JP2005035959A - 無水マレイン酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 無水マレイン酸捕集器におけるタール分や析出物による閉塞物の発生を抑制し、長期にわたる安定した操業を可能とし、かつ、製品の品質を高く維持することが可能な無水マレイン酸の製造方法を提供する。
【解決手段】 炭化水素の接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸含有ガスを、捕集管を複数有する竪型多管式捕集器の下部から該捕集管内に供給し、該捕集管の下部から上部へ該ガスを流通させ、該ガス中の無水マレイン酸を該捕集管内で凝縮させて捕集する工程を含む、無水マレイン酸の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭化水素の接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸含有ガスに含まれる無水マレイン酸を凝縮捕集する工程を含む無水マレイン酸の製造方法に関する。また本発明は、不純物による閉塞が防止でき、長期間安定して連続運転可能な無水マレイン酸の製造方法に関する。
無水マレイン酸は、n−ブタンなどの炭素数4以上の脂肪族炭化水素やベンゼン等を接触気相酸化反応器で酸化し、得られる無水マレイン酸やマレイン酸を含有するガスからマレイン酸を回収して脱水等により無水マレイン酸にする方法によって製造されている。また、ナフタリンやo−キシレンの接触気相酸化反応によって無水フタル酸を製造する際に排出される排ガスの洗浄水にも相当量のマレイン酸が含まれることから、該洗浄水を回収しこれを同様にして無水マレイン酸とする方法によっても製造されている。
一般に、ベンゼン等の炭化水素の接触気相酸化反応により無水マレイン酸を製造する場合には、接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸をそのまま精製する方法や、無水マレイン酸を一旦水溶液に捕集してマレイン酸含有水溶液を調製し、これを脱水してマレイン酸を無水マレイン酸に再転化して製造する方法等が知られている。
ここで、上記のような接触気相酸化反応により無水マレイン酸を製造する場合には、反応器において生成した無水マレイン酸は気体として無水マレイン酸含有ガス中に含まれている。したがって、次いで無水マレイン酸捕集器において気体状の無水マレイン酸を凝縮液化させ、凝縮粗無水マレイン酸として得るのが一般的である。
しかしながら、この方法によると、無水マレイン酸捕集器の入口付近や該捕集器の捕集管の内部等にマレイン酸やフタル酸、タール分が凝縮付着し、最終的に捕集器を閉塞するに至る場合がある。この理由は以下のように考えられる。すなわち、フタル酸やタール分は無水マレイン酸よりも沸点が高いために、捕集器の入口付近においてはこのフタル酸やタール分がまず凝縮し、一部析出して付着する。また、この入口付近では無水マレイン酸の凝縮はわずかであるために、付着したフタル酸やタール分が液化した無水マレイン酸により洗い流されるということがなく、長期間の運転によりフタル酸やタール分が堆積して閉塞が発生するのである。一方、フタル酸やタール分の付着した捕集器の内壁は粗な状態を呈するため、凝縮した無水マレイン酸は壁面を流下するのに時間がかかることとなる。このように無水マレイン酸が捕集器内に滞留する時間が長くなる結果、無水マレイン酸は無水マレイン酸含有ガス中に含まれている水分と反応することにより有水化してマレイン酸となる。有水マレイン酸の無水マレイン酸に対する溶解度は2〜5質量%程度であるため、これ以上に生成した有水マレイン酸は捕集器内において析出し、閉塞が発生するのである。さらに、場合によっては有水化したマレイン酸がさらに溶解度の低いフマル酸へと転位し、捕集器内に堆積して閉塞が発生する場合もある。
上記のような捕集器内におけるタール分やフタル酸、マレイン酸、フマル酸の堆積を防止するため、従来種々の技術が提案されている。
例えば、無水マレイン酸を捕集するために、横型に設置されたチャンネルノズルを軸に回転する冷却管を備えてなるコンデンサを用いることを特徴とする無水マレイン酸の製造法が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。該文献1の方法は、チャンネルノズルを軸に回転する冷却管を備えたコンデンサを使用し、管内に冷却水を流通させ、該コンデンサの胴内に無水マレイン酸含有ガスを供給して胴内および冷却管外面において無水マレイン酸を凝縮させる。また該文献1の方法によれば、ガス冷却管がコンデンサ内で回転しているため、凝縮した無水マレイン酸により、入口付近において凝縮付着しかけているタール分を洗い流すことができ、入口付近における閉塞現象を伴うことなく、一定純度の無水マレイン酸を採取することができるとしている。しかし該文献1の方法においては、管外面および胴内面で冷却凝縮する管外凝縮であるため、充分な凝縮液による洗浄効果は低く、冷却管と他の冷却管との間や胴内面に付着した凝縮無水マレイン酸が条件によっては縮合してタール分が生成する。また、フタル酸、マレイン酸およびフマル酸も条件により副生する。そして付着したタール分や、フタル酸、マレイン酸、フマル酸を完全には除去することができない。すなわち、凝縮無水マレイン酸は回転による遠心力で外部方向に流れ出ようとするため、胴内面にも凝縮無水マレイン酸が付着してタール分が生成する。しかし、胴内面や、冷却管と他の冷却管との間に生成したタール分等は、すべて凝縮無水マレイン酸により洗浄されるわけではなく、閉塞が発生する場合がある。また、冷却管を回転させるために複雑な特殊機器を使用し、さらに動力を得るためのコストも必要とされることから工業的には非常に不経済である。なお該文献1の方法では、捕集器(コンデンサ)として多管型コンデンサを使用しているが、本発明のような竪型ではなく横型であり、また回転させる点で本発明とは異なるものである。
また、無水マレイン酸含有ガスより凝縮粗無水マレイン酸を捕集するに際して、反応器出口ガス中の水分の露点を35℃以下に保ち、さらに捕集器の冷却温度を当該ガスの水分の露点より5〜15℃高く保つことを特徴とする無水マレイン酸の捕集方法が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。該文献2の方法によれば、捕集器の冷却温度を無水マレイン酸含有ガスの水分の露点より少なくとも5℃以上高く保つことにより、凝縮粗無水マレイン酸中の有水マレイン酸濃度を5%以下に抑えることができ、捕集器内での堆積および閉塞の発生も抑制されるため連続運転が可能であると記載されている。しかも、可能な限り冷却され得るために無水マレイン酸の捕集率を向上させることも可能であるとしている。しかし該文献2の方法では、反応器出口ガス中の水分の露点を35℃以下に保つために水分を除去するための除湿器等を別途設置する必要がある。また、該文献2の方法では捕集器の冷却温度をガス中の水分の露点より5〜15℃高い程度としているが、捕集器の冷却温度をこの範囲に設定した場合であっても有水マレイン酸およびフマル酸の生成を完全に抑制することは困難であり、またアルデヒド類およびキノン類が縮合することにより縮合物が生成する場合もある。なお該文献2の方法では捕集器として切替式冷却捕集器を使用しているが、竪型多管式についての記載は全くなされていない。
さらに、無水マレイン酸含有ガスを冷却し、無水マレイン酸含有ガスから液体無水マレイン酸を遠心分離して、その分離した無水マレイン酸を実質的に固体マレイン酸を含まない液体の形で取り出すことから成る無水マレイン酸を回収する方法が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。該文献3の方法によれば、無水マレイン酸含有ガスから液体無水マレイン酸を遠心分離することで反応器の流出物中の無水マレイン酸の約30〜60%が液状の無水マレイン酸として取り出され、該無水マレイン酸は約2%以上のマレイン酸を含有することはなく、これにより当該凝集温度において不溶のマレイン酸を実質的に含むことはないとしている。しかし該文献3の方法では遠心分離するための装置が別途必要であり、コストが増大する。また該方法により連続運転可能な期間は4〜6週間程度であり、さらに長期間の連続運転は装置内に閉塞が生じるために困難である。
また、装置に付着した粗製マレイン酸およびタールから成る沈積物を液状の無水マレイン酸と接触させ、それを溶解し、生成溶液を除去することを特徴とする上記沈積物の付着した装置の清浄化方法が開示されている(例えば、特許文献4を参照。)。該文献4によれば、沈積物の付着した装置を清浄化するための具体的な方法は、沈積物の付着したコンデンサを操作系からはずし、沈積物を100℃の融解無水マレイン酸で浸出するというものである。該文献4の方法によれば、比較的簡単かつ迅速にコンデンサを清掃でき時間的損失を最小に止め得るとしている。しかし、沈積物の付着した装置を一旦操作系からはずし、該沈積物を融解無水マレイン酸に溶解後、再び該装置を操作系に戻すという作業は極めて煩雑なものである。よってこの方法では、装置を一旦停止して実施せざるを得ないため、生産量のロス等を考慮すると、工業的には非常に不利である。また、該文献4には、一旦装置に付着した沈積物を除去する方法については記載されているが、沈積物の付着を防止するための方法については全く記載されていない。
さらに、逆昇華性物質を捕集するに際して、多管式捕集器を用いる捕集方法が開示されている(例えば、特許文献5を参照。)。ここで、逆昇華性物質とは、気相から固相に変化する昇華性物質をいい、無水マレイン酸も逆昇華性物質である。該文献5においても、該文献に記載の方法が適用可能な逆昇華性物質に無水マレイン酸が含まれる旨が記載されている。しかし、該文献5の方法は専ら無水ピロメリット酸(PMDA)を対象とするものであり、実施例に記載されている逆昇華性物質もPMDAのみである。また、該文献5においては、逆昇華性物質を昇華状態で固体状態で捕集する旨の記載はあるが、液状で凝縮捕集すること、または液状で凝縮捕集するのに好ましい具体的条件等の記載は全くなされていない。さらに、該文献5の方法においては、昇華ガスの捕集器内における分散性を良くし、捕集効率を向上させるため、用いられる多管式捕集器に昇華気流用の邪魔板を設置する旨が記載されている。よって該文献5の方法を無水マレイン酸にそのまま適用した場合には、該邪魔板の存在により液状の無水マレイン酸は閉塞を起こしてしまうと考えられる。
以上のように、無水マレイン酸捕集器におけるマレイン酸やフマル酸の堆積や、その結果生じる装置内の閉塞を防止するための手段としては、従来知られている技術では充分とはいえないのが現状である。そこで、長期にわたり連続稼動ができ、かつ品質の安定した無水マレイン酸を製造することが可能な無水マレイン酸の製造方法を実現するためには、無水マレイン酸捕集工程における工程条件のより一層の改善が望まれている。
特公昭47−38424号公報 特開昭48−19516号公報 特公昭39−15817号公報 特公昭38−2510号公報 特開2002−143604号公報
そこで本発明が目的とするところは、無水マレイン酸捕集器におけるタール分や析出物による閉塞物の発生を抑制し、長期にわたる安定した操業を可能とし、かつ、製品の品質を高く維持することが可能な無水マレイン酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的に鑑み鋭意研究を重ねた結果、無水マレイン酸の製造における無水マレイン酸捕集工程において、捕集管を複数有する竪型多管式捕集器を使用し、該捕集器の下部から該捕集管内に無水マレイン酸含有ガスを供給して該ガスを下部から上部へ流通させ、該ガス中の無水マレイン酸を該捕集管内で凝縮させて捕集することで、該捕集器内におけるタール分や析出物による閉塞の発生を効果的に防止できることを見出した。また本発明者らは、該捕集工程における凝縮液接触時間および凝縮液流量、該捕集器に内蔵される捕集管の内径、捕集器に供給される無水マレイン酸含有ガスの温度、捕集管内のガス線速、該ガス中水分濃度、捕集器出口ガス温度等を所定の範囲の値とすることで、捕集器内における閉塞の発生をさらに効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、無水マレイン酸捕集器におけるタール分や析出物等の装置内への堆積を効果的に防止でき、その結果、製造プロセス全体における装置内の閉塞が抑制され、長期間安定して稼動できる無水マレイン酸の製造方法が提供される。また、製品中への不純物の混入もより一層抑制されることから、高品質の製品を提供することが可能な無水マレイン酸の製造方法が提供される。
本発明は、炭化水素の接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸含有ガスを、捕集管を複数有する竪型多管式捕集器の下部から該捕集管内に供給し、該捕集管の下部から上部へ該ガスを流通させ、該ガス中の無水マレイン酸を該捕集管内で凝縮させて捕集する工程を含む、無水マレイン酸の製造方法である。
従来、無水マレイン酸の製造方法は各種知られているが、その一つに接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸含有ガスを無水マレイン酸捕集器において冷却し、該ガス中に含まれる無水マレイン酸を凝縮させて凝縮捕集する工程を含む方法がある。従来、かかる方法により無水マレイン酸を製造する場合には、接触気相酸化反応において副生したタール分や、無水マレイン酸が有水化することで生成したマレイン酸、該マレイン酸が転位することで生成したフマル酸等の不純物が前記捕集器内において堆積し、装置を閉塞するという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決する目的でなされたものであり、凝縮捕集工程において竪型多管式捕集器を使用し、接触気相酸化反応により生成した無水マレイン酸含有水溶液を該捕集器の下部から該捕集管内に供給し、該捕集管の下部から上部へ該ガスを流通させ、該ガス中の無水マレイン酸を該捕集管内で凝縮させて捕集する点に特徴がある。
ここで竪型多管式捕集器とは、捕集器内部の上管板と下管板との間に複数の捕集管が鉛直方向または30度以上傾斜方向に設けられてなり、好ましくは、上管板上部に溜まったガス類を排出するためのベント管と、下管板下部に堆積した凝縮液等を排出するためのドレン管とを有するものである。なお、傾斜方向は、捕集管が水平方向に設けられてなる場合を0度とし、鉛直方向に設けられてなる場合を90度として示される。よって本発明に用いられる竪型多管式捕集器において、捕集管は30〜90度傾斜方向に設けられていればよい。本発明に用いられる竪型多管式捕集器は、上記の構成を有していればその他の構成は特に制限されず、一般的な捕集器が有する冷却装置、邪魔板、長手邪魔板、緩衝板、仕切り室胴フランジ、胴ふた側フランジ、胴側ノズル、遊胴頭ふた、固定棒およびスペーサ、ガス抜き座、ドレン抜き座、計器座、支持脚、つり金具、液面計座、伸縮継手熱膨張対策等を有していてもよい。
本発明においては、上記のような態様とすることで、該捕集器におけるタール分や析出物等の装置内への堆積を効果的に防止することができる。これは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、該捕集器の下部においては、供給された無水マレイン酸含有ガス中の各成分のうち前記の不純物のような高沸点物質がまず凝縮し、捕集管の内壁に付着する。その結果、該捕集管の上部ほど凝縮液中の高沸点物質濃度が低くなり、一方、無水マレイン酸の濃度は高くなる。したがって該捕集管の上部においてはほぼ純粋な無水マレイン酸が凝縮して液化し、該捕集管の内壁を流下することとなる。これにより、該捕集管の下部に付着した前記高沸点物質が洗い流され、捕集管内壁へ堆積することがなくなるため、最終的に装置の閉塞が防止されるのである。これに対し、接触気相酸化反応により生成した無水マレイン酸含有ガスを無水マレイン酸捕集器の上部から供給して、該捕集器中を上部から下部へ流通させる場合を考える。かかる場合には本発明とは逆に、捕集管の上部において高沸点物質であるタール分等が凝縮して付着堆積し、一方無水マレイン酸は主に捕集管の下部において凝縮することとなる。その結果、捕集管の上部に堆積した高沸点物質が液化した無水マレイン酸によって洗い流されることはほとんどなく、最終的には捕集管において閉塞が発生すると考えられる。
本発明では、無水マレイン酸捕集器(10)において凝縮捕集される無水マレイン酸の捕集率は、該捕集器(10)の捕集管における凝縮液接触時間や、捕集管の単位横幅あたりの凝縮液流量によっても影響を受ける。なお、凝縮液接触時間とは、下記式(1)
Figure 2005035959
で定義されるものである。ここで捕集管1本あたり凝縮液接触流量は、本発明により無水マレイン酸を凝縮捕集する際に捕集管内壁に形成される凝縮液膜の厚みと、捕集管内壁の面積とから算出される推計値である。本発明においては、捕集管の下部において粘度の高い高沸点物質が凝縮し、一方管上部においては低沸点で粘度の低い無水マレイン酸等が凝縮する。ここで、捕集管内壁に形成される凝縮液膜の厚みは、凝縮液流量、管内径、凝縮液の比重および粘度等から算出され、管下部ほど厚く、上部ほど薄いと考えられる。一方、捕集管1本あたり凝縮液流量は、捕集管1本から1分間に流下する凝縮液の堆積を実測することにより得られる値である。
以上より、本発明において凝縮液接触時間とは、凝縮液が捕集管内を通過する際の平均通過時間に相当するものである。本発明においては、前記凝縮液接触時間は好ましくは5〜30分、より好ましくは7〜25分、特に好ましくは10〜20分である。この凝縮液接触時間が5分未満では、凝縮液が無水マレイン酸捕集器(10)中を通過する時間が短いこととなるため、捕集管内部に乾き部分が発生する場合があり、析出物が堆積するおそれがある。また、捕集効率も低下するため好ましくない。一方、凝縮液接触時間が30分を超えると、供給された無水マレイン酸含有ガス(5)の捕集管内において冷却される時間が長くなるため、水蒸気の凝縮も併せて起こりやすくなり、無水マレイン酸の水和反応が進行する結果、有水マレイン酸やフマル酸の生成量が増大し、捕集管内に付着堆積して装置内に閉塞が発生する原因となる。
次に捕集管の単位横幅あたりの凝縮液流量とは、下記式(2)
Figure 2005035959
によって定義され、捕集管内壁の濡れ度合いに相当するものである。本発明においては、この捕集管の単位横幅あたりの凝縮液流量が好ましくは2.0〜7.0kg/h・m、より好ましくは2.0〜6.0kg/h・m、特に好ましくは2.0〜5.0kg/h・mである。この値が2.0kg/h・m未満では、捕集管内部における濡れ液量が充分に確保されない結果、凝縮液が均一に流れず、均一な液膜を形成することが困難となり、捕集管の内壁において液切れ(乾き)部分が発生し、有水マレイン酸やフマル酸の析出物が生成する場合がある。一方、この値が7.0kg/h・mを超えると、主に高沸点物質からなる飛沫分のうち捕集器(10)出口ガス中に含まれる量が増大する結果、次工程以降に供給される高沸点物質量が増加して装置内において閉塞が発生する原因となる。また、このような条件下においては、凝縮せずにガスのまま捕集塔を通過して次工程に移行する無水マレイン酸が増加するため、該捕集器(10)における無水マレイン酸の捕集率が低下する結果となる。さらに、圧損の増加により、ブロワー能力を大きくする必要があり、不経済である。
また本発明においては、竪型多管式捕集器が捕集器として用いられ、該捕集器に設置される捕集管の内部で無水マレイン酸を凝縮させて捕集する。ここで該捕集器は、好ましくは内径15〜100mm、より好ましくは20〜80mm、特に好ましくは25〜80mmの捕集管を複数内蔵するものである。該捕集管の内径が15mm未満では、該捕集管内壁への高沸点物質の堆積により極めて短時間で閉塞が発生する場合があり、圧損が上昇して装置を停止せざるを得なくなるおそれがある。一方、該捕集管の内径が100mmを超えると、捕集管内の濡れ液量を確保することが困難であり、該捕集管内において乾き部分が生じる結果、該部分において析出物が生成して堆積するおそれがある。また、捕集効率も低下するため好ましくない。
以下、本発明の無水マレイン酸の製造方法の好ましい態様の一例を、図1を用いて説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。なお、図1において、1は原料ガス、2は分子状酸素含有ガス、3は反応器、5は無水マレイン酸含有ガス、10は無水マレイン酸捕集器、11は凝縮粗無水マレイン酸、20は水捕集塔、21はリサイクル捕集水、23はマレイン酸含有水溶液、30は前濃縮装置、40は共沸脱水塔、41は共沸脱水塔留出ライン、42は粗無水マレイン酸、43は留出コンデンサ、50は油水分離槽、51は廃水、52は補給水、60は高沸点分離塔、61は蒸留残渣、70は低沸分離塔、80は精製塔、81は精製無水マレイン酸、90は溶媒回収塔、100は廃油燃焼装置である。
まず、原料ガス(1)を反応器(3)に供給して無水マレイン酸含有ガス(5)を得て、これを無水マレイン酸捕集器(10)に移送して該ガスに含まれる無水マレイン酸を凝縮捕集し、残部ガスを水捕集塔(20)で捕集水と気液接触させ該ガス中に含まれる無水マレイン酸を捕集水中に回収する。水捕集塔の塔底液は前濃縮装置(30)で水分の30〜60質量%を除去した後、共沸脱水塔(40)に供給する。該共沸脱水塔(40)には水捕集塔(20)で回収した無水マレイン酸も供給し、ここで脱水およびマレイン酸の無水化を行う。共沸脱水塔(40)の塔頂液には共沸溶媒と水とが含まれ、これを留出コンデンサ(43)で冷却後、油水分離槽(50)で共沸溶媒相と水相とに分離し、該共沸溶媒相は共沸脱水塔(40)へ還流し、一方、該水相は溶媒回収塔(90)に移送し、該溶媒回収塔(90)において、共沸溶媒を含む溶媒相と水相とを分離し、得られる水相を水捕集塔(20)の捕集水として使用する。共沸脱水塔(40)の塔底液は高沸点分離塔(60)および低沸分離塔(70)、精製塔(80)に順次供給して精製することで精製無水マレイン酸(81)を得る。
原料ガス(1)としては、接触気相酸化反応によってマレイン酸を生成するものであれば特に制限されず、無水マレイン酸を製造するために使用される公知の炭化水素が使用される。例えば、ベンゼンや、ブタン(n−ブタン)、ブテン類(1−ブテン、2−ブテン)、ブタジエン(1,3−ブタジエン)等の炭素数4以上の炭化水素、o−キシレン、もしくはナフタレンから選ばれる1種、またはこれらの2種以上の混合物が例示される。さらに、原料ガスとして、好ましくは1.0〜2.0モル%の濃度のベンゼンまたは2.0〜7.0モル%の濃度のブタンが用いられ、より好ましくは、1.2〜1.9モル%ベンゼンまたは3.0〜6.0モル%ブタンが用いられる。これらが好ましく用いられるのは、原料種およびガス濃度の相違によって副生物も相違するが、特にこれらが用いられる場合の副生物による閉塞物、特に縮合物の発生に、本発明の製造方法が効果的であるためである。特にベンゼンを原料とする場合には、無水マレイン酸の捕集時にタール分が生成しやすいため、より本発明の効果が得られる。なお、これら以外の物質を原料ガス(1)とする場合にも、本願の製造方法は適用される。
接触気相酸化反応器(3)には接触気相酸化反応用の触媒が充填されている。該触媒は、上記原料ガス(1)と接触してマレイン酸または無水マレイン酸を生成するものであれば、特に制限されることなく従来公知の触媒が用いられる。一般には、バナジウム、リンまたはモリブデンを主成分として含有する酸化触媒が用いられる。このような触媒としては、特開平5−261292号公報、特開平5−262754号公報、特開平5−262755号公報および特開平6−145160号公報に記載される触媒等が好ましく使用される。
接触気相酸化反応に際して供給される分子状酸素含有ガス(2)としては、通常空気が使用されるが、不活性ガスで希釈された空気、酸素を加えて富化された空気等を使用することもできる。
反応条件は従来公知の方法を採用できるが、使用する酸化触媒の種類や供給原料濃度、酸素濃度等によって適宜変更してもよい。例えば、バナジウム−リン系触媒を用いて、温度を300〜500℃で反応させる。ただし、通常条件下では、触媒失活および収率低下のおそれがあるので、480℃を超えて長時間放置することは好ましくない。接触気相酸化反応器(3)からは、無水マレイン酸と共に、副生する反応成分および原料ガス自体に含有されていた不純物が、そのままの形状でまたは接触気相酸化されて排出される。排出ガスに含まれる物質は、低沸点物質、高沸点物質および非凝縮性ガスに分類できる。本発明において「低沸点物質」とは、標準状態において無水マレイン酸よりも沸点が低い物質をいい、ギ酸、酢酸、アクリル酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、p−ベンゾキノンおよび水等が例示される。また、「高沸点物質」とは、標準状態において無水マレイン酸よりも沸点が高い物質をいい、無水フタル酸、フマル酸およびハイドロキノン等が例示される。さらに、「非凝縮性ガス」とは、標準状態で気体の物質をいい、具体的には、窒素、酸素、空気、プロピレン、プロパン、ベンゼン、ブタン、一酸化炭素および二酸化炭素等が例示される。
接触気相酸化反応によって得られる反応ガスの組成は、一般に、無水マレイン酸(以下、反応ガスの組成における「無水マレイン酸」には、無水マレイン酸に換算したマレイン酸を含むものとする。)が2〜5質量%、水蒸気を除く低沸点物質として、酢酸およびアルデヒド等が0.01〜0.5質量%、高沸点物質として無水フタル酸等が0.005〜0.08質量%、残りは非凝縮性ガスと水蒸気である。
原料ガス(1)と分子状酸素含有ガス(2)との混合は、均一に混合できるものであれば特に制限されず種々の方法が用いられるが、例えば、スタティックミキサー等が好ましく用いられる。
接触気相酸化反応器(3)は固定床反応器または流動床反応器で、複数接触管型熱交換反応器が用いられる。該接触管としては、該して公知で使用されているものが利用される。該接触管は公知の任意の好適な配置で配置される。該接触管の外径dと管分布(ピッチ)tとの関係は、好ましくはt/d=1.2〜1.6の範囲である。
さらに、反応組成物は反応領域に入る前に、熱伝達媒体の温度付近まで予備加熱される。接触気相酸化反応器の各熱伝達領域は、その内部に、効果的な触媒温度プロファイルおよび反応温度を維持するために使用される熱伝達媒体の循環を有している。所望の触媒温度プロファイルを維持することは、最適な無水マレイン酸の収率を維持するために、および触媒寿命を最適化するために必要とされる。
熱伝達媒体は接触気相酸化反応器の熱伝達領域を循環し、熱伝達媒体が特定の領域において接触管の外側部分から熱を移送する。接触気相酸化反応器の熱伝達媒体領域は300〜500℃、好ましくは330〜450℃の温度で維持される。触媒温度のピークは熱伝達媒体温度より20〜80℃高く、熱伝達媒体の温度変化に非常に敏感である。
熱伝達媒体は接触気相酸化反応器内を通る反応組成物ガスの流れと同一方向(並流)または逆方向(向流)に循環する。好ましくは逆方向(向流)に循環する。これにより伝熱面積の縮小が図れ、設備費を削減することができる。また、好ましくは反応組成物ガスは反応器内をダウンフロー(上から下)に循環する。また、好ましくは、出口部の熱伝達媒体温度が入口部と比較して2〜10℃高くなるように制御される。
また、生産性を向上させるためには、高濃度のガスを供給することが必須である。このため、爆発の可能性が生じることから、ガス組成を常時安全な範囲に維持するか、爆発を防止するための対策をとる必要がある。
一般に、炭化水素と分子状酸素含有ガスとの混合ガスの爆発可能性を低下させる方法としては、炭化水素ガス成分濃度を爆発下限界濃度以下に保つ方法、炭化水素ガス成分濃度を爆発上限界濃度以上に保つ方法、および酸素濃度を限界酸素濃度以下に保つ方法等がある。このうち無水マレイン酸製造プロセスにおいては、通常、炭化水素ガス成分濃度を爆発下限界濃度以下に保つ方法が使用されている。
爆発下限界濃度を超える濃度の炭化水素ガス、例えば2.0モル%ベンゼンおよび7.0モル%のブタン、を供給する場合には、爆発防止対策をとることにより爆発の可能性を低下させることができる。該爆発防止対策としては、着火防止ガス線速以上に配管内ガス線速を上げる方法がある。該ガス線速は各ガス濃度に伴い変化するもので、具体的には30m/s以上が好ましい。その他の対策としては、炭化水素および分子状酸素含有ガスの混合位置から接触気相酸化反応器内の触媒層までの空間部の一部または全部に、不活性固体を充填する方法がある。該不活性固体は、金網等デミスター、波状金属板、リング状充填物、セラミックボール、多孔板等が挙げられる。また、接触気相酸化反応器までの空間容積をできるだけ小さくすることが好ましい。さらには、適所に圧力、温度および火災等の感知器を設置し、入口側には遮断装置(逆止弁、閉止弁等)を設置し、それらを自動制御できることが好ましい。また必要に応じてラプチャーディスク等の安全板を設けることが好ましい。
さらに、帯電を防止するために、原料ガス(1)を霧状で噴霧するのではなく、完全に蒸発後分子状酸素含有ガス(2)と混合することが好ましい。
次いで、前記接触気相酸化反応により得られた無水マレイン酸含有ガス(5)を無水マレイン酸捕集器(10)に供給し、無水マレイン酸の一部を凝縮捕集する。ここで、本発明の無水マレイン酸凝縮捕集工程で使用される無水マレイン酸捕集器(10)における好ましい制御の形態について、図2を用いて説明する。なお図2において、10は無水マレイン酸捕集器、11は凝縮粗無水マレイン酸、12は温水タンク、13は温水、14は冷却器、15は冷却水、16aはバルブ、16bはバルブ、16'はバルブ、17はポンプ、18はTIC、19は制御部である。
また、無水マレイン酸を凝縮捕集する際の捕集管内部の状態について図3を用いて説明する。ここで図3は、無水マレイン酸捕集時の捕集管の断面図を示す。なお図3において、5は無水マレイン酸含有ガス、10'は捕集管、11は凝縮粗無水マレイン酸、13は温水、Rは捕集管の内径である。
本発明においては、接触気相酸化反応により生成した無水マレイン酸含有ガス(5)は、捕集管の下部から供給され、該捕集管内を下部から上部へ向かって流通する。ここで捕集管(10')の内壁付近は、捕集管(10')の外側を流通する温水によって冷却されている。このため捕集管(10')の内壁付近を流通する無水マレイン酸含有ガス(5)は冷却され、沸点以下に冷却された成分は凝縮することとなる。ここでは主にガス中の無水マレイン酸が凝縮して凝縮粗無水マレイン酸(11)となり、捕集管の下部より流下して次工程に供給されるのである。なお、本発明において「温水」とは、50℃以上の水をいう。また、無水マレイン酸捕集器(10)の捕集管(10')外を流通する温水(13)は、該捕集器(10)の上部から下部へ、捕集管(10')中の無水マレイン酸含有ガス(5)と逆方向(向流)に流通させることが好ましい。かかる態様によれば、無水マレイン酸含有ガス(5)と温水(13)との温度差を大きくすることができ、機器の小型化が図れるためである。また、無水マレイン酸捕集器(10)における温水(13)の流通部分の水平方向の温度分布を小さくすることにより、無水マレイン酸含有ガス(5)を均一に凝縮させることができ、捕集管(10')の閉塞を抑制することができる。この目的で、本発明においては、温水(13)の流通部分に25%切り欠けバッフルまたはディスクアンドドーナツタイプの邪魔板を設置してもよい。
本発明において、無水マレイン酸捕集器(10)に供給される無水マレイン酸含有ガス(5)の温度は特に制限されるものではないが、好ましくは70〜120℃、より好ましくは80〜115℃、特に好ましくは90〜110℃である。しかし該温度が70℃未満では、該ガス(5)中に含まれる水分の多くが凝縮するため、有水マレイン酸やフマル酸等が生成しやすくなり、その結果該捕集器(10)の入口付近においてタール分や有水マレイン酸、フマル酸等が付着堆積する場合がある。また、かかる低温条件下ではタール分やフマル酸等の高沸点物質の溶解度が低下し、やはりこれらの物質の堆積による閉塞が発生するおそれがある。一方、該捕集器(10)に供給される無水マレイン酸含有ガス(5)の温度が120℃を超えると、供給された無水マレイン酸含有ガス(5)に含まれるアルデヒド類やキノン類と、無水マレイン酸の凝縮、および有水化の結果生成した有水マレイン酸が縮合反応することにより縮合物が生成して、捕集管内壁に付着堆積し閉塞が発生する場合がある。
本発明においては、無水マレイン酸捕集器(10)において、無水マレイン酸含有ガス(5)は、無水マレイン酸の融点以上沸点以下、より好ましくは53〜100℃、特に好ましくは55〜70℃に冷却される。その結果、無水マレイン酸の一部が液体として凝縮捕集される。なお、該無水マレイン酸捕集器(10)で凝縮捕集により得られた凝縮粗無水マレイン酸(11)は、好ましくは、図1に記載のように共沸脱水塔(40)へ供給されるか、または高沸点分離塔(60)へ供給される(図示せず)。共沸脱水塔(40)へ供給される場合には、共沸脱水塔(40)内の析出物の発生を抑制する効果があるため、より好ましくは共沸脱水塔(40)へ供給される。さらに、脱水反応促進による収率改善を図るため、特に好ましくは共沸脱水塔(40)の塔底または回収部下部へ供給される。該無水マレイン酸捕集器(10)において、凝縮した無水マレイン酸は、70〜120℃、より好ましくは70〜110℃、特に好ましくは70〜100℃で保持される。
また、無水マレイン酸捕集器(10)に供給される無水マレイン酸含有ガス(5)の捕集管内における管内ガス線速は、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜10m/s、より好ましくは2〜10m/s、特に好ましくは3〜9m/sである。該ガス(5)の管内ガス線速が1m/s未満では、該ガス(5)が捕集器内を通過する時間が長くなる結果、冷却されて凝縮液化する無水マレイン酸量が増加するため、捕集管を長くするか捕集器の胴径を大きくする必要が生じ、設備費が増大して不経済である。一方、該ガス(5)の管内ガス線速が10m/sを超えると、主に高沸点物質からなる飛沫分のうち捕集器(10)出口ガス中に含まれる量が増大する結果、次工程以降に供給される高沸点物質量が増加して装置内において閉塞が発生する原因となる。また、このように捕集管内におけるガス線速が高い条件下においては、凝縮せずにガスのまま捕集塔を通過して次工程に移行する無水マレイン酸が増加するため、該捕集器(10)における無水マレイン酸の捕集率が低下する結果となる。
さらに、本発明に使用される竪型多管式捕集器には捕集管が複数内蔵されるが、該捕集管の数および形態等、本発明に必須の態様以外の態様は特に制限されず、従来周知のものを好ましく使用することができる。ここで本発明において、捕集管としては垂直管または傾斜管を使用することが好ましい。これにより効率よく無水マレイン酸を凝縮させることができ、捕集効率を向上させることができるためである。また本発明において、無水マレイン酸捕集器(10)には、捕集管が2本以上設置される。
また本発明者らのさらなる検討により、無水マレイン酸捕集器(10)で捕集される凝縮液(本明細書中、「凝縮粗無水マレイン酸」とも称する。)中の有水マレイン酸およびフマル酸等の高沸点物質の濃度が、無水マレイン酸捕集器(10)の出口ガス中の水分の露点と相関関係にあることも判明した。ここで出口ガス中の水分の露点とは、該出口ガス中の水蒸気の分圧がpのとき、このpを飽和水蒸気圧とする温度をいい、水蒸気分圧の値をもとに水の蒸気圧曲線から求めることができる。なお、該出口ガス中の水分濃度が高くなれば露点は上昇し、逆に該出口ガス中の水分濃度が低くなれば露点は低下する。また、該捕集器(10)出口ガス中の水分濃度は、該捕集器(10)に供給される無水マレイン酸含有ガス(5)中の水分濃度の影響を受ける。すなわち、該捕集器(10)に供給される無水マレイン酸含有ガス(5)中の水分濃度を一定の範囲に維持することで、凝縮粗無水マレイン酸中の高沸点物質の濃度を効率よく低減させることができるのである。ここで該捕集器(10)に供給される無水マレイン酸含有ガス(5)中の水分濃度は、好ましくは2.0〜7.0モル%、より好ましくは2.0〜6.5モル%、特に好ましくは2.0〜6.0モル%である。該ガス(5)中の水分濃度を2.0モル%未満とするには、接触気相酸化反応に供する原料ガス(1)の濃度を減少させなければならず不経済である。一方、該ガス(5)中の水分濃度が7.0モル%を超えると、無水マレイン酸捕集器(10)内において水蒸気が無水マレイン酸と反応しやすくなり、有水マレイン酸およびフマル酸の生成量が増加し、捕集器内壁に付着堆積して閉塞が発生する場合がある。
さらに本発明者らは、無水マレイン酸捕集器(10)の出口ガス温度を、該捕集器(10)の出口ガス中の水分の露点よりも高い一定範囲の温度に維持することで、凝縮粗無水マレイン酸中の有水マレイン酸およびフマル酸等の高沸点物質の濃度を低下させることができることを見出した。これは、出口ガスの温度を水分の露点よりもある程度高く維持することで、捕集器内の水蒸気の凝縮が抑えられ、無水マレイン酸との反応が抑制される結果、有水マレイン酸やフマル酸等の生成が防止できるものと考えられる。ここで無水マレイン酸捕集器(10)の出口ガスの温度は、該出口ガス中の水分の露点よりも好ましくは15〜35℃、より好ましくは15〜25℃高いものである。該出口ガスの温度と該出口ガス中の水分の露点との差が15℃未満では、無水マレイン酸捕集器(10)内における水蒸気の凝縮が効果的に抑制されず、無水マレイン酸との反応により有水マレイン酸やフマル酸が生成し、捕集器内壁に付着堆積して装置を閉塞するおそれがある。一方、出口ガスの温度と該出口ガス中の水分の露点との差が35℃を超えると、該出口ガスが次いで供給される水捕集塔(20)における負荷が上昇し、装置を耐熱化するためのコストやランニングコストが増加するため不経済である。ここで一般に、無水マレイン酸捕集器(10)出口ガス中の水分の露点は25〜45℃程度である。したがって例えば、該捕集器(10)出口ガスの温度は好ましくは53〜80℃、より好ましくは55〜70℃である。
その他の捕集条件は特に制限されないが、無水マレイン酸捕集器(10)出口の圧力(ゲージ圧)は好ましくは0.001〜0.1MPa、より好ましくは0.003〜0.08MPa、特に好ましくは0.005〜0.05MPaである。ここで出口圧力が0.001MPaを下回ると、次工程の水捕集塔(20)および排ガス処理等の設備が大きくなり不経済である。一方0.1MPaを上回ると、水分の露点が大きくなって特にメリットはなく、逆にブロワー能力を大きくする必要から不経済である。
さらに本発明においては、無水マレイン酸捕集器(10)に供給される無水マレイン酸含有ガス(5)中に含有される無水マレイン酸の濃度も、無水マレイン酸の捕集率に影響を及ぼす場合がある。本発明においては、該無水マレイン酸含有ガス(5)中の無水マレイン酸含有ガス濃度は、好ましくは0.6〜1.5モル%、より好ましくは0.6〜1.4モル%、特に好ましくは0.7〜1.3モル%である。該ガス(5)中の無水マレイン酸濃度を0.6モル%未満とするには、接触気相酸化反応に供する原料ガス(1)の濃度を減少させなければならず不経済である。一方、該ガス(5)中の無水マレイン酸濃度が1.5モル%を超えると、無水マレイン酸捕集器(10)内において無水マレイン酸が水蒸気と反応しやすくなり、有水マレイン酸およびフマル酸の生成量が増加し、捕集器内壁に付着堆積して閉塞が発生する場合がある。
本発明の無水マレイン酸を凝縮捕集する工程において、その他の装置等の態様は特に制限されず、適宜調節して使用することができる。また、無水マレイン酸含有ガス(5)を無水マレイン酸捕集器(10)に供給する態様、および該捕集器の出口ガスを次工程の水捕集塔(20)に供給する態様についても、特に制限されず従来周知の態様を使用することができる。しかしながら、無水マレイン酸含有ガス(5)を無水マレイン酸捕集器(10)に供給する際には、該ガス(5)の通過する流体管の途中または該捕集器(10)の入口部にバッフル(邪魔板)を設置することが好ましい。これは、ガス分散性を良くして捕集効率を向上させるためである。また、無水マレイン酸含有ガス(5)を無水マレイン酸捕集器(10)に供給する際に該ガス(5)の通過する流体管は、該捕集器(10)側に向かって下り勾配をつけて設置することが好ましい。これは、液滞留部をなくして閉塞を防止するためである。
本発明は、無水マレイン酸含有ガス(5)を無水マレイン酸捕集器(10)において凝縮捕集する工程にその特徴を有するものである。したがって本発明において、該凝縮捕集工程以降の工程については特に制限されるものではなく、従来周知の方法を適宜調節して用いることができる。以下、凝縮捕集工程以降の工程について、その好ましい態様の一例を図1を用いて詳細に説明する。
前記無水マレイン酸捕集工程においては、無水マレイン酸の蒸気圧残分があるために、無水マレイン酸捕集器(10)での冷却後の反応ガスにも無水マレイン酸が多量に存在する。よって、上記のように無水マレイン酸を冷却することによる凝縮捕集工程を行った後、該工程の排出ガスを水捕集塔(20)に供給し、多量に存在する無水マレイン酸を捕集水中に捕集し、粗マレイン酸含有水溶液として回収する。
水捕集塔(20)の捕集条件としては、従来公知の方法を採用できるが、無水マレイン酸製造工程に含まれる低沸点物質を除去する工程で発生する留出液を、共沸溶媒を含有する溶媒相と水相とに分離し、該水相(リサイクル捕集水)を捕集水として水捕集塔(20)に供給してもよい。ここで該水相には低沸点物質も含まれており、水捕集塔(20)に供給された該低沸点物質は塔頂から廃ガスとして排出されるため、容易に系外に除去することができる。なお、共沸脱水工程において共沸溶媒を使用する態様を採用する場合に、上記の低沸点物質を除去する工程において発生した留出液は、共沸溶媒相および水相に分離され、該水相は上記のようにリサイクル捕集水として水捕集塔(20)に供給される。一方、該共沸溶媒相は共沸脱水工程において再利用されうる。
ここで、本発明において、水捕集塔(20)に供給されるリサイクル捕集水の組成としては、特に制限されるものではないが、以下の組成を有するものであることが好ましい。すなわち、前記水相中のアクリル酸濃度は、好ましくは0.3質量%未満であり、より好ましくは0.05〜0.3質量%であり、特に好ましくは0.05〜0.2質量%である。また、前記水相中のホルムアルデヒド、ギ酸、酢酸およびベンゾキノンの合計濃度は、好ましくは3.0質量%未満であり、より好ましくは0.5〜3.0質量%であり、特に好ましくは0.5〜2.5質量%である。さらに、前記水相中のホルムアルデヒドおよびベンゾキノンの合計濃度は、好ましくは1.5質量%未満であり、より好ましくは0.1〜1.4質量%であり、特に好ましくは0.1〜1.2質量%である。上記のような濃度範囲とすることにより、水捕集塔(20)内において上記化合物が縮合することによる縮合物の発生が効果的に抑制でき、水捕集塔(20)内の汚れを防止することが可能となる。一方、前記水相中に含まれるマレイン酸の濃度は、好ましくは10.0質量%未満であり、より好ましくは0.5〜9質量%であり、特に好ましくは0.5〜8質量%である。前記水相中のマレイン酸濃度が10.0質量%以上となると該マレイン酸が該水捕集塔(20)内でフマル酸に転位して閉塞が発生するためである。上記の態様によれば、低沸分離塔(70)の留出液が共沸溶媒塔(40)に循環使用されず、共沸脱水塔(40)内での縮合物の発生が抑制されることから、低沸点物質を上記の濃度範囲で含有するリサイクル捕集水を得ることが可能となる。
また上記の態様によれば、リサイクル捕集水中に含まれる前記低沸点物質の量を充分に低く抑えることが可能となるため、リサイクル捕集水の利用率を向上させることが可能となる。ここで好ましくは、低沸分離塔(70)の留出液から分離して得られた水相の90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、特に好ましくは100質量%を前記水捕集工程において使用する。
水捕集塔(20)では無水マレイン酸の捕集率を向上させることが必要であるが、同時に低沸点物質を廃ガスとして系外に排出するために、水捕集塔(20)に付属させた冷却器を使用して塔頂温度を10〜90℃、より好ましくは20〜60℃に調整することができる。10℃を下回ると、マレイン酸の最大溶解濃度が下がり結晶が析出し、水捕集塔(20)の圧力損失の増加や液の分散性の悪化による水捕集塔(20)の段効率の低下を招き、加えて、過量の冷却エネルギーが必要となるからである。一方、90℃を越えると無水マレイン酸の捕集率が低下する場合がある。
水捕集塔内(20)では、塔底液のマレイン酸濃度が10〜80質量%、特には20〜60質量%になるように水捕集塔(20)の上部から捕集水を導入して無水マレイン酸含有ガスと向流接触させることが好ましい。マレイン酸濃度が80質量%を上回るとマレイン酸の析出防止のために捕集温度を90℃以上に上げる必要が生じ、捕集率が低下する場合がある。その一方、10質量%を下回ると粗マレイン酸含有水溶液の濃縮・脱水工程で留出させる水が多くなり、不経済である。
なお、図1と相違して、無水マレイン酸捕集器(10)による液体状態での無水マレイン酸の捕集を行わずに、該無水マレイン酸含有ガスの全てを水捕集塔(20)に供給して、粗マレイン酸含有水溶液を調製してもよい。
水捕集塔(20)としては、例えば、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔およびスプレー塔、並びに薄膜型蒸発器(流下式および回転式等)等の従来公知の設備が用いられる。ここで前記水捕集塔(20)としては、無堰多孔板を配設したものであることが好ましい。かかる構成とすることにより、上記した好ましい範囲の塔底液を容易に得ることができるためである。
粗マレイン酸含有水溶液が供給された前濃縮装置(30)は、共沸脱水に先立ちおよそ30〜60質量%の水を除去する工程であり、従来公知の棚段塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔に加え、薄膜蒸発器を用いることができる。本発明では、装置がコンパクトで脱水効率に優れるため、薄膜蒸発器を使用することが好ましい。なお、このような前濃縮装置を経ずに共沸脱水を行ってもよい。
共沸脱水塔(40)としては、例えば、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔を用いることができる。かかる共沸脱水塔(40)は、通常、棚段塔または充填塔が好ましい。特に、有堰多孔板を5〜50段、より好ましくは10〜40段備えた蒸留塔を用いることが好ましい。5段未満ではマレイン酸と共沸溶媒との接触時間が不足し、脱水率の低下を招くおそれがある。また、無水マレイン酸の塔頂への留出が多くなり、無水マレイン酸のロスが増大する場合がある。一方、50段を超えると設備費が高くなり、不経済である。
共沸溶媒塔(40)において使用される共沸溶媒として、キシレン等の公知の共沸溶媒を使用することもできるが、温度20℃の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%の有機溶媒を使用することが好ましい。かかる溶媒を使用することで、共沸脱水蒸留の際に水や共沸混合物との間に生ずる油水分離状態を緩和し、均一相またはそれに近い状態を形成するため、固形析出物の少ない条件で当該共沸蒸留を行うことができる。このような共沸溶媒としては、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン(DIPK)、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、および2−へプタノン等のケトン類、酢酸アリル等のエステル類、メチルシクロヘキサノール等のアルコール類がある。中でも特にメチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、2−ヘキサノン等のケトン類や酢酸アリルなどのエステル類が好ましい。なお、一般的な共沸溶媒の使用量は、マレイン酸含有水溶液1質量部に対して0.3〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
共沸脱水塔(40)の塔底液内の共沸溶媒濃度は、100質量ppm以上、特には100〜50000質量ppmとすることが好ましい。100質量ppm未満では、塔底液中に残存しているアルデヒド類やキノン類が縮合して縮合物を生じ、装置を閉塞するおそれがある。なお、共沸脱水塔(40)の塔底温度は、好ましくは130〜200℃、より好ましくは150〜190℃である。塔底温度が130℃を下回ると、マレイン酸の脱水反応が遅くなるためマレイン酸の脱水が充分にできず、無水マレイン酸の収率が低下するおそれがある。一方、塔底温度が200℃を上回ると、無水マレイン酸の分解および重合が起こりやすくなる。また、共沸脱水塔(40)の塔頂圧力(絶対圧)は、好ましくは10〜202kPa、より好ましくは30〜150kPa、特に好ましくは40〜120kPaである。塔頂圧力が10kPaを下回ると、真空装置が大型化するばかりではなく、塔内温度が低下し、マレイン酸やフマル酸が結晶化して蒸留できない場合がある。一方、塔頂圧力が202kPaを上回ると、塔内温度が上昇し、重合物が発生しやすくなることに加え、リボイラーの大型化および装置の耐圧化の必要があり不経済である。さらに、本発明において、共沸脱水塔(40)の塔底滞留時間は好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは0.5〜8時間、特に好ましくは1〜5時間である。塔底滞留時間が0.5時間未満では、有水マレイン酸が充分に無水化されず、その後の工程においてフマル酸に転位して、該フマル酸が析出することによりパイプライン等の装置の閉塞を生じる場合がある。一方、塔底滞留時間が10時間を超えると、共沸脱水塔(40)内において無水マレイン酸およびアクリル酸の重合物並びに縮合物が生じ、これらが核となって装置を閉塞するおそれがある。なお、上記の共沸脱水条件とするには、共沸溶媒の種類や添加量、粗マレイン酸含有水溶液中の水濃度、原料供給段の変更、塔頂に付属させるコンデンサの還流比、塔段数、温度、圧力その他の条件を調整すればよい。
上記共沸条件としては、使用する共沸溶媒に応じて適宜好ましい条件を設定することができる。例えば、共沸溶媒としてMIBKを使用する場合には、粗マレイン酸含有水溶液1質量部に対して好ましくは0.3〜10質量部のMIBKを供給し、塔頂圧力(絶対圧)は好ましくは20〜202kPa、より好ましくは30〜150kPaとする。また、塔頂温度は好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜130℃とする。
前記共沸溶媒は、共沸脱水塔(40)に直接供給される方式に限らず、供給原料に混在した状態で共沸脱水塔(40)内に供給させてもよい。共沸溶媒が供給される位置は特に限定されるものではないが、直接供給される場合には、共沸脱水塔(40)の上部に供給されるのが一般的である。また、共沸脱水塔(40)の塔頂部に配設した油水分離槽(50)において、共沸脱水塔(40)の留出液を共沸溶媒相と水相とに分離した後、共沸溶媒相を共沸脱水塔(40)に循環して使用してもよい。
本発明において、共沸溶媒として温度20℃の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%の有機溶媒を使用する場合には、該共沸溶媒は水との親和性を有しているため、共沸蒸留塔(40)からの留出液を油水分離槽(50)において油水分離した水相には共沸溶媒が一部残存する。したがって、該油水分離槽(50)の水相を溶媒回収塔(90)に供給して、含まれる共沸溶媒を蒸留により水相と分離すれば、共沸溶媒をより効率的に再利用することができる。したがって、油水分離槽(50)において共沸溶媒と分離された水相は、抜き出して系外に除去してもよいが、好ましくは、水捕集塔(20)に循環させて捕集水として使用し、より好ましくは、前記水相は溶媒回収塔(90)に移送し、リサイクル捕集水として水捕集塔(20)に循環させる。
なお、本発明において、前記無水マレイン酸捕集器(10)で得た凝縮粗無水マレイン酸の投入箇所は、特に制限されるものではないが、好ましくは、共沸脱水塔(40)、共沸脱水塔(40)から高沸点分離塔(60)のライン、または高沸点分離塔(60)のいずれかに投入される。ここで、前記無水マレイン酸捕集器(10)の塔底液を共沸脱水塔(40)から高沸点分離塔(60)のラインに投入した場合には、該塔底液中に若干存在する有水マレイン酸の無水化が可能となる。また、該塔底液を共沸脱水塔(40)内に投入した場合には、該共沸脱水塔(40)内の無水マレイン酸濃度が上昇する結果、以下のような効果を得ることができる。すなわち、フマル酸は無水マレイン酸にやや溶解するため、共沸脱水塔(40)内の無水マレイン酸濃度が上昇することで、該塔内でのフマル酸の析出が効果的に抑制されるのである。また、タール分や縮合物の析出も併せて抑制されることから、長期にわたり閉塞を発生せずに安定した運転が可能となる。なお、前記無水マレイン酸捕集器(10)の塔底液を共沸脱水塔(40)に供給する際の供給位置によって、共沸脱水塔(40)内の無水マレイン酸濃度は影響を受ける。ここで、前濃縮装置(30)で得られた有水マレイン酸水溶液は、一般に共沸脱水塔(40)の中段部に供給されるが、例えば該中段部付近に前記塔底液を供給した場合には、共沸脱水塔(40)の中段部の塔内組成においては水の濃度が高いため、該塔底液中の無水マレイン酸が有水化して脱水率が低下する場合がある。したがって、本発明では、共沸脱水塔(40)内の無水マレイン酸濃度を高めるため、より好ましくは前記有水マレイン酸水溶液の供給位置よりも下部に前記無水マレイン酸捕集器(10)の塔底液を供給する。ここで、かかる態様で該塔底液を供給することにより、共沸脱水塔(40)の中段付近の無水マレイン酸濃度は相対的に低い状態となる。このため、フマル酸が無水マレイン酸に溶解する効果が得られず、フマル酸が析出しやすくなるとも考えられる。しかしながら、フマル酸は本発明において好ましく用いられる共沸溶媒にもやや溶解し、共沸脱水塔(40)の中段付近は該共沸溶媒の濃度が高い。したがって、本発明において特定の共沸溶媒を使用することにより、アルデヒド類およびキノン類の縮合反応を抑制する効果のみではなく、フマル酸の析出をも抑制されることとなり、特定の共沸溶媒を使用することによる効果は相対的に高いものとなる。
本発明で使用する溶媒回収塔(90)としては、従来公知の棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔などを使用することができる。蒸留条件としては、例えば、塔頂圧(絶対圧)は好ましくは20〜202kPa、より好ましくは30〜150kPa、特に好ましくは40〜120kPaとする。また、塔頂温度は好ましくは50〜120℃、より好ましくは65〜115℃、特に好ましくは70〜105℃とする。還流比は、好ましくは1〜50、より好ましくは2〜30、特に好ましくは5〜20である。なお、通常は供給液を前記溶媒回収塔(90)の上部に供給し、還流として利用する。また、前記溶媒回収塔(90)の理論段数は、好ましくは0.5〜15段、より好ましくは0.5〜10段、特に好ましくは1〜8段である。
高沸点分離塔(60)は、従来公知の棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔、フラッシュ塔などの公知の塔に加え、回転式滞留槽型蒸発器や薄膜型蒸発器を好ましく用いることができる。さらに、上記の形式の装置を単独または複数の組み合わせで、直列または並列に接続して使用することができる。連続式で行う場合には、薄膜蒸発器を直列に2段にして用いてもよい。本発明では、高沸点物質を効率的に分離する蒸留条件として、例えば、塔頂圧(絶対圧)は1〜40kPa、より好ましくは3〜20kPaとする。また、塔頂温度は70〜170℃、より好ましくは90〜140℃で稼動させる。留出量は高沸点不純物の含有量に応じて適宜選択することができ、還流比は、通常0.3〜3である。なお、高沸点分離塔(60)として薄膜型蒸発器を使用した場合には、温度80〜200℃、より好ましくは110〜180℃とする。このような蒸留条件によれば、高沸点分離塔(60)の塔底から排出する蒸留残渣(61)中に、接触気相酸化反応によって副生された無水フタル酸、フマル酸や高沸点の重合物や縮合物等を含ませることができる。
低沸分離塔(70)では、低沸点物質や残存する共沸溶媒を無水マレイン酸と分離する。低沸分離塔(70)としては、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔およびフラッシュ塔などの公知の塔を用いることができる。かかる低沸分離塔(70)は、棚段塔または充填塔であることが好ましい。低沸分離塔(70)の条件は、従来公知の条件を採用でき、例えば塔頂温度60〜140℃、還流比0.3〜30、塔頂圧力(絶対圧)10〜60kPaである。ここで、前述したように、本発明においては、前記低沸分離塔(70)からの留出液を、共沸溶媒を含有する溶媒相と水相とに分離し、該溶媒相を回収して共沸脱水工程において再利用し、一方、該水相をも効率的に回収して水捕集工程に循環させて再利用する点に特徴がある。これにより、共沸溶媒および水を効率よく利用することができ、かつ低沸点物質を最終的に水捕集塔の塔頂から廃ガスとして系外に除去することができる。上記のような態様を達成するための共沸溶媒および水の回収方法としては、例えば、図1のように低沸分離塔(70)の留出液を溶媒回収塔(90)に供給し、次いで該溶媒回収塔(90)の塔底液(リサイクル捕集水)を水捕集塔(20)に循環させ、一方、該溶媒回収塔(90)の留出液を共沸脱水工程に導入する方法が挙げられる。なお、このような溶媒回収塔は、単独で低沸分離塔に設置してもよいが、共沸脱水塔(40)に共沸溶媒を回収する油水分離槽(50)が設置されている場合(図示せず)には、これに低沸分離塔(70)の留出液を供給して共沸溶媒を回収し、該油水分離槽(50)の水相を捕集水として再利用してもよい。この際、好ましくは、該油水分離槽(50)の水相を溶媒回収塔(90)に移送し、該水相中の共沸溶媒を分離した上で該溶媒回収塔(90)の塔底液(リサイクル捕集水)を水捕集塔(20)に循環させる。なお、高沸点分離塔(60)による高沸点物質の除去工程と低沸分離塔(70)による共沸溶媒の除去工程とはいずれを先に行ってもよい。
精製塔(80)の精製条件は、塔頂絶対圧力2〜40kPa、塔頂温度80〜170℃の範囲であることが好ましく、その他は公知の条件を採用することができる。かかる条件を採用することにより、塔頂から無水マレイン酸(81)を製品として得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
実施例1
以下に示す方法により、ベンゼンの接触気相酸化反応で生成した無水マレイン酸を凝縮捕集した。
まず、バナジウム−モリブデン系触媒を充填した接触気相酸化反応器(3)に、ベンゼンを12.4g/minの流速で供給し、11.44Nm/hの空気と接触させ、無水マレイン酸含有ガス(5)を生成させた。次いで該ガスを110℃まで冷却し、無水マレイン酸捕集器(10)の下部へ供給した。ここで該無水マレイン酸含有ガスは、水6.60モル%、無水マレイン酸1.40モル%、フタル酸0.005モル%、ホルムアルデヒド0.057モル%、ベンゾキノン0.003モル%を含有していた。
無水マレイン酸を凝縮捕集するための無水マレイン酸捕集器(10)としては、竪型多管式捕集器を使用し、捕集管としては垂直管を用いた。また該捕集管を4本設置し、内径は16.7mm、長さは3000mmとした。
捕集条件としては、捕集器(10)の出口ガス温度を58℃に調節し、出口圧力(ゲージ圧)は0.0108MPaに調節した。その結果捕集器(10)出口ガス中の水分の露点は40.1℃であった。無水マレイン酸含有ガス(5)は捕集管内ガス線速が4.0m/sとなるように無水マレイン酸捕集器(10)の下部へ供給し、該捕集器の下部から上部へ流通させた。その結果凝縮液接触時間は11分であり、捕集管の単位横幅あたりの凝縮液流量は2.07kg/h・mであった。
上記の条件で1ヶ月間連続稼動させた。その結果、捕集器(10)内温度および捕集器(10)出口圧力ともに振れることはなく、一定の値を維持した。また一定の組成を有する凝縮液(凝縮粗無水マレイン酸)が1ヶ月間安定して得られた。該凝縮液の組成は、無水マレイン酸95.41質量%、有水マレイン酸3.58質量%、フマル酸0.1質量%、ベンゾキノン0.17質量%、無水フタル酸0.67質量%であり、無水マレイン酸捕集率は約65%であった。
なお停止後内部点検を行ったところ、捕集管の下部および凝縮液の抜き出しラインに析出物が合計約50g検出された。
比較例1
ベンゼンの流速を8.0g/minとし、空気の流速を7.2Nm/hとし、捕集管の内径を13.3mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により無水マレイン酸を凝縮捕集した。その結果凝縮液接触時間は14分であり、捕集管の単位横幅あたりの凝縮液流量は1.7kg/h・mであった。
上記の条件で稼動させた結果、無水マレイン酸捕集器(10)内の圧力が徐々に上昇し、3日目で装置が停止した。
停止後内部点検を行ったところ、捕集管の下部に析出物が多量に存在していた。該析出物の主成分はフマル酸、有水マレイン酸および縮合物であった。
比較例2
ベンゼンの流速を502.4g/minとし、空気の流速を463.6Nm/hとし、捕集管の内径を106.3mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により無水マレイン酸を凝縮捕集した。その結果凝縮液接触時間は2分であり、捕集管の単位横幅あたりの凝縮液流量は13.4kg/h・mであった。
上記の条件で稼動させた結果、無水マレイン酸捕集器(10)内の圧力が徐々に上昇し、10日目で装置が停止した。
停止後内部点検を行ったところ、捕集管の上部に析出物が多量に存在していた。該析出物の主成分はフマル酸および有水マレイン酸であった。
比較例3
無水マレイン酸含有ガス(5)を無水マレイン酸捕集器(10)の上部へ供給し、該捕集器の上部から下部へ流通させたこと以外は、実施例1と同様の方法により無水マレイン酸を凝縮捕集した。
上記の条件で稼動させた結果、無水マレイン酸捕集器(10)内の圧力が徐々に上昇し、1時間で装置が停止した。
停止後内部点検を行ったところ、捕集管の上部に析出物が多量に存在していた。
図1は、本発明における無水マレイン酸の製造方法の好ましい製造方法の工程図である。 図2は、本発明の無水マレイン酸凝縮捕集工程で使用される無水マレイン酸捕集器の好ましい制御の形態を示す図である。 図3は、無水マレイン酸捕集時の捕集管の断面図である。
符号の説明
1:原料ガス、
2:分子状酸素含有ガス、
3:反応器、
5:無水マレイン酸含有ガス、
10:無水マレイン酸捕集器、
10’:捕集管、
11:凝縮粗無水マレイン酸、
12:温水タンク、
13:温水、
14:冷却器、
15:冷却水、
16a:バルブ、
16b:バルブ、
16’:バルブ、
17:ポンプ、
18:TIC、
19:制御部、
20:水捕集塔、
21:リサイクル捕集水、
23:マレイン酸含有水溶液、
30:前濃縮装置、
40:共沸脱水塔、
41:共沸脱水塔留出ライン、
42:粗無水マレイン酸、
43:留出コンデンサ、
50:油水分離槽、
51:廃水、
52:補給水、
60:高沸点分離塔、
61:蒸留残渣、
70:低沸分離塔、
80:精製塔、
81:精製無水マレイン酸、
90:溶媒回収塔、
100:廃油燃焼装置。

Claims (6)

  1. 炭化水素の接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸含有ガスを、捕集管を複数有する竪型多管式捕集器の下部から該捕集管内に供給し、該捕集管の下部から上部へ該ガスを流通させ、該ガス中の無水マレイン酸を該捕集管内で凝縮させて捕集する工程を含む、無水マレイン酸の製造方法。
  2. 前記捕集管における凝縮液接触時間は5〜30分間であり、該捕集管の単位横幅あたりの凝縮液流量は2.0〜7.0kg/h・mである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記捕集管の内径は15〜100mmである、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記無水マレイン酸含有ガスが前記捕集器に供給される際の温度は70〜120℃であり、該捕集器の捕集管におけるガス線速は1〜10m/sである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記無水マレイン酸含有ガス中の水分濃度は2.0〜7.0モル%であり、前記捕集器の出口ガス温度は、該出口ガス中の水分の露点より15〜35℃高いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記捕集管は垂直管または傾斜管である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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