JP2005051363A - 線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成により移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えるとともに、信号の周波数対通過振幅の特性が良好な線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器を得る。
【解決手段】線路切換型移相ユニットをマイクロストリップ伝送線路で形成した基準線路13及び移相線路14とその両端に配置した2つのスイッチ11及び12により構成し、信号の通過する線路を切り換えることにより所望の移相量を得るとともに、これら2つの線路による信号の通過損失を基準線路13側に減衰器20を挿入して等しくすることにより、移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑える。また、移相線路14を信号が通過しないときは、その両端を接地することにより、移相線路14の不要な共振を抑える。
【選択図】 図1
【解決手段】線路切換型移相ユニットをマイクロストリップ伝送線路で形成した基準線路13及び移相線路14とその両端に配置した2つのスイッチ11及び12により構成し、信号の通過する線路を切り換えることにより所望の移相量を得るとともに、これら2つの線路による信号の通過損失を基準線路13側に減衰器20を挿入して等しくすることにより、移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑える。また、移相線路14を信号が通過しないときは、その両端を接地することにより、移相線路14の不要な共振を抑える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号の通過する伝送線路長を切り換えて移相量を制御する線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器に関する。
【0002】
【従来の技術】
移相器は、マイクロ波・ミリ波帯域を含む広周波数帯域にわたって例えばフェーズドアレーアンテナや電力合成型の増幅器等における信号の位相制御に活用されている。この種の移相器として、信号の通過する線路をマイクロストリップ伝送線路で構成し、その線路長をスイッチを用いて切り換えることにより通過する信号の位相を制御する事例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に開示されたマイクロ波移相器は、線路長の異なる2つのマイクロストリップ伝送線路を、これら線路の両端に配置されたFET(FieldEffect Transistor)からなる2つのSPDT(Single Pole Dual Throw:単極双投)スイッチを用いて切り換えることによって、通過する信号の位相を変化させており、その回路を図5に示す。
【0004】
この図に示すマイクロ波移相器は、スイッチング素子としての4つのFET51a、51b、54a、及び54b、ならびに、所定の特性インピーダンスを有し互いに線路長の異なる2つのマイクロストリップ伝送線路52、及び53から構成されている。また、入力端子55、出力端子56、ならびに制御端子57及び58を備えている。ここで、FET51aとFET51bは相補的にオンまたはオフ状態となるように制御され、SPDTスイッチ51を構成している。FET54aとFET54bも同様に制御され、SPDTスイッチ54を構成している。
【0005】
入力端子55にはFET51aのドレイン電極(D)及びFET51bのドレイン電極(D)が接続され、FET51a及びFET51bのソース電極(S)には、それぞれマイクロストリップ伝送線路52、及びマイクロストリップ伝送線路53の一端が接続されている。また、マイクロストリップ伝送線路52、及びマイクロストリップ伝送線路53の他端は、それぞれFET54a及びFET54bのソース電極(S)に接続されており、FET54a及びFET54bのドレイン電極(D)は、ともに出力端子56に接続されている。制御端子57にはFET51a及びFET54aのゲート電極(G)が、また、制御端子58にはFET51b及びFET54bのゲート電極(G)が、それぞれ接続されている。
【0006】
上記した構成のマイクロ波移相器において、制御端子57から2つのFET51a及び54aをオン状態にする制御信号を、また、制御端子58から2つのFET51b及び54bをオフ状態にする制御信号を印加しておくと、入力端子55から入力された信号は、FET51a、ストリップ伝送線路52、及びFET54aを経由して出力端子56から出力される。一方、制御端子57から2つのFET51a及び54aをオフ状態にする制御信号を、また、制御端子58から2つのFET51b及び54bをオン状態にする制御信号を印加しておくと、入力端子55から入力された信号は、FET51b、ストリップ伝送線路53、及びFET54bを経由して出力端子56から出力される。
【0007】
このようにして、従来のマイクロ波移相器は、入出力端のそれぞれに配置されたSPDTスイッチ51及び54を用いて信号の通過する経路をマイクロストリップ伝送線路52またはマイクロストリップ線路53のいずれか一方に切り換えることにより、これら2つの線路長差に相当する移相量を得ている。
【0008】
さらに、上述した構成のマイクロ波移相器を1つの移相ユニットとして、これを複数(n)個多段接続することによりnビットの移相器を構成した事例も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2には、互いに移相量の異なる移相ユニットを3段接続し、その段間に振幅制御素子を設けて移相量切換時の振幅変動を補正したマイクロ波移相器が開示されており、その回路を簡略化して図6に示す。
【0009】
この図6に示すマイクロ波移相器は、互いに移相量の異なる3つの移相ユニット61a、61b、及び61c、スイッチ用FETと抵抗からなる振幅制御素子62a及び62bから構成されている。3つの移相ユニット61a、61b、及び61cは直列に接続され、その両端、すなわち移相ユニット61aの入力端を入力端子63、移相ユニット61cの出力端を出力端子64としている。また、移相ユニット61aと移相ユニット61bとの間には振幅制御素子62aが、移相ユニット61bと移相ユニット61cとの間には振幅制御素子62bがそれぞれ接続されている。
【0010】
上記した構成のマイクロ波移相器においては、3つの移相ユニット61a、61b、及び61c内の各SPDTスイッチに対して移相制御回路(図示せず)から供給される移相量制御信号を切り換えて、23=8通りの移相量を得るとともに、2つの振幅制御素子62a及び62bに対して振幅制御回路(図示せず)から振幅制御信号を供給することにより、移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を減少させている。
【0011】
しかしながら、従来の線路切換型移相ユニット、すなわち図5に示す回路構成のマイクロ波移相器においては、2つのマイクロストリップ伝送線路52及び53の線路長が異なるためにその通過損失も異なり、移相量を切り換えると信号の通過振幅が変動する。そして、この通過振幅の変動は、移相量を大きくとるにつれて増大するという問題があった。
【0012】
また、2つのマイクロストリップ伝送線路52及び53のうち、信号が通過しないいずれか一方の線路は開放状態となるため、その線路の電気長がλ/2(λは波長を表わす)となる周波数で不要な共振が発生する。その結果、前記周波数の近傍において、他方を通過している信号の通過振幅を変動させるなどの影響を与え、信号の周波数対通過振幅の特性を劣化させていた。
【0013】
さらに、これらの課題は、従来の線路切換型移相ユニットを多段接続した従来の線路切換型移相器においても共通していた。
【0014】
このような課題に対処するため、従来の線路切換型移相ユニットに適用しうる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この特許文献3に開示された事例では、さらに多くのスイッチ素子とこれらスイッチ素子を制御するスイッチ制御回路とが必要となって構造が複雑になる上に、これらスイッチ素子のオン抵抗も制御されることが必要となる。
【0015】
また、従来の線路切換型移相器においては、前記した特許文献2に開示された事例のように、多段接続の段間にスイッチ素子と抵抗を付加することで、移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動に対処しうる。しかし、この事例においても、さらに多くのスイッチ素子とこれらスイッチを制御するスイッチ制御回路と必要となり、しかも、線路の不要な共振によって起こる信号の周波数対通過振幅の特性の劣化に関する対処については、開示されていない。
【0016】
【特許文献1】
特開平7−38304号公報(第5頁、図1)
【0017】
【特許文献2】
特開平8−242102号公報(第5頁、図1)
【0018】
【特許文献3】
特開2000−223903号公報(第12頁、図1)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器においては、移相量の切り換えに伴って信号の通過振幅が変動し、その変動幅は移相量を大きくすると増大するという問題があった。また、信号が通過しない線路の不要な共振により、信号の周波数対通過振幅の特性を劣化させていた。しかも、これら問題に対処するにはさらに多くのスイッチ素子や制御回路等を必要とし、その構造や回路が複雑化していた。
【0020】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、簡易な構成により移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えるとともに、信号の周波数対通過振幅の特性が良好な線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の線路切換型移相ユニットは、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第1のスイッチと、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第2のスイッチと、前記第1のスイッチの第3の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第3の端子にそれぞれ接続した所定の特性インピーダンス及び線路長の第1のマイクロストリップ伝送線路と、前記第1のスイッチの第2の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第2の端子にそれぞれ接続した前記所定の特性インピーダンスを有し前記第1のマイクロストリップ伝送線路より長い線路長の第2のマイクロストリップ伝送線路とを備え、前記第1のスイッチの第1の端子を信号の入力端子、前記第2のスイッチの第1の端子を信号の出力端子とし、前記第1のスイッチの第4の端子及び前記第2のスイッチの第4の端子をともに接地したことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の線路切換型移相器は、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第1のスイッチと、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第2のスイッチと、前記第1のスイッチの第3の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第3の端子にそれぞれ接続した所定の特性インピーダンス及び線路長の第1のマイクロストリップ伝送線路と、前記第1のスイッチの第2の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第2の端子にそれぞれ接続した前記所定の特性インピーダンスを有し前記第1のマイクロストリップ伝送線路より長い線路長の第2のマイクロストリップ伝送線路とを備え、前記第1のスイッチの第1の端子を信号の入力端子、前記第2のスイッチの第1の端子を信号の出力端子とし、前記第1のスイッチの第4の端子及び前記第2のスイッチの第4の端子をともに接地した線路切換型移相ユニットを複数個有し、互いに隣りあう前記線路切換型移相ユニットの出力端子と入力端子とを順次接続して多段に構成したことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、簡易な構成により移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えるとともに、信号の周波数対通過振幅の特性が良好な線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器を得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器の実施の形態を、図1乃至図4を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る線路切換型移相ユニットの第1の実施の形態の回路構成を示す図である。この線路切換型移相ユニット1は、第1のスイッチとしてのスイッチ11、第2のスイッチとしてのスイッチ12、第1のマイクロストリップ伝送線路としての基準線路13、及び第2のマイクロストリップ伝送線路としての移相線路14から構成されている。また、入力端子17、出力端子18、及び切換端子19を備えている。
【0026】
第1のスイッチ11は、第1の端子としてスイッチ端子11a、第2の端子としてスイッチ端子11b、第3の端子としてスイッチ端子11c、及び第4の端子としてスイッチ端子11dを備えており、スイッチ端子11aとスイッチ端子11bとを接続する第1の状態(以下、移相状態という)と、スイッチ端子11aをスイッチ端子11cに、またスイッチ端子11bをスイッチ端子11dにそれぞれ接続する第2の状態(以下、基準状態という)とを、切換端子19からの切換信号により切り換える。第2のスイッチ12も同様にスイッチ端子12a、12b、12c、及び12dを備えており、スイッチ端子12aとスイッチ端子12bとを接続する第1の状態(以下、移相状態という)と、スイッチ端子12aをスイッチ端子12cに、またスイッチ端子12bをスイッチ端子12dにそれぞれ接続する第2の状態(以下、基準状態という)とを、切換端子19からの切換信号により切り換える。
【0027】
基準線路13及び移相線路14はいずれも所定の特性インピーダンスを有するマイクロストリップ伝送線路である。そして、基準線路13の線路長は、本実施の形態においては信号の波長よりも十分に短い所定の長さとし、移相線路14の線路長は、所望する移相量を得るためにその移相量に対応した長さだけ基準線路13より長く形成されている。
【0028】
スイッチ端子11aは入力端子17に、スイッチ端子12aは出力端子18にそれぞれ接続されている。また、基準線路13は、その一端がスイッチ端子11cに、他端がスイッチ端子12cにそれぞれ接続され、移相線路14は、その一端がスイッチ端子11bに、他端がスイッチ端子12bにそれぞれ接続されている。さらに、スイッチ端子11d及びスイッチ端子12dは、ともに接地されている。
【0029】
次に、上述のように構成された線路切換型移相ユニット1の動作について説明する。まず、切換端子19からの切換信号によりスイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、スイッチ端子11cを経由して基準線路13を通過し、さらにスイッチ端子12cからスイッチ12を経て出力端子18から出力される。この時に、信号の通過しない移相線路14は、その両端がそれぞれスイッチ端子11d及びスイッチ端子12dを経由して接地されているため、その線路長がλ/2となる周波数の信号に対しても不要な共振を抑え、良好な周波数対通過振幅特性を得ることができる。
【0030】
一方、切換端子19からの切換信号によりスイッチ11及びスイッチ12をともに移相状態に切り換えると、入力端子17から入力された信号は、スイッチ端子11bを経由して移相線路14を通過し、さらにスイッチ端子12bを経て出力端子18から出力される。この時に出力される信号の位相は、基準状態に比べて移相線路14と基準線路13の線路長の差だけ遅れることになり、これら2つの線路長差に相当する移相量を得ることができる。また、信号の通過しない基準線路13の線路長は信号の波長より十分に短く設定されているため、共振する信号周波数も十分高いものとなって、所定の周波数範囲では通過振幅に影響を与えない。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態においては、スイッチ素子数を2つにした構成としている。これにより、簡易な構成の線路切換型移相ユニットを得ることができる。また、移相線路14に信号が通過しない場合は、その両端を接地している。これにより、この移相線路14の不要な共振を抑え、信号の周波数対通過振幅の特性の良好な線路切換型移相ユニットを得ることができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明に係る線路切換型移相ユニットの第2の実施の形態の回路構成を示す図である。この第2の実施の形態の各部について、図1の第1の実施の形態の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、スイッチ端子11d及びスイッチ端子12dを、それぞれ終端器15及び終端器16を通して接地した点である。以下、図2を参照して、その相違点のみを説明する。
【0033】
図2において、終端器15は、所定の特性インピーダンスを有する終端器で、その一端はスイッチ端子11dに接続され、他端は接地されている。終端器16も所定の特性インピーダンスを有する終端器で、その一端はスイッチ端子12dに接続され、他端は接地されている。
【0034】
この図2に示した線路切換型移相ユニット2において、スイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、スイッチ端子11cを経由して基準線路13を通過し、さらにスイッチ端子12cからスイッチ12を経て出力端子18から出力される。この時に、信号の通過しない移相線路14は、本実施の形態においては、その両端がそれぞれスイッチ端子11d及びスイッチ端子12dに接続された終端器15及び終端器16を経由して接地される。このため、移相線路14の線路長がλ/2となる周波数を含む広い周波数範囲の信号に対して不要な共振を抑え、良好な周波数対通過振幅特性を得ることができる。
【0035】
一方、スイッチ11及びスイッチ12をともに移相状態にある場合は、基準線路13、終端器15、及び終端器16のいずれも、移相線路14を通過する信号の通過振幅に影響を与えない。
【0036】
以上のように、本実施の形態においては、移相線路14に信号が通過しない場合は、その両端を終端器を通して接地している。これにより、この移相線路14の不要な共振を広い周波数範囲にわたって抑え、広周波数範囲の信号に対して周波数対通過振幅の特性の良好な線路切換型移相ユニットを得ることができる。
【0037】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明に係る線路切換型移相ユニットの第3の実施の形態の回路構成を示す図である。この第3の実施の形態の各部について、図2の第2の実施の形態の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第3の実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、基準線路13に減衰器20を含む点である。以下、図3を参照して、その相違点のみを説明する。
【0038】
図3において、基準線路13は2つの部分線路13a、及び13bに分割され、部分線路13aと部分線路13bとの間に減衰器20が直列に挿入されている。減衰器20は、本実施の形態では例えばチップ抵抗器を用い、その抵抗値は、信号がこの減衰器20を含む基準線路13を通過する場合と移相線路14を通過する場合との通過損失が等しくなるように設定されている。
【0039】
この図3に示した線路切換型移相ユニット3において、スイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、減衰器20を含む基準線路13を通過することにより、信号が移相線路14を通過する場合と等しい通過損失分減衰して出力端子18から出力される。
【0040】
一方、スイッチ11及びスイッチ12がともに移相状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、移相線路14を通過することにより、線路長による移相量を伴うと同時に移相線路14の有する通過損失分減衰して出力端子18から出力される。従って、スイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態、あるいはともに移相状態のどちらの場合においても、信号に対する通過損失は等しくなる。
【0041】
以上のように、本実施の形態においては、減衰器20を基準線路13に直列に挿入している。これにより、信号が減衰器20を含む基準線路13を通過する場合の通過損失と移相線路を通過する場合の通過損失とを等しくすることができ、移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えることができる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、減衰器20をチップ抵抗器として基準線路13に通過損失を発生させたが、これを膜抵抗器としてもよい。また、基準線路13に電波吸収体を塗布あるいは貼付して所望の通過損失を発生させてもよい。さらに、導電率の小さい材料を用いて基準線路13を構成するなど、種々の変形が可能である。
【0043】
(第4の実施の形態)
図4は、本発明に係る線路切換型移相器の第4の実施の形態の回路構成を示す図である。この線路切換型移相器4は、3つの移相ユニット21a、21b、及び21cから構成されている。また、入力端子22、出力端子23、及び切換端子24を備えている。
【0044】
本実施の形態においては、3つの移相ユニット21a、21b、及び21cは、いずれも上述した第3の実施の形態による線路切換型移相ユニットと同一の構成としているので、これら移相ユニットの詳細な説明は省略する。また、その移相量は、例えば移相ユニット21aは180度、移相ユニット21bは90度、移相ユニット21cは45度としている。
【0045】
入力端子22と出力端子23の間は、移相ユニット21a、移相ユニット21b、移相ユニット21cの順に、互いに隣りあう移相ユニットの出力端子と入力端子とが接続され、多段に構成されている。また、切換端子からはそれぞれの位相ユニットに加える切換信号により移相量を制御する。
【0046】
入力端子22から入力された信号は、切換端子24に印加された切換信号により、まず移相ユニット21aで移相制御され、続いて移相ユニット21b、移相ユニット21cの順でそれぞれ移相制御された後、出力端子23から出力される。この時の移相量は、本実施の形態においては、それぞれの位相ユニットに加える切換信号の組み合わせにより0度から315度までの範囲を45度ステップで切り換えることができる。
【0047】
上述のように構成された線路切換型移相器4においては、移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動は、3つの移相ユニット21a、21b、及び21c内において抑えられている。これにより、多段に構成する際にも新たな素子や回路などを追加することなく簡易な構成のまま、移相量の切り換えに伴う振幅変動の少ない安定した出力を得ることができる。
【0048】
また、3つの移相ユニット21a、21b、及び21c内において、信号が通過しない線路の両端を終端器を通して接地している。これにより、特に180度の移相量を持つ移相ユニット21aの不要な共振を広い周波数範囲にわたって抑え、広周波数範囲の信号に対して周波数対通過振幅の特性の良好な線路切換型移相器を得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、移相ユニット21a、21b、及び21cの3段接続として構成したが、多段接続数はこれに限定されるものではなく、使用目的に応じて変更することができる。また、移相ユニット21a、21b、及び21cは、いずれも第3の実施の形態による線路切換型移相ユニットと同一の構成としたが、第1の実施の形態、第2の実施の形態、あるいはこれらの線路切換型移相ユニットを組み合わせて構成するなど、種々の変形が可能である。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、簡易な構成により移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えるとともに、信号の周波数対通過振幅の特性が良好な線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る線路切換型移相ユニットの第1の実施の形態の回路構成を示す図。
【図2】本発明に係る線路切換型移相ユニットの第2の実施の形態の回路構成を示す図。
【図3】本発明に係る線路切換型移相ユニットの第3の実施の形態の回路構成を示す図。
【図4】本発明に係る線路切換型移相器の第4の実施の形態の回路構成を示す図。
【図5】従来の線路切換型移相ユニットの回路構成の一例を示す図。
【図6】従来の線路切換型移相器の回路構成の一例を示す図。
【符号の説明】
1、2、3、21a、21b、21c 線路切換型移相ユニット
4 線路切換型移相器
11、12 スイッチ
13 基準線路
14 移相線路
15、16 終端器
17、22 入力端子
18、23 出力端子
19、24 切換端子
20 減衰器
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号の通過する伝送線路長を切り換えて移相量を制御する線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器に関する。
【0002】
【従来の技術】
移相器は、マイクロ波・ミリ波帯域を含む広周波数帯域にわたって例えばフェーズドアレーアンテナや電力合成型の増幅器等における信号の位相制御に活用されている。この種の移相器として、信号の通過する線路をマイクロストリップ伝送線路で構成し、その線路長をスイッチを用いて切り換えることにより通過する信号の位相を制御する事例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に開示されたマイクロ波移相器は、線路長の異なる2つのマイクロストリップ伝送線路を、これら線路の両端に配置されたFET(FieldEffect Transistor)からなる2つのSPDT(Single Pole Dual Throw:単極双投)スイッチを用いて切り換えることによって、通過する信号の位相を変化させており、その回路を図5に示す。
【0004】
この図に示すマイクロ波移相器は、スイッチング素子としての4つのFET51a、51b、54a、及び54b、ならびに、所定の特性インピーダンスを有し互いに線路長の異なる2つのマイクロストリップ伝送線路52、及び53から構成されている。また、入力端子55、出力端子56、ならびに制御端子57及び58を備えている。ここで、FET51aとFET51bは相補的にオンまたはオフ状態となるように制御され、SPDTスイッチ51を構成している。FET54aとFET54bも同様に制御され、SPDTスイッチ54を構成している。
【0005】
入力端子55にはFET51aのドレイン電極(D)及びFET51bのドレイン電極(D)が接続され、FET51a及びFET51bのソース電極(S)には、それぞれマイクロストリップ伝送線路52、及びマイクロストリップ伝送線路53の一端が接続されている。また、マイクロストリップ伝送線路52、及びマイクロストリップ伝送線路53の他端は、それぞれFET54a及びFET54bのソース電極(S)に接続されており、FET54a及びFET54bのドレイン電極(D)は、ともに出力端子56に接続されている。制御端子57にはFET51a及びFET54aのゲート電極(G)が、また、制御端子58にはFET51b及びFET54bのゲート電極(G)が、それぞれ接続されている。
【0006】
上記した構成のマイクロ波移相器において、制御端子57から2つのFET51a及び54aをオン状態にする制御信号を、また、制御端子58から2つのFET51b及び54bをオフ状態にする制御信号を印加しておくと、入力端子55から入力された信号は、FET51a、ストリップ伝送線路52、及びFET54aを経由して出力端子56から出力される。一方、制御端子57から2つのFET51a及び54aをオフ状態にする制御信号を、また、制御端子58から2つのFET51b及び54bをオン状態にする制御信号を印加しておくと、入力端子55から入力された信号は、FET51b、ストリップ伝送線路53、及びFET54bを経由して出力端子56から出力される。
【0007】
このようにして、従来のマイクロ波移相器は、入出力端のそれぞれに配置されたSPDTスイッチ51及び54を用いて信号の通過する経路をマイクロストリップ伝送線路52またはマイクロストリップ線路53のいずれか一方に切り換えることにより、これら2つの線路長差に相当する移相量を得ている。
【0008】
さらに、上述した構成のマイクロ波移相器を1つの移相ユニットとして、これを複数(n)個多段接続することによりnビットの移相器を構成した事例も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2には、互いに移相量の異なる移相ユニットを3段接続し、その段間に振幅制御素子を設けて移相量切換時の振幅変動を補正したマイクロ波移相器が開示されており、その回路を簡略化して図6に示す。
【0009】
この図6に示すマイクロ波移相器は、互いに移相量の異なる3つの移相ユニット61a、61b、及び61c、スイッチ用FETと抵抗からなる振幅制御素子62a及び62bから構成されている。3つの移相ユニット61a、61b、及び61cは直列に接続され、その両端、すなわち移相ユニット61aの入力端を入力端子63、移相ユニット61cの出力端を出力端子64としている。また、移相ユニット61aと移相ユニット61bとの間には振幅制御素子62aが、移相ユニット61bと移相ユニット61cとの間には振幅制御素子62bがそれぞれ接続されている。
【0010】
上記した構成のマイクロ波移相器においては、3つの移相ユニット61a、61b、及び61c内の各SPDTスイッチに対して移相制御回路(図示せず)から供給される移相量制御信号を切り換えて、23=8通りの移相量を得るとともに、2つの振幅制御素子62a及び62bに対して振幅制御回路(図示せず)から振幅制御信号を供給することにより、移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を減少させている。
【0011】
しかしながら、従来の線路切換型移相ユニット、すなわち図5に示す回路構成のマイクロ波移相器においては、2つのマイクロストリップ伝送線路52及び53の線路長が異なるためにその通過損失も異なり、移相量を切り換えると信号の通過振幅が変動する。そして、この通過振幅の変動は、移相量を大きくとるにつれて増大するという問題があった。
【0012】
また、2つのマイクロストリップ伝送線路52及び53のうち、信号が通過しないいずれか一方の線路は開放状態となるため、その線路の電気長がλ/2(λは波長を表わす)となる周波数で不要な共振が発生する。その結果、前記周波数の近傍において、他方を通過している信号の通過振幅を変動させるなどの影響を与え、信号の周波数対通過振幅の特性を劣化させていた。
【0013】
さらに、これらの課題は、従来の線路切換型移相ユニットを多段接続した従来の線路切換型移相器においても共通していた。
【0014】
このような課題に対処するため、従来の線路切換型移相ユニットに適用しうる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この特許文献3に開示された事例では、さらに多くのスイッチ素子とこれらスイッチ素子を制御するスイッチ制御回路とが必要となって構造が複雑になる上に、これらスイッチ素子のオン抵抗も制御されることが必要となる。
【0015】
また、従来の線路切換型移相器においては、前記した特許文献2に開示された事例のように、多段接続の段間にスイッチ素子と抵抗を付加することで、移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動に対処しうる。しかし、この事例においても、さらに多くのスイッチ素子とこれらスイッチを制御するスイッチ制御回路と必要となり、しかも、線路の不要な共振によって起こる信号の周波数対通過振幅の特性の劣化に関する対処については、開示されていない。
【0016】
【特許文献1】
特開平7−38304号公報(第5頁、図1)
【0017】
【特許文献2】
特開平8−242102号公報(第5頁、図1)
【0018】
【特許文献3】
特開2000−223903号公報(第12頁、図1)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器においては、移相量の切り換えに伴って信号の通過振幅が変動し、その変動幅は移相量を大きくすると増大するという問題があった。また、信号が通過しない線路の不要な共振により、信号の周波数対通過振幅の特性を劣化させていた。しかも、これら問題に対処するにはさらに多くのスイッチ素子や制御回路等を必要とし、その構造や回路が複雑化していた。
【0020】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、簡易な構成により移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えるとともに、信号の周波数対通過振幅の特性が良好な線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の線路切換型移相ユニットは、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第1のスイッチと、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第2のスイッチと、前記第1のスイッチの第3の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第3の端子にそれぞれ接続した所定の特性インピーダンス及び線路長の第1のマイクロストリップ伝送線路と、前記第1のスイッチの第2の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第2の端子にそれぞれ接続した前記所定の特性インピーダンスを有し前記第1のマイクロストリップ伝送線路より長い線路長の第2のマイクロストリップ伝送線路とを備え、前記第1のスイッチの第1の端子を信号の入力端子、前記第2のスイッチの第1の端子を信号の出力端子とし、前記第1のスイッチの第4の端子及び前記第2のスイッチの第4の端子をともに接地したことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の線路切換型移相器は、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第1のスイッチと、第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第2のスイッチと、前記第1のスイッチの第3の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第3の端子にそれぞれ接続した所定の特性インピーダンス及び線路長の第1のマイクロストリップ伝送線路と、前記第1のスイッチの第2の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第2の端子にそれぞれ接続した前記所定の特性インピーダンスを有し前記第1のマイクロストリップ伝送線路より長い線路長の第2のマイクロストリップ伝送線路とを備え、前記第1のスイッチの第1の端子を信号の入力端子、前記第2のスイッチの第1の端子を信号の出力端子とし、前記第1のスイッチの第4の端子及び前記第2のスイッチの第4の端子をともに接地した線路切換型移相ユニットを複数個有し、互いに隣りあう前記線路切換型移相ユニットの出力端子と入力端子とを順次接続して多段に構成したことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、簡易な構成により移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えるとともに、信号の周波数対通過振幅の特性が良好な線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器を得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器の実施の形態を、図1乃至図4を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る線路切換型移相ユニットの第1の実施の形態の回路構成を示す図である。この線路切換型移相ユニット1は、第1のスイッチとしてのスイッチ11、第2のスイッチとしてのスイッチ12、第1のマイクロストリップ伝送線路としての基準線路13、及び第2のマイクロストリップ伝送線路としての移相線路14から構成されている。また、入力端子17、出力端子18、及び切換端子19を備えている。
【0026】
第1のスイッチ11は、第1の端子としてスイッチ端子11a、第2の端子としてスイッチ端子11b、第3の端子としてスイッチ端子11c、及び第4の端子としてスイッチ端子11dを備えており、スイッチ端子11aとスイッチ端子11bとを接続する第1の状態(以下、移相状態という)と、スイッチ端子11aをスイッチ端子11cに、またスイッチ端子11bをスイッチ端子11dにそれぞれ接続する第2の状態(以下、基準状態という)とを、切換端子19からの切換信号により切り換える。第2のスイッチ12も同様にスイッチ端子12a、12b、12c、及び12dを備えており、スイッチ端子12aとスイッチ端子12bとを接続する第1の状態(以下、移相状態という)と、スイッチ端子12aをスイッチ端子12cに、またスイッチ端子12bをスイッチ端子12dにそれぞれ接続する第2の状態(以下、基準状態という)とを、切換端子19からの切換信号により切り換える。
【0027】
基準線路13及び移相線路14はいずれも所定の特性インピーダンスを有するマイクロストリップ伝送線路である。そして、基準線路13の線路長は、本実施の形態においては信号の波長よりも十分に短い所定の長さとし、移相線路14の線路長は、所望する移相量を得るためにその移相量に対応した長さだけ基準線路13より長く形成されている。
【0028】
スイッチ端子11aは入力端子17に、スイッチ端子12aは出力端子18にそれぞれ接続されている。また、基準線路13は、その一端がスイッチ端子11cに、他端がスイッチ端子12cにそれぞれ接続され、移相線路14は、その一端がスイッチ端子11bに、他端がスイッチ端子12bにそれぞれ接続されている。さらに、スイッチ端子11d及びスイッチ端子12dは、ともに接地されている。
【0029】
次に、上述のように構成された線路切換型移相ユニット1の動作について説明する。まず、切換端子19からの切換信号によりスイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、スイッチ端子11cを経由して基準線路13を通過し、さらにスイッチ端子12cからスイッチ12を経て出力端子18から出力される。この時に、信号の通過しない移相線路14は、その両端がそれぞれスイッチ端子11d及びスイッチ端子12dを経由して接地されているため、その線路長がλ/2となる周波数の信号に対しても不要な共振を抑え、良好な周波数対通過振幅特性を得ることができる。
【0030】
一方、切換端子19からの切換信号によりスイッチ11及びスイッチ12をともに移相状態に切り換えると、入力端子17から入力された信号は、スイッチ端子11bを経由して移相線路14を通過し、さらにスイッチ端子12bを経て出力端子18から出力される。この時に出力される信号の位相は、基準状態に比べて移相線路14と基準線路13の線路長の差だけ遅れることになり、これら2つの線路長差に相当する移相量を得ることができる。また、信号の通過しない基準線路13の線路長は信号の波長より十分に短く設定されているため、共振する信号周波数も十分高いものとなって、所定の周波数範囲では通過振幅に影響を与えない。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態においては、スイッチ素子数を2つにした構成としている。これにより、簡易な構成の線路切換型移相ユニットを得ることができる。また、移相線路14に信号が通過しない場合は、その両端を接地している。これにより、この移相線路14の不要な共振を抑え、信号の周波数対通過振幅の特性の良好な線路切換型移相ユニットを得ることができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明に係る線路切換型移相ユニットの第2の実施の形態の回路構成を示す図である。この第2の実施の形態の各部について、図1の第1の実施の形態の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、スイッチ端子11d及びスイッチ端子12dを、それぞれ終端器15及び終端器16を通して接地した点である。以下、図2を参照して、その相違点のみを説明する。
【0033】
図2において、終端器15は、所定の特性インピーダンスを有する終端器で、その一端はスイッチ端子11dに接続され、他端は接地されている。終端器16も所定の特性インピーダンスを有する終端器で、その一端はスイッチ端子12dに接続され、他端は接地されている。
【0034】
この図2に示した線路切換型移相ユニット2において、スイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、スイッチ端子11cを経由して基準線路13を通過し、さらにスイッチ端子12cからスイッチ12を経て出力端子18から出力される。この時に、信号の通過しない移相線路14は、本実施の形態においては、その両端がそれぞれスイッチ端子11d及びスイッチ端子12dに接続された終端器15及び終端器16を経由して接地される。このため、移相線路14の線路長がλ/2となる周波数を含む広い周波数範囲の信号に対して不要な共振を抑え、良好な周波数対通過振幅特性を得ることができる。
【0035】
一方、スイッチ11及びスイッチ12をともに移相状態にある場合は、基準線路13、終端器15、及び終端器16のいずれも、移相線路14を通過する信号の通過振幅に影響を与えない。
【0036】
以上のように、本実施の形態においては、移相線路14に信号が通過しない場合は、その両端を終端器を通して接地している。これにより、この移相線路14の不要な共振を広い周波数範囲にわたって抑え、広周波数範囲の信号に対して周波数対通過振幅の特性の良好な線路切換型移相ユニットを得ることができる。
【0037】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明に係る線路切換型移相ユニットの第3の実施の形態の回路構成を示す図である。この第3の実施の形態の各部について、図2の第2の実施の形態の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第3の実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、基準線路13に減衰器20を含む点である。以下、図3を参照して、その相違点のみを説明する。
【0038】
図3において、基準線路13は2つの部分線路13a、及び13bに分割され、部分線路13aと部分線路13bとの間に減衰器20が直列に挿入されている。減衰器20は、本実施の形態では例えばチップ抵抗器を用い、その抵抗値は、信号がこの減衰器20を含む基準線路13を通過する場合と移相線路14を通過する場合との通過損失が等しくなるように設定されている。
【0039】
この図3に示した線路切換型移相ユニット3において、スイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、減衰器20を含む基準線路13を通過することにより、信号が移相線路14を通過する場合と等しい通過損失分減衰して出力端子18から出力される。
【0040】
一方、スイッチ11及びスイッチ12がともに移相状態にある場合は、入力端子17から入力された信号は、移相線路14を通過することにより、線路長による移相量を伴うと同時に移相線路14の有する通過損失分減衰して出力端子18から出力される。従って、スイッチ11及びスイッチ12がともに基準状態、あるいはともに移相状態のどちらの場合においても、信号に対する通過損失は等しくなる。
【0041】
以上のように、本実施の形態においては、減衰器20を基準線路13に直列に挿入している。これにより、信号が減衰器20を含む基準線路13を通過する場合の通過損失と移相線路を通過する場合の通過損失とを等しくすることができ、移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えることができる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、減衰器20をチップ抵抗器として基準線路13に通過損失を発生させたが、これを膜抵抗器としてもよい。また、基準線路13に電波吸収体を塗布あるいは貼付して所望の通過損失を発生させてもよい。さらに、導電率の小さい材料を用いて基準線路13を構成するなど、種々の変形が可能である。
【0043】
(第4の実施の形態)
図4は、本発明に係る線路切換型移相器の第4の実施の形態の回路構成を示す図である。この線路切換型移相器4は、3つの移相ユニット21a、21b、及び21cから構成されている。また、入力端子22、出力端子23、及び切換端子24を備えている。
【0044】
本実施の形態においては、3つの移相ユニット21a、21b、及び21cは、いずれも上述した第3の実施の形態による線路切換型移相ユニットと同一の構成としているので、これら移相ユニットの詳細な説明は省略する。また、その移相量は、例えば移相ユニット21aは180度、移相ユニット21bは90度、移相ユニット21cは45度としている。
【0045】
入力端子22と出力端子23の間は、移相ユニット21a、移相ユニット21b、移相ユニット21cの順に、互いに隣りあう移相ユニットの出力端子と入力端子とが接続され、多段に構成されている。また、切換端子からはそれぞれの位相ユニットに加える切換信号により移相量を制御する。
【0046】
入力端子22から入力された信号は、切換端子24に印加された切換信号により、まず移相ユニット21aで移相制御され、続いて移相ユニット21b、移相ユニット21cの順でそれぞれ移相制御された後、出力端子23から出力される。この時の移相量は、本実施の形態においては、それぞれの位相ユニットに加える切換信号の組み合わせにより0度から315度までの範囲を45度ステップで切り換えることができる。
【0047】
上述のように構成された線路切換型移相器4においては、移相量の切り換えに伴う信号の通過振幅の変動は、3つの移相ユニット21a、21b、及び21c内において抑えられている。これにより、多段に構成する際にも新たな素子や回路などを追加することなく簡易な構成のまま、移相量の切り換えに伴う振幅変動の少ない安定した出力を得ることができる。
【0048】
また、3つの移相ユニット21a、21b、及び21c内において、信号が通過しない線路の両端を終端器を通して接地している。これにより、特に180度の移相量を持つ移相ユニット21aの不要な共振を広い周波数範囲にわたって抑え、広周波数範囲の信号に対して周波数対通過振幅の特性の良好な線路切換型移相器を得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、移相ユニット21a、21b、及び21cの3段接続として構成したが、多段接続数はこれに限定されるものではなく、使用目的に応じて変更することができる。また、移相ユニット21a、21b、及び21cは、いずれも第3の実施の形態による線路切換型移相ユニットと同一の構成としたが、第1の実施の形態、第2の実施の形態、あるいはこれらの線路切換型移相ユニットを組み合わせて構成するなど、種々の変形が可能である。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、簡易な構成により移相量切り換えに伴う信号の通過振幅の変動を抑えるとともに、信号の周波数対通過振幅の特性が良好な線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る線路切換型移相ユニットの第1の実施の形態の回路構成を示す図。
【図2】本発明に係る線路切換型移相ユニットの第2の実施の形態の回路構成を示す図。
【図3】本発明に係る線路切換型移相ユニットの第3の実施の形態の回路構成を示す図。
【図4】本発明に係る線路切換型移相器の第4の実施の形態の回路構成を示す図。
【図5】従来の線路切換型移相ユニットの回路構成の一例を示す図。
【図6】従来の線路切換型移相器の回路構成の一例を示す図。
【符号の説明】
1、2、3、21a、21b、21c 線路切換型移相ユニット
4 線路切換型移相器
11、12 スイッチ
13 基準線路
14 移相線路
15、16 終端器
17、22 入力端子
18、23 出力端子
19、24 切換端子
20 減衰器
Claims (7)
- 第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第1のスイッチと、
第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第2のスイッチと、
前記第1のスイッチの第3の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第3の端子にそれぞれ接続した所定の特性インピーダンス及び線路長の第1のマイクロストリップ伝送線路と、
前記第1のスイッチの第2の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第2の端子にそれぞれ接続した前記所定の特性インピーダンスを有し前記第1のマイクロストリップ伝送線路より長い線路長の第2のマイクロストリップ伝送線路とを備え、
前記第1のスイッチの第1の端子を信号の入力端子、前記第2のスイッチの第1の端子を信号の出力端子とし、
前記第1のスイッチの第4の端子及び前記第2のスイッチの第4の端子をともに接地したことを特徴とする線路切換型移相ユニット。 - 前記第1のスイッチの第4の端子及び前記第2のスイッチの第4の端子を、終端器を経由して接地したことを特徴とする請求項1に記載の線路切換型移相ユニット。
- 前記第1のマイクロストリップ伝送線路は減衰器を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線路切換型移相ユニット。
- 第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第1のスイッチと、
第1乃至第4の4つの端子を有し、第1の端子と第2の端子を接続する第1の状態と、第1の端子を第3の端子に、第2の端子を第4の端子にそれぞれ接続する第2の状態とに切り換える第2のスイッチと、
前記第1のスイッチの第3の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第3の端子にそれぞれ接続した所定の特性インピーダンス及び線路長の第1のマイクロストリップ伝送線路と、
前記第1のスイッチの第2の端子に一端を、また他端を前記第2のスイッチの第2の端子にそれぞれ接続した前記所定の特性インピーダンスを有し前記第1のマイクロストリップ伝送線路より長い線路長の第2のマイクロストリップ伝送線路とを備え、
前記第1のスイッチの第1の端子を信号の入力端子、前記第2のスイッチの第1の端子を信号の出力端子とし、
前記第1のスイッチの第4の端子及び前記第2のスイッチの第4の端子をともに接地した線路切換型移相ユニットを複数個有し、
互いに隣りあう前記線路切換型移相ユニットの出力端子と入力端子とを順次接続して多段に構成したことを特徴とする線路切換型移相器。 - 前記線路切換型移相ユニットの第1のスイッチの第4の端子及び第2のスイッチの第4の端子を、終端器を経由して接地したことを特徴とする請求項4に記載の線路切換型移相器。
- 前記線路切換型移相ユニットの第1のマイクロストリップ伝送線路は減衰器を含むことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の線路切換型移相器。
- 移相量が180度以上である前記線路切換型移相ユニットを含むことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の線路切換型移相器。
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JP2003203927A Pending JP2005051363A (ja) | 2003-07-30 | 2003-07-30 | 線路切換型移相ユニット及び線路切換型移相器 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005051363A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008271408A (ja) * | 2007-04-24 | 2008-11-06 | Nec Corp | 移相回路 |
JP2010212895A (ja) * | 2009-03-09 | 2010-09-24 | Toshiba Corp | アンテナ装置、レーダ装置 |
CN104157933A (zh) * | 2014-09-01 | 2014-11-19 | 无锡华测电子系统有限公司 | 超小型微波宽带可调移相衰减器 |
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2003
- 2003-07-30 JP JP2003203927A patent/JP2005051363A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008271408A (ja) * | 2007-04-24 | 2008-11-06 | Nec Corp | 移相回路 |
JP2010212895A (ja) * | 2009-03-09 | 2010-09-24 | Toshiba Corp | アンテナ装置、レーダ装置 |
CN104157933A (zh) * | 2014-09-01 | 2014-11-19 | 无锡华测电子系统有限公司 | 超小型微波宽带可调移相衰减器 |
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