JP2005085321A - 磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を高品質に、生産性良く製造するために好適な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールを、生産性良く得ること。
【解決手段】 スリット速度10〜600m/分、オシレーション速度10〜600mm/分、オシレーション幅±10〜±200mmでポリエステルフィルムをコアに巻き取るに際し、巻始めから巻終わりまで、スリット速度Vsとオシレーション速度Voとの比Vo/Vsを3.3〜10-4〜10×10-4の範囲内とするとともに、その変動率を10%以下に制御しながら巻き取り磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールを得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気記録媒体用ポリエステルフィルム、特にデジタルビデオカセットテープ用、データストレージテープ用等のデジタルデータを記録する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を高品質に、生産性良く製造するために好適な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法に関する。
1995年に実用化された民生用デジタルビデオテープは厚さ6〜7μmのベースフィルム上にCoの金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングしてなり、DVミニカセットを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画時間をもつ。
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用で世界で初のデジタルビデオカセットであり、a.小型ボディながら、膨大な情報が記録できる、b.信号が劣化しないから、何年たっても画質・音質が劣化しない、c.雑音の妨害を受けないから高画質・高音質が楽しめる、d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない、等のメリットを持ち、市場の評価は高い。
これらポリエステルベースフィルムとしては、粒径10〜300nmの微細粒子を含有し、該微細粒子により高さ5〜90nmの微細表面突起が形成されたポリエステルフィルムと、該フィルムの少なくとも片面に密着された厚さ50nm以下の有極性高分子を主体とする不連続被膜とからなり、該微細表面突起の高さが該不連続被膜の高さよりも高いポリエステルフィルム(例えば、特許文献1)、ヤング率が長手方向で600kg/mm2以上であり、幅方向のヤング率が長手方向のヤング率以上の、厚み7μm以下のポリエチレン−2、6−ナフタレートフィルム(例えば、特許文献2)に示されるポリエステルベースフィルム等が使用されている。
特公平6−51401号公報 特開平5−185507号公報
これらDVCテープについては、コストダウンの要求がますます強くなっており、原反ベースに対するコストダウンについてもその必要性が一層強まっている。
例えば特許文献1等に示されるようなポリエステルフィルムを用いてフィルムロールを作成する際には、ロールに内在するエア排除を促してシワ・ズレといった巻姿の悪化を防止するため、ロール最表層部を十分低速で巻き取り、空気エア噛み率を最小限に抑えた硬巻層を設ける必要が生じる。従来の技術では、該層を設けることによって原反形状が悪化してしまい、巻き取り中にシワが発生したり、真空蒸着による強磁性金属薄膜形成時に脱気ズレやシワ発生が誘発され、テープ生産性が悪化するため好ましくなかった。硬巻層を設けることによる原反形状の悪化を完全に防止するためには、本来、減速部を含め、巻出しミル・ロールをスリット速度に対して通常巻き取り部と同等の比率で摺動させることが必要であるが、これまでは摺動速度についてはスリット開始から終了まで一定に保持していた。そこで本発明は、かかる従来技術の問題を解消し、強磁性金属薄膜型磁気記録媒体に用いると好適な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールを生産性よく得、かつこれを用いてなる磁気記録テープを生産性よく得ることを目的とする。
かかる問題を解決するための本発明は、スリット速度10〜600m/分、オシレーション速度10〜600mm/分、オシレーション幅±10〜±200mmでポリエステルフィルムをコアに巻き取るに際し、巻始めから巻終わりまで、スリット速度Vsとオシレーション速度Voとの比Vo/Vsを3.3〜10-4〜10×10-4の範囲内とするとともに、その変動率を10%以下に制御しながら巻き取る磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法を特徴とする。
以下に説明するように、本発明によれば、強磁性金属薄膜型磁気記録媒体に用いると好適な、磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールを生産性良く製造することができる。本発明ポリエステルフィルムの表面Aに強磁性金属薄膜層が設けられた磁気テープはその歩留まりおよび生産性において良好な結果を得ることができる。
本発明におけるポリエステルは分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであれば良いが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。その構成成分の80%以上がエチレンテレフタレートやエチレンナフタレートであることも好ましい。また、ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびポリエーテルイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有するポリエチレンテレフタレートであることも好ましい。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。
さらに、上記のポリエステルは、他にポリエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一種を5重量%を超えない程度に混合してもよい。
本発明において用いるポリエステルフィルムは、磁性層を設ける側の面(表面A)のSRa値は1〜5nmであることが好ましく、より好ましくは2〜4nmである。SRa値が1nm未満であると、表面Aの外側に形成される強磁性薄膜などの磁性層が平滑になりすぎて、例えば、ビデオテープになった後のデジタルビデオテープレコーダー内の記録、再生時にビデオヘッドにより強磁性薄膜が磨耗してしまうことがある。SRa値が5nmを超えると、表面Aの外側に形成される強磁性薄膜などの磁性層が粗面になりすぎて、ビデオテープの出力特性が低下する傾向にある。
ポリエステルフィルム表面Aは平均粒径が5〜30nm、好ましくは8〜30nmの微細粒子を0.5〜12重量%、好ましくは0.6〜10重量%含む有機化合物からなる被覆層により形成されていることが好ましい。また磁性層の耐久性を更に増すためには、表面Aを形成するポリエステル下層内(被覆層の下)には平均粒径が30〜150nm、好ましくは40〜100nmの微細粒子を0.01〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.8重量%含ませ表面突起をもたせるのが好ましい。
微細粒子としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等、有機化合物としてはポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン等の有極性高分子が使用でき、これらのブレンド体も適用できるが、これらに限定されない。
ポリエステルフィルムの磁性層を形成する側の面と反対側の面、すなわち他方の面となる表面Bは、SRa値が15〜40nmであることが好ましく、 フィルムのハンドリング性を良くするために表面BのSRa値は15nm以上であることが好ましい。15nmより小さいと表面Aと表面Bとの摩擦係数が高くなりすぎすべりにくく、ロール上で互いにはりついたようになり、またテープ化工程で各所のガイドロールとの接触でしわが入り易くなる。表面BのSRa値はフィルムを製膜した後、所定の幅にスリットする際に、巻姿の良い製品を採取しやすくするには大なる方が好ましいが、大きすぎるとフィルムの表面A上に強磁性薄膜を設けた後にロール状の巻取りにより表面Bの粗さが転写し強磁性薄膜層にうねり状の変形が起きるので、40nmが上限である。表面BのSRa値はより好ましくは17〜38nm、さらに好ましくは20〜35nmである。
表面Bにおける高さ100〜200nmの突起個数は5万〜50万個/mm2が好ましく、より好ましくは7万〜25万個/mm2が好ましい。5万個/mm2を下回ると、真空蒸着工程でのフィルムの走行位置ずれが起こり好ましくない。突起はフィルム/フィルム間の摩擦を適度に保ち、フィルムの走行位置ずれを防止する役割を持つ。50万個/mm2を上まわると、フィルムの表面A上に強磁性薄膜を設けた後にロール状の巻取りにより片側表面Bの粗さが転写し強磁性薄膜層にうねり状の変形が起きることがある。
高さ0.54μm以上の突起個数は20個/100cm2以下、より好ましくは15個/100cm2以下である。高さ0.54μm以上の突起個数が20個/100cm2を上まわると、特にロール内層における応力の増大により、突起形状が表面Aに転写して形成された表面A上の高さ100nm程度以上の突起状の表面変形個数が多数となり、磁気テープのDOが増大する傾向にある。
本発明のフィルムロールは、円筒状コアーに巻かれれており、フィルム長さは10,000m以上、好ましくは15,000m以上がよい。フィルム幅は500mm以上1,200mm以下が磁気テープ生産性上好ましい。フィルム長さは10,000m以上でないと、例えばDVCテープなどの磁気テープを生産性良く生産できず、テープ製造原価が上昇する。フィルム長さの上限は特にないが、50,000mを超えるとフィルムを巻姿良く巻くことができにくくなり、フィルムの製造原価が上がりがちとなる。
フィルムの厚みは特に制限しないが、通常強磁性金属薄膜を設けた磁気記録テープとして使用される範疇が良く、具体的には3〜10μmである。
本発明のフィルムロールは、フィルムを円筒状コアに巻き取ることで得られるが、この巻き取りは、通常、増速部・定速部・減速部を含んでいる。パターンとしては、(巻始め)増速部・定速部・減速部(巻終わり)をこの順で含むもの(パターン1、図1)や、(巻始め)増速部・定速部・減速部・定速部・減速部(巻終わり)のようもの(パターン2、図2)がある。増速部以降の定速部と減速部は任意の回数を繰り返してもよい。
定速部のスリット速度は10〜600m/分とするが、最もスリット速度が速くなる定速部の速度(通常は、この速度でフィルムを最も長く巻き取る。定常巻き取り部。)は、好ましくは80〜600m/分、より好ましくは100〜500m/分である。この定常巻き取り部のスリット速度が80m/分以下になると、エア排除過多となって必要以上に硬巻化が促され(硬度が高くなり)、強磁性薄膜が設けられる表面Aに表面Bの表面形状が転写したり、巻き取り中にシワが発生するなどの現象が発生する。またスリット速度が600m/分以上になると、噛み込むエア量が増加し、ズレ等の巻姿不良が発生しやすくなる。
また、フィルムロール表層部に硬巻層(低速巻き取り層)を設ける場合は、巻終わりの減速部の直前に低速で定速部を設ける。この低速巻き取り層のスリット速度は、好ましくは10〜100m/分、より好ましくは20〜80m/分である。このスリット速度が10m/分を下回ると、フィルム搬送状態が極端に悪化してトリミング不良が起こることがある。またスリット速度が100m/分を超えると、エア排除が十分にできず、硬巻層を形成することができなくなることがある。低速巻き取り層はロール最表層から直径方向に1mm以上の厚みを有することが好ましい。1mm以上でないと、ロール内在エアの排除効果が低く、経時シワの発生を十分に抑制することができにくくなる。
本発明のフィルムロールは、円筒状コアに巻かれており、原反形状はよりフラットに近いことが好ましい。しかしながら、ロール表層部に低速巻き取り層を設ける際、巻出しミル・ロールを摺動(オシレーション)させなかったり、定常巻き取り部と異なった比率で摺動を行ったりすると、厚みムラの凹凸が一貫してうまくキャンセルされず、原反形状が悪化する傾向にある。本発明では増減速部を含む巻始めから巻終わりまで、スリット速度Vsとオシレーション速度Voの比率Vo/Vsを3.3×10-4〜10.0×10-4、より好ましくは5.0×10-4〜8.0×10-4の範囲に制御することが重要である。
その際、その変動率を10%以下、より好ましくは5%以下とすることが、原反形状R値(PV値)の変化を5%以下に抑制することに大きく寄与する。変動率とは、特に増減速時にスリット速度が変動する事に起因する、Vo/Vsの変動率をいい、Vo/Vsの最大値をVmax、最小値をVminとしたとき、以下の式により算出される値をいう。
変動率(%)
=((Vmax−Vmin)/(Vmax+Vmin))×100
巻出しミル・ロール(巻出しロール)の摺動速度(オシレーション速度)は、好ましくは10〜600mm/分、より好ましくは30〜500mm/分である。速度が10mm/分より遅いと、厚みムラのキャンセル効果が低下する。また600mm/分を超えると巻き取り中にシワが発生する傾向がある。巻出しミル・ロールの摺動幅(オシレーション幅)は±10〜±200mm、より好ましくは±30〜±170mmである。幅が±10mmより小さいと、厚みムラのキャンセル効果が低下する。また±200mmより大きいと巻き取り中にシワが発生したりする上、ミル・ロールの幅(フィルム幅)において、製品ロール(本発明のフィルムロール)として使用できる領域が少なくなり、生産性が低下する。
本発明の磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの表面A上に強磁性金属薄膜の磁性層を設けてなることが好ましい。この場合、使用する金属薄膜は種々のものを使用でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。またメタル塗布型の磁気テープの場合、バインダーとしてビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等を用いてもよい。さらに潤滑剤、帯電防止剤、補強剤等を適宜添加してもよい。 メタル蒸着型の磁気テープの場合には、金属薄膜上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、更にその上に潤滑剤層を設けてなる。
本磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの片側表面B上にバックコート層を設けてもよい。バックコートとしては微粒子、潤滑剤、有機高分子からなる結合剤からなる層を有機溶媒を用いた溶液の塗布、乾燥により設けることが好ましい。バックコート層の厚さは0.5〜1.5μm程度である。微粒子としてはカーボンブラック、アルミナ等が、潤滑剤としてはシリコーン、フッソ化合物等が、結合材としてはポリウレタン、エポキシ樹脂等が用いられるが、これらに限定されない。
次に本発明のポリエステルフィルムロールおよび磁気記録テープの製法を説明するが、これに限定されるものではない。
本発明のポリエステルフィルムはA面側原料として含有粒子を可能な限り除いたポリエステルを用い(A層)、B面側原料として微細粒子を含有させたポリエステルを用い(B層)、A/B層重ね合わせて溶融、成形させ、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルム製造工程において、縦、横方向に90〜140℃で2.7〜5.5倍、3.5〜7.0倍延伸し、190〜240℃の温度で熱固定を行い、下記の操作を行うことにより製造することができる。
(1)A面側原料に平均粒径が30〜150nm、より好ましくは40〜100nmのシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等の微粒子を1.0重量%以下、好ましくは0.8重量%以下添加し、表面Aに微細表面突起を形成するか、(2)一方向に延伸後の平滑なポリエステルフィルムのA面側に、平均粒径が5〜30nm、好ましくは8〜30nmの微細粒子を0.5〜12重量%、好ましくは0.6〜10重量%含む有機化合物からなる塗液を塗布して表面A側に被覆層を形成させ、表面Aに微細表面突起を形成する。被覆層に使用される有機化合物としてはポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン等の有極性高分子これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。微細表面突起の高さ、個数は前記微細粒子の種類、平均粒径、添加量を調整することにより調節することができる。
磁気テープの耐久性を更に増すためには表面Aを形成するポリエステル層内に平均粒径が30〜150nm、好ましくは40〜100nmの微細粒子を1重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、含ませることにより表面A上に表面突起をもたせるのが好ましい。微細粒子としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等が使用できるが、これらに限定されない。
B面側原料に用いることができる微粒子としては炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等用いられるがこれらに限定されるものではない。平均粒子径は100〜400nm、好ましくは150〜350nmが望ましい。また粒子径540nm以上の粒子の粒子全体の中に占める体積分率が10-9以下が望ましい。添加量は0.05〜0.7重量%、好ましくは0.08〜0.6重量%が望ましい。B層外側表面(表面B)の表面粗さ、高さ540nm以上の突起個数の調整は、B層内含有微粒子の粒径、添加濃度並びに層B側溶融体内異物カット用のフィルター精度の調整により制御できる。表面B側に滑剤を含む塗液を塗布し被覆層を設けてもよく、塗液濃度の調整によってもB層外側表面の表面粗さを調整できる。この塗布層に使用される有機化合物としてはポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン等の有極性高分子これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。8〜40nmのシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等の微粒子を0.5〜2.0%添加してもよい。シリコーン、フッ素化合物、ワックス等の易滑剤を加えてもよい。
二軸延伸は例えば逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法で行うことができるが、所望するならば熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向に再度延伸させ機械的強度を高めた、いわゆる強力化タイプとすることもできる。
本発明においては、製膜後のフィルムをスリッターにより所定の幅にスリットし、コアに所定の長さ巻り取るが、巻き取る際に、フィルムをコンタクトロールで押さえながら巻き取り、その押さえ圧を調整することにより、製品ロールの巻硬度を制御することができる。
本発明の方法により得られるポリエステルフィルム(ロール)は磁気記録媒体のベースフィルムとして、デジタル記録方式の磁気テープ用に用いると好ましく、特にデジタルビデオテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ好適である。またデータストレージテープ用途に使用しても優れた結果を得ることができ好適である。
本発明の磁気テープは本発明のポリエステルベースフィルムの表面AにCo等の強磁性金属薄膜を真空蒸着により膜厚み80〜300nmと形成し、この金属薄膜上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、さらにその上に、潤滑剤を塗布し、表面Bに固体微粒子および結合剤からなり、必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することによりバックコート層を設けて作成することができる。
次に、本発明で用いた測定法を示す。
(1)原反形状
原反形状測定器(キタノ企画社製)を用いて測定した。該測定器に付属の検出部であるリニヤーゲージ(LGB−110)を製品ロールに接触させ、専用レール上を速度12.5mm/secで走行させ、製品ロール両端部0〜100mmを幅方向に通過させた。検出部が検知したロール径の変位は、D/A変換ユニット(LG−DA1)およ びリニヤーゲージカウンター(LG−S1)を介して出力させ、チャートレコーダーに チャート速度200mm/minで記録した。PV値(R値)とは得られた原反形状パターンの最低点と最高点との高低差を表す。
(2)ロール巻姿
スリット巻上がり時に、製品ロール表層を目視検査し、シワおよびズレなどの欠陥が存在しなかった場合は(○)、存在した場合は(×)とした。
(3)表面粗さ(SRa)
(株)小坂研究所製の三次元粗さ計を用いて、触針加重6mg・測定長500μm・カットオフ0.25mmの条件で測定した。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒径60nmのシリカを0.03重量%含有させた原料Aと、同一のポリエチレンテレフタレートと平均粒径200nmのシリカを0.36重量%含有させた原料Bとを厚み比6:1の割合で共押出し、冷却ドラムに密着させシート化し、ロール延伸法で105℃で3.0倍に縦延伸した。
同縦延伸の後の工程で、表面Aの外側に微細粒子を含有する有機化合物からなる水溶液を塗布した。
その後、テンターにて横方向に4.2倍に延伸し、210℃で熱処理した後、中間スプールに巻きとり、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアーにロール状に巻取り、厚み6.3μm、幅620mm、巻長さ15,000mのロール状ポリエステルフィルム(フィルムロール)を得た。
巻き取りは、パターン1の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを200m/minとして巻き取った。増減速部は毎秒3.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、巻始めから巻終わりまでVo/Vsを4.5〜4.7とし、一定に保持して巻き取った。摺動幅は終始±70mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部の影響による原反形状R値の悪化率は3.0%であった。また得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。
このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。最終的に得られた磁気記録テープの品質および生産性は良好であった。
実施例2
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ20,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン1の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを400m/minとして巻き取った。増減速部は毎秒4.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、巻始めから巻終わりまでVo/Vsを3.7〜3.8とし、一定に保持して巻き取った。摺動幅は終始±150mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部の影響による原反形状R値の悪化率は1.2%であった。また得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。
このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。最終的に得られた磁気記録テープの品質および生産性は良好であった。
実施例3
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ27,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン1の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを100m/minとして巻き取った。増減速部は毎秒3.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、巻始めから巻終わりまでVo/Vsを9.0〜9.3とし、一定に保持して巻き取った。摺動幅は終始±30mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部の影響による原反形状R値の悪化率は1.8%であった。また得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。 このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。最終的に得られた磁気記録テープの品質および生産性は良好であった。
実施例4
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ15,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン2の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを200m/minとして巻き取った。また低速巻き取り部のスリット速度Vsdは50m/minとした。増減速部は毎秒3.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、巻始めから巻終わりまでVo/Vsを3.4〜3.7とし、一定に保持して巻き取った。摺動幅は終始±70mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部および低速巻き取り層の影響による原反形状R値の悪化率は2.4%であった。また得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。
このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。最終的に得られた磁気記録テープの品質および生産性は良好であった。
実施例5
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ20,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン2の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを400m/minとして巻き取った。また低速巻き取り部のスリット速度Vsdは100m/minとした。増減速部は毎秒2.7m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、巻始めから巻終わりまでVo/Vsを7.1〜7.7とし、一定に保持して巻き取った。摺動幅は終始±150mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部および低速巻き取り層の影響による原反形状R値の悪化率は2.8%であった。また得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。
このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。最終的に得られた磁気記録テープの品質および生産性は良好であった。
実施例6
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ25,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン2の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを90m/minとして巻き取った。また低速巻き取り部のスリット速度Vsdは30m/minとした。増減速部は毎秒4.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、巻始めから巻終わりまでVo/Vsを6.4〜7.0とし、一定に保持して巻き取った。摺動幅は終始±30mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部および低速巻き取り層の影響による原反形状R値の悪化率は0.7%であった。また得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。 このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。最終的に得られた磁気記録テープの品質および生産性は良好であった。
比較例1
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ15,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン1の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを200m/minとして巻き取った。増減速部は毎秒3.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、定常巻き取り部ではVo/Vsを4.5とし、増減速部では摺動を停止、Vo/Vsを0.0として巻き取った。摺動幅は終始±70mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部の影響による原反形状R値の悪化率は32.0%であった。ただし得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。
このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成したが、真空蒸着巻き出し時、シワが発生し、最終的に得られた磁気記録テープの生産性は悪化した。
比較例2
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ20,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン1の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを400m/minとして巻き取った。増減速部は毎秒2.7m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、定常巻き取り部ではVo/Vsを3.8とし、増減速部ではVo/Vsを1.2として巻き取った。摺動幅は終始±150mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部の影響による原反形状R値の悪化率は27.7%であった。ただし得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。
このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成したが、真空蒸着巻き出し時、シワが発生し、最終的に得られた磁気記録テープの生産性は悪化した。
比較例3
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ27,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン1の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを100m/minとして巻き取った。増減速部は毎秒4.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、定常巻き取り部ではVo/Vsを9.0とし、増減速部ではVo/Vsを13.0として巻き取った。摺動幅は終始±30mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部の影響による原反形状R値の悪化率は3.1%であったが、減速時にシワが発生し、最終的に得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は不良であった。
得られたポリエステルフィルムロールは、この表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nm設けることで作製する磁気記録テープへの使用には適さなかった。
比較例4
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ15,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン2の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを200m/minとして巻き取った。また低速巻き取り部のスリット速度Vsdは50m/minとした。増減速部は毎秒3.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、定常巻き取り部ではVo/Vsを3.2とし、増減速部および低速巻き取り部では摺動を停止、Vo/Vsを0.0として巻き取った。摺動幅は終始±70mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部および低速巻き取り部の影響による原反形状R値の悪化率は74.5%であった。また得られたフィルムロール表層には原反形状悪化にともなうシワが発生した。
得られたポリエステルフィルムロールは、この表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nm設けることで作製する磁気記録テープへの使用には適さなかった。
比較例5
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ20,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン2の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを400m/minとして巻き取った。また低速巻き取り部のスリット速度Vsdは100m/minとした。増減速部は毎秒2.7m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、定常巻き取り部ではVo/Vsを7.5とし、増減速部および低速巻き取り部ではVo/Vsを2.5〜2.7とし、一定に保持して巻き取った。摺動幅は終始±150mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部および低速巻き取り部の影響による原反形状R値の悪化率は68.7%であった。また得られたフィルムロール表層には原反形状悪化にともなうシワが発生した。
得られたポリエステルフィルムロールは、この表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nm設けることで作製する磁気記録テープへの使用には適さなかった。
比較例6
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、厚さ6.3μm、幅620mm、巻長さ27,000mのロール状ポリエステルフィルムを得た。
巻き取りは、パターン2の巻き取りパターンで、定常巻き取り部のスリット速度Vsbを90m/minとして巻き取った。また低速巻き取り部のスリット速度Vscは30m/minとした。増減速部は毎秒4.0m/minの加速度で増減速を行った。また巻出しミル・ロールの摺動については、定常巻き取り部および増速部および低速スリット速度Vobへの減速部ではVo/Vsを6.7、低速巻き取り部ではVo/Vsを1.2とし、また巻終わりへの減速部では摺動を停止、Vo/Vsを0.0とした。摺動幅は終始±30mmとした。結果、得られたポリエステルフィルムロールの減速部および低速巻き取り部の影響による原反形状R値の悪化率は52.5%であった。ただし得られたポリエステルフィルムロールの巻姿は良好であった。
このポリエステルフィルムの表面Aに真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成したが、真空蒸着巻き出し時、シワが発生し、最終的に得られた磁気記録テープの生産性は悪化した。
Figure 2005085321
本発明の一実施態様に係る巻き取りパターンを示すグラフである。 本発明の他の実施態様に係る巻き取りパターンを示すグラフである。
符号の説明
Vs:スリット速度
a:増速部
b:定速部(定常巻き取り部)
c:減速部
d:定速部(低速巻き取り層:硬巻層)
e:減速部

Claims (6)

  1. スリット速度10〜600m/分、オシレーション速度10〜600mm/分、オシレーション幅±10〜±200mmでポリエステルフィルムをコアに巻き取るに際し、巻始めから巻終わりまで、スリット速度Vsとオシレーション速度Voとの比Vo/Vsを3.3〜10-4〜10×10-4の範囲内とするとともに、その変動率を10%以下に制御しながら巻き取る磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法。
  2. ポリエステルフィルムの磁性層が設けられる側の面(表面A)の表面粗さSRaが1〜5nmであり、表面Aと反対側の面(表面B)の表面粗さSRaが15〜40nmである、請求項1に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法。
  3. ポリエステルフィルムの巻き取り長さが10,000m以上である、請求項1または2に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法。
  4. 磁気記録媒体がデジタル記録方式の磁気テープである、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法。
  5. ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびポリエーテルイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有するポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかの方法により得られる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールのフィルムの磁性層が設けられる側の面(表面A)に強磁性金属薄膜を設けてなる磁気記録テープ。
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