JP2004263140A - 光カチオン重合性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】光照射の前後において変色することにより、光照射が正常に行われたか否か、あるいは、不必要な箇所や不必要な時に光照射が行われていないか否か等を容易に判断することができるとともに、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた物性を発現する硬化物となりうる光カチオン重合性組成物を提供する。
【解決手段】光カチオン重合性化合物、光カチオン重合触媒および変色性化合物が含有されてなる光カチオン重合性組成物であって、上記変色性化合物がpH0〜8.0の変色域を有することを特徴とする光カチオン重合性組成物、光カチオン重合性化合物100重量部に対し、上記変色性化合物0.001〜5重量部が配合されてなる上記光カチオン重合性組成物、上記変色性化合物が金属塩である上記光カチオン重合性組成物、上記変色性化合物がアルカリ金属塩である上記光カチオン重合性組成物、および、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光する上記光カチオン重合性組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】光カチオン重合性化合物、光カチオン重合触媒および変色性化合物が含有されてなる光カチオン重合性組成物であって、上記変色性化合物がpH0〜8.0の変色域を有することを特徴とする光カチオン重合性組成物、光カチオン重合性化合物100重量部に対し、上記変色性化合物0.001〜5重量部が配合されてなる上記光カチオン重合性組成物、上記変色性化合物が金属塩である上記光カチオン重合性組成物、上記変色性化合物がアルカリ金属塩である上記光カチオン重合性組成物、および、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光する上記光カチオン重合性組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光照射により変色しうる光カチオン重合性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光を照射することによりカチオン重合性基を有する化合物を重合あるいは硬化させる光カチオン重合触媒として、例えば、アリールジアゾニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ホスホニウム塩等が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような光カチオン重合触媒は、カチオン重合性基を有する化合物、例えば、エポキシ系化合物、ビニルエーテル系化合物、オキセタン系化合物等の光重合あるいは光硬化に利用されている。また、このような硬化反応機構は、工業的には、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤等への利用が検討されている。
【0004】
上記カチオン重合性基を有する化合物のなかでも、特にエポキシ系化合物は、その硬化物が密着性、接着力、耐クリープ性、耐候性、耐光性、耐水性、耐熱性、耐薬品性等の諸特性に優れていることから、上記各種工業用途での利用が盛んに検討されてきた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
一方、上記カチオン重合性基を有する化合物および光カチオン重合触媒からなる光カチオン重合性組成物は、光の照射により重合あるいは硬化するという基本的な性質上、一般的に、光を遮断したり、光を吸収する物質を配合することは困難である。
【0006】
ところが、近年、光カチオン重合性組成物が適正に塗工されているか否かを確認したり、例えば被着体などの他の材料と同色にするために、光照射による重合や硬化を阻害することなく、光カチオン重合性組成物を着色する技術(方法)に対する要望が高まっている。
【0007】
このような要望に対応するために、例えば、カチオン重合性化合物および炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、ガラスバルーンなどの白色化剤を含有してなる光カチオン重合性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
また、塗工された光カチオン重合性組成物に光が正常に照射されたか否かを確認するために、光照射前後で変色しうる光カチオン重合性組成物に対する要望も高まっている。
【0009】
このような要望に対応するために、例えば、ウレタン系ポリマーおよび芳香族オニウム塩を含有してなり、かつ、光(紫外線)に反応して呈色しうる感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
しかし、上記感光性樹脂組成物には、ウレタン系ポリマーを使用しているため、光照射によるカチオン重合が阻害されるという問題点がある。
【0011】
【特許文献1】
特開昭61−174221号公報
【特許文献2】
特開2002−226709号公報
【特許文献3】
特開平11−209603号公報
【非特許文献1】
垣内弘編「新エポキシ樹脂」、昭晃堂、1985年初版
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、光照射の前後において変色することにより、光照射が正常に行われたか否か、あるいは、不必要な箇所や不必要な時に光照射が行われていないか否か等を容易に判断することができるとともに、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた物性を発現する硬化物となりうる光カチオン重合性組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による光カチオン重合性組成物は、光カチオン重合性化合物、光カチオン重合触媒および変色性化合物が含有されてなる光カチオン重合性組成物であって、上記変色性化合物がpH0〜8.0の変色域を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1に記載の光カチオン重合性組成物において、光カチオン重合性化合物100重量部に対し、変色性化合物0.001〜5重量部が配合されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1または請求項2に記載の光カチオン重合性組成物において、変色性化合物が金属塩であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物において、変色性化合物がアルカリ金属塩であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物において、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することを特徴とする。
【0018】
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる光カチオン重合性化合物としては、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のカチオン重合性基を有し、光を照射された際に、後述する光カチオン重合触媒に励起されて光カチオン重合反応をしうる化合物であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、カチオン重合性基としてエポキシ基を有するエポキシ系化合物、カチオン重合性基としてビニルエーテル基を有するビニルエーテル系化合物、カチオン重合性基としてオキセタン基を有するオキセタン系化合物等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0019】
上記エポキシ系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテルなどや、これらの水素添加物やハロゲン化物などの芳香族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ダイセル化学工業社製の商品名「EHPE−3150」(軟化温度:71℃)などの脂環族エポキシ樹脂;1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9個、好ましくは2〜4個のアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどや、これらの水素添加物などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体などや、これらの水素添加物などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレートと例えばエチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステルなどのラジカル重合性モノマーとの共重合体;例えばエポキシ化ポリブタジエンなどのような共役ジエン化合物を主体とする重合体または共役ジエン化合物の部分水素添加物を主体とする重合体の共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;例えばエポキシ化SBSなどのようなビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックまたは共役ジエン化合物の部分水素添加物を主体とする重合体ブロックとを同一分子内に有するブロック共重合体の共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するポリエステル樹脂;上記各種エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入したウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂;上記各種エポキシ樹脂中にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴムなどのゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、本発明で言う例えば(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0020】
上記ビニルエーテル系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル−3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等が挙げられる。これらのビニルエーテル系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】
上記オキセタン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−へキシルオキシメチルオキセタン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらのオキセタン系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0022】
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる光カチオン重合触媒としては、光を照射することにより活性化され、プロトン供与体として作用するカチオン酸を発生して、上記光カチオン重合性化合物を光カチオン重合反応させうるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩などのオニウム塩等が挙げられる。これらの光カチオン重合触媒は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0023】
上記オニウム塩の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0024】
また、上記光カチオン重合触媒の市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名「イルガキュアー261」、旭電化工業社製の商品名「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−151」、「オプトマーSP−170」、「オプトマーSP−171」などの「オプトマー」シリーズ、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」、三新化学工業社製の商品名「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」などの「サンエイド」シリーズ、日本曹達社製の商品名「CI−2064」、「CI−2481」、「CI−2624」、「CI−2639」などの「CI」シリーズ、ローヌプーラン社製の商品名「RHODORSIL PHOTOINITIATOR2074」、ユニオンカーバイド社製の商品名「UVI−6990」、ミドリ化学社製の商品名「BBI−103」、「MPI−103」、「TPS−103」、「MDS−103」、「DTS−103」、「NAT−103」、「NDS−103」等が挙げられる。
【0025】
上記光カチオン重合触媒の配合量は、特に限定されるものではないが、前記光カチオン重合性化合物100重量部に対し、光カチオン重合触媒0.02〜20重量部であることが好ましい。
【0026】
光カチオン重合性化合物100重量部に対する光カチオン重合触媒の配合量が0.02重量部未満であると、光カチオン重合反応が十分に進行しなくなったり、硬化が遅くなることがあり、逆に光カチオン重合性化合物100重量部に対する光カチオン重合触媒の配合量が20重量部を超えると、得られる光カチオン重合性組成物の可使時間と硬化速度との両立が困難となることがある。
【0027】
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる変色性化合物とは、酸塩基指示薬、水素イオン指示薬、pH指示薬等と呼称されるものであって、pH(水素イオン濃度)の変化に伴って変色しうる化合物のことである。
【0028】
本発明で用いられる変色性化合物は、pH0〜8.0の変色域を有すること、すなわち、pH0〜8.0の領域において変色しうることが必要である。
【0029】
本発明の光カチオン重合性組成物は、光を照射された際に、前記光カチオン重合触媒がプロトン供与体として作用するカチオン酸を発生するので、光カチオン重合性組成物全体のpHが低い方向、すなわち、酸性側の方向に向かう。したがって、変色性化合物の変色域がpH8.0を超える領域に存在すると、光照射前後における変色が起こらなくなるので、本発明で用いられる変色性化合物の変色域はpH0〜8.0の領域に限定される。
【0030】
上記pH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールパープル、アリザリン、ニュートラルレッド、チモールブルー、メチルバイオレッド、メチルイエロー、メチルオレンジ、メチルレッド、コンゴーレッド等や、これらの例えばアルカリ金属塩などの金属塩等が挙げられ、なかでも、イオン化が起こりやすいことから、これらの金属塩が好適に用いられ、とりわけ、イオン化がより起こりやすいことから、これらのアルカリ金属塩がより好適に用いられる。これらのpH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0031】
上記pH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、前記光カチオン重合性化合物100重量部に対し、上記変色性化合物0.001〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1重量部である。
【0032】
光カチオン重合性化合物100重量部に対する上記変色性化合物の配合量が0.001重量部未満であると、光カチオン重合性組成物の光照射前後における変色度合いが不十分となることがあり、逆に光カチオン重合性化合物100重量部に対する上記変色性化合物の配合量が5重量部を超えると、光カチオン重合性組成物の硬化性等に不具合が生じることがある。
【0033】
本発明の光カチオン重合性組成物には、必須成分である前記光カチオン重合性化合物、前記光カチオン重合触媒および上記pH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物に加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、粘接着性を向上させるための粘接着性付与剤、塗工性を向上させるための粘度調整剤、チキソトロープ性(揺変性)を付与するためのチキソトロープ性付与剤、物性調整剤、増量剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が配合されていても良い。
【0034】
粘接着性付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、C5系もしくはC9系石油樹脂、クマロンインデン系樹脂等が挙げられる。これらの粘接着性付与剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0035】
粘度調整剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
チキソトロープ性付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等が挙げられる。これらのチキソトロープ性付与剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
物性調整剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイソブチレン、ワックス類等が挙げられる。これらの物性調整剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
増量剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水シリカ、含水シリカ、珪酸カルシウム等が挙げられる。これらの増量剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
着色剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、ガラスバルーン、弁柄、カーボンブラック等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
本発明の光カチオン重合性組成物は、特に限定されるものではないが、塗工時における粘度が0.001〜1000Pa・sであることが好ましい。なお、上記塗工時における粘度には、常温で塗工するときの粘度のみならず、例えば0℃のような低温で塗工するときの粘度や、光カチオン重合性組成物がホットメルト型光カチオン重合性組成物であって、このホットメルト型光カチオン重合性組成物を加熱溶融して塗工するときの粘度等も包含される。
【0041】
光カチオン重合性組成物の上記塗工時における粘度が0.001Pa・s未満であると、流動性が高くなりすぎ、塗工すべきでない箇所にまで流れやすくなって、作業性が悪くなることがあり、逆に光カチオン重合性組成物の上記塗工時における粘度が1000Pa・sを超えると、流動性が乏しくなって、塗工作業が困難となることがある。
【0042】
本発明の光カチオン重合性組成物は、特に限定されるものではないが、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することが好ましい。
【0043】
300nm未満の波長成分のみを含む光に感光すると、光カチオン重合性組成物の塗工厚みが厚い場合、光照射面の表層に皮張りが生じやすくなるとともに、表層から深部まで均一に硬化しなくなることがあり、逆に800nmを超える波長成分のみを含む光に感光すると、表層から深部まで均一に硬化はするものの、十分なエネルギー(照射量)の光を与えることが困難となって、光カチオン重合性組成物の硬化速度が遅くなりすぎることがある。
【0044】
上記光を照射するために用いられる光源としては、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光を照射しうるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、蛍光灯、太陽光線等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられても良いし、2種類以上が組み合わされて用いられても良い。なお、上記光源を用いて光照射を行う場合、光カチオン重合性組成物を表層から深部まで均一に硬化させるために、300nm未満の波長成分をカットして照射することが好ましい。
【0045】
本発明の光カチオン重合性組成物は、上記光の照射による光カチオン重合反応終了後の硬化物のゲル分率が60重量%以上であることが好ましい。光カチオン重合性組成物の硬化物のゲル分率が60重量%未満であると、接着力、耐クリープ性、耐熱性等が不十分となることがある。なお、本発明で言うゲル分率とは、以下の方法で測定されるゲル分率を意味する。
【0046】
〔ゲル分率の測定方法〕
光カチオン重合性組成物の硬化物を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料を例えばトルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中に一定時間浸漬して溶解させる。次いで、濾過により有機溶媒不溶解分を濾別し、乾燥した後、有機溶媒不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×B/A
上式中、Aは有機溶媒浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、Bは有機溶媒不溶解分の重量(g)である。
【0047】
本発明の光カチオン重合性組成物の用途としては、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤等が挙げられるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0048】
【作用】
本発明の光カチオン重合性組成物は、光カチオン重合性化合物、光カチオン重合触媒および変色性化合物を含有してなり、かつ、上記変色性化合物はpH0〜8.0の変色域を有するものとなされているので、光照射の前後において容易に変色するとともに、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた物性を発現する硬化物となる。
【0049】
また、上記変色性化合物として金属塩、なかでもアルカリ金属塩を用いることにより、上記効果はより確実なものとなる。
【0050】
さらに、本発明の光カチオン重合性組成物は、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光に感光することにより、塗工厚みが厚い場合でも、光照射面の表層に皮張りを生じることがなく、表層から深部まで適正な硬化速度で均一に硬化する。
【0051】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
約200mLのサンプル瓶内で、光カチオン重合性化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「エピコート828」、油化シェルエポキシ社製)100g、光カチオン重合触媒として商品名「UVI−6990」(ユニオンカーバイド社製)2g、および、変色性化合物としてメチルオレンジ(変色域:pH3.1〜4.4、和光純薬工業社製)0.5gを80℃で均一に加熱混合した後、この混合物を200メッシュの金網で濾過し、不溶解物を除去して、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0053】
(実施例2)
変色性化合物としてのメチルオレンジの配合量を0.005gとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0054】
(実施例3)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、チモールブルーナトリウム塩(変色域:pH1.2〜2.8およびpH8.0〜9.6、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0055】
(実施例4)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、ブロモフェノールブルーナトリウム塩(変色域:pH2.8〜4.4、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0056】
(比較例1)
変色性化合物としてのメチルオレンジを配合しなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0057】
(比較例2)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、フェノールフタレイン(変色域:pH8.3〜10.0、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0058】
(比較例3)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、フェノールレッド(変色域:pH6.8〜8.4、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0059】
実施例1〜実施例4、および、比較例1〜比較例3で得られた光カチオン重合性組成物の性能(▲1▼ゲル分率、▲2▼変色性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0060】
▲1▼ゲル分率
超高圧水銀灯を用いて、光カチオン重合性組成物に365nmの波長成分の強度が2400mJ/cm2 となるように紫外線を照射した後、80℃で5分間加熱し、さらに常温で24時間放置して、光カチオン重合性組成物の硬化物を作製した。次に、得られた硬化物を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料をメチルエチルケトン(MEK)中に24時間浸漬して溶解させた。次いで、濾過によりMEK不溶解分を濾別し、乾燥した後、MEK不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×B/A
上式中、AはMEK浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、BはMEK不溶解分の重量(g)である。
【0061】
▲2▼変色性
超高圧水銀灯を用いて、光カチオン重合性組成物に365nmの波長成分の強度が1500mJ/cm2 となるように紫外線を照射した後、光カチオン重合性組成物の外観を目視で観察して、光(紫外線)照射前後における光カチオン重合性組成物の変色の有無、および、光(紫外線)照射前の光カチオン重合性組成物の色相および光(紫外線)照射後の光カチオン重合性組成物(硬化物)の色相を確認した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から明らかなように、本発明による実施例1〜実施例4の光カチオン重合性組成物は、いずれも光照射前後において優れた変色性を発現した。また、上記光カチオン重合性組成物は、いずれもゲル分率が高く、変色性化合物に起因するカチオン重合反応阻害性は認められず、優れた硬化性を有していた。
【0064】
これに対し、変色性化合物を配合しなかった比較例1の光カチオン重合性組成物および変色性化合物として変色域がpH8.3〜10.0であるフェノールフタレインを配合した比較例2の光カチオン重合性組成物は、いずれも光照射前後における変色が認められず、光照射前の色相(無色)のままであった。また、変色性化合物として変色域がpH6.8〜8.4であり、部分的にpH8.0を超えているフェノールレッドを配合した比較例3の光カチオン重合性組成物も、光照射前後における変色が認められず、光照射前の色相(赤色)のままであった。
【0065】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の光カチオン重合性組成物は、光照射の前後において変色することにより、光照射が正常に行われたか否か、あるいは、不必要な箇所や不必要な時に光照射が行われていないか否か等を容易に判断することができるとともに、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた物性を発現する硬化物となりうるので、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤等を始め、各種工業用途に好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光照射により変色しうる光カチオン重合性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光を照射することによりカチオン重合性基を有する化合物を重合あるいは硬化させる光カチオン重合触媒として、例えば、アリールジアゾニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ホスホニウム塩等が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような光カチオン重合触媒は、カチオン重合性基を有する化合物、例えば、エポキシ系化合物、ビニルエーテル系化合物、オキセタン系化合物等の光重合あるいは光硬化に利用されている。また、このような硬化反応機構は、工業的には、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤等への利用が検討されている。
【0004】
上記カチオン重合性基を有する化合物のなかでも、特にエポキシ系化合物は、その硬化物が密着性、接着力、耐クリープ性、耐候性、耐光性、耐水性、耐熱性、耐薬品性等の諸特性に優れていることから、上記各種工業用途での利用が盛んに検討されてきた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
一方、上記カチオン重合性基を有する化合物および光カチオン重合触媒からなる光カチオン重合性組成物は、光の照射により重合あるいは硬化するという基本的な性質上、一般的に、光を遮断したり、光を吸収する物質を配合することは困難である。
【0006】
ところが、近年、光カチオン重合性組成物が適正に塗工されているか否かを確認したり、例えば被着体などの他の材料と同色にするために、光照射による重合や硬化を阻害することなく、光カチオン重合性組成物を着色する技術(方法)に対する要望が高まっている。
【0007】
このような要望に対応するために、例えば、カチオン重合性化合物および炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、ガラスバルーンなどの白色化剤を含有してなる光カチオン重合性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
また、塗工された光カチオン重合性組成物に光が正常に照射されたか否かを確認するために、光照射前後で変色しうる光カチオン重合性組成物に対する要望も高まっている。
【0009】
このような要望に対応するために、例えば、ウレタン系ポリマーおよび芳香族オニウム塩を含有してなり、かつ、光(紫外線)に反応して呈色しうる感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
しかし、上記感光性樹脂組成物には、ウレタン系ポリマーを使用しているため、光照射によるカチオン重合が阻害されるという問題点がある。
【0011】
【特許文献1】
特開昭61−174221号公報
【特許文献2】
特開2002−226709号公報
【特許文献3】
特開平11−209603号公報
【非特許文献1】
垣内弘編「新エポキシ樹脂」、昭晃堂、1985年初版
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、光照射の前後において変色することにより、光照射が正常に行われたか否か、あるいは、不必要な箇所や不必要な時に光照射が行われていないか否か等を容易に判断することができるとともに、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた物性を発現する硬化物となりうる光カチオン重合性組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による光カチオン重合性組成物は、光カチオン重合性化合物、光カチオン重合触媒および変色性化合物が含有されてなる光カチオン重合性組成物であって、上記変色性化合物がpH0〜8.0の変色域を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1に記載の光カチオン重合性組成物において、光カチオン重合性化合物100重量部に対し、変色性化合物0.001〜5重量部が配合されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1または請求項2に記載の光カチオン重合性組成物において、変色性化合物が金属塩であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物において、変色性化合物がアルカリ金属塩であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明による光カチオン重合性組成物は、上記請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物において、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することを特徴とする。
【0018】
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる光カチオン重合性化合物としては、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のカチオン重合性基を有し、光を照射された際に、後述する光カチオン重合触媒に励起されて光カチオン重合反応をしうる化合物であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、カチオン重合性基としてエポキシ基を有するエポキシ系化合物、カチオン重合性基としてビニルエーテル基を有するビニルエーテル系化合物、カチオン重合性基としてオキセタン基を有するオキセタン系化合物等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0019】
上記エポキシ系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテルなどや、これらの水素添加物やハロゲン化物などの芳香族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ダイセル化学工業社製の商品名「EHPE−3150」(軟化温度:71℃)などの脂環族エポキシ樹脂;1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9個、好ましくは2〜4個のアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどや、これらの水素添加物などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体などや、これらの水素添加物などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレートと例えばエチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステルなどのラジカル重合性モノマーとの共重合体;例えばエポキシ化ポリブタジエンなどのような共役ジエン化合物を主体とする重合体または共役ジエン化合物の部分水素添加物を主体とする重合体の共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;例えばエポキシ化SBSなどのようなビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックまたは共役ジエン化合物の部分水素添加物を主体とする重合体ブロックとを同一分子内に有するブロック共重合体の共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するポリエステル樹脂;上記各種エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入したウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂;上記各種エポキシ樹脂中にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴムなどのゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、本発明で言う例えば(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0020】
上記ビニルエーテル系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル−3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等が挙げられる。これらのビニルエーテル系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】
上記オキセタン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−へキシルオキシメチルオキセタン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらのオキセタン系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0022】
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる光カチオン重合触媒としては、光を照射することにより活性化され、プロトン供与体として作用するカチオン酸を発生して、上記光カチオン重合性化合物を光カチオン重合反応させうるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩などのオニウム塩等が挙げられる。これらの光カチオン重合触媒は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0023】
上記オニウム塩の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0024】
また、上記光カチオン重合触媒の市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名「イルガキュアー261」、旭電化工業社製の商品名「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−151」、「オプトマーSP−170」、「オプトマーSP−171」などの「オプトマー」シリーズ、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」、三新化学工業社製の商品名「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」などの「サンエイド」シリーズ、日本曹達社製の商品名「CI−2064」、「CI−2481」、「CI−2624」、「CI−2639」などの「CI」シリーズ、ローヌプーラン社製の商品名「RHODORSIL PHOTOINITIATOR2074」、ユニオンカーバイド社製の商品名「UVI−6990」、ミドリ化学社製の商品名「BBI−103」、「MPI−103」、「TPS−103」、「MDS−103」、「DTS−103」、「NAT−103」、「NDS−103」等が挙げられる。
【0025】
上記光カチオン重合触媒の配合量は、特に限定されるものではないが、前記光カチオン重合性化合物100重量部に対し、光カチオン重合触媒0.02〜20重量部であることが好ましい。
【0026】
光カチオン重合性化合物100重量部に対する光カチオン重合触媒の配合量が0.02重量部未満であると、光カチオン重合反応が十分に進行しなくなったり、硬化が遅くなることがあり、逆に光カチオン重合性化合物100重量部に対する光カチオン重合触媒の配合量が20重量部を超えると、得られる光カチオン重合性組成物の可使時間と硬化速度との両立が困難となることがある。
【0027】
本発明の光カチオン重合性組成物に用いられる変色性化合物とは、酸塩基指示薬、水素イオン指示薬、pH指示薬等と呼称されるものであって、pH(水素イオン濃度)の変化に伴って変色しうる化合物のことである。
【0028】
本発明で用いられる変色性化合物は、pH0〜8.0の変色域を有すること、すなわち、pH0〜8.0の領域において変色しうることが必要である。
【0029】
本発明の光カチオン重合性組成物は、光を照射された際に、前記光カチオン重合触媒がプロトン供与体として作用するカチオン酸を発生するので、光カチオン重合性組成物全体のpHが低い方向、すなわち、酸性側の方向に向かう。したがって、変色性化合物の変色域がpH8.0を超える領域に存在すると、光照射前後における変色が起こらなくなるので、本発明で用いられる変色性化合物の変色域はpH0〜8.0の領域に限定される。
【0030】
上記pH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールパープル、アリザリン、ニュートラルレッド、チモールブルー、メチルバイオレッド、メチルイエロー、メチルオレンジ、メチルレッド、コンゴーレッド等や、これらの例えばアルカリ金属塩などの金属塩等が挙げられ、なかでも、イオン化が起こりやすいことから、これらの金属塩が好適に用いられ、とりわけ、イオン化がより起こりやすいことから、これらのアルカリ金属塩がより好適に用いられる。これらのpH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0031】
上記pH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、前記光カチオン重合性化合物100重量部に対し、上記変色性化合物0.001〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1重量部である。
【0032】
光カチオン重合性化合物100重量部に対する上記変色性化合物の配合量が0.001重量部未満であると、光カチオン重合性組成物の光照射前後における変色度合いが不十分となることがあり、逆に光カチオン重合性化合物100重量部に対する上記変色性化合物の配合量が5重量部を超えると、光カチオン重合性組成物の硬化性等に不具合が生じることがある。
【0033】
本発明の光カチオン重合性組成物には、必須成分である前記光カチオン重合性化合物、前記光カチオン重合触媒および上記pH0〜8.0の変色域を有する変色性化合物に加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、粘接着性を向上させるための粘接着性付与剤、塗工性を向上させるための粘度調整剤、チキソトロープ性(揺変性)を付与するためのチキソトロープ性付与剤、物性調整剤、増量剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が配合されていても良い。
【0034】
粘接着性付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、C5系もしくはC9系石油樹脂、クマロンインデン系樹脂等が挙げられる。これらの粘接着性付与剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0035】
粘度調整剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
チキソトロープ性付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等が挙げられる。これらのチキソトロープ性付与剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
物性調整剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイソブチレン、ワックス類等が挙げられる。これらの物性調整剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
増量剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水シリカ、含水シリカ、珪酸カルシウム等が挙げられる。これらの増量剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
着色剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、ガラスバルーン、弁柄、カーボンブラック等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
本発明の光カチオン重合性組成物は、特に限定されるものではないが、塗工時における粘度が0.001〜1000Pa・sであることが好ましい。なお、上記塗工時における粘度には、常温で塗工するときの粘度のみならず、例えば0℃のような低温で塗工するときの粘度や、光カチオン重合性組成物がホットメルト型光カチオン重合性組成物であって、このホットメルト型光カチオン重合性組成物を加熱溶融して塗工するときの粘度等も包含される。
【0041】
光カチオン重合性組成物の上記塗工時における粘度が0.001Pa・s未満であると、流動性が高くなりすぎ、塗工すべきでない箇所にまで流れやすくなって、作業性が悪くなることがあり、逆に光カチオン重合性組成物の上記塗工時における粘度が1000Pa・sを超えると、流動性が乏しくなって、塗工作業が困難となることがある。
【0042】
本発明の光カチオン重合性組成物は、特に限定されるものではないが、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することが好ましい。
【0043】
300nm未満の波長成分のみを含む光に感光すると、光カチオン重合性組成物の塗工厚みが厚い場合、光照射面の表層に皮張りが生じやすくなるとともに、表層から深部まで均一に硬化しなくなることがあり、逆に800nmを超える波長成分のみを含む光に感光すると、表層から深部まで均一に硬化はするものの、十分なエネルギー(照射量)の光を与えることが困難となって、光カチオン重合性組成物の硬化速度が遅くなりすぎることがある。
【0044】
上記光を照射するために用いられる光源としては、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光を照射しうるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、蛍光灯、太陽光線等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられても良いし、2種類以上が組み合わされて用いられても良い。なお、上記光源を用いて光照射を行う場合、光カチオン重合性組成物を表層から深部まで均一に硬化させるために、300nm未満の波長成分をカットして照射することが好ましい。
【0045】
本発明の光カチオン重合性組成物は、上記光の照射による光カチオン重合反応終了後の硬化物のゲル分率が60重量%以上であることが好ましい。光カチオン重合性組成物の硬化物のゲル分率が60重量%未満であると、接着力、耐クリープ性、耐熱性等が不十分となることがある。なお、本発明で言うゲル分率とは、以下の方法で測定されるゲル分率を意味する。
【0046】
〔ゲル分率の測定方法〕
光カチオン重合性組成物の硬化物を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料を例えばトルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中に一定時間浸漬して溶解させる。次いで、濾過により有機溶媒不溶解分を濾別し、乾燥した後、有機溶媒不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×B/A
上式中、Aは有機溶媒浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、Bは有機溶媒不溶解分の重量(g)である。
【0047】
本発明の光カチオン重合性組成物の用途としては、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤等が挙げられるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0048】
【作用】
本発明の光カチオン重合性組成物は、光カチオン重合性化合物、光カチオン重合触媒および変色性化合物を含有してなり、かつ、上記変色性化合物はpH0〜8.0の変色域を有するものとなされているので、光照射の前後において容易に変色するとともに、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた物性を発現する硬化物となる。
【0049】
また、上記変色性化合物として金属塩、なかでもアルカリ金属塩を用いることにより、上記効果はより確実なものとなる。
【0050】
さらに、本発明の光カチオン重合性組成物は、少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光に感光することにより、塗工厚みが厚い場合でも、光照射面の表層に皮張りを生じることがなく、表層から深部まで適正な硬化速度で均一に硬化する。
【0051】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
約200mLのサンプル瓶内で、光カチオン重合性化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「エピコート828」、油化シェルエポキシ社製)100g、光カチオン重合触媒として商品名「UVI−6990」(ユニオンカーバイド社製)2g、および、変色性化合物としてメチルオレンジ(変色域:pH3.1〜4.4、和光純薬工業社製)0.5gを80℃で均一に加熱混合した後、この混合物を200メッシュの金網で濾過し、不溶解物を除去して、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0053】
(実施例2)
変色性化合物としてのメチルオレンジの配合量を0.005gとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0054】
(実施例3)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、チモールブルーナトリウム塩(変色域:pH1.2〜2.8およびpH8.0〜9.6、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0055】
(実施例4)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、ブロモフェノールブルーナトリウム塩(変色域:pH2.8〜4.4、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0056】
(比較例1)
変色性化合物としてのメチルオレンジを配合しなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0057】
(比較例2)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、フェノールフタレイン(変色域:pH8.3〜10.0、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0058】
(比較例3)
変色性化合物として、メチルオレンジ0.5gの代わりに、フェノールレッド(変色域:pH6.8〜8.4、和光純薬工業社製)0.5gを配合したこと以外は実施例1の場合と同様にして、光カチオン重合性組成物を作製した。
【0059】
実施例1〜実施例4、および、比較例1〜比較例3で得られた光カチオン重合性組成物の性能(▲1▼ゲル分率、▲2▼変色性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0060】
▲1▼ゲル分率
超高圧水銀灯を用いて、光カチオン重合性組成物に365nmの波長成分の強度が2400mJ/cm2 となるように紫外線を照射した後、80℃で5分間加熱し、さらに常温で24時間放置して、光カチオン重合性組成物の硬化物を作製した。次に、得られた硬化物を一定量秤量して測定用試料とし、この測定用試料をメチルエチルケトン(MEK)中に24時間浸漬して溶解させた。次いで、濾過によりMEK不溶解分を濾別し、乾燥した後、MEK不溶解分の重量を測定して、下式によりゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×B/A
上式中、AはMEK浸漬前の測定用試料の重量(g)であり、BはMEK不溶解分の重量(g)である。
【0061】
▲2▼変色性
超高圧水銀灯を用いて、光カチオン重合性組成物に365nmの波長成分の強度が1500mJ/cm2 となるように紫外線を照射した後、光カチオン重合性組成物の外観を目視で観察して、光(紫外線)照射前後における光カチオン重合性組成物の変色の有無、および、光(紫外線)照射前の光カチオン重合性組成物の色相および光(紫外線)照射後の光カチオン重合性組成物(硬化物)の色相を確認した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から明らかなように、本発明による実施例1〜実施例4の光カチオン重合性組成物は、いずれも光照射前後において優れた変色性を発現した。また、上記光カチオン重合性組成物は、いずれもゲル分率が高く、変色性化合物に起因するカチオン重合反応阻害性は認められず、優れた硬化性を有していた。
【0064】
これに対し、変色性化合物を配合しなかった比較例1の光カチオン重合性組成物および変色性化合物として変色域がpH8.3〜10.0であるフェノールフタレインを配合した比較例2の光カチオン重合性組成物は、いずれも光照射前後における変色が認められず、光照射前の色相(無色)のままであった。また、変色性化合物として変色域がpH6.8〜8.4であり、部分的にpH8.0を超えているフェノールレッドを配合した比較例3の光カチオン重合性組成物も、光照射前後における変色が認められず、光照射前の色相(赤色)のままであった。
【0065】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の光カチオン重合性組成物は、光照射の前後において変色することにより、光照射が正常に行われたか否か、あるいは、不必要な箇所や不必要な時に光照射が行われていないか否か等を容易に判断することができるとともに、光照射により速やかにカチオン重合して、優れた物性を発現する硬化物となりうるので、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤、ワニス、複合材マトリックス、光造形剤等を始め、各種工業用途に好適に用いられる。
Claims (5)
- 光カチオン重合性化合物、光カチオン重合触媒および変色性化合物が含有されてなる光カチオン重合性組成物であって、上記変色性化合物がpH0〜8.0の変色域を有することを特徴とする光カチオン重合性組成物。
- 光カチオン重合性化合物100重量部に対し、変色性化合物0.001〜5重量部が配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の光カチオン重合性組成物。
- 変色性化合物が金属塩であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光カチオン重合性組成物。
- 変色性化合物がアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物。
- 少なくとも300〜800nmの波長成分を含む光により感光することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光カチオン重合性組成物。
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