JP2005040979A - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び機能性膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】間欠性等についての良好な吐出安定性を有する液滴吐出ヘッドと、これを備えた液滴吐出装置、及びこれによって形成された機能性膜を提供する。
【解決手段】液状体を収容するキャビティ15と、このキャビティ15に連通するノズル18を形成したノズルプレート12とを有し、キャビティ15と反対の側のノズル開口を吐出口9として、キャビティ15内に収容した液状体をノズル18の吐出口9から吐出する液滴吐出ヘッドである。ノズル18の内壁面の吐出口9側にノズル内撥液膜11が形成されている。ノズル内撥液膜11の少なくともキャビティ15側が、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満であり、後退接触角が40°以上である。
【選択図】 図2
【解決手段】液状体を収容するキャビティ15と、このキャビティ15に連通するノズル18を形成したノズルプレート12とを有し、キャビティ15と反対の側のノズル開口を吐出口9として、キャビティ15内に収容した液状体をノズル18の吐出口9から吐出する液滴吐出ヘッドである。ノズル18の内壁面の吐出口9側にノズル内撥液膜11が形成されている。ノズル内撥液膜11の少なくともキャビティ15側が、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満であり、後退接触角が40°以上である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴を吐出するインクジェット法等の液滴吐出法に用いられる液滴吐出ヘッドと、これを備えた液滴吐出装置、及びこれによって形成された機能性膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
所定量の液状材料を所望する位置に配することのできる方法として、液滴吐出法が知られている。このような液滴吐出法の一つとして、特に微量の液状材料を吐出するのに好適なインクジェット法がある。
このインクジェット法に用いられるインクジェットヘッドは、液状体を収容するキャビティと、このキャビティに連通するノズルを形成したノズルプレートとを有したもので、前記キャビティと反対の側のノズル開口を吐出口として、前記キャビティ内に収容した液状体を前記吐出口から吐出するよう構成されたものである。
【0003】
ところで、このようなインクジェットヘッドにあっては、特にノズルの吐出口近傍部での液状体との接触性、すなわちこの吐出口近傍部が撥液性であるか親液性であるかということが、前記液状体からなる液滴の安定吐出を行ううえで重要な因子となっている。
【0004】
このような観点から、従来、ノズルプレートの前記吐出口側の面に共析メッキを施し、この吐出口側の面およびノズル内の吐出口近傍部を撥液化したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、撥液性であるか、あるいは親液性であるかということに着目した技術として、ノズルプレートの前記吐出口を形成した側の面に撥インク性皮膜(撥液膜)を形成し、吐出する液状体として、前記の撥インク性皮膜に対してその後退動的接触角が15度以上のものを用いるといった技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−294145号公報
【特許文献2】
特開2000−290556号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記の共析メッキを施した技術、および撥インク性皮膜に対しての後退動的接触角に着目した技術は、いずれもノズルプレート表面、すなわちノズルプレートの前記吐出口を形成した側の面における液状体の濡れを防止し、ここが濡れていることに起因して次に吐出される液滴が不安定に吐出されてしまうのを防止したものである。
しかしながら、液滴の安定吐出、特に吐出間隔が長くなったときの吐出の安定性である間欠性や、さらには吐出量の安定化という点で考えた場合、ノズルプレートのノズル吐出口を形成した側の面における液状体の濡れ性(撥液性または親液性)だけを考慮しても、間欠性等の安定吐出性を良好にするには十分とはいえなかった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、特に間欠性等についての良好な吐出安定性を有する液滴吐出ヘッドと、これを備えた液滴吐出装置、及びこれによって形成された機能性膜を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
液滴を吐出した後、次の吐出までの間において、キャビティからノズルにかけて収容される液状体は、通常ノズル内にてメニスカスを形成する。つまり、液状体はそのメニスカスの端部がノズルの内部に位置した状態に保持され、次の吐出を待つことになる。
ところで、吐出間隔が長くなったときの吐出の安定性である間欠性が損なわれる大きな原因としては、吐出の待機中にノズル内にて液状体が乾燥されることでメニスカス端部から蒸発が起こり、ここに固形分が残ってしまうことが挙げられる。したがって、次の吐出を待機している状態においては、メニスカス端部が同じ位置にいるよりもわずかながら動いている方が、蒸発によって固形分が生じてしまうことが抑えられ、これにより間欠性低下が防止される。
【0010】
一方、ノズルの内部でのメニスカス端部の位置が毎回ほぼ同じ位置となれば、吐出量の安定化が図られ、より良好な安定吐出を行うことができるようになる。
メニスカス端部の位置が毎回ほぼ同じ位置となるためには、液滴吐出後、次の吐出までの間においてメニスカス端部の位置の変動が少ないほうが、より所定位置(初期位置)に戻り易くなる。
そして、このような知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明者は本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の液滴吐出ヘッドは、液状体を収容するキャビティと、このキャビティに連通するノズルを形成したノズルプレートとを有し、前記キャビティと反対の側のノズル開口を吐出口として、前記キャビティ内に収容した液状体を前記ノズルの吐出口から吐出する液滴吐出ヘッドであって、前記ノズルの内壁面の前記吐出口側にノズル内撥液膜が形成され、前記ノズル内撥液膜の少なくとも前記キャビティ側が、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満であり、後退接触角が40°以上であることを特徴としている。
【0012】
この液滴吐出ヘッドによれば、ノズル内撥液膜の少なくともキャビティ側が、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満と小さく、しかも後退接触角が40°以上であるので、例えば前進接触角と後退接触角との差が大である場合に比べ、特に次の吐出を待機している状態において液状体のメニスカス端部がこのノズル内撥液膜のキャビティ側で移動し易くなり、したがってメニスカス端部が動くことで蒸発により固形分が生じてしまうことが抑えられ、これにより間欠性の低下が防止される。よって、良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0013】
また、前記液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記キャビティ側の幅が、5μm以上10μm未満であるのが好ましい。
このようにすれば、メニスカス端部が少なくとも5μm以上10μm未満の幅内で移動(変動)し易くなっていることにより、蒸発がより良好に抑えられる。
【0014】
また、前記液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側が、吐出する液状体に対する前進接触角が50°以上90°以下であり、後退接触角が25°未満であるのが好ましい。
このようにすれば、このノズル内撥液膜の吐出口側の、前記液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が大になる。したがって、これが小である場合に比べ、特に吐出した直後において液状体のメニスカス端部が前記ノズル内撥液膜の吐出口側を移動した際の位置の変動が少なくなり、これによりメニスカス端部が最終的にはノズル内撥液膜のキャビティ側に留まり易くなる。つまり、前記ノズル内撥インク膜の吐出口側は、メニスカスのストッパー的な役割をし、メニスカスが吐出口側に移動するのを防ぐ。したがって、メニスカス端部が毎回ノズル内撥液膜のキャビティ側に位置することから、これがほぼ同じ位置となり、よって吐出量が安定化して良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0015】
なお、この液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、撥液部と親液部とが分布して形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、撥液部と親液部とが分布してなる部分の前進接触角と後退接触角との差が大となり、したがってこの部分がメニスカス端部を移動させにくくしていることにより、前述したように良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0016】
また、この液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、リング状の撥液部と親液部とが縞状に形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、この縞状の部分で前進接触角と後退接触角との差が大となり、したがってこの部分がメニスカス端部を移動させにくくしていることにより、前述したように良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0017】
また、この液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、撥液部と親液部とが不規則に点在して形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、撥液部と親液部とが不規則に点在していることによって前進接触角と後退接触角との差が大となり、したがってこの部分がメニスカス端部を移動させにくくしていることにより、良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0018】
また、前記液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズルの前記キャビティ側の内壁面の、吐出する液状体に対する後退接触角が、前記ノズル内撥液膜の前記キャビティ側の、吐出する液状体に対する後退接触角より小であるのが好ましい。特に、前記ノズルの前記キャビティ側の内壁面の、吐出する液状体に対する後退接触角が、ほぼ0°であるのが好ましい。
このようにすれば、キャビティ側の内壁面の後退接触角が小さいので、液状体のメニスカス端部がキャビティ内に引き込まれるのが防止される。したがって、液滴吐出後、次の吐出までの間においてメニスカス端部がノズル内撥液膜のキャビティ側に留まり易くなり、よって吐出量が安定化して良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0019】
本発明の液滴吐出装置は、前記の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴としている。
この液滴吐出装置によれば、前述したように特に間欠性等についての良好な吐出安定性を発揮する液滴吐出ヘッドを備えているので、この液滴吐出装置自体も良好な吐出安定性を発揮するものとなる。
【0020】
本発明の機能性膜は、前記の液滴吐出装置により機能性材料が吐出されて形成されたことを特徴としている。
この機能性膜によれば、良好な吐出安定性のもとで機能性材料が吐出されて形成されてなるので、特に膜厚が均一になるなど良好なものとなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための図であり、図1(a)、(b)において符号1は液滴吐出ヘッドである。この液滴吐出ヘッド1は、特にインクジェット法による液滴吐出をなすもので、図1(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数のキャビティ15…とリザーバ16とが形成されており、これらキャビティ15…とリザーバ16とは流路17を介して連通している。
【0022】
各キャビティ15とリザーバ16は、その内部に液状体を満たしてこれを収容するようになっており、これらの間の流路17はリザーバ16からキャビティ15に液状体を供給する供給口として機能するようになっている。また、ノズルプレート12には、キャビティ15から液状体を吐出するための孔状のノズル18が縦横に整列した状態で複数形成されている。ノズル18は、前記キャビティ15の側がテーパ形状になっており、キャビティ15側に行くに連れて漸次拡径したものとなっている。また、キャビティ15と反対の側の開口は、液滴を吐出するための吐出口9となっている。ここで、ノズルプレート12には、その吐出口9を形成した面に撥液膜10が形成されており、この撥液膜10は、ノズル18の内壁面の、前記吐出口9の近傍部にまで回り込んで形成されたものとなっている。
【0023】
一方、振動板13には、リザーバ16内に開口する孔19が形成されており、この孔19には液状体を充填したタンク(図示せず)がチューブ(図示せず)を介して接続されるようになっている。
また、振動板13のキャビティ15に向く面と反対の側の面上には、図1(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、液滴吐出ヘッド1において吐出手段として機能するもので、一対の電極21、21間に挟持され、通電により外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたものである。
【0024】
このような構成のもとに圧電素子20が接合された振動板13は、圧電素子20が撓曲すると、これと一体になって同時に外側へ撓曲し、これによりキャビティ15の容積を増大させる。すると、キャビティ15内とリザーバ16内とが連通しており、リザーバ16内に液状体が充填されている場合には、キャビティ15内に増大した容積分に相当する液状体が、リザーバ16から流路17を介して流入する。
そして、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。よって、キャビティ15も元の容積に戻ることから、キャビティ15内部の液状体の圧力が上昇し、ノズル18の吐出口9から液状体の液滴22が吐出される。
【0025】
なお、液滴吐出ヘッド1の吐出手段としては、前記の圧電素子(ピエゾ素子)20を用いた電気機械変換体以外でもよく、例えば、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式や、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式を採用することもできる。
【0026】
このような構成の液滴吐出ヘッド1において、ノズルプレート12には、前述したように吐出口9を形成した面からノズル18の内壁面の吐出口9の近傍部にかけて撥液膜10が形成されている。この撥液膜10において、図2に示すように特にノズル18の内壁面の、吐出口9の近傍部に形成された部分は、ノズル内撥液膜11となっている。そして、特に本実施形態では、このノズル内撥液膜11はさらに吐出口9側に形成された吐出口側撥液膜11aとキャビティ15側に形成されたキャビティ側撥液膜11bとからなっている。
【0027】
このようなノズル内撥液膜11においてキャビティ側撥液膜11bは、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満となっており、後退接触角が40°以上となっている。また、吐出口側撥液膜11aは、吐出する液状体に対する前進接触角が50°以上、90°以下であり、かつ後退接触角が25°未満であり、したがって前進接触角と後退接触角との差が25°以上となっている。
【0028】
また、ノズル18の、前記キャビティ15側の内壁面18aは、ステンレス製のノズルプレート12がそのまま露出してなる面となっている。この内壁面18aの、吐出する液状体に対する後退接触角は、前記ノズル内撥液膜11におけるキャビティ側撥液膜11bの、吐出する液状体に対する後退接触角より小となっており、特に本実施形態ではほぼ0°となっている。
【0029】
したがって、この液滴吐出ヘッド1は、そのノズル18の内部構成により、特に良好な間欠性を有するなど、良好な吐出安定性を発揮するようになっている。すなわち、ノズル18内において、吐出動作を終えて次の吐出に備えるべく、液状体のメニスカス端部Mが前記ノズル内撥液膜11の吐出口側撥液膜11a上を移動した際、この吐出口側撥液膜11aの吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が前述したように20°以上と大きいことから、これが小さい場合に比べてメニスカス端部Mの位置の変動が少なくなる。また、特に後退接触角が25°未満と小さいことにより、吐出口側撥液膜11a上では液状体が比較的移動しにくくなっており、したがって吐出動作を終えて次の吐出に備えている際、メニスカス端部Mは吐出口9から出てしまうのが防止される。そして、メニスカス端部Mは最終的にキャビティ15側に引き込まれることにより、キャビティ側撥液膜11b上にて留まり易くなる。したがって、メニスカス端部Mが毎回キャビティ側撥液膜11b上に位置することから、これがほぼ同じ位置となり、よって吐出量が安定化して良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0030】
また、メニスカス端部Mが最終的にキャビティ15側に引き込まれ、キャビティ側撥液膜11b上に留まると、このキャビティ側撥液膜11bの吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満と小さく、しかも後退接触角が40°以上であるので、特に次の吐出を待機している状態において液状体のメニスカス端部Mがこのキャビティ側撥液膜11b上で移動し易くなり、微振動を繰り返すような状態でわずかながら動くようになる。すると、このようなキャビティ側撥液膜11b上でのメニスカス端部Mの移動(変動)により、ノズル18内の液状体は乾燥による蒸発によって固形分が生じてしまうことが抑えられ、これにより間欠性の低下が防止され、良好な吐出安定性を発揮するようになる。したがって、特に間欠性の悪い液状態に対しても、良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0031】
なお、前記ノズル内撥液膜11の幅、すなわちノズル18の軸方向の長さは、ノズル18の内径によっても異なるものの、例えば10〜30μm程度とされる。そして、特にこのノズル内撥液膜11中のキャビティ側撥液膜11bの幅は、好ましくは5μm以上10μm未満とされる。キャビティ側撥液膜11bの幅を5μm以上とすれば、前記のメニスカス端部Mが少なくとも5μm以上10μm未満の幅内で移動(変動)し易くなっていることにより、蒸発がより良好に抑えられる。さらに、メニスカス端部Mの移動(変動)幅が吐出量の変動に大きく影響を与えない範囲となり、したがって良好な吐出の安定性が確保される。
【0032】
また、キャビティ15側の内壁面18aにおける後退接触角が前記ノズル内撥液膜11におけるキャビティ側撥液膜11bの後退接触角より小さいので、この内壁面18a上では液状体が特に移動しにくくなっており、したがって液状体のメニスカス端部Mが吐出待機時にキャビティ15内に引き込まれるのが防止されている。よって、液滴吐出後、次の吐出までの間においてメニスカス端部Mは、前述したようにキャビティ側撥液膜11b上にてわずかながら動きつつここに留まり易くなり、したがって間欠性の低下が防止され、良好な吐出安定性が発揮されるようになる。特に、前記内壁面18aの後退接触角がほぼ0°と小さいことにより、吐出安定性がより良好になっている。すなわち、より吐出を安定させるため、内壁面18aはキャビティ15と同様に、特に後退接触角がほぼ0°になるような膜(面)であるのが望ましい。
【0033】
ここで、ノズル内撥液膜11(固体試料)の、吐出する液状体(液状試料)に対する前進接触角及び後退接触角は、動的接触角と呼ばれるもので、その測定法としては、例えば(1)ウィルヘルミー法、(2)拡張収縮法、(3)転落法などが知られている。なお、以下の測定法において固体試料としては、ステンレス板に前記ノズル内撥液膜11と同様の撥液膜を形成したものを用いるものとする。
【0034】
(1)ウィルヘルミー法は、試料槽内の液体試料中に固体試料を沈める過程で、また沈めたものを引き上げる過程での荷重を測定し、その測定値と固体試料の表面積の値とから動的接触角を求める方法である。固体試料を沈める過程で得られる接触角が前進接触角、引き上げる過程で得られる接触角が後退接触角である。
(2)拡張収縮法は、注射針やガラス毛細管等の先端から、固体試料表面上に液体試料を一定流量で押し出すことによって液滴を形成しながら、固体試料表面と液滴の間の接触角を測定することによって前進接触角を得、逆に注射針やガラス毛細管等の先端から液滴を形成している液体試料を引き込みながら、固体試料表面と液滴の間の接触角を測定することによって後退接触角を得る方法である。
(3)転落法は、固体試料上に液滴を形成し、この固体試料を傾ける、あるいは垂直にして固体試料上の液体を転落移動させながら、固体試料と液滴の間の接触角を測定するものである。液体が移動する方向の前方における接触角が前進接触角であり、後方における接触角が後退接触角である。
【0035】
しかしながら、前記の測定法では、いずれも測定できる試料が限られているなどの難点があることから、本実施形態では、特に前記の(2)拡張収縮法の変形である、以下の測定法を用いている。
図3(a)に示すように、固体試料2の表面上に形成した液滴3内に針状管体4の先端が挿入されている状態で、固体試料2を水平方向に移動させる。すると、液滴3内に針状管体4が挿入されているので、液滴3と針状管体4との界面張力により、図3(b)に示すように、固体試料2の移動に伴い液滴3が針状管体4に引きずられるように変形する。
【0036】
このように液滴3が変形した状態での固体試料2と液滴3の間の接触角の大きさは、液滴3を成す液体の表面張力、固体試料2を成す固体の表面張力、液体−固体間の界面張力、摩擦力、吸着力、固体表面粗さ等によるため、この状態での接触角を測定することにより、動的接触角を得ることができる。すなわち、固体試料2の移動方向の前方の接触角θ1より後退接触角が得られ、後方の接触角θ2より前進接触角が得られる。
そして、このような動的接触角において特に後退接触角θ1は、液滴3の移動し易さの指標となり、この後退接触角θ1が大きければ液滴3が移動し易いことを示し、小さければ液滴3が移動しにくいことを示すものとなる。
【0037】
このような測定方法は、固体試料2上の液滴内に針状管体の先端を挿入した状態で前記固体試料2を水平方向に移動させることにより、表面エネルギーや摩擦等の上記因子を調べることなく、その結果として引き起こされる動的接触角のみを測定することができるものであり、あらゆる固体試料および液体試料について動的接触角の測定を適切に行うことができる。したがって、本実施形態では、前進接触角、後退接触角の測定法として、図3に示した測定法を採用するものとする。なお、本発明は図3に示した測定法以外の測定法、例えば前記の(1)〜(3)に示した測定法を採用してもよいのはもちろんであるが、その場合、測定装置などの違い(器差)などによって測定法の間で得られる動的接触角(前進接触角、後退接触角)に差が生じることがある。そこで、図3に示した測定法以外の測定法を用いた場合には、その測定法と図3に示した測定法との間で相関をとっておき、実際に測定した数値(動的接触角)を図3に示した測定法で得られる数値(動的接触角)に換算し、用いるのが好ましい。
【0038】
ここで、前記ノズル内撥液膜11におけるキャビティ側撥液膜11bとしては、例えば、プラズマ重合膜や金チオール膜が公的に用いられる。なお、プラズマ重合膜の形成方法としては、例えば特開平2003−72085号公報に開示されているような、シリコーン樹脂のモノマーか、あるいは重合度の低いシリコーン油を液体原料として用い、これを重合することで成膜する方法が好適に用いられる。
【0039】
一方、ノズル内撥液膜11における吐出口側撥液膜11aとしては、例えば撥液部と親液部とが分布して形成されたことにより、吐出する液状体に対して、前記した前進接触角、後退接触角を有するものとなっている。具体的には、前記の特許文献1に開示された共析メッキは、微視的に見ると撥液部と親液部とが不規則に点在したものとなっており、したがって吐出口側撥液膜11aとして好適なものとなる。
また、撥液部と親液部とを分布させた吐出口側撥液膜11aとしては、例えば図4(a)に示ようにリング状の親液部11cと撥液部11dとを縞状に、すなわち交互に形成したものが挙げられる。
【0040】
親液部11cと撥液部11dとが交互に存在していると、このノズル18内を液状体が移動する際、その前進側では、主に撥液部11dに留まりつつこれら撥液部11d間の親液部11c上を瞬時に移動することから、前進接触角が大きくなる傾向にあり、一方後退側では、親液部11cに引きずられることで後退接触角が小さくなる傾向にある。
したがって、このようにリング状の親液部11cと撥液部11dとが縞状に分布していることにより、この吐出口側撥液膜11aは前進接触角と後退接触角との差が大となり、よってこの吐出口側撥液膜11aを有した液滴吐出ヘッド1は、前述したように良好な吐出安定性を発揮するものとなる。
【0041】
図4(a)に示したような、親液部11cと撥液部11dとが縞状に交互に存在するノズル内撥液膜11をノズル18内に形成するには、まず、ノズル18を形成したノズルプレート12を用意する。なお、用意するノズルプレート12のノズル18としては、吐出口9の内径が約25μmであり、吐出口9からテーパ部までの間、すなわちストレートな部分の長さが約25μmであるものとした。
【0042】
続いて、このノズルプレート12の吐出口9を形成した面にシリコーン樹脂をプラズマ重合させ、図4(b)に示すように吐出口9を形成した面にプラズマ重合膜を厚さ0.5μm程度に形成する。ここで、プラズマ重合膜の形成方法としては、前述したように例えば特開平2003−72085号公報に開示されているような、シリコーン樹脂のモノマーか、あるいは重合度の低いシリコーン油を液体原料として用い、これを重合することで成膜する方法が好適に用いられる。
このようにして形成を行うと、このプラズマ重合膜はノズル18の吐出口9内にまで回り込んで形成され、図4(b)に示したようにノズル18の内壁面の、前記吐出口9の近傍部にもプラズマ重合膜が形成される。
【0043】
なお、このノズル18の内壁面に形成されたプラズマ重合膜の膜厚は例えば数10nm程度となり、吐出口9を形成した面に形成されたプラズマ重合膜に比べ格段に薄くなる。
このようにしてプラズマ重合を行うと、得られたプラズマ重合膜は、−Si−からなる主鎖を有し、かつアルキル基やアリル基等の炭素含有基を側鎖とするものとなることから、撥液性(撥水性)を有する膜、すなわち撥液膜10となる。
【0044】
このようにしてプラズマ重合膜からなる撥液膜10を吐出口9形成面、およびノズル18内の吐出口9近傍部にそれぞれ形成したら、ノズル18内の吐出口9近傍部におけるキャビティ15側、すなわちキャビティ側撥液膜11bを形成する部分に、例えばここを遮光材料などで覆うことによって遮光層(図示せず)を形成する。そして、その状態でノズルプレート12の撥液膜10側、すなわち吐出口9側にこの吐出口9を覆って反射ミラー23を設ける。反射ミラー23としては、使用する波長域での反射率が高いことから誘電体ミラーが好適に用いられる。
【0045】
このように、反射ミラー23を吐出口9側の撥液膜10に密着させ、吐出口9を覆ったら、その状態でノズルプレート12の、吐出口9と反対の側から紫外線レーザ光であるエキシマレーザ光(波長;174nm)を、酸素存在下(ただし、酸素は紫外光を吸収してオゾンを発生するため、本実施形態では窒素に対してわずかに酸素を添加した)でノズル18の軸方向に沿って照射する。
すると、ノズル18内ではエキシマレーザ光の入射光と反射ミラー23での反射光との間で干渉が起こり、干渉縞(干渉パターン)が生じる。そして、この干渉縞でノズル18内のプラズマ重合膜(撥液膜10)が露光されるので、プラズマ重合膜は部分的に露光されることになる。すなわち、このプラズマ重合膜には、干渉縞によってリング状の露光部と非露光部とが例えば約0.2μmピッチで交互に形成されることになる。
【0046】
露光部では、シリコーン樹脂からなるプラズマ重合膜中の側鎖であるアルキル基やアリル基がエキシマレーザ光によって破壊され、雰囲気中の酸素が取り込まれることにより、最終的には親水性(親液性)であるSiO2を形成するようになる。したがって、図4(a)に示したようにノズル18内において露光部では酸素が導入されることで親液化して親液部11cとなる。一方、非露光部では、プラズマ重合膜(撥液膜10)のまま、すなわち撥液部11dとしてそのままに維持される。よって、前述したように親液部11cと撥液部11dとが縞状に交互に存在するノズル内撥液膜11が得られる。
また、前記の遮光層で覆った部分、すなわちキャビティ側撥液膜11bを形成する部分は、遮光層で遮光されることにより非露光部となることから、撥液膜としてそのままに維持され、したがって遮光層が除去されることによってキャビティ側撥液膜11bとなる。
【0047】
なお、撥液部と親液部とを分布させた吐出口側撥液膜11aとしては、前述した共析メッキのように撥液部と親液部とを不規則に点在させることで形成してもよい。
このように撥液部と親液部とを不規則に点在させても、この吐出口側撥液膜11aは液状体に対する前進接触角が比較的大きく、かつ後退接触角が小さくなる。すなわち、親液部11cと撥液部11dとが不均一に存在していると、この吐出口側撥液膜11a上を液状体が移動する際、その前進側では、主に撥液部11dに留まりつつこれら撥液部11d間の親液部11c上を瞬時に移動することから、前進接触角が大きくなる傾向にあり、一方後退側では、親液部11cに引きずられることで後退接触角が小さくなる傾向にある。
したがって、このように撥液部と親液部とを不規則に点在させていることにより、この吐出口側撥液膜11aは前進接触角と後退接触角との差が大となり、よってこの吐出口側撥液膜11aを有した液滴吐出ヘッド1は、良好な吐出安定性を発揮するものとなる。
【0048】
このような、撥液部と親液部とを不規則に点在させたノズル内撥液膜11を、共析メッキでなく例えば露光によって形成するには、まず、前記の例と同様にしてノズル18を形成したノズルプレート12を用意する。
続いて、このノズルプレート12の吐出口9を形成した面にシリコーン樹脂をプラズマ重合させ、前記例と同様に吐出口9を形成した面にプラズマ重合膜を厚さ0.5μm程度に形成する。すると、プラズマ重合膜はノズル18の吐出口9内にまで回り込んで形成され、ノズル18の内壁面の、前記吐出口9の近傍部にもプラズマ重合膜が形成される。そして、このプラズマ重合膜は前述したように撥液膜10となる。
【0049】
このようにしてプラズマ重合膜からなる撥液膜10を形成したら、前記の例と同様にして、キャビティ側撥液膜11bを形成する部分に遮光層(図示せず)を形成する。そして、その状態でこのノズルプレート12の撥液膜10側、すなわち吐出口9側にこの吐出口9を覆って反射板(図示せず)を設ける。反射板としては、例えば表面にエキシマレーザ光の波長(174nm)程度の微細な凹凸パターンを有するアルミニウム製のものが好適に用いられる。ここで、微細な凹凸パターンとしては、例えば不規則なまだら模様で、反射光はスペックルパターンを形成するようなものが採用される。また、反射光がノズル18の内壁の特定位置に結像するよう、縞模様のホログラム(例えばキノフォーム)を採用することもできる。
【0050】
このように、反射板を吐出口9側の撥液膜10に密着させ、吐出口9を覆ったら、前記の例と同様に、吐出口9と反対の側からエキシマレーザ光(波長;174nm)を、酸素存在下で照射する。
すると、反射板からの反射光は凹凸パターンによって乱反射を起こしてスペックルパターンを形成する。そして、このスペックルパターンで露光されることにより、プラズマ重合膜(撥液膜10)は不均一に露光されたものとなり、これによりプラズマ重合膜には露光部、すなわち親液部11cと、非露光部、すなわち撥液部11dとが不規則に点在して形成されることになる。よって、撥液部と親液部とが不規則に点在した吐出口側撥液膜11aが得られる。
また、前記の遮光層で覆った部分、すなわちキャビティ側撥液膜11bを形成する部分は、前記の例と同様に遮光層で遮光されることにより非露光部となることから、撥液膜としてそのままに維持され、したがって遮光層が除去されることによってキャビティ側撥液膜11bとなる。
【0051】
なお、前記実施形態では、そのノズル内撥液膜11を、吐出口側撥液膜11aとキャビティ側撥液膜11bとから形成したが、本発明はこれに限定されることなく、ノズル内撥液膜11をキャビティ側撥液膜11bのみから形成するようにしてもよく、その場合に、特に間欠性を良好にすることができる。
【0052】
ここで、動的接触角の大きさが決定される大きな要因としては、次の2点が挙げられる。
第1には固体試料の表面粗さであり、第2は固体試料の表面組成である。そして、これらの総合した相互作用による力の釣り合いによって、対象となる(吐出する)液状体に対する動的接触角が決まると言われている。特に、表面粗さは前進接触角と後退接触角との差を広げる大きな要因になるとされている。
したがって、前記のプラズマ重合膜などは、表面粗さが極めて小となることから、前進接触角と後退接触角との差が十分に小さいものとなる。
一方、前述したように親液部11cと撥液部11dとが縞状に交互に存在する吐出口側撥液膜11aや、撥液部と親液部とが不規則に点在した吐出口側撥液膜11aは、前進接触角が大きくなる傾向にあり、かつ後退接触角が小さくなる傾向にあることから、前進接触角と後退接触角との差が大となる。
なお、動的接触角は、前述したように総合した相互作用による力の釣り合いによって決まることから、液状体の種類に関係なく、どんな液状体に対してもこれに対する動的接触角のみにより、その吐出安定性が決まるものとなる。
【0053】
(実験例1)
ノズル内撥液膜の製造条件を変えて、吐出口側撥液膜11aとキャビティ側撥液膜11bとが以下の表1に示すような動的接触角(前進接触角、後退接触角)を有するA〜Hのノズルプレートを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの間欠性(間欠時間)を調べた。得られた結果を表1に示す。なお、これらA〜Hのノズルプレートの、ノズルのキャビティ側の内壁面の動的接触角は、いずれも前進接触角が20°、後退接触角が0°であった。
【0054】
ここで、前進接触角、後退接触角の測定法としては、前記の図3(a)、(b)に示した方法を用いた。図3(a)、(b)における針状管体4としては、ステンレスにポリ4フッ化エチレンをコートしたもので、外径が1.0mm、内径が0.8mmのものを用いた。また、固体試料2を水平方向に移動させる際のステージ移動速度については、2mm/秒とした。
さらに、吐出する液状体としては、有機EL装置において緑色の発光層の形成材料として使用される、以下の化合物1、化合物2、化合物3からなるものを用いた。すなわち、これら化合物1〜3を、化合物1:化合物2:化合物3=0.76:0.2:0.04の重量比で混合し、さらにこの混合物を溶媒としてのシクロヘキシルベンゼンに対して、0.5%の割合で溶解させたものを用いた。なお、この液状体は、特に乾燥による目詰まり等の吐出不良が生じやすく、したがって間欠性の悪いものである。
そして、このような条件のもとで測定を5回行い、その平均を求めて前進接触角、後退接触角をそれぞれ求めた。
【0055】
【化1】
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】
「表1」
吐出口側撥液膜 キャビティ側撥液膜 間欠時間
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (秒) 「判定」
A 70° 20° 70° 20° 10 ×
B 70° 20° 20° 0° 5 ×
C 70° 20° 40° 40° 60 ○
D 70° 20° 60° 40° 60 ○
E 50° 20° 40° 40° 60 ○
F 60° 20° 40° 40° 60 ○
G 40° 40° 40° 40° 80 △
H 70° 70° 70° 70° 80 △
【0059】
なお、間欠時間(間欠性)については、吐出間隔を10秒ごとに増やしていき、目詰まり等による吐出不良が生じるまでの吐出間隔を調べ、良好な吐出が維持される吐出間隔を間欠時間とした。すなわち、例えば表1中のCでは吐出時間が60秒までは良好な吐出がなされるものの、70秒では良好な吐出ができなかったことを意味している。
また、表1中の「判定」は、間欠時間(間欠性)に吐出安定性をも加えて総合的に評価した結果であり、表1中のG、Hについては、間欠時間(間欠性)は良好であるものの、吐出安定性が悪いことから、「△」とした。
表1に示した結果より、特にキャビティ側撥液膜11bについては、前進接触角と後退接触角との差が20°未満であり、後退接触角が40°以上であるもの(C〜H)の間欠時間が長く、したがって特に間欠性の悪い液状体に対しても間欠性が良好になることが確認された。
【0060】
(実験例2)
次に、特に吐出口側撥液膜による吐出安定性の作用を調べるため、ノズル内撥液膜の製造条件を変えて、以下の表2に示すように、前進接触角が異なるA〜Kのノズルプレートを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの吐出量のバラツキを調べた。得られた結果を、ノズルのキャビティ側内壁面の前進接触角、後退接触角とともに表2に示す。なお、本例では、ノズル内撥液膜11全体を吐出口側撥液膜とし、キャビティ側撥液膜の形成は省略した。
ここで、前進接触角、後退接触角の測定法としては、前記の実験例1と同じ条件で行った。ただし、吐出する液状体については、着色剤が3.0%、グリセリンが20%であり、残りを水としたものを用いた。
そして、このような条件のもとで測定を5回行い、その平均を求めて前進接触角、後退接触角をそれぞれ求めた。
【0061】
「表2」
吐出口側撥液膜 キャビティ側内壁面 吐出量のバラツキ(%)
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (吐出安定性)「評価」
A 20° 20° 20° 0° 5.3 ×
B 30° 20° 20° 0° 4.7 △
C 40° 20° 20° 0° 4.7 △
D 50° 20° 20° 0° 1.8 ○
E 70° 20° 20° 0° 1.9 ○
F 80° 20° 20° 0° 1.4 ○
G 90° 20° 20° 0° 1.9 ○
H 96° 20° 20° 0° 4.4 △
I 100° 20° 20° 0° 3.8 ○
J 105° 20° 20° 0° 5.4 ×
K 110° 20° 20° 0° 4.6 △
【0062】
なお、吐出量のバラツキについては、吐出を4回行ってその都度吐出量を測定し、平均値、最大値、最小値を求め、以下の式によってバラツキの値を算出した。 バラツキの値(%)={(最大値−最小値)/平均値}×100
また、評価については、高精彩描画に求められる吐出量のバラツキが平均値に対して±2%であることから、以下のような基準とした。
○;4%以下(±2%以下)
△;4〜5%(±2〜2.5%)
×;5%以上(±2.5%以上)
表1に示した結果より、特に吐出口側撥液膜の前進接触角については、50°以上90°以下の範囲内において吐出量のバラツキが小さくなり、良好な吐出安定性を有することが分かった。
【0063】
(実験例3)
次に、ノズル内撥液膜の製造条件を変えて、以下の表3に示すように、特に後退接触角が異なるL〜Rのノズルプレートを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの吐出量のバラツキを実験例2と同様にして調べた。得られた結果を表3に示す。なお、ノズルの、キャビティ側の内壁面の前進接触角、後退接触角も表3に併記する。また、吐出量のバラツキや評価については、実験例2と同様にして行った。
【0064】
「表3」
吐出口側撥液膜 キャビティ側内壁面 吐出量のバラツキ(%)
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (吐出安定性)「評価」
L 70° 0° 20° 0° 0.2 ○
M 70° 10° 20° 0° 0.2 ○
N 70° 20° 20° 0° 1.9 ○
O 70° 25° 20° 0° 6.1 ×
P 70° 30° 20° 0° 5.1 ×
Q 70° 50° 20° 0° 5.0 ×
R 70° 70° 20° 0° 4.1 △
【0065】
このように、吐出口側撥液膜の前進接触角が、前記の良好な吐出安定性を有する範囲内の値(70°)のものについて、後退接触角を変えて吐出量のバラツキを調べたところ、表3に示した結果より、特にノズル内撥液膜の後退接触角については、25°未満で吐出量のバラツキが小さくなり、良好な吐出安定性を有することが分かった。
【0066】
(実験例4)
次に、吐出口側撥液膜の前進接触角と後退接触角とが同じであり、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ一定にしたノズルプレート(S〜X)と、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ吐出口側撥液膜の前進接触角及び後退接触角に一致させたノズルプレート(Y〜DD)とを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの吐出量のバラツキを実験例2と同様にして調べた。得られた結果を表4に示す。なお、吐出量のバラツキや評価については、実験例2と同様にして行った。
【0067】
「表4」
吐出口側撥液膜 キャビティ側内壁面 吐出量のバラツキ(%)
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (吐出安定性)「評価」
S 0° 0° 20° 0° 6.3 ×
T 20° 20° 20° 0° 5.1 ×
U 40° 40° 20° 0° 5.4 ×
V 60° 60° 20° 0° 4.3 △
W 80° 80° 20° 0° 4.3 △
X 100° 100° 20° 0° 4.8 △
Y 0° 0° 0° 0° 8.0 ×
Z 20° 20° 20° 20° 5.6 ×
AA 40° 40° 40° 40° 6.3 ×
BB 60° 60° 60° 60° 7.4 ×
CC 80° 80° 80° 80° 11.6 ×
DD100° 100° 100° 100° 14.4 ×
【0068】
表4より、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ一定にするとともに、その後退接触角を0°にしたもの(S〜X)の方が、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ吐出口側撥液膜の前進接触角及び後退接触角に一致させたもの(Y〜DD)に比べて吐出量のバラツキが小さくなり、吐出安定性が比較的良好になることが分かった。また、特にキャビティ側内壁面の後退接触角が大きくなると、吐出量のばらつきが大きくなって不安定になることから、キャビティ側内壁面は濡れやすい状態、すなわち後退接触角が小さく、特に0°であるのが好ましいことが分かった。
【0069】
ここで、後退接触角が0°とは、実際には後退接触角が0°程度、すなわちほぼ0°であることを意味している。これは、液状体がノズルプレートに対して極めて濡れやすい状態を意味していることになるが、このように濡れやすい状態(後退接触角が10°未満)の場合、後退接触角の測定が前記の図3(a)、(b)に示した方法では困難になり、十分に信頼性のあるデータとはなり得ないからである。
【0070】
次に、本発明の液滴吐出装置の一実施形態を説明する。図5は、図1(a)、(b)に示した液滴吐出ヘッド1を備えてなる液滴吐出装置の一例を示す図であって、図5中符号60は液滴吐出装置の一例としてのインクジェットプリンター60である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上部」、下側を「下部」と言う。図5に示したインクジェットプリンター60は、紙等に印刷する一般的なプリンターであって、装置本体62を備え、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ621を有し、下部前方に記録用紙Pを排出する排出口622を有し、上部面に操作パネル67を有したものである。
【0071】
操作パネル67は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成されたもので、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えたものである。装置本体62の内部には、主に、往復動するヘッドユニット63を備えた印刷装置64と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置64に送り込む給紙装置65と、印刷装置64および給紙装置65を制御する制御部66とが設けられている。
【0072】
制御部66の制御により、給紙装置65は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りするようになっている。間欠送りされる記録用紙Pは、ヘッドユニット63の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット63が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動し、記録用紙Pへの印刷を行うようになっている。すなわち、ヘッドユニット63の往復動と、記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となり、インクジェット方式の印刷が行なわれるようになっている。
【0073】
印刷装置64は、ヘッドユニット63と、ヘッドユニット63の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット63を往復動させる往復動機構642とを備えたものである。
ヘッドユニット63は、その下部に、多数のノズル511を備えるインクジェット式記録ヘッド50と、このインクジェット式記録ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェット式記録ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有したものである。ここで、前記インクジェット式記録ヘッド50は、図1(a)、(b)に示した、吐出安定性が良好な液滴吐出ヘッド1からなっている。
【0074】
なお、インクカートリッジ631として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット63には、各色にそれぞれ対応したインクジェット式記録ヘッド50が設けられることになる。
【0075】
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有したものである。
キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されたものである。
キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット63が往復動する。そして、この往復動の際に、インクジェット式記録ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われるようになっている。
【0076】
給紙装置65は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有したものである。
給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されたものであり、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されたものである。このような構成によって給紙ローラ652は、トレイ621に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置64に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ621に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成としてもよい。
【0077】
制御部66は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置64や給紙装置65等を制御することにより印刷を行うものである。
この制御部66には、いずれも図示しないものの、主に各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)54を駆動してインクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置64(キャリッジモータ641)を駆動する駆動回路、給紙装置65(給紙モータ651)を駆動する駆動回路、およびホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとが備えられている。
【0078】
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ631のインク残量、ヘッドユニット63の位置、温度、湿度等の印刷環境等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。
制御部66は、通信回路を介して印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理し、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づき、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子54、印刷装置64および給紙装置65は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに所望の印刷がなされる。
【0079】
このようなインクジェットプリンター60にあっては、前述したように特に間欠性等についての良好な吐出安定性を発揮するインクジェット式記録ヘッド50を備えているので、このインクジェットプリンター60自体もインク(液状体)の吐出安定性が良好なものとなる。
【0080】
次に、本発明の液滴吐出装置の他の実施形態を説明する。図6は、図1(a)、(b)に示した液滴吐出ヘッド1を備えてなる液滴吐出装置の他の例を示す図であって、図6中符号30は主に工業用に用いられる液滴吐出装置である。この吐出装置30は、ベース31、基板移動手段32、ヘッド移動手段33、前記吐出ヘッド1からなる吐出ヘッド部40、液状体タンク35、等を有して構成されたもので、吐出ヘッド部40から基板(基体)Sに対して液状体を吐出し、液状体を膜状に塗布するものである。
【0081】
ベース31は、その上に前記基板移動手段32、ヘッド移動手段33を設置したものである。
基板移動手段32は、Y軸方向に沿って形成されたガイドレール36を有したもので、例えばリニアモータにより、スライダ37をガイドレール36に沿ってY軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0082】
テーブル39は、基板Sを位置決めし、保持するもので、前記スライダ37上に保持固定されたものである。このテーブル39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Sをテーブル39の上に吸着保持するようになっている。基板Sは、テーブル39の位置決めピン(図示せず)により、テーブル39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。このような構成のもとに基板Sは、スライダ37の移動により、テーブル39に伴われてY軸方向に移動させられ、搬送されるようになっている。テーブル39には、吐出ヘッド部40がインクを捨打ちあるいは試し打ちするための捨打ちエリア(図示せず)が設けられている。
【0083】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a、33aと、これら架台33a、33a上に設けられた走行路33bとを備えてなるもので、該走行路33bをX軸方向、すなわち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a、33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d、33dとを有して形成されたもので、ガイドレール33d、33dの長さ方向に吐出ヘッド34を保持させるスライダ42を移動可能に保持したものである。スライダ42は、リニアモータ(図示せず)等の作動によってガイドレール33d、33d上を走行し、これにより吐出ヘッド部40をX軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0084】
吐出ヘッド部40には、図示しないものの、図1(a)、(b)に示した液滴吐出ヘッド1が備えられている。この吐出ヘッド部40においては、揺動位置決め手段としてのモータ43、44、45、46が液滴吐出ヘッド1(図示せず)に接続されている。そして、モータ43を作動させると、液滴吐出ヘッドはZ軸に沿って上下動し、Z軸上での位置決めが可能になっている。なお、このZ軸は、前記のX軸、Y軸に対しそれぞれに直交する方向(上下方向)である。また、モータ44を作動させると、液滴吐出ヘッドは図6中のβ方向に沿って揺動し、位置決め可能になり、モータ45を作動させると、液滴吐出ヘッドはγ方向に揺動して位置決め可能になり、モータ46を作動させると、液滴吐出ヘッドはα方向に揺動して位置決め可能になる。
【0085】
このような構成のもとに、吐出ヘッド部40の液滴吐出ヘッドは、スライダ42上において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能となり、かつ、α、β、γに沿って揺動し、位置決め可能となっている。したがって、液滴吐出ヘッドのインク吐出面を、テーブル39側の基板Sに対する位置あるいは姿勢を、正確にコントロールすることができるようになっている。
液状体タンク35は、吐出ヘッド部40の近傍に配置されたもので、吐出によって形成する構成要素の液状材料(液状体)を貯留したものである。
【0086】
このような液滴吐出装置30にあっても、前述したように特に間欠性等についての良好な吐出安定性を発揮する液滴吐出ヘッド1からなる吐出ヘッド部40を備えているので、この液滴吐出装置30自体も液状体の吐出安定性が良好なものとなる。したがって、この液滴吐出装置30によって形成される膜、すなわち吐出される液状体に対応した機能を有してなる機能性膜は、特にその膜厚などが均一なものとなり、よってその機能特性が安定したものとなる。
【0087】
なお、このような液滴吐出装置30によって形成される機能性膜、すなわち本発明の機能性膜としては、例えば半導体装置や発光装置など各種のデバイスに採用される機能性膜を挙げることができる。具体的には、液晶装置におけるカラーフィルタや配向膜、パッシベーション膜、平坦化膜、層間絶縁膜、また有機EL装置における正孔注入層や発光層となる膜、さらにこれら液晶装置や有機EL装置、半導体装置等における金属配線や、その製造の際に用いられるレジスト膜などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図2】ノズルプレートの要部拡大図である。
【図3】(a)、(b)は動的接触角の測定法説明図である。
【図4】(a)、(b)はノズル内撥液膜の一例を示す図である。
【図5】液滴吐出装置の一実施形態を説明するための図である。
【図6】液滴吐出装置の他の実施形態を説明するための図である。
【符号の説明】
1…液滴吐出ヘッド、9…吐出口、10…撥液膜、
11…ノズル内撥液膜、11a…吐出口側撥液膜、
11b…キャビティ側撥液膜、11c…親液部、11d…撥液部、
12…ノズルプレート、15…キャビティ、18…ノズル、
30…液滴吐出装置、40…吐出ヘッド部、
50…インクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)、
60…インクジェットプリンター(液滴吐出装置)
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴を吐出するインクジェット法等の液滴吐出法に用いられる液滴吐出ヘッドと、これを備えた液滴吐出装置、及びこれによって形成された機能性膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
所定量の液状材料を所望する位置に配することのできる方法として、液滴吐出法が知られている。このような液滴吐出法の一つとして、特に微量の液状材料を吐出するのに好適なインクジェット法がある。
このインクジェット法に用いられるインクジェットヘッドは、液状体を収容するキャビティと、このキャビティに連通するノズルを形成したノズルプレートとを有したもので、前記キャビティと反対の側のノズル開口を吐出口として、前記キャビティ内に収容した液状体を前記吐出口から吐出するよう構成されたものである。
【0003】
ところで、このようなインクジェットヘッドにあっては、特にノズルの吐出口近傍部での液状体との接触性、すなわちこの吐出口近傍部が撥液性であるか親液性であるかということが、前記液状体からなる液滴の安定吐出を行ううえで重要な因子となっている。
【0004】
このような観点から、従来、ノズルプレートの前記吐出口側の面に共析メッキを施し、この吐出口側の面およびノズル内の吐出口近傍部を撥液化したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、撥液性であるか、あるいは親液性であるかということに着目した技術として、ノズルプレートの前記吐出口を形成した側の面に撥インク性皮膜(撥液膜)を形成し、吐出する液状体として、前記の撥インク性皮膜に対してその後退動的接触角が15度以上のものを用いるといった技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−294145号公報
【特許文献2】
特開2000−290556号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記の共析メッキを施した技術、および撥インク性皮膜に対しての後退動的接触角に着目した技術は、いずれもノズルプレート表面、すなわちノズルプレートの前記吐出口を形成した側の面における液状体の濡れを防止し、ここが濡れていることに起因して次に吐出される液滴が不安定に吐出されてしまうのを防止したものである。
しかしながら、液滴の安定吐出、特に吐出間隔が長くなったときの吐出の安定性である間欠性や、さらには吐出量の安定化という点で考えた場合、ノズルプレートのノズル吐出口を形成した側の面における液状体の濡れ性(撥液性または親液性)だけを考慮しても、間欠性等の安定吐出性を良好にするには十分とはいえなかった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、特に間欠性等についての良好な吐出安定性を有する液滴吐出ヘッドと、これを備えた液滴吐出装置、及びこれによって形成された機能性膜を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
液滴を吐出した後、次の吐出までの間において、キャビティからノズルにかけて収容される液状体は、通常ノズル内にてメニスカスを形成する。つまり、液状体はそのメニスカスの端部がノズルの内部に位置した状態に保持され、次の吐出を待つことになる。
ところで、吐出間隔が長くなったときの吐出の安定性である間欠性が損なわれる大きな原因としては、吐出の待機中にノズル内にて液状体が乾燥されることでメニスカス端部から蒸発が起こり、ここに固形分が残ってしまうことが挙げられる。したがって、次の吐出を待機している状態においては、メニスカス端部が同じ位置にいるよりもわずかながら動いている方が、蒸発によって固形分が生じてしまうことが抑えられ、これにより間欠性低下が防止される。
【0010】
一方、ノズルの内部でのメニスカス端部の位置が毎回ほぼ同じ位置となれば、吐出量の安定化が図られ、より良好な安定吐出を行うことができるようになる。
メニスカス端部の位置が毎回ほぼ同じ位置となるためには、液滴吐出後、次の吐出までの間においてメニスカス端部の位置の変動が少ないほうが、より所定位置(初期位置)に戻り易くなる。
そして、このような知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明者は本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の液滴吐出ヘッドは、液状体を収容するキャビティと、このキャビティに連通するノズルを形成したノズルプレートとを有し、前記キャビティと反対の側のノズル開口を吐出口として、前記キャビティ内に収容した液状体を前記ノズルの吐出口から吐出する液滴吐出ヘッドであって、前記ノズルの内壁面の前記吐出口側にノズル内撥液膜が形成され、前記ノズル内撥液膜の少なくとも前記キャビティ側が、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満であり、後退接触角が40°以上であることを特徴としている。
【0012】
この液滴吐出ヘッドによれば、ノズル内撥液膜の少なくともキャビティ側が、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満と小さく、しかも後退接触角が40°以上であるので、例えば前進接触角と後退接触角との差が大である場合に比べ、特に次の吐出を待機している状態において液状体のメニスカス端部がこのノズル内撥液膜のキャビティ側で移動し易くなり、したがってメニスカス端部が動くことで蒸発により固形分が生じてしまうことが抑えられ、これにより間欠性の低下が防止される。よって、良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0013】
また、前記液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記キャビティ側の幅が、5μm以上10μm未満であるのが好ましい。
このようにすれば、メニスカス端部が少なくとも5μm以上10μm未満の幅内で移動(変動)し易くなっていることにより、蒸発がより良好に抑えられる。
【0014】
また、前記液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側が、吐出する液状体に対する前進接触角が50°以上90°以下であり、後退接触角が25°未満であるのが好ましい。
このようにすれば、このノズル内撥液膜の吐出口側の、前記液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が大になる。したがって、これが小である場合に比べ、特に吐出した直後において液状体のメニスカス端部が前記ノズル内撥液膜の吐出口側を移動した際の位置の変動が少なくなり、これによりメニスカス端部が最終的にはノズル内撥液膜のキャビティ側に留まり易くなる。つまり、前記ノズル内撥インク膜の吐出口側は、メニスカスのストッパー的な役割をし、メニスカスが吐出口側に移動するのを防ぐ。したがって、メニスカス端部が毎回ノズル内撥液膜のキャビティ側に位置することから、これがほぼ同じ位置となり、よって吐出量が安定化して良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0015】
なお、この液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、撥液部と親液部とが分布して形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、撥液部と親液部とが分布してなる部分の前進接触角と後退接触角との差が大となり、したがってこの部分がメニスカス端部を移動させにくくしていることにより、前述したように良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0016】
また、この液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、リング状の撥液部と親液部とが縞状に形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、この縞状の部分で前進接触角と後退接触角との差が大となり、したがってこの部分がメニスカス端部を移動させにくくしていることにより、前述したように良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0017】
また、この液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、撥液部と親液部とが不規則に点在して形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、撥液部と親液部とが不規則に点在していることによって前進接触角と後退接触角との差が大となり、したがってこの部分がメニスカス端部を移動させにくくしていることにより、良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0018】
また、前記液滴吐出ヘッドにおいては、前記ノズルの前記キャビティ側の内壁面の、吐出する液状体に対する後退接触角が、前記ノズル内撥液膜の前記キャビティ側の、吐出する液状体に対する後退接触角より小であるのが好ましい。特に、前記ノズルの前記キャビティ側の内壁面の、吐出する液状体に対する後退接触角が、ほぼ0°であるのが好ましい。
このようにすれば、キャビティ側の内壁面の後退接触角が小さいので、液状体のメニスカス端部がキャビティ内に引き込まれるのが防止される。したがって、液滴吐出後、次の吐出までの間においてメニスカス端部がノズル内撥液膜のキャビティ側に留まり易くなり、よって吐出量が安定化して良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0019】
本発明の液滴吐出装置は、前記の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴としている。
この液滴吐出装置によれば、前述したように特に間欠性等についての良好な吐出安定性を発揮する液滴吐出ヘッドを備えているので、この液滴吐出装置自体も良好な吐出安定性を発揮するものとなる。
【0020】
本発明の機能性膜は、前記の液滴吐出装置により機能性材料が吐出されて形成されたことを特徴としている。
この機能性膜によれば、良好な吐出安定性のもとで機能性材料が吐出されて形成されてなるので、特に膜厚が均一になるなど良好なものとなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための図であり、図1(a)、(b)において符号1は液滴吐出ヘッドである。この液滴吐出ヘッド1は、特にインクジェット法による液滴吐出をなすもので、図1(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数のキャビティ15…とリザーバ16とが形成されており、これらキャビティ15…とリザーバ16とは流路17を介して連通している。
【0022】
各キャビティ15とリザーバ16は、その内部に液状体を満たしてこれを収容するようになっており、これらの間の流路17はリザーバ16からキャビティ15に液状体を供給する供給口として機能するようになっている。また、ノズルプレート12には、キャビティ15から液状体を吐出するための孔状のノズル18が縦横に整列した状態で複数形成されている。ノズル18は、前記キャビティ15の側がテーパ形状になっており、キャビティ15側に行くに連れて漸次拡径したものとなっている。また、キャビティ15と反対の側の開口は、液滴を吐出するための吐出口9となっている。ここで、ノズルプレート12には、その吐出口9を形成した面に撥液膜10が形成されており、この撥液膜10は、ノズル18の内壁面の、前記吐出口9の近傍部にまで回り込んで形成されたものとなっている。
【0023】
一方、振動板13には、リザーバ16内に開口する孔19が形成されており、この孔19には液状体を充填したタンク(図示せず)がチューブ(図示せず)を介して接続されるようになっている。
また、振動板13のキャビティ15に向く面と反対の側の面上には、図1(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、液滴吐出ヘッド1において吐出手段として機能するもので、一対の電極21、21間に挟持され、通電により外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたものである。
【0024】
このような構成のもとに圧電素子20が接合された振動板13は、圧電素子20が撓曲すると、これと一体になって同時に外側へ撓曲し、これによりキャビティ15の容積を増大させる。すると、キャビティ15内とリザーバ16内とが連通しており、リザーバ16内に液状体が充填されている場合には、キャビティ15内に増大した容積分に相当する液状体が、リザーバ16から流路17を介して流入する。
そして、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。よって、キャビティ15も元の容積に戻ることから、キャビティ15内部の液状体の圧力が上昇し、ノズル18の吐出口9から液状体の液滴22が吐出される。
【0025】
なお、液滴吐出ヘッド1の吐出手段としては、前記の圧電素子(ピエゾ素子)20を用いた電気機械変換体以外でもよく、例えば、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式や、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式を採用することもできる。
【0026】
このような構成の液滴吐出ヘッド1において、ノズルプレート12には、前述したように吐出口9を形成した面からノズル18の内壁面の吐出口9の近傍部にかけて撥液膜10が形成されている。この撥液膜10において、図2に示すように特にノズル18の内壁面の、吐出口9の近傍部に形成された部分は、ノズル内撥液膜11となっている。そして、特に本実施形態では、このノズル内撥液膜11はさらに吐出口9側に形成された吐出口側撥液膜11aとキャビティ15側に形成されたキャビティ側撥液膜11bとからなっている。
【0027】
このようなノズル内撥液膜11においてキャビティ側撥液膜11bは、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満となっており、後退接触角が40°以上となっている。また、吐出口側撥液膜11aは、吐出する液状体に対する前進接触角が50°以上、90°以下であり、かつ後退接触角が25°未満であり、したがって前進接触角と後退接触角との差が25°以上となっている。
【0028】
また、ノズル18の、前記キャビティ15側の内壁面18aは、ステンレス製のノズルプレート12がそのまま露出してなる面となっている。この内壁面18aの、吐出する液状体に対する後退接触角は、前記ノズル内撥液膜11におけるキャビティ側撥液膜11bの、吐出する液状体に対する後退接触角より小となっており、特に本実施形態ではほぼ0°となっている。
【0029】
したがって、この液滴吐出ヘッド1は、そのノズル18の内部構成により、特に良好な間欠性を有するなど、良好な吐出安定性を発揮するようになっている。すなわち、ノズル18内において、吐出動作を終えて次の吐出に備えるべく、液状体のメニスカス端部Mが前記ノズル内撥液膜11の吐出口側撥液膜11a上を移動した際、この吐出口側撥液膜11aの吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が前述したように20°以上と大きいことから、これが小さい場合に比べてメニスカス端部Mの位置の変動が少なくなる。また、特に後退接触角が25°未満と小さいことにより、吐出口側撥液膜11a上では液状体が比較的移動しにくくなっており、したがって吐出動作を終えて次の吐出に備えている際、メニスカス端部Mは吐出口9から出てしまうのが防止される。そして、メニスカス端部Mは最終的にキャビティ15側に引き込まれることにより、キャビティ側撥液膜11b上にて留まり易くなる。したがって、メニスカス端部Mが毎回キャビティ側撥液膜11b上に位置することから、これがほぼ同じ位置となり、よって吐出量が安定化して良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0030】
また、メニスカス端部Mが最終的にキャビティ15側に引き込まれ、キャビティ側撥液膜11b上に留まると、このキャビティ側撥液膜11bの吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満と小さく、しかも後退接触角が40°以上であるので、特に次の吐出を待機している状態において液状体のメニスカス端部Mがこのキャビティ側撥液膜11b上で移動し易くなり、微振動を繰り返すような状態でわずかながら動くようになる。すると、このようなキャビティ側撥液膜11b上でのメニスカス端部Mの移動(変動)により、ノズル18内の液状体は乾燥による蒸発によって固形分が生じてしまうことが抑えられ、これにより間欠性の低下が防止され、良好な吐出安定性を発揮するようになる。したがって、特に間欠性の悪い液状態に対しても、良好な吐出安定性を発揮するようになる。
【0031】
なお、前記ノズル内撥液膜11の幅、すなわちノズル18の軸方向の長さは、ノズル18の内径によっても異なるものの、例えば10〜30μm程度とされる。そして、特にこのノズル内撥液膜11中のキャビティ側撥液膜11bの幅は、好ましくは5μm以上10μm未満とされる。キャビティ側撥液膜11bの幅を5μm以上とすれば、前記のメニスカス端部Mが少なくとも5μm以上10μm未満の幅内で移動(変動)し易くなっていることにより、蒸発がより良好に抑えられる。さらに、メニスカス端部Mの移動(変動)幅が吐出量の変動に大きく影響を与えない範囲となり、したがって良好な吐出の安定性が確保される。
【0032】
また、キャビティ15側の内壁面18aにおける後退接触角が前記ノズル内撥液膜11におけるキャビティ側撥液膜11bの後退接触角より小さいので、この内壁面18a上では液状体が特に移動しにくくなっており、したがって液状体のメニスカス端部Mが吐出待機時にキャビティ15内に引き込まれるのが防止されている。よって、液滴吐出後、次の吐出までの間においてメニスカス端部Mは、前述したようにキャビティ側撥液膜11b上にてわずかながら動きつつここに留まり易くなり、したがって間欠性の低下が防止され、良好な吐出安定性が発揮されるようになる。特に、前記内壁面18aの後退接触角がほぼ0°と小さいことにより、吐出安定性がより良好になっている。すなわち、より吐出を安定させるため、内壁面18aはキャビティ15と同様に、特に後退接触角がほぼ0°になるような膜(面)であるのが望ましい。
【0033】
ここで、ノズル内撥液膜11(固体試料)の、吐出する液状体(液状試料)に対する前進接触角及び後退接触角は、動的接触角と呼ばれるもので、その測定法としては、例えば(1)ウィルヘルミー法、(2)拡張収縮法、(3)転落法などが知られている。なお、以下の測定法において固体試料としては、ステンレス板に前記ノズル内撥液膜11と同様の撥液膜を形成したものを用いるものとする。
【0034】
(1)ウィルヘルミー法は、試料槽内の液体試料中に固体試料を沈める過程で、また沈めたものを引き上げる過程での荷重を測定し、その測定値と固体試料の表面積の値とから動的接触角を求める方法である。固体試料を沈める過程で得られる接触角が前進接触角、引き上げる過程で得られる接触角が後退接触角である。
(2)拡張収縮法は、注射針やガラス毛細管等の先端から、固体試料表面上に液体試料を一定流量で押し出すことによって液滴を形成しながら、固体試料表面と液滴の間の接触角を測定することによって前進接触角を得、逆に注射針やガラス毛細管等の先端から液滴を形成している液体試料を引き込みながら、固体試料表面と液滴の間の接触角を測定することによって後退接触角を得る方法である。
(3)転落法は、固体試料上に液滴を形成し、この固体試料を傾ける、あるいは垂直にして固体試料上の液体を転落移動させながら、固体試料と液滴の間の接触角を測定するものである。液体が移動する方向の前方における接触角が前進接触角であり、後方における接触角が後退接触角である。
【0035】
しかしながら、前記の測定法では、いずれも測定できる試料が限られているなどの難点があることから、本実施形態では、特に前記の(2)拡張収縮法の変形である、以下の測定法を用いている。
図3(a)に示すように、固体試料2の表面上に形成した液滴3内に針状管体4の先端が挿入されている状態で、固体試料2を水平方向に移動させる。すると、液滴3内に針状管体4が挿入されているので、液滴3と針状管体4との界面張力により、図3(b)に示すように、固体試料2の移動に伴い液滴3が針状管体4に引きずられるように変形する。
【0036】
このように液滴3が変形した状態での固体試料2と液滴3の間の接触角の大きさは、液滴3を成す液体の表面張力、固体試料2を成す固体の表面張力、液体−固体間の界面張力、摩擦力、吸着力、固体表面粗さ等によるため、この状態での接触角を測定することにより、動的接触角を得ることができる。すなわち、固体試料2の移動方向の前方の接触角θ1より後退接触角が得られ、後方の接触角θ2より前進接触角が得られる。
そして、このような動的接触角において特に後退接触角θ1は、液滴3の移動し易さの指標となり、この後退接触角θ1が大きければ液滴3が移動し易いことを示し、小さければ液滴3が移動しにくいことを示すものとなる。
【0037】
このような測定方法は、固体試料2上の液滴内に針状管体の先端を挿入した状態で前記固体試料2を水平方向に移動させることにより、表面エネルギーや摩擦等の上記因子を調べることなく、その結果として引き起こされる動的接触角のみを測定することができるものであり、あらゆる固体試料および液体試料について動的接触角の測定を適切に行うことができる。したがって、本実施形態では、前進接触角、後退接触角の測定法として、図3に示した測定法を採用するものとする。なお、本発明は図3に示した測定法以外の測定法、例えば前記の(1)〜(3)に示した測定法を採用してもよいのはもちろんであるが、その場合、測定装置などの違い(器差)などによって測定法の間で得られる動的接触角(前進接触角、後退接触角)に差が生じることがある。そこで、図3に示した測定法以外の測定法を用いた場合には、その測定法と図3に示した測定法との間で相関をとっておき、実際に測定した数値(動的接触角)を図3に示した測定法で得られる数値(動的接触角)に換算し、用いるのが好ましい。
【0038】
ここで、前記ノズル内撥液膜11におけるキャビティ側撥液膜11bとしては、例えば、プラズマ重合膜や金チオール膜が公的に用いられる。なお、プラズマ重合膜の形成方法としては、例えば特開平2003−72085号公報に開示されているような、シリコーン樹脂のモノマーか、あるいは重合度の低いシリコーン油を液体原料として用い、これを重合することで成膜する方法が好適に用いられる。
【0039】
一方、ノズル内撥液膜11における吐出口側撥液膜11aとしては、例えば撥液部と親液部とが分布して形成されたことにより、吐出する液状体に対して、前記した前進接触角、後退接触角を有するものとなっている。具体的には、前記の特許文献1に開示された共析メッキは、微視的に見ると撥液部と親液部とが不規則に点在したものとなっており、したがって吐出口側撥液膜11aとして好適なものとなる。
また、撥液部と親液部とを分布させた吐出口側撥液膜11aとしては、例えば図4(a)に示ようにリング状の親液部11cと撥液部11dとを縞状に、すなわち交互に形成したものが挙げられる。
【0040】
親液部11cと撥液部11dとが交互に存在していると、このノズル18内を液状体が移動する際、その前進側では、主に撥液部11dに留まりつつこれら撥液部11d間の親液部11c上を瞬時に移動することから、前進接触角が大きくなる傾向にあり、一方後退側では、親液部11cに引きずられることで後退接触角が小さくなる傾向にある。
したがって、このようにリング状の親液部11cと撥液部11dとが縞状に分布していることにより、この吐出口側撥液膜11aは前進接触角と後退接触角との差が大となり、よってこの吐出口側撥液膜11aを有した液滴吐出ヘッド1は、前述したように良好な吐出安定性を発揮するものとなる。
【0041】
図4(a)に示したような、親液部11cと撥液部11dとが縞状に交互に存在するノズル内撥液膜11をノズル18内に形成するには、まず、ノズル18を形成したノズルプレート12を用意する。なお、用意するノズルプレート12のノズル18としては、吐出口9の内径が約25μmであり、吐出口9からテーパ部までの間、すなわちストレートな部分の長さが約25μmであるものとした。
【0042】
続いて、このノズルプレート12の吐出口9を形成した面にシリコーン樹脂をプラズマ重合させ、図4(b)に示すように吐出口9を形成した面にプラズマ重合膜を厚さ0.5μm程度に形成する。ここで、プラズマ重合膜の形成方法としては、前述したように例えば特開平2003−72085号公報に開示されているような、シリコーン樹脂のモノマーか、あるいは重合度の低いシリコーン油を液体原料として用い、これを重合することで成膜する方法が好適に用いられる。
このようにして形成を行うと、このプラズマ重合膜はノズル18の吐出口9内にまで回り込んで形成され、図4(b)に示したようにノズル18の内壁面の、前記吐出口9の近傍部にもプラズマ重合膜が形成される。
【0043】
なお、このノズル18の内壁面に形成されたプラズマ重合膜の膜厚は例えば数10nm程度となり、吐出口9を形成した面に形成されたプラズマ重合膜に比べ格段に薄くなる。
このようにしてプラズマ重合を行うと、得られたプラズマ重合膜は、−Si−からなる主鎖を有し、かつアルキル基やアリル基等の炭素含有基を側鎖とするものとなることから、撥液性(撥水性)を有する膜、すなわち撥液膜10となる。
【0044】
このようにしてプラズマ重合膜からなる撥液膜10を吐出口9形成面、およびノズル18内の吐出口9近傍部にそれぞれ形成したら、ノズル18内の吐出口9近傍部におけるキャビティ15側、すなわちキャビティ側撥液膜11bを形成する部分に、例えばここを遮光材料などで覆うことによって遮光層(図示せず)を形成する。そして、その状態でノズルプレート12の撥液膜10側、すなわち吐出口9側にこの吐出口9を覆って反射ミラー23を設ける。反射ミラー23としては、使用する波長域での反射率が高いことから誘電体ミラーが好適に用いられる。
【0045】
このように、反射ミラー23を吐出口9側の撥液膜10に密着させ、吐出口9を覆ったら、その状態でノズルプレート12の、吐出口9と反対の側から紫外線レーザ光であるエキシマレーザ光(波長;174nm)を、酸素存在下(ただし、酸素は紫外光を吸収してオゾンを発生するため、本実施形態では窒素に対してわずかに酸素を添加した)でノズル18の軸方向に沿って照射する。
すると、ノズル18内ではエキシマレーザ光の入射光と反射ミラー23での反射光との間で干渉が起こり、干渉縞(干渉パターン)が生じる。そして、この干渉縞でノズル18内のプラズマ重合膜(撥液膜10)が露光されるので、プラズマ重合膜は部分的に露光されることになる。すなわち、このプラズマ重合膜には、干渉縞によってリング状の露光部と非露光部とが例えば約0.2μmピッチで交互に形成されることになる。
【0046】
露光部では、シリコーン樹脂からなるプラズマ重合膜中の側鎖であるアルキル基やアリル基がエキシマレーザ光によって破壊され、雰囲気中の酸素が取り込まれることにより、最終的には親水性(親液性)であるSiO2を形成するようになる。したがって、図4(a)に示したようにノズル18内において露光部では酸素が導入されることで親液化して親液部11cとなる。一方、非露光部では、プラズマ重合膜(撥液膜10)のまま、すなわち撥液部11dとしてそのままに維持される。よって、前述したように親液部11cと撥液部11dとが縞状に交互に存在するノズル内撥液膜11が得られる。
また、前記の遮光層で覆った部分、すなわちキャビティ側撥液膜11bを形成する部分は、遮光層で遮光されることにより非露光部となることから、撥液膜としてそのままに維持され、したがって遮光層が除去されることによってキャビティ側撥液膜11bとなる。
【0047】
なお、撥液部と親液部とを分布させた吐出口側撥液膜11aとしては、前述した共析メッキのように撥液部と親液部とを不規則に点在させることで形成してもよい。
このように撥液部と親液部とを不規則に点在させても、この吐出口側撥液膜11aは液状体に対する前進接触角が比較的大きく、かつ後退接触角が小さくなる。すなわち、親液部11cと撥液部11dとが不均一に存在していると、この吐出口側撥液膜11a上を液状体が移動する際、その前進側では、主に撥液部11dに留まりつつこれら撥液部11d間の親液部11c上を瞬時に移動することから、前進接触角が大きくなる傾向にあり、一方後退側では、親液部11cに引きずられることで後退接触角が小さくなる傾向にある。
したがって、このように撥液部と親液部とを不規則に点在させていることにより、この吐出口側撥液膜11aは前進接触角と後退接触角との差が大となり、よってこの吐出口側撥液膜11aを有した液滴吐出ヘッド1は、良好な吐出安定性を発揮するものとなる。
【0048】
このような、撥液部と親液部とを不規則に点在させたノズル内撥液膜11を、共析メッキでなく例えば露光によって形成するには、まず、前記の例と同様にしてノズル18を形成したノズルプレート12を用意する。
続いて、このノズルプレート12の吐出口9を形成した面にシリコーン樹脂をプラズマ重合させ、前記例と同様に吐出口9を形成した面にプラズマ重合膜を厚さ0.5μm程度に形成する。すると、プラズマ重合膜はノズル18の吐出口9内にまで回り込んで形成され、ノズル18の内壁面の、前記吐出口9の近傍部にもプラズマ重合膜が形成される。そして、このプラズマ重合膜は前述したように撥液膜10となる。
【0049】
このようにしてプラズマ重合膜からなる撥液膜10を形成したら、前記の例と同様にして、キャビティ側撥液膜11bを形成する部分に遮光層(図示せず)を形成する。そして、その状態でこのノズルプレート12の撥液膜10側、すなわち吐出口9側にこの吐出口9を覆って反射板(図示せず)を設ける。反射板としては、例えば表面にエキシマレーザ光の波長(174nm)程度の微細な凹凸パターンを有するアルミニウム製のものが好適に用いられる。ここで、微細な凹凸パターンとしては、例えば不規則なまだら模様で、反射光はスペックルパターンを形成するようなものが採用される。また、反射光がノズル18の内壁の特定位置に結像するよう、縞模様のホログラム(例えばキノフォーム)を採用することもできる。
【0050】
このように、反射板を吐出口9側の撥液膜10に密着させ、吐出口9を覆ったら、前記の例と同様に、吐出口9と反対の側からエキシマレーザ光(波長;174nm)を、酸素存在下で照射する。
すると、反射板からの反射光は凹凸パターンによって乱反射を起こしてスペックルパターンを形成する。そして、このスペックルパターンで露光されることにより、プラズマ重合膜(撥液膜10)は不均一に露光されたものとなり、これによりプラズマ重合膜には露光部、すなわち親液部11cと、非露光部、すなわち撥液部11dとが不規則に点在して形成されることになる。よって、撥液部と親液部とが不規則に点在した吐出口側撥液膜11aが得られる。
また、前記の遮光層で覆った部分、すなわちキャビティ側撥液膜11bを形成する部分は、前記の例と同様に遮光層で遮光されることにより非露光部となることから、撥液膜としてそのままに維持され、したがって遮光層が除去されることによってキャビティ側撥液膜11bとなる。
【0051】
なお、前記実施形態では、そのノズル内撥液膜11を、吐出口側撥液膜11aとキャビティ側撥液膜11bとから形成したが、本発明はこれに限定されることなく、ノズル内撥液膜11をキャビティ側撥液膜11bのみから形成するようにしてもよく、その場合に、特に間欠性を良好にすることができる。
【0052】
ここで、動的接触角の大きさが決定される大きな要因としては、次の2点が挙げられる。
第1には固体試料の表面粗さであり、第2は固体試料の表面組成である。そして、これらの総合した相互作用による力の釣り合いによって、対象となる(吐出する)液状体に対する動的接触角が決まると言われている。特に、表面粗さは前進接触角と後退接触角との差を広げる大きな要因になるとされている。
したがって、前記のプラズマ重合膜などは、表面粗さが極めて小となることから、前進接触角と後退接触角との差が十分に小さいものとなる。
一方、前述したように親液部11cと撥液部11dとが縞状に交互に存在する吐出口側撥液膜11aや、撥液部と親液部とが不規則に点在した吐出口側撥液膜11aは、前進接触角が大きくなる傾向にあり、かつ後退接触角が小さくなる傾向にあることから、前進接触角と後退接触角との差が大となる。
なお、動的接触角は、前述したように総合した相互作用による力の釣り合いによって決まることから、液状体の種類に関係なく、どんな液状体に対してもこれに対する動的接触角のみにより、その吐出安定性が決まるものとなる。
【0053】
(実験例1)
ノズル内撥液膜の製造条件を変えて、吐出口側撥液膜11aとキャビティ側撥液膜11bとが以下の表1に示すような動的接触角(前進接触角、後退接触角)を有するA〜Hのノズルプレートを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの間欠性(間欠時間)を調べた。得られた結果を表1に示す。なお、これらA〜Hのノズルプレートの、ノズルのキャビティ側の内壁面の動的接触角は、いずれも前進接触角が20°、後退接触角が0°であった。
【0054】
ここで、前進接触角、後退接触角の測定法としては、前記の図3(a)、(b)に示した方法を用いた。図3(a)、(b)における針状管体4としては、ステンレスにポリ4フッ化エチレンをコートしたもので、外径が1.0mm、内径が0.8mmのものを用いた。また、固体試料2を水平方向に移動させる際のステージ移動速度については、2mm/秒とした。
さらに、吐出する液状体としては、有機EL装置において緑色の発光層の形成材料として使用される、以下の化合物1、化合物2、化合物3からなるものを用いた。すなわち、これら化合物1〜3を、化合物1:化合物2:化合物3=0.76:0.2:0.04の重量比で混合し、さらにこの混合物を溶媒としてのシクロヘキシルベンゼンに対して、0.5%の割合で溶解させたものを用いた。なお、この液状体は、特に乾燥による目詰まり等の吐出不良が生じやすく、したがって間欠性の悪いものである。
そして、このような条件のもとで測定を5回行い、その平均を求めて前進接触角、後退接触角をそれぞれ求めた。
【0055】
【化1】
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】
「表1」
吐出口側撥液膜 キャビティ側撥液膜 間欠時間
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (秒) 「判定」
A 70° 20° 70° 20° 10 ×
B 70° 20° 20° 0° 5 ×
C 70° 20° 40° 40° 60 ○
D 70° 20° 60° 40° 60 ○
E 50° 20° 40° 40° 60 ○
F 60° 20° 40° 40° 60 ○
G 40° 40° 40° 40° 80 △
H 70° 70° 70° 70° 80 △
【0059】
なお、間欠時間(間欠性)については、吐出間隔を10秒ごとに増やしていき、目詰まり等による吐出不良が生じるまでの吐出間隔を調べ、良好な吐出が維持される吐出間隔を間欠時間とした。すなわち、例えば表1中のCでは吐出時間が60秒までは良好な吐出がなされるものの、70秒では良好な吐出ができなかったことを意味している。
また、表1中の「判定」は、間欠時間(間欠性)に吐出安定性をも加えて総合的に評価した結果であり、表1中のG、Hについては、間欠時間(間欠性)は良好であるものの、吐出安定性が悪いことから、「△」とした。
表1に示した結果より、特にキャビティ側撥液膜11bについては、前進接触角と後退接触角との差が20°未満であり、後退接触角が40°以上であるもの(C〜H)の間欠時間が長く、したがって特に間欠性の悪い液状体に対しても間欠性が良好になることが確認された。
【0060】
(実験例2)
次に、特に吐出口側撥液膜による吐出安定性の作用を調べるため、ノズル内撥液膜の製造条件を変えて、以下の表2に示すように、前進接触角が異なるA〜Kのノズルプレートを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの吐出量のバラツキを調べた。得られた結果を、ノズルのキャビティ側内壁面の前進接触角、後退接触角とともに表2に示す。なお、本例では、ノズル内撥液膜11全体を吐出口側撥液膜とし、キャビティ側撥液膜の形成は省略した。
ここで、前進接触角、後退接触角の測定法としては、前記の実験例1と同じ条件で行った。ただし、吐出する液状体については、着色剤が3.0%、グリセリンが20%であり、残りを水としたものを用いた。
そして、このような条件のもとで測定を5回行い、その平均を求めて前進接触角、後退接触角をそれぞれ求めた。
【0061】
「表2」
吐出口側撥液膜 キャビティ側内壁面 吐出量のバラツキ(%)
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (吐出安定性)「評価」
A 20° 20° 20° 0° 5.3 ×
B 30° 20° 20° 0° 4.7 △
C 40° 20° 20° 0° 4.7 △
D 50° 20° 20° 0° 1.8 ○
E 70° 20° 20° 0° 1.9 ○
F 80° 20° 20° 0° 1.4 ○
G 90° 20° 20° 0° 1.9 ○
H 96° 20° 20° 0° 4.4 △
I 100° 20° 20° 0° 3.8 ○
J 105° 20° 20° 0° 5.4 ×
K 110° 20° 20° 0° 4.6 △
【0062】
なお、吐出量のバラツキについては、吐出を4回行ってその都度吐出量を測定し、平均値、最大値、最小値を求め、以下の式によってバラツキの値を算出した。 バラツキの値(%)={(最大値−最小値)/平均値}×100
また、評価については、高精彩描画に求められる吐出量のバラツキが平均値に対して±2%であることから、以下のような基準とした。
○;4%以下(±2%以下)
△;4〜5%(±2〜2.5%)
×;5%以上(±2.5%以上)
表1に示した結果より、特に吐出口側撥液膜の前進接触角については、50°以上90°以下の範囲内において吐出量のバラツキが小さくなり、良好な吐出安定性を有することが分かった。
【0063】
(実験例3)
次に、ノズル内撥液膜の製造条件を変えて、以下の表3に示すように、特に後退接触角が異なるL〜Rのノズルプレートを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの吐出量のバラツキを実験例2と同様にして調べた。得られた結果を表3に示す。なお、ノズルの、キャビティ側の内壁面の前進接触角、後退接触角も表3に併記する。また、吐出量のバラツキや評価については、実験例2と同様にして行った。
【0064】
「表3」
吐出口側撥液膜 キャビティ側内壁面 吐出量のバラツキ(%)
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (吐出安定性)「評価」
L 70° 0° 20° 0° 0.2 ○
M 70° 10° 20° 0° 0.2 ○
N 70° 20° 20° 0° 1.9 ○
O 70° 25° 20° 0° 6.1 ×
P 70° 30° 20° 0° 5.1 ×
Q 70° 50° 20° 0° 5.0 ×
R 70° 70° 20° 0° 4.1 △
【0065】
このように、吐出口側撥液膜の前進接触角が、前記の良好な吐出安定性を有する範囲内の値(70°)のものについて、後退接触角を変えて吐出量のバラツキを調べたところ、表3に示した結果より、特にノズル内撥液膜の後退接触角については、25°未満で吐出量のバラツキが小さくなり、良好な吐出安定性を有することが分かった。
【0066】
(実験例4)
次に、吐出口側撥液膜の前進接触角と後退接触角とが同じであり、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ一定にしたノズルプレート(S〜X)と、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ吐出口側撥液膜の前進接触角及び後退接触角に一致させたノズルプレート(Y〜DD)とを作製し、これを用いた液滴吐出ヘッドの吐出量のバラツキを実験例2と同様にして調べた。得られた結果を表4に示す。なお、吐出量のバラツキや評価については、実験例2と同様にして行った。
【0067】
「表4」
吐出口側撥液膜 キャビティ側内壁面 吐出量のバラツキ(%)
前進接触角 後退接触角 前進接触角 後退接触角 (吐出安定性)「評価」
S 0° 0° 20° 0° 6.3 ×
T 20° 20° 20° 0° 5.1 ×
U 40° 40° 20° 0° 5.4 ×
V 60° 60° 20° 0° 4.3 △
W 80° 80° 20° 0° 4.3 △
X 100° 100° 20° 0° 4.8 △
Y 0° 0° 0° 0° 8.0 ×
Z 20° 20° 20° 20° 5.6 ×
AA 40° 40° 40° 40° 6.3 ×
BB 60° 60° 60° 60° 7.4 ×
CC 80° 80° 80° 80° 11.6 ×
DD100° 100° 100° 100° 14.4 ×
【0068】
表4より、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ一定にするとともに、その後退接触角を0°にしたもの(S〜X)の方が、キャビティ側内壁面の前進接触角及び後退接触角をそれぞれ吐出口側撥液膜の前進接触角及び後退接触角に一致させたもの(Y〜DD)に比べて吐出量のバラツキが小さくなり、吐出安定性が比較的良好になることが分かった。また、特にキャビティ側内壁面の後退接触角が大きくなると、吐出量のばらつきが大きくなって不安定になることから、キャビティ側内壁面は濡れやすい状態、すなわち後退接触角が小さく、特に0°であるのが好ましいことが分かった。
【0069】
ここで、後退接触角が0°とは、実際には後退接触角が0°程度、すなわちほぼ0°であることを意味している。これは、液状体がノズルプレートに対して極めて濡れやすい状態を意味していることになるが、このように濡れやすい状態(後退接触角が10°未満)の場合、後退接触角の測定が前記の図3(a)、(b)に示した方法では困難になり、十分に信頼性のあるデータとはなり得ないからである。
【0070】
次に、本発明の液滴吐出装置の一実施形態を説明する。図5は、図1(a)、(b)に示した液滴吐出ヘッド1を備えてなる液滴吐出装置の一例を示す図であって、図5中符号60は液滴吐出装置の一例としてのインクジェットプリンター60である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上部」、下側を「下部」と言う。図5に示したインクジェットプリンター60は、紙等に印刷する一般的なプリンターであって、装置本体62を備え、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ621を有し、下部前方に記録用紙Pを排出する排出口622を有し、上部面に操作パネル67を有したものである。
【0071】
操作パネル67は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成されたもので、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えたものである。装置本体62の内部には、主に、往復動するヘッドユニット63を備えた印刷装置64と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置64に送り込む給紙装置65と、印刷装置64および給紙装置65を制御する制御部66とが設けられている。
【0072】
制御部66の制御により、給紙装置65は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りするようになっている。間欠送りされる記録用紙Pは、ヘッドユニット63の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット63が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動し、記録用紙Pへの印刷を行うようになっている。すなわち、ヘッドユニット63の往復動と、記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となり、インクジェット方式の印刷が行なわれるようになっている。
【0073】
印刷装置64は、ヘッドユニット63と、ヘッドユニット63の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット63を往復動させる往復動機構642とを備えたものである。
ヘッドユニット63は、その下部に、多数のノズル511を備えるインクジェット式記録ヘッド50と、このインクジェット式記録ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェット式記録ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有したものである。ここで、前記インクジェット式記録ヘッド50は、図1(a)、(b)に示した、吐出安定性が良好な液滴吐出ヘッド1からなっている。
【0074】
なお、インクカートリッジ631として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット63には、各色にそれぞれ対応したインクジェット式記録ヘッド50が設けられることになる。
【0075】
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有したものである。
キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されたものである。
キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット63が往復動する。そして、この往復動の際に、インクジェット式記録ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われるようになっている。
【0076】
給紙装置65は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有したものである。
給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されたものであり、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されたものである。このような構成によって給紙ローラ652は、トレイ621に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置64に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ621に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成としてもよい。
【0077】
制御部66は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置64や給紙装置65等を制御することにより印刷を行うものである。
この制御部66には、いずれも図示しないものの、主に各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)54を駆動してインクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置64(キャリッジモータ641)を駆動する駆動回路、給紙装置65(給紙モータ651)を駆動する駆動回路、およびホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとが備えられている。
【0078】
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ631のインク残量、ヘッドユニット63の位置、温度、湿度等の印刷環境等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。
制御部66は、通信回路を介して印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理し、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づき、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子54、印刷装置64および給紙装置65は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに所望の印刷がなされる。
【0079】
このようなインクジェットプリンター60にあっては、前述したように特に間欠性等についての良好な吐出安定性を発揮するインクジェット式記録ヘッド50を備えているので、このインクジェットプリンター60自体もインク(液状体)の吐出安定性が良好なものとなる。
【0080】
次に、本発明の液滴吐出装置の他の実施形態を説明する。図6は、図1(a)、(b)に示した液滴吐出ヘッド1を備えてなる液滴吐出装置の他の例を示す図であって、図6中符号30は主に工業用に用いられる液滴吐出装置である。この吐出装置30は、ベース31、基板移動手段32、ヘッド移動手段33、前記吐出ヘッド1からなる吐出ヘッド部40、液状体タンク35、等を有して構成されたもので、吐出ヘッド部40から基板(基体)Sに対して液状体を吐出し、液状体を膜状に塗布するものである。
【0081】
ベース31は、その上に前記基板移動手段32、ヘッド移動手段33を設置したものである。
基板移動手段32は、Y軸方向に沿って形成されたガイドレール36を有したもので、例えばリニアモータにより、スライダ37をガイドレール36に沿ってY軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0082】
テーブル39は、基板Sを位置決めし、保持するもので、前記スライダ37上に保持固定されたものである。このテーブル39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Sをテーブル39の上に吸着保持するようになっている。基板Sは、テーブル39の位置決めピン(図示せず)により、テーブル39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。このような構成のもとに基板Sは、スライダ37の移動により、テーブル39に伴われてY軸方向に移動させられ、搬送されるようになっている。テーブル39には、吐出ヘッド部40がインクを捨打ちあるいは試し打ちするための捨打ちエリア(図示せず)が設けられている。
【0083】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a、33aと、これら架台33a、33a上に設けられた走行路33bとを備えてなるもので、該走行路33bをX軸方向、すなわち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a、33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d、33dとを有して形成されたもので、ガイドレール33d、33dの長さ方向に吐出ヘッド34を保持させるスライダ42を移動可能に保持したものである。スライダ42は、リニアモータ(図示せず)等の作動によってガイドレール33d、33d上を走行し、これにより吐出ヘッド部40をX軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0084】
吐出ヘッド部40には、図示しないものの、図1(a)、(b)に示した液滴吐出ヘッド1が備えられている。この吐出ヘッド部40においては、揺動位置決め手段としてのモータ43、44、45、46が液滴吐出ヘッド1(図示せず)に接続されている。そして、モータ43を作動させると、液滴吐出ヘッドはZ軸に沿って上下動し、Z軸上での位置決めが可能になっている。なお、このZ軸は、前記のX軸、Y軸に対しそれぞれに直交する方向(上下方向)である。また、モータ44を作動させると、液滴吐出ヘッドは図6中のβ方向に沿って揺動し、位置決め可能になり、モータ45を作動させると、液滴吐出ヘッドはγ方向に揺動して位置決め可能になり、モータ46を作動させると、液滴吐出ヘッドはα方向に揺動して位置決め可能になる。
【0085】
このような構成のもとに、吐出ヘッド部40の液滴吐出ヘッドは、スライダ42上において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能となり、かつ、α、β、γに沿って揺動し、位置決め可能となっている。したがって、液滴吐出ヘッドのインク吐出面を、テーブル39側の基板Sに対する位置あるいは姿勢を、正確にコントロールすることができるようになっている。
液状体タンク35は、吐出ヘッド部40の近傍に配置されたもので、吐出によって形成する構成要素の液状材料(液状体)を貯留したものである。
【0086】
このような液滴吐出装置30にあっても、前述したように特に間欠性等についての良好な吐出安定性を発揮する液滴吐出ヘッド1からなる吐出ヘッド部40を備えているので、この液滴吐出装置30自体も液状体の吐出安定性が良好なものとなる。したがって、この液滴吐出装置30によって形成される膜、すなわち吐出される液状体に対応した機能を有してなる機能性膜は、特にその膜厚などが均一なものとなり、よってその機能特性が安定したものとなる。
【0087】
なお、このような液滴吐出装置30によって形成される機能性膜、すなわち本発明の機能性膜としては、例えば半導体装置や発光装置など各種のデバイスに採用される機能性膜を挙げることができる。具体的には、液晶装置におけるカラーフィルタや配向膜、パッシベーション膜、平坦化膜、層間絶縁膜、また有機EL装置における正孔注入層や発光層となる膜、さらにこれら液晶装置や有機EL装置、半導体装置等における金属配線や、その製造の際に用いられるレジスト膜などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図2】ノズルプレートの要部拡大図である。
【図3】(a)、(b)は動的接触角の測定法説明図である。
【図4】(a)、(b)はノズル内撥液膜の一例を示す図である。
【図5】液滴吐出装置の一実施形態を説明するための図である。
【図6】液滴吐出装置の他の実施形態を説明するための図である。
【符号の説明】
1…液滴吐出ヘッド、9…吐出口、10…撥液膜、
11…ノズル内撥液膜、11a…吐出口側撥液膜、
11b…キャビティ側撥液膜、11c…親液部、11d…撥液部、
12…ノズルプレート、15…キャビティ、18…ノズル、
30…液滴吐出装置、40…吐出ヘッド部、
50…インクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)、
60…インクジェットプリンター(液滴吐出装置)
Claims (10)
- 液状体を収容するキャビティと、このキャビティに連通するノズルを形成したノズルプレートとを有し、前記キャビティと反対の側のノズル開口を吐出口として、前記キャビティ内に収容した液状体を前記ノズルの吐出口から吐出する液滴吐出ヘッドであって、
前記ノズルの内壁面の前記吐出口側にノズル内撥液膜が形成され、
前記ノズル内撥液膜の少なくとも前記キャビティ側が、吐出する液状体に対する前進接触角と後退接触角との差が20°未満であり、後退接触角が40°以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 前記ノズル内撥液膜の前記キャビティ側の幅が、5μm以上10μm未満であることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側が、吐出する液状体に対する前進接触角が50°以上90°以下であり、後退接触角が25°未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、撥液部と親液部とが分布して形成されてなることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、リング状の撥液部と親液部とが縞状に形成されてなることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記ノズル内撥液膜の前記吐出口側は、撥液部と親液部とが不規則に点在して形成されてなることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記ノズルの前記キャビティ側の内壁面の、吐出する液状体に対する後退接触角が、前記ノズル内撥液膜の前記キャビティ側の、吐出する液状体に対する後退接触角より小であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記ノズルの前記キャビティ側の内壁面の、吐出する液状体に対する後退接触角が、ほぼ0°であることを特徴とする請求項7記載の液滴吐出ヘッド。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
- 請求項9記載の液滴吐出装置により機能性材料が吐出されて形成されたことを特徴とする機能性膜。
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2003
- 2003-07-22 JP JP2003199934A patent/JP2005040979A/ja not_active Withdrawn
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