JP2005047964A - 酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液および酸化珪素薄膜の保護方法 - Google Patents
酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液および酸化珪素薄膜の保護方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ガラス転移点50〜70℃、重量平均分子量1,500〜15,000かつ水酸基価(mgKOH/g)10〜60のポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解してなり、使用時にポリイソシアネートを添加してなることを特徴とする酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液および酸化珪素薄膜の保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品、医薬品、精密電子部品などの包装に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に食品においては蛋白質や油脂などの酸化や変質を抑制し、さらに味や鮮度を保持するために、また、無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品においては有効成分の変質を抑制し、効能を維持するために、さらに精密電子部品においては金属部分の腐食や絶縁不良などを防止するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらの包装材料には、気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
そのため、従来からアルミニウムなどの金属からなる金属箔、適当な高分子フィルムにアルミニウムなどの金属または金属化合物を蒸着した金属蒸着フィルムが包装フィルムとして一般的に使用されてきた。これらの中でもアルミニウムなどの金属または金属化合物を用いた箔や蒸着膜を形成した金属蒸着フィルムは、温度や湿度などの影響を受けることは少なく、ガスバリア性に優れるが、包装体の内容物を透視して確認することができないという欠点を有していた。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服した包装用材料として、酸化珪素などの金属酸化物を高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法などにより蒸着膜を形成したフィルムが開発されている。さらに、このフィルムはその使用に際して通常種々の印刷が施されるが、印刷によってガスバリヤー性が低下するという問題があり、これらの問題を解決するために、上記蒸着層の表面にポリエステル樹脂などからなる透明プライマー層を設ける方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特許第3368646号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、透明樹脂からなるプライマー層表面に、有機溶剤を含むグラビアインキで印刷を施す際に、該プライマー層が印刷インキの溶剤によって、溶解若しくは膨潤する傾向があり、印刷物のレベリング性や見掛け上の印刷濃度が低下するという課題がある。このような課題を解決する方法として、上記プライマー層を架橋させることも提案されている。しかしながら、上記特許文献1に記載の方法における透明樹脂は、分子量が比較的大であり、架橋させてもその架橋密度が低く、グラビアインキによる印刷時における前記有機溶剤に起因する課題は充分には解決されていない。
【0007】
従って本発明の目的は、無色透明であり、かつ高いガスバリア性を有するとともに、溶剤を用いるグラビアインキで印刷を施してもガスバリア性が低下したり、保護層が溶解膨潤せず、しかも高品質の印刷が可能な透明ガスバリアフィルムを構成できる酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液および酸化珪素薄膜の保護方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、ガラス転移点50〜70℃、重量平均分子量1,500〜15,000かつ水酸基価(mgKOH/g)10〜60のポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解してなり、使用時にポリイソシアネートを添加してなることを特徴とする酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液を提供する。該塗工液においては、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの使用割合が、NCO/OH=0.8〜1.5となる割合であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、少なくとも一方の面に酸化珪素薄膜層を有する透明性を有する高分子フィルムの該薄膜層上に、前記本発明の保護層用塗工液を塗布、乾燥および熟成して、架橋した透明保護層を形成することを特徴とする酸化珪素薄膜の保護方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明の主たる特徴は、保護層用塗工液の主たる保護層形成材料として、ガラス転移点50〜70℃、重量平均分子量1,500〜15,000かつ水酸基価(mgKOH/g)10〜60のポリエステル樹脂を用いた点にある。このようなポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オルソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジメチルフタル酸などを使用し、多価アルコール成分として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオールおよびビスフェノールAなどを使用し、COOH基とOH基とを当量比にてOH基過剰の状態で両者を反応させることによって得られる。1例として、フタル酸、テレフタル酸、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを混合し反応させることで、重量平均分子量8,000、水酸基価16、ガラス転移点62℃のポリエステル樹脂が得られる。
【0011】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、そのガラス転移点が50〜70℃であることが必要であり、好ましくは55〜65℃である。該ガラス転移点は使用する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を適宜組み合わせることによって上記範囲にすることができる。ガラス転移点が50℃よりも低いと、塗工液を酸化珪素薄膜付きフィルムに塗布乾燥後、フィルムを巻き取る際に塗布層がフィルムの裏面にブロッキングを起こし易くなり、一方、ガラス転移点が70℃を超えると、形成される保護層の酸化珪素薄膜に対する接着性が低下する。
【0012】
また、本発明で使用するポリエステル樹脂は、その重量平均分子量が1,500〜15,000であることが必要であり、好ましくは1,500〜10,000、より好ましくは5,000〜8,000である。該分子量は、使用する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の当量と使用量とによって上記範囲とすることができる。分子量が1,500よりも低いと、酸化珪素薄膜上に形成される保護層が脆くなり、保護層としての充分な性能が得られない。一方、分子量が15,000を超えると、ポリイソシアネートで架橋しても、架橋密度が高くならず、グラビアインキ中の有機溶剤に対する耐久性が充分に得られないので好ましくない。
【0013】
また、本発明で使用するポリエステル樹脂は、その水酸基価が10〜60であることが必要であり、好ましくは15〜50、より好ましくは15〜30である。該水酸基価は使用する多価カルボン酸成分の当量および多価アルコール成分の当量とを決めることによって上記範囲とすることができる。水酸基価が10より低いと、ポリイソシアネートで架橋させても架橋密度が高くならず、充分な耐溶剤性のある保護層を形成することができない。一方、水酸基価が60を超えると、架橋に必要なポリイソシアネートが多くなり、形成される保護層被膜が硬く、伸びのない保護層被膜となるので好ましくない。
【0014】
本発明の塗工液は、上記ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解し、使用時にポリイソシアネートを添加する。ポリエステル樹脂の濃度は通常約20〜50質量%である。使用する有機溶剤としては、上記ポリエステル樹脂を溶解することが可能であれば特に限定されることはなく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類のうち単独または任意に配合したものが使用される。好ましくは塗膜加工および臭気の面からトルエンとメチルエチルケトンを混合したものが好ましい。
【0015】
上記で使用するポリイソシアネートは、従来公知の架橋剤として知られているポリイソシアネートの何れでもよく、特に限定されないが、1分子中に活性イソシアネート基が3個以上存在し、イソシアネート基の量が12質量%以上(固形分換算)であるポリイソシアネートが好適であり、例えば、コロネートLの商品名で、日本ポリウレタン(株)から入手して使用できる。
【0016】
前記ポリイソシアネートの使用量は前記ポリエステル樹脂の水酸基に対してNCO/OH比が0.8〜1.5になる割合で使用することが好ましい。NCO/OH比が1.5を超えると、イソシアネート基が過剰となり、形成される保護層が硬くなり、保護層の柔軟性が損なわれる。一方、NCO/OH比が0.8未満であるとイソシアネート基が不足し、充分な架橋密度を有する保護層が得られず、グラビアインキの溶剤に対する耐溶剤性が不十分となる。
【0017】
上記本発明の塗工液には適当な添加剤を添加することもできる。例えば、塗工液の塗工面は酸化珪素膜であることから、前記塗工液にシランカップリング剤を添加することで、保護層の酸化珪素薄膜層に対する接着性や耐水性を改良することができる。さらに保護層のブロッキング防止あるいはスリッピング性向上のために、二酸化珪素、脂肪酸アミド、ポリエチレンワックスなどを前記塗工液に添加することができる。
【0018】
本発明において、上記塗工液によって保護層が形成される酸化珪素薄膜層を有する透明フィルムとは、少なくとも一方の面に酸化珪素薄膜層を有する透明性を有する高分子フィルムであり、上記酸化珪素薄膜層はフィルムの両面に形成してもよく、また多層に形成してもよい。
【0019】
上記透明性を有する高分子フィルムは無色透明であればよく、通常、包装材料として用いられるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルムなどが用いられ、該フィルムは延伸・未延伸のどちらでもよく、機械的強度、寸法安定性を有するものである。特に二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく用いられる。さらに平滑性が優れ、かつ添加剤の量が少ないフィルムが好ましい。また、このフィルムの表面に、酸化珪素薄膜の密着性を良くするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施しておいてもよく、さらに薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
【0020】
上記透明フィルムの厚さは特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性や、他の層を積層する場合もあること、酸化珪素薄膜層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲で、用途によって6〜50μmとすることが好ましい。また、量産性を考慮すれば、連続的に薄膜を形成できるように長尺状フィルムとすることが望ましい。
【0021】
酸化珪素薄膜は、透明性を有しかつ酸素、水蒸気などに対するガスバリア性を有するものであればよい。酸化珪素薄膜の厚さは、一般的に300〜3,000Åの範囲内であることが望ましい。但し、膜厚が300Å未満であるとフィルムの全面が膜にならないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また、膜厚が3,000Åを超える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げや引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。
【0022】
酸化珪素薄膜層を前記フィルム上に形成する方法としては種々あり、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法などを用いることができる。但し、生産性を考慮すれば、真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段を電子線加熱方式とすることが好ましく、薄膜と基材の密着性および薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。
【0023】
上記酸化珪素薄膜層の表面に保護層を形成する方法では、前記本発明の塗工液を、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法などの周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて塗布および乾燥し、さらに適当な温度で適当な時間熟成を行なって架橋を完了させて保護層を形成する。
【0024】
保護層の厚さは、均一に塗膜形成することができれば、特に限定しないが、実用的には0.2〜1.5μmの厚みにコーティングすることが好ましい。なお、厚さが0.2μm未満のものは、均一な塗膜形成ができないことが多く、後にグラビアインキにより印刷した場合、インキ被膜の引っ張りや収縮などや製袋機におけるしごきなどの機械的ストレスの緩和が十分でなくなり、ガスバリア性が低下するおそれがある。また、厚さが1.5μmを超えると、ポリエステル樹脂中に残留する溶剤などの臭気の面で問題があり、特に好ましくは、保護層の厚さは0.5〜1.0μmの範囲である。
【0025】
上記保護層上に他の層を積層することも可能である。例えば、印刷層およびヒートシール層などである。印刷層は包装体などとして実用的に用いるために形成されるものであり、通常、前記塗工液に使用されている溶剤と同様な溶剤にバインダーと顔料などの着色剤とを溶解分散して得られるグラビアインキを用いて行なわれる。前記特許文献1に記載の方法では、前記保護層(プライマー層)が上記グラビアインキの溶剤に溶解または膨潤する樹脂から設けられており、印刷をグラビアインキを用いて行なった場合には、前記の課題が生じる。これに対して本発明では、保護層は高度に架橋されたポリエステル樹脂から形成されていることから、該保護層にグラビアインキにより印刷を施しても、保護層がグラビアインキ中の有機溶剤によって損傷されないという利点を有する。
【0026】
また、ヒートシール層は、袋状包装体などに形成する際の接着部に利用されるものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびそれらの金属架橋物などの樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決定されるが、一般的には15〜200μmの範囲である。形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものをドライラミネート法やノンソルベントラミネート法により積層する方法、上記樹脂を加熱溶融させカーテン状に押し出し、貼り合わせるエクストルージョンラミネート法など公知の方法により積層することができる。
【0027】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0028】
実施例1
重量平均分子量8,000、ガラス転移温度55℃、水酸基価15mgKOH/gのポリエステル樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを主成分としてなるポリエステル)20部を、トルエン40部およびメチルエチルケトン40部に溶解した。該溶液に、上記ポリエステル樹脂の水酸基に対して1.2倍当量になるイソシアネート基を有するポリイソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン(株)製)を加えて保護層用塗工液とした。
上記保護層用塗工液を、酸化珪素膜がフィルム表面に形成されているガスバリヤー製フィルム(テックバリヤーV−12μm、三菱樹脂(株)製)の酸化珪素膜の表面にグラビア印刷法を用いて固形分で0.7g/m2で塗布および乾燥し、40℃で24時間の熟成を行ない、保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを得た。
【0029】
実施例2
実施例1におけるポリエステル樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを主成分としてなるポリエステル)として重量平均分子量2,000、ガラス転移点63℃、水酸基価60mgKOH/gのポリエステル樹脂を使用し、ポリイソシアネートの量をポリエステル樹脂の水酸基に対して0.8倍当量になる量にした以外は実施例1と同様にして保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを得た。
【0030】
比較例1
実施例1におけるポリエステル樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを主成分としてなるポリエステル)として、重量平均分子量18,000、ガラス転移点65℃、水酸基価4mgKOH/gのポリエステル樹脂を使用し、ポリイソシアネートを使用しない以外は実施例1と同様にして保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを得た。
【0031】
比較例2
比較例1において、ポリエステル樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを主成分としてなるポリエステル)の水酸基に対して1.2倍当量になる割合でポリイソシアネートを加えた以外は比較例1と同様にして保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを得た。
【0032】
比較例3
実施例1におけるポリエステル樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよびビスフェノールAを主成分としてなるポリエステル)として、重量平均分子量20,000、ガラス転移点77℃、水酸基価7mgKOH/gのポリエステル樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを得た。
【0033】
比較例4
実施例1におけるポリエステル樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを主成分としてなるポリエステル)として、重量平均分子量1,000、ガラス転移点65℃、水酸基価100mgKOH/gのポリエステル樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを得た。
【0034】
比較例5
実施例1におけるポリエステル樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを主成分としてなるポリエステル)として、重量平均分子量10,000、ガラス転移点45℃、水酸基価20mgKOH/gのポリエステル樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを得た。
【0035】
上記実施例および比較例で得られた保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムの評価結果を下記表1に示す。
【0036】
上記表1における評価方法は下記の通りである。
[転移性]
大日精化工業(株)製のポリウレタン系インキ(NTハイラミック 915紅)の粘度を18秒(リゴー社製ザーンカップNo3)に調整し、100m/分の印刷速度で印刷を行い、網点の濃度再現性を見た。使用した印刷インキの主溶剤はメチルエチルケトン/酢酸エチル/イソプロピルアルコール=2/2/1(質量比)である。
【0037】
この転移性の試験は、保護層のグラビアインキ中の溶剤に対する耐久性を示す尺度である。すなわち、保護層の耐溶剤性が低いと、付与されたインキは保護層に吸収され、保護層面での横への広がりが少なく、網点濃度も低くなる。一方、保護層の耐溶剤性が高いと、付与されたインキは保護層に吸収されず、保護層面での横への広がりが大きく、網点濃度も高くなる。
◎:保護層なしの場合と同等の網点の広がりである。
○:保護層なしの場合よりは劣るが網点の広がりは大きい。
△:網点の広がりが小さく見かけ濃度低下が大きい。
×:網点の広がりなし。
【0038】
[伸び]
保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムを長さで5%および10%伸長させた時の保護層の亀裂の有無を調べた。
○:亀裂なし。
△:小さな亀裂発生。
×:大きな亀裂発生。
【0039】
[接着性]
セロハンテープ剥離試験により保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムの保護層の密着性を調べた。
○:保護層の剥離なし(酸化珪素膜に対する密着性良好)。
×:保護層の剥離あり(酸化珪素膜に対する密着性不良)。
【0040】
[耐ブロッキング性]
保護層付き酸化珪素薄膜層を有するフィルムをロール状に巻いた時の保護層のフィルム裏面に対するブロッキング性を調べた。
○:ブロッキング性なし。
△:点状のブロッキング発生。
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、無色透明であり、かつ高いガスバリア性を有するとともに、溶剤を用いるグラビア印刷を施してもガスバリア性が低下したり、保護層が溶解膨潤せず、しかも高品質の印刷が可能な透明ガスバリアフィルムを構成できる酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液および酸化珪素薄膜の保護方法を提供することができる。
Claims (3)
- ガラス転移点50〜70℃、重量平均分子量1,500〜15,000かつ水酸基価(mgKOH/g)10〜60のポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解してなり、使用時にポリイソシアネートを添加してなることを特徴とする酸化珪素薄膜層の保護層用塗工液。
- ポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの使用割合が、NCO/OH=0.8〜1.5となる割合である請求項1に記載の保護層用塗工液。
- 少なくとも一方の面に酸化珪素薄膜層を有する透明性を有する高分子フィルムの該薄膜層上に請求項1または2に記載の保護層用塗工液を塗布、乾燥および熟成して架橋した透明保護層を形成することを特徴とする酸化珪素薄膜の保護方法。
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