JP2005068617A - ケーブル部材用ポリエステルモノフィラメント - Google Patents
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Abstract
【課題】 高ヤング率、高曲げ硬さおよび小曲げ直径の各特性を均衡に備えたケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントの提供。
【解決手段】エチレン−2,6−ナフタレート単位を85モル%以上含有するポリエステルを溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、JIS L1013に準じて測定したヤング率が10000N/mm2 以上、温度20℃、湿度65%RHの環境下でピン間隔10mm、降下速度5mm/分で3点に折り曲げた最大応力を読み取り、式:最大応力(cN)/繊度(dtex)にて算出した曲げ硬さが0.01cN/dtex以上0.30cN/dtex以下、特定の条件で測定したときの曲げ直径が28mm以下であることを特徴とするケーブル部材用ポリエステルモノフィラメント。
【選択図】 なし
【解決手段】エチレン−2,6−ナフタレート単位を85モル%以上含有するポリエステルを溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、JIS L1013に準じて測定したヤング率が10000N/mm2 以上、温度20℃、湿度65%RHの環境下でピン間隔10mm、降下速度5mm/分で3点に折り曲げた最大応力を読み取り、式:最大応力(cN)/繊度(dtex)にて算出した曲げ硬さが0.01cN/dtex以上0.30cN/dtex以下、特定の条件で測定したときの曲げ直径が28mm以下であることを特徴とするケーブル部材用ポリエステルモノフィラメント。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントに関するものである。さらに詳しくは、高ヤング率、高曲げ硬さおよび小曲げ直径の各特性を均衡に備え、光ファイバーケーブル内のテンションメンバーなどのケーブル部材として使用する際に、耐久性に優れ、ケーブル部材への加工時に湾曲、曲げによる光損失を生じることがないばかりか、ケーブル部材にフィブリル化、割れ、ささくれ等の問題を発生することがないケーブル部材用ポリエチレンナフタレート系モノフィラメントに関するものである。
近年、FTTH(fiber to the home)に使用される通信ケーブルには、多大な情報を瞬時に送受信するために光ファイバーケーブルが使用されている。そして、この光ファイバーケーブルに使用されるテンションメンバーに対する要求性能としては、光ファイバーの微妙な伸びを保護するために高ヤング率であることが挙げられ、この性能を満たす素材としては鋼線などが多く使用されているが、電柱からの引込み線に使用される光ファイバーケーブル(例えばドロップケーブル)に、鋼線をテンションメンバーとして使用した場合には、電柱からの電圧誘引が起こった際に、家庭内の電化製品が電圧により故障や破損するという問題があるため、最近ではテンションメンバーなどのケーブル材料を絶縁材料に互換する要請が高まっている。
また、FTTH用の光ファイバーケーブルは、端末になればなるほど各家庭内の集合コンセント、ターミナルおよびルーター等の接続機器(交換機)に直接接続されるため、光ファイバーケーブル自体を小さく曲げるのが可能であること、つまり曲げ直径が小さいことに対する要請も高くなっている。
さらに、光ファイバーケーブルの接続時には、テンションメンバーをボルトにて固定しており、作業性が悪いことから、テンションメンバー自身を結ぶことで作業を軽減すること、つまりテンションメンバーの結節強度を改善することへの要請が高まっている。
このような要請を満たすテンションメンバーに使用するケーブル部材としては、ガラスロッド(GFRP)やケブラーロッド(KFRP)などの絶縁材料(例えば、特許文献1参照)が挙げられるが、これらのGFRPやKFRPを90°または180°に曲げると、その部材が割れたり折れたりするため、光ファイバーケーブルの曲げ直径が大きくなり、ましてやテンションメンバーを結ぶこともできないことから、他の材料の選択が必要となってきている。
一方、ポリエステル繊維は、その優れた物理特性・化学特性から種々の産業資材として使用されているが、ポリエステル繊維の中でも代表的なポリエチレンテレフタレートモノフィラメントの製造方法(例えば、特許文献2および3参照)においては、上述の高ヤング率化の要請に対し、延伸倍率を上げることにより対処しているが、この場合には、延伸切れなどの操業性の悪化が顕著に発現してしまうため、高ヤング率化には限界があった。
また、ポリエステル繊維の曲げ直径を小さくするという要請に対しては、延伸倍率を下げることで引張伸度を上げる等の手法がとられているが、この場合には高ヤング率を維持することができなかった。
つまり、ポリエステル繊維の高ヤング率化と小曲げ直径化とは二律背反の関係にあり、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントにおいて高ヤング率と小曲げ直径を同時に満足するには限界があった。
さらに、端末の光ファイバーケーブルを曲げる時には、曲げの応力が光ファイバーケーブルの一箇所に集中しないように、テンションメンバーに腰(曲げ硬さ)を持たせて、曲げによる伝送損失(マイクロベンディンググロス)が生じないようにすることについての要望もあることから、テンションメンバーに対する要求性能として高曲げ硬さも必要とされている。
ポリエステル繊維に対する曲げ硬さの要請に対しては、高ヤング率化の手法が挙げられるが、上述したように高ヤング率化をしようとすると曲げ直径が大きくなる。また、繊維の糸径(外径)を大きくする方法もあるが、この場合には光ファイバーケーブル自体が大径化することにより、曲げ直径が大きくなる。
つまり、ポリエステル繊維の高曲げ硬さ化と小曲げ直径化とは二律背反の関係にあり、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントにおいて高曲げ硬さと小曲げ直径とを同時に満足するには限界があった。
一方最近では、ポリエステル繊維の一つとして、ポリエチレンナフタレート繊維やモノフィラメント(例えば特許文献4〜6参照)が提案されているが、これらはいずれもマルチフィラメントや線径の小さいモノフィラメントに関するものであり、汎用的な繊度や直径を有するモノフィラメントの分野に言及するものではないばかりか、高ヤング率、高曲げ硬さおよび小曲げ直径を同時に満たすモノフィラメントについては何ら開示をするものではなかった。
さらに、ポリエチレンナフタレートモノフィラメントからなるケーブル部材(例えば、特許文献6参照)についても提案されているが、このケーブル部材は、高ヤング率については満たすものの、高曲げ硬さや小曲げ直径に関する改良については何ら言及するものではなかった。
特開2000−171673号公報
特開平6−220718号公報
特開平10−168661号公報
特許第2948006号公報
特開平11−279833号公報
特開2002−266164号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、高ヤング率、高曲げ硬さおよび小曲げ直径の各特性を均衡に具備し、光ファイバーケーブル内のテンションメンバーなどのケーブル部材として使用する際に、耐久性に優れ、ケーブル部材への加工およびケーブルの敷設時に湾曲、曲げによる光損失を生じることがないばかりか、ケーブル部材にフィブリル化、割れ、ささくれ等の問題が発生することのないケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討した結果、ポリエチレンナフタレートからなり、かつヤング率、曲げ硬さおよび曲げ直径がそれぞれ特定の範囲にあるポリエステルモノフィラメントが、通信ケーブル部材のテンションメンバー、介在線、引き裂き線等のケーブル部材として使用した際に最良の効果を発現することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を85モル%以上含有するポリエステルを溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、JIS L1013に準じて測定したヤング率が10000N/mm2 以上、温度20℃、湿度65%RHの環境下でピン間隔10mm、降下速度5mm/分で3点に折り曲げた最大応力を読み取り、式:最大応力(cN)/繊度(dtex)にて算出した曲げ硬さが0.01cN/dtex以上0.30cN/dtex以下、外径が4、8、12、16、20、24、28、32mmの8種類のパイプまたは丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけて、温度20℃、湿度65%RHの環境下で5分間静止させた後、パイプまたは丸棒からモノフィラメントを外したときに、このモノフィラメントに形状や外観の変化を生じるパイプまたは丸棒の最大外径で定義される曲げ直径が28mm以下であることを特徴とする。
また、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントにおいては、
JIS L1013に準じて測定した結節強度が0.3cN/dtex以上であること、および
外径が28mmのパイプまたは丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけて、温度85℃、湿度100%RHの環境下に24Hr静置した後のヤング率保持率が50%以上であることが、
いずれも好ましい条件として挙げられる。
JIS L1013に準じて測定した結節強度が0.3cN/dtex以上であること、および
外径が28mmのパイプまたは丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけて、温度85℃、湿度100%RHの環境下に24Hr静置した後のヤング率保持率が50%以上であることが、
いずれも好ましい条件として挙げられる。
本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、ポリエチレンテレフタレートでは到底発現し得ない高ヤング率、高曲げ硬さおよび小曲げ直径の各特性を均衡に具備するものである。したがって、光ファイバーケーブル内のテンションメンバーなどのケーブル部材として使用する際に、耐久性に優れ、ケーブル部材への加工時に湾曲、曲げによる光損失を生じることがないばかりか、ケーブル部材にフィブリル化、割れ、ささくれ等の問題を発生することがなく、容易に高次加工ができるため、テンションメンバー、介在線、引き裂き線などのケーブル部材へ展開が可能である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明でモノフィラメントの素材ポリマーとして使用するポリエチレンナフタレートポリマーとは、ポリエチレン−2,6−ナフタレート単位を85モル%以上含有するポリマーである。
なお、ポリエチレンナフタレートポリマーは、15モル%未満であれば、他のジカルボン酸成分およびジオール成分を含有することができ、他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびデカリンジカルボン酸などが、他のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族グリコール、o−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホンなどの芳香族グリコール、およびヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジフェノール類などが挙げられ、これらは2種以上を組合わせて用いることができる。
しかし、ポリエチレン−2,6−ナフタレート単位の含有量が上記の範囲未満のポリエチレンナフタレートの場合は、ポリエチレンナフタレートポリマー特有の高ヤング率が得られにくく、モノフィラメント自体の強度やタフネスが大幅に低下する傾向となる。
すなわち、ポリエチレン−2,6−ナフタレート単位が85モル%以上のポリエチレンナフタレートポリマーであれば、ケーブル部材として要求される高ヤング率、高曲げ硬さおよび小曲げ直径ばかりか、高結節強度をも満足したポリエステルモノフィラメントを得ることができる。
なお、本発明で使用するポリエチレンナフタレートポリマーには、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、フッ化リチウム、カオリン、タルク等の無機粒子、耐熱剤、耐候剤、耐光剤、耐加水分解剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、平滑剤、ワックス類、シリコーンオイル、界面活性剤、染料、顔料などの公知の添加剤成分を必要に応じて任意に添加することができる。
さらに、ポリエチレンナフタレートポリマーには、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートまたはその2種類以上の共重合またはブレンドなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6・12、ナイロン12、ナイロン6・10、ナイロン10、またはその2種類以上の共重合またはブレンドなどのポリアミド、ポリプロピレン、低密度および高密度ポリエチレン、シンジオタクチックまたはアタクチックまたはイソタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイドなどのポリサルファイド、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレンブロックコポリマーなどのスチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン・プロピレン・ジエチレンコポリマーなどのオレフィン系ゴムとポリプロピレンまたはエチレンなどのポリオレフィンとのブレンドなどのポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルエステル、ポリウレタン、ポリカボネート、ポリアリレート、エチレンテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライドなどのフッ素樹脂、およびシリコン樹脂などの他の熱可塑性樹脂やガラス繊維や炭素繊維などの補強繊維を、必要に応じて15重量%以下ブレンドして使用することもできる。
また、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントの断面形状については特に限定されるものではなく、例えば丸形、楕円形、三角・四角・六角などの多角形、星形・十・Y・H形・花びら形・6葉・8葉・13葉・帽子形などの異形断面および中空形などを挙げることができ、これらの形状を一部変更したものや合成したものでもよい。また、ケーブル部材への使用にあたっては、これらの各種の断面形状を組み合わせてもよい。
また、光ファイバーの接続には色調により光ファイバーを区分および識別することがあるので、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、色調についても特に限定するものではなく、例えば、透明、白、青、赤、黒、黄、緑、紫、橙、水色、茶、桃、黄緑などに染色または着色して用いることができる。
そして、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、直径を0.05〜4.00mm、特に0.20〜2.00mmの範囲とすることにより、ケーブル部材用モノフィラメントとしての好適な性能を発揮する。
本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、JIS L1013に準じて測定したヤング率が10000N/mm2 以上、好ましくは12000N/mm2 以上、さらに好ましくは15000N/mm2 以上であることを特徴とするものである。
なお、ヤング率が上記の範囲未満では、従来のポリエチレンテレフタレートモノフィラメントが発現する最大のヤング率とほぼ同等のレベルであるため、ポリエチレンナフタレートモノフィラメントとしての利点が得られないばかりか、ケーブル部材としての高ヤング率の要望を満たすことができないため好ましくない。
すなわち、ヤング率が10000N/mm2 以上であれば、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントでは到底到達することができなかった近年のケーブル部材の高ヤング率化の要望に対し十分に対応することができ、各種のケーブル部材用途に容易に展開が可能となるのである。
また、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、温度20℃、湿度65%RHの環境下でピン間隔10mm、降下速度5mm/分で3点に折り曲げた最大応力を読み取り、式:最大応力(cN)/繊度(dtex)にて算出した曲げ硬さが0.01cN/dtex以上0.30cN/dtex以下、好ましく0.02cN/dtex以上0.20cN/dtex以下であることも特徴とするものである。
この曲げ硬さが0.01cN/dtex未満であれば、湾曲による応力(曲げ応力)が一カ所に集中して、曲げによる光損失が大きく発生するため好ましくない。
また、曲げ硬さが0.30cN/dtexより大きい場合は、湾曲による応力により小さく曲げることができず、曲げ直径が大きくなるため好ましくない。
すなわち、曲げ硬さが0.01cN/dtex以上0.30cN/dtex以下であれば、曲げ応力が一カ所に集中せず、曲げによる光損失もなく、またケーブルの曲げ直径が小さくなり、両特性が維持できるため、FTTH等に使用されるケーブル部材に対し、有効に展開することができるのである。
さらに、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、外径が4、8、12、16、20、24、28、32mmの8種類のパイプまたは丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけて、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけ、温度20℃、湿度65%RHの環境下で5分間静止させた後、パイプまたは丸棒からモノフィラメントを外したときに、このモノフィラメントの形状や外観の変化が生じるパイプまたは丸棒の最大外径で定義される曲げ直径が28mm以下、好ましくは24mm以下、さらに好ましくは20mm以下であることも特徴とするものである。
曲げ直径が28mmより大きい場合は、GFRPやKFRPと同等の曲げ直径であり、ケーブル部材としての要求を満たすことができないため好ましくない。
すなわち、曲げ直径が28mm以下であれば、光ファイバーケーブルが曲げられた状態でも光ファイバーの微妙な伸びに耐えられるテンションメンバーとしての役割を担うことができ、曲げに対しての光損失もなく、光ファイバーケーブル部材に対し容易に展開することができるのである。
なお、曲げ直径評価におけるモノフィラメントの形状や外観の変化とは、フィブリル化や割れ、色相の変化等の目視で判断できる変化をいい、使用するパイプまたは丸棒は、外径が4、8、12、16、20、24、28、32mmの8種類であり、それらの材質については特に限定しないが、例えばステンレス、セラミック、樹脂等が挙げられ、なかでもステンレスが好ましい。
また、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、上記の三特性に加えて、JIS L1013に準じて測定した結節強度が0.3cN/dtex以上であることがより好ましい。
結節強度が上記範囲未満の場合には、GFRPに代表される剛直な繊維やロッド等と同様な特性を示すことにより、モノフィラメント自体を結ぶことができないため、ケーブル部材への展開が難しくなることがあるからである。
つまり、結節強度が0.3cN/dtex以上であれば、モノフィラメントが柔軟に湾曲し、モノフィラメント自身が結べることになるため、光ファイバーケーブルの施工時(接続時)の作業の軽減が可能になり、ケーブル部材への展開が一層容易になるのである。
さらに、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントにおいては、上記の四特性に加えて、JIS L1 013に準じて測定した180℃での乾熱収縮率が8%以下、好ましくは5%以下であること、JIS L1013に準じて測定した引掛強度が0.5cN/dtex以上、特に0.8cN/dtex以上であることの二特性を満たすものであることがさらに好ましい。
上記の特性を有する本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、通常の溶融紡糸、冷却、延伸および熱処理を経て製造することができるが、中でも溶融紡糸温度を290〜310℃とし、冷却水槽で60〜90℃で冷却した後、延伸倍率4.5〜9.0倍に一段または二段延伸し、次いで弛緩熱処理する方法により好ましく製造することができる。
かくして得られる本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、上記の特性を満たすことによって、光ファイバーケーブル内のテンションメンバーなどのケーブル部材として使用する際に、耐久性に優れ、ケーブル部材への加工およびケーブルの敷設時に湾曲、曲げによる光損失を生じることがないばかりか、ケーブル部材にフィブリル化、割れ、ささくれ等の問題が発生することがないという優れた効果を発現する。
すなわち、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、これを外径が24mmのパイプまたは丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけ、温度85℃・湿度100%RHの環境下に24Hr置いた後のヤング率保持率が50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であるという優れた耐久性を発現する。
このヤング率保持率が上記範囲未満の場合は、各種ケーブルを小さく曲げた場合でも光ファイバーケーブルの微妙な伸びに耐えられるテンションメンバー等の役割が不十分となるため好ましくない。
また、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、ケーブル部材への加工時やそれを使用したケーブルの敷設時に湾曲、曲げによる光損失を生じることがないばかりか、ケーブル部材にフィブリル化、割れ、ささくれ等の問題が発生することがないため、加工性が良好で、施工者の手や指を傷付けることがなく、安全性にも優れるという優れた効果を発現することから、容易に高次加工ができるため、各種の通信ケーブル部材として展開することができる。
このケーブル部材としての種類には特に制限はなく、光ファイバ通信ケーブル内の光ファイバの補強などを目的に使用される補強線またはテンションメンバー、さらには光ファイバの隙間を埋める目的に使用される介在線およびケーブルの外層被覆を剥離するために用いられる引き裂き線などが挙げられるが、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、これらの各種用途に有効に展開することができる。
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、上記および下記に記載の本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントの各種特性の測定方法は次の方法にしたがって行なった。
[直径(mm)]
デジタルマイクロメーター(MITUTOYO製)を用いて、モノフィラメントの長さ方向に5回測定した平均値。
デジタルマイクロメーター(MITUTOYO製)を用いて、モノフィラメントの長さ方向に5回測定した平均値。
[ヤング率 (N/mm2 )]
JIS L1013 初期引張抵抗度の項目の見かけヤング率に準じて測定した。
JIS L1013 初期引張抵抗度の項目の見かけヤング率に準じて測定した。
[曲げ硬さ(cN/dtex)]
温度20℃湿度65%RHの環境下でピン間隔10mm、降下速度5mm/分で3点に折り曲げた最大応力を読み取り、次式にて算出した。なお、測定頻度は10回とし平均値を測定値とした。
温度20℃湿度65%RHの環境下でピン間隔10mm、降下速度5mm/分で3点に折り曲げた最大応力を読み取り、次式にて算出した。なお、測定頻度は10回とし平均値を測定値とした。
曲げ硬さ=最大応力(cN)/繊度(dtex)
[曲げ直径(mm)]
外径が4、8、12、16、20、24、28、32mmの8種類のステンレス丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけて、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけ、温度20℃湿度65%RHの環境下で5分間静止させた後、丸棒からモノフィラメントを外したときに、このモノフィラメントの形状や外観の変化が生じる丸棒の最大外径を読み取り、その数値を曲げ直径とした。なお、モノフィラメントの形状や外観の変化は、フィブリル化や割れや色相の変化等を目視で観察する変化をいう。また測定頻度は各5回とし、外径の数値の最大値を測定値とした。
[曲げ直径(mm)]
外径が4、8、12、16、20、24、28、32mmの8種類のステンレス丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけて、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけ、温度20℃湿度65%RHの環境下で5分間静止させた後、丸棒からモノフィラメントを外したときに、このモノフィラメントの形状や外観の変化が生じる丸棒の最大外径を読み取り、その数値を曲げ直径とした。なお、モノフィラメントの形状や外観の変化は、フィブリル化や割れや色相の変化等を目視で観察する変化をいう。また測定頻度は各5回とし、外径の数値の最大値を測定値とした。
[結節強度(cN/dtex、%)]
JIS L1013 の結節強さ項目に準じて測定した。
JIS L1013 の結節強さ項目に準じて測定した。
[ヤング率保持率(%)]
直径が24mmのステンレス丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけたまま、温度85℃・湿度100%RHの水中に24Hr置いた後のモノフィラメントをヤング率をJIS L1013に準じて測定し、次式にて算出した。なお測定頻度は5回とし、平均値を測定値とした。
直径が24mmのステンレス丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけたまま、温度85℃・湿度100%RHの水中に24Hr置いた後のモノフィラメントをヤング率をJIS L1013に準じて測定し、次式にて算出した。なお測定頻度は5回とし、平均値を測定値とした。
ヤング率保持率=処理後のヤング率(N/mm2 )/処理前のヤング率(N/mm2 )×100
[ケーブルへの加工性]
モノフィラメントの表面に、ポリエチレンを厚さ0.1mmで溶融被覆した後、これを通常の方法によりケーブル部材に加工する際のモノフィラメントの湾曲度合を目視で観察することにより、次の三規準で評価した。
[ケーブルへの加工性]
モノフィラメントの表面に、ポリエチレンを厚さ0.1mmで溶融被覆した後、これを通常の方法によりケーブル部材に加工する際のモノフィラメントの湾曲度合を目視で観察することにより、次の三規準で評価した。
○・・モノフィラメントに湾曲が全くなく、ケーブル部材として好適に使用で きる、
△・・モノフィラメントに湾曲が多少認められるが、ケーブル部材として使用 することはできる、
×・・モノフィラメントに湾曲が多く認められ、ケーブル部材として使用でき ない。
△・・モノフィラメントに湾曲が多少認められるが、ケーブル部材として使用 することはできる、
×・・モノフィラメントに湾曲が多く認められ、ケーブル部材として使用でき ない。
[原料A]
エチレン−2,6ナフタレート単位が92モル%であるポリエチレンナフタレート樹脂(東洋紡績社製NS653A)。
エチレン−2,6ナフタレート単位が92モル%であるポリエチレンナフタレート樹脂(東洋紡績社製NS653A)。
[原料B]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(東レ社製T750M)。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(東レ社製T750M)。
[実施例1]
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径1.7mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径1.7mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
得られた未延伸糸を120℃で4.8倍に1段延伸した後、200℃で1.05倍に熱処理し、速度130m/分で巻取ることによりポリエチレンナフタレートモノフィラメントを製造した。
得られたポリエチレンナフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表1に示す。
[実施例2]
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径3.5mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径3.5mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
得られた未延伸糸120℃で4.8倍に1段延伸した後、200℃で1.05倍に熱処理し、速度90m/分巻取ることによりポリエチレンナフタレートモノフィラメントを製造した。
得られたポリエチレンナフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表1に示す。
[実施例3]
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径3.7mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径3.7mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
得られた未延伸糸を120℃で4.8倍に1段延伸した後、200℃で1.05倍に熱処理し、速度50m/分で巻取ることによりポリエチレンナフタレートモノフィラメントを製造した。
得られたポリエチレンナフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表1に示す。
[実施例4]
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径5.5mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径5.5mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
得られた未延伸糸を120℃で4.8倍に1段延伸した後、200℃で1.05倍に熱処理し、速度40m/分で巻取ることによりポリエチレンナフタレートモノフィラメントを製造した。
得られたポリエチレンナフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表1に示す。
[実施例5]
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径17mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径17mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
得られた未延伸糸を120℃で4.8倍に1段延伸した後、200℃で1.05倍に熱処理し、速度25m/分で巻取ることによりポリエチレンナフタレートモノフィラメントを製造した。
得られたポリエチレンナフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表1に示す。
実施例1において、得られた未延伸糸を140℃で4.0倍に1段延伸した後、240℃で0.95倍に弛緩熱処理に変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエチレンナフタレートモノフィラメントを製造した。
この場合には、延伸点が不安定のため均一なモノフィラメントが得られなかったが、少量得られたポリエチレンナフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表2に示す。
表2から明らかなように、この場合に得られたモノフィラメントは、ヤング率、曲げ硬さおよび結節強度を満たすことができず、本発明が目的とする改良効果が得られなかった。
[比較例2]
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径1.5mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
原料Aを通常のエクストルーダー型紡糸機で290℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径1.5mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度64℃の水冷却浴槽で冷却した。
得られた未延伸糸を140℃で6.0倍、180℃で1.5倍、220℃で1.11倍に3段延伸した後、240℃で0.98倍に弛緩熱処理し、速度130m/分で巻取ることによりポリエチレンナフタレートモノフィラメントを製造した。 得られたポリエチレンナフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表2に示す。
表2から明らかなように、この場合に得られたモノフィラメントは、延伸倍率が高すぎたために、曲げ硬さおよび曲げ半径を満たすことができず、本発明が目的とする改良効果が得られなかった。
[比較例3]
原料Bを通常のエクストルーダー型紡糸機で280℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径0.7mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度70℃の水冷却浴槽で冷却した。
原料Bを通常のエクストルーダー型紡糸機で280℃にて溶融し、ギアポンプを経て口径0.7mmφの口金から紡出し、冷却溶媒温度70℃の水冷却浴槽で冷却した。
得られた未延伸糸を93℃で3.0倍に1段延伸し、さらに200℃で1.93倍に2段延伸した後、250℃で0.75倍に弛緩熱処理し、速度150m/分で巻取ることによりポリエチレンテレフタレートモノフィラメントを製造した。
得られたポリエチレンテレフタレートモノフィラメントについて、特性を評価した結果を表2に示す。
表2から明らかなように、この場合に得られたポリエチレンテレフタレートモノフィラメントは、高ヤング率化することができず、ケーブル部材用途としては不十分な性能しか発現できなかった。
以上説明したように、本発明のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメントは、テンションメンバー、介在線、引き裂き線などのケーブル部材へ展開が可能である。
Claims (3)
- エチレン−2,6−ナフタレート単位を85モル%以上含有するポリエステルを溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、JIS L1013に準じて測定したヤング率が10000N/mm2 以上、温度20℃、湿度65%RHの環境下でピン間隔10mm、降下速度5mm/分で3点に折り曲げた最大応力を読み取り、式:最大応力(cN)/繊度(dtex)にて算出した曲げ硬さが0.01cN/dtex以上0.30cN/dtex以下、外径が4、8、12、16、20、24、28、32mmの8種類のパイプまたは丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけて、温度20℃、湿度65%RHの環境下で5分間静止させた後、パイプまたは丸棒からモノフィラメントを外したときに、このモノフィラメントに形状や外観の変化を生じるパイプまたは丸棒の最大外径で定義される曲げ直径が28mm以下であることを特徴とするケーブル部材用ポリエステルモノフィラメント。
- JIS L1013に準じて測定した結節強度が0.3cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメント。
- 外径が28mmのパイプまたは丸棒にモノフィラメントを5回巻きつけ、両端に0.001cN/dtexの荷重をかけて、温度85℃、湿度100%RHの環境下に24Hr静置した後のヤング率保持率が50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル部材用ポリエステルモノフィラメント。
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JP2011058136A (ja) * | 2009-09-11 | 2011-03-24 | Teijin Fibers Ltd | ポリエチレンナフタレートモノフィラメントの製造方法 |
JP2011150041A (ja) * | 2010-01-20 | 2011-08-04 | Furukawa Electric Co Ltd:The | 光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブル用スペーサ |
US10884208B2 (en) | 2017-02-20 | 2021-01-05 | Fujikura Ltd. | Optical fiber cable |
-
2003
- 2003-08-28 JP JP2003304177A patent/JP2005068617A/ja active Pending
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