JP2005049329A - バイオチップ用基板およびバイオチップ - Google Patents

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Abstract

【課題】射出成形による作成が容易であり、かつ表面への生体分子の固定化が容易であり、耐熱性に優れたバイオチップ用基材およびバイオチップを提供する。
【解決手段】(A)(i)酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体で構成されることを特徴とするバイオチップ用基板、基板が黒色であることを特徴とする、前記バイオチップ用基板および、基板を構成する(A)(i)酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体にカーボンブラックが混合されていることを特徴とするバイオチップ用基板。
【選択図】 なし

Description

本発明は、射出成形による作成が容易であり、特殊な処理を要することなく、表面に生体分子を固定することができ、さらには、耐熱性に優れたバイオチップ用基板およびバイオチップに関するものである。
従来より、微量試料の分析・検出にはキャピラリーガスクロマトグラフィーやキャピラリー液体クロマトグラフィー等で分離し、質量分析計で検出するGCMSやLCMSが使用されてきた。しかし、GCMSやLCMSは質量分析計が大きく、患者のベッドサイドや、汚染河川、廃棄物処理場近辺等の測定現場において、用いるには困難が伴う。また、医療診断用途では、血液等の患者由来の検体への接触が問題となることから、このような場合の設備は、感染性廃棄物の対象となり、基本的にディスポーザブルとすることが求められている。
以上の問題点を解決するために、10センチから数センチ角程度以下のガラス等のチップ(マイクロチップ)の表面に微細な溝を刻み、その溝における分離・反応を利用して微量試料の分析を行うmicro(miniaturized) total analysis system(μTAS)の研究が行われている。μTASでは、検体量、検出に必要な試薬量、検出に用いた消耗品等の廃棄物量、廃液の量等がいずれも少なくなる上、検出に必要な時間もおおむね短時間ですむという利点がある。
また、その他のバイオチップとしては、多数の遺伝子発現を一度に解析する手法として開発されたDNAマイクロアレイ法(DNAチップ法)がある。これは、いずれも核酸/核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法である点で原理的には従来の方法と同じであり、蛋白質/蛋白質間あるいは糖鎖/糖鎖間や糖鎖/蛋白質間のハイブリダイゼーションに基づく蛋白質や糖鎖検出・定量にも応用が可能ではある。DNAチップは、マイクロアレイ又はチップと呼ばれるガラスの平面基板片上に、多数のDNA断片や蛋白質、糖鎖が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。マイクロアレイ法の具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基板片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸(DNAあるいはRNA)同士を結合させ、その箇所を高解像度解析装置で高速に読みとる方法や、電気化学反応にもとづく電流値等の応答を検出する方法が挙げられる。こうして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。
従来、上記の微量分析装置に用いられるマイクロチップには、加工性や精度の観点からガラス板や石英板、シリコン板等の無機材料が使用されてきた。例えば、遺伝子解析等に用いられるDNAチップの基材としては、スライドガラスに代表されるガラスが使用されてきた。これは、ガラスの自体の自己蛍光性が小さいためである。すなわち、DNAチップ上に並べたDNA断片(プローブDNA)と、調べたい試料(DNA)に蛍光物質で標識を付けたもの(ターゲットDNA)を含む溶液をチップ上に流し、ターゲットDNAがチップ上のどのDNAとハイブリダイゼーションしたかを、レーザースキャナーで読み取り検出するが、ターゲットDNAの蛍光は非常に微弱であるため、DNAチップ基材の自己蛍光性が高いとバックグラウンドが上がり、シグナル検出感度の低下を招くことになるためである。このようなDNAチップに代表されるバイオチップは、その他広範な分野での適応が期待されていることから、チップの大量生産が前提となる。この場合、ガラス基板では、検出のための光の透過性を確保する目的と、接合工程の生産性を高める目的のために、ガラス基板の両面を鏡面研磨する等の表面加工が必要となり、生産効率が極めて低くなることが問題となる。
上記の問題を解決する手段として、ガラス基板マイクロチップに代えて樹脂製マイクロチップの検討が行われている。例えば、特許文献1には透明樹脂を用いたキャピラリーおよび平板からなる電気泳動装置が、また特許文献2には毛細管形状の溝を有する高精度分離用有機ポリマー基板が、さらに非特許文献1にはアクリル樹脂製チップを用いた電気泳動分析システムが開示されている。
上記開示技術には、基板樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネート(PC)等の透明樹脂が使用されている。
しかしながら、基板樹脂としてPMMAやPCをそのまま用いると、μTASにおいては、例えばタンパク質などを取り扱う際に、微細な溝表面へタンパク質が吸着してしまい、分析が困難になることが考えられる。このような吸着を防ぐために予め溝表面に他のタンパク質などを固定化することが必要であると考えられる。また、DNAチップにおいても、オリゴDNA(オリゴDNAとは塩基数が10〜100塩基までのものをいう)をチップ表面に共有結合にて固定化することが必要であるが、上記の公知例においては、タンパク質やDNAのような生物由来の分子を樹脂からなる基板表面に固定化する方法については何ら言及されていない。
また、バイオチップのうちDNAチップにおいて、必須の工程であるハイブリダイゼーション工程では、加熱が必要となることが多い。また、μTASでも、基板上でPCR(Polymerase Chain Reaction)反応などの加熱を必要とする反応を行うものも提案されている。従って、ガラス転移温度Tgが低い樹脂は、基材としての使用が難しいという問題があった。この問題を解決するため、特許文献3には、環状ポリオレフィンを使用したDNAチップ用基板が開示されている。確かに、該DNAチップ基板は、耐熱性に優れるものの、特許文献3においては、基板表面へのDNAの固定化については、何ら言及されていない
特開平2−259557号公報(第2頁) 特開平8−327597号公報(第2頁、第4頁) 特開2001−231556号公報(第2頁) 「アナリティカル ケミストリー(Analytical Chemistry)」、(米国)、1997年、第69巻、p.2626−2630
したがって、本発明は、射出成形による作成が容易であり、基板表面にタンパク質やDNAなど容易に固定化でき、耐熱性に優れたバイオチップ用基板およびバイオチップを得ることを課題とする。
さらには、次の問題も解決する選択性結合物質を固定化したバイオチップを得ることも課題とする。すなわち、平坦なガラスの基板にDNAなどの選択結合性物質を固定化した場合、以下のような問題点があった。1)ハイブリダイゼーションを行った時、ガラスが親水的なので、プローブDNAを固定したスポット以外の部分にも非特異的に検体DNAが吸着し易く、スキャナーと呼ばれる装置で蛍光検出を行う際、この非特異的に吸着した検体をも検出してしまい、ガラス自体の自家蛍光が小さくても、結果的にノイズが大きくなるという問題点と、2)ガラスが剛体のため、これに共有結合したオリゴDNAの空間的な自由度が妨げられるという推定理由から、検体DNAとのハイブリダイゼーション効率が低いので、シグナル強度が小さく、結果的にS/N比が十分でないといった問題があった。本発明では、上記のようなS/N比の悪化を防ぎ、検出感度の高い選択結合性物質が固定化されたバイオチップをも提供することができる。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体で構成される基板が、その表面にタンパク質やDNAなどを容易に固定化でき、さらに耐熱性に優れ、バイオチップ用基板として有用であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
[1](A)(i)酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体で構成されることを特徴とするバイオチップ用基板、
[2](A)熱可塑性共重合体が、(ii)不飽和カルボン酸単位を有することを特徴とする上記[1]記載のバイオチップ用基板、
[3](A)熱可塑性共重合体が、(iii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有することを特徴とする上記[1]〜[2]記載のバイオチップ用基板、
[4](A)熱可塑性共重合体が、芳香族環含有単位を有しないことを特徴とする、上記[1]〜[3]いずれか記載のバイオチップ用基板、
[5](A)熱可塑性共重合体中の(i)酸無水物単位が下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位であることを特徴とする上記[1]〜[4]いずれか記載のバイオチップ用基板、
Figure 2005049329
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す)
[6](A)熱可塑性共重合体の280nm波長での吸光度(ここで、吸光度は、厚さ100μmでのフィルムを用いて、紫外可視分光光度計で測定した値を示す)が0.5以下であり、かつガラス転移温度が130℃以上であることを特徴とする上記[1]〜[5]いずれか記載のバイオチップ用基板、
[7](A)熱可塑性共重合体が、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を、95℃以下の温度で重合して(B)原共重合体を得、次いで(B)原共重合体を加熱し、(イ)脱アルコール反応および/または(ロ)脱水反応により得られたものであることを特徴とする上記[1]〜[6]いずれか記載のバイオチップ用基板、
[8]基板が黒色であることを特徴とする、上記[1]〜[7]いずれかに記載のバイオチップ用基板、
[9]基板を構成する(A)(i)酸無水物単位を有する(A)熱可塑性共重合体にカーボンブラックが混合されていることを特徴とする上記[8]記載のバイオチップ用基板、
[10](A)熱可塑性共重合体を射出成形することにより作製された上記[1]〜[9]いずれか記載のバイオチップ用基板、
[11]上記[1]〜[10]いずれか記載の基板を用いたことを特徴とするバイオチップ
[12](A)(i)酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体からなるバイオチップ用基板材料、
[13]上記[1]から[9]のいずれかに記載のバイオチップ用基板を用いたバイオチップであって、該バイオチップには凹凸部が設けられており、選択結合性物質が凹凸部の複数の凸部の上面に固定化されていることを特徴とする選択結合性物質が固定化されたバイオチップ、
[14]該凹凸部の凸部上面が実質的に平坦であり、選択結合性物質が固定化された凸部上面の高さが、略同一である上記[13]に記載に記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ、
[15]該バイオチップには平坦部が設けられていることを特徴とする上記[13]または[14]いずれかに記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ、
[16]選択性結合物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部の高さと、最も低い凸部の高さの差が50μm以下であることを特徴とする上記[13]〜[15]のいずれかに記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ、
[17]凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差が50μm以下であることを特徴とする上記[13]〜[16]のいずれかに記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ、
を提供するものである。
本発明により、射出成形による作成が容易であり、特殊な処理を要することなく、表面に生体分子を固定することができ、さらには、耐熱性に優れたバイオチップ用基板、バイオチップおよび選択結合性物質が固定化されたバイオチップを得ることができる。さらに、検出の際のS/N比が良好な選択結合性物質が固定化されたバイオチップを得ることができる。
以下、本発明のバイオチップ用基板、バイオチップおよび選択結合性物質が固定化されたバイオチップについて具体的に説明する。本発明でいう選択結合性物質が固定化されたバイオチップとは、マイクロアレイまたはチップと呼ばれる基板上に、選択結合性物質(DNA断片やタンパク質、糖鎖等)を固定化したものである。ここでいう選択結合性物質とは、被検物質と直接的または間接的に、選択的に結合しうる物質を意味し、代表的な例として、核酸(DNAやRNA、PNA)、タンパク質、糖類およびその他の抗原性化合物を挙げることができる。さらに、本発明で言うバイオチップとは、基板上に微細な溝やチャンバーを作製し、その中で液体を使用して反応を行うものであり(すなわち、いわゆるμTASやマイクロリアクターと呼ばれるものを指す)、かつ、基板の表面に核酸、糖鎖、タンパク質が固定化されているものも含む。
本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体は、(i)酸無水物単位を有することを特徴とする。ここでいう(i)酸無水物単位は、(A)熱可塑性共重合体の主鎖や側鎖の骨格中や末端に存在する単位である。(i)酸無水物単位の構造としては、特に制限はなく、(メタ)アクリル酸無水物単位、グルタル酸無水物単位、マレイン酸無水物単位、イタコン酸無水物単位、シトラコン酸無水物単位、アコニット酸無水物単位等が挙げられるが、マレイン酸無水物単位、グルタル酸無水物単位が好ましく、なかでも、下記一般式(1)
Figure 2005049329
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す)
で表されるグルタル酸無水物単位が好ましい。
本発明で用いられる(A)熱可塑性共重合体の構造は、(i)酸無水物単位を含有していれば特に制限はないが、下記一般式(2)
Figure 2005049329
(ただし、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
で表される(ii)不飽和カルボン酸単位を有していることが好ましい。ここでいう(ii)不飽和カルボン酸単位とは、不飽和カルボン酸単量体を、共重合することにより得られる単位であり、この際に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体として、下記一般式(3)
Figure 2005049329
(ただし、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
で表される化合物、マレイン酸、及びさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体は、(i)酸無水物単位を含有していれば特に制限はないが、下記一般式(4)
Figure 2005049329
(ただし、R4は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基を示す)
で表される(iii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有していることが好ましい。ここでいう(iii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位とは、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を、共重合することにより得られる単位であり、ここで、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては特に制限はないが、好ましい例として、下記一般式(5)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2005049329
(ただし、R4は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基を表す)
これらのうち、炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は置換基を有する該炭化水素基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また、本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体を用いてもかまわない。その他のビニル系単量体の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができるが、バイオチップ基板の自家蛍光の抑制の点で芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
さらに本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体においては、オレフィン系単量体を(共)重合したものであってもよく、また、これを(共)重合したものを(i)酸無水物単位を導入するための主鎖としたものであってもよい。上記オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、イソブテン、4−メチル−ペンテン−1、3−メチル−ペンテン−1、3−メチル−ブテン−1、等の直鎖状または分岐状の鎖状オレフィン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン等の環状オレフィン等が挙げられる。
本発明に用いる(A)熱可塑性共重合体の製造方法に特に制限はないが、例えば以下に示す方法により製造することができる。すなわち、(1)(i)酸無水物単位を与える不飽和酸無水物単量体を共重合することにより、(A)熱可塑性共重合体を製造する方法、(2)(i)酸無水物単位を与える不飽和酸無水物単量体を、主鎖となる(共)重合体の存在下、必要に応じてラジカル開始剤を用いて加熱反応させる、いわゆるグラフト法を使用することにより、(A)熱可塑性共重合体を製造する方法、あるいは(3)後の加熱工程により(i)酸無水物単位を与える不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体及び不飽和カルボン酸単量体と、その他のビニル系単量体単位を含む場合には該単位を与えるビニル系単量体とを共重合させ、(B)原共重合体とした後、かかる(B)原共重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、(イ)脱アルコールおよび/または(ロ)脱水による分子内環化反応を行わせることにより、本発明に用いる(A)熱可塑性共重合体を製造する方法などが挙げられる。この場合、典型的には、(B)原共重合体を加熱することにより2単位の(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水されて、あるいは、隣接する1単位の(ii)不飽和カルボン酸単位と1単位の(iii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位からアルコールの脱離により1単位のグルタル酸無水物単位が生成される。
上記(1)あるいは(2)の方法により、(A)熱可塑性共重合体を製造する際に使用される不飽和酸無水物単量体としては、共重合あるいは反応可能な不飽和結合を有していれば、特に制限はないが、好ましくは、(メタ)アクリル酸無水物、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アコニット酸無水物等が挙げられる。
上記(1)の方法により(A)熱可塑性共重合体を製造する場合、特に制限はないが、上記のような不飽和酸無水物単量体とこれと共重合可能なその他の単量体を共重合することにより製造できる。不飽和酸無水物単量体としては、(メタ)アクリル酸無水物、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アコニット酸無水物等が挙げられる。その他の単量体としては、上記したような不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、その他のビニル系単量体、オレフィン系単量体などが挙げられ、これらは一種または二種以上で用いることができる。
(A)熱可塑性共重合体の好ましい具体例としては、メタクリル酸メチル(MMA)等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、スチレン等の芳香族ビニル系単量体、エチレン、プロピレン、環状オレフィン等のオレフィン系単量体等と、上記したような酸無水物単量体との共重合体が挙げられるが、より具体的には、MMAとマレイン酸無水物の共重合体、スチレンとマレイン酸無水物の共重合体、スチレン・アクリロニトリル・マレイン酸無水物の3元共重合体等が挙げられるが、より優れた効果を発揮する点で芳香族環単位を含有しない共重合体であることが好ましく、具体的にはMMAとマレイン酸無水物の共重合体が特に好ましい。
上記(2)の方法により、(A)熱可塑性共重合体を製造する場合、特に制限は無いが、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のオレフィン系(共)重合体、あるいはさらにこれと共重合可能な単量体(例えば不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、その他のビニル系単量体など)を共重合した(共)重合体などに不飽和酸無水物単量体、あるいはこれとその他の共重合可能な単量体をグラフト(共)重合することにより製造することができる。このような(A)熱可塑性共重合体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸無水物、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アコニット酸無水物等とのグラフト共重合体が挙げられるが、より好ましい具体例として、ポリエチレンとマレイン酸無水物とのグラフト共重合体、ポリプロピレンとマレイン酸無水物とのグラフト共重合体、環状ポリオレフィンとマレイン酸無水物とのグラフト共重合体等が挙げられるが、最も好ましい具体例は、耐熱性の観点から、環状ポリオレフィンとマレイン酸無水物とのグラフト共重合体が挙げられる。
これらグラフト共重合体を得る際には必要に応じて有機過酸化物などのラジカル開始剤を用いてもよい。
上記(3)の方法に従い、本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体を(B)原共重合体から製造する際には、不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、所望に応じてその他のビニル系単量体を原料として共重合して(B)原共重合体を製造し、その後分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。(B)原共重合体の重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができるが、不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合が特に好ましい。
また、(B)原共重合体を95℃以下の重合温度で製造することが、加熱処理後の無色透明性の面で好ましく、より好ましい重合温度は85℃以下であり、特に好ましくは75℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、通常50℃以上、好ましくは60℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能であるが、この場合も昇温する上限温度は95℃以下に制御することが好ましく、重合開始温度も75℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。また重合時間は、必要な重合率を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
(B)原共重合体の製造時に用いられる単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物を100重量%として、不飽和カルボン酸単量体が5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は好ましくは50〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%である。これらに共重合可能な他のビニル系単量体を用いる場合、その好ましい割合は0〜35重量%であるが、他のビニル系単量体が、芳香族環を含有する場合、その好ましい割合は0重量%である。
不飽和カルボン酸単量体量が5重量%未満の場合には、(B)原共重合体の加熱による上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位の生成量が少なくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸単量体量が50重量%を超える場合には、(B)原共重合体の加熱による環化反応後に、不飽和カルボン酸単位が多量に残存する傾向があり、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
(B)原共重合体を加熱し、(イ)脱アルコールおよび/または(ロ)脱水による分子内環化反応を行い、グルタル酸無水物単位を含有する(A)熱可塑性重合体を製造する方法は、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や窒素気流中または真空下で加熱脱気できる装置内で製造する方法が好ましい。なお、上記の方法により加熱脱気する温度は、(イ)脱アルコールおよび/または(ロ)脱水による分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜300℃の範囲、特に200〜280℃の範囲が好ましい。また、この際の加熱脱気する時間は特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、3分間〜60分間、好ましくは5分間〜30分間、さらに好ましくは8分間〜20分間の範囲が好ましい。
また、本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体を、(B)原共重合体から製造する際には、(A)熱可塑性共重合体の重量平均分子量を5万〜15万とすることが好ましい。このような分子量を有する(A)熱可塑性共重合体は、(B)原共重合体の重合時に、所望の分子量、すなわち重量平均分子量で5万〜15万に予め制御しておくことにより、達成することができる。重量平均分子量が、15万を越える場合、後工程の加熱脱気時に着色する傾向が見られる。一方、重量平均分子量が、5万未満の場合、成形品の機械的強度が低下する傾向が見られる。
(B)原共重合体の分子量制御方法については、特に制限はなく、例えば通常公知の技術を適用することができる。例えば、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるアルキルメルカプタンの添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
これらアルキルメルカプタンの添加量としては、特に制限はないが、通常、単量体混合物の全量100重量部に対して、0.8〜5.0重量部であり、好ましくは0.9〜4.0重量部、より好ましくは1.0〜3.0重量部である。
(B)原共重合体を上記方法等により加熱する際に、滞留安定性を損なわない範囲で、グルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、塩基、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は、(B)原共重合体100重量部に対し、0.1重量部未満であることが好ましい。また、これら酸、塩基、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。塩系触媒の中には、水溶液とすることにより酸性あるいは塩基性を示すものが含まれるが、これらは塩系触媒とし、酸触媒あるいは塩基性触媒と区別する。これら触媒は本発明の目的を損なわない範囲で1種または2種以上添加することができる。中でも、塩基性触媒が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムを好ましく使用することができる。
本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体中の(i)酸無水物単位の含有量は、好ましくは(A)熱可塑性共重合体100重量%中に0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜45重量%であり、特に(A)熱可塑性共重合体の主鎖骨格がポリオレフィンである場合、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%である。また、該酸無水物単位およびの定量には、赤外分光光度計が使用できる。例えば、グルタル酸無水物単位は、1800cm-1及び1760cm-1の吸収が特徴的であり、(ii)不飽和カルボン酸単位および(iii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。なお、本発明の(A)熱可塑性共重合体中に含有される各成分の定量には、上記した赤外分光光度計による方法とともに、1H−NMRによる方法を使用することができる。例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、スペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比および上記赤外分光光度計による測定結果を併せて共重合体組成を決定することができる。
また、本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体中に、(ii)不飽和カルボン酸単位が含有される場合、その含有量は0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、最も好ましくは1〜10重量%である。(ii)不飽和カルボン酸単位量が20重量%を超える場合には、滞留安定性が低下する傾向がある。 また(iii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位が含有される場合、その含有量は好ましくは50〜95重量%、より好ましくは55〜90重量%、共重合可能な他のビニル系単量体は好ましくは0〜35重量%であるが、他のビニル系単量体が、芳香族環を含有する場合、その好ましい割合は0重量%である。
また、本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体の極限粘度に特に制限はないが、ウベローデ型粘度計でジメチルホルムアミド溶液、30℃で測定した極限粘度が0.05〜0.8dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.7dl/g、さらに好ましくは0.3〜0.6dl/gである。
本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体は、ガラス転移温度が130℃以上であることが、バイオチップ基板としての実用耐熱性の面で好ましく、さらに好ましくは140℃以上である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度である。
このようなガラス転移温度を有する(A)熱可塑性共重合体は、(i)酸無水物単位の含有量を高目に設計することにより得ることができる。
本発明のバイオチップ用基板の製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、押出成形、圧縮成形、射出成形等の製造法が使用できるが、好ましくは、生産性および形状の自由度の観点から射出成形が使用できる。射出成形による製造法の場合、射出成形機中の温度は、(i)酸無水物単位を含有する共重合体の種類にも依るが、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、射出成形による製造法の場合、着色抑制の観点から、射出成形機のシリンダー内を窒素気流下あるいは窒素雰囲気下とすることが好ましい。また、射出成形による製造法の場合、(A)熱可塑性共重合体を射出成形機に供する形状(ペレット状等)にするため、前処理として単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のバイオチップ用基板を製造するための溶融混練温度は、(i)酸無水物単位を含有する共重合体の種類にも依るが、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。
射出成形による本発明のバイオチップ用基板の製造方法としては、金型温度を成形樹脂の固化温度以下の温度に設定し、溶融樹脂を射出、成形する一般的な方法が使用できる。また、バイオチップ用基板に対する金型転写性をより高度にすることを目的とした場合、
(1)樹脂の金型キャビティへの充填工程中に、金型面に接する樹脂表面の固化温度を低下させつつ成形する方法、
(2)断熱層被覆金型を用いて成形する方法、
(3)射出直前に、高周波誘導加熱によって金型表面を加熱させて成形する方法、
(4)射出直前に、輻射加熱によって金型表面を加熱させて成形する方法、
(5)樹脂を振動させつつ成形する方法、
(6)金型を振動させつつ成形する方法
等を使用することもできる。
射出成形による本発明のバイオチップ用基板の製造方法で使用される金型は、鉄または鉄を主成分とする鋼材、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする合金、亜鉛合金、ベリリウム−銅合金等の一般に合成樹脂の成形に使用されている金属金型が良好に使用できる。
射出成形による本発明のバイオチップ用基板の製造方法で使用される金型の作成方法としては、例えば、金属、プラスチック、シリコン又はガラス等の材料からの切削加工やエッチング加工、又は紫外線硬化樹脂のフォトリソグラフィ加工等の方法により、目的とする微細な溝を有する有機ポリマー製の平板の表面形状を有する母型を一つ作成し、この母型からニッケル等の電気化学的鋳造法により作成される。また、レジストパターンを形成する方法を用いて金型を作ることも可能である。金属基板にレジストパターンを形成した後、レジストのない部分を金属メッキで埋め、レジストを除去して、基板表面に微細なパターンを施した金属板を形成する。この金属板を金型にして、樹脂の加工を行うことが可能である。
さらに、本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲でヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、その添加剤保有の色が本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体に悪影響を及ぼさない範囲で添加する必要がある。
これら添加剤の混合方法としては、本発明で用いる(A)熱可塑性共重合体中に、これら添加剤が十分に分散する方法であれば特に制限は無いが、(B)原共重合体の製造時、(A)熱可塑性共重合体製造時あるいは本発明のバイオチップ用基板製造時に混合することができるが、好ましくは(A)熱可塑性共重合体製造時あるいは本発明のバイオチップ用基板製造時である。
ところで、上記のような共重合体にてバイオチップ用基板を作製する場合、ガラス、セラミック、金属などに比較し、射出成形方法やホットエンボス法などを用いることにより、微細な形状を設けた基材(バイオチップ)をより簡単に大量生産することが可能である。そこで、選択結合性物質が固定化されるバイオチップの形状について述べる。本発明の選択結合性物質が固定化されるバイオチップには凹凸部があり、凸部上面に選択性適合物質が固定化されていることが好ましい。このような構造を取ることにより、検出の際、後述のように非特異的に吸着した検体を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的によりS/Nが良好な選択結合性物質物質が固定化されたバイオチップを提供することができる。そして、凹凸部の複数の凸部の高さに関しては、凸部の上面の高さが略同一であるであることが好ましい。ここで、高さが略同一とは、多少高さの違う凸部の表面に選択結合性物質を固定化し、これと蛍光標識した被検体とを反応させ、そして、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの強度差が問題とならない高さをいう。具体的に高さが略同一とは、高さの差が100μmより小さいことをいう。さらに本発明のバイオチップには、平坦部が設けられていることが好ましい。具体例を図1、図2に示す。1が平坦部であり、かつ、2で示される凹凸部の凸部上面に選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。そして、該凹凸部の凸部分の上面が実質的に平坦であることが好ましい。ここで凸部上面が実質的に平坦とは、50μm以上の凹凸がないことを意味する。さらに、凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さが略同一であることが好ましい。ここで、平坦部と凹凸部との高さが略同一とは、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの低下具合が問題とならない高さをいう。具体的に高さの差が略同一とは、凹凸部凸部上面の高さと、平坦部の高さとの差が100μmより小さいことをいう。
すなわち、一般にマイクロアレイは、蛍光標識化された検体と基材に固定化された選択結合性物質とを反応させ、スキャナーと呼ばれる装置で蛍光を読みとることが一般的である。スキャナーは励起光であるレーザー光を対物レンズで絞り込み、レーザー光を集光する。この集光された光をマイクロアレイの表面に照射して、レーザー光の焦点をマイクロアレイ表面に合わせる。そして、この条件のまま、対物レンズもしくは、マイクロアレイ自体を走査することによりマイクロアレイから発生する蛍光を読み込むような仕組みとなっている。
このような、スキャナーを用いて本発明の凸部上面に選択結合性物質を固定化したバイオチップ(基材)をスキャンすると、凹凸部の凹部に非特異的に吸着した検体DNAの蛍光(ノイズ)を検出しがたいという効果を発揮する。この理由は、凸部上面にレーザー光の焦点が合っているため、凹部ではレーザー光がデフォーカスされるからである。逆に言えば、選択結合性物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部上面の高さと、最も低い凸部上面の高さの差が50μm以下であることが好ましい。なぜなら、凸部上面の高さにこれ以上のばらつきがあると、スキャナーの焦点深度の関係で正確な蛍光強度を測定できないことが起こりうるからである。
なお、選択結合性物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部上面の高さと、最も低い凸部上面の高さの差は、50μm以下であれば良いが、30μm以下であることがより好ましく、高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。
なお、選択結合性物質が固定化された複数の凸部とは、データとして必要な選択結合性物質(例えば核酸)が固定化された部分をいうのであって、ただ単にダミーの選択結合性物質を固定化した部分は除く。
また、一般にスキャナーの焦点を調整する方法は、以下の通りである。すなわち、スキャナーがマイクロアレイの表面に励起光の焦点を合わせる際には、マイクロアレイの隅で励起光の焦点を合わせるか、図3に示すように、治具にマイクロアレイを突き当て、レーザー光の焦点をマイクロアレイ表面に合わせる。そして、その条件のまま、マイクロアレイ全体をスキャンする。したがって、本発明の担体には、特に凹凸部と平坦部が設けられていることが好ましい。具体例を図1、図2に示す。11が平坦部であり、かつ、12で示される凹凸部の凸部上面に選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。さらに、凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差が50μm以下であることが好ましい。このようにしておけば、選択結合性物質が固定化された基材をスキャンする場合は、いったん平坦部の上面で励起光の焦点を合わせたり、平坦部を治具に突き当てることが可能である。すなわち、スキャナーの焦点合わせが容易になる。このようにして、平坦部で励起光の焦点を合わせるので、選択結合性物質が固定化された凸部の上面は、平坦であり、かつ、凸部上面の高さと平坦部の高さの差が50μm以下であることが好ましい。
凸部の上面の高さと平坦部の高さの差が50μmより大きいと、以下のような問題点が生じることがある。すなわち、励起光の焦点は平坦部の上面で調整されているので、凸部の上面の高さが異なると、凸部上面での励起光の焦点がぼやけてしまい、最悪の場合、選択結合性物質と検体が反応したことによる蛍光が全く検出されないことが起こりうる。同様なことは、凸部上面と高さが同じ平坦部が設けられていない場合でも起こりうる。
また、凸部の上面が平坦でない場合、凸部上面での励起光の焦点の大きさにばらつきが起き、結果的に1つの凸部上面内で検出された蛍光の強さにむらが発生する。こうなると、後の解析が困難となる。本願の場合は、上記のような問題は起きず、良好なシグナル(蛍光)を得ることが可能である。
なお、凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差は、50μm以下であればよいが、30μm以下であることがより好ましく、凸部の上面の高さと平坦部分の高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。
また本発明では、平面上の基材に選択結合性物質を点着するのではなく、凹凸部分の凸部上面にのみ選択結合性物質を固定化している。したがって、凸部上面以外の部分に非特異的に検体試料が吸着しても、凸部上面以外の部分では、励起光の焦点がぼやけてるため、望まざる非特異的な吸着をした検体試料からの蛍光を検出することがない。このため、ノイズが小さくなり、結果的にS/Nが良くなるという効果を発揮する。
また、凸部の上面の面積は略同一であることが好ましい。このようにすることにより、多種の選択結合性物質が固定化される部分の面積を同一にできるので、後の解析に有利である。ここで、凸部の上部の面積が略同一とは、凸部の中で最も大きい上面面積を、最も小さい上面面積で割った値が1.2以下であることを言う。
凸部の上面の面積は、特に限定される物ではないが、選択結合性物質の量を少なくすることができる点とハンドリングの容易さの点から、4mm2以下、10μm2以上が好ましい。
凹凸部における凸部の高さとしては、0.01mm以上、1mm以下が好ましい。凸部の高さがこれより低いと、スポット以外の部分の非特異的に吸着した検体試料を検出してしまうことがあり、結果的にS/Nが悪くなることがある。また、凸部の高さが1mm以上であると、凸部が折れて破損しやすいなどの問題が生じる場合がある。
また、少なくとも凸部の側面に導電性材料が設けられていることが好ましい。こうすると、例えば、対抗電極を設け、対抗電極とこの導電性材料の間に電流、電圧を印加することにより核酸の場合であるとハイブリダイゼーションの高速化が可能となる。導電性材料がコートされる好ましい領域としては、凹部の全部、凸部の側面全部である。その例を図4に示す。
印加する電圧の範囲としては、電流が流れる場合は、0.01V以上、2V以下の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は、0.1V以上、1.5V以下である。これより、大きい電圧を印加すると水が電気分解をおこし、表面の選択結合性物質に悪影響を及ぼす場合がある。導電性材料の材質としては特に限定されないが、炭素、マグネシウム、アルミ、シリコン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、錫、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、白金、金、ステンレスやこれらの混合物や導電性ポリマーが挙げられる。この中でも、白金、金、チタンが特に好ましく用いられる。これらの導電性材料の膜の作製方法としては、蒸着、スパッタ、CVD、メッキなどが挙げられる。
上記のように凸部に導電性材料をコートした場合は、凸部の上面以外はさらに絶縁材料の層を設けることが好ましい。絶縁材料の層があると、電流を流した場合凸部の上面にのみ被検体を引き寄せることが可能である。絶縁材料の材料としては、金属の酸化物(例えば、Al−O、SiO2、TiO2、VO、SnO、Cr−O、Zn−O、GeO2、Ta25、ZrO2、Nb−O、Y23など)、窒化物(Al−N、Si34、TiN、Ta−N、Ge−N、Zr−N、NbNなど)、硫化物(ZnS、PbS、SnS、CuS)、絶縁性のポリマーが挙げられる。
このように作製されたバイオチップ用基板は、基板表面に酸無水物単位を有するので、特別な処理を施すことなく、基板表面にアミノ基や水酸基を有する選択結合性物質を共有結合により容易に固定化することが可能となる。また、酸やアルカリで軽く加水分解分解を行うと、カルボキシル基を生成でき、アミノ基や水酸基を有する選択結合性物質を共有結合により容易に固定化することが可能である。本発明においては、酸無水物またはカルボキシル基とアミノ基または水酸基の結合反応を助長するため、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−エチル−5−フェニルイソオキサゾリウム−3’−スルホナートなどの様々な縮合剤を用いることもできる。これら縮合剤の中でも、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、毒性が少ないことや、反応系からの除去が比較的容易であり、選択結合性物質と担体表面の酸無水物またはカルボキシル基との縮合反応には特に好ましく用いられる。これらEDCなどの縮合剤は、選択結合性物質の溶液と混ぜて使用しても良いし、酸無水物が表面に生成された担体を予めEDCの溶液に浸漬しておき、表面を活性化しておいても良い。
このような縮合剤を用い、基板表面の酸無水物またはカルボキシル基と選択結合性物質のアミノ基とを反応させた場合は、アミド結合により基板表面と選択結合性物質が固定化されることになり、基板表面の酸無水物またはカルボキシル基と選択結合性物質の水酸基とを反応させた場合は、エステル結合により基板表面と選択結合性物質とが固定化されることになる。選択結合性物質を含む試料を基板に作用させる際の温度は、5℃〜95℃が好ましく、15℃〜65℃が更に好ましい。処理時間は通常5分〜24時間であり、1時間以上が好ましい。
上述した簡便な方法により、基板表面に選択結合性物質を固定化することにより、非特異的な検体の吸着を抑え、さらに、共有結合で強固に、かつ、高密度に選択結合性物質を固定化できる。
上述の方法により得られた選択結合性物質固定化基板は、選択結合性物質を固定した後、適当な処理をすることができる。例えば、熱処理、アルカリ処理、界面活性剤処理などを行うことにより、固定された選択結合性物質を変性させることもできる。
また、選択結合性物質固定化基板は、蛍光標識化された検体と基板に固定化された選択結合性物質とをハイブリダイゼーション反応させ、スキャナーと呼ばれる装置で蛍光を読みとることが一般的である。スキャナーは励起光であるレーザー光を対物レンズで絞り込み、レーザー光を集光する。しかし、基板表面から自家蛍光が生じる場合、その発光がノイズとなり検出精度の低下に繋がることがある。基板に黒色を呈し、またレーザー照射により発光を生じない物質を含有させて少なくとも表面を黒色にすることは、基板自身からの自家蛍光を低減させることができる点で好ましい。このような基板を用いることにより、検出の際、基板からの自家蛍光を低減できるのでよりノイズが小さく、結果的にシグナル/ノイズ(S/N)比が良好な選択結合性物質が固定化された基板を提供することができる。
ここで、基板が黒色とは、可視光(波長が400nmから800nm)範囲において、基板の黒色部分の分光反射率が特定のスペクトルパターン(特定のピークなど)を持たず、一様に低い値であり、かつ、基板の黒色部分の分光透過率も、特定のスペクトルパターンを持たず、一様に低い値であることをいう。
この分光反射率、分光透過率の値としては、可視光(波長が400nmから800nm)の範囲の分光反射率が7%以下であり、同波長範囲での分光透過率が2%以下であることが好ましい。なお、ここでいう分光反射率は、JIS Z 8722 条件Cに適合した、照明・受光光学系で、基板からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率をいう。
黒色にする手段としては、基板に黒色物質を含有させることにより達成しうるが、この黒色物質の好ましいものを挙げると、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物などの黒色物質が使用できる。
これらの黒色物質は単独で含有させる他、2種類以上を混合して含有させることもできる。この中の黒色物質の中でも、カーボンブラック、チタンブラックを好ましく含有させることができ、ポリマーに一様に分散しやすいことから特にカーボンブラックを好ましく用いることができる。
ここで、「選択結合性物質」とは、被検物質と直接的又は間接的に、選択的に結合し得る物質を意味し、代表的な例として、核酸、タンパク質、糖類及び他の抗原性化合物を挙げることができる。核酸は、DNAやRNAでもPNAでもよい。特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう「選択結合性物質」に該当する。また、タンパク質としては、抗体及びFabフラグメントやF(ab')2フラグメントのような、抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。抗体やその抗原結合性断片は、対応する抗原と選択的に結合し、抗原は対応する抗体と選択的に結合するので、「選択結合性物質」に該当する。糖類としては、多糖類が好ましく、種々の抗原を挙げることができる。また、タンパク質や糖類以外の抗原性を有する物質を固定化することもできる。本発明に用いる選択結合性物質は、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。なかでも「選択結合性物質」として核酸を用いる場合には、本発明のバイオチップ基板が有する特性を充分活かすことができるので特に好ましい。この核酸の中でも、オリゴ核酸と呼ばれる、長さが10塩基から100塩基までの核酸は、合成機で容易に人工的に合成が可能であり、また、核酸末端のアミノ基修飾が容易であるため、担体表面への固定化が容易となることから好ましい。さらに、長さが20塩基未満ではハイブリダイゼーションの安定性が低いという観点から20〜100塩基がより好ましい。ハイブリダイゼーションの安定性を保持するため、特に好ましくは40〜100塩基の範囲である。
本発明の担体を用いた測定方法に供せられる被検物質としては、測定すべき核酸、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分、抗原性を有する各種生体成分、病原菌やウイルス等に対する抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの被検物質を含む検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、各種組織液等の体液や、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、被検物質となる核酸は、血液や細胞から常法により抽出した核酸を標識してもよいし、該核酸を鋳型として、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよい。後者の場合には、測定感度を大幅に向上させることが可能である。核酸増幅産物を被検物質とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオチド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。また、被検物質が抗原又は抗体の場合には、被検物質である抗原や抗体を常法により直接標識してもよいし、被検物質である抗原又は抗体を選択結合性物質と結合させた後、担体を洗浄し、該抗原又は抗体と抗原抗体反応する標識した抗体又は抗原を反応させ、担体に結合した標識を測定することもできる。
固定化物質と被検物質を相互作用させる工程は、従来と全く同様に行うことができる。反応温度及び時間は、ハイブリダイズさせる核酸の鎖長や、免疫反応に関与する抗原及び/又は抗体の種類等に応じて適宜選択されるが、核酸のハイブリダイゼーションの場合、通常、50℃〜70℃程度で1分間〜十数時間、免疫反応の場合には、通常、室温〜40℃程度で1分間〜数時間程度である。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(A)熱可塑性共重合体の製造
(A−1):
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤(以下の方法で調製した。メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続け、メタクリル酸メチルとアクリルアミド共重合体の水溶液として得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の(B−1)原共重合体を得た。この(B−1)原共重合体の重合率は98%であった。
メタクリル酸(MAA) 30重量部
メタクリル酸メチル(MMA) 70重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.32重量部
このビーズ状の(B−1)原共重合体を、スクリュウ径30mm、L/Dが45.5のベント付き同方向回転2軸押出機(日本製鋼所社製 TEX30XSSST)のホッパー口より5kg/hで供給して、樹脂温度280℃、スクリュウ回転数100rpmで溶融押出し、ペレット状のグルタル酸無水物単位を含有する(A−1)熱可塑性共重合体を得た。この際の滞留時間(原料を供給してから、吐出口より吐出されるまでの時間)は、約7分であった。得られた(A−1)熱可塑性共重合体を赤外分光光度計を用いて分析した結果、1800cm-1及び1760cm-1に吸収ピークが確認され、この(A−1)熱可塑性共重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。また、この共重合体を重ジメチルスルホキシドに溶解させ、室温(23℃)にて1H−NMRを測定し、共重合体組成を決定したところ、メタクリル酸メチル単位73重量%、グルタル酸無水物単位20重量%、メタクリル酸単位7重量%であった。また、この(A−1)熱可塑性共重合体の極限粘度は0.41dl/gであった。
(A−2):
上記ビーズ状の(B−1)原共重合体およびナトリウムメトキシド(原共重合体100重量%に対し、0.1重量%となる量)を、スクリュウ径30mm、L/Dが45.5のベント付き同方向回転2軸押出機(日本製鋼所社製 TEX30XSSST)のホッパー口より5kg/hで供給して、樹脂温度280℃、スクリュウ回転数100rpmで溶融押出し、ペレット状のグルタル酸無水物単位を含有する(A−2)熱可塑性共重合体を得た。この際の滞留時間(原料を供給してから、吐出口より吐出されるまでの時間)は、約7分であった。得られた(A−2)熱可塑性共重合体を赤外分光光度計を用いて分析した結果、1800cm-1及び1760cm-1に吸収ピークが確認され、この(A−2)熱可塑性共重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。また、この共重合体を重ジメチルスルホキシドに溶解させ、室温(23℃)にて1H−NMRを測定し、共重合体組成を決定したところ、メタクリル酸メチル単位73重量%、グルタル酸無水物単位26重量%、メタクリル酸単位1重量%であった。また、この(A−2)熱可塑性共重合体の極限粘度は0.42dl/gであった。
(A−3):ペレット状の上記(A−2)熱可塑性共重合体90重量部に対し、カーボンブラック(三菱化学社製 ♯3050B、初期粒径40nm)10重量部を、スクリュウ径30mm、L/Dが45.5のベント付き同方向回転2軸押出機(日本製鋼所社製 TEX30XSSST)のホッパー口より5kg/hで供給して、樹脂温度280℃、スクリュウ回転数100rpmで溶融押出し、黒色ペレット状の(A−3)熱可塑性共重合体を得た。
(C−1):PCである帝人化成社製“パンライト”AD5503を使用した。
(C−2):PMMAである住友化学社製“スミペックス”MGを使用した。
(C−3):5−メチル−2−ノルボルネンの開環重合体の水素添加物(メルトフローレート(MFR)=21g/10分、水素添加率:実質的に100%、ガラス転移温度140℃)を使用した。
実施例1〜3
厚さ1.2mm、直径127mmの合成石英ガラス上に、スパッタリングによりエッチングマスクとして厚さ150nmのSi膜を作製した。この上にフォトレジスト(東京応化社製OFPR5000)をスピナーで3μmの厚みに塗布した。その後、マスクを介してUV光をフォトレジストに照射した。そして現像し、露光した部分のフォトレジストを除去した。次に、現像まで行ったガラス基板を真空容器内にいれ、SF6ガスを導入しリアクティブイオンエッチングを行った。こうして、露光した部分のSi膜(エッチングマスク)を除去した。続いてパーターニングされたフォトレジストとエッチングマスクの両方をマスクとして、45%フッ酸水溶液にて室温にてエッチングした。次に酸素雰囲気下でプラズマエッチングを行い、フォトレジストを灰化してフォトレジストを除去した。さらにSF6雰囲気下でリアクティブイオンエッチングを行い、エッチングマスクを除去した。このようにして、合成石英製の母基板をえた。この母基板に刻まれた溝のディメンジョンは、断面が半円状であり、もっとも幅の広い部分、すなわち溝の一番上の部分は、幅50μmであった。深さは20μmであった。
次にこの母基板上にスパッタリングで厚さ100nmのNiを作製し導通処理した。このNi導電膜を電極としてNiを120分間電鋳めっきし、0.4mm厚のNi板を作製した。次に、Ni板を母基板から剥離し金属板に裏打ちした。これを76mm×26mm×1mmのキャビティーをもつ金型にセットし、(A−1、A−2、A−3)熱可塑性共重合体を、住友プロマット40/25(25t)射出成形機に供し、シリンダー内に窒素を流し込みながら、シリンダー温度270℃、金型温度80℃とし、厚さ1mmの平板を成形した。得られた平板には、表面に母基板と同じ幅50μm、深さ20μmの溝が形成されていた。この成形片を使用し、下記方法により評価した。
比較例1
実施例1〜3と同様に作成したNi板を母基板から剥離し金属板に裏打ちした。これを76mm×26mm×1mmのキャビティーをもつ金型にセットし、ペレット状の(C−1)PCである帝人化成社製“パンライト”AD5503を、住友プロマット40/25(25t)射出成形機に供し、シリンダー温度280℃、金型温度80℃とし、厚さ1mmの平板を成形した。得られた平板には、表面に母基板と同じ幅50μm、深さ20μmの溝が形成されていた。この成形片を使用し、下記方法により評価した。
比較例2
実施例1〜3と同様に作成したNi板を母基板から剥離し金属板に裏打ちした。これを76mm×26mm×1mmのキャビティーをもつ金型にセットし、ペレット状の(C−2)PMMAである住友化学社製“スミペックス”MGを、住友プロマット40/25(25t)射出成形機に供し、シリンダー温度230℃、金型温度80℃とし、厚さ1mmの平板を成形した。得られた平板には、表面に母基板と同じ幅50μm、深さ20μmの溝が形成されていた。この成形片を使用し、下記方法により評価した。
比較例3
実施例1〜3と同様に作成したNi板を母基板から剥離し金属板に裏打ちした。これを76mm×26mm×1mmのキャビティーをもつ金型にセットし、ペレット状の(C−3)5−メチル−2−ノルボルネンの開環重合体の水素添加物を、住友プロマット40/25(25t)射出成形機に供し、シリンダー温度270℃、金型温度80℃とし、厚さ1mmの平板を成形した。得られた平板には、表面に母基板と同じ幅50μm、深さ20μmの溝が形成されていた。この成形片を使用し、下記方法により評価した。
(1)耐熱性
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度でガラス転移温度(Tg)を測定した。
(2)基板への核酸の固定化およびハイブリダイゼーション
(プローブDNAの固定化)
配列番号1(60塩基、5’末端アミノ化)のDNAを合成した。このDNAは5’末端がアミノ化されている。
このDNA(乾燥状態)を、純水に0.27nmol/μlの濃度で溶かして、ストックソリューションとした。基板に点着する際は、PBS(NaClを8g、Na2HPO4・12H2Oを2.9g、KClを0.2g、KH2PO4を0.2g純水に溶かし1リットルにメスアップしたものにpH調整用の塩酸を加えたもの、pH5.5)でプローブの終濃度を0.027nmol/μlとし、かつ、担体表面のグルタル酸無水物とプローブDNAの末端のアミノ基とを縮合させるため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mlとした。そして、これらの混合溶液をおよそ200nl取り出して、これを(A−1)、(A−2)、(A−3)、(C−1)、(C−2)、(C−3)の成形片(基板)上の平坦部分(溝が形成されていない部分)に点着した。次いで、成形片を密閉したプラスチック容器に入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間インキュベートした後、純水で洗浄した。
なお、別途(A−3)成形片を作製して、この黒色基板の分光反射率と分光透過率を測定したところ、分光反射率は、可視光領域(波長が400nmから800nm)のいずれの波長でも5%以下であり、また、同範囲の波長で透過率は0.5%以下であった。分光反射率、分光透過率とも、可視光領域において特定のスペクトルパターン(ピークなど)はなく、スペクトルは一様にフラットであった。なお、分光反射率は、JIS Z 8722の条件Cに適合した照明・受光光学系を搭載した装置(ミノルタカメラ製、CM−2002)を用いて、基材からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率を測定した。
(検体DNAの調製)
検体DNAとして、上記DNA固定化基板とハイブリダイズ可能な塩基配列を持つ配列番号5のDNA(968塩基)を用いた。調製方法を以下に示す。
配列番号2と配列番号3のDNAを合成した。これを純水にとかして濃度を100μMとした。次いで、pKF3 プラスミドDNA(タカラバイオ(株)製品番号;3100)(配列番号4:2264塩基)を用意して、これをテンプレートとし、配列番号2および配列番号3のDNAをプライマーとして、PCR反応(Polymerase Chain Reaction)により増幅を行った。
PCRの条件は以下の通りである。すなわち、ExTaq 2μl、 10×ExBuffer 40μl、 dNTP Mix 32μl(以上はタカラバイオ(株)製 製品番号RR001Aに付属)、 配列番号2の溶液を2μl、配列番号3の溶液を2μl、 テンプレート(配列番号4)を0.2μlを加え、純水によりトータル400μlにメスアップした。これらの混合液を、4つのマイクロチューブに分け、サーマルサイクラーを用いてPCR反応を行った。これをエタノール沈殿により精製して、40μlの純水に溶解した。PCR反応後の溶液の一部をとり電気泳動で確認したところ、増幅したDNAの塩基長は、およそ960塩基であり配列番号5(968塩基)が増幅されていることを確認した。
次いで、9塩基のランダムプライマー(タカラバイオ(株)製;製品番号3802)を6mg/mlの濃度に溶かし、上記のPCR反応後精製したDNA溶液にに2μl加えた。この溶液を100℃に加熱した後、氷上で急冷した。これらにKlenow Fragment(タカラバイオ(株)製;製品番号2140AK)付属のバッファーを5μl、dNTP混合物(dATP、dTTP、dGTPの濃度はそれぞれ2.5mM、dCTPの濃度は400μM)を2.5μl加えた。さらに、Cy3−dCTP(アマシャムファルマシアバイオテク製;製品番号PA53021)を2μl加えた。この溶液に10UのKlenow Fragmentを加え、37℃で20時間インキュベートし、Cy3で標識された検体DNAを得た。なお、標識の際ランダムプライマーを用いたので検体DNAの長さには、ばらつきがある。最も長い検体DNAは配列番号5:(968塩基)となる。なお、検体DNAの溶液を取り出して、電気泳動で確認したところ、960塩基に相当する付近にもっとも強いバンドが現れ、それより短い塩基長に対応する領域に薄くスメアがかかった状態であった。そして、これをエタノール沈殿により精製し、乾燥した。
この標識化された検体DNAを、1重量%BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC(5×SSCとはNaClを43.8g、クエン酸3ナトリウム水和物を22.1gの純水にとかし、200mlにメスアップしたもの。またNaClを43.8g、クエン酸3ナトリウム水和物を22.1g純水にとかし、1lにメスアップしたものを1×SSCと表記し、これの10倍濃縮液を10×SSC、5倍希釈液を0.2×SSCと表記する。)、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.01重量%サケ精子DNAの溶液(各濃度はいずれも終濃度)、400μlに溶解し、ハイブリダイゼーション用の溶液とした。
(ハイブリダイゼーション)
成形片上に固定化されたプローブDNAと上記検体DNAをハイブリダイゼーションさせた。具体的には、先に用意したプローブDNAが固定化されている成形片にハイブリダイゼーション用の溶液を10μl滴下し、その上にカバーガラスをかぶせた。また、カバーガラスの周りをペーパーボンドでシールし、ハイブリダイゼーションの溶液が乾燥しないようにした。これを、プラスチック容器の中に入れ、65℃、湿度100%の条件で10時間インキュベートした。インキュベート後、カバーガラスを剥離後に洗浄、乾燥した。
(測定)
次いで、ハイブリダイゼーションの有無を検出するために、ハイブリダイゼーション後の成形片上の蛍光を蛍光顕微鏡(オリンパス光学)により観察した。ハイブリダイゼーションを示す蛍光が観察された場合、表1中に○印を、蛍光が観察されない場合は、×印を示した。
次いで、定量的な議論を行うために、DNAチップ用のスキャナー(Axon Instruments社のGenePix 4000A)に上記の成形片をセットし、レーザー出力33%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を600にした状態で測定を行った。その結果、すなわち、プローブDNAを固定化した部分の蛍光(シグナル)と、プローブDNAを固定化した部分以外の蛍光強度(ノイズ)をあわせて表1に示す。
また、ハイブリダイゼーションの操作後に成形片に、反りなどの変形が認められたものを×、変形が認められなかったものを○印で示した。
Figure 2005049329
実施例1〜2、比較例1〜3の比較により、本発明のバイオチップ用基板に使用される特定の共重合体は、高い耐熱性を有し、さらに基板への核酸の固定化およびハイブリダイゼーションも容易である。
また、PCおよび比較例3で使用した重合体は、良好な耐熱性を有するものの、本発明のバイオチップ用基板に使用される特定の共重合体は核酸の固定化およびハイブリダイゼーションに劣り、バイオチップ用基板としては適していないことがわかる。
また、実施例3より、バイオチップ基板を黒色化することにより、スキャナーによる観察において、ノイズが大幅に減少することが分かる。
本実施例では、基板の平坦な部分にDNAを固定化したが、本発明のバイオチップ用基材を用い、本実施例で示した同じ方法で、平坦部分のみならず微細な溝にもDNAやタンパク質を容易に固定化できる。
比較例4
実施例1のように基板が本発明の樹脂ではなく、ガラスの場合の実験を行った。
スライドガラスを10N NaOH水溶液に1時間浸漬したあと、純水で十分に洗浄した。ついで、APS(3−アミノプロピルトリエトキシシラン;信越化学工業(株)製)を2重量%の割合で純水に溶解した後、上記のスライドガラスを1時間浸漬し、この溶液から取り出した後に110℃で10分間乾燥した。このようにして、ガラスの表面にアミノ基を導入した。
ついで、5.5gの無水コハク酸を1−メチル−2−ピロリドン335mlに溶解させた。1Mの50mlのホウ酸ナトリウム(ホウ酸3.09gとpH調整用の水酸化ナトリウムを加えて、純水で50mlにメスアップしたもの。pH8.0)に上記コハク酸溶液に加えた。この混合液に上記のガラス基板を20分間浸漬した。浸漬後、純水で洗浄および乾燥した。このようにして、ガラス基板の表面のアミノ基と無水コハク酸を反応させて、ガラス表面にカルボン酸を導入した。これをDNA固定化用基板として用いた。さらに、塩基配列1のDNAを実施例1と同様の手順で上記ガラス基板に固定化した。さらに定量的な議論を行うためにこれらの基板における発光強度をスキャナーにより測定した。その結果を表2に示す。表2の結果からガラス基板では蛍光が微弱であり、S/N比が劣っていることがわかる。
また、その他の市販のアミノ基が導入されたスライドガラスを用い、上記と同様なスキームでDNAの固定化、ハイブリダイゼーションまで行った。用いたスライドガラスは、DNAマイクロアレイ用コートスライド硝子 高密度アミノ基導入タイプ(松浪硝子工業(株)製;製品番号SD00011)とMASコートスライドガラス(松浪硝子工業(株)製;製品番号S081110)を用いた。同様に測定した結果、これらのスライドガラスを用いても、実施例1よりもS/N比が劣っていた。その結果を表2に示す。
Figure 2005049329
実施例4
(DNA固定化担体の作製)
公知の方法であるLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスを用いて、射出成形用の型を作製し、射出成型法により後述するような形状を有する(A−3)からなる基板を得た。
基板の形状は、大きさが縦76mm、横26mm、厚み1mmであり、基板の中央部分を除き表面は平坦であった。基板の中央には、直径10mm、深さ0.2mmの凹んだ部分が設けてあり、この凹みの中に、直径0.2mm、高さ0.2mmの凸部を64(8×8)箇所設けた。凹凸部分の凸部上面の高さ(64箇所の凸部の高さの平均値)と平坦部分との高さの差を測定したところ、3μm以下であった。また、64個の凸部上面の高さのばらつき(最も高い凸部上面の高さと最も低い凸部上面との高さの差)、さらには、凸部上面の高さの平均値と平坦部上面の高さの差を測定したところそれぞれ3μm以下であった。さらに、凹凸部凸部のピッチ(凸部中央部から隣接した凸部中央部までの距離)は0.6mmであった。
(プローブDNAの固定化)
そして、配列番号1(60塩基、5’末端アミノ化)のDNAを合成した。このDNAは5’末端がアミノ化されている。このDNAを、純水に0.27nmol/μlの濃度で溶かして、ストックソリューションとした。基板に点着する際は、PBS(pH5.5)でプローブの終濃度を0.027nmol/μlとし、かつ、担体表面の酸無水物およびカルボン酸とプローブDNAの末端のアミノ基とを縮合させるため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mlとした。そして、これらの混合溶液をガラス製のキャピラリーに取り、顕微鏡下でこのプローブDNAをPMMA基板の凸部上の4箇所に点着した。次いで、この基板を密閉したプラスチック容器入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間程度インキュベートして、その後純水で洗浄した。
(検体DNAの調製)
実施例1と同様に行った。
(ハイブリダイゼーション)
前述の(検体DNAの調製)で調製したDNA溶液を10μl取りだし、これに30μlの、1重量%BSA、5×SSC、0.1重量%SDS、0.01重量%サケ精子DNAの溶液を加え、トータルで40μlとした(すなわち、実施例1や2と比較すると、検体の濃度は1/4であるが、トータルの検体量は実施例1や2と同じとなる)。そして、これを前述したDNAが固定化された担体の凹凸部分に滴下して、注意深くカバーガラスをかぶせた。そして、カバーガラスの周りをペーパボンドでシーリングして、ハイブリダイゼーション溶液が乾かないようにした。すなわち、検体DNAの分子量を実施例1や比較例1と同じにした。これをプラスチック容器に入れて、湿度100%、温度65℃の状態で10時間インキュベートした。インキュベート後、カバーガラスを剥離して、洗浄・乾燥した。
(測定)
実施例1と同じ条件にて、スキャナーにより蛍光測定を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2005049329
これから、蛍光強度については実施例3とほぼ同一であるが、ノイズについては実施例3よりもさらに低下した。すなわち、よりS/N比が向上した。
実施例5
次いで、凸部の高さがばらついた場合について実験を行った。実施例4で用いた射出成形品の凸部をラッピングペーパーで削り、凸部上面の高さに差を設けた。すなわち、他の凸部上面(基準となる凸部)よりも、30μm低い凸部(4箇所)がある基材(基材ア)、他の凸部上面よりも、50μm低い凸部(4箇所)がある基材(基材イ)をそれぞれ作製した。なお、これら基材の低い部分以外の凸部(基準となる凸部)上面の高さと、平坦部分の高さの差は3μm以下であった。実施例4と同様に、点着するプローブDNAの調製を行った。ついで、基準となる凸部上面に4箇所、低い凸部上面に4箇所にプローブDNA溶液の点着を実施例4と同様に行った。さらに、ハイブリダイゼーション用のDNAの調製、ハイブリダイゼーションの操作、測定を実施例4と同様に行った。基準となる凸部上面の蛍光強度の平均値とその周りのノイズ、高さが低い凸部上面の蛍光強度の平均値とその周りのノイズを表4に示す。
Figure 2005049329
このように、凸部の高さにばらつき(50μm以下)があっても、比較例と比べると十分に大きなS/Nが得られていることがわかる。
実施例6
さらに、凸部上面と平坦部の差がある場合について検討した。実施例4で用いた射出成形品の平坦部をラッピングペーパーで削り、平坦部上面と凸部上面の高さの差が30μm(基材ウ)、50μm(基材エ)の2種類の基材を作製した。すなわち、基材ウは凸部の高さが平坦部の高さより30μm高いことになる。実施例4と同様に、点着するプローブDNAの調製、凸部上面へのプローブDNA溶液の点着、ハイブリダイゼーション用DNAの調製、ハイブリダイゼーションの操作を行い、実施例4と同様に測定を行った。その結果を表5に示す。
Figure 2005049329
このように、平坦部上面と凸部上面との高さに差(50μm以下)があっても、比較例と比較するれば十分に大きなS/Nが得られていることがわかる。
本発明の基材の模式図 本発明の基材の断面模式図 マイクロアレイ突き当て用治具の例 基材凹凸部の断面図
符号の説明
11 平坦部
12 凹凸部
13 マイクロアレイ
14 対物レンズ
15 励起光
16 マイクロアレイを治具に突き当てるためのバネ
21 凸部上面
22 導電性膜
23 絶縁膜

Claims (17)

  1. (A)(i)酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体で構成されることを特徴とするバイオチップ用基板。
  2. (A)熱可塑性共重合体が、(ii)不飽和カルボン酸単位を有することを特徴とする請求項1記載のバイオチップ用基板。
  3. (A)熱可塑性共重合体が、(iii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有することを特徴とする請求項1あるいは2記載のバイオチップ用基板。
  4. (A)熱可塑性共重合体が、芳香族環含有単位を有しないことを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載のバイオチップ用基板。
  5. (A)熱可塑性共重合体中の(i)酸無水物単位が下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のバイオチップ用基板。
    Figure 2005049329
    (上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す)
  6. (A)熱可塑性共重合体の280nm波長での吸光度(ここで、吸光度は、厚さ100μmでのフィルムを用いて、紫外可視分光光度計で測定した値を示す)が0.5以下であり、かつガラス転移温度が130℃以上であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のバイオチップ用基板。
  7. (A)熱可塑性共重合体が、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を、95℃以下の温度で重合して(B)原共重合体を得、次いで(B)原共重合体を加熱し、(イ)脱アルコール反応および/または(ロ)脱水反応により得られたものであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のバイオチップ用基板。
  8. 基板が黒色であることを特徴とする、請求項1〜7いずれかに記載のバイオチップ用基板。
  9. 基板を構成する(A)(i)酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体にカーボンブラックが混合されていることを特徴とする請求項8記載のバイオチップ用基板。
  10. (A)熱可塑性共重合体を射出成形することにより作製された請求項1〜9いずれか記載のバイオチップ用基板。
  11. 請求項1〜10いずれか記載の基板を用いたことを特徴とするバイオチップ。
  12. (A)(i)酸無水物単位を有する熱可塑性共重合体からなるバイオチップ用基板材料。
  13. 請求項1から9のいずれかに記載のバイオチップ用基板を用いたバイオチップであって、該バイオチップには凹凸部が設けられており、選択結合性物質が凹凸部の複数の凸部の上面に固定化されていることを特徴とする選択結合性物質が固定化されたバイオチップ。
  14. 該凹凸部の凸部上面が実質的に平坦であり、選択結合性物質が固定化された凸部上面の高さが、略同一である請求項13に記載に記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ。
  15. 該バイオチップには平坦部が設けられていることを特徴とする請求項13または14に記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ。
  16. 選択性結合物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部の高さと、最も低い凸部の高さの差が50μm以下であることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ。
  17. 凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差が50μm以下であることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の選択結合性物質が固定化されたバイオチップ。
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