JP2005047850A - 2−アミノプロパン誘導体の製造方法 - Google Patents

2−アミノプロパン誘導体の製造方法 Download PDF

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茂樹 高岡
Yoshitaka Nakada
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Abstract

【課題】医薬の合成中間体として使用し得る2−アミノプロパン誘導体の工業的に有利な製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)の化合物に亜鉛を反応させて式(II)の化合物とし、式(II)の化合物と式(III)の化合物とを触媒の存在下で反応させることにより、目的の式(IV)の化合物を得る。
【化1】
Figure 2005047850

(式中、R、Rは水素原子又はアシル基を表す。但し、R、Rが同時に水素原子の場合を除く。X及びYはハロゲン原子又はハロゲン原子と同様な機能を有する置換基を表す。)

Description

本発明は医薬の合成中間体として有用な2−アミノプロパン誘導体の製造方法に関する。
2−アミノプロパン誘導体、例えば、式(IV)
Figure 2005047850
においてRが水素原子であり、Rがベンジルオキシカルボニル基であり、不斉炭素に結合する置換基の立体配置がR配置である化合物、すなわち(R)−1−(4−メトキシフェニル)−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパンを、L−チロシンを出発原料として用い、6乃至7工程を経て製造する方法が知られている(特許文献1参照)。しかしその方法は、高価なL−チロシンを用いるため、工業的に有利な方法とは言い難い。
特公平2−29071号公報(実施例1、実施例2)
本発明の課題は、安価な原料を用いて工業的有利に2−アミノプロパン誘導体を製造する方法を提供することにある。
テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters) ,第28巻,p.2083−2086(1987)には、より安価なD−アラニンから(R)−1−ヨード−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパンを製造する方法が開示されている。本発明者らは、この(R)−1−ヨードー2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパン誘導体と亜鉛とを反応させた後、パラジウム(0)触媒の存在下1−ヨードー4−メトキシベンゼンを反応させると、好収率で(R)−1−(4−メトキシフェニル)−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパンが得られることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成することができた。
すなわち本発明によれば、
(1)式(I)
Figure 2005047850
(式中、R、Rは水素原子又はアシル基を表す。但し、RとRが同時に水素原子の場合を除く。Xはハロゲン原子又はハロゲン原子と同様な機能を有する置換基を表す。)で表される化合物と亜鉛とを反応させて式(II)
Figure 2005047850
(式中、R、R及びXは前記と同意義を表す。)で表される化合物とし、この化合物と式(III)
Figure 2005047850
(式中、Yはハロゲン原子又はハロゲン原子と同様な機能を有する置換基を表す。)で表される化合物とを触媒の存在下で反応させることを特徴とする式(IV)
Figure 2005047850
(式中、R、Rは前記と同意義を表す。)で表される2−アミノプロパン誘導体の製造方法、
(2)Rが水素原子であり、Rがベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、モノクロロアセチル基、モノブロモアセチル基又はアセチル基であり、X及びYがそれぞれ独立してヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホニル基又は臭素原子であり、触媒がトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)である前記(1)に記載の方法
を提供することができる。
前記の式(I)、式(II)及び式(IV)の化合物には不斉炭素が存在するが、本発明は、ラセミ体のみならず、不斉炭素の置換基の立体配置がR配置又はS配置の光学活性体をも包含する。
本発明の2段階の反応は何れも立体保持で進行する。例えば、式(I)の化合物として不斉炭素に結合する置換基の立体配置がR配置であるものを使用すれば、式(IV)の化合物の置換基の立体配置はR配置となる。
したがって本発明によれば、
(3)式(I)、式(II)及び式(IV)の化合物の不斉炭素に結合する置換基の立体配置が、いずれもR配置である前記(1)又は(2)に記載の方法
を提供することもできる。
式(IV)の化合物の置換基の立体配置がR配置の化合物は、α−受容体遮断剤として有用な塩酸タムスロシンの合成中間体として好適に利用することができる。また、式(IV)の化合物がラセミ体の場合は、光学分割の常法にしたがってR−配置の光学活性体を単離して塩酸タムスロシンの製造に利用することができる。
因みに特開平2−306958号公報には、式(IV)においてRが水素原子であり、Rが2−置換アセチル基であり、不斉炭素に結合する置換基の立体配置がR配置である化合物からタムスロシンを製造する方法が開示されている。
本発明の2−アミノプロパン誘導体の製造方法を、医薬、例えばα−受容体遮断剤として有用な塩酸タムスロシンの製造方法に利用することによって、その出発原料から目的物までの製造工程数を短縮でき、同時に収率向上も図ることができる。
本発明に係る式(I)及び式(II)のXとしては、例えばヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられるが、好ましくはヨウ素原子又は臭素原子であり、より好ましくはヨウ素原子である。
式(I)、式(II)及び式(IV)のR、Rとしては、例えばそれぞれ独立して水素原子(但し、両者が同時に水素原子の場合を除く)、アセトキシ基、2−ブロモアセトキシ基、2−クロロアセトキシ基、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、あるいはR、Rとが一緒になってフタロイル基等が挙げられるが、好ましくはRが水素原子でRがベンジルオキシカルボニル基又はt−ブトキシカルボニル基の場合である。
式(III)のYとしては、例えばヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられるが、好ましくはヨウ素原子又は臭素原子であり、より好ましくはヨウ素原子である。
本発明において、式(I)の化合物と亜鉛との反応は、通常、溶媒中で行われ、必要に応じ亜鉛を活性化するための添加剤が用いられる。その溶媒としては、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。前記添加剤としては、例えばトリメチルクロロシラン、ヨウ素、1,2−ジブロモエタン等が挙げられ、好ましくはトリメチルクロロシランである。この反応における亜鉛の使用量は、式(I)の化合物に対して通常1倍当量〜5倍当量の範囲内が好ましく、より好ましくは3倍当量程度である。前記添加剤の使用量は、式(I)の化合物に対して0.01倍モル〜0.1倍モルの範囲内が好ましく、より好ましくは0.025倍モル程度である。反応温度は−10℃〜室温の範囲内が好ましく、より好ましくは0℃前後である。反応時間は通常10分間〜1時間、好ましくは20分間〜40分間である。
また、式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応も、通常、溶媒中で行われ、触媒が用いられる。その溶媒としては、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。前記触媒としては、例えば塩化パラジウム、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド、[1,1´−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、1,3´−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)クロライド等が挙げられるが、好ましくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)である。必要に応じ、これらの触媒とともにトリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、1,1´−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の配位子を用いてもよい。この反応において、式(III)の化合物の使用量は、式(I)の化合物に対して通常0.1倍モル〜3倍モルの範囲内が好ましく、より好ましくは0.6倍モル〜1.5倍モル程度である。前記触媒の使用量は、式(III)の化合物に対して0.01倍モル〜0.1倍モルの範囲内が好ましく、より好ましくは0.025倍モル程度である。前記例示の配位子を用いる場合は、式(III)の化合物に対して0.03倍モル〜0.4倍モルの範囲内が好ましく、より好ましくは0.1倍モル程度である。反応温度は室温〜120℃の範囲内が好ましく、より好ましくは室温付近である。反応時間は通常6時間〜24時間、好ましくは12時間〜18時間である。
(1)(R)−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロピル亜鉛ヨーダイド
アルゴン気流中で亜鉛614mg(9.3ミリグラム原子)を十分に乾燥後、N,N−ジメチルホルムアミド2mlとトリメチルクロロシラン10μl(0.08ミリモル)を加え、室温で30分間撹拌した。この混合物を0℃以下に冷却下、撹拌しながら(R)−1−ヨード−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパン1g(3.1ミリモル)をN,N−ジメチルホルムアミド2mlに溶解した溶液を滴下し、さらに15分間撹拌して(R)−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロピル亜鉛ヨーダイド含有の反応液を得た。
(2)(R)−1−(4−メトキシフェニル)−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパン
(1)で得た反応溶液を0℃以下に冷却下、撹拌しながらトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)73mg(0.08ミリモル)、トリ−o−トリルホスフィン94mg(0.31ミリモル)及び1−ヨード−4−メトキシベンゼン990mg(4.23ミリモル)を加え、室温で18時間撹拌した。次いで酢酸エチル10mlと水20mlを加え、固形物を濾過した。濾液から酢酸エチル層を分離し、水洗、乾燥後、酢酸エチルを減圧留去して、茶色の粗結晶を得た。この粗結晶をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;酢酸エチル1倍量とn−ヘキサン3倍量の混合液)により精製して無色結晶の(R)−1−(4−メトキシフェニル)−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパン400mgを得た(1.34ミリモル:(R)−1−ヨード−2−ベンジルオキシカルボニルアミノプロパンからの収率43%)。
融点:89〜91℃
IRν max cm‐1 (KBr):3324(NH);1681(C=O)
H−NMR1NMR(CDCl)δ(ppm):1.11(3H,d),2.65(1H,m),2.78(1H,m),3.79(3H,s),3.83(1H,m),4.66(1H,brd),5.09(2H,s),6.83(2H,d),7.08(2H,d),7.34(5H,m)
MS(ESI)m/z:300
本発明の2−アミノプロパン誘導体の製造方法は、たとえばα−アドレナリン受容体遮断剤である塩酸タムスロシンの簡便な製造方法の中間工程として利用することができる。

Claims (3)

  1. 式(I)
    Figure 2005047850
    (式中、R、Rは水素原子又はアシル基を表す。但し、RとRが同時に水素原子の場合を除く。Xはハロゲン原子又はハロゲン原子と同様な機能を有する置換基を表す。)で表される化合物と亜鉛とを反応させて式(II)
    Figure 2005047850
    (式中、R、R及びXは前記と同意義を表す。)で表される化合物とし、この化合物と式(III)
    Figure 2005047850
    (式中、Yはハロゲン原子又はハロゲン原子と同様な機能を有する置換基を表す。)で表される化合物とを触媒の存在下で反応させることを特徴とする式(IV)
    Figure 2005047850
    (式中、R、Rは前記と同意義を表す。)で表される2−アミノプロパン誘導体の製造方法。
  2. が水素原子であり、Rがベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、モノクロロアセチル基、モノブロモアセチル基又はアセチル基であり、X及びYがそれぞれ独立してヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホニル基又は臭素原子であり、触媒がトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)である請求項1記載の方法。
  3. 式(I)の化合物、式(II)の化合物及び式(IV)の化合物の不斉炭素に結合する置換基の立体配置が、いずれもR配置である請求項1又は請求項2の方法。
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