JP2005087797A - 排ガス浄化触媒用ハニカム担体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【発明の課題】特にNOx含有する自動車用排ガス等を浄化用触媒を担持するための、耐熱性、耐熱衝撃性、機械的強度及び耐熱分解性に優れ、かつ触媒に対する耐食性が大きく、長期間安定して使用できるハニカム担体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ハニカム担体の材質が、TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含む混合物(X成分という)100質量部と、組成式:(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物(Y成分という)を1〜10質量部と、を含有する原料混合物を1250〜1700℃で焼成したチタン酸アルミニウム焼結体である。
【選択図】なし

Description

本発明は、各種の排ガス、特に、排ガス中にNOxが含まれる、自動車用の排ガスを浄化する触媒を担持するための担体及びその製造方法に関する。
各種の燃焼排ガスの浄化装置のなかで、特に現在広く使用されている自動車排ガス浄化装置に使用される触媒を担持するためのハニカム担体に要求される主な特性は、所謂、耐熱性や耐熱衝撃性である。これは、排ガス中の未燃焼炭化水素や一酸化炭素の触媒酸化反応により急激な発熱が生じるために、850℃以上の高温度になるため、高い耐熱性が必要である。また、耐熱衝撃性は、このような急激な発熱による温度上昇のために、ハニカム内に引き起こされる熱応力により亀裂や破壊に耐える性質である。耐熱衝撃性は、熱膨張係数が小さいほどその耐久温度差が大きい。
このような耐熱性や耐熱衝撃性の要求のために、従来、ハニカム担体の材質としては、各種のセラミクスが提案されているものの、もっぱらコージェライト材料が使用されている。コージェライト材料が使用される主な理由は、コージェライトが1400℃という高い耐熱性を有するとともに、セラミクスのなかでも熱膨張係数が極めて小さく、耐熱衝撃性が大きいことにある。
しかしながら、ハニカム担体の材質としてコージェライト材料は、耐熱性や耐熱衝撃性についてはかなり優れた性質を有するが、一方で、環境上の問題からその除去が急務とされる窒素酸化物(NOx)を含有する排ガスの浄化する触媒担体として使用される場合に重要な難点を有する。すなわち、排ガス中のNOxの除去触媒として、通常、アルカリ金属やアルカリ土類金属成分を含む触媒が使用されるが、この場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属の一部が、高温度下においては、担体であるコージェライト内に浸透し、コージェライトと反応する結果、コージェライトの劣化を招くとともに、触媒の損失をもたらすために排ガス中のNOxの除去の低下を引き起こす。これを防ぐために、触媒表面をシリカ(SiO)で被覆する方法などが提案されているが、余分の工程を必要とし、コストの上昇を余儀なくする。
一方、燃費の向上や環境上の問題から、近年自動車の主流の燃焼方式になってきている、燃料をエンジン内に直接噴射する方式や燃料を稀薄燃焼させる方式では、排ガス中のNOxの除去は、炭化水素や一酸化炭素よりも特に重要な問題になっている。このため、排ガスの浄化触媒を担持するハニカム担体は、その材質としてコージェライトに代わる材料が切望されている。
コージェライト以外の材質として、特許文献1には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ムライト、アルミウムチタネート(チタン酸アルミニウム)、リチウムアルミウムシリケートなどのセラミクスが羅列されているが、これらはいずれも上記ハニカム担体の材料としては不充分である。すなわち、炭化ケイ素、ムライトなどは熱膨張係数が大きく耐熱衝撃性が劣る。また、窒化ケイ素、リチウムアルミニウムシリケートなどは耐熱性の点で性能として不充分である。
また、アルミニウムチタネートは、1700℃を越える高温下でも優れた安定性、極めて小さい熱膨張係数、及び優れた耐熱衝撃性を有する。しかし、一方においては、結晶構造の異方性が大きいために結晶粒界に熱応力によるズレが生じ易いため機械的強度が小さいという欠点がある結果、壁厚の薄いセル密度の大きいハニカムの製造は困難であり、また自動車などに搭載され、高温下で機械的振動の負荷がかかる排ガスフィルタとしての使用は困難である。さらに、これらのアルミウムチタネートなどは、通常800〜1280℃の温度範囲に分解領域を有し、このような温度範囲を含む領域で長時間継続使用できないという問題点を有す。
WO01/037971号公報
本発明は、特に、排ガス中にNOxが含まれる、自動車用の排ガスを浄化する触媒を担持するための担体であって、耐熱性、耐熱衝撃性、機械的強度、及び熱分解耐性に優れ、かつアルカリ成分を含有する触媒に対する耐侵食性が高く、長期の使用でも劣化することのない耐久性に優れたハニカム担体、及びその製造方法を提供する。
本発明は、上記課題を解決するために鋭意研究を進めたところ、チタン酸アルミニウムに着目し、チタン酸アルミニウムを形成するTiOとAlとを所定の割合で含む混合物に対して、特定のアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物を所定の割合で添加した混合物を所定の温度範囲で焼成して得られるチタン酸アルミニウム焼結体を使用したハニカム担体は、従来のチタン酸アルミニウム焼結体本来の高い耐熱性と低熱膨張性に基づく耐熱衝撃性を維持しながら、従来のチタン酸アルミニウム焼結体とは異なり、大きい機械的強度、かつ熱分解耐性を有するという新規な知見に基づいて完成されたものである。
かかる本発明は、上記新規な知見に基づいて完成されたものであり、次の要旨を有するものである。
(1)排ガスを浄化させる触媒を担持するためのハニカム担体であって、該ハニカム担体の材質が、
TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含む混合物(X成分という)100質量部と、
組成式:(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物(Y成分という)を1〜10質量部と、
を含有する原料混合物を1250〜1700℃で焼成したチタン酸アルミニウム焼結体であることを特徴とする排ガス浄化触媒用ハニカム担体。
(2)Y成分が、(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石と、Mgを含むスピネル型構造の酸化物及び/又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物と、の混合物である上記(1)に記載の排ガス浄化触媒用ハニカム担体。
(3)ハニカム構造触媒担体が、壁厚0.05〜0.6mm、セル密度15〜124セル/cmを有し、かつ隔壁の気孔率が20〜50%、熱膨張係数が3.0×10−6−1以下である上記(1)又は(2)に記載のハニカム担体。
(4)前記触媒が、排ガス中のNOxを除去するためのアルカリ金属又はアルカリ土類金属成分を含む、上記(1)(2)又は(3)に記載の触媒担体。
(5)排ガスが、燃料をエンジン内に直接噴射する方式又は燃料を稀薄燃焼させる方式の自動車の排ガスである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のハニカム担体。
(6)TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含む混合物(X成分という)100質量部と、
組成式:(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物(Y成分という)を1〜10質量部と、
を含有する混合物を調製し、該混合物に成形助剤を加えて混練して押出成形可能に可塑化し、ハニカム体に押出成形後、1250〜1700 ℃にて焼成することを特徴とする排ガス浄化触媒用ハニカム担体の製造方法。
(7)Y成分が、(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石と、Mgを含むスピネル型構造の酸化物及び/又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物と、の混合物である上記(6)に記載の製造方法。
(8)排ガスを浄化させる触媒を担持したハニカム担体に排ガスを接触させる排ガスの浄化方法であって、該ハニカム担体の材質が、TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含む混合物(X成分という)100質量部と、
組成式:(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物(Y成分という)を1〜10質量部と、
を含有する原料混合物を1250〜1700℃で焼成したチタン酸アルミニウム焼結体であることを特徴とする排ガスの浄化方法。
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体からなるハニカム担体は、高い耐熱性と低熱膨張性に基づく耐熱衝撃性を維持しながら、従来のチタン酸アルミニウムとは異なり、大きい機械的強度、及び耐熱分解性を有し、さらに触媒に対する耐食性に優れる。この結果、固定体及び移動体のいずれの燃焼源からの排ガス、特に、排ガス中にNOxが含まれる、自動車用の排ガスを浄化する触媒を担持するための担体として有効である。
本発明によるハニカム担体が、何故に、上記のように優れた特性を有するかについては、必ずしも明確でないが、ほぼ下記の理由によるものと推測される。
すなわち、チタン酸アルミニウムを形成する混合物にアルカリ長石が添加されることで、チタン酸アルミニウムが生成する温度付近から液相となるアルカリ長石が存在するために、チタン酸アルミニウムの生成反応が液相下で起こり、緻密な結晶が形成され機械的強度が向上する。そして、アルカリ長石に含まれるSi成分は、チタン酸アルミニウムの結晶格子に固溶してAlを置換する。SiはAlよりイオン半径が小さいために周囲の酸素原子との結合距離が短くなり、格子定数は、純粋なチタン酸アルミニウムと比べて小さい値となる。その結果、得られる焼結体は、結晶構造が安定化して非常に高い熱的安定性を示すものとなって熱分解耐性が大きく向上するものと考えられる。
また、チタン酸アルミニウムを形成する混合物に対して、Mgを含むスピネル型構造の酸化物又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物を添加した場合には、緻密な焼結体を得ることができ、純粋なチタン酸アルミニウムと比べて非常に高い機械的強度を有する焼結体を形成できる。
更に、チタン酸アルミニウムを形成する混合物に対してアルカリ長石と、スピネル型構造の酸化物及び/又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物を同時に添加した場合には、アルカリ長石に含まれるSiと、スピネル型構造の酸化物及びMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物に含まれるMgが、チタン酸アルミニウム中において、主としてAlのサイトを置換する。これらの元素を単独で添加した場合には、本来3価で電荷のバランスが保たれているAlのサイトに、2価(Mg)あるいは4価(Si)の元素が置換することになり、焼結体は電荷のバランスを保つために、Mgを添加した場合には、酸素が系外へと放出されて酸素欠損を生じて電荷のバランスを保ち、Siを添加した場合には、Siは4価であるために、本来4価のTiが3価に還元することにより電荷のバランスをとるものと考えられる。
一方、MgはAlと比べて電荷が1小さく、SiはAlと比べて電荷が1大きいために、アルカリ長石とスピネル型構造の酸化物及びMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物を同時に加えることによって電荷のバランスをとることができ、他の焼結体構成元素に影響を及ぼすことなく、固溶することができるものと考えられる。
特に、この場合、アルカリ長石と、スピネル型構造の酸化物及びMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物と、を等モル数に近い割合で添加した場合には、単独で添加した場合と比べて、より安定に添加物が存在できると考えられる。これらの理由により、両者が相乗的に作用して、単独で用いた場合と比べて強度が大きく向上し、チタン酸アルミニウムが本来有する低熱膨張性を損なうことなく、高い機械的強度を有するものとなり、同時に熱分解耐性も向上したチタン酸アルミニウム焼結体が形成されるものと思われる。
また、本発明のハニカム担体がアルカリ成分を含む触媒に対して優れた耐食性を有する理由については、次のように推測される。まず、アルカリ長石を含有する原料混合物から焼成されたチタン酸アルミニウムからなるハニカム担体の場合には、チタン酸アルミニウムが生成する際にアルカリ長石に含まれるカリウム成分が既にチタン酸アルミニウムの結晶系外に存在している(結晶粒界に存在している)。このために、アルカリ成分を含む触媒が担持され、アルカリ成分がハニカム担体と接触してもハニカム担体に対してカリウムの浸透圧が低くなり、カリウムの担体への侵入を妨げる結果となるためと思われる。
一方、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物を含有する原料混合物から焼成されたチタン酸アルミニウムの場合には、塩基性の元素であるMg(アルカリ土類金属の一種)成分を含有することでチタン酸アルミニウムの焼結体の酸性度が下がるため、触媒中のアルカリ成分は塩基であり(アルカリ金属の一種)、その反応性が低下させられる結果によるためと思われる。
更に、アルカリ長石と、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物との両者を含有する原料混合物から焼成されたチタン酸アルミニウムの場合には、上記したメカニズムのいずれもが相乗的に機能するために、アルカリ成分に対する著しく優れた耐食性が奏されるものと思われる。
本発明では、上記ハニカム触媒担体の材質として、TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含むX成分を100質量部と、Y成分を1〜10質量部と、を含有する原料混合物を1250〜1700℃で焼成したチタン酸アルミニウム焼結体が使用される。
上記の、チタン酸アルミニウムを形成するTiO及びAlとしては、それぞれ、必ずしも純粋なTiO及びAlである必要はなく、焼成によりチタン酸アルミニウムを生成できる成分であれば特に限定はない。通常、アルミナセラミックス、チタニアセラミックス、チタン酸アルミニウムセラミックスなどの各種セラミックスの原料として用いられるもののなかから適宜選択して使用される。例えば、Al,Tiを金属成分に含む複合酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩なども使用できる。
TiO及びAlは、前者/後者のモル比率が40〜60/60〜40の割合で使用されるが、好ましくは 45〜50/55〜60で使用される。特に上記の範囲内で、Al/TiOのモル比を1以上とすることによって焼結体の共晶点を避けることができる。本発明でAlとTiOとは混合物として使用され、本発明では、まとめてX成分という場合がある。
本発明のハニカムフィルタの場合、上記したX成分に対して、添加剤として、Y成分を加えることが必要である。Y成分の1つである、アルカリ長石は、組成式:(Na1−y)AlSiで表わされるものが使用される。式中、yは、0≦y≦1を満足し、0.1≦y≦1が好ましく、特に、0.15≦y≦0.85であるものが好ましい。この範囲のy値を有するアルカリ長石は融点が低く、チタン酸アルミニウムの焼結促進に特に有効である。
別のY成分である、Mgを含むスピネル型構造の酸化物としては、例えば、MgAl、MgTiを用いることができる。このようなスピネル型構造の酸化物としては、天然鉱物でもよく、またMgOとAlを含む物質、MgOとTiOを含む物質又は該物質を焼成して得たスピネル型酸化物を用いてもよい。また、異なる種類のスピネル型構造を有する酸化物を2種以上混合して用いてもよい。また、MgO前駆体としては、焼成することによりMgOを形成するものであるならばいずれも使用でき、例えば、MgCO、Mg(NO、MgSO、又はその混合物などが挙げられる。
上記X成分とY成分との使用割合は重要であり、X成分に100質量部に対してY成分が1〜10質量部とされる。なお、これは、X成分とY成分のそれぞれは、酸化物としての割合であり、酸化物以外の原料を使用した場合には、酸化物に換算した値とされる。X成分100質量部に対するY成分が、1質量部より小さい場合には、Y成分の添加効果が、焼結体の特性を改善する効果が小さい。逆に、10質量部を越える場合にはチタン酸アルミニウム結晶へのSiまたはMg元素の固溶限を大きく超えるため、過剰に添加された余剰成分が焼結体に単独の酸化物として存在し、特に熱膨張係数を大きくする結果を招くことになり不適当である。なかでも、X成分100質量部に対するY成分は、3〜7質量部が好適である。
なお、本発明では、上記Y成分として、組成式:(Na1−y)AlSiで表わされるアルカリ長石と、Mgを含むスピネル型構造の酸化物及び/又はMgO若しくはその前駆体と、を併用し、その混合物を使用するのが好ましい。該混合物を使用した場合には、上記した相乗的な機能性の向上が得られる。上記アルカリ長石と、Mgを含むスピネル型構造の酸化物及び/又はMgO若しくはその前駆体と、の混合物は、前者/後者の比率が好ましくは、2〜6/8〜4、特には3.5〜4.5/6.5〜5.5とするのが好適である。上記範囲では、Si/Mgの割合が等モルで存在し、この範囲に含まれない場合には、チタン酸アルミニウムへのSiとMgの同時固溶による相乗効果が発揮されにくくなり好ましくない。
本発明では、上記のX成分及びY成分のほかに、必要に応じて他の焼結助剤を使用することができ、得られる焼結体の性質を改善できる。他の焼結助剤としては、例えば、SiO ZrOFeOCaO Yなどが挙げられる。
上記のX成分及びY成分を含む原料混合物は、充分に混合し、粉砕される。原料混合物の混合、粉砕については、特に限定的でなく既知の方法に従って行われる。例えば、ボールミル、媒体攪拌ミルなどを用いて行えばよい。原料混合物の粉砕の程度は、特に限定的でないが、平均粒子径が好ましくは 30μm以下、特に好ましくは8〜15μmが好適である。これは、二次粒子が形成されない範囲であればできるだけ小さい方が好適である。
原料混合物には、好ましくは、成形助剤を配合することができる。成形助剤としては、結合剤、造孔剤、離型剤、消泡剤、及び解こう剤などの既知のものが使用できる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、マイクロワックスエマルジョン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが好ましい。造孔剤としては、活性炭、コークス、ポリエチレン樹脂、でんぷん、黒鉛などが好ましい。離型剤としては、ステアリン酸エマルジョンなどが、消泡剤としては、n−オクチルアルコール、オクチルフェノキシエタノールなどが、解こう剤としては、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが好ましい。
成形助剤の使用量については特に限定的ではないが、本発明の場合には、原料として用いるX成分、Y成分(酸化物として換算)の合計量100質量部に対して、いずれも固形物換算でそれぞれ以下の範囲とするのが好適である。すなわち、結合剤を好ましくは0.2〜0.6質量部程度、造孔剤を好ましくは20〜50質量部程度、離型剤を好ましくは0.2〜0.7質量部程度、消泡剤を好ましくは0.5〜1.5質量部程度、及び解こう剤を好ましくは0.5〜1.5質量部程度用いるのが好適である。
上記成形助剤を加えた原料混合物は混合、混練して押出し成形可能に可塑化したものを押出成形によりハニカム体に成形する。押出成形の方法については既知の方法が使用でき、ハニカムのセルの断面形状は、円形、楕円形、四角形、三角形のいずれでもよい。また、ハニカム体の全体の形態は円筒体、角筒体のいずれでもよい。成形されたハニカムは、好ましくは乾燥し、次いで1250〜1700℃、好ましくは1300〜1450℃にて焼成される。焼成雰囲気については特に限定がなく、通常採用されている空気中などの含酸素雰囲気が好ましい。焼成時間は、焼結が充分に進行するまで焼成すればよく、通常は1〜20時間程度が採用される。
上記焼成の際の昇温速度や降温速度についても特に制限はなく、得られる焼結体にクラックなどが入らないような条件を適宜設定すればよい。例えば、原料混合物中に含まれる水分、結合剤などの成形助剤を充分に除去するために急激に昇温することなく、徐々に昇温することが好ましい。また、上記した焼成温度に加熱する前に、必要に応じて、好ましくは500〜1000℃程度の温度範囲において、10〜30時間程度の穏やかな昇温により仮焼結を行うことによって、チタン酸アルミニウムが形成する際におけるクラック発生の原因となる焼結体内の応力を緩和することができ、焼結体中のクラックの発生を抑制して緻密でかつ均一な焼結体を得ることができる。
このようにして得られる焼結体は、X成分から形成されるチタン酸アルミニウムを基本成分として、Y成分である、アルカリ長石に含まれるSi成分や、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、MgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物に由来するMg成分がチタン酸アルミニウムの結晶格子中に固溶したものとなる。このような焼結体は、上記したように、高い機械的強度と低熱膨張係数を兼ね備え、しかも結晶構造が安定化されていることにより、優れた熱分解耐性を有する焼結体となる。
その結果、この焼結体からなるハニカム体は、壁厚が例えば0.05〜0.6mm、セル密度が例えば15〜124セル/cmの薄壁ハニカム構造を有する。そして、隔壁の気孔率は例えば20〜50%、熱膨張係数は例えば3.0×10−6−1以下である。このハニカム体は、室温から1700℃程度の高温下においてもチタン酸アルミニウムの熱分解反応が抑制されて安定的に使用できる。
上記ハニカム体は、炭化水素、一酸化炭素、NOx、SOxなどの有害成分を含む各種の排ガス、特に、排ガス中にNOxが含まれる、自動車用の排ガスを浄化するための触媒の担体として使用される。特に、本発明のハニカム担体は、高温度においてアルカリに対して安定性を有するので、排ガス中にNOxが比較的高濃度で含まれる、燃料をエンジン内に直接噴射する方式又は燃料を稀薄燃焼させる方式の自動車の排ガスに対して有効である。
担体に対して担持させる触媒の種類としては、従来の炭化水素や一酸化炭素を除去する所謂三元触媒など既知の種々のものが使用できるが、本発明では、排ガス中のNOxを除去するためのアルカリ金属又はアルカリ土類金属成分を含む触媒に対して特に有効である。アルカリ金属又はアルカリ土類金属のなかでも、NOx除去に効果的であるカリウムやバリウム、特にカリウムを含む触媒に対して本発明の担体は有効である。
本発明のハニカム体に上記触媒を担持させる方法は既知の手段が採用される。触媒を担持させる場合、担持率を改善するために必要に応じて、比表面積の大きい材料、例えばアルミナやシリカを介在させることもできる。すなわち、ハニカム担体にアルミナやシリカを担持させ、該担持させたアルミナやシリカに触媒を担持することができる。触媒を担持したハニカム体は、適宜の保持材を使用して好ましくは缶体内に装備されて使用される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるべきではないことはもちろんである。
実施例1
易焼結性α型アルミナを56.1質量%(50モル%)、及びアナターゼ型酸化チタンを43.9質量%(50モル%)からなる混合物100質量部に対して、添加剤として(Na0.60.4)AlSiで表されるアルカリ長石を4質量部、バインダーとしてポリビニルアルコールを0.25質量部、解こう剤としてジエチルアミンを1質量部、消泡剤としてポリプロピレングリコール0.5質量部、更に造孔剤として、粒子径50〜80μmの活性炭35質量部を加えてボールミルで3時間混合後、120℃の乾燥機で12時間以上乾燥させて原料粉末を得た。
得られた原料粉末を平均粒径5μm程度に粉砕し、真空押出し成形機(宮崎鉄工社製)を使用して押出し成形し、壁厚 0.1mm、セル密度93セル/cmの断面四角セル形状を有する直径:129mm、長さ:150mmの円筒形のハニカム体を得た。このハニカム体を乾燥した後、1400℃にて4時間大気中で焼成した。その後、放冷することによりハニカム体を得た。
比較例1
アルカリ長石を使用しないほかは実施例1と全く同様にしてチタン酸アルミニウム焼結体からなるハニカム担体を得た。
比較例2
コージェライト粉末(2MgO・2Al.・5SiO)を使用し、これから既存の方法で実施することにより実施例1と同形状のハニカム担体を作製した。
実施例2
易焼結性α型アルミナを56.1質量%(50モル%)、及びアナターゼ型酸化チタンを43.9質量%(50モル%)からなる混合物100質量部に対して、(Na0.60.4)AlSiで表されるアルカリ長石を4質量部、化学式:MgAlで表わされるスピネル化合物を6質量部、バインダーとしてポリビニルアルコールを0.25質量部、解こう剤としてジエチルアミンを1質量部、消泡剤としてポリプロピレングリコール0.5質量部、更に造孔剤として、粒子径50〜80μmの活性炭35質量部を加えてボールミルで3時間混合後、120℃の乾燥機で12時間以上乾燥させて原料粉末を得た。
得られた原料粉末を使用して、実施例1と同様にして粉砕、成形、乾燥、及び焼成を行うことによりハニカム担体を得た。
[ハニカム焼結体についての特性試験]
上記の実施例1、2、及び比較例1、2のハニカム焼結体について、気孔率(%)、室温から800℃における熱膨張係数(×10−6−1)、水中投下法による耐熱衝撃抵抗(℃)、軟化温度(℃)、及び圧縮強度(MPa)を測定し、その結果を表1に示した。なお、気孔率は、JISR1634、熱膨張係数は、JISR1618、耐熱衝撃抵抗は、JISR1648、軟化温度は、JISR2209、圧縮強度は、JISR1608に準拠する方法で測定した。なお、圧縮強度については、各ハニカム焼結体から、筒断面の縦、横のセル数がいずれも5セルで長さ方向が15mmの角筒状の検体を切り出し、これを(A)長さ軸方向(axial)、(B)垂直方向(tangential)、(C)長さ軸に45度の斜めの方向(diagonal)の3方向から測定した。
Figure 2005087797
表1からわかるように、実施例1、2、及び比較例2のハニカム担体は、いずれも、実装に充分な圧縮強度を保持している。比較例1は実装には不充分である。
[熱分解耐性試験]
実施例1、2及び、比較例1のハニカム担体からいずれも縦10mm×横10mm×長さ10mmの試験片を切り出し、1000℃の高温雰囲気に保持し、チタン酸アルミニウムの残存率β(%)の経時変化を調べることにより熱分解耐性試験を行った。
なお、チタン酸アルミニウムの残存率はX線回折測定(XRD)のスペクトルから以下の方法により求めた。
まず、チタン酸アルミニウムが熱分解するときに、Al(コランダム)とTiO(ルチル)を生じるので、ルチルの(110)面の回折ピークの積分強度(ITiO2(110))とチタン酸アルミニウムの(023)面の回折ピークの積分強度(IAT(023))を用いてチタン酸アルミニウムのルチルに対する強度比rを下記式より求めた。
r = IAT(023) /(IAT(023) + ITiO2(110)
更に、1000℃における熱処理を行う前の焼結体についても同様の方法でチタン酸アルミニウムのルチルに対する強度比rを求めた。次いで、上記方法で求めたrとrを用いて、下記式よりチタン酸アルミニウムの残存率β(%)を求めた。
β = (r/r) × 100
実施例1、2、及び比較例1の各ハニカム形状の焼結体について、チタン酸アルミニウムの残存率βの経時変化を図1にグラフとして示す。図1から明らかなように、実施例1、2が比較例1よりも残存率が長時間に渡って高く維持され、熱分解耐性に優れることがわかる。更に、図1の50時間経過後の実施例1の残存率がやや低くなっているが、実施例2のものは、依然、残存率が高く維持されており、実施例1よりも熱分解耐性が更に優れていることがわかる。
[ハニカム担体の耐アルカリ性試験]
自動車用排ガスのNOxの除去触媒であるカリウム含有触媒に対するハニカム体の耐食性を調べるために以下の試験を行った。なお、自動車用排ガスのハニカム担体の使用温度は、室温から850℃の範囲であり、また、カリウム含有触媒のカリウム濃度はそれほど高い濃度ではないが、本試験では、濃度1モル/リットルの硝酸カリウム水溶液に漬浸、乾燥した試験片を、温度900℃に保持された炉に長時間保持するという、厳しい条件での加速試験を行った。
[試験方法]
実施例1、2、及び比較例2のそれぞれのハニカム体から断面が30mm角で長さ50mmの試験片を切り出し、この試験片を濃度1モル/リットルの硝酸カリウム水溶液中に室温で10〜60分間浸漬した。次いで、該試験片を70℃にて1時間乾燥させた。乾燥させたハニカム体を内径5cm、長さ42cmの管状炉に挿入し、該管状炉中に10%の水分を含む空気を25cc/分にて流入させながら、下記の条件にて所定の時間保持した。その後に管状炉から取り出したハニカム体についてXRD測定を行い、ハニカム体材料の変質について調べた。なお、管状炉中に流入させる10%の水分を含む空気は、60℃に制御された水槽に空気を通過させることにより調製した。試験の結果を表2に示す。
保持条件
炉内温度 :900℃、炉の昇温、降温速度:100℃/時間
保持時間 :50時間、100時間、150時間、200時間
Figure 2005087797
表2の結果から明らかなように、実施例1、2のハニカム担体は、いずれも良好であることがわかる。
本発明の実施例1、2と比較例1の各焼結体についてのチタン酸アルミニウムの残存率βの経時変化を示す。

Claims (8)

  1. 排ガスを浄化させる触媒を担持するためのハニカム担体であって、該ハニカム担体の材質が、
    TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含む混合物(X成分という)100質量部と、
    組成式:(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物(Y成分という)を1〜10質量部と、
    を含有する原料混合物を1250〜1700℃で焼成したチタン酸アルミニウム焼結体であることを特徴とする排ガス浄化触媒用ハニカム担体。
  2. Y成分が、(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石と、Mgを含むスピネル型構造の酸化物及び/又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物と、の混合物である請求項1に記載の排ガス浄化触媒用ハニカム担体。
  3. ハニカム担体が、壁厚0.05〜0.6mm、セル密度15〜124セル/cmを有し、かつ隔壁の気孔率が20〜50%、熱膨張係数が3.0×10−6−1以下である請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒用ハニカム担体。
  4. 前記触媒が、排ガス中のNOxを除去するためのアルカリ金属又はアルカリ土類金属成分を含む請求項1、2又は3に記載の排ガス浄化触媒用ハニカム担体。
  5. 排ガスが、燃料をエンジン内に直接噴射する方式又は燃料を稀薄燃焼させる方式の自動車の排ガスである請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス浄化触媒用ハニカム担体。
  6. TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含む混合物(X成分という)100質量部と、
    組成式:(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物(Y成分という)1〜10質量部と、
    を含有する混合物を調製し、該混合物に成形助剤を加えて混練して押出成形可能に可塑化し、ハニカム体に押出成形後、1250〜1700℃にて焼成することを特徴とする排ガス浄化触媒用ハニカム担体の製造方法。
  7. Y成分が、(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石と、Mgを含むスピネル型構造の酸化物及び/又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物と、の混合物である請求項6に記載の製造方法。
  8. 排ガスを浄化させる触媒を担持したハニカム担体に排ガスを接触させる排ガスの浄化方法であって、該ハニカム担体の材質が、TiOとAlとを前者/後者の重量比率として40〜60/60〜40モルで含む混合物(X成分という)100質量部と、
    組成式:(Na1−y)AlSi(式中、0≦y≦1)で表わされるアルカリ長石、Mgを含むスピネル型構造の酸化物、又はMgO若しくは焼成によりMgOに転化するMg含有化合物(Y成分という)1〜10質量部と、
    を含有する原料混合物を1250〜1700℃で焼成したチタン酸アルミニウム焼結体であることを特徴とする排ガスの浄化方法。
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