JP2005084096A - プラスチック光ファイバケーブル - Google Patents

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Abstract

【課題】一次被覆層と二次被覆層との引抜強度が所定の値に制御されたPOFケーブルを提供する。
【解決手段】POF素線の外周に、一次被覆層を、さらにその外周に二次被覆層を、押し出し被覆法により同時に被覆したPOFケーブルであって、一次被覆層が、ポリアミド系樹脂を主成分とする第1のポリアミド系樹脂組成物から形成され、二次被覆層が、ポリアミド系樹脂100質量部に対して、含フッ素ポリオレフィン系重合体を0.5〜20質量部含有する第2のポリアミド系樹脂組成物から形成され、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度が10〜30Nであることを特徴とするPOFケーブル。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば自動車内の配線などに好適に使用される、プラスチック光ファイバケーブルに関する。
従来、プラスチック光ファイバとしては、広い波長領域にわたって優れた光伝送を行うことができる石英系光ファイバが知られており、幹線系を中心に広く実用化されている。しかしながら、石英系光ファイバは高価で加工性が低いという欠点を有している。このため、端面加工や取り扱いが容易であるとともに安価で、さらに軽量、大口径であるなどの長所を有するプラスチック光ファイバ(POFと表すことがある)が開発され、ライティング、センサ等の分野や、ファクトリーオートメーション(FAと表すことがある)、オフィスオートメーション(OAと表すことがある)、ローカルエリアネットワーク(LANと表すことがある)等の短・中距離通信用途の配線などの分野で用いられている。
さらに近年、短・中距離通信用途の中でも、特に自動車内通信分野において、カーナビゲーションシステムの普及、インテリジェントトラフィックコントロール(ITCと表すことがある)/エレクトリックトールコレクション(ETCと表すことがある)システムの導入等の構想を背景とした通信情報量の増加への対応、ハーネスケーブルの軽量化、安価な通信システムの構築等に対する要求が高まっており、プラスチック光ファイバの自動車内通信分野への展開が行われつつある。
一方、プラスチック光ファイバケーブル(POFケーブルと表すことがある)が自動車内の配線に用いられる場合、夏期には自動車内が高温となること、エンジン等の高温体の近傍で使用されることなどから、その被覆材料には耐熱性、耐熱寸法安定性が求められ、さらに、オイル、電解液、ガソリン等の引火性の材料が存在する環境下で使用されることなどから、その被覆材料には耐薬品性、難燃性も要求されている。
POFケーブルに耐熱性、耐薬品性、耐熱寸法安定性等を付与する手段としては、被覆材料として、ナイロンを始めとするポリアミド系重合体を用いる技術が、特許文献1、特許文献2、特許文献3などで提案され、現在使用されている自動車用POFケーブルにおいてもナイロン11やナイロン12などのポリアミド樹脂が使用されている。
特開平 7− 77642号公報 特開平10−319281号公報 特開平11−242142号公報
さらにPOFケーブルの耐久性、耐環境特性をさらに良好なものとするために、一次被覆層の外周部にポリアミド系樹脂からなる二次被覆層を設ける技術が、上記特許文献2および特許文献3などで提案されている。
また、POFケーブルは、信号源である光源や、別のPOFケーブル等との接合のために、ケーブル端にプラグを取り付けたプラグ付きPOFケーブルとして使用される。二層以上の被覆層を備えたPOFケーブルにプラグを取り付ける場合、二次被覆層を除去して露出した一次被覆層部分の上から、プラグを固定する方法が一般的である。このためPOFケーブルの二次被覆層は、ケーブル接続作業時など必要に応じて比較的容易に剥離可能であることが要求される。
一次被覆層と二次被覆層の密着性(引抜強度)を適宜コントロールするための手法としては、特許文献4で開示されているように、クロスヘッド型被覆装置を用いて、POFに一次被覆層を被覆して、その後に一次被覆層の外周部に二次被覆層を被覆する方法が知られている。この方法では、被覆条件によって、一次被覆層と二次被覆層の引抜強度を、所望の値に制御することができる。
国際公開第WO01/48526号パンフレット
上記各特許文献には、POFケーブルの耐熱性、耐熱寸法安定性、耐薬品性、耐久性などの特性を向上させる技術や、一次被覆層と二次被覆層の引抜強度を適宜コントロールする技術についてそれぞれ開示されているが、いずれにしてもポリアミド樹脂を二層構造で被覆して、なおかつ二次被覆層の剥離が可能な程度に、一次被覆層と二次被覆層の引抜強度をコントロールするには、一次被覆層と二次被覆層を2回の工程に分けて被覆することが必要であった。このため、工程数が増えて、コストアップの一因になるという問題があった。
本発明は、プラスチック光ファイバ素線の外周に、ポリアミド系樹脂組成物から形成される一次被覆層と二次被覆層を同時に被覆した、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度が所定の強度を有するPOFケーブルを提供することを目的とするものである。
上記目的を達成した本発明のプラスチック光ファイバケーブルは、コアと該コアの外周に形成されたクラッドからなるプラスチック光ファイバ素線の外周に一次被覆層を、さらにその外周に二次被覆層を、押し出し被覆法により同時に被覆したプラスチック光ファイバケーブルであって、前記一次被覆層が、ポリアミド系樹脂を主成分とする第1のポリアミド系樹脂組成物から形成され、前記二次被覆層が、ポリアミド系樹脂100質量部に対して、含フッ素ポリオレフィン系重合体を0.5〜20質量部含有する第2のポリアミド系樹脂組成物から形成され、該一次被覆層と該二次被覆層との間の引抜強度が10〜30Nであることを特徴とする。
本発明のPOFケーブルは、プラスチック光ファイバ素線(POF素線と表すことがある)に一次被覆層と二次被覆層を同時に被覆することによって製造することができるため、低コストで生産することが可能となる。しかも、POF素線と一次被覆層の密着性が良好であるうえ、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(密着性)は所定の値に制御されているので、所望の場合には、二次被覆層を剥離させやすく、プラグの取り付けなどの接続作業を容易に行うことができる。また、柔軟性に優れているため狭窄部へも敷設し易く、しかも耐薬品性、難燃性も良好である。
以下、本発明について詳細に説明する。
[POF素線]
本発明のPOFケーブルに使用されるPOF素線は、コアの外周にクラッドが形成されたものである。コアは、公知の材料を用いて形成することができる。透光性が高いコアが必要な場合には、コアを形成する材料としてポリメタクリル酸メチル(PMMAと表すことがある)か、1種類以上のビニル系単量体とメタクリル酸メチルとの共重合体かのいずれかを使用することが好ましい。透光性、材料価格、耐久性の点からPMMAがより好ましい。また、耐熱性が必要とされる場合は、コアを形成する材料として、ポリカーボネート系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等が好ましい。
コアの外周に形成されるクラッドは単層であっても多層であってもよい。クラッドは、公知の材料を用いて形成することができる。
具体的には、例えば、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、エチレンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロアセトンと(パーフルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンと(パーフルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと(パーフルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体等を挙げることができる。これらの材料は、POF素線の耐屈曲性、耐湿熱性、耐薬品性を向上することができるため好ましい。
POF素線の外径は特に制限はないが、通常、700〜1200μmの範囲であることが好ましい。POF素線の外径を700μm以上とすると、POF素線が充分な光量の信号を取り込み、通信の信頼性が向上する。POF素線の直径を1200μm以下とすると、コスト的に有利となり好ましい。
[一次被覆層]
一次被覆層は、上述したPOF素線の外周に形成されるPOF素線を保護する層である。一次被覆層は、耐熱性、耐薬品性、POFケーブルの耐屈曲性、被覆層の寸法安定性(熱収縮性)などの点から、ポリアミド系樹脂を主成分とする第1のポリアミド系樹脂組成物から形成される。
第1のポリアミド系樹脂組成物の主成分であるポリアミド系樹脂は、第1のポリアミド系樹脂組成物中に通常60質量%以上、好ましくは80質量%以上含まれる。ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612などの単独重合体やこれら単独重合体を構成する単量体単位の組合せからなる共重合体、柔軟なセグメントを導入した単量体単位を含む共重合体であるポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、いずれも溶融温度が低いため、これらのポリアミド系樹脂を第1のポリアミド系樹脂組成物の主成分として用いると、比較的低温でPOF素線を一次被覆層(および二次被覆層)によって被覆することができる。また、POF素線を一次被覆層(および二次被覆層)によって被覆する際にPOF素線の伝送性能を熱劣化させることがない点からも好ましい。
また、これらのポリアミド系樹脂は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。特に、ナイロン11単独重合体またはナイロン12単独重合体は、単独で、またはこれらを混合して使用しても、一次被覆層(および二次被覆層)の被覆工程における成形性が良好で、POF素線に熱的および機械的なダメージを与えることがなく好ましい。
第1のポリアミド系樹脂組成物には、必要に応じて他の重合体や、難燃剤、着色剤、POF素線への外光の入射を防止するためのカーボンブラック等の黒色無機顔料などの添加剤を含有させることもできる。
一次被覆層の層厚は5〜1000μmの範囲が好ましく、50〜600μmの範囲がさらに好ましい。一次被覆層の層厚を5μm以上とすると、POF素線と一次被覆層の間の密着性が向上し、引抜強度が十分なものとなり好ましい。また、一次被覆層の層厚を1000μm以下とすると、一次被覆層の材料コストを低減することができる。
[二次被覆層]
二次被覆層は、上述の一次被覆層の外周に形成される。二次被覆層は、POFケーブルにより優れた耐久性、耐環境特性などを付与するために形成されるが、POFケーブルの接続作業時などにおいては適宜剥離される。
二次被覆層は、第2のポリアミド系樹脂組成物から形成される。第2のポリアミド系樹脂組成物は、主成分のポリアミド系樹脂100質量部に対して、含フッ素ポリオレフィン系重合体を0.5〜20質量部含有する。二次被覆層をこのような第2のポリアミド系樹脂組成物から形成すると、第1のポリアミド系樹脂組成物からなる一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(密着性)を適切に制御できるので、一次被覆層と二次被覆層とが過度に密着せず所望の場合には容易に二次被覆層を剥離することができ、しかも二次被覆層から一次被覆層がPOF素線と共に抜けてしまうことがない。
二次被覆層の層厚は、100〜1000μmの範囲が好ましく、200〜500μmの範囲がさらに好ましい。二次被覆層の層厚を100μm以上とすると、耐薬品性や機械的ストレスに対するPOF素線の保護効果が十分となり、また、二次被覆層の層厚を1000μm以下とすると、POFケーブルの弾性力が適度であるため、取り扱い性が良好となり好ましい。
二次被覆層を形成する第2のポリアミド系樹脂組成物において、含フッ素ポリオレフィン系重合体の含有量は、主成分のポリアミド系樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。含フッ素ポリオレフィン系重合体の量をこのような範囲とすると一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(密着性)が適度に制御され、第1のポリアミド系樹脂組成物から形成される一次被覆層に対して二次被覆層が過度に密着することがなく、POFケーブルの接続作業時等所望の場合には二次被覆層を容易に剥離することができるので作業性に優れ、しかも、POF素線が一次被覆層と共に二次被覆層から抜けてしまうことがなく、適度に密着する。また、得られたPOFケーブルの柔軟性も適度となり、変形した場合の回復が早く、形態安定性に優れ、巻き癖などがつきにくく、取扱性に優れる。一方、含フッ素ポリオレフィン系重合体が0.5質量部未満では、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(密着性)が強くなりすぎる傾向があり、20質量部を超えると、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(密着性)が弱くなりすぎる傾向があるとともに、第2のポリアミド系樹脂組成物の流動性が低下したり、POFケーブル表面の平滑性が低下したりする。
二次被覆層を形成する第2のポリアミド系樹脂組成物に含まれる主成分のポリアミド系樹脂としては、耐薬品性、耐熱性などに優れたナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン621などの単独重合体や、これらの単独重合体を構成する単量体単位が組み合わされた共重合体、ポリアミド系エラストマーなどが好ましい。これらのポリアミド系樹脂は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のPOFケーブルは、1mm変位時の曲げ弾性率Eが8〜18N/mmの特定の範囲の値を有するものが好ましい。このPOFケーブルの曲げ弾性率Eは、POFケーブルの最外層の曲げ弾性率の影響を受けやすい。それゆえ、POFケーブルの曲げ弾性率Eは、POFケーブルの最外層である二次被覆層を形成する第2のポリアミド系樹脂組成物の曲げ弾性率の影響を受けやすく、特に、第2のポリアミド系樹脂組成物の主成分であるポリアミド系樹脂の種類に影響を受けやすい。そこで、POFケーブルの曲げ弾性率Eは、第2のポリアミド系樹脂組成物の主成分であるポリアミド系樹脂によって調整するのが好ましい。
具体的には、例えば、第2のポリアミド系樹脂組成物の主成分のポリアミド系樹脂として、ポリアミド系エラストマー、ポリアミド612等のポリアミド共重合体、ナイロン11、ナイロン12からなる群から選ばれた1種以上を単独でまたは適宜混合して使用するのが好ましく、ナイロン12、ナイロン612またはこれらの混合物を使用するのがより好ましい。また場合によっては、ポリアミド樹脂の難燃剤として公知であるシアヌル酸メラミンを適宜加えて、POFケーブルの曲げ弾性率Eを調整することも可能である。
二次被覆層を形成する第2のポリアミド系樹脂組成物に含まれる含フッ素ポリオレフィン系重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、エチレンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等が挙げられる。
これらの中では、ポリテトラフルオロエチレンが難燃性を損なうことなく、添加量によって引抜強度を適宜コントロールできる効果があるために特に好ましい。
ポリテトラフルオロエチレンとしては、具体的には、ポリフロンMPA FA−500(商標名:ダイキン工業(株)製)、ポリフロンPTFE M−390(商標名:ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。
また本発明で使用するポリテトラフルオロエチレンは、重量平均分子量が4,000,000以下であるものが好ましい。重量平均分子量が4,000,000以下のポリテトラフルオロエチレンとすると、二軸押出機、バンバリミキサー等を用いて、ポリアミド系樹脂とポリテトラフルオロエチレンとを溶融混練するときに、ポリテトラフルオロエチレンがポリアミド系樹脂中にフィブリル化しながら分散されることがなく、第2のポリアミド系樹脂組成物の粘度が安定しており、溶融混練作業を効率的に行うことができる。ポリテトラフルオロエチレンの重量平均分子量は、3,000,000以下がより好ましい。また、通常、ポリテトラフルオロエチレンの重量平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上である。ポリテトラフルオロエチレンの重量平均分子量を5,000以上とすると、ポリテトラフルオロエチレンが、二次被覆層の表面にブリードアウトしてPOFケーブルがべた付いたり、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(密着性)が変化するのを抑えることができる。
また、二次被覆層を形成する第2のポリアミド系樹脂組成物には、必要に応じて他の重合体や、着色剤、POF素線への外光の入射を防止するためのカーボンブラック等の黒色無機顔料などの添加剤を配合することができる。
また、難燃性を付与するために、難燃剤を含有させることができる。
難燃剤としては、公知の各種金属水酸化物、リン化合物、トリアジン系化合物などを挙げることができる。難燃性を向上させる効果が大きいところから、トリアジン系化合物を用いることが好ましく、第2のポリアミド系樹脂組成物に含まれるポリアミド系樹脂100質量部に対して好ましくは5〜30質量部、より好ましくは8〜20質量部含有させる。トリアジン系化合物の含有量を5質量部以上とすると、難燃性の向上効果が高くなり、30質量部以下とするとPOFケーブルの曲げ弾性率Eを好ましい範囲に調整するのが容易となり、POFケーブルの取扱性が良好となる。
トリアジン系化合物としては、特にシアヌル酸メラミンが好ましく、具体的には、例えばMC−600(商品名:日産化学工業(株)製)などのシアヌル酸メラミンや、MCN−440、MCN−640(商品名:日産化学工業(株)製)などの、表面がシリカで変性されたシリカ変性シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
また、二次被覆層に着色剤等を添加して、POFケーブルの識別性、意匠性を高めることができる。この場合公知の着色剤を使用することができる。高温下で使用されるPOFケーブルの場合には、移行してPFO素線の伝送損失を増加させることのない無機顔料を用いることが好ましい。
[POFケーブル]
本発明のPOFケーブルは、公知の方法により製造することができる。例えば、POF素線に一次被覆層および二次被覆層をクロスヘッド型被覆装置を用いた押し出し被覆法により、クロスヘッド内で順次設ける方法や、POF素線に、一次被覆層および二次被覆層を形成する材料を積層して複合紡糸する方法などを挙げることができる。
しかも、一次被覆層および二次被覆層に第1のポリアミド系樹脂組成物および第2のポリアミド系樹脂組成物の各々を用いることにより、両層の間の引抜強度を、第2のポリアミド系樹脂組成物における含フッ素ポリオレフィン系重合体の添加量でコントロールすることが可能となる。すなわち、POF素線に通常のポリアミド系樹脂を2層構造で被覆する従来技術の場合には、熱融着により一次被覆層と二次被覆層とが強固に密着するため、クロスヘッド型被覆装置で2回に分けて被覆する必要があった。しかし、本発明においては、一次被覆層と二次被覆層とをクロスヘッド内で一括して被覆しても、両層の間の引抜強度を、第2のポリアミド系樹脂組成物に添加する含フッ素ポリオレフィン系重合体の量で適宜コントロールして被覆することが可能である。これにより、被覆工程が簡略化できるため製造コストの低減が可能となる。
POF素線の外周に上述の一次被覆層と二次被覆層とが同時に被覆された本発明のPOFケーブルは、1mm変位時の曲げ弾性率Eが好ましくは5〜18N/mmの範囲であり、より好ましくは8N/mm 以上、15N/mm 以下である。曲げ弾性率Eを5〜18N/mmとすると、変形した場合の回復力が適度に高く、適度に形態が安定し、また、柔軟性に富み、巻き癖などがつきにくいため取り扱いやすい。
また、POFケーブルの外径は特に制限されないが、通常、1300〜3000μmの範囲が好ましい。POFケーブルの外径を1300μm以上とすると、POFケーブルが変形した場合の回復が速く、形態安定性が良好となり取り扱いやすくなる。一方、3000μm以下とすると、柔軟性が向上し、巻き癖などがつき難くなり、やはりPOFケーブルの取り扱いが容易となる。
また、本発明のPOFケーブルは、二次被覆層の断面積をB、POFケーブルの断面積をAとしたとき、B/Aが0.3〜0.7の範囲であることが好ましい。B/Aを0.3以上とすると二次被覆層の耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性が良好となり、0.7以下とするとPOFケーブルのコストが低減され、一次被覆層の層厚を大きくすることができるため、後述するプラグの固定強度が向上する。
本発明のPOFケーブルにおいては、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度を、上述したように、第2のポリアミド系樹脂を使用することにより適切に制御することができる。また、POFケーブルの曲げ弾性率Eは、上述したように、第2のポリアミド樹脂組成物を使用すること、特に、主成分であるポリアミド系樹脂を最適化することによって、また場合によっては添加剤を加えて、好ましい範囲に制御することができる。
なお、本発明における引抜強度および曲げ弾性率Eは、実施例において説明する方法により測定することができる。
本発明のPOFケーブルは、上述したように、所望の場合には、二次被覆層を一次被覆層から容易に剥離することができる。また、本発明のPOFケーブルは、変形した場合の回復力が適度に高く適度に形態が安定しており、また、柔軟性に富み巻き癖などがつきにくいため取扱性に優れ、耐薬品性、難燃性も良好である。
[プラグ付きPOFケーブル]
本発明のPOFケーブルは、その少なくとも一端に、プラグを接続して固定することにより、プラグ付きPOFケーブルとすることができる。このようにプラグ付きPOFケーブルとすることにより、信号源である光源や、検知器に組み込まれたユニットのハウジング、別のPOFケーブル等と容易に接続することができる。
本発明に使用するプラグの形態は特に制限はなく、POFケーブルを挿入する挿入孔が形成されたプラグ本体と、POFケーブルをこのプラグ本体に固定するためのストッパを備えたものなどを使用することができる。
また、POFケーブルとプラグとの接続は、例えば、POFケーブル端部の二次被覆層を剥離し、露出した一次被覆層にプラグを固定する方法などで行うことができる。本発明のPOFケーブルは、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度が所定の値となっており、二次被覆層を容易に剥離することができるためにプラグの取り付けなどの接続作業を効率よく行うことができる。また、上記プラグ付きPOFケーブルは、柔軟性に優れ、狭窄部へも敷設し易く、しかも耐薬品性、難燃性も良好である。このため、光信号伝送の配線、高速光通信のためのコンピュータ接続配線、交換機回りの配線、工場自動機械制御の配線、自動車などの移動体用データ伝送用配線、光センサー用配線などで他の機器と接続する場合の使用に適している。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
なお、実施例における評価、測定は以下の方法により実施した。
(伝送損失)
25m−5mカットバック法により伝送損失(dB/km)を測定した。測定波長が650nm、入射光の開口数(NAと表すことがある)が、0.1の光を用いた。
(曲げ弾性率E)
POFケーブルを2つの固定点で固定し、ケーブル曲げ具を用いてPOFケーブルを中心軸に対して垂直に押圧した。固定点の間隔を15mmとした。押圧時、POFケーブルは、曲率半径5mmの円弧形状となった。ケーブル曲げ具が押圧開始から1mm変位したときのケーブル曲げ具にかかる応力(N)を測定し、曲げ弾性率E(N/mm)とした。
(引抜強度の測定)
引抜強度は、図1に示す、POFケーブル10を保持する冶具12と、チャック7および8を備えた測定装置20(チャック部のみを図示した)を用いて測定した。
冶具12は、POFケーブル10の被覆部分4を収容する保持室13を備えている。保持室13は、その一端部に測定装置が冶具12を把持するための突起14を有しており、他端部の壁面にPOFケーブル10の剥離部分5を保持室13外に導出するための、POFケーブル10の剥離部分5より孔径が大きく、被覆部分4よりも孔径が小さい貫通孔15を有している。
測定にあたって、先ず、一端側の被覆層を剥離したPOFケーブルを用意し、POFケーブルの被覆部分4の長さが30mmになるように他端部を切断し試験片を作製する。POF素線と一次被覆層との間の引抜強度を測定する場合は、一次被覆層および二次被覆層を剥離し、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度を測定する場合は、二次被覆層のみを剥離して試験片を作製する。
次に、冶具12の保持室13内に上記試験片の被覆部分4を収容し、試験片の剥離部分5を貫通孔15から抜き出し、冶具12の突起14をチャック8で把持し、試験片の剥離部分5をチャック7で把持し、試験片の中心軸方向(図中矢印方向)に沿って、一定速度50mm/minでチャック8を移動させて引っ張り、試験片の剥離部分5を被覆部分4から引き抜き、このときの荷重を測定した。POFケーブルの剥離部分5の引き抜きによるずれ量と荷重との関係を示す曲線から荷重のピーク値を読みとり引抜強度の測定値とした。
(難燃性)
難燃性試験は、DIN72551−5に準拠する測定方法に基づいて行った。この測定方法は、電線用の難燃性測定法であるDIN72551−5を、POFケーブルの難燃性を測定するために、次のように若干変更したものである。この測定法においては、燃焼時または燃焼後の電線を斜め45°に維持することが必要である。しかし、電線とは異なり、POFケーブルはPOFケーブルが燃焼したときに斜め45°に維持することが困難である。そこで、POFケーブルを、燃焼時または燃焼後に斜め45°に維持するために、外周に螺旋状に一対の銅線を互いが交差するように20mmピッチで巻き付けたPOFケーブルサンプルを用いて難燃性を測定した。銅線としては、直径0.7mmφのものを用いた。
また、難燃性試験の合否の判定基準は、POFケーブルサンプルにバーナーの炎を7秒間あてて着火し、炎をサンプルから遠ざけ、30秒以内に炎が消えたものを合格とし、消えなかったものを不合格とした。実施例または比較例のPOFケーブルの各々について10本のサンプルを評価し、合格本数が8本以上である場合に合格とし、7本以下の場合を不合格とした。また、各々のPOFケーブルサンプルについて消火するまでの時間を測定し、10本のサンプルの平均値を求め消火時間とした。
(実施例1)
POF素線として、コア材がPMMA、第1クラッド材料が2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FMと表すことがある)/2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(17FMと表すことがある)/メタクリル酸メチル/メタクリル酸=51/31/17/1(質量部)の共重合体、第2クラッド材料がビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン=80/20(mol%)(屈折率1.402)の共重合体からなるPOF素線を使用した。
一次被覆層には、第1のポリアミド系樹脂組成物として、ナイロン12(商標名:ダイアミド L1640、ダイセル・デグサ(株)製;PA12と表すことがある)を用いた。二次被覆層には、ナイロン612(商標名:ダイアミド N1901、ダイセル・デグサ(株)製;PA612と表すことがある)100質量部に対してポリテトラフルオロエチレン(商標名:ポリフロンMPA FA−500、重量平均分子量3、000、000、ダイキン工業(株)製;PTFE(a)と表すことがある)5質量部、難燃剤としてシリカ変性メラミンシアヌレート15部(商標名:MCN−440、日産化学工業(株)製;MCNと表すことがある)を配合した第2のポリアミド系樹脂組成物を用いた。
上記の、POF素線に、クロスヘッドケーブル被覆装置(ユニテック社製)を用いて、220℃に設定したクロスヘッドダイにて、一次被覆層と二次被覆層を一括して被覆して、一次被覆層の層厚が250μm(一次被覆POFケーブルの外径1.5mm)、二次被覆層の層厚が350μmの2層被覆構造を有するPOFケーブル(二次被覆POFケーブルの外径2.2mm)を得た。
このPOFケーブルは、二次被覆層の断面積をBとし、POFケーブルの断面積をAとしたとき、B/Aが0.54であった。
得られたPOFケーブルについて評価を行い、その結果を表1に示した。
Figure 2005084096
[実施例2〜5、比較例1〜2]
POFケーブルの構成条件を表1に示した通りとした以外は、実施例1と同じPOF素線を使用し、実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルについて評価を行い、その結果を表1に示した。
[比較例3]
一次被覆層と二次被覆層を二回に分けて被覆した以外は、POF素線およびPOFケーブルの構成条件を実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルについて評価を行い、その結果を表1に示した。
[比較例4]
ポリテトラフルオロエチレン(商標名:ポリフロンPTFE M−390、重量平均分子量15、000、000、ダイキン工業(株)製;PTFE(b)と表すことがある)を変更した以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルの作製を行ったが、被覆材の流動性が極めて悪く、POFケーブルを得ることは不可能であった。
(結果)
二次被覆層の形成に使用する第2のポリアミド系樹脂組成物として、ポリアミド系樹脂100質量部に対してポリテトラフルオロエチレンを2〜10質量部、またはフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(商標名:VP−50、ダイキン工業(株)製;VdF/TFEと表すことがある)5質量部を含む樹脂組成物を用いて一次被覆層と二次被覆層を同時に一括被覆した実施例1〜5のPOFケーブルは、難燃性に優れ、二次被覆層と一次被覆層との間の引抜強度(19〜27N)が適切な範囲に制御され、曲げ弾性率E(11〜16N/mm)も好ましい範囲に制御されていた。
一方、比較例1の、二次被覆層の形成に、含フッ素ポリオレフィン系重合体を含まないポリアミド系樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして得られたPOFケーブルは、二次被覆層と一次被覆層との間の引抜強度が高く、二次被覆層を剥離することは不可能であった。
また、比較例2の、二次被覆層の形成に、ポリテトラフルオロエチレンを25質量部含むポリアミド系樹脂組成物を用いて、一次被覆層と二次被覆層を同時に一括被覆して得られたPOFケーブルは、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(6N)が低かった。
さらに、比較例3の、一次被覆層と二次被覆層とを二回に分けて被覆した以外は、実施例1と同様に被覆したPOFケーブルは、実施例1のPOFケーブルと同レべルの性能であったが、ケーブル被覆工程に2倍の時間を要した。
本発明のPOFケーブルおよびこのPOFケーブルの少なくとも一端に、プラグを接続したプラグ付きPOFケーブルは、光信号伝送の配線、高速光通信のためのコンピュータ接続配線、交換機回りの配線、工場自動機械制御の配線、自動車などの移動体用データ伝送用配線、光センサー用配線などで他の機器などと接続する場合の使用に適し、特に自動車内配線への使用に最適である。
本発明における引抜強度の測定方法を説明する断面図である。
符号の説明
4 被覆部分
5 剥離部分
7 チャック
8 チャック
10 POFケーブル
12 冶具
13 保持室
14 突起
15 貫通孔
20 測定装置

Claims (7)

  1. コアと該コアの外周に形成されたクラッドからなるプラスチック光ファイバ素線の外周に一次被覆層を、さらにその外周に二次被覆層を、押し出し被覆法により同時に被覆したプラスチック光ファイバケーブルであって、
    前記一次被覆層が、ポリアミド系樹脂を主成分とする第1のポリアミド系樹脂組成物から形成され、
    前記二次被覆層が、ポリアミド系樹脂100質量部に対して、含フッ素ポリオレフィン系重合体を0.5〜20質量部含有する第2のポリアミド系樹脂組成物から形成され、
    該一次被覆層と該二次被覆層との間の引抜強度が10〜30Nであることを特徴とするプラスチック光ファイバケーブル。
  2. 前記含フッ素ポリオレフィン系重合体が、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光ファイバケーブル。
  3. 前記ポリテトラフルオロエチレンが、4,000,000以下の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項2記載のプラスチック光ファイバケーブル。
  4. 前記第1のポリアミド系樹脂組成物の主成分であるポリアミド系樹脂が、ナイロン11単独重合体またはナイロン12単独重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック光ファイバケーブル。
  5. 前記第2のポリアミド系樹脂組成物に含まれるポリアミド系樹脂が、ポリアミド系エラストマー、ポリアミド共重合体、ナイロン11およびナイロン12からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチック光ファイバケーブル。
  6. 前記第2のポリアミド系樹脂組成物が、該第2のポリアミド系樹脂組成物に含まれるポリアミド系樹脂100質量部に対してトリアジン系化合物5〜30質量部を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチック光ファイバケーブル。
  7. 前記トリアジン系化合物が、シアヌル酸メラミンまたはシリカ変性シアヌル酸メラミンであることを特徴とする請求項6記載のプラスチック光ファイバケーブル。
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