JP2005042052A - 光カチオン重合性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光照射により速やかにカチオン重合して、優れた伸度や各種材料に対する優れた接着力を発現する硬化物となりうる光カチオン重合性組成物を提供する。
【解決手段】 光カチオン重合性化合物、CTBN変成エポキシ系化合物および光カチオン重合触媒が含有されてなる光カチオン重合性組成物、CTBN変成エポキシ系化合物がビスフェノールA型エポキシ樹脂である上記光カチオン重合性組成物、CTBN変成エポキシ系化合物のエポキシ当量が200〜500である上記光カチオン重合性組成物、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光する上記光カチオン重合性組成物、および、光透過率が10%以下である材料を接合するために用いられる上記光カチオン重合性組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 光カチオン重合性化合物、CTBN変成エポキシ系化合物および光カチオン重合触媒が含有されてなる光カチオン重合性組成物、CTBN変成エポキシ系化合物がビスフェノールA型エポキシ樹脂である上記光カチオン重合性組成物、CTBN変成エポキシ系化合物のエポキシ当量が200〜500である上記光カチオン重合性組成物、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光する上記光カチオン重合性組成物、および、光透過率が10%以下である材料を接合するために用いられる上記光カチオン重合性組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、光カチオン重合性組成物に関する。
従来より、光を照射することによりカチオン重合性基を有する化合物を重合あるいは硬化させる光カチオン重合触媒として、例えば、アリールジアゾニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ホスホニウム塩等が開示されている。
特開昭61−174221号公報
このような光カチオン重合触媒は、カチオン重合性基を有する化合物、例えば、エポキシ系化合物、ビニルエーテル系化合物、オキセタン系化合物等の光重合あるいは光硬化に利用されている。また、このような硬化反応機構は、工業的には、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤等への利用が検討されている。
上記カチオン重合性基を有する化合物のなかでも、特にエポキシ系化合物は、その硬化物が密着性、接着力、耐クリープ性、耐候性、耐光性、耐水性、耐熱性、耐薬品性等の諸特性に優れていることから、例えば、光ディスクの製造にも応用されている。
特開2000−344872号公報
しかし、従来の光カチオン重合性組成物は、カチオン重合性基を有する化合物(主原料)としてエポキシ系化合物を用いることが多いため、硬化物の伸度が低くなって、脆くなるとともに、各種材料(各種被着体)に対する接着力(密着性)も不十分になることがあるという問題点がある。
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた伸度や各種材料に対するより優れた接着力を発現する硬化物となりうる光カチオン重合性組成物を提供することにある。
請求項1に記載の発明(本発明)による光カチオン重合性組成物は、光カチオン重合性化合物、分子内にカルボキシル基を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(CTBN)で変成されたエポキシ系化合物(以下、「CTBN変成エポキシ系化合物」と記す)、および、光カチオン重合触媒が含有されてなることを特徴とする。
請求項2に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1に記載の光カチオン重合性組成物において、CTBN変成エポキシ系化合物がビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1または請求項2に記載の光カチオン重合性組成物において、CTBN変成エポキシ系化合物のエポキシ当量が200〜500であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物において、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することを特徴とする。
請求項5に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物において、光透過率が10%以下である材料を接合するために用いられることを特徴とする。
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる光カチオン重合性化合物としては、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のカチオン重合性基を有し、光を照射された際に、後述する光カチオン重合触媒に励起されて光カチオン重合反応をしうる化合物であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、カチオン重合性基としてエポキシ基を有するエポキシ系化合物、カチオン重合性基としてビニルエーテル基を有するビニルエーテル系化合物、カチオン重合性基としてオキセタン基を有するオキセタン系化合物等が挙げられ、なかでも、各種材料に対する接着力、力学的強度、耐熱性等のバランスに優れる硬化物を得るに適する光カチオン重合性組成物を得やすいことから、エポキシ系化合物が好適に用いられる。これらの光カチオン重合性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記エポキシ系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテルなどやこれらの水素添加物やハロゲン化物などの芳香族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環族エポキシ樹脂;1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9個のアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどやこれらの水素添加物などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体などやこれらの水素添加物などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するポリエステル樹脂;上記各種エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合を導入したウレタン変成エポキシ樹脂;上記各種エポキシ樹脂の構造中にポリカプロラクトン結合を導入したポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記ビニルエーテル系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル−3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等が挙げられる。これらのビニルエーテル系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記オキセタン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−へキシルオキシメチルオキセタン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらのオキセタン系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられるCTBN変成エポキシ系化合物とは、分子内にカルボキシル基を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(CTBN)と2官能以上のエポキシ基を有する化合物とを反応させて得られるエポキシ系化合物のことである。
上記CTBNと2官能以上のエポキシ基を有する化合物との反応に際しては、CTBNは、単独で用いられても良いし、例えばカルボキシル基含有量の異なる2種類以上のCTBNが併用されても良く、2官能以上のエポキシ基を有する化合物も、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、こうして得られるCTBN変成エポキシ系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
本発明の光カチオン重合性組成物に上記CTBN変成エポキシ系化合物を含有させることにより、本発明の光カチオン重合性組成物の硬化物は、優れた伸度や各種材料に対するより優れた接着力を発現しうるものとなる。
上記CTBNとの反応に用いられる2官能以上のエポキシ基を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、前記例示の各種エポキシ系化合物等が挙げられ、なかでも、前記光カチオン重合性化合物との相溶性に優れ、伸度、各種材料に対する接着力、力学的強度等のバランスに優れる硬化物を得るに適するCTBN変成エポキシ系化合物を得やすいことから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適に用いられる。すなわち、本発明で用いられるCTBN変成エポキシ系化合物は、CTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましい。
上記CTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、CVC社製の商品名「ERISYS EMRA−95」、「ERISYS EMRA−840」、「ERISYS EMRA−1320」などの「ERISYS」シリーズ等が挙げられる。これらのCTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記CTBN変成エポキシ系化合物は、特に限定されるものではないが、エポキシ当量が200〜500であることが好ましい。
CTBN変成エポキシ系化合物のエポキシ当量が200未満であると、CTBN部分(CTBN含有量)が少ないことになって、光カチオン重合性組成物の硬化物の伸度が十分に向上しないことがあり、逆にCTBN変成エポキシ系化合物のエポキシ当量が500を超えると、CTBN部分が多いことになって、前記光カチオン重合性化合物との相溶性が悪くなることがある。
上記CTBN変成エポキシ系化合物の配合量(含有量)は、特に限定されるものではないが、前記光カチオン重合性化合物100重量部に対し、CTBN変成エポキシ系化合物5〜50重量部であることが好ましい。
光カチオン重合性化合物100重量部に対するCTBN変成エポキシ系化合物の配合量が5重量部未満であると、CTBN変成エポキシ系化合物を含有させることによる前記硬化物の伸度向上効果や接着力向上効果を十分に得られないことがあり、逆に光カチオン重合性化合物100重量部に対するCTBN変成エポキシ系化合物の配合量が50重量部を超えると、CTBN変成エポキシ系化合物による光カチオン重合阻害が生じて、光カチオン重合性組成物が硬化不良を来すことがある。
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる光カチオン重合触媒としては、光を照射することにより活性化され、プロトン供与体として作用するカチオン酸を発生して、前記光カチオン重合性化合物を光カチオン重合反応させうるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩などのオニウム塩等が挙げられる。これらの光カチオン重合触媒は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記オニウム塩の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。
また、上記光カチオン重合触媒の市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名「イルガキュアー261」などの「イルガキュアー」シリーズ、旭電化工業社製の商品名「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−151」、「オプトマーSP−170」、「オプトマーSP−171」などの「オプトマー」シリーズ、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」、三新化学工業社製の商品名「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」などの「サンエイド」シリーズ、日本曹達社製の商品名「CI−2064」、「CI−2481」、「CI−2624」、「CI−2639」などの「CI」シリーズ、ローヌプーラン社製の商品名「RHODORSIL PHOTOINITIATOR2074」、ユニオンカーバイド社製の商品名「UVI−6990」、ミドリ化学社製の商品名「BBI−103」、「MPI−103」、「TPS−103」、「MDS−103」、「DTS−103」、「NAT−103」、「NDS−103」等が挙げられる。
上記光カチオン重合触媒の配合量(含有量)は、特に限定されるものではないが、前記光カチオン重合性化合物100重量部に対し、光カチオン重合触媒0.02〜20重量部であることが好ましい。
光カチオン重合性化合物100重量部に対する光カチオン重合触媒の配合量が0.02重量部未満であると、光カチオン重合性組成物の光カチオン重合反応が十分に進行しなくなったり、硬化が遅くなることがあり、逆に光カチオン重合性化合物100重量部に対する光カチオン重合触媒の配合量が20重量部を超えると、光カチオン重合性組成物の可使時間と硬化速度との両立が困難となることがある。
本発明の光カチオン重合性組成物には、必須成分である前記光カチオン重合性化合物、前記CTBN変成エポキシ系化合物および上記光カチオン重合触媒に加えるに、必要に応じて、例えば、粘接着性を向上させるための粘接着性付与剤、塗工性を向上させるための粘度調整剤、チキソトロープ性(揺変性)を付与するためのチキソトロープ性付与剤、物性調整剤、増量剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が配合されていても良い。
粘接着性付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、C5系またはC9系の石油系樹脂、クマロンインデン系樹脂等が挙げられる。これらの粘接着性付与剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
粘度調整剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
チキソトロープ性付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等が挙げられる。これらのチキソトロープ性付与剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
物性調整剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイソブチレン、ワックス類等が挙げられる。これらの物性調整剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
増量剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水シリカ、含水シリカ、珪酸カルシウム等が挙げられる。これらの増量剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
着色剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、ガラスバルーン、弁柄、カーボンブラック等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
本発明の光カチオン重合性組成物は、特に限定されるものではないが、塗工時における粘度が0.001〜1000Pa・sであることが好ましい。なお、上記塗工時における粘度には、常温で塗工するときの粘度のみならず、例えば0℃のような低温で塗工するときの粘度や、光カチオン重合性組成物がホットメルト型光カチオン重合性組成物であって、このホットメルト型光カチオン重合性組成物を加熱溶融して塗工するときの粘度等も包含される。
光カチオン重合性組成物の上記塗工時における粘度が0.001Pa・s未満であると、流動性が高くなりすぎ、塗工すべきでない箇所にまで流れやすくなって、作業性が悪くなることがあり、逆に光カチオン重合性組成物の上記塗工時における粘度が1000Pa・sを超えると、流動性が乏しくなって、塗工作業が困難となることがある。
本発明の光カチオン重合性組成物は、特に限定されるものではないが、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することが好ましい。
300nm未満の波長成分のみを含む光に感光すると、光カチオン重合性組成物の塗工厚みが厚い場合、光照射面の表層に皮張りが生じやすくなるとともに、表層から深部まで均一に硬化しなくなることがあり、逆に800nmを超える波長成分のみを含む光に感光すると、表層から深部まで均一に硬化はするものの、十分なエネルギー(照射量)の光を与えることが困難となって、光カチオン重合性組成物の硬化速度が遅くなりすぎることがある。
上記光を照射するために用いられる光源としては、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光を照射しうるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、蛍光灯、太陽光線等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられても良いし、2種類以上が組み合わされて用いられても良い。なお、上記光源を用いて光照射を行う場合、光カチオン重合性組成物を表層から深部まで均一に硬化させるために、300nm未満の波長成分をカットして照射することが好ましい。
本発明の光カチオン重合性組成物は、上記光の照射による光カチオン重合反応終了後の硬化物のゲル分率が60重量%以上であることが好ましい。光カチオン重合性組成物の硬化物のゲル分率が60重量%未満であると、各種材料に対する接着力、力学的強度、耐熱性等が不十分となることがある。なお、本発明で言うゲル分率とは、以下の方法で測定されるゲル分率を意味する。
〔ゲル分率の測定方法〕
光カチオン重合性組成物の硬化物を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料を例えばトルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中に一定時間浸漬して溶解させる。次いで、濾過により有機溶媒不溶解分を濾別し、乾燥した後、有機溶媒不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=(B/A)×100
ここで、Aは有機溶媒浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、Bは有機溶媒不溶解分の重量(g)である。
光カチオン重合性組成物の硬化物を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料を例えばトルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中に一定時間浸漬して溶解させる。次いで、濾過により有機溶媒不溶解分を濾別し、乾燥した後、有機溶媒不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=(B/A)×100
ここで、Aは有機溶媒浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、Bは有機溶媒不溶解分の重量(g)である。
本発明の光カチオン重合性組成物は、必須成分である前記光カチオン重合性化合物、前記CTBN変成エポキシ系化合物および前記光カチオン重合触媒、および/または、必要に応じて配合する前記各種添加剤の種類や組み合わせ等を適宜選択したり、配合量を適宜調整(加減)したりすることによって、光照射後直ちに硬化する光カチオン重合性組成物とすることもできるし、光照射後直ちには硬化せず、一定時間(接着可能時間)は粘接着性を保持した後に硬化する、いわゆる光後硬化性を有する光カチオン重合性組成物とすることもできる。
本発明の光カチオン重合性組成物が上記光後硬化性を有する光カチオン重合性組成物である場合、例えば、光透過率が10%以下である光貧透過性または光不透過性の材料(被着体)を接合するために用いることが好ましい。
すなわち、本発明の光カチオン重合性組成物が上記光後硬化性を有する光カチオン重合性組成物である場合、接合すべき材料の双方が上記光貧透過性または光不透過性の材料であっても、少なくとも一方の材料に本発明の光カチオン重合性組成物を塗工し、この光カチオン重合性組成物に光を照射した後、光照射された光カチオン重合性組成物の接着可能時間内に他方の材料を貼り合わせ、そのまま放置して光カチオン重合性組成物の硬化を進行および完了させることにより、上記光貧透過性または光不透過性の材料の接合を完成させることができる。
本発明の光カチオン重合性組成物の用途としては、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤、光ディスク等が挙げられるが、これらの用途に限定されるものではない。
本発明の光カチオン重合性組成物は、光カチオン重合性化合物、CTBN変成エポキシ系化合物および光カチオン重合触媒が含有されてなるので、光照射により速やかにカチオン重合して、硬化物は優れた伸度や各種材料に対する優れた接着力を発現する。
また、本発明の光カチオン重合性組成物は、上記CTBN変成エポキシ系化合物としてCTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたり、および/または、上記CTBN変成エポキシ系化合物のエポキシ当量を200〜500としたり、および/または、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光するものとすることにより、上記優れた効果がより確実なものとなる。
さらに、本発明の光カチオン重合性組成物は、光後硬化性を有する光カチオン重合性組成物とすることにより、上記優れた効果に加えるに、光透過率が10%以下である光貧透過性または光不透過性の材料の接合を効率的かつ簡便に行うことができる。
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
約200mLのサンプル瓶内で、光カチオン重合性化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「エピコート828」、油化シェルエポキシ社製)98g、CTBN変成エポキシ系化合物としてCTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「ERISYS EMRA−1320」、CVC社製)10g、および、光カチオン重合触媒として商品名「UVI−6990」(ユニオンカーバイド社製)2gを60℃で均一に加熱混合して、光カチオン重合性組成物を作製した。
CTBN変成エポキシ系化合物として、CTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂「ERISYS EMRA−1320」10gの代わりに、同じくCTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「ERISYS EMRA−840」、CVC社製)30gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
(比較例1)
(比較例1)
CTBN変成エポキシ系化合物としてのCTBN変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂「ERISYS EMRA−1320」を配合しなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
実施例1、実施例2および比較例1で得られた光カチオン重合性組成物の性能(1.ゲル分率、2.破断点伸度、3.密着性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
1.ゲル分率
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの離型処理面に光カチオン重合性組成物を厚みが約100μmとなるように塗工し、超高圧水銀灯を用いて、365nmの波長成分の照射強度が1500mJ/cm2 となるように紫外線を照射した後、60℃で5分間加熱して、光カチオン重合性組成物の硬化皮膜を作製した。次に、得られた硬化皮膜を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料をメチルエチルケトン(MEK)中に24時間浸漬して溶解させた。次いで、濾過によりMEK不溶解分を濾別し、乾燥した後、MEK不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率(重量%)=(B/A)×100
ここで、AはMEK浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、BはMEK不溶解分の重量(g)である。
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの離型処理面に光カチオン重合性組成物を厚みが約100μmとなるように塗工し、超高圧水銀灯を用いて、365nmの波長成分の照射強度が1500mJ/cm2 となるように紫外線を照射した後、60℃で5分間加熱して、光カチオン重合性組成物の硬化皮膜を作製した。次に、得られた硬化皮膜を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料をメチルエチルケトン(MEK)中に24時間浸漬して溶解させた。次いで、濾過によりMEK不溶解分を濾別し、乾燥した後、MEK不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率(重量%)=(B/A)×100
ここで、AはMEK浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、BはMEK不溶解分の重量(g)である。
2.破断点伸度
離型PETフィルムの離型処理面に光カチオン重合性組成物を厚みが約400μmとなるように塗工し、超高圧水銀灯を用いて、365nmの波長成分の照射強度が40mW/cm2 ×2分間となるように紫外線を照射した後、60℃で10分間加熱して、光カチオン重合性組成物の硬化皮膜を作製した。次に、JIS K 6251「加硫ゴムの引張試験方法」に準拠して、得られた硬化皮膜をダンベル状3号形試験片に打ち抜き、この試験片の引張試験を引張速度10mm/分で行って、破断点伸度(%)を求めた。
離型PETフィルムの離型処理面に光カチオン重合性組成物を厚みが約400μmとなるように塗工し、超高圧水銀灯を用いて、365nmの波長成分の照射強度が40mW/cm2 ×2分間となるように紫外線を照射した後、60℃で10分間加熱して、光カチオン重合性組成物の硬化皮膜を作製した。次に、JIS K 6251「加硫ゴムの引張試験方法」に準拠して、得られた硬化皮膜をダンベル状3号形試験片に打ち抜き、この試験片の引張試験を引張速度10mm/分で行って、破断点伸度(%)を求めた。
3.密着性
エタノールで脱脂したステンレススチール(SUS)板に光カチオン重合性組成物を厚みが約50μmとなるように塗工し、超高圧水銀灯を用いて、365nmの波長成分の照射強度が40mW/cm2 ×2分間となるように紫外線を照射した後、60℃で10分間加熱して、光カチオン重合性組成物を硬化させた。次に、カッターナイフを用いて、光カチオン重合性組成物の硬化皮膜に縦横1mm間隔で碁盤目状の切り込みを入れた後、セロテープ碁盤目剥離試験を行って、SUS板に対する密着性を評価した。
エタノールで脱脂したステンレススチール(SUS)板に光カチオン重合性組成物を厚みが約50μmとなるように塗工し、超高圧水銀灯を用いて、365nmの波長成分の照射強度が40mW/cm2 ×2分間となるように紫外線を照射した後、60℃で10分間加熱して、光カチオン重合性組成物を硬化させた。次に、カッターナイフを用いて、光カチオン重合性組成物の硬化皮膜に縦横1mm間隔で碁盤目状の切り込みを入れた後、セロテープ碁盤目剥離試験を行って、SUS板に対する密着性を評価した。
表1から明らかなように、本発明による実施例1および実施例2の光カチオン重合性組成物は、いずれもゲル分率が高く、CTBN変成エポキシ系化合物による光カチオン重合阻害(硬化阻害)は認められなかった。また、上記実施例1および実施例2の光カチオン重合性組成物の硬化物は、いずれも破断点伸度が高く、SUS板に対する密着性(接着力)も優れていた。
これに対し、CTBN変成エポキシ系化合物を含有させなかった比較例1の光カチオン重合性組成物は、ゲル分率は高かったものの、硬化物の破断点伸度が極端に低く、SUS板に対する密着性(接着力)も劣っていた。
以上述べたように、本発明の光カチオン重合性組成物は、光照射により速やかにカチオン重合して、硬化後は優れた伸度や各種材料に対する優れた接着力を発現するので、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤、光ディスク等用を始め、各種工業用途に好適に用いられる。
Claims (5)
- 光カチオン重合性化合物、分子内にカルボキシル基を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体で変成されたエポキシ系化合物、および、光カチオン重合触媒が含有されてなることを特徴とする光カチオン重合性組成物。
- 分子内にカルボキシル基を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体で変成されたエポキシ系化合物がビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光カチオン重合性組成物。
- 分子内にカルボキシル基を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体で変成されたエポキシ系化合物のエポキシ当量が200〜500であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光カチオン重合性組成物。
- 少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物。
- 光透過率が10%以下である材料を接合するために用いられることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物。
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