JP2005041964A - 再生petを用いた熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

再生petを用いた熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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秀一 川端
Hajime Sakano
元 阪野
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Abstract

【課題】再生PETを利用していながら、衝撃強度、加工性に優れ、見た目のよい成形品が得られる熱可塑性樹脂を提供する。
【解決手段】使用済みPET製品を粉砕し、固有粘度を0.4〜0.8dl/gに調整した再生ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜98重量%と、官能基を有する変性オレフィン樹脂2〜30重量%を混合する。この混合物100重量部に対して、直鎖状低密度ポリエチレンを5〜30重量部の比率で配合する。変性オレフィン樹脂は、好ましくは、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、オレフィンと不飽和エポキシ化合物との共重合体、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸またはその誘導体または不飽和エポキシ化合物をグラフトさせた重合体、およびこれらの一部を他のエチレン系不飽和化合物に置換した共重合体からなる群より選ばれたオレフィンを主体とする変性オレフィン共重合体を使用する。

Description

【001】
【発明の技術分野】
本発明は、PETボトルなどの使用済みPET製品から再生したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)と官能基を有する変性ポリオレフィン樹の脂混合物に、直鎖状低密度ポリエチレンを添加してなる熱可塑性樹脂組成物に関し、詳細には、再生PETを用い、耐衝撃性に優れた製品が得られる熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【002】
【発明の技術的背景】
従来、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の飽和ポリエステル樹脂の新材にゴム強化樹脂やエラストマー等の材料を添加して、製品の寸法精度や耐衝撃性を向上させる方法が一般的に行われている。PET、PBTが新材の場合は、熱による劣化や分子量の低下等の材料の劣化を伴わないために相応の効果を上げている。
他方、1997年のリサイクル法施行に伴い、使用済みPETボトルのリサイクル態勢が整い、従来の繊維用途に加え、PETボトルから得た再生PET樹脂を射出成形や押出し成形に応用する試みも広範囲に実施されており、種種の製品、製法が提案され、再生PETを用いた産業分野が広がりつつある。
【003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、使用済みのPETボトル等を粉砕して得られる、いわゆる再生PETは熱による分子量の低下が著しいため、この再生PETにゴム強化樹脂やエラストマー等の材料をコンパウンドして成形した製品は、衝撃強度の向上が不十分であり、かつ、ゴム強化樹脂やエラストマー等の添加により、剛性の低下を招くとともに、加工性も劣り、平滑で良好な外観を得ることが難しい。さらには、一般的にコストアップになるという問題があった。
【004】
したがって、本発明の目的は、再生PETを利用しながら、しかも衝撃強度の優れた製品が得られる熱可塑性樹脂を提供することにあり、本発明者は。再生PET樹脂を用いた熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度向上について鋭意研究した結果、本発明に到達した。
【005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、再生PET樹脂に、官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレンと配合することによって達成される。
即ち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、飲料用PETボトルなどの使用済みPET製品を粉砕し、固有粘度を0.4〜0.8dl/gに調整した再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(再生PET)(A)70〜98重量%と、官能基を有する変性オレフィン樹脂(B)2〜30重量%とからなる混合物100重量部に対して、直鎖状低密度ポリエチレン(C)5〜30重量部を配合してなり、耐衝撃性に優れた再生PET利用の熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする。
【006】
上記のオレフィン樹脂は、好ましくは、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、オレフィンと不飽和エポキシ化合物との共重合体、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸またはその誘導体または不飽和エポキシ化合物をグラフトさせた重合体、およびこれらの一部を他のエチレン系不飽和化合物に置換した共重合体からなる群より選ばれたオレフィンを主体とする変性オレフィン共重合体を使用する。
【007】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する再生PETの材料は、一般にエチレングリコールとテレフタール酸のエステル化と重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を用いてブロー成形や射出成形等の成形方法により製造された使用済みPETボトルからキャップやラベルに用いられているポリプロピレンやポリスチレン等の他樹脂を分離した後、洗浄、乾燥、粉砕して得たものである。ポリオレフィン等の他樹脂の混合は60ppm以下のものを用いることが好ましい。
再生PETの固有粘度は0.4〜0.8dl/g、より好ましくは、0.45〜0.70dl/gである。0.4dl/g未満では、衝撃強度向上の効果が十分でなく、また0.8dl/gを超えると他の成分との分散性が悪くなり、かつ成形性も劣る。
【008】
固有粘度を0.4〜0.8dl/gに調節する方法としては、無水ピロメリット酸等のジカルボン酸を添加する方法や、超高分子量のポリエチレンテレフタレートを少量混合する方法等が挙げられる。特に超高分子量ポリエチレンテレフタレートの少量添加が好ましい。なお固有粘度の測定はJISK7367−5に規定されている方法で具体的には、再生PETを溶解させる溶剤としてフェノール1.2ジクロロベンゼンの1/1溶液を用い濃度を0.005mg/lに調整し、毛細管粘度計により求めることができる。
【009】
つぎに本発明における官能基を有する変性オレフィン樹脂(B)としては、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、オレフィンと不飽和エポキシ化合物との共重合体、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸またはその誘導体または不飽和エポキシ化合物をグラフトさせた重合体、およびそれらの一部を他のエチレン系不飽和化合物に置換した共重合体からなる群より選ばれたオレフィンを主体とする変性オレフィン共重合体が挙げられる。
【010】
オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にエチレン、プロピレンが好ましい。
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マイレン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸無水物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のカルボン酸アルキルエステル等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。また不飽和エポキシ化合物としては、分子中のオレフィンと共重合しうる不飽和基とエポキシ基をそれぞれ有する化合物である。具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル、ブテンカルボン酸エステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、等が挙げられ、これらの1種または2種以上用いることができる。またエチレン系不飽和化合物も上述の如くアクリル酸およびメタクリル酸エステル類およびマレイン酸エステル類等が挙げられる。これらの官能基の量としては、オレフィン重合体100部に対し、0.1〜15部が好ましい。
官能基をオレフィンに共重合させる方法としては、オレフィンを重合する際に官能基を有する化合物を添加して共重合する方法、押出し機を用いてグラフトする方法等が挙げられる。
【011】
共重合またはグラフトする官能基としては、特にグリシジルメタクリレート等の不飽和エポキシ化合物が好ましい。変性オレフィン共重合体の分子量は特に制限はないが、メルトフローインデックス“MFR”(JISK6760、190℃)1〜100g/10分であることが好ましい。
オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にエチレン、プロピレンが好ましい。
【012】
再生PET(A)と変性オレフィン(B)の混合比率は、(A)70〜98重量%、好ましくは85〜98重量%に対し、(B)が30〜2重量%、好ましくは30〜2重量%である。
再生PET(A)が70重量%未満、即ち変性オレフィン(B)が30重量%を超えると、最終組成物の加工性が著しく低下する。また、再生PET(A)が98重量%を超えた場合、即ち変性オレフィン樹脂が2重量%未満では、同時に混合する直鎖状低密度ポリエチレンの分散が悪く、衝撃強度が低くかつ射出成形時に分散不良に起因する層剥離現象が発生し、好ましくない。
【013】
さらに直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)については、主にチーグラー法あるいはメタロセン触媒による方法で製造されるが、均一な分岐が得られ、かつ分子量分布も狭いメタロセン触媒によるものが好ましい。またブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等のコモノマーも使用できる。
【014】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の添加量は、再生PET(A)と官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂(B)の混合物100重量部に対して、5〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。LLDPEが5重量部未満では、衝撃強度は向上せず、30重量部を超えると、剛性、および加工性が低下し、実用上使用は難しい。
また、LLDPEのメルトフロー値は、押出成形やブロー成形では0.8〜6.0、射出成形では5.0以上が好ましい範囲である。メルトフローの測定はJIS−K−6760の試験に基づき、190℃、2kgの試験条件で実施した。
【015】
再生PET、官能基を有する変性オレフィン樹脂、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の混合は、通常の1軸あるいは2軸混練機やバンバリー等のミキサーを用いてできる。さらに本発明においては、混合時や成形時に必要に応じて帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、離型剤等を配合することができる。
【016】
以下に実施例および比較例により、本発明を具体的に説明する。
実施例1
市販のPETボトルを粉砕したフレークで、固有粘度が0.65のものを用い、官能基を有する変性ポリオレフィンとして、グリシジルメチルメタクリレート(GMMA)変性ポリエチレン、グリシジルメタクリレート(GMA)/エチルアクリレート変性ポリエチレンおよびLLDPEとしてメタロセン触媒による以下の材料を用いて、フリージアマクロス製の2軸押出し機(46φ)でコンパウンドし、日本鋼業所製射出成形機(75T)で試験片金型を用いて成形した結果を表−1に示す。
【表1】
Figure 2005041964
(a)再生PET:PETボトルを粉砕したフレーク、固有粘度0.65固有粘度はJISK−7367−5にもとづき測定した。
溶媒はフェノール/1.2ジクロロベンゼン=1/1
(b)変性ポリエチレン
▲1▼GMMA変性PE:ボンドファーストE(住友化学製商品名)
▲2▼GMMA/EA変性PE:ELVALOY(三井デュポン製商品名)
(c)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):スミカセン VL200 (住友化学製商品名)
比重:0.905 MI:2
【017】
【効果】
再生PETにゴム強化樹脂やエラストマー等の材料をコンパウンドして成形した製品は、耐衝撃性や強度、加工性、外観などに難点があったが、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂に官能基を有する変性オレフィン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレンを特定の比率で配合したことにより、これらの問題を解決することができる。
【018】
PETボトルなどの使用済みPETの再生が促進されるので資源の有効利用に大きく貢献することができる。

Claims (2)

  1. 飲料用PETボトルなどの使用済みPET製品を粉砕し、固有粘度を0.4〜0.8dl/gに調整した再生ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜98重量%と、官能基を有する変性オレフィン樹脂2〜30重量%の混合物100重量部に対して、直鎖状低密度ポリエチレン5〜30重量部を配合し
    てなる再生PET利用の熱可塑性樹脂組成物
  2. 変性オレフィン樹脂がオレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、オレフィンと不飽和エポキシ化合物との共重合体、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸またはその誘導体または不飽和エポキシ化合物をグラフトさせた重合体、およびこれらの一部を他のエチレン系不飽和化合物に置換した共重合体からなる群より選ばれたオレフィンを主体とする変性オレフィン共重合体である請求項1に記載の再生PET利用の熱可塑性樹脂組成物
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