JP2005080365A - 回転電機用ステータ - Google Patents

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Shuichi Kobayashi
修一 小林
Yasuyuki Sumita
泰之 住田
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Abstract

【課題】回転電機の効率の低下を抑えつつコギングトルクの低減を図ることができる回転電機用ステータを提供する。
【解決手段】電機子鉄心の歯部T1 〜T12を構成する鋼板として、各歯部の先端の磁極部Tpを構成する磁極構成部が隣接配置される他の歯部の先端の磁極部を構成する磁極構成部に連結されていない第1の歯部構成用鋼板と、各歯部の先端の磁極部Tpを構成する磁極構成部が隣接配置される他の歯部の先端の磁極部を構成する磁極構成部に連結されている第2の歯部構成用鋼板とを用い、これら第1及び第2の歯部構成用鋼板を混ぜて積層することにより、電機子鉄心の歯部T1 〜T12を構成する。
【選択図】 図2A

Description

本発明は、回転電機(電動機または発電機)に用いるステータ(固定子)に関するものである。
電動機や発電機のステータとして、環状の継鉄部(バックコア)と該継鉄部の周方向に等角度間隔で並ぶ多数の歯部(ティース)とを有して歯部相互間にスロットを形成した電機子鉄心と、該電機子鉄心に巻装された電機子コイルとを備えたものが多く用いられている。
回転電機としては、ロータがステータの内側に配置される内転形のものと、ロータがステータの外側に配置される外転形のものとがある。内転形の回転電機に用いるステータでは、ステータ鉄心の各歯部が継鉄部から径方向の内側に突出した状態で設けられ、外転形の回転電機に用いるステータでは、ステータ鉄心の各歯部が継鉄部から径方向の外側に突出した状態で設けられる。
このようなステータを用いた回転電機においては、通常、電機子鉄心の一連の歯部の先端の磁極部相互間に、歯部相互間のスロットをロータ側に開口させる開口部が形成されているが、開口部の隙間寸法が大きいと、開口部の部分でステータとロータとの間のエアギャップ内の磁束密度変化が滑らかでなくなるため、大きなコギングトルクが生じ、騒音が増加する。
そこで、特許文献1に示されているように、ステータの電機子鉄心の一連の歯部のそれぞれの先端に設けられた磁極部を連結部を介して相互に連結して、歯部相互間のスロットの開口部を塞ぐことにより、コギングトルクの低減を図ることが行われている。
電機子鉄心の一連の歯部の先端の磁極部を連結部を介して連結すると、コギングトルクを低減することはできるが、電機子コイルから生じる磁束の一部が連結部を通して漏洩磁束として流れ、有効に働かなくなるため、回転電機の効率が低下するのを避けられない。
そこで、特許文献1に示されたステータでは、連結部の肉厚を0.1ないし0.3mm程度まで薄くすることにより、漏洩磁束の磁路となる連結部の磁気抵抗を調整して、連結部を設けることによる効率の低下を抑制するようにしている。
特開2000−295799号公報
コギングトルクの低減を図るために、電機子鉄心の一連の歯部の先端の磁極部を連結した構造にした回転電機では、特許文献1に示されたように、連結部の厚みを薄くしても、効率を改善する上で限界があり、連結部を設けずにスロットを開口させた構造の回転電機に比べて効率が低くなるのを避けられなかった。
また電機子鉄心の歯部の先端の磁極部を連結する連結部の厚みを薄くしたり、該連結部に溝を設けたりした場合には、連結部の機械的強度が低下するため、電機子コイルが巻回された歯部を継鉄部に結合してステータを組み立てる際に電機子鉄心の歯部を構成する鋼板が変形し易く、電機子鉄心の歯部に歪みが生じて、電機子鉄心の一連の歯部の先端の磁極面を真円度が高い円筒面上に正確に位置させることができなくなることがあった。このように電機子鉄心の歯部に歪みが生じると、ステータとロータとの間のエアギャップ内の磁束密度の変化が滑らかでなくなるため、コギングトルクが増加する。
本発明の目的は、回転電機の効率の低下を抑えつつ、コギングトルクの低減を図ることができるようにした回転電機用ステータを提供することにある。
本発明は、継鉄部構成用鋼板の積層体により環状に形成された継鉄部と、該継鉄部の周方向に等角度間隔で並ぶように配置されてそれぞれの後端部が継鉄部に結合された複数の歯部とを有する電機子鉄心と、この電機子鉄心に巻装された電機子コイルとを備えた回転電機用ステータを対象とする。電機子鉄心の複数の歯部のそれぞれの先端部には、ロータ側の磁極に対向する磁極面を有する磁極部が形成され、該複数の歯部相互間にはスロットが形成されている。
本発明においては、電機子鉄心の各歯部が、前記磁極部を形成する第1の磁極形成部を先端に有し後端が前記継鉄部に結合されたn枚の第1の歯部構成用鋼板と、第1の磁極形成部とともに前記磁極部を形成する第2の磁極形成部を先端に有し後端が前記継鉄部に結合されたm枚の第2の歯部構成用鋼板とを積層した構造を有している。
各歯部を構成する各第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部は、電機子鉄心の周方向に隣接する他の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部から分離された状態で設けられていて、各歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部と隣接する他の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部との間に隙間が形成されている。
また電機子鉄心の各歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板の先端の第2の磁極形成部は、電機子鉄心の周方向に隣接する他の歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板の先端の第2の磁極形成部に連結部を介して連結された状態で設けられている。
そして、第1の歯部構成用鋼板の枚数nが第2の歯部構成用鋼板の枚数mよりも十分に多く設定され、第2の歯部構成用鋼板が、歯部の鋼板積層方向に分散させた状態で配置される。
各歯部への巻線の巻回を容易にするためには、各歯部を継鉄部と別体に形成して、各歯部に巻線を巻回してから各歯部を継鉄部に結合することができる構造にするのが好ましい。
従って、本発明の好ましい態様では、電機子鉄心の各歯部が、継鉄部に結合される結合部を後端に有し各歯部の先端部の磁極部を形成する第1の磁極形成部を先端に有するn枚の第1の歯部構成用鋼板と、後端及び先端にそれぞれ継鉄部に結合される結合部及び前記第1の磁極形成部とともに各歯部の先端部の磁極部を形成する第2の磁極形成部を有するm枚の第2の歯部構成用鋼板とを積層した構造を有している。
この場合、電機子鉄心の一連の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板は、各歯部毎に分離された状態で設けられていて、電機子鉄心の一連の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板が継鉄部に結合された状態にあるときに、一連の第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部相互間に隙間が形成されるように、各第1の磁極形成部が設けられる。
また電機子鉄心の一連の歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板は、それぞれの先端の第2の磁極形成部を連結部を介して相互に連結した状態で設けられる。
そして、第1の歯部構成用鋼板の枚数nが第2の歯部構成用鋼板の枚数mよりも十分に多く設定され、第2の歯部構成用鋼板は、歯部の鋼板積層方向に分散させた状態で配置される。
継鉄部に歯部を結合するため、継鉄部には歯部側に開口した溝を等角度間隔で設けるのが好ましい。このように継鉄部に溝が設けられる場合、電機子鉄心の各歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板及び第2の歯部構成用鋼板の結合部は、継鉄部に設けられた溝内に圧入された状態で継鉄部に結合されるように構成することができる。
上記のように、歯部の先端の磁極部が連結されていない第1の歯部構成用鋼板と、一連の歯部の先端の磁極部が連結部により連結された第2の歯部構成用鋼板とを混ぜて積層することにより電機子鉄心を構成すると、磁極部が連結された第2の歯部構成用鋼板の存在により、ステータの磁極部とロータとの間のエアギャップ内での磁束密度の変化を滑らかにして、コギングトルクの低減を図ることができ、歯部の先端の磁極部が連結されていない第1の歯部構成用鋼板の存在により回転電機の効率が低下するのを防ぐことができる。従って、本発明に係わるステータを用いれば、回転電機の効率の低下を抑えつつ、コギングトルクの低減を図ることができる。
また、上記のように構成すると、一連の歯部の先端の磁極部を連結する連結部の厚みを厚くしても効率が低下しないため、連結部の各歯部を継鉄部と別体に形成する場合に、連結部の厚みを厚くして磁極部が連結された歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板の機械的強度を高くすることができ、ステータを組み立てる過程で、第2の歯部構成用鋼板の歯部の配列に狂いが生じるのを防ぐことができる。また磁極部が連結されていない歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板は、歯部の配列に狂いが生じることがない第2の歯部構成用鋼板の各歯部を基準にして正しい位置に積層していくことができるため、電機子鉄心の歯部の配列に狂いが生じるのを防ぐことができ、各歯部の磁極面が沿う円筒面の真円度を高くしてコギングトルクの低減を図ることができる。
本発明の好ましい態様では、歯部を構成する鋼板の全枚数m+nと第2の歯部構成用鋼板の枚数mとの間に、m+n>2mの関係が成立するように、第1の歯部構成用鋼板の枚数n及び第2の歯部構成用鋼板の枚数mが設定される。
本発明の好ましい態様では、電機子鉄心の径方向に測った上記第2の歯部構成用鋼板の連結部の厚み寸法cが、0.3mm<c≦1.00mmの範囲に設定される。
また電機子鉄心の周方向に測った第1の歯部構成用鋼板の磁極形成部相互間の隙間の開口寸法aは0.5mm≦a≦1.0mmの範囲に設定するのが好ましい。
本発明の好ましい実施例では、上記第1の歯部構成用鋼板の磁極形成部相互間の隙間の寸法aを0.5mmに設定し、第2の歯部構成用鋼板の連結部の最も薄い部分の厚みcを0.5mmに設定したときに、回転電機のコギングトルクの低減を図り、効率の向上を図る上で、好ましい結果が得られることが確認されている。
上記の構成では、第2の歯部構成用鋼板の一連の歯部の磁極部を連結する連結部に十分な厚み(鉄心の径方向に測った厚み)を持たせているが、回転電機の効率を高めるためには、上記のように連結部の厚さを厚くする代わりに、第2の歯部構成用鋼板の板厚を第1の歯部構成用鋼板の板厚よりも大きく設定するようにしてもよい。
以上のように、本発明によれば、歯部の先端の磁極部を構成する磁極構成部が連結されていない第1の歯部構成用鋼板と、一連の歯部の先端の磁極部を構成する磁極構成部が連結部により連結された第2の歯部構成用鋼板とを混ぜて積層することにより電機子鉄心の歯部を構成するようにしたので、回転電機の効率の低下を抑えつつ、コギングトルクの低減を図ることができる。
また本発明によれば、電機子鉄心の一連の歯部の先端の磁極部を連結する連結部の厚みを厚くして、磁極部が連結された歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板の機械的強度を高くすることができるため、電機子鉄心を組み立てる過程で該第2の歯部構成用鋼板の歯部の配列に歪みが生じるのを防ぐことができ、歪みが生じない第2の歯部構成用鋼板を基準にして第1の歯部構成用鋼板を積層することができるため、電機子鉄心の一連の磁極部の磁極面が沿う円筒面の真円度を高くして、コギングトルクの低減効果を高めることができる。
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は、本発明のステータを適用する回転電機との一例として、ロータ内転形のブラシレス直流電動機の構造を示した断面図、図2A及び図2Bはそれぞれ本実施形態で用いるステータの電機子鉄心を示した正面図及びその一部の側面図、図3A及び図3Bは、本実施形態のステータの電機子鉄心の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板を示した正面図及び側面図である。また図4A及び図4Bはそれぞれ、本実施形態でステータの電機子鉄心を構成するために用いる第2の歯部構成用鋼板の正面図及び側面図である。
図1において、1は円筒状のケース本体1Aと、ケース本体1Aの開口部を閉じるエンドカバー1Bとからなる電動機のケースで、ケース本体1Aとエンドカバー1Bとがネジ2により締結されてケース1が組み立てられている。
ケース本体1Aの内周に、本発明に係わるステータ3が取り付けられ、ケース本体1Aの端部壁に保持された軸受4と、エンドカバー1Bに保持された軸受5とにより回転自在に支持された回転軸6にロータ7が取り付けられている。
ロータ7は、鋼板の積層体からなるロータコア8に永久磁石9を取り付けて磁石界磁を構成したもので、ステータ3とロータ7とはそれぞれの中心軸線を一致させた状態で配置されている。
エンドカバー1Bの内側に保持された基板10に、ロータ7の磁極の極性を検出するホールIC11が取り付けられ、ホールICから導出されたリード線と、電機子コイル3Bの3相の端子から引き出されたリード線(いずれのリード線も図示せず。)とを絶縁チューブ内に挿入して構成したワイヤーハーネス12が、ケース本体1Aに取り付けられたグロメット13を通して外部に導出されている。
本発明に係わるステータ3は、鋼板の積層体からなる電機子鉄心3Aと、電機子鉄心3Aに巻装されて3相結線された電機子コイル3Bとからなっていて、電機子鉄心3Aの磁極部がロータ7側の磁極に所定のギャップを介して対向させられている。
更に詳細に説明すると、電機子鉄心3Aは、図2A,図2Bに示したように、円環状に形成された継鉄部(バックコア)BCと、継鉄部Yの周方向に等角度間隔で配置されて、継鉄部の内周部から径方向の内側に突出した12個の歯部(ティース)T1 ないしT12とからなり、歯部T1 ないしT12相互間にコイルを挿入するスロットSが形成されている。
継鉄部BCは、円環状に形成された鋼板を多数枚積層したものからなっていて、その内周部には、歯部T1 ないしT12の後端部をそれぞれ結合するための溝G1 ないしG12が等角度間隔で設けられている。
歯部T1 ないしT12は、継鉄部BCの溝G1 ないしG12に圧入されて該継鉄部BCに結合される結合部Taをそれぞれの後端部に有し、磁極部Tpをそれぞれの先端部に有している。
本発明においては、電機子鉄心3Aの各歯部が、図3A及び図3Bに示すように構成されたn枚の第1の歯部構成用鋼板301と、図4A及び図4Bに示すように構成されたm枚(n>>m)の第2の歯部構成用鋼板302とを混ぜて積層した構造を有する。
図3A及び図3Bに示した第1の歯部構成用鋼板301は、各歯部毎に分離された状態で設けられたもので、歯部T1 ないしT12をそれぞれ構成する第1の歯部構成用鋼板301は、継鉄部BCの溝G1 ないしG12に圧入されて該継鉄部に結合される結合部301aを後端に有し、磁極部Tpを形成する第1の磁極形成部301bを先端に有する厚みtの鋼板からなっている。磁極形成部301bの先端面には、円筒面状の磁極面が形成され、この磁極面がロータの磁極に対向させられる。
そして、図3Aに示したように歯部T1 ないしT12をそれぞれ構成する第1の歯部構成用鋼板301,301,…の結合部を継鉄部BCの溝部に圧入して結合したときに、歯部T1 ないしT12をそれぞれ構成する一連の第1の歯部構成用鋼板301,301,…の先端に形成された第1の磁極形成部301b相互間に、歯部相互間のスロットを径方向に開口させる隙間gが形成されるように、各第1の磁極形成部301bの周方向寸法(電機子鉄心の周方向に測った寸法)が設定されている。
ステータの磁極部とロータの磁極との間のエアギャップ内での磁束密度変化を滑らかにしてコギングトルクを低減するためには、電機子鉄心の周方向に測った隙間gの開口寸法aをできるだけ小さくすることが望ましいが、隙間gの開口寸法をあまり小さくすると、鋼板を打ち抜くプレス機械の金型の隙間gを打ち抜く部分の機械的強度が低下し、好ましくない。鋼板を打ち抜く金型の強度との関係で、隙間gの開口寸法aは、0.5mm以上とするのが好ましい。またコギングトルクを低減するため、隙間gの開口寸法aは1.0mm以下に設定するのが好ましい。
また電機子鉄心の各歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板302は、図4A及び図4Bに示したように、継鉄部BCの溝G1 ないしG12に圧入されて該継鉄部に結合される結合部302aを後端に有し、磁極部Tpを形成する第2の磁極形成部302bを先端に有する厚みtの鋼板からなっている。この第2の歯部構成用鋼板においては、各歯部の磁極部Tpを構成する磁極形成部302bが、各歯部の両側に配置される他の歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板302の磁極形成部302bに連結部302cを介して連結された状態で設けられている。
第2の歯部構成用鋼板302の磁極形成部302bを連結する連結部302cの機械的強度を高くするためには、電機子鉄心の径方向に測った連結部302cの最も薄い部分の厚み寸法cを厚くすることが望ましい。また連結部の厚み寸法cを小さくし過ぎるとプレス加工により連結部302cを精度よく加工することが困難になる。連結部302cの機械的な強度を確保し、かつ加工を容易にするためには、電機子鉄心の径方向に測った連結部302cの最も薄い部分の厚み寸法cを、0.3mmを超える値、好ましくは0.5mm以上に設定するのが好ましい。
しかし、厚み寸法cをあまり大きくすると、連結部を通して生じる漏れ磁束が多くなり、効率が低下するため、連結部の厚み寸法cは、漏れ磁束の増大による効率の低下が問題にならない範囲の上限値以下に設定するのが好ましい。実験によると、鉄心の径方向に測った連結部302cの最も薄い部分の厚み寸法cを1.0mm以下とすれば、問題になるほどの効率の低下が生じないことが確認されている。従って、上記厚み寸法cは、0.3mm<c≦1.00mmの範囲に設定するのが好ましい。
また各連結部302cの先端面は、その両側の第2の磁極形成部302b,302bの先端に形成された円筒面と軸線を共有する円筒面となっていて、各連結部の先端面及び各歯部の先端の磁極部の磁極面がとともに電機子鉄心の中心軸線に中心軸が一致した同一の円筒面上に位置するように形成されている。
そして、本発明においては、第1の歯部構成用鋼板301の枚数nが第2の歯部構成用鋼板の枚数mよりも十分に多く設定され、第2の歯部構成用鋼板302を歯部の鋼板積層方向に分散させた状態で、第1の歯部構成用鋼板と第2の歯部構成用鋼板とが積層されて一連の歯部T1 ないしT12が構成されている。
第2の歯部構成用鋼板302の枚数mを多くすると、コギングトルクの低減を図ることができるが、磁極形成部が連結された第2の歯部構成用鋼板の数を多くすると、連結部で生じる漏れ磁束が増加するため、回転電機の効率が低下する。また効率を重視して第2の歯部構成用鋼板の枚数mを少なくしすぎるとコギングトルクの低減効果が低下する。第2の歯部構成用鋼板302の枚数mは、コギングトルクの低減効果と、回転電機の効率との双方を勘案して、適当な値に設定する。
効率の低下を抑えつつコギングトルクの低減効果を高めるためには、各歯部を構成する鋼板の全枚数m+nと第2の歯部構成用鋼板の枚数mとの間に、m+n>2mの関係が成立するように第1の歯部構成用鋼板の枚数n及び第2の歯部構成用鋼板の枚数mを設定するのが好ましい。即ち、磁極構成部が連結された第2の歯部構成用鋼板の枚数は、各歯部を構成する鋼板の全枚数の1/2よりも少なく設定するのが好ましい。
上記のように、歯部の先端の磁極部を構成する磁極構成部が連結されていない第1の歯部構成用鋼板301と、一連の歯部の先端の磁極部を構成する磁極構成部が連結部により連結された第2の歯部構成用鋼板302とを混ぜて積層することにより電機子鉄心を構成すると、磁極構成部が連結された第2の歯部構成用鋼板302の存在により(第2の歯部構成用鋼板302の枚数の如何に関わりなく)コギングトルクの低減を図ることができる。
また歯部を構成する鋼板の大部分を、歯部の先端の磁極部を構成する磁極構成部が連結されていない第1の歯部構成用鋼板とすれば、磁極部の連結部を通して流れる漏洩磁束の量を少なくして、回転電機の効率が低下するのを防ぐことができる。
また、第2の歯部構成用鋼板の枚数を十分に少なくしておけば、一連の歯部の先端の磁極部を連結する連結部の厚みを厚くすることができるため、磁極部が連結された歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板の機械的強度を高くして該鋼板に歪みが生じるのを防ぐことができ、ステータを組み立てる過程で、第2の歯部構成用鋼板の磁極構成部の磁極面を真円度が高い円筒面上に位置させた状態に保持することができる。また磁極部が連結されていない歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板は、歪みが生じるおそれがない第2の歯部構成用鋼板を基準にして正しい位置に積層していくことができるため、電機子鉄心の歯部の配列に狂いが生じるのを防いで、電機子鉄心の磁極面が沿う円筒面(ロータ内転形の場合は電機子鉄心の内周面、ロータ外転形の場合には電機子鉄心の外周面)の真円度を高くすることができる。
このように、電機子鉄心の内周面または外周面の真円度を高くすることができると、コギングトルクの低減を図ることができるため、磁極構成部が連結された第2の歯部構成用鋼板の数が歯部を構成する鋼板の全枚数に対して占める割合は僅かであっても、コギングトルクの低減効果を高めることができる。従って、本発明に係わるステータを用いれば、回転電機の効率の低下を抑えつつ、コギングトルクの低減を図ることができる。
上記の構成では、第2の歯部構成用鋼板302として、磁極構成部を連結する連結部の薄肉部(肉厚が最も薄い部分)の厚みcを従来のこの種の電動機で用いられていた電機子鉄心の磁極部の連結部の厚み寸法(0.3mm以下)よりも厚くした鋼板を用いたが、連結部の厚み寸法を厚くする代わりに、図5A及び図5Bに示したように、鋼板の厚み寸法t´を大きくしたm枚の第2の歯部構成用鋼板302を用いることにより、コギングトルクを低減する効果を得るために必要な磁束を連結部302cを通して流すようにしてもよい。
本発明の好ましい実施例では、固定子の12個の歯部にそれぞれ巻回された12個の電機子コイルのうち、位相が等しい4つの電機子コイルを並列に接続することにより3相の各相の電機子コイルを構成し、これら3相の電機子コイルをスター結線したステータを用いてブラシレス直流電動機(定格直流電圧12V)を構成した。この電動機においては、ロータの軸線方向寸法を55mm、ロータの外径(直径)を39mm、ロータの極数を10、ロータの磁石界磁の極弧角を28.7°、ステータの電機子鉄心の軸線方向寸法は50mmとした。また第1の歯部構成用鋼板301の磁極構成部301bが歯部間に形成する隙間gの寸法aを0.5mm、磁極構成部301bの周方向の両端の厚み(電機子鉄心の径方向に測った厚み)b(図3参照)を0.5mmとし、第2の歯部構成用鋼板302の連結部の厚みcを0.5mmとした。更に、電機子鉄心の歯部を構成する鋼板の全枚数を101枚とし、そのうちの95枚の鋼板として磁極構成部が連結されていない第1の歯部構成用鋼板を用い、残りの6枚の鋼板として、磁極構成部が連結された第2の歯部構成用鋼板を用いた。第2の歯部構成用鋼板は、歯部の積層方向に均等に分散させて配置した。
またこの例では、直径1.4mmの導体を4本並列にして3相のコイルをそれぞれ巻回する歯部に2ターンずつ巻回し、3相のコイルをスター結線して3相の電機子コイルを構成した。
本発明の効果を確認するため、薄肉部の厚み寸法を0.3mmとした連結部により磁極構成部相互間を連結した第2の歯部構成用鋼板のみにより電機子鉄心の歯部を構成し、その他の構成は上記と同様とした比較例1と、磁極部間に0.5mmの隙間を形成する第1の歯部構成用鋼板のみを用いて電機子鉄心の歯部を構成し、その他の構成は上記と同様とした比較例2とを作成して、回転速度N、電機子電流I、出力P[W]及び効率η[%]をトルクτ[N・m]に対して測定する実験を行った。この実験の結果を示す特性曲線を図6に示した。図6において、横軸はトルクτ[N・m]を示し、縦軸は、回転速度N(×100[r/min])、電機子電流I[A]、出力P(×10[W])、及び効率η[%]の数値を示している。
図6に示した回転速度N対トルクτ特性、電機子電流I対トルクτ特性、出力P対トルクτ特性及び効率η対トルクτ特性において、曲線aは比較例1の特性を示している。また曲線bは比較例2の特性を示し、曲線cは上記本発明の実施例の特性を示している。
比較例1(曲線a)で生じたコギングトルクは2[mN・m]、比較例2(曲線b)で生じたコギングトルクは16[mN・m]、本発明の実施例(曲線c)で生じたコギングトルクは12[mN・m]であった。
図6に示した実験結果から明らかなように、電機子鉄心の歯部相互間を厚みが0.3mmの連結部により連結した比較例1(曲線a)では、最大効率が83%であり、電機子鉄心の磁極部相互間に0.5mmの隙間が形成されている比較例2(曲線b)で得られた最大効率95%に比べてかなり低い効率しか得られなかったが、本発明の実施例(曲線c)では、94%の最大効率を得ることができ、比較例2と同等の高い効率を得ることができた。
また比較例2の電動機では、コギングトルクが大きくなるのを避けられなかったが、本発明の実施例では、磁極構成部が連結部により連結された歯部構成用鋼板の数が少ないにもかかわらず、比較例2に比べてコギングトルクを低く抑えることができた。
これは、第2の歯部構成用鋼板の磁極構成部302bを連結する連結部の厚み寸法を大きくして該第2の歯部構成用鋼板の機械的強度を高め、ステータを組み立てる過程で、一連の第2の歯部構成用鋼板302の磁極構成部302bの磁極面を真円度が高い円筒面上に配置した状態を保持することができたことにより電機子鉄心の磁極部の内周面の真円度を高くすることができたことと、連結部の存在により漏洩磁束が減り、ロータの磁極とステータの磁極部との間のギャップ内での磁束密度の変化が滑らかになったこととによるものと思われる。
上記の実施形態では、回転子内転形の電動機に用いるステータに本発明を適用したが、回転子外転形の電動機に用いるステータにも本発明を適用することができる。
また上記の説明では、ブラシレス直流電動機を例にとったが、同期電動機や同期発電機等に用いるステータにも本発明を適用することができる。
本発明に係わるステータを用いる回転電機の一例として、ブラシレス直流電動機の構成例を示した断面図である。 図1の回転電機で用いるステータの電機子鉄心の構成例を示した拡大正面図である。 図2Aに示した電機子鉄心の一部の側面図である。 本発明に係わるステータを構成するために用いる第1の歯部構成用鋼板の構成例を示した正面図である。 図3Aに示した第1の歯部構成用鋼板の側面図である。 本発明に係わるステータを構成するために用いる第2の歯部構成用鋼板の構成例を示した正面図である。 図4Aに示した第2の歯部構成用鋼板の側面図である。 本発明に係わるステータを構成するために用いる第2の歯部構成用鋼板の他の構成例を示した正面図である。 図5Aに示した第2の歯部構成用鋼板の側面図である。 本発明に係わるステータを用いた回転電機の特性と従来の回転電機の特性とを比較して示したグラフである。
符号の説明
3A 電機子鉄心
3B 電機子コイル
BC 継鉄部
T1 〜T12 歯部
301 第1の歯部構成用鋼板
302 第2の歯部構成用鋼板

Claims (8)

  1. 継鉄部構成用鋼板の積層体により環状に形成された継鉄部と、前記継鉄部の周方向に等角度間隔で並ぶように配置されてそれぞれの後端部が前記継鉄部に結合され、ロータ側の磁極に対向する磁極面を有する磁極部がそれぞれの先端部に形成された複数の歯部とを有して、前記複数の歯部相互間にスロットが形成された電機子鉄心と、前記電機子鉄心に巻装された電機子コイルとを備えた回転電機用ステータにおいて、
    前記電機子鉄心の各歯部は、前記磁極部を形成する第1の磁極形成部を先端に有し後端が前記継鉄部に結合されたn枚の第1の歯部構成用鋼板と、前記第1の磁極形成部とともに前記磁極部を形成する第2の磁極形成部を先端に有し後端が前記継鉄部に結合されたm枚の第2の歯部構成用鋼板とを積層した構造を有し、
    前記各歯部を構成する各第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部は、前記電機子鉄心の周方向に隣接する他の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部から分離された状態で設けられていて、各歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部と前記隣接する他の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部との間に隙間が形成され、
    前記電機子鉄心の各歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板の先端の第2の磁極形成部は、前記電機子鉄心の周方向に隣接する他の歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板の先端の第2の磁極形成部に連結部を介して連結された状態で設けられ、
    前記第1の歯部構成用鋼板の枚数nが前記第2の歯部構成用鋼板の枚数mよりも十分に多く設定されて、前記第2の歯部構成用鋼板が、前記歯部の鋼板積層方向に分散させて配置されていること、
    を特徴とする回転電機用ステータ。
  2. 継鉄部構成用鋼板の積層体により環状に形成された継鉄部と、前記継鉄部の周方向に等角度間隔で並ぶように配置されてそれぞれの後端部が前記継鉄部に結合され、ロータ側の磁極に対向する磁極面を有する磁極部がそれぞれの先端部に形成された複数の歯部とを有して、前記複数の歯部相互間にスロットが形成された電機子鉄心と、前記電機子鉄心に巻装された電機子コイルとを備えた回転電機用ステータにおいて、
    前記電機子鉄心の各歯部は、前記継鉄部に結合される結合部を後端に有し前記磁極部を形成する第1の磁極形成部を先端に有するn枚の第1の歯部構成用鋼板と、後端及び先端にそれぞれ前記継鉄部に結合される結合部及び前記第1の磁極形成部とともに前記磁極部を形成する第2の磁極形成部を有するm枚の第2の歯部構成用鋼板とを積層した構造を有し、
    前記電機子鉄心の一連の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板は、各歯部毎に分離された状態で設けられていて、前記電機子鉄心の一連の歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板が前記継鉄部に結合された状態にあるときに、一連の第1の歯部構成用鋼板の先端の第1の磁極形成部相互間に隙間が形成されるように、各第1の磁極形成部が設けられ、
    前記電機子鉄心の一連の歯部を構成する第2の歯部構成用鋼板は、それぞれの先端の第2の磁極形成部を連結部を介して相互に連結した状態で設けられ、
    前記第1の歯部構成用鋼板の枚数nが前記第2の歯部構成用鋼板の枚数mよりも十分に多く設定されて、前記第2の歯部構成用鋼板が、前記歯部の鋼板積層方向に分散させて配置されていること、
    を特徴とする回転電機用ステータ。
  3. 前記電機子鉄心の継鉄部には歯部側に開口した溝が設けられ、前記電機子鉄心の各歯部を構成する第1の歯部構成用鋼板及び第2の歯部構成用鋼板の結合部は、前記継鉄部に設けられた溝内に圧入された状態で前記継鉄部に結合されるように構成されている請求項2に記載の回転電機用ステータ。
  4. 前記歯部を構成する鋼板の全枚数m+nと前記第2の歯部構成用鋼板の枚数mとの間に、m+n>2mの関係が成立するように、前記第1の歯部構成用鋼板の枚数n及び第2の歯部構成用鋼板の枚数mが設定されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載の回転電機用ステータ。
  5. 前記電機子鉄心の径方向に測った第2の歯部構成用鋼板の連結部の最も薄い部分の厚み寸法cは、0.3mm<c≦1.00mmの範囲に設定されている請求項1,2,3または4に記載の回転電機用ステータ。
  6. 前記電機子鉄心の周方向に測った第1の歯部構成用鋼板の磁極形成部相互間の隙間の開口寸法aは0.5mm≦a≦1.0mmの範囲に設定されている請求項5に記載の回転電機用ステータ。
  7. 前記電機子鉄心の径方向に測った第2の歯部構成用鋼板の連結部の最も薄い部分の厚み寸法cは0.5mmに設定され、前記電機子鉄心の周方向に測った第1の歯部構成用鋼板の磁極形成部相互間の隙間の開口寸法aは0.5mmに設定されている請求項1,2,3または4に記載の回転電機用ステータ。
  8. 前記第2の歯部構成用鋼板の板厚が前記第1の歯部構成用鋼板の板厚よりも大きく設定されている請求項1,2または3に記載の回転電機用ステータ。
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