JP2005038916A - セラミック多層基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高積層化を実現し、かつ低コストのセラミック多層基板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】焼結セラミック基板15と、この焼結セラミック基板15の上に形成する接着層16としての有機金属材料を含む熱可塑性樹脂材料と、この接着層16の上に形成するセラミックグリーンシート11の積層体とからなり、脱バインダーおよび焼成により前記焼結セラミック基板15と積層体とを金属酸化物で接合したセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板15の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】焼結セラミック基板15と、この焼結セラミック基板15の上に形成する接着層16としての有機金属材料を含む熱可塑性樹脂材料と、この接着層16の上に形成するセラミックグリーンシート11の積層体とからなり、脱バインダーおよび焼成により前記焼結セラミック基板15と積層体とを金属酸化物で接合したセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板15の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパソコンや携帯電話などの小型部品として使用されるセラミック多層基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のセラミック多層基板の製造方法としては図4に示す方法がある。
【0003】
図4(a)〜(f)は従来のセラミック多層基板の製造方法を示す断面図である。図4(a)に示すように焼結セラミック基板1の上に熱可塑性樹脂を主成分とする接着層2を形成する。次に図4(b)に示すように接着層2の上に導体ペーストを用いてスクリーン印刷により導体パターン3を形成する。そして図4(c)に示すように導体パターン3の上に未焼結セラミックグリーンシート4を積層して加熱および加圧することにより接着層2を介して焼結セラミック基板1と仮固定する。さらに図4(d)に示すように未焼結セラミックグリーンシート4の上に導体ペーストをスクリーン印刷により導体パターン5を形成する。次に図4(e)に示すように未焼結セラミックグリーンシート6を加熱および加圧して未焼結セラミックグリーンシート4と仮固定する。次に図4(f)に示すように焼結セラミック基板1の上に形成された未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体を仮固定した状態で脱バインダーおよび焼成を行い、焼結セラミック基板1の上にセラミックグリーンシートの積層体が接合してセラミック多層基板を形成する。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−353623号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のセラミック多層基板の製造方法では、焼結セラミック基板1の上に未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体を接着層2を介して仮固定して脱バイ及び焼成した場合、未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体の焼成時に起きる焼成収縮による応力が発生するが未焼結セラミックグリーンシート4,6の厚みが、約300μm以下では、焼成収縮の応力が発生しても、焼結セラミック基板1と未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体の接合性は良好であった。しかし前記未焼結セラミックグリーンシート4,6の厚みが約300μmを超えると、焼成収縮による応力が増加するために、焼結セラミック基板1と未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体の接合性が悪化し、未焼結セラミックグリーンシート4,6と焼結セラミック基板1との接合面の一部に剥離が発生する問題点があった。
【0007】
また、未焼結セラミックグリーンシート4,6の厚みが制限されるために、高積層化によるセラミック多層基板の高密度化が困難である。
【0008】
本発明は高積層化を実現し、かつ低コストのセラミック多層基板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明は、焼結セラミック基板と、この焼結セラミック基板上に形成する接着層としての有機金属材料を含む熱可塑性樹脂材料と、この接着層上に形成するセラミックグリーンシートの積層体とからなり、脱バインダーおよび焼成により前記焼結セラミック基板と積層体とを金属酸化物で接合したセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、焼結セラミック基板をセラミックグリーンシートとした請求項1に記載のセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、焼結セラミック基板上に有機金属材料を含有する熱可塑性樹脂材料からなる接着層を形成する工程と、この接着層上にセラミックグリーンシートの積層体を加熱および加圧して接着する工程と、前記セラミックグリーンシートが焼結できる温度から焼結セラミック基板の耐熱温度以下の範囲で脱バインダーおよび焼成する工程とからなるセラミック多層基板の製造方法であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、有機金属材料を珪素、ホウ素、チタン、ビスマス、銅、亜鉛の少なくとも1種類とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、熱可塑性樹脂材料の有機金属材料の含有量を1wt%以上〜20wt%以下とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、熱可塑性樹脂の溶解効果と有機金属材料の反応性効果により接着力が向上する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、熱可塑性樹脂材料にアクリル樹脂、ブチラール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂の少なくとも1種類以上含むようにした請求項3に記のセラミック多層基板の製造方法であり、加熱および加圧によりセラミックグリーンシートの溶解性が促進されるため、接着力が向上する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、接着層の厚みを0.1μm以上6μm以下の範囲とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、脱バインダーおよび焼成においてセラミックグリーンシートの溶解拡散時にセラミックグリーンシートの拡散量がセラミック基板側に多く到達することができるため、接着力が向上する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、焼結セラミック基板をセラミックグリーンシートとした請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、有機金属材料の反応によりセラミックグリーンシートと間の界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1(a)〜(e)は本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の製造工程を示す断面図である。
【0020】
以下、図1を用いて概略の製造工程について説明する。
【0021】
図1(a)に示すように、セラミックグリーンシート11にパンチャー装置などを用いて貫通孔を形成して導体ペーストを充填してビア導体12を形成する。そして図1(b)に示すように、導体パターン13をスクリーン印刷等で形成する。次に図1(c)に示すように、ビア導体12や導体パターン13を形成したセラミックグリーンシート11を複数枚積層し、加熱および加圧することにより積層体14を形成する。また図1(d)に示すように、焼結セラミック基板15と積層体14とを接着層16を介して加熱および加圧して仮固定をする。そして図1(e)に示すように、脱バインダーおよび焼成を行う。
【0022】
以上のように導体パターン13の寸法精度を向上させるために導体パターン13、セラミックグリーンシート11を焼結セラミック基板15に拘束させる接着層16を形成することによりセラミックグリーンシート11の面内方向の焼成収縮が抑制され、焼結セラミック基板15と積層体14との界面において接合不良のない良好な状態が得られる。なお焼結セラミック基板15の両面に積層体14を形成する場合も同様の効果が得られる。
【0023】
以下、本発明のセラミック多層基板の各要素を構成する材料および製造工程で使用する装置について説明する。セラミックグリーンシート11は原料粉にアルミナ粉(またはジルコニア粉)とガラス粉とを混合したガラスセラミック粉体、有機バインダーにブチラール樹脂やアクリル樹脂等を用いて可塑剤を添加し、混練してスラリー状にしたものをドクターブレード法等によってシート状に成形したものである。またセラミックグリーンシート11の厚みを50〜300μmとした。
【0024】
導体パターン13にAg系ペースト(空気焼成工程用のAg単独、Ag−PdペーストやAg−Ptペーストなど)またはAu系ペースト(Au単独、Au−Pdペースト、Au−Ptペースト)などの貴金属ペーストを用いてスクリーン印刷法や凹版転写法や感光性厚膜ペーストのフォトリソ法などによりセラミックグリーンシート11の上や接着層16の上に形成する。
【0025】
焼結セラミック基板15にアルミナ基板、ガラスセラミック基板、フォルステライト基板、ムライト基板、フェライト基板などを用いてかつセラミックグリーンシート11の焼結温度以上の耐熱性を有し、セラミックグリーンシート11の焼成時に焼結セラミック基板15と接合可能な材料である。
【0026】
接着層16はブチラール樹脂、アクリル樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂などの熱可塑性樹脂と珪素、ホウ素、チタン、ビスマスや銅や亜鉛などの有機金属材料を混合したものである。また有機金属材料にはセラミックグリーンシート11と焼結セラミック基板15とを焼成して接合させる時に接合力が向上する材料を使用する。
【0027】
また、有機金属材料に金属含有率1〜30wt%のものを使用した。この接着層16は熱可塑性樹脂と有機金属材料をトルエン、アセトン、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの有機溶剤で溶かした状態のものをディップやスプレーなどの方式を用いて形成した。
【0028】
以下に、セラミック多層基板の製造工程について詳細に説明する。
【0029】
図1(a)に示すように、セラミックグリーンシート11に打ち抜き金型、パンチャー装置などを用いて貫通孔を形成し、導体ペーストを充填してビア導体12を形成する。さらに図1(b)に示すように、導体パターン13をスクリーン印刷等で形成する。導体パターン13の厚みをセラミックグリーンシート11の厚みの20%以内になるように調整する。次に図1(c)に示すように、ビア導体12や導体パターン13を形成したセラミックグリーンシート11を所定の回路になるように複数枚を積層して加熱および加圧することで一体化させて積層体14を形成する。
【0030】
加熱および加圧工程において、加熱条件を温度50〜100℃、加圧条件を圧力50〜300kg/cm2の範囲内で調整し、保持時間を2〜5分程度とした。セラミックグリーンシート11の間の接合力を得るため、温度50℃以上、圧力50kg/cm2以上が必要である。さらに加熱温度の上限が温度100℃を超えるとセラミックグリーンシート11の成分である可塑剤の蒸発量が増大してセラミックグリーンシート11の柔軟性が劣化し、セラミックグリーンシート11の間の接合不良やセラミックグリーンシート11自体にクラックが発生する問題が生じるために温度を100℃以下にした。さらに加圧条件の上限をセラミックグリーンシート11の間の加熱および加圧接合によるセラミックグリーンシート11の平面方向の寸法伸びを考慮すると圧力が300kg/cm2以内が望ましい。
【0031】
また、図1(d)に示すように焼結セラミック基板15と積層体14とを接着層16を介して加熱および加圧により仮固定をする。接着層16は、焼結セラミック基板15の少なくとも1面にディップやスプレーなどの方式またはロールコーターやスピナーなどの塗布装置を用いて形成される。焼結セラミック基板15の全面に形成してもよい。また接着層16をフィルム上にコートし、フィルム上に形成した接着層16の膜を焼結セラミック基板15またはセラミックグリーンシート11の少なくとも片方に加圧転写してもよい。また接着層16の厚みを0.1μm以上6μm以下とした。
【0032】
加熱および加圧工程において、加熱条件を温度50〜100℃、加圧条件を圧力1〜300kg/cm2の範囲内で調整し、保持時間を2〜5分程度とした。加熱および加圧条件としては、セラミックグリーンシート11の積層体14と焼結セラミック基板15の接合性から判断すると、脱バインダーおよび焼成後の接合部の状態から加圧量が大きいほど接合状態が良くなる。低加圧条件でセラミックグリーンシート11の欠け等の異物が付着して接合部にある場合、接合状態が悪くなるために加圧量は10kg/cm2以上が望ましい。また加圧量が大きくなると、焼結セラミック基板15の割れが発生するために、加圧条件を焼結セラミック基板15が割れない程度に設定する必要がある。
【0033】
次に図1(e)に示すように、脱バインダーおよび焼成を行う。脱バインダー条件を昇温速度20℃/時間以上70℃/時間以下、ピーク温度400℃以上550℃以下で2時間〜5時間保持する。焼成条件を昇温速度10℃/分以上80℃/分以下、ピーク温度850℃以上920℃以下で10分〜20分間程度行った。また焼成工程において、セラミックグリーンシート11の材料により焼成後の緻密な焼結状態が得られるように、昇温速度、ピーク温度およびピーク温度保持時間を所定範囲で行う。接着層16の成分である熱可塑性樹脂に添加した有機金属材料に珪素、ホウ素、チタン、ビスマス、銅、亜鉛などを用いることで焼成工程において熱可塑性樹脂の消失温度以上で有機金属材料が金属に分解するため、セラミックグリーンシート11の焼成収縮を抑制する効果およびセラミックグリーンシート11や焼結セラミック基板15の無機材料と有機金属材料の反応による効果によりセラミックグリーンシート11と焼結セラミック基板15との界面で接合層を形成することで接着力が向上する。その結果焼結セラミック基板15の上に形成したビア導体12や導体パターン13を内層するセラミックグリーンシート11の積層体14は焼成時の焼成収縮時に接着層16の効果により積層対14の面内方向にはほとんど寸法変化がなく焼成され、厚み方向のみ焼成収縮し、焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との界面での部分的な剥離現象も見られない良好な接合が可能となる。
【0034】
本発明を用いることにより面内方向の寸法精度が非常に良好なセラミック多層回路基板を製造することができる。
【0035】
本発明の実施の形態1における効果について、図を用いて説明する。図2(a)〜(c)は本発明のセラミック多層基板の接着層の説明図である。
【0036】
図2(a)に示すように焼結セラミック基板15の上に接着層16を形成して接着層16の上に導体パターン13を形成する。またセラミックグリーンシート11の上に導体パターン13を形成し、さらにセラミックグリーンシート11を加熱および加圧して一体化し、導体パターン13を形成した焼結セラミック基板15の接着層16を介して加熱および加圧し、仮接着させた導体2層構造のサンプルである。
【0037】
図2(b),(c)は図2(a)の脱バインダーおよび焼成後の状態を示す。図2(b)に焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合状態が悪いために部分的な剥離部17にクラック19が発生した様子を示す。また図2(c)に焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11の接合状態が良好な様子を示す。
【0038】
上記の結果について(表1)を用いて説明する。
【0039】
接着層16にアクリル樹脂と有機金属材料とを混合して実験を行った。また有機金属材料に珪素、ホウ素、チタン、ビスマスや銅や亜鉛を使用し、それぞれの有機金属材料の金属含有率を(表1)に示す。接着層16の厚みを0.1μm以上1μm以内の範囲で調整した。また接着層16にアクリル樹脂と有機金属材料の混合物を使用して有機金属材料の含有率による焼成後の焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合状態を3段階で評価した。○は接合状態が良好、△は部分的な剥離部17、×は剥離部17の面積比率が全体の30%以上である。セラミックグリーンシート11を厚み300μm、導体2層構造のサンプルとし、セラミックグリーンシート11の2層がトータル厚みで600μmのものを作成した。
【0040】
【表1】
【0041】
(表1)の結果より有機金属材料の含有率がゼロの場合(アクリル樹脂のみ)では図2(b)に示すように、部分的な剥離部17が見られた。剥離部17のセラミックグリーンシート11は焼成収縮でクラック19を発生した。次に有機金属材料の含有率が1wt%以上20wt%範囲では図2(c)に示すように、セラミックグリーンシート11のトータル厚みが600μmでも良好な接合状態が得られた。次に有機金属材料の含有率を20wt%以上にすると接合状態が悪くなる傾向にあった。
【0042】
以上の結果からアクリル樹脂の単一の接着層16に比べて、有機金属材料を1wt%以上20wt%以下の範囲ではセラミックグリーンシート11の厚みが600μmでも非常に良好な接合を得ることができた。このように有機金属材料以外でも上記の性質のあるものであれば同様な効果が得られる。ただし有機金属材料を30wt%を超えて添加すると接合状態は悪くなる。有機金属材料が30wt%を超えて添加すると加熱および加圧接合時にアクリル樹脂の熱可塑性樹脂によるセラミックグリーンシート11の成分の溶解拡散性が劣化するため、接合力が低くなったと考えられる。このように有機金属材料による焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との焼成後の接合力が向上し、かつアクリル樹脂などの熱可塑性のセラミックグリーンシート11への溶解拡散性の効果が得られる範囲内で接合力が向上する。
【0043】
また、接着層16の成分として低融点ガラスフリットを添加する方法もあるが、ガラスの粒径が大きいと接着層16の厚みが厚くなり、セラミックグリーンシート11の多層部14の仮接合時の加熱および加圧工程で寸法が伸びる。またガラスの粒径を小さくすると分散性が悪くなり容易に伸ばすことができない。しかし有機金属材料では分散が容易で粉体を含まないので接着層が薄くできるために、焼結セラミック基板15の表面粗さによるセラミックグリーンシート11の多層部14の伸びが低減できる。
【0044】
熱可塑性樹脂材料のアクリル樹脂について説明したがブチラール樹脂や脂環族飽和炭化樹脂等も同様な結果が得られた。また熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂やポリウレタン系樹脂を接着剤とした場合、セラミックグリーンシート11と焼結セラミック基板15との加熱および加圧工程での仮接合時に接着層16が軟化しにくいため接合状態が悪かった。この結果から接着剤としては熱可塑性樹脂材料が必要となる。
【0045】
次に、接着層の厚みの効果について(表2)を用いて説明する。接着層16の厚みを0.1μm、0.5μm、1.6μm、3.2μm、6.0μm、7.8μmの場合について、脱バインダーおよび焼成後の焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合性について評価を行った。この結果を(表2)に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
接着層16の熱可塑性樹脂材料にアクリル樹脂を使用し、有機金属材料に珪素を含有量1〜5wt%のものを用いた。接着層16の厚みが0.1μm以上6μm以下の場合、焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合力は良好であったが厚みが7.8μm程度になると焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合面に部分的な剥離部17が発生した。これは熱可塑性樹脂材料にブチラール樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂、有機金属材料にホウ素、チタン、ビスマス、銅、亜鉛などに代えても同様な効果が得られた。
【0048】
以上の結果から、脱バインダーおよび焼成においてセラミックグリーンシート11の溶解拡散時にセラミックグリーンシート11の拡散量がセラミック基板15の側に多く到達することができるため接着力が向上する。よって接着層16の厚み範囲は0.1μm以上6μm以下が適性範囲である。
【0049】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2において図を用いて説明する。
【0050】
図3(a)〜(d)は本発明のセラミックグリーンシートを示す説明図である。
【0051】
セラミックグリーンシート11を用いたセラミックグリーンシート11の多層における課題であった脱バインダーおよび焼成工程で発生するデラミネーションの改善について説明する。
【0052】
図3(a)に示すように、セラミックグリーンシート11の上に導体パターン13を形成し、所定の回路になるように複数枚積層して加熱および加圧することで一体化する。この場合、セラミックグリーンシート11の成分である樹脂材料や可塑剤などが少ないとセラミックグリーンシート11の間の接合性が悪くなり、剥離部17が発生した、図3(b)に示すように脱バインダーおよび焼成した状態であり、剥離部17は焼成しても剥離部17で残存する。そこで図3(c)に示すようにセラミックグリーンシート11の上に接着剤16を形成し、所定の回路になるように複数枚積層して、加熱および加圧することで一体化することにより、加熱および加圧したときの接合不良が減少する。さらに図3(d)に示すように、脱バインダーおよび焼成しても接合不良部がなくなる。
【0053】
以上の結果により本発明の接着剤を用いることによりセラミックグリーンシート11の多層で発生するデラミネーションの現象を軽減することができた。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本発明は、焼結セラミック基板と、この焼結セラミック基板上に形成する接着層としての有機金属材料を含む熱可塑性樹脂材料と、この接着層上に形成するセラミックグリーンシートの積層体とからなり、脱バインダーおよび焼成により前記焼結セラミック基板と積層体とを金属酸化物で接合したセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の製造工程を示す断面図
【図2】(a)〜(c)本発明のセラミック多層基板の接着層の説明図
【図3】(a)〜(d)本発明のセラミックグリーンシートを示す説明図
【図4】(a)〜(f)従来のセラミック多層基板の製造方法を示す断面図
【符号の説明】
11 セラミックグリーンシート
12 ビア導体
13 導体パターン
14 積層体
15 焼結セラミック基板
16 接着層
17 剥離部
18 多層部の厚み
19 クラック
【発明の属する技術分野】
本発明はパソコンや携帯電話などの小型部品として使用されるセラミック多層基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のセラミック多層基板の製造方法としては図4に示す方法がある。
【0003】
図4(a)〜(f)は従来のセラミック多層基板の製造方法を示す断面図である。図4(a)に示すように焼結セラミック基板1の上に熱可塑性樹脂を主成分とする接着層2を形成する。次に図4(b)に示すように接着層2の上に導体ペーストを用いてスクリーン印刷により導体パターン3を形成する。そして図4(c)に示すように導体パターン3の上に未焼結セラミックグリーンシート4を積層して加熱および加圧することにより接着層2を介して焼結セラミック基板1と仮固定する。さらに図4(d)に示すように未焼結セラミックグリーンシート4の上に導体ペーストをスクリーン印刷により導体パターン5を形成する。次に図4(e)に示すように未焼結セラミックグリーンシート6を加熱および加圧して未焼結セラミックグリーンシート4と仮固定する。次に図4(f)に示すように焼結セラミック基板1の上に形成された未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体を仮固定した状態で脱バインダーおよび焼成を行い、焼結セラミック基板1の上にセラミックグリーンシートの積層体が接合してセラミック多層基板を形成する。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−353623号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のセラミック多層基板の製造方法では、焼結セラミック基板1の上に未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体を接着層2を介して仮固定して脱バイ及び焼成した場合、未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体の焼成時に起きる焼成収縮による応力が発生するが未焼結セラミックグリーンシート4,6の厚みが、約300μm以下では、焼成収縮の応力が発生しても、焼結セラミック基板1と未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体の接合性は良好であった。しかし前記未焼結セラミックグリーンシート4,6の厚みが約300μmを超えると、焼成収縮による応力が増加するために、焼結セラミック基板1と未焼結セラミックグリーンシート4,6の積層体の接合性が悪化し、未焼結セラミックグリーンシート4,6と焼結セラミック基板1との接合面の一部に剥離が発生する問題点があった。
【0007】
また、未焼結セラミックグリーンシート4,6の厚みが制限されるために、高積層化によるセラミック多層基板の高密度化が困難である。
【0008】
本発明は高積層化を実現し、かつ低コストのセラミック多層基板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明は、焼結セラミック基板と、この焼結セラミック基板上に形成する接着層としての有機金属材料を含む熱可塑性樹脂材料と、この接着層上に形成するセラミックグリーンシートの積層体とからなり、脱バインダーおよび焼成により前記焼結セラミック基板と積層体とを金属酸化物で接合したセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、焼結セラミック基板をセラミックグリーンシートとした請求項1に記載のセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、焼結セラミック基板上に有機金属材料を含有する熱可塑性樹脂材料からなる接着層を形成する工程と、この接着層上にセラミックグリーンシートの積層体を加熱および加圧して接着する工程と、前記セラミックグリーンシートが焼結できる温度から焼結セラミック基板の耐熱温度以下の範囲で脱バインダーおよび焼成する工程とからなるセラミック多層基板の製造方法であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、有機金属材料を珪素、ホウ素、チタン、ビスマス、銅、亜鉛の少なくとも1種類とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、熱可塑性樹脂材料の有機金属材料の含有量を1wt%以上〜20wt%以下とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、熱可塑性樹脂の溶解効果と有機金属材料の反応性効果により接着力が向上する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、熱可塑性樹脂材料にアクリル樹脂、ブチラール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂の少なくとも1種類以上含むようにした請求項3に記のセラミック多層基板の製造方法であり、加熱および加圧によりセラミックグリーンシートの溶解性が促進されるため、接着力が向上する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、接着層の厚みを0.1μm以上6μm以下の範囲とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、脱バインダーおよび焼成においてセラミックグリーンシートの溶解拡散時にセラミックグリーンシートの拡散量がセラミック基板側に多く到達することができるため、接着力が向上する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、焼結セラミック基板をセラミックグリーンシートとした請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法であり、有機金属材料の反応によりセラミックグリーンシートと間の界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1(a)〜(e)は本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の製造工程を示す断面図である。
【0020】
以下、図1を用いて概略の製造工程について説明する。
【0021】
図1(a)に示すように、セラミックグリーンシート11にパンチャー装置などを用いて貫通孔を形成して導体ペーストを充填してビア導体12を形成する。そして図1(b)に示すように、導体パターン13をスクリーン印刷等で形成する。次に図1(c)に示すように、ビア導体12や導体パターン13を形成したセラミックグリーンシート11を複数枚積層し、加熱および加圧することにより積層体14を形成する。また図1(d)に示すように、焼結セラミック基板15と積層体14とを接着層16を介して加熱および加圧して仮固定をする。そして図1(e)に示すように、脱バインダーおよび焼成を行う。
【0022】
以上のように導体パターン13の寸法精度を向上させるために導体パターン13、セラミックグリーンシート11を焼結セラミック基板15に拘束させる接着層16を形成することによりセラミックグリーンシート11の面内方向の焼成収縮が抑制され、焼結セラミック基板15と積層体14との界面において接合不良のない良好な状態が得られる。なお焼結セラミック基板15の両面に積層体14を形成する場合も同様の効果が得られる。
【0023】
以下、本発明のセラミック多層基板の各要素を構成する材料および製造工程で使用する装置について説明する。セラミックグリーンシート11は原料粉にアルミナ粉(またはジルコニア粉)とガラス粉とを混合したガラスセラミック粉体、有機バインダーにブチラール樹脂やアクリル樹脂等を用いて可塑剤を添加し、混練してスラリー状にしたものをドクターブレード法等によってシート状に成形したものである。またセラミックグリーンシート11の厚みを50〜300μmとした。
【0024】
導体パターン13にAg系ペースト(空気焼成工程用のAg単独、Ag−PdペーストやAg−Ptペーストなど)またはAu系ペースト(Au単独、Au−Pdペースト、Au−Ptペースト)などの貴金属ペーストを用いてスクリーン印刷法や凹版転写法や感光性厚膜ペーストのフォトリソ法などによりセラミックグリーンシート11の上や接着層16の上に形成する。
【0025】
焼結セラミック基板15にアルミナ基板、ガラスセラミック基板、フォルステライト基板、ムライト基板、フェライト基板などを用いてかつセラミックグリーンシート11の焼結温度以上の耐熱性を有し、セラミックグリーンシート11の焼成時に焼結セラミック基板15と接合可能な材料である。
【0026】
接着層16はブチラール樹脂、アクリル樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂などの熱可塑性樹脂と珪素、ホウ素、チタン、ビスマスや銅や亜鉛などの有機金属材料を混合したものである。また有機金属材料にはセラミックグリーンシート11と焼結セラミック基板15とを焼成して接合させる時に接合力が向上する材料を使用する。
【0027】
また、有機金属材料に金属含有率1〜30wt%のものを使用した。この接着層16は熱可塑性樹脂と有機金属材料をトルエン、アセトン、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの有機溶剤で溶かした状態のものをディップやスプレーなどの方式を用いて形成した。
【0028】
以下に、セラミック多層基板の製造工程について詳細に説明する。
【0029】
図1(a)に示すように、セラミックグリーンシート11に打ち抜き金型、パンチャー装置などを用いて貫通孔を形成し、導体ペーストを充填してビア導体12を形成する。さらに図1(b)に示すように、導体パターン13をスクリーン印刷等で形成する。導体パターン13の厚みをセラミックグリーンシート11の厚みの20%以内になるように調整する。次に図1(c)に示すように、ビア導体12や導体パターン13を形成したセラミックグリーンシート11を所定の回路になるように複数枚を積層して加熱および加圧することで一体化させて積層体14を形成する。
【0030】
加熱および加圧工程において、加熱条件を温度50〜100℃、加圧条件を圧力50〜300kg/cm2の範囲内で調整し、保持時間を2〜5分程度とした。セラミックグリーンシート11の間の接合力を得るため、温度50℃以上、圧力50kg/cm2以上が必要である。さらに加熱温度の上限が温度100℃を超えるとセラミックグリーンシート11の成分である可塑剤の蒸発量が増大してセラミックグリーンシート11の柔軟性が劣化し、セラミックグリーンシート11の間の接合不良やセラミックグリーンシート11自体にクラックが発生する問題が生じるために温度を100℃以下にした。さらに加圧条件の上限をセラミックグリーンシート11の間の加熱および加圧接合によるセラミックグリーンシート11の平面方向の寸法伸びを考慮すると圧力が300kg/cm2以内が望ましい。
【0031】
また、図1(d)に示すように焼結セラミック基板15と積層体14とを接着層16を介して加熱および加圧により仮固定をする。接着層16は、焼結セラミック基板15の少なくとも1面にディップやスプレーなどの方式またはロールコーターやスピナーなどの塗布装置を用いて形成される。焼結セラミック基板15の全面に形成してもよい。また接着層16をフィルム上にコートし、フィルム上に形成した接着層16の膜を焼結セラミック基板15またはセラミックグリーンシート11の少なくとも片方に加圧転写してもよい。また接着層16の厚みを0.1μm以上6μm以下とした。
【0032】
加熱および加圧工程において、加熱条件を温度50〜100℃、加圧条件を圧力1〜300kg/cm2の範囲内で調整し、保持時間を2〜5分程度とした。加熱および加圧条件としては、セラミックグリーンシート11の積層体14と焼結セラミック基板15の接合性から判断すると、脱バインダーおよび焼成後の接合部の状態から加圧量が大きいほど接合状態が良くなる。低加圧条件でセラミックグリーンシート11の欠け等の異物が付着して接合部にある場合、接合状態が悪くなるために加圧量は10kg/cm2以上が望ましい。また加圧量が大きくなると、焼結セラミック基板15の割れが発生するために、加圧条件を焼結セラミック基板15が割れない程度に設定する必要がある。
【0033】
次に図1(e)に示すように、脱バインダーおよび焼成を行う。脱バインダー条件を昇温速度20℃/時間以上70℃/時間以下、ピーク温度400℃以上550℃以下で2時間〜5時間保持する。焼成条件を昇温速度10℃/分以上80℃/分以下、ピーク温度850℃以上920℃以下で10分〜20分間程度行った。また焼成工程において、セラミックグリーンシート11の材料により焼成後の緻密な焼結状態が得られるように、昇温速度、ピーク温度およびピーク温度保持時間を所定範囲で行う。接着層16の成分である熱可塑性樹脂に添加した有機金属材料に珪素、ホウ素、チタン、ビスマス、銅、亜鉛などを用いることで焼成工程において熱可塑性樹脂の消失温度以上で有機金属材料が金属に分解するため、セラミックグリーンシート11の焼成収縮を抑制する効果およびセラミックグリーンシート11や焼結セラミック基板15の無機材料と有機金属材料の反応による効果によりセラミックグリーンシート11と焼結セラミック基板15との界面で接合層を形成することで接着力が向上する。その結果焼結セラミック基板15の上に形成したビア導体12や導体パターン13を内層するセラミックグリーンシート11の積層体14は焼成時の焼成収縮時に接着層16の効果により積層対14の面内方向にはほとんど寸法変化がなく焼成され、厚み方向のみ焼成収縮し、焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との界面での部分的な剥離現象も見られない良好な接合が可能となる。
【0034】
本発明を用いることにより面内方向の寸法精度が非常に良好なセラミック多層回路基板を製造することができる。
【0035】
本発明の実施の形態1における効果について、図を用いて説明する。図2(a)〜(c)は本発明のセラミック多層基板の接着層の説明図である。
【0036】
図2(a)に示すように焼結セラミック基板15の上に接着層16を形成して接着層16の上に導体パターン13を形成する。またセラミックグリーンシート11の上に導体パターン13を形成し、さらにセラミックグリーンシート11を加熱および加圧して一体化し、導体パターン13を形成した焼結セラミック基板15の接着層16を介して加熱および加圧し、仮接着させた導体2層構造のサンプルである。
【0037】
図2(b),(c)は図2(a)の脱バインダーおよび焼成後の状態を示す。図2(b)に焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合状態が悪いために部分的な剥離部17にクラック19が発生した様子を示す。また図2(c)に焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11の接合状態が良好な様子を示す。
【0038】
上記の結果について(表1)を用いて説明する。
【0039】
接着層16にアクリル樹脂と有機金属材料とを混合して実験を行った。また有機金属材料に珪素、ホウ素、チタン、ビスマスや銅や亜鉛を使用し、それぞれの有機金属材料の金属含有率を(表1)に示す。接着層16の厚みを0.1μm以上1μm以内の範囲で調整した。また接着層16にアクリル樹脂と有機金属材料の混合物を使用して有機金属材料の含有率による焼成後の焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合状態を3段階で評価した。○は接合状態が良好、△は部分的な剥離部17、×は剥離部17の面積比率が全体の30%以上である。セラミックグリーンシート11を厚み300μm、導体2層構造のサンプルとし、セラミックグリーンシート11の2層がトータル厚みで600μmのものを作成した。
【0040】
【表1】
【0041】
(表1)の結果より有機金属材料の含有率がゼロの場合(アクリル樹脂のみ)では図2(b)に示すように、部分的な剥離部17が見られた。剥離部17のセラミックグリーンシート11は焼成収縮でクラック19を発生した。次に有機金属材料の含有率が1wt%以上20wt%範囲では図2(c)に示すように、セラミックグリーンシート11のトータル厚みが600μmでも良好な接合状態が得られた。次に有機金属材料の含有率を20wt%以上にすると接合状態が悪くなる傾向にあった。
【0042】
以上の結果からアクリル樹脂の単一の接着層16に比べて、有機金属材料を1wt%以上20wt%以下の範囲ではセラミックグリーンシート11の厚みが600μmでも非常に良好な接合を得ることができた。このように有機金属材料以外でも上記の性質のあるものであれば同様な効果が得られる。ただし有機金属材料を30wt%を超えて添加すると接合状態は悪くなる。有機金属材料が30wt%を超えて添加すると加熱および加圧接合時にアクリル樹脂の熱可塑性樹脂によるセラミックグリーンシート11の成分の溶解拡散性が劣化するため、接合力が低くなったと考えられる。このように有機金属材料による焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との焼成後の接合力が向上し、かつアクリル樹脂などの熱可塑性のセラミックグリーンシート11への溶解拡散性の効果が得られる範囲内で接合力が向上する。
【0043】
また、接着層16の成分として低融点ガラスフリットを添加する方法もあるが、ガラスの粒径が大きいと接着層16の厚みが厚くなり、セラミックグリーンシート11の多層部14の仮接合時の加熱および加圧工程で寸法が伸びる。またガラスの粒径を小さくすると分散性が悪くなり容易に伸ばすことができない。しかし有機金属材料では分散が容易で粉体を含まないので接着層が薄くできるために、焼結セラミック基板15の表面粗さによるセラミックグリーンシート11の多層部14の伸びが低減できる。
【0044】
熱可塑性樹脂材料のアクリル樹脂について説明したがブチラール樹脂や脂環族飽和炭化樹脂等も同様な結果が得られた。また熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂やポリウレタン系樹脂を接着剤とした場合、セラミックグリーンシート11と焼結セラミック基板15との加熱および加圧工程での仮接合時に接着層16が軟化しにくいため接合状態が悪かった。この結果から接着剤としては熱可塑性樹脂材料が必要となる。
【0045】
次に、接着層の厚みの効果について(表2)を用いて説明する。接着層16の厚みを0.1μm、0.5μm、1.6μm、3.2μm、6.0μm、7.8μmの場合について、脱バインダーおよび焼成後の焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合性について評価を行った。この結果を(表2)に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
接着層16の熱可塑性樹脂材料にアクリル樹脂を使用し、有機金属材料に珪素を含有量1〜5wt%のものを用いた。接着層16の厚みが0.1μm以上6μm以下の場合、焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合力は良好であったが厚みが7.8μm程度になると焼結セラミック基板15とセラミックグリーンシート11との接合面に部分的な剥離部17が発生した。これは熱可塑性樹脂材料にブチラール樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂、有機金属材料にホウ素、チタン、ビスマス、銅、亜鉛などに代えても同様な効果が得られた。
【0048】
以上の結果から、脱バインダーおよび焼成においてセラミックグリーンシート11の溶解拡散時にセラミックグリーンシート11の拡散量がセラミック基板15の側に多く到達することができるため接着力が向上する。よって接着層16の厚み範囲は0.1μm以上6μm以下が適性範囲である。
【0049】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2において図を用いて説明する。
【0050】
図3(a)〜(d)は本発明のセラミックグリーンシートを示す説明図である。
【0051】
セラミックグリーンシート11を用いたセラミックグリーンシート11の多層における課題であった脱バインダーおよび焼成工程で発生するデラミネーションの改善について説明する。
【0052】
図3(a)に示すように、セラミックグリーンシート11の上に導体パターン13を形成し、所定の回路になるように複数枚積層して加熱および加圧することで一体化する。この場合、セラミックグリーンシート11の成分である樹脂材料や可塑剤などが少ないとセラミックグリーンシート11の間の接合性が悪くなり、剥離部17が発生した、図3(b)に示すように脱バインダーおよび焼成した状態であり、剥離部17は焼成しても剥離部17で残存する。そこで図3(c)に示すようにセラミックグリーンシート11の上に接着剤16を形成し、所定の回路になるように複数枚積層して、加熱および加圧することで一体化することにより、加熱および加圧したときの接合不良が減少する。さらに図3(d)に示すように、脱バインダーおよび焼成しても接合不良部がなくなる。
【0053】
以上の結果により本発明の接着剤を用いることによりセラミックグリーンシート11の多層で発生するデラミネーションの現象を軽減することができた。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本発明は、焼結セラミック基板と、この焼結セラミック基板上に形成する接着層としての有機金属材料を含む熱可塑性樹脂材料と、この接着層上に形成するセラミックグリーンシートの積層体とからなり、脱バインダーおよび焼成により前記焼結セラミック基板と積層体とを金属酸化物で接合したセラミック多層基板であり、焼結セラミック基板の無機材料と有機金属材料の反応により焼結セラミック基板とセラミックグリーンシートとの界面に接合層を形成するため接着力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の製造工程を示す断面図
【図2】(a)〜(c)本発明のセラミック多層基板の接着層の説明図
【図3】(a)〜(d)本発明のセラミックグリーンシートを示す説明図
【図4】(a)〜(f)従来のセラミック多層基板の製造方法を示す断面図
【符号の説明】
11 セラミックグリーンシート
12 ビア導体
13 導体パターン
14 積層体
15 焼結セラミック基板
16 接着層
17 剥離部
18 多層部の厚み
19 クラック
Claims (8)
- 焼結セラミック基板と、この焼結セラミック基板上に形成する接着層としての有機金属材料を含む熱可塑性樹脂材料と、この接着層上に形成するセラミックグリーンシートの積層体とからなり、脱バインダーおよび焼成により前記焼結セラミック基板と積層体とを金属酸化物で接合したセラミック多層基板。
- 焼結セラミック基板をセラミックグリーンシートとした請求項1に記載のセラミック多層基板。
- 焼結セラミック基板上に有機金属材料を含有する熱可塑性樹脂材料からなる接着層を形成する工程と、この接着層上にセラミックグリーンシートの積層体を加熱および加圧して接着する工程と、前記セラミックグリーンシートが焼結できる温度から焼結セラミック基板の耐熱温度以下の範囲で脱バインダーおよび焼成する工程とからなるセラミック多層基板の製造方法。
- 有機金属材料を珪素、ホウ素、チタン、ビスマス、銅、亜鉛の少なくとも1種類とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法。
- 熱可塑性樹脂材料の有機金属材料の含有量を1wt%以上〜20wt%以下とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法。
- 熱可塑性樹脂材料にアクリル樹脂、ブチラール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂の少なくとも1種類以上含むようにした請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法。
- 接着層の厚みを0.1μm以上6μm以下の範囲とする請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法。
- 焼結セラミック基板をセラミックグリーンシートとした請求項3に記載のセラミック多層基板の製造方法。
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JP2003197559A JP2005038916A (ja) | 2003-07-16 | 2003-07-16 | セラミック多層基板およびその製造方法 |
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-
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- 2003-07-16 JP JP2003197559A patent/JP2005038916A/ja not_active Withdrawn
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