JP2005064170A - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Abstract

【課題】電解コンデンサの高温無負荷時の漏れ電流を低減することができる電解コンデンサの駆動用電解液を提供する。
【解決手段】エチレングリコールと水とを混合した溶媒に、アゼライン酸、セバシン酸、１，６−デカンジカルボン酸、５，６−デカンジカルボン酸、７−ビニルヘキサデセン−１，１６−ジカルボン酸等の有機カルボン酸またはその塩の1種以上と、以下の化学式で示されるマルトール０．１〜１．０ｗｔ％とを溶解したことを特徴としている。
【化１】

【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液（以下、電解液と称す）の改良に関するものであり、特に高温下での信頼性を改善した電解液に関するものである。

近年の電解コンデンサの小形化に伴い、電解コンデンサの陽極箔にはエッチング倍率の高いものが使用されるようになり、比抵抗の低い電解液が要求されている。従来の電解液としては、エチレングリコールを溶媒とし、電解質として有機カルボン酸のアンモニウム塩を溶解したものが使用されている（例えば特許文献１、２参照）。
特公平７−４８４６０号公報（第２頁、表） 特公平７−６３０４７号公報（第２頁、表１）

上記の電解液で低比抵抗のものを得るには、水を多量に混合しなければならない。しかし、水を多量に混合すると、高温無負荷条件下で電解コンデンサの漏れ電流が増加するため、１０５℃での使用は困難であった。
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、高温条件下において安定した電気特性を示す電解コンデンサ用の電解液を提供することにある。

本発明は上記課題を解決するため、電解液にマルトールを溶解することで、高温下での電極箔と水との水和反応を抑制し、高温無負荷での信頼性に優れた電解液を提供するものである。
すなわち、エチレングリコールと水とを混合した溶媒に、有機カルボン酸またはその塩の１種以上と、以下の化学式で示されるマルトールとを溶解したことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液である。

また、上記のマルトールの溶解量が０．１〜１．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液である。

さらに、上記の水の混合量が２．０〜１０．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液である。

上記の有機カルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、１，６−デカンジカルボン酸、５，６−デカンジカルボン酸、７−ビニルヘキサデセン−１，１６−ジカルボン酸、ギ酸、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、グルコン酸、安息香酸、ｐ−ニトロ安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、ゲンチシン酸、没食子酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、シュウ酸、トルトロン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フタル酸、ボロジサリチル酸、クエン酸、ピロメリト酸、ナフトエ酸等を例示することができる。

有機カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、ｔ−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。

マルトールは電極箔表面に吸着するため、水を含有した電解液に対して、高温下での電極箔の水和反応を抑えることができ、電解コンデンサの高温無負荷時の漏れ電流増加を抑制でき、信頼性向上を図ることができる。

エチレングリコールと水とを混合した溶媒に、有機カルボン酸またはその塩の１種以上と、マルトールを０．１〜１．０ｗｔ％とを溶解させる。

以下、本発明の実施例を具体的に説明する。表１の組成で電解液を調合し、３０℃における比抵抗を測定した。

表１の電解液を使用して、定格４００Ｖ−２２μＦ（φ１６×２５ｍｍＬ）のアルミニウム電解コンデンサを各１０個作製し、ｔａｎδ、漏れ電流について初期特性測定後、高温無負荷試験（１０５℃、１０００時間放置）を行い、表２の結果を得た。

表２より、有機カルボン酸塩を１，６−デカンジカルボン酸アンモニウムとし、マルトールを溶解した実施例１〜１７は、溶解しなかった従来例１〜３と比較して、高温無負荷試験において、漏れ電流の増大が抑制され、優れた特性を示している。
ここで、マルトールの溶解量は、０．１〜１．０ｗｔ％の範囲が好ましい。０．１ｗｔ％未満では水和反応抑制−漏れ電流増加抑制に十分な効果が得られず（実施例１）、１．０ｗｔ％を超えると比抵抗が高くなり（実施例９）、低比抵抗用途に不向きとなる。
また、水の混合量は、２．０〜１０．０ｗｔ％の範囲が好ましい。２．０ｗｔ％未満では比抵抗がやや高いので（実施例１０、１１）、低比抵抗用途に不向きであり、１０．０ｗｔ％を超えると、マルトールによる漏れ電流抑制効果が低下するので（実施例１５）、好ましくない。

さらに、有機カルボン酸をセバシン酸アンモニウム、アゼライン酸アンモニウムとした場合（実施例１６、１７）についても、上記と同様に、マルトールによる漏れ電流抑制効果が得られた。

なお、マルトールを溶解させた効果は、上記実施例に限定されるものではなく、先に記載した各種化合物を単独または複数溶解した電解液に用いても、同等の効果があった。

Claims (3)

1. エチレングリコールと水とを混合した溶媒に、有機カルボン酸またはその塩の１種以上と、以下の化学式で示されるマルトールとを溶解したことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
   

   
2. 請求項１記載のマルトールの溶解量が０．１〜１．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
3. 請求項１記載の水の混合量が２．０〜１０．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。