JP2005075882A - コンミテータ用フェノール樹脂成形材料 - Google Patents

コンミテータ用フェノール樹脂成形材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 成形収縮率が小さく、靱性に優れ、コンミテータとして厳しいフュージング条件下においてもクラックが発生しないコンミテータ用フェノール樹脂成形材料を提供すること。
【解決手段】 本発明は、成形材料全体に対し、フェノール樹脂25〜35重量%、ガラス繊維と無機充填材の合計量55〜65重量%、アクリロニトリルブタジエンゴム1〜5重量%、及びポリビニルアセタール1〜5重量%を含有してなることを特徴とするコンミテータ用フェノール樹脂成形材料である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、コンミテータ用のフェノール樹脂成形材料に関するものである。
コンミテータはモーターの一部品であり、耐熱性が要求されるコンミテータは銅セグメントと絶縁体としてフェノール樹脂成形材料に代表される熱硬化性樹脂成形材料により構成されている。コンミテータに使用される材料への基本的な要求特性には耐熱性(特に、熱時の機械的強度・寸法安定性)や耐湿寸法安定性があり、最近は耐熱性への要求が厳しくなっていることから、絶縁体としてガラス繊維を主基材としたフェノール樹脂成形材料を使用する例が多くなっている。
コンミテータは、銅セグメントとリード線をフュージングにより接合し使用する。フュージングとは、リード線を圧着する銅セグメントの一部分に主電極と副電極とを当てて加圧し、1セグメントあたり0.5秒程度通電することで、ジュール熱により接触部の温度を瞬間的に約700〜800℃にし、リード線と銅セグメントの軟化を同時に起こし、リード線と銅セグメントを瞬間的に圧着させることである。このフュージングは、リード線が太いほど加熱・加圧条件は厳しくなり、また銅セグメント数が多いほど樹脂部にかかる熱履歴が多くなり熱的な負担が大きくなる。
最近では、モーターの高性能化に伴い、リード線は太く、銅セグメント数も多くなっていることから、フュージング時に樹脂部へかかる負担は大きくなる傾向がある。よってガラス繊維を主基材とするフェノール樹脂成形材料を使用しても、この工程時にコンミテータの樹脂部にクラックが発生する場合も生じている。また、更に厳しいフュージング条件として、コンミテータのツバ部にある銅セグメントの溝加工部へリード線を圧入し、フュージングを行う場合、内部応力が発生した状態で樹脂部へ加熱・加圧を行うため、クラックが発生する可能性はより高い。
コンミテータ用フェノール樹脂成形材料の充填材に関する文献としては、例えば、特許文献1,2などがある。
特開平9−95595号公報 特開平7−150009号公報
本発明は、処理条件が厳しいフュージング工程においても、従来のガラス繊維を主基材とするフェノール樹脂成形材料と比較して、寸法安定性に優れ、フュージング時にクラックが発生しないコンミテータ用フェノール樹脂成形材料を提供するものである。
このような目的は、下記の本発明(1)〜(3)によって達成される。
(1) 成形材料全体に対し、フェノール樹脂25〜35重量%、ガラス繊維と無機充填材の合計量55〜65重量%、アクリロニトリルブタジエンゴム1〜5重量%、及びポリビニルアセタール1〜5重量%を含有してなることを特徴とするコンミテータ用フェノール樹脂成形材料。
(2) フェノール樹脂の一部又は全部がレゾール型フェノール樹脂である前記(1)に記載のコンミテータ用フェノール樹脂成形材料。
(3) 無機充填材として炭酸カルシウムを用い、ガラス繊維との併用比がガラス繊維:炭酸カシウム=2:1〜5:1である前記(1)または(2)に記載のコンミテータ用フェノール樹脂成形材料。
本発明のコンミテータ用成形材料は、フェノール樹脂、アクリリニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールとを含有し、無機基材としてガラス繊維と無機充填材、特に炭酸カルシウムを併用して用いることを特徴とするものであり、成形収縮率が小さく、靱性に優れ、コンミテータとして厳しいフュージング条件下においてもクラックが発生しない。
以下、本発明のコンミテータ用フェノール樹脂成形材料(以下、「成形材料」ということがある)について説明する。本発明の成形材料において、フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂(以下、ノボラック樹脂という)あるいはレゾール型フェノール樹脂(以下、レゾール樹脂という)を使用することができる。コンミテータの特性やコスト面を考慮すると、ノボラック樹脂を主体としレゾール樹脂を併用することが好ましい。レゾール樹脂を含むことにより耐熱性を向上させることができるため、フュージング時の樹脂クラックを抑制することができる。ノボラック樹脂を使用する場合、ノボラック樹脂に対して硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いる。この量は、ノボラック樹脂に対して10〜15重量%配合するのが好ましい。配合量が10重量%未満では硬化性が低下し耐熱性の低下につながる。また、15重量%を超えると熱分解ガスが増えることによりフュージング時にコンミテータにクラックが発生する場合がある。
フェノール樹脂は、成形材料全体に対して、25〜35重量%配合するのが好ましい。この場合、ヘキサメチレンテトラミンを使用する場合、これもフェノール樹脂に含むものとする。配合量が25重量%未満では成形材料製造時の生産性が低下する場合がある。また、35重量%を越えると成形収縮率及びアニール処理前後の寸法変化率が大きくなり、内部応力発生の原因となることから、シャフト圧入時及びフュージング時にコンミテータにクラックが発生する場合がある。
フェノール樹脂としてレゾール樹脂を含有することが好ましいが、レゾール樹脂は、成形材料全体に対して5〜15重量%配合することが好ましい。これにより、コンミテータの耐熱性及び寸法安定性が向上する。配合量が5%未満では耐熱性向上効果が低下する場合があり、15重量%を超えると成形収縮率及びアニール処理前後の寸法変化率が大きくなり、内部応力発生の原因となることから、シャフト圧入時及びフュージング時にコンミテータにクラックが発生する可能性がある。
レゾール樹脂としては特に限定されないが、(a)ジメチレンエーテルレゾール樹脂と、(b)メチロールレゾール樹脂とを併用することが好ましい。これにより、靭性に優れたジメチレンエーテルレゾール樹脂と、耐熱性に優れたメチロールレゾール樹脂の両方の特長を発現でき、機械的強度と耐熱性とを両立させることができる。前記2種類のレゾール樹脂の重量比は、特に限定されないが、(a)ジメチレンエーテルレゾール樹脂:(b)メチロールレゾール樹脂=1:1〜3:1とすることが好ましい。このような重量比にすることで、成形品に耐熱性と靱性を高度にバランスして付与することができる。
本発明においては、エラストマーとしてアクリロニトリルブタジエンゴムとポリビニルアセタールを配合する。アクリロニトリルブタジエンゴムとポリビニルアセタールという異なるタイプのエラストマーを併用しているので、これらの相乗作用により、一方のエラストマーを単独で配合した場合よりも、成形品に機械的強度及び靭性を高度にバランスして付与することができる。また、エラストマーを配合することで弾性率を下げることができるため、フュージング工程におけるクラックをより効果的に防止することができる。アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールの配合量としては、成形材料全体に対して、それぞれ、1〜5重量%配合するのが好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴムが1重量%未満では靭性付与の効果が小さく、5重量%を越えると静的強度の低下を招くようになる。ポリビニルアセタールが1重量%未満では静的強度の向上が得られにくく、5重量%を超えると熱時強度が低下することがある。また、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリビニルアセタールの割合は、25:75〜75:25が好ましい。この範囲内で、特に機械的強度及び靭性のバランスが良好である。
本発明の成形材料には、ガラス繊維を配合する。これにより、成形品に高度の機械的強度を付与することができる。ガラス繊維としては特に限定されないが、平均繊維径が10〜15μm、平均繊維長が1〜3mmのものが好ましい。これにより、成形材料化段階での作業性、得られた成形品の機械的強度を良好なものとすることができる。平均繊維径が10μmより小さいと機械的強度の向上効果が小さくなることがある。また、15μmより大きいと、成形材料製造時に混練ロールを使用する場合は、ロールへの追従性が低下し、混練が充分に行えなくなることがある。
本発明の成形材料には、前記ガラス繊維と併せて、無機充填材を配合する。これにより、成形品に機械的強度及び靱性を高度にバランスして付与することができる。無機充填材としては、例えば、タルク、クレー等のケイ酸塩、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物であり、特に限定されないが、この中で、特に炭酸カルシウムが好ましい。これは、他の無機充填材に比べると靱性向上につながること、及び熱的安定性の高いからである。靱性向上の理由については、明確ではないが、炭酸カルシウムは吸油性の極めて少ない無機充填材であることから、フェノール樹脂が基材に吸収されず、フェノール樹脂が持っている靱性が損なわれにくいためであると推測される。
前記無機基材は、ガラス繊維を含めて、成形材料全体に対し55〜65重量%配合することが好ましい。配合量が55重量%未満では機械的強度の向上効果が充分でないことがあり、寸法変化も大きくなる傾向がみられる。また、65重量%を越えると成形材料段階での作業性が低下し、相対的に樹脂分の配合量が低下することから機械的強度の低下につながることがある。また、(a)ガラス繊維と(b)炭酸カルシウムの併用比は(a):(b)=2:1〜5:1であることが好ましい。(a)ガラス繊維量が(a):(b)=2:1より少なくなると強度が低下し、(a):(b)=5:1より多くなると弾性率の増加につながり、いづれにしても靱性の低下するようになる。
本発明の成形材料は、成形材料の配合原料を均一に混合後、ロール、コニーダ、二軸押出し機等の混練機の単独、又はロールと他の混練機との組み合わせにより加熱混練する。次いで得られた混練物を粉砕し成形材料を得ることができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。
表1に示した配合からなる材料を80℃の加熱ロールで15分間混練し、冷却後粉砕してフェノール樹脂成形材料を得た。実施例及び比較例の配合と特性を表1に示す。配合量は全て重量%を表す。
特性評価用の試験片は、トランスファー成形にて成形した(ただし、成形収縮率の測定の場合、アニール処理は実施していない)。半田耐熱性確認用コンミテータ成形体はコンプレッション成形により成形した。評価方法は以下の通りである。
(成形条件)
予熱温度:95〜100℃
金型温度:170〜175℃
硬化時間:3分
アニール処理:180℃、6時間+220℃、4時間
Figure 2005075882
(表の注)
1.原材料
(1)ジメチレンエーテルレゾール樹脂:以下の方法にて製造した。
還流コンデンサー撹拌機、加熱装置、真空脱水装置を備えた反応釜内に、フェノール(P)とホルムアルデヒド(F)とをモル比(F/P)=1.7で仕込み、これに酢酸亜鉛をフェノール100重量部に対して0.5重量部添加した。この反応系のpHを5.5に調整し、還流反応を3時間行った。その後、真空度100Torr、温度100℃で2時間水蒸気蒸留を行って未反応フェノールを除去し、さらに、真空度100Torr、温度115℃で1時間反応させ、数平均分子量800のジメチレンエーテルレゾール樹脂(固形)を得た。
(2)メチロールレゾール樹脂:住友ベークライト(株)製 PR−51723(数平均分子量450)
(3)ノボラック樹脂:住友ベークライト(株)製 A-1082(数平均分子量850)
(4)ガラス繊維:日本板硝子(株)製 RES03−BM38(平均線維径11μm、平均繊維長3mm)
(5)未焼成クレー:白石工業(株)製 カオブライト(325メッシュパス)
(6)炭酸カルシウム:日東粉化工業(株)製 SS#80(平均粒径2.6μm)
(7)アクリリニトリルブタジエンゴム:(株)JSR製 PNC−38
(8)ポリビニルブチラール:積水化学工業(株)製 エスレックBX−5(重合度2500)
なお、上記(1)〜(3)に示したフェノール樹脂の数平均分子量は、GPC測定によりフェノール換算で算出したものである。
2.評価方法
(1)成形収縮率、曲げ強さ:JIS K 6911に基づいて行った。
(2)アニール処理前後の寸法変化:JIS成形収縮率測定用試験片をアニール処理し、処理前後の寸法変化率を測定した。
(2)破壊靭性試験(図1参照)
80×7×14mmの大きさで、中央下部に2×7×7mmの溝2を有し、その中心線上に鋭い切り込み3(長さ:7mm(全幅)、深さ:約2mm)を有する試験片1を、4,5を支点とし、6を加重点とする3点曲げ試験で破壊させて、この破壊荷重から破壊靭性値K、靭性破壊エネルギーGCを求めた。以下に、KC、GCを求める式を示す。
破壊靭性値(クラックの成長に対する抵抗値)
=Pmax・S/(B・W1.5)[N/m1.5
靭性破壊エネルギー(クラックの成長における破壊エネルギーの吸収量)
=(K)/E [J/m
max:最大荷重(N)、S:支点間距離(B×4.2mm)、B:試験片の幅(7mm)、
W:試験片の高さ(14mm)、E:曲げ弾性率(MPa)
(3)半田耐熱試験:耐フュージング性の代用評価として、アニール処理した外径33mm,内径15mm,高さ30mmのコンミテータ成形体を470℃の半田に10秒間浸漬し、内部に発生する微細クラックの発生数(n=3の平均値)と半田浸漬後のコンミテータを常温で回転させ破壊した際の回転数(n=2の平均値)を測定した。
表1から明らかなように、実施例1、2は、フェノール樹脂、アクリリニトリルブタジエンゴム、ポリビニルアセタール、およびガラス繊維と炭酸カルシウムを併用した無機基材を所定量配合した本発明の成形材料であり、これらから得られた成形品は靱性に優れており、耐フュージング性の代用評価である半田耐熱性に優れているものとなった。一方、比較例はいずれも実施例に比べ、靱性、半田耐熱性ともに劣る結果となった。
本発明のコンミテータ用フェノール樹脂成形材料は、成形収縮率が小さく、靱性に優れ、コンミテータとして厳しいフュージング条件下においてもクラックが発生しない。従って、他の特性に影響を与えることなく耐熱性、耐久性に優れたコンミテータを提供することができる。
破壊靭性試験方法を示す概略断面図
符号の説明
1 破壊靭性試験片
2 溝部
3 鋭い切り込み
4,5 支点
6 荷重点

Claims (3)

  1. 成形材料全体に対し、フェノール樹脂25〜35重量%、ガラス繊維と無機充填材の合計量55〜65重量%、アクリロニトリルブタジエンゴム1〜5重量%、及びポリビニルアセタール1〜5重量%を含有してなることを特徴とするコンミテータ用フェノール樹脂成形材料。
  2. フェノール樹脂の一部又は全部がレゾール型フェノール樹脂である請求項1に記載のコンミテータ用フェノール樹脂成形材料。
  3. 無機充填材として炭酸カルシウムを用い、ガラス繊維との比率がガラス繊維:炭酸カルシウム=2:1〜5:1である請求項1または2に記載のコンミテータ用フェノール樹脂成形材料。
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