JP2004277695A - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、成形収縮率を低減し、寸法安定性に優れており、厳しいフュージング工程においても、従来のガラス主基材のフェノール樹脂成形材料と比較して、クラックが発生しないコンミテーター用成形材料を提供する。
【解決手段】 フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールとを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、好ましくは、前記フェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルが予め溶融混練されたものである。
【選択図】 なし
【解決手段】 フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールとを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、好ましくは、前記フェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルが予め溶融混練されたものである。
【選択図】 なし
Description
本発明は、フェノール樹脂成形材料に関するものである。
フェノール樹脂成形材料の用途のひとつとしてコンミテーター(整流子)がある。コンミテーターはモーターの一部品であり、一般的には、銅セグメントと絶縁体としてフェノール樹脂成形材料に代表される熱硬化性樹脂成形材料により構成されている。コンミテーターの絶縁体に使用される材料に要求される基本的な特性には、機械的強度、耐熱性(特に、熱時の強度・加熱寸法安定性)や寸法安定性などがあり、最近は耐熱性への要求が厳しくなっている。このため、ガラス繊維で強化されたフェノール樹脂成形材料が多く使用されるようになった。
近年、コンミテーターに対する要求レベルは益々高度化しており、このようなガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料をもってしても、熱時強度や成形収縮において満足する特性を得られない場合がある。また、小型モーターに使用されるコンミテーターは、通常、フェノール樹脂成形材料で成形したコンミテーターの内径に、内径寸法よりやや太いシャフトを直接圧入するため、圧入時にコンミテーターが割れないよう靭性に優れることが要求される。
また、コンミテーターは、銅セグメントとリード線をフュージングにより熱圧着し使用する。フュージングとは、リード線を圧着する銅セグメントの一部分に主電極と副電極とを当てて加圧し、1セグメントあたり0.5秒程度通電することで、ジュール熱により接触部の温度を瞬間的に約700〜800℃にし、リード線と銅セグメントの軟化を同時に起こし、リード線と銅セグメントを瞬間的に圧着させることである。このフュージングは、リード線が太いほど加熱・加圧条件は厳しくなり、また銅セグメント数が多いほど樹脂部にかかる熱履歴が多くなり熱的な負担が大きくなる。
最近では、モーターの高性能化に伴い、リード線は太く、銅セグメント数も多くなっていることから、フュージング時に樹脂部へかかる負担は大きくなる傾向がある。よってガラス繊維を主基材とするフェノール樹脂成形材料をもってしても、この工程時にコンミテーターの樹脂部にクラックが発生する場合もでてきている。また、更に厳しいフュージング条件として、コンミテーターのツバ部にある銅セグメントの溝加工部へリード線を圧入し、フュージングを行う場合、内部応力が発生した状態で樹脂部へ加熱・加圧を行うため、クラックが発生する可能性は高い。
一方、シリコーンゲルを含有するフェノール樹脂については、フェノール樹脂中でシリコーンゲルを生成させる技術が報告されている(例えば、特許文献1,2参照)が、かかる方法では、シリコーンゲルの生成が不十分であり、目的の特性を有する樹脂を得ることができないことがわかった。
本発明は、従来のガラス繊維を主基材とするフェノール樹脂成形材料と比較して、機械的強度を実用的レベルに維持しつつ、熱時強度や靭性を向上させ、かつ成形収縮を低減させたフェノール樹脂成形材料を提供することである。
また、本発明は、寸法安定性に優れ、処理条件が厳しいフュージング工程においてもクラックが発生しないコンミテーター用として好適な成形材料を提供するものである。
また、本発明は、寸法安定性に優れ、処理条件が厳しいフュージング工程においてもクラックが発生しないコンミテーター用として好適な成形材料を提供するものである。
このような目的は、下記の本発明(1)〜(8)によって達成される。
(1) フェノール樹脂、シリコ−ンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
(2) シリコーンゲルがフェノール樹脂の一部又は全部と予め溶融混練されたものである前記(1)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(3) レゾール型フェノール樹脂を含有する前記(1)または(2)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(4) シリコーンゲルの割合が、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量100重量部に対し、0.05〜15重量部である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料において、さらにガラス繊維を含む無機充填材を含有するフェノール樹脂成形材料。
(6) 無機充填材は、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクの中から選ばれた1種以上とを含むものである前記(4)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(7) フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量が、成形材料全体に対して20〜50重量%である前記(1)〜(6)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
(8) アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールの配合量が、成形材料全体に対してそれぞれ0.5〜6重量%である前記(1)〜(7)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
(1) フェノール樹脂、シリコ−ンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
(2) シリコーンゲルがフェノール樹脂の一部又は全部と予め溶融混練されたものである前記(1)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(3) レゾール型フェノール樹脂を含有する前記(1)または(2)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(4) シリコーンゲルの割合が、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量100重量部に対し、0.05〜15重量部である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料において、さらにガラス繊維を含む無機充填材を含有するフェノール樹脂成形材料。
(6) 無機充填材は、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクの中から選ばれた1種以上とを含むものである前記(4)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(7) フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量が、成形材料全体に対して20〜50重量%である前記(1)〜(6)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
(8) アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールの配合量が、成形材料全体に対してそれぞれ0.5〜6重量%である前記(1)〜(7)のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
本発明は、フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールとを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、耐熱性、特に熱時の強度や靭性を向上させ、かつ成形収縮を低減したフェノール樹脂成形材料を提供するものである。また、成形収縮率が小さく、寸法安定性に優れ、破壊靭性値が高く、処理条件が厳しいフュージング条件下においてもクラックが発生しないコンミテーター成形体を得ることができる。
これに加えて、ガラス繊維を含む無機充填材を含有させることにより、上記特性に加えて、機械的強度を更に向上させることができる。また、フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を含有させることにより、さらには、レゾール型フェノール樹脂としてジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂とメチロール型レゾールフェノール樹脂とを併用することにより機械的強度と耐熱性とを高度に両立させることができる。
さらに、前記フェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルを予め溶融混練することにより、上記の特性をより高度のものとすることができる。
さらに、前記フェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルを予め溶融混練することにより、上記の特性をより高度のものとすることができる。
以下、本発明のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料(以下、「成形材料」ということがある)について説明する。
本発明の成形材料は、フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールを含有することを特徴とするものである。
本発明の成形材料は、フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールを含有することを特徴とするものである。
本発明は、フェノール樹脂とシリコーンゲルを使用することが一つの特徴である。シリコーンゲルをフェノール樹脂とともに使用すると、寸法安定性が向上し、成形収縮が低減する。その理由は明確ではないが、シリコーンゲルは緩やかな3次元構造であり、適度な柔軟性を有していることから、成形時、冷却にともなう収縮を吸収することにより緩和することができ、このことにより成形収縮を低減することができる
シリコーンゲルは、付加反応型ポリオルガノシロキサン組成物をベースとしたゲル状物質である。かかるシリコーンゲルは適度な柔軟性を有していて、フェノール樹脂とともに使用されると、耐衝撃性、機械的強度、耐水性等に優れている上に、常温域からコンミテーターとして使用される際の高温域に至るまでの広い温度範囲において、これらの特長を維持することができる。このため、本発明の成形材料をコンミテーターに用いた場合には、柔軟性、熱時強度、耐湿寸法安定性を向上させることができる。
かかるシリコーンゲルは、針入度(JIS K 2530−1976−50g加重)が10〜300であることが好ましい。かかる針入度のシリコーンゲルは、特に適度な柔軟性を持ち、耐衝撃性、振動吸収性に優れている。このため、本発明の成形材料をコンミテーターに用いると、柔軟性、熱時強度、耐湿寸法安定性を向上させることができる。
本発明において、フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂、あるいは両者を併用する。ノボラック型フェノール樹脂を使用する場合、通常硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、10〜30重量部配合することが好ましく、特に15〜20重量部配合することが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの配合量が前記上限値より多いと、成形体の機械的強度が低下する場合があり、前記下限値より少ないと、成形収縮を充分低減することができず、成形体の機械的強度が低下する場合がある。
フェノール樹脂はレゾール型フェノール樹脂を含むことが好ましい。これにより耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。このため、フュージング時の樹脂クラックを抑制することができる。本発明で用いるフェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂とともに、ノボラック型フェノール樹脂など、他のフェノール樹脂と併用することができる。
本発明においては、フェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルとが予め溶融混練されたものであることが好ましい。これにより、フェノール樹脂とシリコーンゲルとを無機充填材など他の配合剤とともに溶融混練した場合に比べて、シリコーンゲルがフェノール樹脂中によりミクロに分散することから、上記の特性を高度に発現させることができる。この場合、フェノール樹脂中に分散したシリコーンゲルの大きさは、10μmより大きい粒径であることが好ましい。10μm以下では、シリコーンゲルの特長が現れにくくなることがある。また、50μmを越える大きさでは、均一分散が損なわれることがある。シリコーンゲルと溶融混練するフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂は、溶融混練の際にゲル化するおそれがないからである。なお、フェノール樹脂とシリコーンゲルとの溶融混練に使用するフェノール樹脂は、通常成形材料中のフェノール樹脂の一部が好ましいが、全部でもよい。
シリコーンゲルの割合は、フェノール樹脂(ヘキサメチレンテトラミンもフェノール樹脂に含むものとする)とシリコーンゲルの合計量100重量部に対し、0.05〜15重量部が好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。前記下限値を下回ると、成形収縮の低減および熱時強度や靭性の向上効果、フュージング時のクラック防止効果が小さくなる傾向があり、前記上限値を上回ると、成形材料製造時の生産性を低下させる場合があり、機械的強度等の特性が低下することがある。
前記フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計含有量は、特に限定されないが、成形材料全体に対して20〜50重量%が好ましく、特に25〜45重量%が好ましい。前記含有量が前記下限値より少ないと、成形材料製造時の生産性や成形体の機械的強度が低下する場合があり、前記上限値より多いと、成形体の耐熱性、寸法安定性などが充分でない場合があり、成形収縮率及びアニール処理前後の寸法変化率が大きくなり、内部応力発生の原因となりうることから、シャフト圧入時及びフュージング時にコンミテーターにクラックが発生する場合がある。
フェノール樹脂の配合量は、成形材料全体に対して、20〜45重量%が好ましく、特に26〜42が好ましい。この場合、ヘキサメチレンテトラミンもフェノール樹脂に含むものとする。配合量が前記下限値未満では成形材料製造時の生産性が低下する場合がある。また、前記上限値より多いと成形収縮率及びアニール処理前後の寸法変化率が大きくなり、内部応力発生の原因となりうることから、シャフト圧入時及びフュージング時にコンミテーターにクラックが発生する場合がある。
レゾール型フェノール樹脂は、成形材料全体に対して5〜40重量%配合することが好ましく、特に10〜30重量%が好ましい。これにより、コンミテーターの耐熱性及び寸法安定性が向上する。配合量が15%未満では耐熱性が低下する場合があり、40重量%を超えると成形収縮率及びアニール処理前後の寸法変化率が大きくなり、内部応力発生の原因となることから、シャフト圧入時及びフュージング時にコンミテーターにクラックが発生する可能性がある。
レゾール型フェノール樹脂としては特に限定されないが、(a)ジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂と、(b)メチロール型レゾールフェノール樹脂とを併用することが好ましい。これにより、靭性により優れたジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂と、耐熱性により優れたメチロール型レゾールフェノール樹脂の両特性とを発現でき、機械的強度と耐熱性とを両立させることができる。
前記2種類のレゾール型フェノール樹脂の重量比は特に限定されないが、(a):(b)=2:1〜5:1とすることが好ましい。このように、ジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂の比率を多くして材料に靭性を付与することで、フュージング工程におけるクラックの発生を防止する効果をさらに高めることができる。
前記2種類のレゾール型フェノール樹脂の重量比は特に限定されないが、(a):(b)=2:1〜5:1とすることが好ましい。このように、ジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂の比率を多くして材料に靭性を付与することで、フュージング工程におけるクラックの発生を防止する効果をさらに高めることができる。
本発明においては、エラストマーとしてアクリロニトリルブタジエンゴムとポリビニルアセタールを配合する。アクリロニトリルブタジエンゴムとポリビニルアセタールという異なるタイプのエラストマーを併用しているので、これらの相乗作用により、一方のエラストマーを単独で配合した場合よりも、熱時特性が向上するとともに、可撓性及び靭性を高度にバランスして付与することができる。また、エラストマーを配合することで弾性率を下げることができるため、フュージング工程におけるクラックをより効果的に防止することができる。
アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールの配合量としては、成形材料全体に対して、それぞれ、0.5〜6重量%配合するのが好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴムが0.5重量%未満では靭性等、上記効果が小さい場合があり、6重量%を越えると機械的強度が低下することがある。ポリビニルアセタールが0.5重量%未満では機械的強度向上が小さい場合があり、6重量%を超えると熱時特性が低下することがある。また、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリビニルアセタールの割合は、25:75〜75:25が好ましい。この範囲内で、特に可撓性及び靭性のバランスが良好である。
フェノール樹脂、特にレゾール型フェノール樹脂を含むフェノール樹脂とシリコーンゲルとエラストマーとを併用することにより、さらには、シリコーンゲルがフェノール樹脂の一部又は全部と予め溶融混練されたものである場合、熱時強度を維持しつつ弾性率を下げることができる。これにより、コンミテーターのフュージング時においても、高温状態での樹脂内部の応力発生を緩和し、クラックの発生を抑制することができる。また、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールを配合することで、成形収縮率及びアニール処理前後の寸法変化率を低減させることができる。このため、内部応力の発生を低減できる。これにより、フュージング時において、成形体に微細クラックが発生することを防ぐことができる。
本発明の成形材料には、ガラス繊維を含む無機充填材を含有することが好ましい。カラス繊維を含有することにより、成形体に高度の機械的強度を付与することができる。ガラス繊維としては、特に限定されないが、平均繊維径が10〜15μmのものが好ましい。また、平均繊維長は1〜3mmのものが好ましい。これにより、成形材料化段階での作業性を向上させ、得られた成形体の機械的強度を良好なものとすることができる。平均繊維径が10μmより小さいと機械的強度の向上効果が小さくなることがある。また、15μmより大きいと、成形材料製造時に混練ロールを使用する場合は、ロールへの追従性が低下し、混練が充分に行えなくなることがある。平均繊維長が1mmより小さいと機械的強度の向上効果が小さくなる傾向があり、3mmより大きい場合は、ロール混練時に繊維が折れ、機械的強度の向上効果がこれ以上大きくならないことが多い。
ガラス繊維の配合量は、成形材料全体に対し30〜70重量%が好ましく、特に40〜50重量%が好ましい。配合量が前記下限値未満では機械的強度の向上効果が充分でないことがあり、前記上限値を越えると成形材料段階での作業性が低下することがある。
本発明の成形材料には、前記ガラス繊維と併せて、これ以外の無機充填材を配合することができる。かかる無機充填材としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、焼成クレー、未焼成クレー、ウォラストナイト、タルク、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸バリウム等を用いることができる。これらの中でも、焼成クレー、未焼成クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクが好ましく、特に未焼成クレーを用いることが好ましい。これにより、更に寸法精度を向上させることができる。
前記無機充填材の配合量は、ガラス繊維を含めて、通常、成形材料全体に対し40〜70重量%であり、好ましくは、45〜65重量%である。配合量が前記下限値未満では機械的強度の向上効果が充分でないことがあり、寸法変化も大きくなる傾向がみられる。また、前記上限値を越えると成形材料段階での作業性が低下し、相対的に樹脂分の配合量が低下することから機械的強度の低下につながることがある。
前記ガラス繊維以外の無機充填材の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体の5〜35重量%が好ましく、特に9〜25重量%が好ましい。かかる含有量が前記下限値未満であると成形体の耐熱性、寸法安定性などが充分でない場合があり、前記上限値を超えると成形材料製造時の作業性や、成形体の機械的強度が低下する場合がある。
本発明のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料には、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤、硬化助剤、顔料、エラストマー等の添加剤を添加することができる。
本発明の成形材料を製造する方法は、通常の混練方法が適用できる。すなわち、フェノール樹脂の一部又は全部、通常はノボラック型フェノール樹脂の一部又は全部をシリコーンゲルと予め溶融混練し、次いで、残りのフェノール樹脂がある場合はこのフェノール樹脂とガラス繊維及び他の無機充填材を所定の割合で配合し、さらに必要に応じて硬化助剤、顔料、離型剤を加えて混合した後、加熱混練し、冷却後粉砕して得ることができる。加熱混練は、ロール、コニーダ、ニ軸押出し機等の混練機単独あるいはロールと他の混合機との組み合わせにより行うことができる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1〜2および比較例1〜3]
表1に示した配合からなる材料を80℃の加熱ロールで15分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。実施例及び比較例の配合と特性を表1に示す。表1に示す配合量は全て重量%を表す。特性評価用試験片はコンプレッション成形により成形した。評価方法は以下の通りである。
(成形条件)
予熱温度:95〜100℃
金型温度:170〜175℃
硬化時間:3分
アニール処理:180℃、4時間
表1に示した配合からなる材料を80℃の加熱ロールで15分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。実施例及び比較例の配合と特性を表1に示す。表1に示す配合量は全て重量%を表す。特性評価用試験片はコンプレッション成形により成形した。評価方法は以下の通りである。
(成形条件)
予熱温度:95〜100℃
金型温度:170〜175℃
硬化時間:3分
アニール処理:180℃、4時間
(表1の注)
1.原材料
(1)シリコーンゲル含有ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製 PR−54529(数平均分子量1000、ヘキサメチレンテトラミン含有)。シリコーンゲルはα−ゲル(ジェルテック製)を使用し、ノボラック型フェノール樹脂と溶融混練した。シリコーンゲル含有率はノボラック型フェノール樹脂との合計量に対して5重量%である。
(2)ジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂:以下の方法にて製造した。
還流コンデンサー撹拌機、加熱装置、真空脱水装置を備えた反応釜内に、フェノール(P)とホルムアルデヒド(F)とをモル比(F/P)=1.7で仕込み、これに酢酸亜鉛をフェノール100重量部に対して0.5重量部添加した。この反応系のpHを5.5に調整し、還流反応を3時間行った。その後、真空度100Torr、温度100℃で2時間水蒸気蒸留を行って未反応フェノールを除去し、さらに、真空度100Torr、温度115℃で1時間反応させ、数平均分子量800のジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂(固形)を得た。
1.原材料
(1)シリコーンゲル含有ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製 PR−54529(数平均分子量1000、ヘキサメチレンテトラミン含有)。シリコーンゲルはα−ゲル(ジェルテック製)を使用し、ノボラック型フェノール樹脂と溶融混練した。シリコーンゲル含有率はノボラック型フェノール樹脂との合計量に対して5重量%である。
(2)ジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂:以下の方法にて製造した。
還流コンデンサー撹拌機、加熱装置、真空脱水装置を備えた反応釜内に、フェノール(P)とホルムアルデヒド(F)とをモル比(F/P)=1.7で仕込み、これに酢酸亜鉛をフェノール100重量部に対して0.5重量部添加した。この反応系のpHを5.5に調整し、還流反応を3時間行った。その後、真空度100Torr、温度100℃で2時間水蒸気蒸留を行って未反応フェノールを除去し、さらに、真空度100Torr、温度115℃で1時間反応させ、数平均分子量800のジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂(固形)を得た。
(3)メチロール型レゾールフェノール樹脂:住友ベークライト(株)製 PR−51723(数平均分子量450)
(4)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製 A-1082(数平均分子量850)
(5)ガラス繊維:日本板硝子(株)製 RES03−BM38(平均線維径11μm、平均繊維長3mm)
(6)未焼成クレー:白石工業(株)製 カオブライト(325メッシュパス)
(7)アクリロニトリルブタジエンゴム:(株)JSR製 PNC−38
(8)ポリビニルブチラール:積水化学工業(株)製 エスレックBX−5(重合度2500)
なお、上記(1)〜(4)に示したフェノール樹脂の数平均分子量は、GPC測定によりフェノール換算で算出したものである。
(4)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製 A-1082(数平均分子量850)
(5)ガラス繊維:日本板硝子(株)製 RES03−BM38(平均線維径11μm、平均繊維長3mm)
(6)未焼成クレー:白石工業(株)製 カオブライト(325メッシュパス)
(7)アクリロニトリルブタジエンゴム:(株)JSR製 PNC−38
(8)ポリビニルブチラール:積水化学工業(株)製 エスレックBX−5(重合度2500)
なお、上記(1)〜(4)に示したフェノール樹脂の数平均分子量は、GPC測定によりフェノール換算で算出したものである。
2.評価方法
(1)成形収縮率、曲げ強さ:JIS K 6911に基づいて行った。
(2)破壊靭性試験(図1参照)
80×7×14mmの大きさで、中央下部に2×7×7mmの溝2を有し、その中心線上に鋭い切り込み3(長さ:7mm(全幅)、深さ:約2mm)を有する試験片1を、4,5を支点とし、6を加重点とする3点曲げ試験で破壊させて、この破壊荷重から破壊靭性値KC、靭性破壊エネルギーGCを求めた。以下に、KC、GCを求める式を示す。
破壊靭性値(クラックの成長に対する抵抗値)
KC=Pmax・S/(B・W1.5)[N/m1.5]
靭性破壊エネルギー(クラックの成長における破壊エネルギーの吸収量)
GC=(KC)2/E [J/m2]
Pmax:最大荷重(N)、S:支点間距離(B×4.2mm)、B:試験片の幅(7mm)、
W:試験片の高さ(14mm)、E:曲げ弾性率(MPa)
(1)成形収縮率、曲げ強さ:JIS K 6911に基づいて行った。
(2)破壊靭性試験(図1参照)
80×7×14mmの大きさで、中央下部に2×7×7mmの溝2を有し、その中心線上に鋭い切り込み3(長さ:7mm(全幅)、深さ:約2mm)を有する試験片1を、4,5を支点とし、6を加重点とする3点曲げ試験で破壊させて、この破壊荷重から破壊靭性値KC、靭性破壊エネルギーGCを求めた。以下に、KC、GCを求める式を示す。
破壊靭性値(クラックの成長に対する抵抗値)
KC=Pmax・S/(B・W1.5)[N/m1.5]
靭性破壊エネルギー(クラックの成長における破壊エネルギーの吸収量)
GC=(KC)2/E [J/m2]
Pmax:最大荷重(N)、S:支点間距離(B×4.2mm)、B:試験片の幅(7mm)、
W:試験片の高さ(14mm)、E:曲げ弾性率(MPa)
(3)フュージング試験
(a)コンミテーター仕様(図2、図3参照)
・寸法:外径(D1)30mm、ツバ部径(D2)45mm、高さ(H)30mm
・銅セグメント数:29極
(b)フュージング条件
・図2に示すように、銅セグメント11に幅2mm、深さ4mmの溝12を形成し、この溝に2本のリード線(径2.1mm)13を挿入した。
・図3に示すように、コンミテーター成形体21とそのツバ部22の上記銅セグメントに主電極23と副電極24を当接し、主電極23に荷重(1200N)を加え、通電した。
・電流値は、開始時(1極目)を2.80kAとし、終了時(29極目)で2.40kAとなるように、徐々に電流値を下げて実施した。通電時間は、各セグメント0.5秒とした。
(c)フュージング後のクラックの有無
主電極23の当接部及び副電極24の当接部を切断し、これらの断面(A−A、B−B)をマイクロスコープ(倍率50倍)によりクラックの有無を観察した。
表1から明らかなように、実施例1、2はいずれも、フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリビニルアセタール、およびガラス繊維を含む無機充填材を所定量配合した本発明の成形材料であり、これらから得られた成形体は、破壊靭性値及び破壊吸収エネルギーが良好であることから靭性に優れ、フュージング時にクラックの発生がなく、耐熱性に優れたものとなった。一方、比較例1〜3は、アクリロニトリルブタジエンゴムまたはポリビニルアセタール、あるいはその両方を使用していないので、フュージング時のクラックの発生がみられた。
[実施例11〜14および比較例11〜13]
表2に示した配合からなる材料を90℃の加熱ロールで15分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。実施例及び比較例の配合と特性を表2に示す。表2に示す配合量は全て重量%を表す。特性評価用試験片はトランスファ成形により成形した。評価方法は以下の通りである。
(成形条件)
予熱温度:95〜100℃
金型温度:170〜175℃
硬化時間:3分間
アニール処理:なし
表2に示した配合からなる材料を90℃の加熱ロールで15分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。実施例及び比較例の配合と特性を表2に示す。表2に示す配合量は全て重量%を表す。特性評価用試験片はトランスファ成形により成形した。評価方法は以下の通りである。
(成形条件)
予熱温度:95〜100℃
金型温度:170〜175℃
硬化時間:3分間
アニール処理:なし
(表2の注)
1.原材料
・ レゾール樹脂:上記と同じジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂を使用。
・ 未焼成クレー:(株)ECC製、ECKALITE(325メッシュパス)
その他の原材料は、表1において使用したものと同じある。
1.原材料
・ レゾール樹脂:上記と同じジメチレンエーテル型レゾールフェノール樹脂を使用。
・ 未焼成クレー:(株)ECC製、ECKALITE(325メッシュパス)
その他の原材料は、表1において使用したものと同じある。
2.評価方法
(1)シャルピー衝撃強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、熱時曲げ強さ、成形収縮率:JIS K 6911に基づいて測定した。
(2)成形後外径収縮率:図1に示す円筒型試験片を成形し、試験片の外径を測定することで、金型からの変化率を求めた。試験片の形状をコンミテーターの形状により近づけたことから、外径収縮率について前記成形収縮率よりも精度の高い評価となったと考えられる。
(1)シャルピー衝撃強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、熱時曲げ強さ、成形収縮率:JIS K 6911に基づいて測定した。
(2)成形後外径収縮率:図1に示す円筒型試験片を成形し、試験片の外径を測定することで、金型からの変化率を求めた。試験片の形状をコンミテーターの形状により近づけたことから、外径収縮率について前記成形収縮率よりも精度の高い評価となったと考えられる。
表2から明らかなように、実施例11ないし14は、フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリビニルアセタール、およびガラス繊維を含む無機充填材を所定量配合した本発明の成形材料であり、機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、熱時強度が向上し、成形収縮が低減していた。また靭性については、曲げ強さが低下する場合があるものの曲げ弾性率も低下するため、結果的に歪みに対する許容量が大きくなり靭性が向上したといえる。一方、比較例11は、シリコーンゲルを使用せず、エラストマーとしてアクリロニトリルブタジエンゴムを使用したものであるが、曲げ弾性率が高く、熱時の強度も低いものであった。比較例12は、シリコーンゲルを使用せず、エラストマーとしてアクリロニトリルブタジエンゴムとポリビニルアセタールを使用したものであるが、特に曲げ弾性率が高く、成形収縮の大きいものであった。比較例13は、実施例14に対して、エラストマーを配合しないものであるが、強度(常温、熱時)が低下し、曲げ弾性率が高く、成形収縮が大きいものであった。
本発明は、フェノール樹脂、シリコーンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビアセタールとを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、また、本発明は、さらにガラス繊維を含む無機充填材を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、機械的強度を実用的なレベルに維持しつつ、成形収縮率を低減し、寸法安定性に優れており、高い破壊靭性値を有している。さらに、コンミテーターに用いられたとき、厳しいフュージング条件下においてもクラックが発生せず、他の特性に影響を与えることなく耐熱性に優れたコンミテーター成形体を得ることができる。
さらに、前記フェノール樹脂の一部又は全部とシリコーンゲルを予め溶融混練することにより、上記の特性をより高度のものとすることができる。従って、小型モーターに使用されるコンミテーターや処理条件の厳しいフュージング工程が要求されるコンミテーター用として好適である。
1 破壊靭性試験片
2 溝部
3 鋭い切り込み
4,5 支点
6 荷重点
11 銅セグメント
12 溝
13 リード線
21 コンミテーター成形体
22 ツバ部
23 主電極
24 副電極
2 溝部
3 鋭い切り込み
4,5 支点
6 荷重点
11 銅セグメント
12 溝
13 リード線
21 コンミテーター成形体
22 ツバ部
23 主電極
24 副電極
Claims (8)
- フェノール樹脂、シリコ−ンゲル、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
- シリコーンゲルがフェノール樹脂の一部又は全部と予め溶融混練されたものである請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
- レゾール型フェノール樹脂を含有する請求項1または2に記載のフェノール樹脂成形材料。
- シリコーンゲルの割合が、フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量100重量部に対し、0.05〜15重量部である請求項1ないし3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料において、さらにガラス繊維を含む無機充填材を含有するフェノール樹脂成形材料。
- 無機充填材は、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクの中から選ばれた1種以上とを含むものである請求項5に記載のフェノール樹脂成形材料。
- フェノール樹脂とシリコーンゲルの合計量が、成形材料全体に対して20〜50重量%である請求項1ないし6のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
- アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリビニルアセタールの配合量が、成形材料全体に対してそれぞれ0.5〜6重量%である請求項1ないし7のいずれかに記載のコンミテーター用フェノール樹脂成形材料。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003336874A JP2004277695A (ja) | 2002-09-27 | 2003-09-29 | フェノール樹脂成形材料 |
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JP2006257114A (ja) * | 2005-03-15 | 2006-09-28 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | コンミテータ用フェノール樹脂成形材料 |
-
2003
- 2003-09-29 JP JP2003336874A patent/JP2004277695A/ja active Pending
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