酸化物からなる触媒の存在下に実施することが好ましい。エポキシ化反応温度は一般に0〜200℃であるが、25〜200℃の温度が好ましい。圧力は、反応混合物を液体の状態に保つのに充分な圧力でよい。一般に圧力は100〜10000kPaであることが有利である。エポキシ化反応は、スラリー又は固定床の形の触媒を使用して有利に実施できる。大規模な工業的操作の場合には、固定床を用いるのが好ましい。また、回分法、半連続法、連続法等によって実施できる。反応原料を含有する液を固定床に通した場合には、反応帯域から出た液状混合物には、触媒が全く含まれていないか又は実質的に含まれていない。
プロピレン回収工程はエポキシ化工程で生成した反応液中の未反応プロピレンを回収する工程である。エポキシ化工程でのプロピレン収率を高めるために、通常、エポキシ化工程では、プロピレンを供給されるクメンハイドロパーオキサイドモル数に対して過剰供給する事が好ましく、供給されるクメンハイドロパーオキサイドモル数に対して1〜100倍、好ましくは2〜50倍のモル数で行う。プロピレン過剰量が多すぎると、プロピレンを回収するコストが大きくなる。回収方法は蒸留、吸着等の操作により実施できるが、好ましくは蒸留による操作がよい。蒸留塔で除去する場合、2塔で回収する方が経済的であり、2塔目は1塔目より低い圧力で行う事が好ましい。回収されたプロピレンは、エポキシ化工程へリサイクルされる。
プロピレンオキサイド分離工程に付される原料は、プロピレン回収工程でプロピレンを回収されたプロピレンオキサイドを含む混合液であり、該混合液中のプロピレンオキサイド濃度は通常1〜30重量%である。該混合液中におけるプロピレンオキサイド以外の成分としては、たとえばクメン、エチルベンゼン、アセトフェノン、クミルアルコール、水、有機酸等をあげることができる。尚、水の含有濃度は、通常0.01〜0.5重量%、有機酸は0.001〜0.5重量%程度である。
クメン回収工程は、エポキシ化工程で生成したクミルアルコールをクメンに変換、精製し、酸化工程へリサイクルする工程である。クミルアルコールをクメンに変換する方法としては、触媒存在下、クミルアルコールを水素と反応させて直接クメンに変換する方法や、クミルアルコールを一度脱水させてα―メチルスチレンにして、水素と反応させてクメンに変換する方法がある。
脱水触媒としては、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸や、活性アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナ、ゼオライト等の金属酸化物があげられるが、反応液との分離、触媒寿命、選択性等の観点から活性アルミナが好ましい。
脱水反応は通常、クミルアルコールを触媒に接触させることで行われるが、本発明においては脱水反応に引き続いて水添反応を行なうため、水素も触媒へフィードされる。反応は溶媒を用いて液相中で実施できる。溶媒は、反応体及び生成物に対して実質的に不活性なものでなければならない。溶媒は使用されるクミルアルコール溶液中に存在する物質からなるものであってよい。たとえばクミルアルコールが、生成物であるクメンとからなる混合物である場合には、特に溶媒を添加することなく、これを溶媒の代用とすることも可能である。その他、有用な溶媒は、アルカン(たとえばオクタン、デカン、ドデカン)や、芳香族の単環式化合物(たとえばベンゼン、エチルベンゼン、トルエン)などがあげられる。脱水反応温度は一般に50〜450℃であるが、150〜300℃の温度が好ましい。一般に圧力は10〜10000kPaであることが有利である。脱水反応は、スラリー又は固定床の形の触媒を使用して有利に実施できる。
α―メチルスチレンを水添する触媒、又は、クミルアルコールを直接水素化分解する触媒としては、周期律表10族又は11族の金属を含む触媒をあげることができ、具体的にはニッケル、パラジウム、白金、銅をあげることができるが、芳香環の核水添反応の抑制、高収率の観点からパラジウムまたは銅が好ましい。銅系触媒としては銅、ラネー銅、銅・クロム、銅・亜鉛、銅・クロム・亜鉛、銅・シリカ、銅・アルミナ等があげられる。パラジウム触媒としては、パラジウム・アルミナ、パラジウム・シリカ、パラジウム・カーボン等があげられる。これらの触媒は単一でも用いることができるし、複数のものを用いることもできる。
水添反応は通常、α−メチルスチレンと水素を触媒に接触させることで行われるが、本発明においては脱水反応に引き続いて水添反応を行なうため、脱水反応において発生した水も触媒へフィードされる。反応は、溶媒を用いて液相又は気相中で実施できる。溶媒は、反応体及び生成物に対して実質的に不活性なものでなければならない。溶媒は使用されるα−メチルスチレン溶液中に存在する物質からなるものであってよい。たとえばα−メチルスチレンが、生成物であるクメンとからなる混合物である場合には、特に溶媒を添加することなく、これを溶媒の代用とすることも可能である。その他、有用な溶媒は、アルカン(たとえばオクタン、デカン、ドデカン)や、芳香族の単環式化合物(たとえばベンゼン、エチルベンゼン、トルエン)などがあげられる。水添反応温度は一般に0〜500℃であるが、30〜400℃の温度が好ましい。一般に圧力は100〜10000kPaであることが有利である。
反応方式としては、固定床の形の触媒を使用して連続法によって有利に実施できる。連続法のリアクターは、断熱リアクター、等温リアクターがあるが、等温リアクターは除熱をするための設備が必要となるため、断熱リアクターが好ましい。断熱リアクターの場合、クミルアルコールの脱水反応は吸熱反応であるため、反応の進行とともに温度が低下し、一方α−メチルスチレンの水添反応は発熱反応であるため、反応の進行とともに温度が上昇する。結果的には発熱量のほうが大きいために、リアクター入口温度よりも出口温度のほうが高くなる。反応温度および圧力は、脱水反応後のα−メチルスチレン溶液中に含まれる水が凝縮しないように選択される。反応温度は150から300℃が好ましく、反応圧力は100から2000kPaが好ましい。温度が低すぎたり、圧力が高すぎたりすると、脱水反応出口において水が凝集し、水添触媒の性能を低下させてしまう。また圧力が高すぎる場合は脱水反応の反応平衡においても不利である。温度が高すぎたり、圧力が低すぎたりすると、気相部が多く発生し、ファウリング等による触媒寿命の低下が進み不利である。
水素は固定床反応器の入口や、水添触媒の入口のいずれからもフィードすることができるが、脱水触媒の活性からみて固定床反応器入口からフィードすることが好ましい。すなわち、脱水反応ゾーンで常に水素を存在させることにより、脱水により発生した水分の気化が促進され、平衡脱水転化率が上がり、水素が存在しない場合よりも効率よく高い転化率を得ることが出来る。脱水反応において発生した水は水添触媒を通過することになるが、先に述べたように凝集しないレベルで運転することにより、特に水を除去する設備を設けることなく低コストで運転することができる。また反応器出口において未反応の水素は、気液分離操作の後にリサイクルして再使用できる。また気液分離操作の際に、脱水反応において発生した水分を反応液より分離することも可能である。得られた反応液(主にクメン)はその一部を反応器入口にリサイクルして使用することも可能である。
脱水触媒の量はクミルアルコールが充分に転化する量であればよく、クミルアルコール転化率は90%以上であることが好ましい。水添触媒の量はα−メチルスチレンが充分に転化する量であればよく、α−メチルスチレン転化率は98%以上が好ましい。コストの観点から考えると、脱水触媒と水添触媒は多段のリアクターとすることなく、単一の固定床反応器に充填されていることが好ましい。反応器の中は幾つかのベッドに別れていてもよく、または別れていなくてもよい。別れていない場合、脱水触媒と水添触媒は直接接触させてもよいが、イナートな充填物で仕切りをつけてもかまわない。
上記の反応により、クミルアルコールをクメンに変換したあと、該反応液中のクメンには、水や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコール等のアルコール類、イソプロピルフェノール、フェノール等のフェノール類、エチルベンゼン、アセトフェノン、α―メチルベンジルアルコール、クメンの多量化物等の不純物を含むため、蒸留、吸着、洗浄によりクメンを精製し、精製されたクメンは再び酸化工程へリサイクルされる。クメンの精製方法としては、蒸留塔によりクメンより、重質成分と軽沸成分を除去し、アルカリ洗浄によりフェノール類を洗浄除去する方法が好ましい。アルカリ性試薬としては、NaOH、KOHのようなアルカリ金属化合物や、アルカリ土類金属化合物又はNa2CO3、NaHCO3のようなアルカリ金属炭酸塩又はアンモニア及びNH4CO3、アルカリ金属炭酸アンモニウム塩等が用いられる。
プロピレンオキサイド分離工程において蒸留に付される液は、水や有機酸を含むため、プロピレンオキサイドとクメンとの中間の沸点成分である水や有機酸は塔内で濃縮し、塔材質の腐食や、プロピレンオキサイドと水の反応によりプロピレンオキサイドが損失されるため、安定的に、経済的な実施が困難となる。従って、本発明者らは、クメン回収工程で生成する本反応液の一部をプロピレンオキサイド分離工程にリサイクルし、該リサイクル液中に含まれる成分が、有機酸の蓄積を防止し、安定的にプロピレンオキサイドを高収率で回収できることを見いだした。また、系内で生成する成分を用いることにより、系外からの添加や添加成分の回収が不要となり、回収のための設備費や運転コストを大幅に削減でき、経済的に実施できる。
クメン回収工程よりプロピレンオキサイド分離工程にリサイクルされる液中の成分には、クメン回収工程で生成する成分を含むものとする。例としては、エチルベンゼン、クメン、n−プロパノール、アリルアルコール、イソプロパノール等が挙げられるが、必ずアルコール類を含むものとする。クメン回収工程よりプロピレンオキサイド分離工程にリサイクルされる液としてはクメン回収工程で油水分離により水を除いた反応液であってもよいが、好ましくはクメン回収工程で得たクメンを蒸留精製する場合には該蒸留塔のクメン留分以外の成分であって、クメンよりも沸点の低い不純物留分を用いることができる。
また、本リサイクル液に加えて、本発明を損なわない程度で、炭素数2〜5のアルコール類を添加してもよい。
プロピレンオキサイド分離工程で使用される蒸留塔の運転条件は、理論段で5〜50段、圧力は絶対圧で0.05MPaから1.0MPa、好ましくは、大気圧から1.0MPaの間で操作され、塔頂のプロピレンオキサイド濃度は70〜100重量%の間で運転され、塔内温度は0℃〜300℃の間で運転される。

Claims (2)

  1. 下記の工程を含むプロピレンオキサイドの製造方法であって、クメン回収工程で生成する反応物の一部をプロピレンオキサイド分離工程にリサイクルすることを特徴とするプロピレンオキサイドの製造方法。
    酸化工程:クメンを酸化することによりクメンハイドロパーオキサイドを得る工程
    エポキシ化工程:酸化工程で得たクメンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させることによりプロピレンオキサイド及びクミルアルコールを得る工程
    プロピレン回収工程:エポキシ化工程で得た反応液中から未反応プロピレンを回収する工程
    プロピレンオキサイド分離工程:プロピレン回収工程で得た未反応プロピレン回収後のエポキシ化工程反応液から蒸留によりプロピレンオキサイドとクミルアルコールを分離する工程
    クメン回収工程:エポキシ化工程で得たクミルアルコールをクメンに変換することによりクメンを得、該クメンを精製後、酸化工程の原料として酸化工程へリサイクルする工程
  2. 請求項1記載のクメン回収工程において、水素を使う請求項1記載のプロピレンオキサイドの製造方法。
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