JP3852685B2 - カチオン重合型液状組成物及び粘着性重合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機溶媒を含有することなく容易に基材への塗布が可能であり、塗布後に光あるいは熱により重合して良好な粘着特性を示す粘着剤として使用可能なカチオン重合型液状組成物、及び該カチオン重合型液状組成物をカチオン重合して得られる粘着性重合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
粘着剤としては、従来からゴム系あるいはアクリル系の材料を有機溶剤に溶解させた溶剤型または水中に分散させたエマルジョン型のものが使用されている。溶剤型の粘着剤は現時点でもっとも普及しているが、近年、有機溶剤の飛散が問題となっている。また、エマルジョン型の場合は、耐水性、長い乾燥時間等が欠点として挙げられる。ホットメルト型の様に、上記問題点を解決する方法も提案されているが、依然その塗工特性および粘着特性、とりわけ耐熱性は低いものである。
最近、重合性モノマーを主体とした無溶剤液状硬化型粘着剤が提案されており、例えば、ラジカル重合性を有するアクリレート類を用いた光ラジカル硬化型無溶剤液状組成物に関する提案が多数あるが、空気中の重合においては酸素の重合禁止効果によりラジカル重合を完結させることは困難であるため、残存モノマーに起因した悪臭、皮膚刺激性等が問題になっている。その改良案として窒素雰囲気下での光照射も提案されているが、設備上の投資の大きさが問題となる。
【0003】
また、空気中で良好な光重合特性を示すものとして光カチオン重合型組成物も多数提案されている。例えば、特開平5−78639号公報においては水酸基を有するアクリル系のビニルモノマーを共重合させた重合体、二官能以上のエポキシ化合物およびカチオン重合開始剤からなる感圧接着剤が開示され、特開平8−60127号公報ではシクロヘキセンモノエポキシド基含有熱可塑性アクリル重合体、ポリオールおよびカチオン重合型光開始剤からなる紫外線硬化型ホットメルト型粘着剤組成物が開示され、特開平11−166168号公報には特定の成分を含有するモノマー成分を重合して得られるアクリル系オリゴマーおよび光カチオン触媒からなるアクリル系粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、これらの組成物はいずれも重合性が低いため室温での硬化には多量の光照射が必要であり、実際の使用においてはこの低い重合性が問題となる場合もある。これらの組成物はアクリル基に起因したエステル基が存在しており、このため環状エーテルの開環重合が遅延され重合性が低下しているものと推定される。また、アクリル系オリゴマーの分子量が高い場合には、組成物は高粘度となり塗布が困難となる場合がある。
【0004】
一方、エステル基による重合遅延を回避できるものとして、主鎖中に不飽和結合を有するブロックポリマーの酸化によりエポキシ基を導入した材料を用いた光カチオン重合型組成物(Eric-Jack Gerard and Jurgen Schneider, Rad. Tech. Europe 97, 175, 1997)が開示されており、特開2000−26830号公報には、特定のエポキシ化合物、エポキシ基との反応性官能基を有する化合物、ゴム弾性を有する化合物およびカチオン硬化触媒を配合してなるUV硬化性の粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、いずれの組成物も粘度が非常に高いものであり、前者においては塗布時の加温が、後者においては溶剤の使用が提案されている。
また、特開平11−80681号公報では、光カチオン反応性オリゴマー型の粘着剤組成物を用いた発泡体粘着テープが開示されているが、開示されている組成は2種類のみで、1つの組成物は前記のGerard等の開示情報と同一のもので高粘度であるため塗布が困難であることが、もう一方の組成物は前記特開平11−166168号公報と同一のもので、その硬化速度が遅いことが容易に推定できる。
さらに、特開平11−158437号公報には、カチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤を含有する粘着性材料をインクジェットプリンタのヘッドから噴出して塗布した後に光照射により重合させることを特徴とした接着方法が開示されているが、該公報の実施例にて開示されている組成物は低粘度ではあるが重合性が低く、記載の照射量ではほとんど重合が進行しないため実用性は見出せないものである。
以上のように、これまでの報告された無溶剤液状硬化型粘着剤においては、簡便な塗工性を有し空気中の迅速な重合が可能であり、かつ、光照射により形成された粘着剤塗膜の粘着特性が良好なものに関する報告は未だ皆無であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、塗工が容易な液状組成物であって空気中で高い重合性を有し、カチオン重合した後は接着性、保持力、タック等の粘着特性に優れた粘着性塗膜を与える新規なカチオン重合型液状組成物を提供することである。本発明が解決しようとする他の課題は、接着性、保持力等の粘着特性に優れた粘着性重合物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、簡便な塗工性、空気中での高い重合性および重合後の良好な粘着特性を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成したものである。すなわち、上記の課題は、開環重合性を有する環状エーテルをカチオン重合性基として分子中に有する、単官能モノマー、多官能モノマー、および潜在性を有するカチオン重合開始剤を含有する重合性配合物(A)並びにこの重合性配合物(A)と相溶性を有する固体樹脂(B)を含有する低粘度のカチオン重合型液状組成物によって達成された。ここで、固体樹脂(B)は40℃以上の軟化点を有することが好ましい。また、上記の「低粘度」とは、25℃における粘度が20Pa・sec以下であることをいう。
【0007】
すなわち、本発明の第一の側面は、下記式(1)で表される環状エーテル構造を分子中に1つのみ有する単官能モノマー(以下、単に「単官能モノマー」ともいう。)(A−1)、下記式(1)で表される環状エーテル構造から誘導される基を分子中に2個以上有する多官能モノマー(以下、単に「多官能モノマー」ともいう。)(A−2)および潜在性を有するカチオン重合開始剤(A−3)を含有するカチオン重合性配合物(A)、ならびに前記配合物(A)と室温において相溶し40℃以上の軟化点を有する固体樹脂(B)を含有し、25℃における粘度が20Pa・sec以下の液状樹脂であるカチオン重合型液状組成物に関する。
【0008】
【化5】
【0009】
式中、nは0、1または2を示し、R1〜R6はそれぞれ水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0010】
本発明の第2の側面は、このカチオン重合型液状組成物をカチオン重合して得られる重合物の粘弾性特性を特定の範囲になるように設計することにより、優れた粘着特性を与える粘着性重合物および粘着性重合物用の重合型液状組成物に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカチオン重合型液状組成物およびこれを重合して得られる粘着性重合物について詳しく説明する。
【0012】
カチオン重合性配合物(A)
カチオン重合性配合物(A)は、前記式(1)で表される開環重合性を有する環状エーテル構造を分子中に1つのみ有する単官能モノマー(A−1)、前記式(1)で表される環状エーテル構造を分子中に2個以上有する多官能モノマー(A−2)および潜在性を有するカチオン重合開始剤(A−3)の3成分を必須成分として含有する。このカチオン重合性配合物は、さらに、高温における粘着保持力に優れた特性を得るために、多官能モノマー(A−2)として脂環式エポキシ基を2以上有する化合物を含有することが好ましい。「脂環式エポキシ基」については後に詳述する。また、任意成分としての分子末端に水酸基を有する化合物(後述)を添加することも好ましい。
カチオン重合性配合物(A)の上記構成成分について以下に更に詳しく説明する。
【0013】
単官能モノマー(A−1成分)
単官能モノマーは分子内に環状エーテル構造を1個のみ有する化合物である。環状エーテル構造を2個以上有する化合物は、次の多官能モノマー(A−2)に分類される。この単官能モノマーは重合型液状組成物の粘度および重合により得られる重合物のガラス転移温度を調整するために用いる成分である。
A−1成分として用いる単官能モノマーの粘度は25℃において20mPa・sec以下のものが好ましいが、配合が完了した後の液状組成物の25℃における粘度が20Pa・sec以下になるものであれば、特に単官能モノマー自身の粘度が限定されるものではない。
【0014】
単官能モノマーは、下記式(4)〜(6)で表される三員環のエポキシ基、四員環のオキセタニル基、および五員環のテトラヒドロフルフリル基等を有する化合物に大別される。なお、式(4)のエポキシ基にはシクロペンテン基またはシクロヘキセン基をエポキシ化した構造を有する脂環式エポキシ基も含まれる。
【0015】
【化6】
【0016】
式(4)中、R1〜R4は独立に水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R1およびR3が結合し、これらの基が結合する炭素原子と一緒に環状脂肪族基(好ましくは、シクロヘキサン環またはシクロペンタン環)を形成しても良い。また、上記の炭化水素基に置換する置換基に式(1)で示す環状エーテル構造は含まれない。以下式(5)および(6)においても同様である。
炭化水素基としては、炭素数1〜36(本発明において「C1〜36」とも記す。)のアルキル基又はアリール基が好ましく、C1〜24のアルキル基又はアリール基がより好ましく、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基が好ましい。これらの炭化水素基の置換基としては、カチオン重合を阻害しない限り任意の置換基が許容され、カチオン重合に悪影響を及ぼさない置換基が好ましい。
上記のアルキル基の置換基としては、C1〜12のアルコキシ基、C2〜12のアシルオキシ基、C2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基およびハロゲン原子が例示できる。
上記のアリール基の置換基としては、C1〜12のアルキル基、C1〜12のアルコキシ基、C2〜12のアシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基およびハロゲン原子が例示できる。
【0017】
【化7】
【0018】
式(5)中、R1〜R6は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
炭化水素基としては、C1〜36のアルキル基又はアリール基が好ましく、C1〜24のアルキル基又はアリール基がより好ましく、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基が好ましい。この炭化水素基の置換基としては、カチオン重合を阻害しない限り任意の置換基が許容され、カチオン重合に悪影響を及ぼさない置換基が好ましい。この炭化水素基に許容される置換基群は、式(4)におけるR1〜R4がアルキル基又はアリール基である場合にそれぞれに例示した置換基群と同じである。
【0019】
【化8】
【0020】
式(6)中、R1〜R8は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
炭化水素基としては、C1〜36のアルキル基又はアリール基が好ましく、C1〜24のアルキル基又はアリール基がより好ましく、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基が好ましい。この炭化水素基の置換基としては、カチオン重合を阻害しない限り任意の置換基が許容され、カチオン重合に悪影響を及ぼさない置換基が好ましい。この炭化水素基に許容される置換基群は、式(4)におけるR1〜R4がアルキル基又はアリール基である場合にそれぞれに例示した置換基群と同じである。
【0021】
これらの中でも、最終的に得られる液状組成物の粘度が低くなるという理由から、前記式(1)におけるR1〜R6のいずれかが下記式(2)で表される基を含む置換基である単官能モノマーが本発明で好ましく使用できる。すなわち、この式(2)の基を含む置換基は式(4)〜(6)の炭化水素基として好ましく選択できる。
【0022】
【化9】
【0023】
式(2)中、R7及びR8は独立に水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基であり、好ましくは炭素数が1ないし24、さらに好ましくは炭素数が1ないし10のアルキル基である。R9は置換基を有してもよい炭素数4以上の、好ましくは炭素数4個以上炭素数24以下の、直鎖状あるいは分枝状アルキル基を示し、Xは−CH2−または好ましくは酸素原子を示す。
【0024】
R7ないしR9で示されるアルキル基に許容される置換基としては、カチオン重合を阻害しない限り任意の置換基が許容され、カチオン重合に悪影響を及ぼさない置換基が好ましい。このアルキル基に許容される置換基群は、式(4)におけるR1〜R4がアルキル基を示す場合に、このアルキル基に関して例示した置換基群と同じである。
【0025】
本発明において、単官能モノマー(A−1)としては下記式(3)で表される環状エーテルが特に好ましい。
【0026】
【化10】
【0027】
式(3)中、R7、R8およびR10は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示し、R9は炭素数4〜24の、直鎖状あるいは分枝状のアルキル基を示し、Xは酸素原子を示す。
R9としては、炭素数が4〜24の置換基を有してもよいアルキル基が好ましく、C6〜16の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。このアルキル基に許容される置換基群は、式(4)におけるR1〜R4がアルキル基を示す場合にこのアルキル基に関して例示した置換基群と同じである。
【0028】
式(3)で示される具体的な化合物例として、R7=R8=H、R10=エチル基、R9=2−エチルヘキシル基、X=酸素原子であるOXT−212、および下記の式(7)で示されるOXR−12(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0029】
【化11】
【0030】
A−1成分は比較的低分子量であるため、重合後の粘着性重合物中にこの成分が多量に残存した場合、悪臭等の問題が生じる懸念がある。カチオン重合性の高いオキセタン環を有する単官能モノマーを使用すると、そのような問題が大きく低減できるので、A−1成分として特に前記式(3)、(5)または(7)で表されるオキセタン型の単官能モノマーが好ましい。
【0031】
多官能モノマー(A−2成分)
A−2成分は、前記式(1)における環状構造である環状エーテル構造を分子中に2個以上有する多官能モノマーであり、カチオン重合型液状組成物の粘度およびカチオン重合して得られる重合物の粘着性、言い換えると、重合物の複素弾性率を調整するために用いられる成分である。2以上の環状エーテル構造を結合する連結基は適宜選択できる。
A−2成分として用いられる多官能モノマーは、配合後のカチオン重合型液状組成物の粘度が20Pa・sec以下になりさえすれば良く、特に多官能モノマー自体の粘度が限定されるものではない。
【0032】
多官能モノマーの有する環状エーテル構造としては、単官能モノマーに関して説明した、三員環のエポキシ基、四員環のオキセタニル基、五員環のテトラヒドロフルフリル基が好ましい。多官能モノマーにおける環状エーテル基の具体的な化学構造としては、前記式(4)〜(6)で表される化学構造において、環を形成する炭素原子に結合する水素原子または炭化水素基から、水素原子1個または任意の残基を除去した環状エーテル構造が挙げられる。分子内に環状エーテル基をn個(nは2以上の整数を示す。)有する多官能モノマーは、このような環状エーテル基を単結合、n価の有機残基により結合した化学構造を有する。
【0033】
A−2成分の具体例として、一般的にエポキシ樹脂として知られる、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂や、市販品としてブタジエン等のジエン化合物とエチレン化合物のアニオン重合により製造される、主鎖中に不飽和結合を有するブロックポリマーの酸化によりエポキシ基を導入したクレイトンポリマー社製EKP−206、EKP−207(共に商品名)等が挙げられる。EKP−206およびEPKP−207は、それぞれ、ポリイソプレン/ポリ(エチレン/ブタジエン/スチレン)をエポキシ化したもの、および、ポリイソプレン/ポリ(エチレン/ブタジエン)をエポキシ化したものである。
【0034】
A−2成分としての脂環式エポキシ化合物
A−2成分としての脂環式エポキシ化合物は、高温での複素弾性率を高く維持するために有効な成分であり、その粘度は配合後の組成物の粘度が20Pa・sec以下になるものであれば、特に限定されない。
脂環式エポキシ化合物は、分子内に脂肪族環状エポキシ基を少なくとも1つ有し、好ましくは2〜8個有する化合物である。脂環式エポキシ基は、シクロオレフィンをエポキシ化して得られる。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、市販品であるエピコート171{商品名、油化シェルエポキシ社(株)製}、アラルダイドCY178{商品名、旭チバ(株)社製}、チッソノックス206、チッソノックス205{いずれも商品名、チッソ(株)社製}、セロキサイド2021、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403{いずれも商品名、ダイセル化学工業(株)製}などが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが特に好ましい。
【0035】
A−1成分及びA−2成分の合計量100質量部に対し、A−2成分の合計量を5〜50質量部の範囲とすることが好ましく、10〜40質量部とすることがより好ましい。架橋成分であるA−2成分の合計量が5質量部より少ない場合は得られる重合物の複素弾性率が低下する傾向があり、一方、50質量部を越える場合は複素弾性率が大きくなり過ぎる傾向があり、本発明で好ましい範囲であると規定した複素弾性率の範囲から逸脱する可能性が高い。
また、A−2成分としての脂環式エポキシ化合物の配合割合は、重合物の複素弾性率が好ましい範囲に入れば特に限定されないが、A−1成分およびA−2成分の合計量100質量部に対して、1〜30質量部配合することが好ましく、2〜20質量部であることがさらに好ましい。
【0036】
カチオン重合開始剤(A−3成分)
潜在性を有するカチオン重合開始剤とは、光あるいは熱により活性化され(以下、それぞれ、「光潜在性」および「熱潜在性」という。)酸成分を生成し、組成物中の開環重合性基のカチオン開環重合を誘発するように作用する化合物である。
光潜在性を有するカチオン重合開始剤としては、本発明の重合型液状組成物が光を照射されて活性化され開環重合性基の開環を誘発し得る限り任意の光カチオン重合開始剤が用いることができ、光カチオン重合開始剤としては、オニウム塩類および有機金属錯体類などを例示することができる。ここで、活性化しうる光としては紫外線が好ましい。また光増感剤を併用して波長が390〜500nmの短波可視光により本発明の組成物を活性化することもできる。
【0037】
光重合開始剤としてのオニウム塩類としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩およびヨードニウム塩が挙げられる。また、有機金属錯体類としては、例えば、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体およびアリールシラノール−アルミニウム錯体などが挙げられる。市販品である、例えば、オプトマーSP−150{商品名、旭電化工業(株)製}、オプトマーSP−170{商品名、旭電化工業(株)製}、UVE−1014(商品名、ゼネラルエレクトロニクス社製)、CD−1012(商品名、サートマー社製)および、(4−イソプロピルフェニル)(4−メチルフェニル)イオドニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであるローディオ社製( Rhodia Inc. )ロードーシル( Rhodorsil )2074(商品名)を利用することもできる。
【0038】
熱潜在性を有するカチオン重合開始剤としては、加熱により活性化され開環重合性基の開環を誘発する限り任意の熱カチオン重合開始剤が用いられ、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩等の各種オニウム塩類、有機金属錯体類などが例示される。上記オニウム塩類としては、例えば、アデカオプトンCP−66およびアデカオプトンCP−77{いずれも商品名、旭電化工業(株)社製}、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80LおよびサンエイドSI−100L{いずれも商品名、三新化学工業(株)製}、およびCIシリーズ{日本曹達(株)製}などの市販の化合物を用いることができる。また、有機金属錯体類としては、例えば、アルコキシシラン−アルミニウム錯体などが挙げられる。
【0039】
また、上記潜在性カチオン重合開始剤(A−3)の配合割合は、A−1成分およびA−2成分の合計量100質量部に対し、0.01〜5質量部の範囲とすることが好ましい。潜在性カチオン重合開始剤の配合割合が0.01質量部未満の場合には、光あるいは熱の作用により活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができないことがあり、重合後の重合物の粘着特性が不十分となる場合が有る。また、5質量部を超えて配合したとしても、重合を進行する作用はそれ以上高まらず、逆に初期粘着力が低下することがある。
【0040】
固体樹脂(B)
固体樹脂(B)は、それ自体の軟化点が40℃以上で、前記カチオン重合性配合物(A)と室温において相溶する粘着付与樹脂であり、重合物の粘弾性特性を調整する成分である。固体樹脂(B)はカチオン重合性配合物(A)に添加することにより、低い周波数(例えば1Hz程度)での複素弾性率を低減しつつ、かつ、高周波数(例えば100Hz程度)での複素弾性率を増加できるものであり、一般に粘着付与樹脂(タッキファイヤー)として知られている物を用いることができる。
【0041】
固体樹脂(B)としては、粘着付与樹脂として一般に知られている比較的低分子で高い軟化点を有する固体樹脂を使用でき、例えば、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、C5系またはC9系の石油樹脂およびその水添物、クロマン樹脂等の粘着付与樹脂を用いることができ、前記カチオン重合性配合物(A)と室温において相溶し、軟化点が40℃以上である固体樹脂であれば、特にこれらに限定されるものではない。
これらの中でも、カチオン重合性配合物(A)との相溶性に優れ、硬化後の粘着剤の透明性を向上でき、強い接着力を発現させることができるという点で、水添ロジン系樹脂および水添石油樹脂が好ましい。
固体樹脂(B)は、カチオン重合性配合物(A)100質量部に対して、10〜300質量部使用することが好ましく、50ないし150質量部使用することが特に好ましい。
【0042】
その他の任意添加物
(分子末端に水酸基を有する化合物)
本発明のカチオン重合型液状組成物には、分子の末端に水酸基を有するモノオールまたはポリオール化合物を添加することもできる。
このような末端水酸基含有化合物は連鎖移動反応により重合物中に共重合される。直鎖状分子の片方の末端に水酸基を有する化合物を添加した場合は、カチオン重合連鎖を連鎖移動反応により停止し、この水酸基含有化合物は重合鎖に取り込まれる。また、分子の両方の末端に水酸基を有する化合物を添加した場合、両末端が連鎖移動により重合鎖に取り込まれるため、架橋鎖となりうる。このようにして、水酸基含有化合物をカチオン重合型液状組成物に添加することにより、組成物の粘度、硬化後の重合物の粘弾性特性を調整することができる。
【0043】
好ましい水酸基含有化合物としては、ガラス転移温度の低い、特定範囲の分子量を有するオリゴマーないしポリマー(以下単に「ポリマー」という。)であって、ジオールまたはトリオールが好ましい。好ましい分子量範囲としては、300〜10,000であり、好ましくは500〜5,000であり、特に好ましくは500〜3,000である。このポリマーの主鎖を構成する原子としては炭素のみまたは炭素および酸素が好ましい。2つの水酸基を結合する主鎖に含まれる原子数は、好ましくは、20〜500であり、より好ましくは20〜200である。
上記のポリマーのガラス転移温度は0℃以下のものが好ましい。
【0044】
末端水酸基含有ポリマーの好ましい具体例として、片末端に水酸基を有する化合物としては分枝状オレフィンポリマーであるクレイトンポリマー社製のL−1203等が挙げられ、両末端に水酸基を有する化合物としては、ポリブタジエン水添物である日本曹達社のGI−1000、2000、3000等が挙げられる。
【0045】
本発明における組成物には、上記のカチオン重合性配合物(A)および固体樹脂(B)の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の可塑剤、老化防止剤および増量剤等を適宜配合してもよい。また、塗工性を向上させる目的で、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴムおよびブチルゴム等の増粘剤、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン等のチキソトロープ剤、炭酸カルシウム、酸化チタンおよびクレー等の増量剤等を添加してもよい。
さらに、高強度の剪断接着力を付与する目的で、ガラスバルーン、アルミナバルーンおよびセラミックバルーン等の無機中空体;ナイロンビーズ、アクリルビーズおよびシリコンビーズ等の有機球状体;塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーン等の有機中空体;ガラス、ポリエステル、レーヨン、ナイロンおよびセルロース等の単繊維等を添加してもよい。上記ガラス繊維を配合する場合、繊維状のチップを組成物中に添加することが可能であるが、ガラス織布に上記光重合性組成物などを含浸して重合することにより、非常に高強度の剪断接着力を得ることができる。
【0046】
カチオン重合性配合物(A)を構成するA−1ないしA−3、固体樹脂B、及び前述した他の添加剤は、1種類の化合物を使用しても良く、2種以上の異なる化合物を併用しても良い。
【0047】
次に本発明の実施例で使用する諸物性の測定条件およびその好ましい範囲を記す。
粘度
カチオン重合型液状組成物の粘度は25℃において20Pa・sec以下であり、これ以上に高粘度な組成物では、室温での塗布が困難となり加温が必要となる場合が有る。一般に、潜在性カチオン重合性組成物を加温すると安定性が低下し増粘する場合が有るため加温は好ましいものではない。良好な塗工性を得るためには、25℃における粘度が10Pa・sec以下であることが好ましい。
【0048】
粘弾性特性
本発明において重合物の複素弾性率はずりせん断応力による粘弾性測定法により測定した結果に基づく値である。
本発明の組成物をカチオン重合させて得られるカチオン重合物は、25℃における粘弾性特性として各周波数における複素弾性率(G*)が、好ましくは、以下の条件を満たすものである。
G*> 100,000(測定周波数:0.1Hz)
G*< 4,000,000(測定周波数:1Hz)
G*> 2,000,000(測定周波数:100Hz)
さらに、前記A−2として脂環式エポキシ化合物を所定量使用した場合には、重合物の100℃における測定周波数0.1Hzにおいて複素弾性率(G*)が、以下の条件を満たすものである。
G*>100,000(測定周波数:0.1Hz)
【0049】
重合物の0.1Hzにおける複素弾性率が100,000より低い場合、重合物の凝集力が低いものとなり、被着体からの剥離において凝集破壊が生じ一般に「糊残り」といわれる状態や、保持力の低下が生じる場合も有るため好ましくない。0.1Hzにおける複素弾性率は200,000以上であることがより好ましい。
1Hzにおける複素弾性率が4,000,000以上である場合、重合物が硬いものとなり、初期接着性を示さなくなるため好ましくない。1Hzにおける複素弾性率は3,000,000以下であることがより好ましい。
100Hzにおける複素弾性率が2,000,000よりも低い場合、粘着剤として必須であるタック値が低下する。100Hzにおける複素弾性率は3,000,000以上であることがより好ましい。
また、高いタック値を得るためには25℃における損失正接(Tanδ)が0.8(測定周波数:100Hz)以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。
【0050】
ガラス転移温度
本発明におけるガラス転移温度(Tg)は日本工業規格JISのK7121に規定されているDSC測定にて測定した結果に基づく値である。
本発明における組成物を重合して得られるカチオン重合物のガラス転移温度が0℃を越えた場合、上記の粘弾性特性を維持することが困難となるため、ガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。
【0051】
本発明の重合型液状組成物は、粘着性重合物の製造に使用できる。重合型液状組成物を使用するにあたっては、たとえば、紙、プラスチツクラミネート紙、布、プラスチツクラミネート布、プラスチツクフイルム、金属箔、発泡体などを支持体とし、この支持体の片面または両面に、コンマロール、グラビアコータ、ロールコータ、キスコータ、スロツトダイコータ、スクイズコータなどの適宜な塗工手段により本発明の重合型液状組成物を塗工し、熱あるいは光を作用することにより重合させ、厚さが片面で通常10〜500μmとなる粘着剤層を形成させてテープ状やシート状などの粘着シート類とすることができる。
【0052】
光照射により重合を行う場合に用いることのできる光源としては特に限定されるものではないが、波長400nm以下に発光エネルギー分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯およびメタルハライドランプなどを用いることができる。粘着剤重合物への光照射強度は、目的とする製品毎に制御されるものであって特に限定されるものではないが、光潜在性開始剤の活性化に有効な光波長領域(光重合開始剤によって異なるが、通常300〜420nmの光が用いられる。)の光照射強度が0.1〜100mW/cm2 であることが好ましい。粘着剤重合物への光照射強度が0.1mW/cm2 未満であると、反応時間が長くなり過ぎ、100mW/cm2 を超えると、ランプから輻射される熱および組成物の重合時の発熱により、得られる粘着剤層の凝集力の低下や黄変あるいは支持体の劣化が生じる恐れがある。
【0053】
粘着性重合物への光照射時間は、目的とする製品毎に制御されるものであって特に限定されるものではないが、前記光波長領域での光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。上記粘着剤重合物への積算光量が10mJ/cm2未満であると、光潜在性開始剤よりの活性種の発生が十分でなく、得られる粘着剤層の粘着特性の低下が生じるおそれがあり、5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長時間となり、生産性向上のためには不利なものとなる。
また、熱により重合を行う場合は一般的に知られた方法により熱を本発明のカチオン重合型液状組成物に適応することにより達成でき、その条件などは特に限定されるものではない。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定を受けるものではない。
(実施例1)
前記式(7)で表されるオキセタンモノマーOXR−12{東亞合成(株)製}、多官能モノマーであるクレイトンポリマー社製のEKP−207(商品名;化学構造はShell Chemical CompanyのTechnical Bulletin(1966.10.28-30)に記載されている。)(A−2成分)、ヨードニウム塩系光潜在カチオン開始剤であるローディア社製の2074(商品名)(A−3成分)、および軟化点が約90℃の水添石油樹脂であるハーキュリーズ社製のリガライト1090(商品名)(B成分)を下記表1に示した配合組成(質量%)で40℃にて均一に混合し、カチオン重合型液状組成物を得た。
【0055】
得られた組成物を、厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に膜厚が約25μmとなるようにドクターブレードを用いて塗工した後、120W/cm2の集光型高圧水銀灯下(ランプ高さ:10cm)を10m/minのコンベアスピードで一回通過させて紫外線を照射(135mJ/cm2)してカチオン重合することにより粘着剤層を形成し粘着シートを作製した。
また、粘弾性測定用に供するためポリテトラフルオロエチレン(テフロン 登録商標 du Pont社製)板上に厚さが1mmとなるように組成物を流し込み粘着シート作成と同様な照射条件にて重合した後、テフロン板から離型することにより評価用重合物を作製した。
【0056】
(実施例2〜10および比較例1〜2)
実施例1と同様に表1に示した配合組成で実施例2〜8および比較例1〜2の組成物を得た。なお、オキセタンモノマーOTX−212は、前記の単官能モノマー(A−1成分)である。L−1203(クレイトンポリマー社製)は、片末端に水酸基を有する直鎖のポリ(エチレン/ブチレン)の水素化により製造された完全飽和の分子量3,600のモノオールであり、本発明のA−2成分には該当しない。UVR−6110(商品名、ユニオンカーバイド社製)は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり本発明のA−2成分に相当する。また、リガライト1125(ハーキュリーズ社製)は軟化点が約125℃の水添石油樹脂である。
実施例9及び10に使用したGI−1000は分子量1000の両末端に水酸基を有するポリブタジエンの水添物である。
上記の各組成物を用いて実施例1と同様にして粘弾性測定用の重合物およびPETフィルム上に粘着シートを作成した。ただし、比較例2においては組成物の各成分が高粘度であるため、光潜在開始剤以外の成分を100℃で溶解した後、80℃で光潜在開始剤を溶解したが、この組成物から、粘弾性測定用の重合物およびPETフィルム上に粘着シートを作成する際に低粘度化のため、更に、80℃での加温を継続したところ明らかな増粘が見られたため、他の評価は中断し、開始剤溶解後に直ちに粘度測定のみを行った。
【0057】
【表1】
【0058】
上記実施例1〜10および比較例1〜2で作成した組成物の粘度、重合物のガラス転移温度および粘弾性特性、および、粘着シートの粘着特性(粘着力、保持力、プローブタック)を下記の方法により測定した。粘度および粘弾性の測定結果を表2に、粘着特性の測定結果を表3にそれぞれ示した。ただし、比較例2においては前述のように増粘が生じたため、粘度測定結果のみを示した。
【0059】
(1)粘度測定:配合後の組成物の粘度を25℃においてE型粘度計にて測定した。
(2)粘弾性測定:組成物のカチオン重合物の複素弾性率は、厚さ1mmの重合物をRheometrics社製のRDSII型粘弾性測定装置を用いてずりせん断応力により測定した。
(3)ガラス転移温度:上記重合物を用いて、JISのK7121に規定されているDSC法により測定を行った。
(4)粘着力:JISのZ−0237に記載の方法で測定を行った。粘着シートを25mm巾に切断した後、被着体(SUS板またはポリエチレン(PE)板)に接着面積が25mm×100mmとなるように貼り合わせ、2kgロールで一往復圧着する。23℃、65%RHの条件において180度剥離強度を測定した。また、剥離強度測定後の被着体上に残存する粘着剤相の観察を行い、剥離の形態が界面剥離である場合をAとし、被着体上に粘着剤が残存する場合、凝集破壊が生じたものとしてCと判定した。
【0060】
(5)保持力:粘着シートから切り出したサンプル(25mm巾)をSUS板に接着面積が25mm×25mmとなるように貼付け、2kgロールで一往復圧着する。40℃、および100℃にて1kg重の荷重をかけて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間を保持力とした。24時間後にも保持されていた場合には保持時間24時間以上とし、初期貼付け位置からのずれ幅を測定した値を併記した。また、本測定において24時間以内に剥がれ落ちたサンプルについては、測定後の被着体上に残存する粘着剤相の観察を行い、剥離の形態が界面剥離である場合をAとし、被着体上に粘着剤が残存する場合、凝集破壊が生じたものとしてCと判定した。
(6)SAFT:上記の保持力測定と同様なSUS板の接着サンプルを作成し、500g重の荷重をかけてオーブン中で室温より205℃まで昇温速度:0.4℃/毎分にて昇温し剥がれ落ちた時点での温度を測定した。なお、205℃到達後にも保持されていた場合には205℃以上とし、初期貼付け位置からのずれ幅を測定した値を併記した。また、剥がれ落ちたサンプルについては、上記保持力と同様に残存する粘着剤相の測定を行なった。
(7)プローブタック:ASTM D2979に記載のとおり、以下の条件でプローブタックを測定した。
プローブ:SUS 直径5mmΦ #400研磨面
荷重:100g/cm2
接触時間:1秒
プローブ速度:1cm/秒
1サンプルに対して5回の測定を行い、その平均値を示した。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表2に示したように、実施例1〜10および比較例1の組成物の粘度は低いものであり、粘着シートの作成においても塗布は容易なものであった。これに対して、比較例2の組成物は、高粘度であるため室温での塗布が困難であり、低粘度化のために加温したところ、熱安定性の不足による重合と見られる明らかな増粘が生じた。
また、表2に示したように、重合物の粘弾性特性において100Hzでの複素弾性率が本発明で好ましいと規定した範囲から逸脱した比較例1の組成物の場合、タック値が大きく低減しその結果として粘着力も低いものとなっている。
【0064】
上記表3から明らかなように、実施例1〜10に示した組成物はいずれも優れた粘着特性を示し、とりわけ、保持力に優れた粘着剤であることが分かる。また、剥離の形態もすべて界面剥離であり、被着体上での粘着剤の残存はまったく見られなかった。
以上の結果から明らかなように、本発明で好ましいと規定した粘度および粘弾性特性を満たす組成物は室温で容易に基材に塗布が可能でカチオン重合後の重合物は良好な粘着特性を示すことが明らかとなった。
さらに、実施例2および実施例3に示した100℃における複素弾性率(測定周波数0.1Hz)が100,000より大きい組成物は、とりわけ高温における保持力に優れることが明らかになった。
【0065】
【発明の効果】
本発明におけるカチオン重合型液状組成物は溶媒を含有することなく容易に基材に塗布が可能であり、塗布後に光あるいは熱の適応により良好な粘着特性を示す粘着剤として使用可能である。既存の溶剤型粘着剤の代替品として有機溶剤の除去等を必要としない新規な粘着剤としての用途が大いに期待され得るものである。
Claims (16)
- オキセタン環を分子中に1個のみ有する下記式(3)で表される単官能モノマー(A−1)、下記式(4)に示されるエポキシ環を分子中に2個以上有する多官能モノマー(A−2)、および潜在性を有するカチオン重合開始剤(A−3)を含有するカチオン重合性配合物(A)、ならびに前記配合物(A)と室温において相溶し40℃以上の軟化点を有する固体樹脂(B)である水添石油樹脂および/または水添ロジン系樹脂を前記配合物(A)100重量部に対して50〜150重量部含み、25℃における粘度が20Pa・sec以下であることを特徴とするカチオン重合型液状組成物。
- 多官能モノマー(A−2)が、2以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂および/または2以上の脂環式エポキシ基を含有する化合物である請求項1に記載のカチオン重合型液状組成物。
- 多官能モノマー(A−2)が、ジエン化合物とエチレン化合物のアニオン重合により製造される、主鎖中に不飽和結合を有するブロックポリマーの酸化によりエポキシ基を導入したエポキシ樹脂である請求項2に記載のカチオン重合型液状組成物。
- 多官能モノマー(A−2)が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである請求項2または3に記載のカチオン重合型液状組成物。
- (A−1)成分および(A−2)成分の合計量100重量部に対して、(A−2)成分の合計量を5〜50重量部とした請求項1〜4いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
- (A−1)成分および(A−2)成分の合計量100重量部に対して、(A−2)成分の合計量を10〜40重量部とした請求項1〜5いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
- カチオン重合開始剤(A−3)が、光潜在性または熱潜在性である請求項1〜6いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
- カチオン重合開始剤(A−3)が、光潜在性である請求項1〜7いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
- 少なくとも1つの分子末端に水酸基を有し、分子量が300ないし10,000のモノオールまたはポリオール化合物を含有する請求項1〜8いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
- カチオン重合後の重合物の25℃における複素弾性率(G*)および損失正接( Tan δ)が以下のすべての条件を満たす請求項1〜9いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
25℃において、
G*> 100,000 (測定周波数:0.1Hz)
G*< 4,000,000(測定周波数:1Hz)
G*> 2,000,000(測定周波数:100Hz)
Tan δ≧0.8(測定周波数:100Hz) - カチオン重合後の重合物の100℃における複素弾性率(G*)が、以下の条件を満たす請求項1〜10いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
G*>100,000(測定周波数:0.1Hz) - カチオン重合後の重合物のガラス転移温度が0℃以下である請求項1〜11いずれか1つに記載のカチオン重合型液状組成物。
- オキセタン環を分子中に1個のみ有する下記式(3)で表される単官能モノマー(A−1)、下記式(4)に示されるエポキシ環を分子中に2個以上有する多官能モノマー(A−2)、および潜在性を有するカチオン重合開始剤(A−3)を含有するカチオン重合性配合物(A)、ならびに前記配合物(A)と室温において相溶し40℃以上の軟化点を有する固体樹脂(B)である水添石油樹脂および/または水添ロジン系樹脂を前記配合物(A)100重量部に対して50〜150重量部含み、25℃における粘度が20Pa・sec以下であるカチオン重合型液状組成物をカチオン重合したことを特徴とする粘着性重合物。
- 粘着性重合物の25℃における複素弾性率(G * )および損失正接( Tan δ)が以下のすべての条件を満たす請求項13記載の粘着性重合物。
25℃において、
G * > 100,000 (測定周波数:0.1Hz)
G * < 4,000,000(測定周波数:1Hz)
G * > 2,000,000(測定周波数:100Hz)
Tan δ≧0.8(測定周波数:100Hz) - 粘着性重合物の100℃における複素弾性率(G * )が、以下の条件を満たす請求項13または14に記載の粘着性重合物。
G * >100,000(測定周波数:0.1Hz) - 粘着性重合物のガラス転移温度が0℃以下である請求項13〜15いずれか1つに記載の粘着性重合物。
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