JP2005034517A - ゴルフクラブ用スチールシャフト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】 C:0.40〜0.70%,Si:0.60%以下,Mn:0.60〜1.20%,P:0.020%以下,S:0.015%以下,Al:0.050%以下,Cr:0.30〜1.00%を含み、必要に応じNi:0.30〜1.20%,Mo:0.10〜0.50%,V:0.05〜0.40%,Nb:0.03〜0.15%,Ti:0.05〜0.50%,Cu:0.30%以下,Ca:0,01%以下の1種又は2種以上を含む組成の溶接鋼管から作製され、焼入れ後のサブゼロ処理で完全マルテンサイト組織に調質されたゴルフクラブ用スチールシャフトである。成形加工した溶接鋼管を焼き入れた後、-80℃以下のサブゼロ処理を施し、次いで200〜350℃に焼き戻すことにより製造される。
【選択図】 なし
Description
なお、本件明細書で言う「完全マルテンサイト組織」は、マルテンサイト100%の組織に限らず、技術的意味で実質的に完全マルテンサイトとして扱われるものをいう。具体的には、残留オーステナイトが微量存在していても、マルテンサイト95%以上であれば「完全マルテンサイト組織」として扱われる。
このゴルフクラブ用スチールシャフトは、所定組成に調整された鋼材から造管された溶接鋼管をシャフト形状に成形加工した後、800〜900℃の温度域に好ましくは3〜30分保持して焼き入れ、−80℃以下のサブゼロ処理を施し、次いで200〜350℃に焼き戻すことにより製造される。
〔C:0.40〜0.70質量%〕
熱処理された鋼材の強度,耐力,弾性に影響を及ぼす合金成分であり、C含有量に応じ焼入れ硬さ,強度が大きく変動する。十分な焼入れ硬さ,強度を得る上で0.40質量%以上のCが必要である。しかし、0.70質量%を超える過剰量のCが含まれると、靱性,溶接性が低下しやすい。
〔Si:0.60質量%以下〕
製鋼段階で脱酸剤として添加される合金成分であるが、0.60質量%を超えるSiが含まれると鋼板製造過程でスケール疵が鋼板表面に発生しやすくなり、シャフトの表面品質を低下させる。
焼入れ性を向上させ、強靭化にも有効な合金成分である。十分な焼入れ性を得るために、Mn含有量を0.60質量%以上に設定する。しかし、1.20質量%を超える過剰量のMnを含ませると、パーライトバンド組織の成長や偏析が促進される結果として靭性が却って低下しやすい。
〔P:0.020質量%以下〕
低温焼戻し脆化の原因となる成分であるが、0.020質量%以下に規制することによりP起因の悪影響を抑制できる。
〔S:0.015質量%以下〕
介在物となって鋼中に存在し、靭性を劣化させる成分である。0.015質量%を超える量のSを含む鋼材では、造管溶接時に溶接部のメタルフローに沿って介在物起因の割れが発生しやすくなる。
Siと同様に製鋼段階で脱酸剤として添加される成分であるが、鋼中の全Al量が多くなると鋼材の清浄度が損なわれて表面疵が発生しやすくなるので、Al含有量の上限を0.050質量%に規制した。
〔Cr:0.30〜1.00質量%〕
焼入れ性の向上に有効で、特に焼入れ・焼戻し処理後の強度,靭性を確保する上で必要な合金成分である。このような効果は、0.30質量%以上のCr添加でみられる。しかし、過剰量のCrを添加すると、増量に見合った強度の上昇が熱処理後に得られず、却って造管時の溶接性が低下するので、Cr含有量の上限を1.00質量%に規制した。
必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ性の改善に有効で、熱処理後の強度,靭性を向上させる作用を呈する。強度,靭性の向上効果は、0.30質量%以上のNi添加でみられる。しかし、高価な合金元素であるので、1.20質量%以下にNi含有量を規制して鋼材コストの上昇を抑える。
〔Mo:0.10〜0.50質量%〕
必要に応じて添加される合金成分であり、Crと同様に焼入れ性を改善し、焼入れ・焼戻し処理後の強度,靭性を向上させる。このような効果は、0.10質量%以上のMo添加でみられるが、0.50質量%を超えるMoの過剰添加は素材の成形性,造管性に悪影響を及ぼす。
何れも必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ・焼戻し処理時にオーステナイト結晶粒を細粒化し、焼戻し後の耐力,靭性を向上させる作用を呈する。細粒化の効果は、V:0.05質量%以上,Nb:0.03質量%以上,Ti:0.05質量%以上でみられるが、V:0.40質量%,Nb:0.15質量%,Ti:0.50質量%で飽和する。
〔Cu:0.30質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、熱間圧延中に生成する酸化スケールの剥離性を向上させ、鋼材,ひいてはシャフトの表面性状を改善する作用を呈する。しかし、過剰に含まれると溶融金属脆化に起因する微細クラックが鋼板表面に生じやすくなるので、Cuを添加する場合には上限を0.30質量%に規制する。
必要に応じて添加される合金成分であり、MnS系介在物を効果的に形態制御する。すなわち、通常のMnS系介在物は細長い形状の粒子としてマトリックスに分散し、造管後の成形加工時にミクロボイドの起点となり造管性を劣化させ、シャフトの靭性にも悪影響を及ぼす。Ca添加は、このようなMnS系介在物を球状のMn,S,Ca複合介在物に変えてミクロボイドの発生を抑え、造管性,靭性を向上させる。しかし、過剰添加すると介在物が粗大化して成型加工性が低下するので、Caを添加する場合には上限を0.01質量%に規制する。
〔成形加工後の熱処理〕
シャフト形状に成形された溶接鋼管は、焼き入れ後のサブゼロ処理,焼戻しによって実質的に完全マルテンサイト組織に調質される。サブゼロ処理,焼戻しの組合せにより、引張強さ:2000N/mm2以上,0.03%耐力:1700N/mm2以上と高強度でありながら、強度,靭性が高位にバランスしたスチールシャフトが得られる。
次いで、−80℃以下の温度でサブゼロ処理すると、焼き入れ後の残留オーステナイトがマルテンサイト変態し、焼戻し後にも強度低下をきたす残留オーステナイトが実質的にない完全マルテンサイト組織となる。オーステナイト→マルテンサイトの変態は、−80℃以下の低温に溶接鋼管を過冷するサブゼロ処理によってほぼ完全に進行する。
このようにして、サブゼロ処理で高強度化された状態を維持しながら、焼戻しによって靭性が向上する。その結果、高靭性を活用した薄肉化が可能となり、軽量で高強度のスチールシャフトが得られる。作製されたスチールシャフトは、強度,靭性のバランスが良く、反発力が高いため飛距離アップにつながり、ボールの直進性も向上する。
他方、C含有量が不足する鋼材B1を用いた試験No.1では、引張強さが目標値2000N/mm2に達せず、0.03%耐力も低い値を示した。成分・組成が本発明で規定する条件を満足する鋼材を用いた場合でも、サブゼロ処理していない試験Nos.4,8,13は、0.03%耐力が目標値1700N/mm2に達しない低い値であった。焼戻し温度が低すぎる試験No.5では、靭性の回復が十分でないため衝撃値が低く目標値25J/cm2に達しなかった。
変形試験では、シャフトのヘッド側50mmを固定し、支点から500mmの位置に11kgの荷重を加え、1分後に荷重を取り除き、シャフトの変形量(永久歪)を測定した。この試験条件下では、目標値を変形量3.0mm以下に設定した。
耐久試験では、両端を固定したシャフトの中心部に3kgの荷重をストローク50mmで繰返し加え、シャフトが破断するまでのサイクル数で疲労強度を調査した。この試験条件下では、10万回以上のサイクル数で荷重を繰返し加えても破断しないシャフトが合格と評価される。
Claims (4)
- C:0.40〜0.70質量%,Si:0.60質量%以下,Mn:0.60〜1.20質量%,P:0.020質量%以下,S:0.015質量%以下,Al:0.050質量%以下,Cr:0.30〜1.00質量%を含む組成の溶接鋼管から作製され、焼入れ後のサブゼロ処理で完全マルテンサイト組織に調質されていることを特徴とするゴルフクラブ用スチールシャフト。
- 更にNi:0.30〜1.20質量%,Mo:0.10〜0.50質量%,V:0.05〜0.40質量%,Nb:0.03〜0.15質量%,Ti:0.05〜0.50質量%の1種又は2種以上を含む溶接鋼管から作製された請求項1記載のゴルフクラブ用スチールシャフト。
- 更にCu:0.30質量%以下,Ca:0.01質量%以下の1種又は2種を含む溶接鋼管から作製された請求項1又は2記載のゴルフクラブ用スチールシャフト。
- C:0.40〜0.70質量%,Si:0.60質量%以下,Mn:0.60〜1.20質量%,P:0.020質量%以下,S:0.015質量%以下,Al:0.050質量%以下,Cr:0.30〜1.00質量%を含む組成の鋼板から溶接鋼管を製造し、該溶接鋼管をシャフト形状に成形加工した後、800〜900℃の温度域から焼き入れ、−80℃以下のサブゼロ処理を施し、次いで200〜350℃に焼き戻すことを特徴とするゴルフクラブ用スチールシャフトの製造方法。
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