JP2005081913A - サスペンションシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両のローリングが検出された場合には、電磁開閉弁110,112が閉状態とされ(S41)、接続通路72,74とアキュムレータ106,108との間の作動液の授受が阻止され、ローリングが抑制される。実ロール角の絶対値が、路面の状態、道路の湾曲形状等の道路の状態に基づいて取得された推定ロール角の絶対値より大きいか否かが検出される(S42)。実ロール角の絶対値が推定ロール角の絶対値より大きい場合には、S43において、電磁開閉弁110,112の開固着であるとされる。
【選択図】図5
Description
(1)(a)車両の車輪側部材と車体側部材との間に設けられた複数の流体圧シリンダと、(b)それら複数の流体圧シリンダの互いに対応する室同士を接続する複数の接続通路とを含むサスペンションと、
前記車両が走行する道路の状態に関する情報である道路状態情報を取得する道路状態情報取得装置と、
少なくとも、その道路状態情報取得装置によって取得された道路状態情報が表す道路状態に基づいて前記車両の姿勢を推定する姿勢推定装置と、
前記車両の実際の姿勢である実姿勢を取得する実姿勢取得装置と、
その実姿勢取得装置によって取得された前記実姿勢と、前記姿勢推定装置によって推定された姿勢である推定姿勢とに基づいて、前記サスペンションの異常を検出する異常検出装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム(請求項1)。
本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、車両の実際の姿勢である実姿勢と推定された姿勢である推定姿勢とに基づいてサスペンションの異常が検出される。
流体圧シリンダは、例えば、車両に設けられた複数の車輪に対応して、それぞれ、車輪側部材と車体側部材との間に設けても、前輪側、後輪側にそれぞれ1つずつ設けても、左側、右側にそれぞれ1つずつ設けてもよい。流体圧シリンダは、車輪側部材と車体側部材との間に設けられるが、車輪側部材としては、例えば、ロアアーム等のサスペンションアームやスタビライザバー等が該当する。
複数の流体圧シリンダは、それぞれ、ピストンで仕切られた2つの流体圧室を有するが、接続通路は、複数の流体圧シリンダの2つの流体圧室のうち互いに対応する流体圧室同士を接続する。対応する流体圧室同士は、機能が互いに同じである流体圧室同士である。例えば、車両の姿勢の変化により、圧力が高くなる流体圧室同士、圧力が低くなる流体圧室同士である。接続通路は、例えば、車両がローリングした場合に対応する流体圧室同士を接続するものとしたり、ピッチングした場合に対応する流体圧室同士を接続するものとしたりすることができる。流体圧シリンダは、ピストンロッドが車体側部材に取り付けられても、車輪側部材に取り付けられてもよい。この取付形態は前輪側と後輪側とで逆にすることもでき、そのため『互いに対応する流体圧室』がロッド側室同士あるいはヘッド側室同士になるとは限らない。
本項に記載の車両用サスペンションシステムは、流体として液体を利用したり、気体を利用したりすることができる。
道路状態情報取得装置は、ナビゲーションシステム等に設けられたものを利用したり、専用に設けられたものとしたりすることができる。道路状態情報取得装置は、道路状態情報が記憶された記憶手段を含むものであっても、通信により道路状態情報を取得する受信装置を含むものであっても、これらの両方を含むものであってもよい。また、車両の走行状態を検出する走行状態検出装置を含み、走行状態に基づいて道路状態が取得されるようにすることができる。車両は道路の形状に応じて走行するからである。この場合には、走行状態検出装置によって検出された走行状態としての旋回状態に基づいて、道路の湾曲形状が取得され、その取得された道路の湾曲形状を表す情報が記憶手段に記憶される。
道路状態は、車両の姿勢を推定するために基礎となる道路状態であり、例えば、路面の状態(例えば、摩擦係数、凹凸の状態、傾斜の状態等)、道路の平面形状(例えば、湾曲形状等)等が該当する。
姿勢推定装置は、少なくとも、これら道路の状態に基づいて車両の姿勢を推定する。姿勢推定装置は、道路状態のみに基づいて姿勢を推定するものとしたり、道路状態と、車両の状態(例えば、車両の旋回特性、積載状態、車両の走行状態等の少なくとも1つ)とに基づいて姿勢を推定するものとしたりすることができる。
姿勢推定装置、実姿勢取得装置は、車両の幅方向の軸線回りの傾きであるピッチ姿勢(例えば、ピッチ角で表すことができる)を取得するものとしたり、前後方向の軸線回りの傾きであるロール姿勢(例えば、ロール角で表すことができる)を取得するものとしたりすること等ができる。
例えば、実姿勢と推定姿勢とがほぼ同じである場合には、サスペンションは正常であり、実姿勢と推定姿勢とが大きく異なる場合には、サスペンションが異常であるとすることができる。
(2)前記姿勢推定装置が、前記道路状態と前記車両の状態とに基づいて前記車両の姿勢としてのロール姿勢を推定するロール姿勢推定部を含む(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ロール姿勢は、道路状態と車両の状態とに基づいて推定される。
道路の形状が湾曲形状を成し、その曲率半径が小さい場合は大きい場合より推定ロール角は大きくなる。
路面が幅方向に傾斜している場合には、車両が直進していても車両は傾く。推定ロール角は、路面の傾斜角度に応じた大きさになる。また、車両が同じ状態で旋回している場合に、路面の傾斜の向きと旋回に起因して生じる傾斜の向きとが同じである場合には異なる場合より推定ロール角が大きくなる。
路面の摩擦係数が小さい場合は大きい場合より推定ロール角の上限値が小さくされる。摩擦係数が小さい場合には、発生可能な横力が小さくなるため、高速で曲率が大きい旋回が行われないのが普通である。また、運転者も大きくローリングするような操舵を行わないのが普通である。
なお、路面の凹凸の程度(凹凸の高低差、凹凸の頻度等で表すことができる)が高い場合は低い場合より、推定ロール角の変化の幅が大きく、かつ、頻繁に変化するため、路面の凹凸の程度が設定レベル以上である場合には、異常検出が行われないようにすることが望ましい。
また、車両は道路に沿って走行するため、車両の走行状態のうちの旋回状態は道路の湾曲形状に対応する(例えば、道路の湾曲の程度は、操舵角,前輪舵角,ヨーレイトおよび車速に対応する)。したがって、車両の旋回状態は道路の状態の一態様であり、車両の旋回状態に基づいて推定ロール角が取得されると考えることができる。また、車両の旋回状態に基づいて道路の状態が推定され、その推定された道路の状態に基づいて推定ロール角が取得されると考えることもできる。
車両の状態には、上述の車両の走行状態、積載状態、ロール特性等が該当し、これらのうちの少なくとも1つが、道路の状態とともに異常検出に利用される。
例えば、車両が旋回半径が同じカーブを走行している場合に、走行速度が大きい場合は小さい場合より遠心力が大きくなるため、推定ロール角は大きくなる。
車両の積載状態は、荷重の分布状態(例えば、荷重が車両の左右のいずれかに偏って加わっているかどうか等)等で表すことができる。積載重量が大きく、遠心力に影響を及ぼす場合には、総積載重量も該当する。積載状態は、例えば、車室内の各座席における重量体(例えば、乗員)の有無、その重量体の重量を検出する乗員センサ、ラッゲージルームに荷物が搭載されたか否か、搭載された荷物の重量を検出する荷物センサ等による検出値に基づいて取得することができる。
車両が、路面がほぼ水平でほぼ直線状態に延びた道路を走行している場合に、荷重が左右に偏って加わっており、その偏りの程度が大きい場合には、その偏りに起因して車両も傾斜する。推定ロール角は、その荷重の偏りの程度に応じた大きさとなる。また、車両が湾曲した形状の道路を走行(旋回)している場合には、荷重の偏りに起因して傾斜する向きと旋回に起因して傾斜する向きとが同じである場合は異なる場合より推定ロール角が大きくなる。また、車輪に加わる荷重が大きい場合は小さい場合より発生可能な横力が大きくなるため、推定ロール角の上限値を大きくすることができる。
車両のロール特性は、例えば、サスペンションスプリングの弾性係数、スタビライザバーの弾性係数等で表すことができ、これらに基づけば、車両の旋回状態とロール姿勢との関係がわかる。例えば、旋回状態(道路の湾曲状態)が同じであってもロール特性(旋回走行性能と称することもできる)が異なると推定ロール角が異なる。
(3)前記姿勢推定装置が、前記車両の走行速度を検出する走行速度検出装置と、積載状態を検出する積載状態検出装置と、車両のロール特性を取得するロール特性取得装置との少なくとも1つを含む(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ロール特性取得装置は、ロール特性が予め記憶された記憶媒体を備え、その記憶媒体から読み込まれるようにすることができる。また、通信等により車両の種類に応じた旋回特性を表す情報が取得されるようにすることができる。
(4)前記サスペンションが、さらに、(a)前記複数の接続通路にそれぞれ設けられた複数のアキュムレータと、(b)それら複数のアキュムレータと接続通路との間にそれぞれ設けられ、少なくとも、それら間を連通させる連通状態とそれらを遮断する遮断状態とに切り換え可能な複数の電磁弁とを含むとともに、当該車両用サスペンションシステムが、前記複数の電磁弁の少なくとも1つを制御することによって、前記車両の姿勢の変化を抑制する姿勢変化抑制装置を含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、流体圧シリンダが、右側車輪と左側車輪とにそれぞれ対応して、ロアアームと車体側部材との間に設けられ、2つの流体圧シリンダにおいて車両にローリングが生じた場合に対応する流体圧室同士が接続通路によって接続される場合を考える。車両にローリングが生じた場合には、接続通路によって流体圧が高くなる流体圧室同士、流体圧が低くなる流体圧室同士が接続されるが、電磁弁が連通状態にあり、接続通路とアキュムレータとが連通状態にある場合には、接続通路とアキュムレータとの間の作動液の授受が許容され、ローリングが許容される。それに対して、電磁弁が遮断状態にされれば、接続通路とアキュムレータとの間の作動液の授受が阻止されるため、接続通路における作動液の流れが阻止され、ローリングが抑制される。
一方ピッチングが生じた場合には、接続通路によって接続される2つの流体圧室のうちの一方の圧力が高くなり、他方の圧力が低くなるため、接続通路を経て作動液の流れが許容され、流体圧シリンダにおけるピストンの移動が許容される。それによって、ピッチングが許容される。
このように、本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、ピッチングを許容しつつローリングが抑制されることになる。
また、上述の2つの左右の流体圧シリンダにおいて、ピッチングが生じた場合に対応する流体圧室同士が接続される場合には、電磁弁が遮断状態とされることによりピッチングが抑制される。この場合には、ローリングは許容される。
電磁弁は、連通状態と遮断状態とに切り換え可能な電磁開閉弁としても、連通状態において、その開口面積を調整可能な可変絞り機能を有するリニア流量制御弁としてもよい。
(5)前記接続通路が、前記車両にローリングが生じた場合に互いに対応する流体圧室同士を接続するものであり、前記姿勢変化抑制装置が、前記車両のローリング関連量に基づいて前記電磁弁を制御することによってロールを抑制するロール抑制部を含む(4)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ローリング関連量には、車両の実際のロール角、ローリング速度(ロールレイト)、ローリング加速度等、これらに対応する量(例えば、操舵角、ヨーレイトおよび車速等、道路の湾曲形状としてのカーブの曲率、路面の幅方向の傾斜角度等ロール姿勢を推定し得る量、値)等が該当する。
(6)前記ロール抑制部が、前記車両のローリング関連量がそれに対応する設定量を超えた場合に前記電磁弁を遮断状態とする遮断制御部を含む(5)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(7)前記異常検出装置が、前記複数の電磁弁の少なくとも1つの異常を検出する電磁弁異常検出部を含む(4)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム(請求項2)。
電磁弁が指令通りに遮断状態にあれば、車両の姿勢変化は抑制されるはずである。それにもかかわらず、姿勢変化が抑制されないのは、電磁弁が連通状態のままであると考えることができる。
例えば、実姿勢が推定姿勢より大きい場合、実姿勢が推定姿勢で決まる異常検出用姿勢より大きい場合等に、電磁弁が異常であるとすることができる。異常検出用姿勢は、電磁弁が異常であるためサスペンションの制御が行われなかった場合の姿勢である非制御時姿勢としたり、その非制御時姿勢と推定姿勢との間の姿勢としたりすることができる。
(8)前記姿勢変化抑制装置が、前記複数の電磁弁の少なくとも1つを、前記車両の予め定められた姿勢の変化が検出された場合に遮断状態とするものであり、前記異常検出装置が、前記少なくとも1つの電磁弁が前記遮断状態にある場合に前記車両の前記予め定められた姿勢の変化が抑制されない場合に、前記遮断状態にある電磁弁のうちの少なくとも1つが開固着異常であるとする開固着異常検出部を含む(4)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム(請求項3)。
(9)前記異常検出装置が、前記姿勢変化抑制装置によって、前記電磁弁を遮断状態にする指令が出力された状態において異常を検出する遮断時異常検出部を含む(7)項または(8)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(10)前記異常検出装置が、前記推定姿勢と前記実姿勢との少なくとも一方が設定姿勢以上である状態において異常が検出する傾き姿勢時異常検出部を含む(7)項ないし(9)項に記載の車両用サスペンションシステム。
電磁弁の開固着異常は、推定姿勢と実姿勢との少なくとも一方が大きい場合は小さい場合より、精度よく検出することができる。姿勢変化抑制装置が、姿勢が設定姿勢以上である場合に電磁弁を遮断状態にする指令を発するものである場合には、電磁弁が遮断状態にある場合は異常検出に適した場合であると考えることができる。
(11)前記異常検出装置が、前記姿勢推定装置によって、前記車両の姿勢が、前後方向の軸線に対する傾きが第1設定量より小さい姿勢であると推定され、かつ、前記実姿勢検出装置によって、前記車両の姿勢が、前記前後方向の軸線に対する車両の傾きが第2設定量以上である姿勢であると検出された場合に、前記サスペンションにおいて液漏れが生じているとする流体漏れ検出部を含む(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、推定ロール角が非常に小さいにもかかわらず、実ロール角がある程度大きい場合には、接続通路、流体圧シリンダを含む流体圧回路(サスペンション)において流体漏れが生じたと考えられる。接続通路や液圧シリンダに液漏れが生じると、接続通路とそれによって接続された流体圧室とを含む複数の系統間の流体の量の関係(等しい場合もある)が変わるため、車両がほぼ水平な路面の道路を直進走行している場合であっても、車両の姿勢が傾くことがある。
この異常検出は、推定姿勢が設定姿勢より水平姿勢に近い場合、すなわち、車両が、路面がほぼ水平(少なくとも、幅方向に傾斜がなく、かつ、凹凸の大きさおよび頻度が小さい状態)でほぼ直線状に延びた道路を走行している場合(ほぼ水平な路面に停止していてもよい)に行われる。
第1設定量は、車両が前後方向の軸線に対して殆ど傾斜していないと考えられる大きさであり、第2設定量は、車両が前後方向の軸線に対して確実に傾斜していると考えられる大きさである。
また、電磁弁は、遮断状態にあっても連通状態にあってもいずれでもよい。
(12)前記実姿勢取得装置が、前記実姿勢として車両の幅方向の傾きである実ロール姿勢を取得する実ロール姿勢取得部を含む(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム(請求項4)。
実ロール姿勢は、例えば、左右の車高差を車両の幅(左右の車高センサが設けられている位置の幅方向の距離)で割った値(実ロール角θとした場合のtanθの値)に基づいて取得することができる。この値が大きい場合は小さい場合より実ロール姿勢が大きいとすることができる。また、実ロール姿勢は、ロールレイトセンサを設け、そのロールレイトセンサによる検出値に基づいて取得することもできる。
(14)前記車輪側部材が前輪側、後輪側にそれぞれ設けられたスタビライザバーであり、前記流体圧シリンダが前輪側、後輪側のそれぞれにおいて、スタビライザバーと車体側部材との間に設けられたものであり、前記接続通路が、前輪側、後輪側の流体圧シリンダ各々の前記2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士をそれぞれ接続するものである(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、流体圧シリンダのピストンに設けられたピストンロッドと流体圧シリンダの本体とのいずれか一方がスタビライザバーに係合させられ、いずれか他方が車体側部材に取り付けられるようにすることができる。
前輪側において、ロアアーム20は車輪を揺動可能に保持するとともに、連結部22において図示しない車体側部材に揺動可能に保持される。スタビライザバー10は、左右アーム部16,18(左アーム部16については図示しない)の端部に設けられ、ゴムブッシュまたはボールジョイントを含む連結部19においてロアアーム20の中間部に相対回動可能に支持される。また、中間ロッド部14の中央より右寄りの部分において液圧シリンダ30を介して車体側部材に支持され、左寄りの部分において連結ロッド32を介して車体側部材に支持される。
連結ロッド32は、一端部の連結部において中間ロッド部14に軸線回りに回転可能かつ軸線に対して傾き可能な状態で取り付けられ、他端部の連結部において車体側部材に相対回動可能かつ傾き可能に取り付けられる。
また、中間ロッド部14の中央より右寄りの部分において液圧シリンダ60を介して車体側部材に支持され、左寄りの部分において連結ロッド62を介して車体側部材に支持される。液圧シリンダ60は、液圧シリンダ30と同様に、ハウジング66、ハウジング66にシール部材67を介して液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン68、ピストンロッド70等を含むものであり、ピストンロッド70の連結部71aにおいてスタビライザバー12に連携させられ、ハウジング66の連結部71bにおいて車体側部材に取り付けられる。液圧シリンダ60は、車両の上下方向に延びた姿勢で設けられる。
液通路72によって、液圧シリンダ30、60の、それぞれのピストン38、68のピストンロッド40、70とは反対側の液圧室80、82が接続され、液通路74によって、液圧シリンダ30,60の、それぞれのピストン38,68のピストンロッド側の液圧室84,86が接続される。液圧室80および82、液圧室84および86は、それぞれ、互いに対応する室であり、同じ機能を有する室、すなわち、ローリング時に液圧が高くなる室または低くなる室である。以下、液圧室80,82が上側に位置し、液圧室84,86が下側に位置するために、液圧室80,82を上側液圧室と称し、液圧室84,86を下側液圧室と称する。本実施形態においては、車両がローリングした場合に液圧が高くなる液圧室同士、液圧が低くなる液圧室同士が、対応する液圧室同士に対応する。
電磁開閉弁110,112の開状態において、アキュムレータ106,108と液通路72,74との間の作動液の授受が許容され、液圧シリンダ30,60において、ピストン38.68の移動が許容される。電磁開閉弁110,112の閉状態において、アキュムレータ106,108と液通路72,74との間の作動液の授受が阻止される。この状態において、液通路72,74によって接続された液圧室80,82の間、液圧室84,86の間に、液圧差が生じた場合には、液通路72,74を経て作動液が流れ、液圧シリンダ30,60においてピストン38,68の移動が許容される。それに対して、液圧室80,82の間、液圧室84,86の間に、実質的な液圧差が生じない場合には、液通路72,74に作動液が流れることがなく、しかも、液通路72,74とアキュムレータ106,108との間の作動液の流れも阻止されるため、液圧シリンダ30,60においてピストン38,68の移動が阻止される。
ナビゲーションシステム134において情報処理部132には、現在位置取得装置140,車両状態取得装置142,道路状態取得装置144,ディスプレイ148,音声出力装置150等が接続される。
現在位置取得装置140は、人工衛星、ビーコン等からの情報を受信する受信装置を含み、これらの情報に基づいて自車両の現在位置を取得する。
車両状態取得装置142は、ヨーレイトセンサ160,走行速度センサ162,地磁気センサ164,各車輪に対応して車輪側部材と車体側部材との間に設けられた車高センサ166,積載状態検出装置168等を含み、これらに基づいて走行速度、走行方向等の走行状態や車両の姿勢、すなわち、車両の状態を取得する。積載状態検出装置168は、例えば、車室内の各シートにそれぞれ荷重が加わったか否か(シートにおける重量体の有無)を検出するものとしたり、ラッゲージルームに荷重が加わったか否かを検出するものとしたり、その荷重の重量も検出するものとしたりすることができる。
道路規制情報記憶部176には道路の工事や事故等の情報(通行止め、車線規制、迂回路に関連する情報)が記憶されるが、これらは、道路情報センタ等からの情報が受信されて記憶される。
ディスプレイ148には、情報処理部132において処理された道路情報が表示されたり、後述するように、異常情報が表示されたりする。異常情報は音声出力装置150を介して出力されるようにすることもできる。
実ロール角取得部190は、車両の実際の幅方向の傾きの程度としての実ロール角θを取得するものであり、左右輪の車高センサ166による検出値に基づいて演算により求められる。実ロール角θが、車高の左右差ΔHを幅方向の距離L(左右の車高センサの間の長さ)で割った値のアークタンジェントを求めることによって、求められる。
θ=tan-1(ΔH/L)
実ロール角θを求めることは不可欠ではなく、tanθの値、すなわち、ΔH/Lの値を求めるだけでもよい。左右車高差は、左右前輪の車高センサによる検出値と左右後輪の車高センサによる検出値との少なくとも一方に基づいて求められる。
ロール抑制部194は、実ロール角θに基づいて電磁開閉弁110,112を制御する。実ロール角θが設定角度以上の場合、実ロール角θの変化速度dθ/dtが設定速度以上の場合には、電磁開閉弁110,112が閉状態にされて、車両のローリングが抑制される。
走行軌跡で表される道路の形状が湾曲形状を成し、その曲率半径が小さい場合は大きい場合より推定ロール角は大きくなる。
路面が幅方向に傾斜している場合には、車両が直進していても車両は傾く。推定ロール角は、路面の傾斜角度に応じた大きさになる。また、車両が同じ状態で旋回している場合に、路面の傾斜の向きと旋回に起因して生じる傾斜の向きとが同じである場合には異なる場合より推定ロール角が大きくなる。
路面の摩擦係数が小さい場合は大きい場合より推定ロール角の上限値が小さくされる。摩擦係数が小さい場合には、発生可能な横力が小さくなるため、高速で曲率が大きい旋回が行われないのが普通である。また、運転者も大きくローリングするような操舵を行わないのが普通である。
車両が旋回半径が同じカーブを走行している場合に、走行速度が大きい場合は小さい場合より遠心力が大きくなるため、推定ロール角は大きくなる。
また、車両が、路面がほぼ水平でほぼ直線状態に延びた道路を走行している場合に、荷重が左右に偏って加わっており、その偏りの程度が大きい場合には、その偏りに起因して車両も傾斜する。推定ロール角は、その荷重の偏りの程度に応じた大きさとなる。また、車両が湾曲した形状の道路を走行(旋回)している場合には、荷重の偏りに起因して傾斜する向きと旋回に起因して傾斜する向きとが同じである場合は異なる場合より推定ロール角が大きくなる。また、車輪に加わる荷重が大きい場合は小さい場合より発生可能な横力が大きくなるため、推定ロール角の上限値を大きくすることができる。
サスペンションスプリングの弾性係数、スタビライザバーの弾性係数等に基づき、車両の旋回状態に対してロールし易い場合はそうでない場合より、推定ロール角が大きくなる。なお、スプリングの弾性係数の大小等は車輪の接地性に影響を及ぼす。
これらの関係に基づいて、図示しないロール角推定テーブルが作成され、記憶部198に予め記憶されている。車両の走行軌跡、走行速度、積載状態、ロール特性等と、テーブルとに基づいて推定ロール角θsが求められるのである。
なお、路面の摩擦係数が小さい場合、路面の凹凸の程度が設定レベルより高い場合(例えば、凹凸の幅が大きい場合や頻度が大きい場合等)には、開固着か否かの検出が行われないようにすることができる。これらの場合には、ロール角の推定精度が低くなるからである。また、凹凸の程度が設定レベルより高い場合には、推定ロール角が頻繁に変わったり、推定ロール角の変化量が大きくなったりするからである。
例えば、推定ロール角が非常に小さい場合、または、ほぼ水平な路面を直進走行していか、または、停止していることが検出された場合に、実ロール角が推定ロール角より大きい場合には液漏れが生じたとされる。液漏れの検出は、電磁開閉弁110,112が開状態にあっても、閉状態にあっても、可能であるが、ロール抑制制御が行われていない状態で行われることが望ましい。
ステップ1(以下、単にS1と略称する。他のステップについても同様とする)において、ナビゲーションシステム134の情報処理部132から、走行軌跡を表す情報、車高センサによる検出値、道路情報、車両状態情報等が供給される。
S2において、推定ロール角θsが取得され、S3において、実ロール角θが取得される。これら推定ロール角θs、実ロール角θは、車両の右側が左側に対して高くなる向きの傾斜が生じた場合に正の値で表し、逆向きの傾斜が生じた場合の負の値で表すようにする。S4において、少なくとも、実ロール角θと推定ロール角θsとに基づいて電磁開閉弁110,112の開固着異常が検出され、S5において、少なくとも、実ロール角θと推定ロール角θsとに基づいて液圧回路において液漏れが生じているか否かが検出される。
S6において、実ロール角θに基づいて電磁開閉弁110,112が制御される。そして、電磁開閉弁110,112の開固着異常が検出された場合、液漏れが検出された場合等には、S7において、そのことがディスプレイに表示されるとともに音声で出力される。また、急旋回を回避すること、修理を促すこと等も報知される。
また、上記実施形態においては、推定ロール角が、道路の状態と車両の状態との両方に基づいて取得されるようにされていたが、車両の状態が考慮されることは不可欠ではなく、道路の状態のみに基づいて取得されるようにすることができる。さらに、走行速度、積載状態、ロール特性のすべてではなく、これらのうちの1つまたは2つと道路の状態とに基づいて推定ロール角が取得されるようにすることもできる。
また、道路状態の取得、異常検出、電磁開閉弁110,112の制御は1つのコンピュータによって実行されるようにすることができる。
さらに、スタビライザバー10,12は前輪側と後輪側とで同じ状態で取り付けられるようにすることができる。さらに、液圧シリンダは、上下方向でなく、水平方向に延びた姿勢で設けられるようにすることもできる。いずれにしても、スタビライザバー10,12と、それが保持される車体側部材との相対位置関係によって決まるのであり、それぞれ対応する液圧室同士が液通路によって接続されるようにする。
また、上記実施形態においては、ロール抑制装置が液圧により作動させられるものであったが、高圧のエア(高圧縮性の気体)により作動させられるものとすることもできる。
さらに、電磁開閉弁の代わりに流路面積が可変なバルブをすることもできる。この場合には。ロールの程度に応じて流路面積を制御することもできる。
図7において、右前輪、左前輪、右後輪、左後輪の各々において、図示しない車輪側部材と車体側部材との間の液圧シリンダ210〜216が設けられる。液圧シリンダ210〜216は、車両の上下方向に延びたものであり、ハウジング230と、そのハウジング230の内部を2つの液圧室232、234に仕切るピストン236とを含む。本実施形態においては、ハウジング230が車体側部材に連結され、ピストン236のピストンロッドが車輪側部材に連結される。また、液圧シリンダ210,212,214,216のそれぞれにおいて、ピストン236の上方に位置する液圧室が液圧室232であり、ピストン236の下方に位置する液圧室が液圧室234である。
液通路260,262にはそれぞれアキュムレータ290,292が設けられ、液通路264,266にはそれぞれアキュムレータ291,293が設けられる。アキュムレータ290〜293と液通路250,252との間には、それぞれ、電磁開閉弁296〜299が設けられる。また、アキュムレータ290〜293と液通路250,252との間には絞り294が設けられ、振動減衰効果が得られる。絞り296は、液圧シリンダ210〜216の液圧室234と液通路260,262,264,266との間にも設けられる。なお、絞り294,296は、固定絞りであって、可変絞りであってもよい。また、絞り294,296を設けることは不可欠ではない。
なお、前後の液圧シリンダの対応する液圧室同士を接続すること、すなわち、液通路260および液通路264、液通路262および液通路266を接続することは不可欠ではない。この場合には、液通路270,272が不要となる。
Claims (4)
- (a)車両の車輪側部材と車体側部材との間に設けられた複数の流体圧シリンダと、(b)それら複数の流体圧シリンダの互いに対応する室同士を接続する複数の接続通路とを含むサスペンションと、
前記車両が走行する道路の状態に関する情報である道路状態情報を取得する道路状態情報取得装置と、
少なくとも、その道路状態情報取得装置によって取得された道路状態情報が表す道路状態に基づいて前記車両の姿勢を推定する姿勢推定装置と、
前記車両の実際の姿勢である実姿勢を取得する実姿勢取得装置と、
その実姿勢取得装置によって取得された前記実姿勢と、前記姿勢推定装置によって推定された姿勢である推定姿勢とに基づいて、前記サスペンションの異常を検出する異常検出装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。 - 前記サスペンションが、さらに、(a)前記複数の接続通路にそれぞれ設けられた複数のアキュムレータと、(b)それら複数のアキュムレータと接続通路との間にそれぞれ設けられ、少なくとも、それら間を連通させる連通状態とそれらを遮断する遮断状態とに切り換え可能な複数の電磁弁とを含むとともに、当該車両用サスペンションシステムが、前記複数の電磁弁の少なくとも1つを制御することによって、前記車両の姿勢の変化を抑制する姿勢変化抑制装置を含み、かつ、前記異常検出装置が、前記複数の電磁弁の少なくとも1つの異常を検出する電磁弁異常検出部を含む請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記姿勢変化抑制装置が、前記複数の電磁弁の少なくとも1つを、前記車両の予め定められた姿勢の変化が検出された場合に遮断状態とするものであり、前記異常検出装置が、前記少なくとも1つの電磁弁が前記遮断状態にある場合に前記車両の前記予め定められた姿勢の変化が抑制されない場合に、前記遮断状態にある電磁弁のうちの少なくとも1つが開固着異常であるとする開固着異常検出部を含む請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記実姿勢取得装置が、前記実姿勢として車両の幅方向の傾きである実ロール姿勢を取得する実ロール姿勢取得部を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
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