JP2005042151A - 溶融メッキ装置及び溶融メッキ方法 - Google Patents

溶融メッキ装置及び溶融メッキ方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼帯の表面に溶融メッキを行う際に、上記鋼帯のエッジ近傍に溶融金属の薄い酸化膜が付着することを防止して、鋼帯の外観を常に安定して良好にすることを目的とする。
【解決手段】溶融金属が収容されたメッキ浴2の上方からメッキ浴表面に向けて気体を吹き付けるようにするエアー吹き付け装置5を設けることにより、上記メッキ浴2内の浴表面に浮遊する酸化膜を切断するとともに、上記切断された酸化膜を鋼帯1から遠ざけるようにすることを可能にして、上記メッキ浴2から引き上げられる鋼帯1の表面に、上記浴表面に浮遊する酸化膜が付着することを防止するようにして、鋼帯1の外観不良が発生することを低減できるようにする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鋼帯の溶融メッキ装置及び溶融メッキ方法に関し、特に、連続溶融メッキラインにおいて、メッキ浴から引き上げられた鋼帯表面に生じるメタル酸化膜に起因する鋼帯の外観不良を防止するために用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯の溶融メッキを行うラインでは、溶融金属を収容したメッキ浴に鋼帯を浸入させて鋼帯表面に上記溶融金属を付着させ、メッキ浴中に配設したシンクロール等によって浸漬した鋼帯をメッキ浴から引き上げている。
【0003】
上述のようにして鋼帯をメッキ浴に浸漬させることにより鋼帯表面には溶融金属が付着するが、鋼帯が引き上げられる際に、例えばガスワイピング等の付着量調整手段が鋼帯に対して気体を吹き付けることによって過剰な溶融金属分を除去して、溶融メッキの付着量が目標の付着量となるように調整するようにしている。この場合、溶融メッキの付着量が鋼帯幅で均一になるように調整する必要があり、従来より種々の技術が開示されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0004】
ところで、メッキ浴内ではメッキ金属の酸化物や鉄との化合物を主成分とするドロスと称される異物が生成される。そして、メッキされた鋼帯の表面にこのドロスが付着してしまうと鋼帯の外観不良を生じさせる原因の一つとなる。このため、鋼帯をメッキ浴から引き上げる際に、複数のガス噴射ノズルから不活性ガスを上記鋼帯に噴射することによって、メッキ浴の表面に浮遊するトップドロスを引き上げ中の鋼帯付近の浴面から離反させるように誘導する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、メッキ浴の表層部は空気に触れることから、溶融金属の薄い酸化膜が発生してメッキ浴上に浮遊している。このため、メッキ浴から引き上げられる鋼帯に上記酸化膜がひげ状の糸筋となって随伴されたり、或いは引き上げられた後の鋼帯メタルの表層部(特に鋼帯の両端部)に上記酸化膜に起因する外観不良が発生したりすることがある。従来は、上記溶融金属の酸化膜をガスワイピング等の付着量調整手段や浮遊ドロス払拭ノズルの付随効果によって排除していたが、特にラインスピードを低下させた操業では外観不良が発生して問題となっている。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−287752号公報
【特許文献2】
特開平10−265930号公報
【特許文献3】
特開平9−143653号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ガスワイピング等の付着量調整手段を設置した溶融メッキラインでは、気体流量や吹き付け方向が適切でない等により、上記酸化膜を良好に払拭できなかったり、或いは鋼帯の全幅に亘って均一に上記酸化膜を払拭できなかったりした場合には、残った酸化膜のために鋼帯の外観不良が生じてしまう不都合があった。
【0008】
特に、鋼帯の両エッジ近傍では、表裏のガスワイピングから噴出する気体同士によって外乱を引き起こすことからワイピング力が低下してしまい、上記外観不良がより顕在化してしまうという問題があった。
【0009】
すなわち、鋼帯の表裏両面における中央部分では、ガスワイピングから噴出した気体が鋼帯に沿って上方から下方に流れるため、気体の流れる方向にガス噴出流量に比例した払拭力が発生して、鋼帯の表裏両面における表面に付着した酸化膜を強力に払拭することが可能である。
【0010】
これに対して、鋼帯のエッジ近傍では、気体同士が直接衝突するガスワイピング部分の気流の影響によって外乱が起こり、気体が下向きに流れ難くなる。このため、酸化膜を払拭する力が鋼帯の中央部よりも弱くなって、本来除去されるべき酸化膜が残ってしまうという問題があった。
【0011】
また、ガスワイピングから噴出された気体が鋼帯に沿って下向きに流れれば、その気流は鋼帯表面を伝わってメッキ浴面に到達する。この場合、その気流によってメッキ浴表面に浮遊する酸化膜を鋼帯から遠ざけることができる。このため、鋼帯付近に浮遊する酸化膜が鋼帯に付着され難くなり、鋼帯の引き上げの際に随伴され難くすることができる。
【0012】
しかしながら、上述したように、鋼帯のエッジ近傍の気体は下向きに流れようとする力が弱められるために、エッジ近傍のメッキ浴表面に浮遊する酸化膜を鋼帯から十分に遠ざけることができない。
【0013】
したがって、鋼帯のエッジ近傍ではひげ状の糸筋となってあらわれる酸化膜による外観不良が顕在化して問題となっていた。なお、鋼帯の通板速度(ラインスピード)が遅いほどガスワイピングに必要な気体量が少なくなることから、上述した酸化膜による外観不良の問題は、鋼帯の通板速度が遅い溶融メッキラインでは深刻な問題になっていた。
【0014】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたもので、鋼帯の溶融メッキを行う際に、鋼帯エッジ近傍に溶融金属の薄い酸化膜が付着することを防止して、鋼帯の外観を常に安定して良好にすることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶融メッキ装置は、溶融金属が収容されたメッキ浴に鋼帯を浸漬することにより上記鋼帯の表面に金属メッキを行う溶融メッキ装置であって、上記鋼帯を上記メッキ浴から引き上げる際に、上記鋼帯の根元または根元近傍の浴面に気体を吹き付ける気体噴射手段を設けたことを特徴としている。
【0016】
本発明の溶融メッキ方法は、溶融金属が収容されたメッキ浴に鋼帯を浸漬することにより上記鋼帯の表面に金属メッキを行う溶融メッキ方法であって、上記鋼帯を上記メッキ浴から引き上げる際に、上記鋼帯の根元または根元近傍の浴面に気体を吹き付ける気体噴射工程を有することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶融メッキ装置及び溶融メッキ方法の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
<溶融メッキ装置10の全体構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態を示し、溶融メッキ装置10の一例を示す概念図である。図1に示すように、溶融メッキ装置10は、溶融金属を収容したメッキ浴2、鋼帯1をメッキ浴2から引き上げるシンクロール3、鋼帯1の表面に付着した溶融金属を所定の目付け量に調整するためのガスワイピング装置4、メッキ浴2の浴面にエアーを吹き付けて浴表面を揺動させるエアー吹き付け装置5等より構成されている。
【0019】
図2は、ガスワイピング装置4及びエアー吹き付け装置5の部分を拡大した斜視図である。ガスワイピング装置4は、一方のガスワイピングノズル4a及び他方のガスワイピングノズル4bにより構成されていて、鋼帯1の表裏の両面からガスを吹き付けるようにしている。
【0020】
エアー吹き付け装置5は、鋼帯1の表面側における左右の両エッジ位置から所定の距離(例えば、20〜30mm)だけ鋼帯1の中央側寄りに入った鋼帯1の根元の浴表面に向けて、エアーを吹き付けるようにしている。なお、エアー吹き付け装置5により気体噴射手段が構成されている。
【0021】
上記図2に示すように、エアー吹き付け装置5は、鋼帯1の表面側に配設された第1及び第2のエアーノズル5a、5bと、上記鋼帯1の裏面側に配設された第3及び第4のエアーノズル(図示せず)とからなり、これらのエアーノズル5a、5b・・とホース6とを連結させるようにしている。
【0022】
そして、上記ホース6をバルブ7、エアー流量計8を介して工場エアー供給部9に接続して、工場エアー供給部9から供給されるエアーがエアー吹き付け装置5へと供給されるようにしている。
【0023】
また、図2では、鋼帯1の片面(表面)側のみのエアーノズル5a、エアーノズル5bを配設した例を示したが、鋼帯1の表面側と同様に、鋼帯1の別の片面(裏面)側の左右両端側にも、同様なエアーノズル5c、5dを配設して浴面の所定の位置が鋼帯1の表裏において揺動するようにエアーを吹き付けるようにしている。
【0024】
なお、上記図1及び図2においては、ガスまたはエアーが噴出している気流の方向を矢印の向きで示している。また、ガスワイピング装置4及びエアー吹き付け装置5から噴出されるガスまたはエアー等の気体は、特に限定するものではなく、鋼帯1の種類や溶融メッキライン工程の特徴等にあわせて任意な気体を選択することが可能である。
【0025】
<鋼帯エッジ部の外観不良が発生するメカニズム>
ここでは、鋼帯1の表面に酸化膜が付着するメカニズムを説明する。
鋼帯1に付着する酸化膜は、白色状のカス引きのようなひげとなってあらわれ、酸化膜が付着していない鋼帯1の通常部分と比較して平滑で光沢があるという特徴を有している。
【0026】
また、上記酸化膜は、鋼帯1のエッジ近傍に主として形成されることが実験より明らかになっている。その理由は、上述したように、ガスワイピング装置4は鋼帯1に対して、その表裏の両面からガスを噴出するが、ガスワイピング装置4の幅は鋼帯1の幅よりも大きいため、鋼帯1の幅を超える部分ではガスワイピング装置4から噴射されるガス同士が直接に衝突することとなる。このため、鋼帯1の左右の両エッジ近傍には乱気流が生じる結果、鋼帯1に沿って下方向に流れようとするガスの流れが上記乱気流の影響を大きく受けてしまうことによるためであると考えられる。
【0027】
なお、本実施の形態では、酸化膜が形成される鋼帯1のエッジ近傍とは、鋼帯1のエッジ位置より20〜30mm程度、鋼帯1の中央側に寄った位置とし、この範囲を以下、鋼帯のエッジ部分と称することとする。
【0028】
図3に、ガスワイピング装置4から噴射されたガスが鋼帯1に衝突したときの衝突圧の大きさを表した特性図を示す。図3に示す特性図の横軸は鋼帯1のエッジ位置からの距離を示し、縦軸はガスワイピング装置4から噴出するガスの衝突圧の大きさを示している。
【0029】
図3に示したように、鋼帯1のエッジ部分ではガス乱気流の影響により衝突圧が減少することが実測結果からも明らかになっている。したがって、鋼帯エッジ部分のワイピング力の低下が、鋼帯エッジ部分に酸化膜の付着が生じやすい要因の一つになっているといえる。
【0030】
上述したようなワイピング力の低下等による要因によって付着する酸化膜は、鋼帯1のコイルサイズに依らず、鋼帯1の表裏サイドのエッジ部分にランダムに発生するが、以下の溶融メッキラインの状況では特に発生しやすい傾向がある。
【0031】
(1)低ラインスピードの場合
通板速度(ラインスピード)が遅い低ラインスピードの場合、鋼帯がメッキ浴面から引き上げられて酸化膜がワイピングされるまでに要する時間が必然的に長くかかる。このため、溶融金属が空気と触れて酸化反応する時間も長くなり、酸化膜が鋼帯1の表面に形成されやすくなる。
【0032】
一方、低ラインスピードの場合には、目付調整用のワイピングガスが鋼帯1を過剰に冷却してしまい、溶融メッキの品質等に影響を与えるため望ましくない。このため、高ラインスピードの溶融メッキの場合と比べて、溶融メッキの目付け調整のために鋼帯1に吹き付ける気体の流量を少なくする必要がある。この吹き付ける気体の流量を少なくした結果、酸化膜を払拭するガスワイピング装置4の力が弱くなって、酸化膜が鋼帯に残りやすくなってしまうことになる。
【0033】
(2)メッキ浴立ち上がり部の板反りが大きい場合
上述したように、鋼帯エッジ部分ではガスワイピング装置4による酸化膜の払拭能力は低下している。これに加えて、鋼帯1が板反りしているような場合、この反りによって気体が鋼帯1の下方向に流れる速度が減速してしまい、酸化膜を払拭する力がより減じられ、酸化膜が鋼帯に残りやすくなってしまうことになる。
【0034】
<溶融メッキ装置10の全体動作>
ここでは、溶融メッキ装置10の全体動作を説明する。
ワイピングノズル4による鋼帯エッジ部分のワイピング力の減少を補うため、本実施の形態の溶融メッキ装置10では、鋼帯エッジ部分に近接する浴表面にエアー吹き付け装置5からエアーを吹き付けて、メッキ浴に浮遊する酸化膜を鋼帯1から遠ざけるように構成している。
【0035】
本実施の形態におけるメッキ浴2の溶融金属は、例えば、Sn−Znメッキ浴またはZn−Alメッキ浴等である。
【0036】
メッキ浴2に浸漬された鋼帯1は、シンクロール3によって走行方向を上方に変更され、メッキ浴2から引き上げられる。この鋼帯1の引き上げの際、メッキ浴2の浴表面には酸化膜が浮遊しているため、浮遊する酸化膜が鋼帯1の表面に付着しないように、エアー吹き付け装置5は浴面の酸化膜に向けてエアーを吹き付ける。
【0037】
この場合、上記エアー吹き付け装置5からのエアー力によって浴面が揺動するために、浴面の薄い酸化膜の糸筋が分断されるとともに、上記エアー力は分断した酸化膜を鋼帯1のエッジ部分から遠ざけるため、浴中から引き上げられる鋼帯1に上記酸化膜が付着しないようになる。
【0038】
上述したエアー吹き付け装置5による酸化膜の糸筋を分断することが十分でなかったために、鋼帯1に酸化膜が付着してしまった場合でも、ガスワイピング装置4から噴出される吹き付けガスが鋼帯1に付着した酸化膜を除去する。なお、上記ガスワイピング装置4から噴出されるガスは、鋼帯1の金属メッキの目付け量を目標の値にするために主に用いられている。
【0039】
<エアーの吹き付け量やノズル位置等の実施例>
次に、図5を用いて鋼帯1に酸化膜が形成されることを防止するエアー吹き付け装置5のノズル先端位置とエアー量との関係を説明する。
【0040】
上記ノズル位置とエアー量は相互に関係がある。すなわち、図5に示す鋼帯1とエアーノズル5a先端位置との距離Dyが大きいほどエアー量を多くする必要がある。これに対して、上記距離Dyが小さい場合には、エアーノズル5aと鋼帯1とは接近しているので、エアー量は少なくて済む。
【0041】
したがって、上記エアーノズル5aの位置とエアー量とを一義的に設定することは一般的に困難であるが、実際の溶融メッキ装置を用いた実施例等に基づいて以下の設定値とした。なお、鋼帯1のエッジ部分からエアーノズル5a(5b)の先端位置の距離Dxは、上述したように本実施の形態では20〜30mmに設定している。
【0042】
エアー吹き付け装置5を配設する場合には、例えば、(イ)吹き付け位置(ノズル先端位置)、(ロ)ノズル角度、(ハ)エアー衝突力、(ニ)エッジムラの発生具合、(ホ)その他の不具合の発生状況等を考慮する事が重要である。
【0043】
上記(イ)の吹き付け位置(ノズル先端位置)については、鋼帯1のエッジ位置からエアー吹き付け装置5のノズル先端位置までの距離Dyが略100mm程度に設定することが好ましい。なお、エアー吹き付け装置5の噴射方向は、メッキ浴2の浴面に向けるようにする。
【0044】
また、上記(ロ)のノズル角度は、浴面から0〜60[deg]の下向きに設定することが好ましく、上記(ハ)のエアーの衝突力は50〜20000[N/m]であることが好ましい。
【0045】
なお、上記のエアー吹き付け装置5の設定において、エアーノズル5a、5b・・の先端方向を浴面に対して0〜60[deg]の下向きに設定しているが、先端方向を浴面に向ける、すなわち下向きにするのは浴面を揺動するためである。
【0046】
また、浴面に対して垂直でなく、0〜60[deg]という範囲で傾斜角をつけている。これは、真上(90[deg])から気体を吹き付けて浴面を揺動するようにさせれば確かに浴面はよく揺れるが、この場合では横方向の吹き付け力が働かないことになる。そこで、メッキ浴2の溶融金属が大きく飛び散ってしまわないようにすることを考慮して、エアーノズル5a、5b・・の先端方向を浴面に対して真上からでなく傾斜させるようにしている。
【0047】
なお、本実施の形態では、図5に示したように、鋼帯1の中央側からエッジ側にエアーが流れるようにエアーの方向を傾けるようにしたが、エッジ部分の浴表面を揺動するようにして酸化膜を切断させるという本発明におけるエアー吹き付け装置5の目的からみて、鋼帯1のエッジ側から中央側の方向にエアーを吹き付けるようにしてもよい。
【0048】
この場合、鋼帯1の中央部分に切断された酸化膜が寄ってきて、鋼帯1の引き上げの際に上記分断された酸化膜が付着することもあり得るが、上述したように鋼帯1の中央付近ではガスワイピング装置4によるワイピング力が強いために中央部分に付着した酸化膜は除去される。
なお、鋼帯1とエアーノズル5a、5b・・先端位置との距離Dyを零、即ち鋼帯1に対して直接、エアーを吹き付けるようにしてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態による溶融メッキ装置10によれば、メッキ浴2から引き上げられる鋼帯1のエッジ部分近傍の浴表面をエアーの力で揺動することによって、浴表面の酸化膜を切断するとともに、鋼帯1から上記酸化膜を遠ざけることが可能になるので、鋼帯1の引き上げに随伴して浴表面の酸化膜が付着しないようにすることができる。
【0050】
なお、エアー吹き付け装置5から噴出する気体は特に限定するものではないが、本実施の形態では入手容易なエアーを用いて構成した。これに対して、上記特許文献3等にあるように、吹き付けガスの種類として不活性ガスを用いるように構成する場合もある。
【0051】
吹き付けガスに上記不活性ガスを用いるようにした場合、エアー(ガス)ノズル5a、5b・・の周囲を密閉する機構が設けられることが多い。これは、浴面あるいは鋼帯表面を不活性ガスでシールして、酸化膜の発生自体を抑制する効果を期待するものである。
【0052】
しかしながら、十分なシール性を確保するには、設備費がかかる事、不活性ガスはエアーを用いる場合に比べてランニングコストが高くなってしまうという問題もある。また、上記密閉機構の設置によりエアー(ガス)ノズル5a、5b・・の保守等を含む作業効率が悪化する。
【0053】
上述したように、本実施の形態ではエアー吹き付け装置5からの吹き付けガスに入手容易なエアーを用いており、上記密閉機構を設置することも不要である。このため、安価で作業効率の優れた溶融メッキ装置を提供することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、メッキ浴面を揺動するためにエアー吹き付け装置5が狙う吹き付け位置は、鋼帯1の両エッジ部分から幅方向に20〜30mm程度、鋼帯1の中央側に寄った位置であり、この位置に合わせてエアーノズルの先端位置を位置決めしていた。これは鋼帯1に生じる酸化膜の位置が、通常エッジ部分から20〜30mm程度であるという理由からであったが、エアーノズルの先端位置はこの位置に限られない。
【0055】
例えば、鋼帯1にあらわれる酸化膜の位置が両エッジ部分から20mm以下であったり、30mm以上であったりすれば、上記酸化膜の位置にあわせてエアー吹き付け位置(エアーノズルの先端位置)を調整する必要がある。そこで、本実施の形態の溶融メッキ装置は、酸化膜が形成される位置や鋼帯1の板幅にあわせて、エアー吹き付け位置(エアーノズル先端位置)を調整することが可能なように構成した。
【0056】
本実施の形態の溶融メッキ装置20は、上述した第1の実施の形態の溶融メッキ装置10に加えて、エアーノズルを板幅に追従することができるノズル移動機構を設けている。なお、本実施の形態の溶融メッキ装置20と第1の実施の形態の溶融メッキ装置10とで同じ構成部については、各構成部の符号をそのまま引用して詳細な説明を省略することとする。
【0057】
<溶融メッキ装置20の構成>
図6は、本実施の形態の溶融メッキ装置20において、特に、ノズル移動制御機構を説明するための一例を示す概略構成図である。図6では、上記図1または図2で示したメッキ浴2、周回ローラ3、ガスワイピング装置4、バルブ7、エアー流量計8及び工場エアー供給部9を省略している。
【0058】
図6(a)は、溶融メッキ装置20の上面図であり、図6(b)は溶融メッキ装置20の正面図である。図6(a)及び図6(b)に示すように、鋼帯1の表裏両面のエッジ部分に向けてエアー吹き付け装置5のエアーノズル5a、5b・・の先端からエアーが吹き付けられるように構成されている。
【0059】
図6に示すように、エアー吹き付け装置5(エアーノズル5a、5b・・)はナット13に固定されて、ナット13はモータ12を駆動源として台形ネジ11の回転に伴い所定の位置に移動する。また、エアー吹き付け装置5はホース6に連結されており、工場エアー供給部9からエアーの供給を受ける。
なお、台形ネジ11、モータ12、及びナット13等により移動手段が構成され、モータ12の回転を制御するモータ制御部(図示せず)等により、移動制御手段が構成されている。
【0060】
なお、本実施の形態ではナット13を移動させるために台形ネジ11を用いて構成したがこれに限られず、例えば、精密な位置決めを要するのであればボールネジ等により構成してもよい。
また、必ずしもモータ12及び台形ネジ11等によってナット13を駆動しなくてもよく、例えば、移動ステージ等にエアー吹き付け装置5を固定して上記移動ステージを手動により移動させることでエアー吹き付け装置5の位置決めを行うようにしてもよい。
【0061】
<溶融メッキ装置20の全体動作>
ここでは、溶融メッキ装置20の全体動作を説明する。
本実施の形態の溶融メッキ装置20では、溶融メッキラインに搬入される鋼帯の板幅を測定して、その板幅に合わせたエアーノズルの位置を設定し、上記設定した位置にエアーノズル5a、5b・・の先端位置が位置決めされるようにノズル移動機構が駆動するように構成している。
【0062】
具体的には例えば、板幅が1000mmの場合、板幅の中央を幅方向の原点とすれば±500mmが鋼帯1のエッジ位置になるが、上述したようにエッジ部分は20〜30mmと設定しているので、±470〜±480mm範囲にエアー吹き付け装置5のノズル先端が位置決めされるようにする。エアー吹き付け装置5のノズル先端が上記±470〜±480mm範囲になるように、図6に示したモータ12が駆動することによって台形ネジ11が回転して、ナット13に固定されたエアー吹き付け装置5が移動する。
【0063】
本実施の形態によれば、溶融ラインに搬入される鋼帯1の板幅を測定するように構成しているため、上記鋼帯1の板幅が可変になっても、エアーノズル5a〜5dの先端位置を鋼帯1のエッジ位置から所定の幅だけ離れた位置及び所定のノズル方向に確実に設定することが可能となる。このため、鋼帯のエッジ部分の浴表面に浮遊する酸化膜の糸筋を切断することができるとともに、浴表面に浮遊する酸化膜が鋼帯1の表面に付着することを防止することができる。
【0064】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、溶融金属が収容されたメッキ浴に浸漬された鋼帯に対して、メッキ浴の上方から気体を噴出するように構成したので、上記メッキ浴の表面に浮遊する酸化膜が鋼帯に付着しないようにすることができるとともに、メッキ浴面に浮遊する酸化膜を切断することができる。また、切断された酸化膜を鋼帯から遠ざけるようにすることが可能となり、鋼帯の表面に酸化膜が付着することを良好に防止することができる。
【0065】
このため、上記酸化膜の付着による鋼帯エッジ近傍の外観不良の発生が生じることを低減することができ、上記酸化膜が付着したことによる鋼帯エッジ部分をトリミングする工程を簡略化することができて、鋼帯の製造工数及び製造コストを大幅に低減することができる。
【0066】
また、本発明の他の特徴によれば、メッキ浴の表面に浮遊する酸化膜を除去する気体噴出手段は、鋼帯エッジ位置近傍のメッキ浴表面がピンポイントで揺動されるように気体を噴射するように構成しているため、上記気体噴出手段そのものを小型化することができるとともに、気体を噴出するために要するエネルギーを格段に省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融メッキ装置の第1の実施の形態を示し、主要部の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施の形態である溶融メッキ装置におけるガスワイピング装置及びエアーノズル部分を拡大した斜視図である。
【図3】ガスワイピング装置から噴射したガスが鋼帯に衝突したときの衝突圧の大きさを表した特性図である。
【図4】エアーノズルのノズル先端位置とエアー量との関係を説明するための図である。
【図5】第2の実施の形態による溶融メッキ装置において、ノズル移動機構を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
1 鋼帯
2 メッキ浴2
3 シンクロール
4 ガスワイピング装置
5 エアー吹き付け装置
6 ホース
7 バルブ
8 エアー流量計
9 工場エアー供給部
10 溶融メッキ装置
11 台形ネジ
12 モータ
13 ナット

Claims (12)

  1. 溶融金属が収容されたメッキ浴に鋼帯を浸漬することにより上記鋼帯の表面に金属メッキを行う溶融メッキ装置であって、
    上記鋼帯を上記メッキ浴から引き上げる際に、上記鋼帯の根元または根元近傍の浴面に気体を吹き付ける気体噴射手段を設けたことを特徴とする溶融メッキ装置。
  2. 上記気体噴射手段は、上記鋼帯のエッジ位置から所定の距離における上記鋼帯表面の根元または根元近傍の浴面に向けて、所定の方向及び所定の衝突力で上記気体を噴射することを特徴とする請求項1に記載の溶融メッキ装置。
  3. 上記気体噴射手段は、上記鋼帯のエッジ位置から略100mm以内の範囲に向けて、上記鋼帯の中央部方向から上記気体を噴射することを特徴とする請求項1または2に記載の溶融メッキ装置。
  4. 上記気体噴射手段は、上記メッキ浴の表面を基準として0〜60degの範囲で、上記メッキ浴の上方から上記気体を噴射することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の溶融メッキ装置。
  5. 上記気体噴射手段は、50〜20000N/mの範囲の衝突力で上記気体を噴射することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の溶融メッキ装置。
  6. 上記気体噴射手段を上記鋼帯の幅方向に沿って移動させる移動手段と、
    上記移動手段の動作を制御する移動制御手段とを有し、
    上記移動制御手段は、上記鋼帯の板幅が変化することに伴うエッジ位置の変更に対応して上記移動手段を制御することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の溶融メッキ装置。
  7. 溶融金属が収容されたメッキ浴に鋼帯を浸漬することにより上記鋼帯の表面に金属メッキを行う溶融メッキ方法であって、
    上記鋼帯を上記メッキ浴から引き上げる際に、上記鋼帯の根元または根元近傍の浴面に気体を吹き付ける気体噴射工程を有することを特徴とする溶融メッキ方法。
  8. 上記気体噴射工程は、上記鋼帯のエッジ位置から所定の距離における上記鋼帯表面の根元または根元近傍の浴面に向けて、所定の方向及び所定の衝突力で上記気体を噴射することを特徴とする請求項7に記載の溶融メッキ方法。
  9. 上記気体噴射工程は、上記鋼帯のエッジ位置から略100mm以内の範囲に向けて、上記鋼帯の中央部方向から上記気体を噴射することを特徴とする請求項7または8に記載の溶融メッキ方法。
  10. 上記気体噴射工程は、上記メッキ浴の表面を基準として0〜60degの範囲で、上記メッキ浴の上方から上記気体を噴射することを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の溶融メッキ方法。
  11. 上記気体噴射工程は、50〜20000N/mの範囲の衝突力で上記気体を噴射することを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の溶融メッキ方法。
  12. 上記気体噴射工程を上記鋼帯の幅方向に沿って移動させる移動工程と、
    上記移動工程の動作を制御する移動制御工程とを有し、
    上記移動制御工程は、上記鋼帯の板幅が変化することに伴うエッジ位置の変更に対応して上記移動工程を制御することを特徴とする請求項7〜11の何れか1項に記載の溶融メッキ方法。
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