JP2005089251A - 窒化アルミニウム顆粒、その製造方法及び用途 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】有機溶剤を使用せずに、水系でスラリー化し、非防爆型のスプレードライヤーで顆粒化が可能であり、また含酸素雰囲気下で、比較的低温で焼成可能である。このように低コストで製造可能なAlN顆粒の製造方法およびAlN顆粒を提供する。
【解決手段】窒化アルミニウムの粒子表面に燐酸アルミニウム層を形成し、更にその上層にSiO2層を形成し、これらの粒子が凝集した平均粒子径が10〜200μmであることを特徴とする球状の窒化アルミニウム顆粒、該球状の窒化アルミニウム顆粒を焼結することにより得られる窒化アルミニウム焼結粉、及び燐酸化合物、コロイダルシリカ分散液および窒化アルミニウム粉を含有してなるスラリー水溶液をスプレードライヤーでスプレー乾燥する窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】窒化アルミニウムの粒子表面に燐酸アルミニウム層を形成し、更にその上層にSiO2層を形成し、これらの粒子が凝集した平均粒子径が10〜200μmであることを特徴とする球状の窒化アルミニウム顆粒、該球状の窒化アルミニウム顆粒を焼結することにより得られる窒化アルミニウム焼結粉、及び燐酸化合物、コロイダルシリカ分散液および窒化アルミニウム粉を含有してなるスラリー水溶液をスプレードライヤーでスプレー乾燥する窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、球状の窒化アルミニウム顆粒、その製造方法、該窒化アルミニウム顆粒より得られる窒化アルミニウム焼結粉、並びにその用途に関する。
窒化アルミニウム(以下AlNと略すことがある)粉は熱伝導性、機械的強度及び電気絶縁性に優れた特性を持った物質として知られており、構造用材料、放熱性樹脂フィラー材料、機能用材料等、多方面に使用されつつある。
AlNの製法には、例えばアルキルアルミニウムとアンモニアを反応させた後、加熱するアルキルアルミ法(例えば特許文献1参照)、アルミナと炭素の混合物を窒素中で加熱するアルミナ還元法(例えば特許文献2参照)、アルミニウムと窒素で反応させる直接窒化法(例えば特許文献3参照)等が知られているが、いずれも得られる結晶の大きさは1〜5μm程度の微粒子である。
放熱性樹脂フィラーへの材料として使用されるAlN粉は、数十〜数百μm程度の大粒子化が求められており、種々の方法で大粒子化の検討が行われている。
現在、AlNの大粒子化の方法として、有機溶剤にAlN粉とバインダー、焼結助剤を混合しスラリー化した後、防爆型のスプレードライヤーを用い乾燥して顆粒状とし、この粉をプレス成形した後、非酸素雰囲気下で高温焼成するAlNの焼結体の製造方法(例えば特許文献4及び5参照)を応用し、顆粒のまま焼成することで焼結した顆粒を得る方法が知られている。
焼結助剤としては、アルカリ土類金属、ランタン族金属及びイットリウムよりなる群から選ばれる金属または該金属化合物が知られている(例えば特許文献3参照)が、AlN粉への混合の際、液体分散媒体として有機溶剤を使用している。
しかし、この方法では高温下で焼結させるため高コストとなってしまう。また、高価な有機溶剤を使用し、また防爆型のスプレードライヤーを用いるなど、設備的にも高価なものを使用する必要があり、高コストの要因となっていた。
特許第2726703号公報
特許第2680681号公報
特許第2826023号公報
特開平5−270810号公報
特開平9−2879号公報
従って本発明は、窒化アルミニウム焼結粉及び焼結体を安価に製造するため、原料となる窒化アルミニウムが、低温で焼結される顆粒を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、有機溶剤を使用せずに、水系でスラリー化し、非防爆型のスプレードライヤーで顆粒化が可能であり、また低コストで製造可能なAlN顆粒の製造方法およびAlN顆粒、更にその焼結粉を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、AlN粉にコロイダルシリカ分散液と特定量の燐酸化合物と水を加えてスラリー化し、窒化アルミニウム層の表面に燐酸アルミニウム層を形成して加水分解を抑制し、これをスプレードライヤーでスプレー乾燥することで、顆粒を形成して、更にこれを焼成することで、大粒子のAlN顆粒を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)窒化アルミニウム粉の表面に燐酸アルミニウム層を形成し、更にその上層にSiO2層を形成した粒子が凝集した平均粒子径が10〜200μmであることを特徴とする球状の窒化アルミニウム顆粒。
(2)(1)記載の球状の窒化アルミニウム顆粒を焼結することにより得られる窒化アルミニウム焼結粉。
(3)破壊強度が5kgf/mm2以上である(2)に記載の窒化アルミニウム焼結粉。
(4)嵩密度が0.9〜1.6g/cm3である(2)又は(3)に記載の窒化アルミニウム焼結粉。
(5)安息角θが45°以下である(2)〜(4)記載の窒化アルミニウム焼結粉。
(6)燐酸化合物、コロイダルシリカ分散液および窒化アルミニウム粉を含有してなるスラリー水溶液をスプレードライヤーでスプレー乾燥することを特徴とする(1)記載の窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
(7)燐酸化合物が、無機燐酸化合物および/または有機燐酸化合物であって、窒化アルミニウム粉に対しP2O5換算で0.3〜2重量%含有するスラリー水溶液であることを特徴とする(6)記載の窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
(8)(1)記載の窒化アルミニウム顆粒を400〜1500℃の温度で焼結することを特徴とする(2)〜(5)記載の窒化アルミニウム焼結粉の製造方法。
(9)(2)〜(5)記載の窒化アルミニウム焼結粉を含有していることを特徴とする放熱性樹脂用フィラー。
(10)(9)に記載の放熱性樹脂フィラーを含有していることを特徴とする放熱性樹脂シート。
(1)窒化アルミニウム粉の表面に燐酸アルミニウム層を形成し、更にその上層にSiO2層を形成した粒子が凝集した平均粒子径が10〜200μmであることを特徴とする球状の窒化アルミニウム顆粒。
(2)(1)記載の球状の窒化アルミニウム顆粒を焼結することにより得られる窒化アルミニウム焼結粉。
(3)破壊強度が5kgf/mm2以上である(2)に記載の窒化アルミニウム焼結粉。
(4)嵩密度が0.9〜1.6g/cm3である(2)又は(3)に記載の窒化アルミニウム焼結粉。
(5)安息角θが45°以下である(2)〜(4)記載の窒化アルミニウム焼結粉。
(6)燐酸化合物、コロイダルシリカ分散液および窒化アルミニウム粉を含有してなるスラリー水溶液をスプレードライヤーでスプレー乾燥することを特徴とする(1)記載の窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
(7)燐酸化合物が、無機燐酸化合物および/または有機燐酸化合物であって、窒化アルミニウム粉に対しP2O5換算で0.3〜2重量%含有するスラリー水溶液であることを特徴とする(6)記載の窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
(8)(1)記載の窒化アルミニウム顆粒を400〜1500℃の温度で焼結することを特徴とする(2)〜(5)記載の窒化アルミニウム焼結粉の製造方法。
(9)(2)〜(5)記載の窒化アルミニウム焼結粉を含有していることを特徴とする放熱性樹脂用フィラー。
(10)(9)に記載の放熱性樹脂フィラーを含有していることを特徴とする放熱性樹脂シート。
本発明の窒化アルミニウム顆粒は、窒化アルミニウム焼結粉の製造原料として好適である。
即ち、本発明の窒化アルミニウム顆粒を用いることで、従来技術と比較してより低温での焼結を可能とした。また、半導体分野で使用される放熱性樹脂フィラー用の焼結粉に使用される窒化アルミニウム焼結体を製造した場合、焼結体の変色やマイクロポアの発生等が無くなるため、歩留り良く窒化アルミニウム焼結体を製造することが可能となる。
従って、本発明の窒化アルミニウム顆粒は、窒化アルミニウム焼結粉を工業的に効率良く、且つ、安価に製造するために、極めて有用な原料となる。
本発明は、また放熱性樹脂用フィラー及び放熱性樹脂シートの材料として、大きな球体のAlN結晶を安価に製造できるという効果を有する。
特に、AlN粉と添加物の混合に液体分散媒体として従来有機溶剤が使用されていたが、本発明では液体分散媒体に水を使用することで、非防爆のスプレードライヤーが使用できるので、設備コストを低減でき且つ安全に作業することが出来る。
以下、本発明を詳細に説明する。
第一に本発明は、窒化アルミニウム粉の表面に燐酸アルミニウム層を形成し、更にその上層にSiO2層を形成した粒子が凝集した平均粒子径が10〜200μmである球状の窒化アルミニウム顆粒である。
第一に本発明は、窒化アルミニウム粉の表面に燐酸アルミニウム層を形成し、更にその上層にSiO2層を形成した粒子が凝集した平均粒子径が10〜200μmである球状の窒化アルミニウム顆粒である。
本発明の窒化アルミニウム顆粒の形状は、製造方法に由来して球状またはそれに近い形状のものが好ましい。本発明において空隙の少ない高密度の窒化アルミニウム顆粒は真球状であることが好ましく、例えば、短径と長径の比から求めた真球度が0.9以上のものが好ましい。
また、窒化アルミニウム粉は、アルキルアルミニウムとアンモニアを反応させた後、加熱するアルキルアルミ法、アルミナと炭素の混合物を窒素中で加熱するアルミナ還元法、アルミニウムと窒素で反応させる直接窒化法で得られる、いずれも結晶の大きさは1〜5μm、比表面積は0.5〜10m2/gの微粒子が用いられる。また窒化アルミニウムの表面に形成される燐酸アルミニウム層の厚みは、好ましくは1〜10nm程度であり、更にその上に形成されるSiO2層は、好ましくは、1〜50nm程度の厚さが形成された粒子である。これらの層は、TEM(電界放出型透過電子顕微鏡)やXMA(X-ray Micro Analysis)により、確認することが可能である。
本発明の窒化アルミニウム顆粒は、この窒化アルミニウム粒子が6〜6×107個程度凝集された平均粒子径10〜200μmの顆粒である。窒化アルミニウムの顆粒の大きさは、平均粒子径で10〜200μmの大きさが好適であり、より好ましくは20〜100μmの大きさである。顆粒の大きさを測定する方法には、乾式篩い、光透過式遠心沈降法、SEM撮影等によって測定できる。
本発明において、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用い、100倍の倍率で撮影し、撮影された粒子100個の直径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
本発明で用いるAlN粉は、製法による差異はなく、通常用いられる窒化アルミニウム粉末が使用できる。例えば、アルキルアルミニウムとアンモニアを反応させた後、加熱するアルキルアルミ法、アルミナと炭素の混合物を窒素中で加熱するアルミナ還元法、アルミニウムと窒素で反応させる直接窒化法等で製造した窒化アルミニウム粉末がいずれも好適に使用可能である。
本発明の窒化アルミニウム顆粒は、燐酸化合物、コロイダルシリカ分散液および窒化アルミニウム粉を含有してなるスラリー水溶液をスプレードライヤーでスプレー乾燥することにより製造することができる。
本発明でいう燐酸化合物とは、無機燐酸化合物及び/または有機燐酸化合物であって、AlN粉表面のアルミニウムと反応して燐酸アルミニウム結合(Al−O−P結合)を形成し、加水分解を抑制する効果を有する燐酸化合物であればよい。例えば、オルソ燐酸、メタ燐酸、ピロ燐酸、ポリ燐酸、燐酸アンモニウム塩等の無機燐酸化合物や燐酸メチル、燐酸エステル等の有機燐酸化合物等がその例として挙げられる。燐酸化合物の使用量は、AlN粉に対しP2O5換算で0.3〜2重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.5〜1重量%の範囲が好適である。
ここで、スプレードライヤーで乾燥する前のスラリー状態は、AlN粉末表面のアルミニウムの少なくとも一部が燐酸アルミニウム結合(Al−O−P)を形成し、その周辺の結合状態は特定されるものではないが、加水分解を抑制することが好ましい。
燐酸化合物の含有量がP2O5換算で0.3重量%以上の方が、スラリー状態に於ける所望の耐水性を得ることができ、一部加水分解してしまうこともなく好ましい。また、P2O5換算で2重量%以下であると、AlN顆粒本来の特性である熱伝導性を損なうことなく好ましい。
上記の燐酸化合物の含有量より本発明のAlN顆粒に形成される燐酸アルミニウムの好ましい範囲は、AlPO4換算で0.52〜3.46重量%、より好ましい範囲は、0.87〜1.73重量%となる。
AlNの溶融温度は0.4Mpaの圧力下に於いて2200℃と非常に高温であり、難焼結性物質である。
従って本発明では、コロイダルシリカ分散液をAlNの粒子間を結合する結合剤として用いる。この粒子間の結合は、微粒子なコロイダルシリカ分散液が、ある温度域で縮合することによって達成される。
コロイダルシリカ分散液は、一般式SiO2・xH20で表され、平均粒径10〜20nmの超微粒子な無水ケイ酸のコロイド溶液である。これらは、溶液中にSiO2ベースで10〜30重量%程度含有しているものが一般的に市販されており、このようなものが使用できる。また安定剤としてナトリウムを含有するもの(例えば、商品名:スノーテックス30、日産化学工業株式会社製)のあるがこれらも使用できる。
コロイダルシリカ分散液の添加方法は、まず燐酸化合物を加えた水にAlN粉を分散し、スラリー混合した後、コロイダルシリカ分散液を加えることが好ましい。
コロイダルシリカ分散液の使用量はAlN粉に対しSiO2換算で1〜10重量%の範囲、好ましくは3〜5重量%の範囲で必要に応じて使用される。コロイダルシリカの使用量が1重量%以上の方が結合剤としての効能が発揮され、焼成しても粒子間の結合が充分で、1次粒子に分散することなく好ましい。また10重量%以下の方が、凝結も充分であり、本来のAlNの熱伝達性能を失うことなく好ましい。AlN粉、コロイダルシリカ分散液および燐酸化合物を水に分散させるスラリーの濃度は、後記するスプレードライヤーの性能、能力によって最適濃度は異なるが、通常AlN粉、コロイダルシリカのSiO2分および燐酸化合物の総重量(A)のスラリー濃度が10〜50重量%となるように水を加える。スラリー濃度は、下式(1)によって求められる。
スラリー濃度(%)=100×A/A+水 …(1)
該スラリーは特に加熱する必要はない。また該スラリーは、特にバインダーを必要としないが、加えても何ら差し支えない。
該スラリーは特に加熱する必要はない。また該スラリーは、特にバインダーを必要としないが、加えても何ら差し支えない。
スプレードライヤーへ供給する際、スラリー濃度が不均一の場合、得られる顆粒の粒径のバラツキが大きくなるので、スラリーはゆっくり攪拌して均一な濃度でスプレードライヤーへ供給することが望ましい。
次にスラリーを乾燥する方法について説明する。スラリーは、長時間放置すると、徐々に加水分解が起こるので、短時間でスプレードライヤーに供給することが好ましく、スラリー化後3時間以内にスプレードライヤーへ供給することが望ましい。スプレードライヤーは、円筒形の管体の側面から熱風を送り、上部からスラリーを噴霧器で霧状にして、気相部で水分を蒸発させて、凝集体を形成せしめ、管体の下部に堆積し、水分を含む熱風はサイクロン、バグフィルターを経て外部に放出する構造を有する。
噴霧器には、スラリーをポンプで高圧状態にし、高圧用分散ノズルで噴霧するものや、アトマイザーと言われる低圧用ノズルを高速で回転する噴霧器などがあり、本発明では噴霧器の形式について特に限定するものではない。
このスプレードライヤーの上部より、該スラリーを噴霧することにより、気相部で水分の蒸発とともにAlN粒子表面に耐水性を付与する不溶性の燐酸アルミニウムが形成され、その上層に微粒のSiO2が堆積し、その凝集体が球状の顆粒を形成して、管体の下部に落下する。
スプレードライヤーは、装置の仕様書に、熱風の最高温度や水の蒸発量が決まっており、所望の乾燥温度以下であったり、水の蒸発量を超える水量をフィードすると、良い粒子が得られない。
本発明で用いられるスプレードライヤーは、管体に送風する熱風が150〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200〜300℃が好適である。熱風の温度が150℃未満では、水分が充分に蒸発しない場合がある。また、熱風の温度が400℃を超えると、顆粒の粒子径が不揃いとなり好ましくない傾向にある。
また、スラリーの供給量は、スプレードライヤーの仕様書に表示されている、水の蒸発量以下となるようにすることが重要である。またスプレードライヤーによって得られる顆粒は多孔質な球状の凝集体である。
粒径を調整する方法は、スプレードライヤーに取り付ける噴霧ノズルの形態や運転条件によって、一般的に球状で直径10μm〜数ミリの範囲で任意の粒子径を得ることが出来る。しかし、本発明の半導体用フィルムのフィラーとして使用する凝結性顆粒品は、球状で直径10〜200μm、好ましくは20〜100μmのものが望ましい。
運転条件には、噴霧状態が重要なファクターである。噴霧状態はスラリー濃度や、噴霧ノズル、アトマイザーの回転数により変化する。スラリー濃度が高いほど大きな粒径となり、噴霧ノズルはノズル径の大きいものほど大きな粒径となる。またアトマイザーの回転数は高い回転数となるほど小さい粒径となる。
次に、この顆粒状のAlNを焼成炉で焼結する方法について述べる。上記で得られた多孔質で球状の凝集体いわゆる顆粒状の2次粒子を、高温度用の炉で焼成し、顆粒状の凝結粒子を製造する。前述したようにAlN粒子表面には、燐酸アルミニウムが形成され、その上層に微粒のSiO2が均一に堆積し、その凝集体が球状の顆粒を形成している。この顆粒に熱を加えることにより、AlN微粒子表面のSiO2が縮合して粒子間の結合を強固に凝結させるのである。
焼成炉は、電気炉や、高周波炉等、高温度用の炉が使用される。焼成温度は、この微粒のSiO2が縮合する温度、即ち400〜1500℃の範囲、好ましくは500〜800℃の範囲である。400℃未満では、十分な縮合がなされず、後記する顆粒の破壊強度に達しない場合があるので好ましくない。また1500℃を越える温度で焼成してもAlNの顆粒の強度は向上せず、エネルギーの損失となるばかりか、シリコニット炉や高周波炉等の特殊な炉を必要とするので高コストとなるため好ましくない。また焼成時の炉内の雰囲気は大気下であっても良く、容器は、アルミナるつぼやアルミナ/シリカ系の磁性るつぼが使用できる。焼成時間は、焼成温度、コロイダルシリカの使用量によって異なるが、任意の温度に達成してから、通常1〜30時間程度保持して焼成する。
焼成後、得られた球状のAlN焼結粉はそのまま製品となるが、一部顆粉同士で融着している場合は、ジェットミルを使用して分散させるか、或いは篩を用いて融着した顆粒を取り除く等の方法によって処置するのが好ましい。
AlN顆粒の粒子間の結合状態は、電子顕微鏡により顆粒表面の緻密さを観察し評価することができるが、破壊強度や嵩密度でも簡易的に評価できる。
AlN顆粒の破壊強度は、5kgf/mm2以上であることが好ましく、より好ましくは20kgf/mm2以上が好適である。また、破壊強度の上限は特に制限されるものではないが、好ましくは300kgf/mm2以下、より好ましくは200kgf/mm2以下である。破壊強度が5kgf/mm2未満では、樹脂と混練する際、顆粒が崩壊してしまい、結果的に放熱性能が低下するので好ましくない。また、破壊強度が300kgf/mm2を越える焼結粉を得るには、焼結により高い温度で、長時間を必要とし、相当量のエネルギーを必要とするが、本発明のフィラー用途には、通常そこまでの強度を必要としない。
本発明のAlN顆粒の破壊強度とは、測定に使用する3ケの顆粒の粒径の平均をDとしたとき、粒径がD×(1±0.05)の範囲の顆粒3ケを一辺10mmの正三角形の頂点に置き、上から静かに荷重をかけ、3ケ中1ケ以上破壊した時の荷重を測定する。その荷重をP、破壊強度をSとしたとき、下式(2)より、破壊強度を算出する。
S=2.8×(P/3)/(πD2)… (2)
測定は、10回繰り返し、最低値と最高値を除いた8点平均値を用いた。
S=2.8×(P/3)/(πD2)… (2)
測定は、10回繰り返し、最低値と最高値を除いた8点平均値を用いた。
また、AlN焼結粉の嵩密度は、平均粒子径によっても異なるが、本発明では0.9〜1.6g/cm3の範囲のものが好ましく、より好ましくは1.0〜1.4g/cm3の範囲が好適である。
放熱シートのフィラーとして使用する場合、樹脂へのAlNの添加量が多いほど良く、嵩密度の高いもの程、多く添加できるので好ましい。嵩密度の測定は、100mlのメスシリンダーに、50gのALN焼結粉を入れ、メスシリンダーの底を机上から2cm程度の所から、2回/秒のペースで軽く叩き付ける操作を、約1分間行い、その時のAlN焼結粉の容積を読み取り、嵩密度を算出する。
また、AlN顆粒は球状であることから流動性に優れているものの、粒子が融着していると顆粒の流動性が低下する。従って、融着状態を測る指標の一つとして、安息角θを測定する方法があり、この角度の値が小さい程、顆粒の融着が少ないことを示す。
安息角θは、直径80mmφの円形テーブルの中央部に、ガラス製ロウトの下端を80mmの高さにセットし、テーブルから粉が落ちる状態になるまで、漏斗から粉を落下させ、円錐型を成したところで、頂点に向けての傾き角度(安息角θ)を測定することにより求める。本発明ではAlN焼結粉の安息角θは、45°以下のものが好ましく、より好ましくは45°以下のものが好適である。放熱シートのフィラーとして使用する場合、流動性のよいもの程、樹脂への分散性がよくなり、放熱性能もよくなるので好ましい。
以上述べた方法で得られた本発明のAlN粉は、シリコン樹脂やその他の樹脂にフィラーとして添加することで、放熱用の樹脂組成物として、半導体用フィルム或いは、病理時の体温を下げるための医療用放熱シート、飲料用の缶製品の冷却用シートなど多用途に使用できる。
以下、本発明を実施例で説明する。
実施例1
図−1の管体1が10m3で、水の最大蒸発量が10Kg/Hrのスプレードライヤーを用い、ヒーター9で熱風の入り口温度を300℃に設定し、管体内部の圧力が−10mmH2Oとやや減圧となるように、排気系のダンパー12の開度を調節した。
実施例1
図−1の管体1が10m3で、水の最大蒸発量が10Kg/Hrのスプレードライヤーを用い、ヒーター9で熱風の入り口温度を300℃に設定し、管体内部の圧力が−10mmH2Oとやや減圧となるように、排気系のダンパー12の開度を調節した。
管体内部の温度が250℃と安定したところで、アトマイザー3の回転速度を8000回転とした。次に、スラリータンク5に純水4.5kgと75%オルソ燐酸50gを混合した後、比表面積2.2m2/gのAlN粉(三井化学株式会社製:アルキルアルミ法)5kgを加え30分間攪拌した。次いでSiO2含有量30重量%のコロイダルシリカ分散液(日産化学工業株式会社製:スノーテックス30)830gを加え、AlN粉に対しSi02換算で5重量%とし、更に10分間攪拌した後、スラリーポンプ4でアトマイザー3へ定量供給し、1時間で全量フィードしスプレー乾燥を行った。その後、管体の捕集器2に溜まった顆粒を回収した。
この顆粒を硬化性樹脂に包埋し、硬化したところで集束イオンビーム試料作製装置(日本電子(株)製、JFIB−2300)を用いて、約100nmの厚さにスライスしてTEM像観察用試料を作製した。
この試料を電界放出型透過電子顕微鏡(TEM:日本電子製JEM−2010)を用いて、加速電圧200kVで倍率50万倍のTEM像を撮影した。結晶の密度差から、このTEM像で像の濃淡が見て取れる。1次粒子のAlNの外周のAlPO4層の厚みは約1〜3nmであった。また、このAlPO4層をSiO2層が約18〜24nmの厚みで覆っていた。
実施例2
実施例1で得たスプレー乾燥した顆粒の内、100gをアルミナるつぼに入れて、電気炉内で600℃で3時間焼成を行った。焼成後の焼結粉は、走査型電子顕微鏡(JEOL製:JSM-T330)で撮影した。焼結した緻密な球形で平均粒子径は95μm、破壊強度は35kgf/mm2、嵩密度は1.21g/cm3であった。また、このAlN粉の安息角θを測定したところ、32°であった。得られたAlN焼結粉はフィラーとして、シリコン樹脂に添加し、放熱性樹脂シートとし、その熱伝導度をレーザーフラッシュ法により測定したところ20W/m・kと所望の性能を満足するものであった。
実施例1で得たスプレー乾燥した顆粒の内、100gをアルミナるつぼに入れて、電気炉内で600℃で3時間焼成を行った。焼成後の焼結粉は、走査型電子顕微鏡(JEOL製:JSM-T330)で撮影した。焼結した緻密な球形で平均粒子径は95μm、破壊強度は35kgf/mm2、嵩密度は1.21g/cm3であった。また、このAlN粉の安息角θを測定したところ、32°であった。得られたAlN焼結粉はフィラーとして、シリコン樹脂に添加し、放熱性樹脂シートとし、その熱伝導度をレーザーフラッシュ法により測定したところ20W/m・kと所望の性能を満足するものであった。
実施例3〜4
実施例1で得たスプレー乾燥した顆粒を、表1に記載の焼成条件で焼成した。焼成後の焼結粉は、表1に示す通りである。熱伝導度も同様にシート化して測定を行ったところ、表1に示す通り所望の性能を満足するものである。
実施例1で得たスプレー乾燥した顆粒を、表1に記載の焼成条件で焼成した。焼成後の焼結粉は、表1に示す通りである。熱伝導度も同様にシート化して測定を行ったところ、表1に示す通り所望の性能を満足するものである。
実施例5〜7
実施例1と同様のコロイダルシリカをAlN粉に対し、Si02換算で表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にスプレードライヤーを用いて乾燥を行い、実施例1と同様の電気炉で600℃で3時間焼成した。焼成後の焼結粉は、表1に示す通りである。熱伝導度も同様にシート化して測定を行ったところ、表1に示す通り所望の性能を満足するものである。
実施例1と同様のコロイダルシリカをAlN粉に対し、Si02換算で表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にスプレードライヤーを用いて乾燥を行い、実施例1と同様の電気炉で600℃で3時間焼成した。焼成後の焼結粉は、表1に示す通りである。熱伝導度も同様にシート化して測定を行ったところ、表1に示す通り所望の性能を満足するものである。
実施例8〜9
燐酸化合物を表1に示す配合で混合した以外は、実施例1と同様にスプレードライヤーを用いて乾燥した後、600℃で2時間焼成を行い、焼成後の顆粒の物性を測定した。結果は表1に記載の如く、得られたAlN粉はフィラーとして所望の性能を満足するものである。
燐酸化合物を表1に示す配合で混合した以外は、実施例1と同様にスプレードライヤーを用いて乾燥した後、600℃で2時間焼成を行い、焼成後の顆粒の物性を測定した。結果は表1に記載の如く、得られたAlN粉はフィラーとして所望の性能を満足するものである。
比較例1
燐酸を使用しない以外は、実施例1同様に、窒化アルミニウム5kgに水4.5kgとコロイダルシリカ溶液830g加えスラリー化したが、AlNの加水分解により数分後、スラリーが発熱と共にアンモニア臭がし、加水分解を起こした。よって、アトマイザー3への供給を停止した。
燐酸を使用しない以外は、実施例1同様に、窒化アルミニウム5kgに水4.5kgとコロイダルシリカ溶液830g加えスラリー化したが、AlNの加水分解により数分後、スラリーが発熱と共にアンモニア臭がし、加水分解を起こした。よって、アトマイザー3への供給を停止した。
比較例2
コロイダルシリカ溶液を加えず、水量を5kgとした以外は実施例1と同様に実施した。しかし、600℃焼成後の顆粒は、指で摘んだだけで粉化してしまう強度のない顆粒であった。
コロイダルシリカ溶液を加えず、水量を5kgとした以外は実施例1と同様に実施した。しかし、600℃焼成後の顆粒は、指で摘んだだけで粉化してしまう強度のない顆粒であった。
比較例3
実施例1で得たスプレー乾燥した顆粒を、焼成温度及び時間を表1に示す条件で実施した。結果は表1に記載の如く、300℃で焼成し得られたAlN粉は、結合不充分で、樹脂との混練時に顆粒が崩壊してしまい、放熱シートとして所望の性能を満足するものではなかった。
実施例1で得たスプレー乾燥した顆粒を、焼成温度及び時間を表1に示す条件で実施した。結果は表1に記載の如く、300℃で焼成し得られたAlN粉は、結合不充分で、樹脂との混練時に顆粒が崩壊してしまい、放熱シートとして所望の性能を満足するものではなかった。
以上述べた方法で得られた本発明のAlN顆粒は、シリコン樹脂やその他の樹脂にフィラーとして添加することで、放熱用の樹脂組成物として、半導体用フィルム或いは、病理時の体温を下げるための医療用放熱シート、飲料用の缶製品の冷却用シートなど多用途に使用できる。
1 管体
2 捕集器
3 アトマイザー
4 スラリーポンプ
5 スラリータンク
6 攪拌器
7 空気吸込口
8 送風機
9 ヒーター
10 オイルタンク
11 サイクロン
12 ダンパー
13 バグフィルター
14 排気ファン
15 エアーコンプレッサー
2 捕集器
3 アトマイザー
4 スラリーポンプ
5 スラリータンク
6 攪拌器
7 空気吸込口
8 送風機
9 ヒーター
10 オイルタンク
11 サイクロン
12 ダンパー
13 バグフィルター
14 排気ファン
15 エアーコンプレッサー
Claims (10)
- 窒化アルミニウム粉の表面に燐酸アルミニウム層を形成し、更にその上層にSiO2層を形成した粒子が凝集した、平均粒子径が10〜200μmであることを特徴とする球状の窒化アルミニウム顆粒。
- 請求項1記載の球状の窒化アルミニウム顆粒を焼結することにより得られる窒化アルミニウム焼結粉。
- 破壊強度が5kgf/mm2以上である請求項2に記載の窒化アルミニウム焼結粉。
- 嵩密度が0.9〜1.6g/cm3である請求項2又は3に記載の窒化アルミニウム焼結粉。
- 安息角θが45°以下である請求項2〜4記載の窒化アルミニウム焼結粉。
- 燐酸化合物、コロイダルシリカ分散液および窒化アルミニウム粉を含有してなるスラリー水溶液をスプレードライヤーでスプレー乾燥することを特徴とする請求項1記載の窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
- 燐酸化合物が、無機燐酸化合物および/または有機燐酸化合物であって、窒化アルミニウム粉に対しP2O5換算で0.3〜2重量%含有することを特徴とする請求項6記載の窒化アルミニウム顆粒の製造方法。
- 請求項1記載の窒化アルミニウム顆粒を400〜1500℃の温度で焼結することを特徴とする請求項2〜5記載の窒化アルミニウム焼結粉の製造方法。
- 請求項2〜5記載の窒化アルミニウム焼結粉を含有していることを特徴とする放熱性樹脂用フィラー。
- 請求項9に記載の放熱性樹脂フィラーを含有していることを特徴とする放熱性樹脂シート。
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-
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- 2003-09-18 JP JP2003325397A patent/JP2005089251A/ja active Pending
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