JP2005075698A - ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】 酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体を製造する方法であって、(1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製する、(2)上記工程で副生成した塩を除去する、(3)上記前駆体懸濁液に基材を入れ、水熱反応を行う、(4)上記(1)〜(3)により、表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合体を合成する、ことを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合体の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、水熱反応を利用して、酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩をコーティングした無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体を合成する方法に関するものである。
本発明は、酸化チタンを基材として利用した光触媒の技術分野において、水熱反応を用いて酸化チタンの表面に無機ケイ酸塩膜がコーティングされた酸化チタン複合体を合成する新規合成方法を提供するものであり、該方法によって合成された酸化チタン複合体は、耐水性、耐熱性、耐腐食性、イオン交換能や吸着能に優れ、例えば、その高比表面積を利用した有害汚染物質吸着剤、脱臭剤、触媒担体、居室内や車内等の生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節材、悪臭の除去や空気中の有害物質又は汚れの分解除去、廃水処理や浄水処理、あるいは水の殺菌や殺藻等を行うための環境浄化材料として使用可能であり、また、有機繊維やプラスチック等に添加練り込み等に応用可能な、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合体の新規製造方法、及び該方法で合成された新しいタイプの光触媒材料を合成し、提供するものとして有用である。
近年、居住空間や作業空間での悪臭や、自動車の排気ガス等の有害物質による汚染が深刻な問題となっている。また、今日、生活排水や産業廃水等による水質汚染、特に、現在行われている活性汚泥法等の水処理法では処理が難しい有機塩素系の溶剤やゴルフ場で使用される農薬等による水源の汚染等が、広範囲に進行しており、それらによる環境汚染が重大な社会問題となっている。
従来、悪臭を防止する方法あるいは空気中の有害物質を除去する方法として、例えば、酸やアルカリ等の吸収液や吸着剤等にそれらを吸収あるいは吸着させる方法がよく行われているが、これらの方法は、廃液や使用済みの吸着剤の処理が問題であり、それにより二次公害を起こす恐れがある。また、芳香剤を使用して悪臭を隠ぺいする方法もあるが、この種の方法は、芳香剤の臭いが食品に移ったり、あるいは芳香剤自体の臭いによる被害が出る恐れがある等の欠点を持っている。
一方、近年、酸化チタン光触媒により有機物を分解、除去する方法が種々研究されている。酸化チタンに光を照射すると、強い還元作用を持つ電子と強い酸化作用を持つ正孔とが生成し、接触してくる分子種を酸化還元作用により分解する。酸化チタンのこのような作用、すなわち光触媒作用を利用することによって、例えば、水中に溶解している有機溶剤、農薬や界面活性剤等の環境汚染物質、空気中の有害物質や悪臭等を分解除去することができる。この方法は、酸化チタンと光を利用するだけで繰り返し利用することができ、反応生成物は、無害な炭酸ガス等であり、微生物を用いる生物処理等の方法に比べて、温度、pH、ガス雰囲気、毒性等の反応条件の制約が少なく、しかも生物処理法では処理しにくい有機ハロゲン化合物や有機リン化合物のようなものでも容易に分解・除去できるという長所を持っている。
しかし、これまで行われてきた酸化チタン光触媒による有機物の分解、除去の研究では、一般に、光触媒として酸化チタンの粉末がそのまま用いられており、使用後の光触媒の回収が困難であること、取扱いや使用が難しいこと、等の問題があり、なかなか汎用性のある実用化技術を開発することができなかった。
そこで、例えば、酸化チタン光触媒を、取扱いの容易な繊維やプラスチックス等の媒体に練り込んで使用すること等が試みられたが、その強力な光触媒作用によって有害有機物や環境汚染物質だけでなく、繊維やプラスチック自身も分解され、それらが極めて劣化しやすいため、酸化チタン光触媒は、繊維やプラスチックスに練り込んだ形での使用は不可能であった。また、酸化チタン光触媒を抗菌、抗かび材料として用いる場合、流水下等では、菌が光触媒に付着しにくいため、効果が発揮しにくく、効率が悪いという問題があった。
従来、光触媒とアルミノ珪酸塩等を組み合わせることが種々行われており、例えば、光触媒含有アルミノ珪酸塩粒子を製造する方法(特許文献1)、光触媒粒子を光不活性物質(珪酸、アルミニウム等)からなる多孔質壁で内包した光触媒粉体(特許文献2)、チタニア粒子の表面に光触媒として不活性なセラミックス(アルミナ、シリカ等)を島状に担持した光触媒粒子(特許文献3)、光触媒含有アルミノ珪酸塩粒子とその製造方法(特許文献4)、無機コーティング剤(特許文献5)、ケイ酸塩含有シート(特許文献6)、光触媒性親水性コート剤(特許文献7)、防汚機能を有する目地体(特許文献8)、等が提案されている。しかし、従来、水熱反応を利用してケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合体を合成することは、行われておらず、また、例えば、水熱反応を用いてアロフェン又はイモゴライトを担持させた酸化チタン複合体を合成することも全く知られていない。
特開2001−97713号公報 特開平10−5598号公報 特開平9−225319公報 特開平11−076835号公報 特開平11−092689号公報 特開平11−010781公報 特開2001−089706号公報 特開2001−026992号公報
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、悪臭の除去や、空気中の有害物質又は汚れの分解除去、廃水処理や浄水処理、抗菌や抗かび等、環境の浄化を効果的、かつ経済的で安全に行うことができ、しかも、有機繊維やプラスチック等の媒体に練り込み等により添加して使用した場合でも、媒体の劣化を生ずることなく耐久性の面からも優れた特性を有する、新しい環境浄化材料及びその製造方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、光触媒として不活性で雑菌等を吸着する性質を持ち、かつ多孔質であるケイ酸塩を酸化チタンの回りに被覆することにより、この酸化チタンが持つ光触媒機能を損なうことなく、媒体等に添加して使用する場合の耐久性を高め得ることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
本発明は、酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、多孔質無機ケイ酸塩をコーティングした新規酸化チタン複合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体を製造する方法であって、
1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製する、
2)上記工程で副生成した塩を除去する、
3)上記前駆体懸濁液に基材を入れ、水熱反応を行う、
4)上記1)〜3)により、表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合体を合成する、
ことを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体の製造方法。
(2)基材が、酸化チタン粒子であることを特徴とする、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(3)無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩であることを特徴とする、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(4)酸化チタンの結晶形がアナターゼであることを特徴とする、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(5)溶液濃度がそれぞれ1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物溶液と、1mmol/l〜10000mol/lのアルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物溶液を混合する、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(6)ケイ素/アルミニウムあるいは遷移金属化合物のモル比率が0.1〜5.0である前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(7)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物水溶液を分速1ml〜10000lで同時混合あるいは両溶液を急速混合して混合溶液を調製する、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(8)混合溶液の液性をpH3からpH8に調整する、前記(6)に記載の複合体の製造方法。
(9)凝集阻止剤として、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール又は界面活性剤の水溶性あるいは非水溶性の試剤を添加する、前記(6)に記載の複合体の製造方法。
(10)得られた前駆体懸濁液を0.1〜72時間程度振盪した後、反応副生成物である塩を除去する、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(11)前駆体懸濁液に酸性溶液を添加してpH3から6の弱酸性に調整し、生成されるケイ酸塩の形態を制御する、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(12)反応温度50〜130℃、反応時間12〜240時間の条件で、懸濁液の水分が蒸発しない方法で水熱反応を行う、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(13)反応終了後の懸濁液にアルカリ性水溶液を添加して溶液の液性をpH8〜12程度に調整し、生成物をゲル状物質として凝集させて回収する、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
(14)窒素吸着による比表面積が10m2
/g以上である複合体を合成する、前記(1)に記載の複合体の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明では、酸化チタンをコーティングするための出発原料として、ケイ素化合物と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物が用いられる。ケイ素源として使用される試剤は、モノケイ酸であればよく、具体的には、例えば、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸アルキル、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素(エアロジルなど)などが好適なものとして挙げられる。これらのケイ酸化合物は1種又は2種以上を併用して使用することができる。上記ケイ酸塩分子集合体と結合させるアルミニウム源としては、アルミニウムイオンであればよく、具体的には、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルキル化合物などのアルミニウム化合物が好適なものとして挙げられる。
また、遷移金属化合物源としては、それらのイオンであればよく、例えば、バナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウムなどの遷移金属化合物、例えば、それらの塩化物、硫化物、水酸化物、硝酸塩ならびに有機金属塩などが好適なものとして挙げられる。これらのアルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物は1種又は2種以上を併用して使用することができる。これらのケイ素源と、アルミニウム源あるいは遷移金属源は、上記の化合物に制限されるものではなく、それらと同効のものであれば同様に使用することができる。
本発明では、酸化チタンからなる表面を持つ基材(担持)が用いられる。この基材としては、好適には、例えば、酸化チタン粒子が例示されるが、これに制限されるものではなく、表面に酸化チタンを有する基材であれば同様に使用することができる。本発明に用いられる担体としての酸化チタン粒子は、光触媒として高性能である点で、その結晶形がアナターゼであることが好ましい。ルチルやブルッカイト、非晶質のものは光触媒としての活性が低いため、あまり好ましくないが、これらを使用することも可能である。また、酸化チタン粒子の粒径はどのような大きさでもよいが、有機繊維やプラスチック等に練り込むことを考える場合は、サブミクロンの小さなものが好ましい。
酸化チタン粒子をコーティングするための、これらの出発原料を水に溶解して、1mmol/l〜10000mol/l濃度のケイ素化合物水溶液と、1mmol/l〜10000mol/l濃度のアルミニウム化合物あるいはバナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウムなどの遷移金属化合物など1種類以上の水溶液を調製する。これらの溶液を分速1ml〜10000lで同時混合あるいは両溶液を急速混合して混合溶液を得る。この時のケイ素/アルミニウムあるいは遷移金属化合物のモル比率は0.1〜5.0程度が望ましい。モル比が0.1を下回ると副生成物としてベーマイトやギブサイトを生成し、また、5.0を上回ると非晶質シリカが副生成物として多量に生成する。
また、前駆体溶液の液性は、弱酸性から中性付近(pH3からpH8)程度が好ましく、好適にはpH6から8付近である。組成を制御する目的で、混合溶液のpHが大幅に上記領域よりずれる場合、液性を調製するために酸成分として、塩酸、硝酸ならびに硫酸をあらかじめ遷移金属化合物溶液に計算して添加しておくか、又はアルカリ成分として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ成分をあらかじめケイ素化合物溶液に計算して添加しておくことも有効である。
この時、凝集阻止剤として、ポリエチレングリコールやポリビニールアルコール、界面活性剤などの水溶性あるいは非水溶性の試剤を添加してもよい。このように、アルミニウム/遷移金属溶液にケイ素化合物溶液を混合した後、もしpHが弱酸性領域であれば、アルカリ性溶液を0.1から5ml/分の速度で滴下して、pHが中性付近になるように調製して、前駆体を生成させる。この時、前駆体の生成過程に滴下するアルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。勿論、混合段階で溶液の液性が、中性付近のpH6.5から8の領域でも、前駆体は生成される。
得られた前駆体懸濁液は、室温で0.1〜72時間程度振盪した後、反応副生成物である塩を除去する。その除去方法は特に制限されないが、好適には、例えば、限外濾過、遠心分離機による分離等で行うことができる。脱塩後、除去した量と同量の純水を添加し、良く分散させる。
生成されるケイ酸塩の形態を制御するために、この時、もし必要であれば、その前駆体懸濁液に酸性溶液を添加してpHが3から6の弱酸性溶液、好適にはpH3.5から4.5付近になるような弱酸性に調整する。この時、使用する酸性溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、過塩素酸等が挙げられる。
本発明の複合体の製造方法は、表面が酸化チタンで覆われている基材を、上記ケイ酸塩前駆体用いて、水熱反応を利用することにより、その表面に多孔質のケイ酸塩を生成させることを特徴とするものである。
所定濃度の出発溶液より調製した前駆体懸濁液に、二酸化チタン粒子を浸積させ、所定の温度で加熱して反応させる。反応温度範囲は50〜130℃であり、反応時間は12〜240時間程度である。この時、懸濁液の水分が蒸発しないような方法で加熱熟成を行えばよく、例えば、反応装置としてオートクレーブをはじめとする密閉容器や、冷却管付きマントルヒーターなどを用いることができる。好適には、100℃前後で48時間程度の条件が望ましい。
反応終了後、得られた生成物はそのままあるいは数回純水で洗浄、乾燥を行うことにより、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合体が合成される。得られた生成物は、無機化合物であるため、耐熱性が高く、比較的過酷な条件下で乾燥させることができるが、乾燥条件としては、常圧下、温度40〜100℃が好適である。
この場合は、反応終了後の懸濁液にアルカリ性水溶液を添加することで、溶液の液性をpH8〜12程度に調整し、生成物をゲル状物質として凝集させて回収してもよい。この時用いられるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。更に、その後、アルカリ溶液で凝集したゲル状生成物を遠心分離器や半透膜を用いて回収することもできる。
もし、凝集阻止剤を添加しているのであれば、乾燥終了後、200℃以下の温度でメタノール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の有機溶媒で1時間以上抽出除去するかあるいは、空気中300〜600℃、保持時間1〜8時間の加熱処理を行うことによりケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料が得られる。本発明では、無機ケイ酸塩として、好適には、アロフェン、イモゴライト及びそれらの類似物の非晶質体ないし準結晶質体が挙げられる。それにより、球状又はチューブ状のアロフェン又はイモゴライトをコーティングした酸化チタン複合体を合成し、提供することができる。
上記方法により、比表面積が10m2 /g以上であり、反応条件や、コートするケイ素化合物と他の金属元素化合物の比率を制御することにより、コーティング膜の物性を変化させた、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合体を合成することができる。
無機ケイ酸塩としてアロフェンを担持させる方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製する。それぞれをSi/Al比が0.75となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液にオルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。この時の混合溶液の液性がpH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して前駆体懸濁液を生成する。液性が酸性側に移行するときには前駆体懸濁液は透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を1ml/分程度でゆっくり添加して液性をpH6〜7付近まで調整すると、前駆体は生成する。前駆体の生成と同時に塩化ナトリウムが副生成するので、それを遠心分離などを用いて除去し、前駆体を洗浄する。前駆体濃度10mmol/lの懸濁液100mlに、酸化チタン粉末を0.1g添加し、100℃で48時間オートクレーブを用いて水熱反応を行うことで、アロフェンをコーティングした酸化チタン粉末が得られる。
次に、無機ケイ酸塩としてイモゴライトを担持させる方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製し、Si/Al比が0.70となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液にオルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。この時の混合溶液の液性がpH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して前駆体懸濁液を生成する。液性が酸性側に移行するときには前駆体懸濁液は透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を1ml/分程度でゆっくり添加して液性をpH6付近まで調製すると、前駆体は生成する。前駆体の生成と同時に塩化ナトリウムが副生成するので、それを遠心分離などを用いて除去し、前駆体を洗浄する。前駆体濃度20mmol/lの懸濁液100mlに、酸化チタン粉末を0.1g添加し、その後、塩酸を加えてpHが4になるように液性を調節する。100℃で48時間オートクレーブを用いて水熱反応を行うことで、イモゴライトをコーティングした酸化チタン粉末が得られる。アロフェン、イモゴライト両方に関してのコーティング膜の厚さは反応前駆体濃度によって制御される。
上記方法及び条件により、酸化チタンの表面にアロフェンを担持させた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体(図4) 及び酸化チタンの表面にイモゴライトを担持させた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体(図5) が合成される。アロフェンの場合では酸化チタン表面に塊状の球状アロフェン粒子凝集体が付着しているのが確認され、イモゴライトの場合は酸化チタン表面に繊維束が凝集したヒゲ状の塊が付着している様子が確認される。これらの生成物の理化学的性質を以下に示す。比表面積及びHK法による平均細孔直径がそれぞれ約200m2
/g及び約1nm程度であり、基材である酸化チタンに重量比で10wt%程度のアロフェン或いはイモゴライトがコーティングされている材料が生成する。X線的にはアナターゼのピークと、アロフェンならそのブロードなピーク、イモゴライトであるならその低角度側に特徴のあるピークが確認される。
また、本発明の複合材料は、酸化チタンをコーティングするケイ酸塩膜の骨格内部あるいは膜表面に、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、亜鉛等の金属を担持させることが可能であり、それにより、化学物質の酸化分解速度が更に大きくなり、殺菌、殺藻作用も大きくなる。
本発明の酸化チタン複合材料は、その表面のケイ酸塩化合物の多孔質性や膜厚、形状を、前駆体の組成や温度、浸積時間を変えることによって制御することができる。ケイ素や他の金属化合物の含有率を低くしたり、反応温度を低くしたり、時間を短くした場合には、基材の表面にドメイン状のケイ酸塩が生成したり、ケイ酸塩の薄膜が生成する。ケイ素や他の金属化合物の含有率を高くしたり、反応温度を高くすることによりケイ酸塩の膜厚を厚くすることができる。
こうして得られた本発明による酸化チタン複合材料は、表面が光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆され、更に、このケイ酸塩膜は、蛋白質やアミノ酸、細菌、ウイルス等を吸着する作用を有するので、表面のケイ酸塩膜が水中や空気中の細菌等を吸着することができる。そして、上記ケイ酸塩膜は、表面に細孔を有し、この細孔の底に光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっているため、蛍光灯、白熱灯、ブラックライト、UVランプ、水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等からの人工光や太陽光等はこの露出部分に照射される。そして、光の照射によって酸化チタンに生成した電子と正孔との酸化還元作用により、ケイ酸塩膜は、吸着した蛋白質やアミノ酸、細菌、ウイルス等を迅速に、かつ連続的に分解し、除去することができる。
また、本発明の酸化チタン複合体は、例えば、環境浄化材料として使用される。上記環境浄化材料を繊維や樹脂等の媒体に練り込んで使用した場合、これらの有機化合物材料と接触している部分が光触媒として不活性なセラミックスであるため、上記有機化合物の分解を生じることなく、悪臭物質や窒素酸化物、硫黄酸化物等の空気中の有害物質、あるいは水中に溶解している有機溶剤や農薬等の、環境を汚染している有機化合物を吸着し、蛍光灯、白熱灯、ブラックライト、UVランプ、水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等からの人工光や太陽光の照射によって酸化チタンに生成した電子と正孔の酸化還元作用によって迅速に、かつ連続的に分解、除去することができる。
しかも、この環境浄化材料は、光を照射するだけで、低コスト・省エネルギー的で、かつメンテナンスフリーで使用できる。そして、酸化チタン粒子上にコーティングされるケイ酸塩の内部骨格に、白金あるいはロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、鉄、亜鉛の金属を担持したものを用いた場合には、その触媒作用により、有機化合物の分解除去効果や抗菌抗黴効果等の環境浄化効果が一層増大する。
本発明による環境浄化材料の媒体としては、例えば、ポリエチレンやナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、デンプンシート等の、あらゆる種類の有機繊維やプラスチックスあるいはそれらの共重合体が適用可能である。
本発明により、(1)酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、例えば、アロフェン、又はイモゴライト等の無機ケイ酸塩がコーティングされた新規無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体を合成することができる、(2)表面を覆うケイ酸塩が多孔質であるため、細孔の底に酸化チタンが露出した状態となり、この部分において酸化チタンに光が照射される酸化チタン複合材料を提供できる、(3)光の照射によって生成した電子と正孔の酸化還元作用により、悪臭や空気中の有害物質あるいは水中に溶解している有機溶剤や農薬等の環境を汚染している有機化合物を容易に分解除去する機能を有する新規複合体を製造し、提供できる、(4)また、上記ケイ酸塩が光触媒として不活性であるため、環境浄化材料を有機繊維やプラスチックス等の媒体に練り込み等により添加して使用する場合でも、ケイ酸塩に保護されて繊維やプラスチック自身の分解を生じにくく、長期間その効果を持続させることができる、(5)更に、ケイ酸塩が雑菌等を吸着する性質を持つため、吸着した雑菌等を、光の照射により酸化チタンに生じる強力な酸化力によって確実に、しかも効率良く死滅・分解することができる、という効果が奏される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
メタケイ酸ナトリウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l水溶液を38.46ml調製し、この水溶液に1mol/l水酸化ナトリウム水溶液7.5mlを添加した。これとは別に、塩化アルミニウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l水溶液を50ml調製した。次に、塩化アルミニウム溶液にメタケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液に添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は0.75であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて脱イオン水で充分に洗浄した。得られた前駆体を1000mlの脱イオン水中に分散させた。
この前駆体懸濁液に1gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液をテフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で48時間加熱した。加熱終了後、遠心分離機により充分に洗浄を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためである。二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩はその比重が異なるため、遠心分離による分離精製が可能である。その後、電気乾燥機中で40℃常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた環境浄化材料を得た。
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた環境浄化材料は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認されるのと同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも10°付近に確認された(図1)。窒素吸着による比表面積は約200m2 /g、平均細孔直径は約1nm、全細孔容積は0.06ml/g程度の値を示した。この材料の蛍光X線分析による化学組成分析結果では、TiO2 :91.9wt%、Al2 3 :3.64wt% 、SiO2 :3.51wt%であり、10wt%程度のアルミニウムケイ酸塩が二酸化チタン基材に被覆されていることが示唆された。この時のケイ素/アルミニウム比は0.79程度であり、初期投入量にほぼ見合った組成を有していることが明らかとなった。25℃における水蒸気吸着等温線を測定した結果、相対湿度が80〜100%付近での水蒸気吸着量が増加し、最大吸着水量は23wt%程度にまで達した(図2)。
また、上記環境浄化材料を用いて染色排液の脱色を行った。モデル排液としてメチレンブルー10ppmの水溶液3mlを石英セルに入れた後、上記環境浄化材料及び参照試料をそれぞれ0.01wat%となるように投入し、脱色試験を行った。投入後30分間は暗所にて撹拌を行い、それから9WのU型UVランプを照射して30分間撹拌した。この間10分毎に試料の紫外可視吸収スペクトルを測定し、吸光度の変化を調べることによって、色素の分解率を測定し環境材料としての評価を行った。その結果を図3にグラフで示す。色素分解率が高いほど、光触媒活性が高いことを示す。その結果、UVランプ照射30分後には、参照試料のTiO2 アナターゼ粉末の色素分解率が29%であったのに対し、本発明の環境浄化材料では46%の高い分解率を示すことが明らかとなった。
100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液と150mmol/l塩化アルミニウム水溶液を125mlずつそれぞれ秤量した。塩化アルミニウム水溶液中にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で十分に撹拌した。撹拌しながら1mol/lの水酸化ナトリウムを液性がpH6になるまで1ml/分の速度で添加した。生成した前駆体を遠心分離機により脱イオン水を用いて洗浄し、前駆体濃度が20mmol/lになるように1000mlのオートクレーブ中に分散させた。
この前駆体懸濁液に1.0gの二酸化チタン(アナターゼ) 基材を投入し、十分に撹拌した後に、5mol/lの塩酸水溶液をpH4程度になるまで添加した。撹拌後にテフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で48時間の水熱反応を行った。反応終了後、アンモニアを添加して液性をpH10程度まで上昇させ、イモゴライトをゲル化し、環境浄化材料を凝集させた。脱イオン水を用いた遠心分離による洗浄を行い、基材表面に結合することができなかったイモゴライトを除去した。その後、電気乾燥機を用いて40℃常圧で乾燥し、イモゴライトでコーティングされた環境浄化材料を得た。
以上詳述したように、本発明の方法により合成される新しい酸化チタン複合材料は、基材の表面を覆うケイ酸塩膜が多孔質であって、細孔あるいはケイ酸塩ドメインの空隙を通じて、基材表面の酸化チタンに光が照射されるため、ケイ酸塩膜で覆われていないものと殆ど遜色のない光触媒作用を得ることができる。しかも、上記ケイ酸塩膜が雑菌等の汚染物質を吸着する性質を持っているため、吸着した汚染物質を上記光触媒作用によって確実、かつ効果的に分解、除去することができる。
本発明による新しい酸化チタン複合材料は、無機化合物本来の優れた耐水性、耐熱性や耐腐食性に優れるため、例えば、悪臭や煙草の煙、NOx、SOxのような、空気中に存在する有害物質の分解除去、水中に溶解している有機溶剤や農薬のような有機化合物の分解除去、廃水処理や浄水処理、汚れの防止、抗菌及び抗かび、MRSA等による院内感染の防止等、触媒担体、居室内や車内等の生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節材や、その特異な形状を利用した薬剤のマイクロカプセルや浄水用フィルター等広範な産業分野での利用が可能であり、更に環境の浄化に極めて有効である。しかも、上記酸化チタンは、塗料や化粧品、歯磨き粉等にも使用され、食品添加物としても認められているものであって、無毒、かつ安全であり、安価で耐候性や耐久性にも優れるため、経済的である。
また、上記ケイ酸塩膜が光触媒として不活性であるため、酸化チタン複合材料を有機繊維やプラスチックス等の媒体に練り込み等によって添加して使用する場合でも、媒体を劣化させなることがなく、長期間その光触媒効果を持続させることができる。したがって、本発明による酸化チタン複合材料を有機繊維やプラスチックス等の媒体に添加することにより、自動車の車内や居間、台所、トイレ等の脱臭や、廃水処理、プールや貯水の浄化だけでなく、菌や黴の繁殖防止、食品の腐敗防止等、非常に幅広い用途に適用でき、しかも、化学薬品やオゾンのような有毒な物質を使用せず、電灯の光や自然光等の光を照射するだけで、低コストで省エネルギー的、かつ安全に、メンテナンスフリーで長期間使用することができる。
更に、本発明による酸化チタン複合材料は、ケイ酸塩前駆体懸濁液に基材を投入して製造することができる。この時のケイ酸塩前駆体懸濁液の組成や反応温度、時間を変化させることによって、表面の細孔径の大きさや細孔分布の密度等を制御することができる。
本発明の一実施例に係わる、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料のX線回折図形である。 本発明の一実施例に係わる、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料の水蒸気吸着等温線である。 本発明の一実施例に係わる、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料のメチレンブルー脱色試験結果である。 本発明の一実施例に係わる、アロフェンでコーティングされた酸化チタン複合体の電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施例に係わる、イモゴライトでコーティングされた酸化チタン複合体の電子顕微鏡写真である。

Claims (14)

  1. 酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体を製造する方法であって、
    (1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製する、
    (2)上記工程で副生成した塩を除去する、
    (3)上記前駆体懸濁液に基材を入れ、水熱反応を行う、
    (4)上記(1)〜(3)により、表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合体を合成する、
    ことを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン複合体の製造方法。
  2. 基材が、酸化チタン粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  3. 無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  4. 酸化チタンの結晶形がアナターゼであることを特徴とする、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  5. 溶液濃度がそれぞれ1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物溶液と、1mmol/l〜10000mol/lのアルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物溶液を混合する、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  6. ケイ素/アルミニウムあるいは遷移金属化合物のモル比率が0.1〜5.0である請求項1に記載の複合体の製造方法。
  7. ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物水溶液を分速1ml〜10000lで同時混合あるいは両溶液を急速混合して混合溶液を調製する、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  8. 混合溶液の液性をpH3からpH8に調整する、請求項6に記載の複合体の製造方法。
  9. 凝集阻止剤として、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール又は界面活性剤の水溶性あるいは非水溶性の試剤を添加する、請求項6に記載の複合体の製造方法。
  10. 得られた前駆体懸濁液を0.1〜72時間程度振盪した後、反応副生成物である塩を除去する、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  11. 前駆体懸濁液に酸性溶液を添加してpH3から6の弱酸性に調整し、生成されるケイ酸塩の形態を制御する、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  12. 反応温度50〜130℃、反応時間12〜240時間の条件で、懸濁液の水分が蒸発しない方法で水熱反応を行う、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  13. 反応終了後の懸濁液にアルカリ性水溶液を添加して溶液の液性をpH8〜12程度に調整し、生成物をゲル状物質として凝集させて回収する、請求項1に記載の複合体の製造方法。
  14. 窒素吸着による比表面積が10m2 /g以上である複合体を合成する、請求項1に記載の複合体の製造方法。
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