JP2005081332A - 植物由来廃棄物の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 前記植物由来廃棄物を超臨界水および亜臨界水の少なくとも一方により分解処理する。この方法によれば、前記植物由来廃棄物、例えば、図18に示すような有機酸のほか、糖、タール状の油状物質等の有用物に分解できる。前記タール状の油状物質は、重油代替物質となりうる。植物由来廃棄物としては、例えば、廃木材等を使用できる。また、本発明の処理方法には、分解能力、安全性、設備コスト、ランニングコスト等の点から、亜臨界水を用いることが好ましい。
【選択図】 図18
Description
木質科学研究所 木悠会偏:「木材何でも小辞典」(2001) 講談社、ブルーバックス
試料として用いた木質廃棄物は、木材の切断時に発生する大鋸屑状の木材(木名:ヒノキとスプース)の混合物、木材の粉末状粉砕物(木名:ベイツガ)およびリグニン(ナカライテスク社製)であった。前記木材の化学組成を下記表1に示す。ここで、ヘミセルロースとは、ペントサン、マンナン、ガラクタンの合計値をいう。
樹種 セルロース ヘミセルロース リグニン その他
ヒノキ 54.5 16.5 29.0 0
スプース 42.0 26.1 28.0 3.9
ベイツカ 51.6 15.5 30.4 2.5
前記木材は、それぞれ、323Kで3日間乾燥し、その重量変化により含水率を求めたところ、約8%であった。したがって、前記条件で乾燥した前記木材試料は、含水率0%の試料とみなして使用した。
分解処理に使用したバッチ式反応器の概略を図1に示す。この反応器は、パイプ1の両端にキャップ2がそれぞれ取り付けられた構造である。図1において、d1は、前記パイプ1の外径を示し、d2は、前記パイプ1の内径を示し、d3は、前記キャップ2の内接円の直径を示す。また、長さL1が前記キャップ2間の最短距離を表し、長さL2が前記反応器の全長を表す。
亜臨界領域での前記反応器内の圧力は、水の飽和蒸気圧に等しいと考え、下記表2の飽和蒸気圧表から各温度における飽和蒸気圧を参照した。ここで、亜臨界状態において、前記反応器内は、図2のようになっていると仮定する。すなわち、前記反応器容積V[m3]と、前記反応器内での水相部分の占める体積V1[m3]、気相部分の占める体積V2[m3]および試料の占める体積VZ[m3]との関係は、V=V1+V2+VZとなると仮定する。そうすると、水の仕込み量mW[kg]は、下記式(1)を用いて推算できる。
mW+m・w=V1/ν1+V2/ν2 ・・(1)
上記式(1)において、ν1は、水相での水の比容積[m3/kg]であり、ν2は、気相での水の比容積[m3/kg]であり、mは、試料の仕込み量[kg-wet]であり、wは、含水率である。
温度 温度 飽和蒸気圧 飽和蒸気圧 比容積(水) 比容積(水蒸気)
[℃] [K] [Kg/cm 2 ] [MPa] [m 3 /kg] [m 3 /kg]
170 443.15 8.076 0.7920243 0.00111445 0.24255300
180 453.15 10.224 1.0026319 0.00112752 0.19380000
190 463.15 12.799 1.2551531 0.00114150 0.15631600
200 473.15 15.855 1.5548444 0.00115649 0.12716000
210 483.15 19.454 1.9077857 0.00117260 0.10423900
220 493.15 23.656 2.3198611 0.00118995 0.08603780
230 503.15 28.528 2.7976411 0.00120872 0.07144980
240 513.15 34.138 3.3477942 0.00122908 0.05965440
250 523.15 40.560 3.9775772 0.00125129 0.05003740
260 533.15 47.869 4.6943453 0.00127563 0.04213380
270 543.15 56.144 5.5058456 0.00130250 0.03558800
280 553.15 65.468 6.4202176 0.00133239 0.03012600
290 563.15 75.929 7.4460913 0.00136594 0.02553510
300 573.15 87.621 8.5926848 0.00140406 0.02164870
310 583.15 100.650 9.8703932 0.00144797 0.01833390
320 593.15 115.120 11.2894155 0.00149950 0.01547980
330 603.15 131.160 12.8624021 0.00156147 0.01298940
340 613.15 148.930 14.6050438 0.00163871 0.01078040
350 623.15 168.610 16.5349926 0.00174112 0.00879910
360 633.15 190.430 18.6748036 0.00189590 0.00693980
370 643.15 214.690 21.0538969 0.00221360 0.00497270
374.2 647.3 225.560 22.1198797 0.00317000 0.00317000
(ソルトバス)
分解処理中、前記反応器を高温の一定温度に保つための恒温槽として、ソルトバス(Thomas Kagaku Co.Ltd.製)を使用した。前記ソルトバス内の熱媒体として、硝酸カリウムと亜硝酸ナトリウムを1:1の割合で混ぜた配合塩(融点413K)を使用した。使用した塩の量は、0.018m3であった。このソルトバスの温度範囲は453Kから773Kであり、温度安定度は±0.5Kである。温度調節は、PID制御方式のデジタル温度指示調節器で行った。
分解処理をする試料および水を反応器に充填する前に、この反応器内を、あらかじめ、Arで置換した。その後、試料および水を充填し、前記反応器を密閉する前に、再びArを約30秒流して脱酸素を行い、この反応器を密閉した。
分解処理の概略を、図3に示す。前述のように試料を充填し、密閉した反応器3を、矢 印Aの下方向に移動させて、所定温度(473〜700K)で安定しているソルトバス 4に投入した。所定時間(0.5分〜1時間)の後、前記反応器1を、矢印Aの上方向 に移動させて、前記ソルトバス4からすみやかに取り出し、さらに、矢印BおよびCの 方向にすみやかに移動させ、大量の冷却水5中に投入して急冷した。なお、この分解処 理においては、前記ソルトバス4の温度を反応温度、前記反応器3が前記ソルトバス4 内にある時間を反応時間とした。
前述のように分解処理後に得られる、固相、水相、油相を含む混合物から、それぞれの成分を、以下のようにして分離回収した。
前記固相、油相、水相の収率を、下記式(2)〜(4)で定義する固相残存率YS[kg/kg-乾燥試料]、油相収率Yoil[kg/kg-乾燥試料]、および水相中の全有機炭素量(TOC)収率YTOCw[kg/kg-乾燥試料]として求めた。
YS =固相乾燥質量/仕込み試料乾燥質量 (2)
Yoil =油相乾燥重量/仕込み試料乾燥質量 (3)
YTOCw=全有機炭素量/仕込み試料乾燥重量 (4)
前記TOCは、TOC分析器(Shimadzu社製、商品名TOC-500)により測定した。TOC分析器は、TC(全炭素量)と無機炭素濃度(IC)との差からTOCを求める装置である。測定は、高純度空気ボンベからのキャリアーガスの流量を2.5×10-6m3で流し、RANGEを×10に設定して行った。TCの標準溶液として、約250ppmのフタル酸水素カリウム、ICの標準溶液として、約250ppmの炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合溶液を使用した。検量範囲内にするため、試料溶液は20〜40倍に希釈して測定した。ここで、前記無機炭素には、例えば、CO,CO2,CS2,CCl4,MI 2CO3,KCN,KNCO,KNCS等が含まれる。
固相の各元素成分の割合は、CHNS/Oアナライザ(PerkinElmerJapan製、商品名:PE2400SeriesII、キャリアガス:ヘリウム)を用いて測定した。ヒノキとスプースの混合物およびベイツガリを試料として、反応温度473K、503K、523K、543K、563K、583K、613K、643Kおよび673K、反応時間1分または5分で反応させた場合の固相残存率および固相中の各元素成分の割合を、図10〜13に示す。なお、得られた固相には、多孔構造を有する低密度炭素材が含まれていた。図10〜13に示すとおり、反応温度が高くなり、固相残存率が減少すると、炭素、酸素および水素の割合が減少し、窒素および硫黄の割合が増加した。一方、リグニンを試料として、同様の条件で反応し各割合を求めた結果を図14〜15に示す。なお、得られた固相は、タール状油状成分を内部に含む固体であった。図14〜15に示すとおり、600K付近で固相の収率が増加するが、その固相の各元素成分の割合と、試料として用いたリグニンの各元素成分とを比較すると、炭素の割合はほぼ変化がなかったが、水素の割合は減少し、窒素および硫黄の割合は増加していた。
水相に含まれる有機酸の収率Yα[kg/kg-乾燥試料]を、下記式(5)のように定義してその値を求めた。
Yα=水相中の酸αの質量/仕込み試料乾燥質量
=Mα・Cα-M・VL/m(1-w) ・・(5)
上記式(5)において、Mαは、酸αの分子量[kg/mol]であり、Cα-Mは、酸αの濃度の測定値[mol/m3]であり、VLは、希釈後の水相の全体積[m3]であり、mは、試料仕込み量[kg-wet]であり、wは、含水率である。
水相に含まれる糖の収率Yβ[kg/kg-乾燥試料]を、下記式(6)のように定義してその値を求めた。
Yβ=水相中の糖βの質量/仕込み試料乾燥質量
=Mβ・Cβ-M・VL/m(1-w) ・・(6)
上記式(6)において、Mβは、糖βの分子量[kg/mol]であり、Cβ-Mは、糖βの濃度の測定値[mol/m3]であり、VLは、希釈後の水相の全体積で[m3]あり、mは、試料仕込み量[kg-wet]であり、wは、含水率である。
2. 反応器のキャップ
3. 反応器
4. ソルトバス
5. 冷却水
d1 パイプの外径
d2 パイプの内径
d3 ボルトの内接円の直径
L1 反応器のキャップ間の最短の長さ
L2 反応器の全長
Claims (12)
- 植物由来廃棄物の分解処理方法であって、前記植物由来廃棄物を超臨界水および亜臨界水の少なくとも一方により分解処理する工程を含む処理方法。
- 前記分解処理が、植物由来廃棄物を、固相、水相、油相および気相を含む混合物に変換する請求項1に記載の処理方法。
- 処理温度が473〜700Kであり、処理圧力が、0.79〜30MPaであり、処理時間が、0.5分〜1時間である請求項1または2に記載の処理方法。
- 前記分解処理が、亜臨界水を用いた分解処理である請求項1から3のいずれかに記載の処理方法。
- 植物由来廃棄物が、木質の廃棄物である請求項1から4のいずれかに記載の処理方法。
- 前記木質の廃棄物が、木材およびリグニンの少なくとも一方である請求項5に記載の処理方法。
- 前記木材が、廃木材、木材切断による樹皮、間伐材、大鋸屑およびこれらの粉末状粉砕物から選択されるの少なくとも一種類である請求項6に記載の処理方法。
- 前記分解処理が、連続式で行われる請求項1から7のいずれかに記載の処理方法。
- 植物由来廃棄物を、請求項1から8のいずれかに記載の処理方法を用いて分解することにより重油代替物質に変換する、重油代替物質の製造方法。
- 植物由来廃棄物を、請求項1から8のいずれかに記載の処理方法を用いて分解することにより利用可能な原料に変換する、植物由来原料の製造方法。
- 植物由来廃棄物を、有機酸、糖、タール状の油状物質、多孔構造を有する低密度炭素材およびタール状油状成分を内部に含む固体からなる群から選択される少なくとも一種類に変換する請求項10に記載の製造方法。
- 有機酸が、グリコール酸、乳酸、酢酸、ギ酸、レブリン酸、プロピオン酸、リンゴ酸およびコハク酸からなる群から選択される少なくとも一つを含み、糖が、セロトリオース、セロビオース、グルコース、フルクトースおよびエリトロースからなる群から選択される少なくとも一つを含む請求項11に記載の製造方法。
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