JP2016032489A - シャフト、ゴルフ・シャフト、ゴルフ・クラブ、及びシャフトの製造方法 - Google Patents

シャフト、ゴルフ・シャフト、ゴルフ・クラブ、及びシャフトの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】形状的な品数増の抑制を可能としながら、シャフトの長手方向での硬度を変えることを可能にするシャフト、ゴルフ・シャフト、ゴルフ・クラブ、シャフトの製造方法、焼戻し装置を提供する。【解決手段】中空状金属製の管体3Aでなるゴルフ・シャフト3であって、ゴルフ・シャフト3は、長手方向で変化した硬度パターンP1〜P8等を有し、硬度パターンP1〜P8等は、ゴルフ・シャフト3の長手方向でヤング率、引張強さを焼戻し処理により変えて設定したことを特徴とする。【選択図】図4

Description

本発明は、金属性のシャフト、ゴルフ・シャフト、ゴルフ・クラブ、及びシャフトの製造方法に関する。
従来の金属製のシャフトの一例である金属性ゴルフ・シャフトとして、例えば特許文献1に記載のものがある。
この金属製ゴルフ・シャフトは、高強度化、高靭性化した合金設計の鋼材を焼入れ処理してその材質をマルテンサイト組織とし、次いで焼戻し処理により靱性を回復させ、強度と耐久性とを得ている。
この金属製ゴルフ・シャフトは、焼入れ後、焼戻しをシャフト長手方向に均一温度で一度に行ない、シャフトの弾性係数を全長に亘ってほぼ一定にしていた。
一方、ユーザーの力量、スイング・スタイルは様々であり、それらに合ったゴルフ・シャフトが要求されてもいる。そのためには、シャフトの肉厚、径などをシャフトの長手方向で変えたものを用意する必要があり、形状的な品数は自ずと多くなる。
したがって、これらを製作する加工装置、ダイス、プラグなどの加工治具なども品数に応じて用意する必要があり、さらにそれに合った調整も必要になる。
当然、品数に応じて設計工数も増え、製造コスト、製造時間が増えるという問題がある。
さらに、品種が多くなるほど、品質を安定させることが難しくなり、高い品質を確保しながら様々なユーザーにあった製品を提供できるかが課題であった。
また、従来の金属製ゴルフ・シャフトは、焼入れ後、焼戻しをシャフト長手方向に均一温度で行ない、シャフトの引張強さを全長に亘ってほぼ一定にしていた。このため、ゴルフ・シャフトに設計応力以上の過負荷がかかったとき、折れたり曲がったりすることがあった。
特に、ヘッドとシャフトとの継ぎ目部分は応力集中が起こり易く、折れ易くなっている。それを防ぐには該当部分の肉厚を厚くし、或いは径を大きくする必要があった。
しかし、それでは一部が重くなり、ゴルフ・シャフトとしてバランスが崩れてしまい、スイングに影響を及ぼす恐れがあった。
さらに、ゴルフ・シャフト以外にも、焼入れ後、焼戻しにより硬さを設定する可能性のある製品として、野球用、ソフトボール用のバット、スキーやトレッキング用のポール、テレビ用アンテナなどもあり、全長に亘ってほぼ一定の弾性係数又は引張強さでは、働く外力に応じさまざまな設計をする上で、品数が多くなるなど同様の問題を招くことになる。
特開2005−34517号公報
解決しようとする問題点は、焼入れ後、焼戻しによりシャフトの弾性係数又は引張強さをシャフトの全長に亘ってほぼ一定にしていたため、働く外力に対してさまざまな設計をする上で形状的な品数が増加するなどの問題があった点である。
本発明は、形状的な品数増の抑制を可能としながら、シャフトの長手方向での硬度を変える設計を可能とするために、中空状金属製の管体でなるシャフトであって、前記管体は、長手方向で変化した硬度パターンを有し、前記硬度パターンは、前記管体の長手方向でヤング率又は引張強さを焼戻し処理により変えて設定したことをシャフトの特徴とする。
前記管体は、チップ側にヘッドを取り付けるヘッド取付部を備え、バット側にグリップを取り付けるグリップ取付部を備えたことを、前記シャフトを用いたゴルフ・シャフトの特徴とする。
前記ヘッド取付部にヘッドを取り付け、前記グリップ取付部にグリップを取り付けたことを、前記ゴルフ・シャフトを用いたゴルフ・クラブの特徴とする。
前記管体を焼入れする焼入れ工程と、前記焼入れ後の管体を焼き戻す焼戻し工程とを備え、前記焼戻し工程は、前記管体の長手方向で焼戻し条件を変えたことをシャフトの製造方法の特徴とする。
本発明のシャフト、ゴルフ・シャフト、及びゴルフ・クラブは、上記構成であるから、形状的な品数増を抑制しながら、管体の長手方向でヤング率又は引張強さを変えて、長手方向で変化した硬度パターンのシャフト、ゴルフ・シャフト、及びゴルフ・クラブにすることができる。このため、シャフト、ゴルフ・シャフト、及びゴルフ・クラブに働く荷重特性に応じたシャフト、ゴルフ・シャフト、及びゴルフ・クラブにすることができる。また、シャフト、ゴルフ・シャフト、及びゴルフ・クラブの形状の数を少なくすることができ、品質が安定する。
特に、ゴルフ・シャフトは、同一形状でありながらゴルフ・クラブとしての打感を変えることができ、剛性分布を変化させることにより、弾道を変えることができる。また、同一形状でありながら強度分布を変えることができ、ゴルフ・クラブとしてバランスを維持することができる。
さらに、軽量化設計と特性の設計とを切り分け、軽量化を維持したまま、ユーザーに合った仕様(キックポイントなど)を持つゴルフ・クラブを提供することができる。
本発明のシャフトの製造方法は、管体の長手方向で焼戻し条件を変え、長手方向で変化した硬度パターンのシャフトを容易に得ることができる。
ゴルフ・クラブの全体図である。(実施例1) ゴルフ・シャフトの全体図である。(実施例1) ゴルフ・シャフトのスペックの例を示す図表である。(実施例1) シャフトの硬度パターンを、チップからの距離との関係で示すグラフである。(実施例1) シャフトの硬度と引張強さとの関係のグラフである。(実施例1) シャフトの硬度とヤング率との関係のグラフである。(実施例1) シャフトのその他の硬度パターンを、チップからの距離との関係で示すグラフである。(実施例1) 評価対象のゴルフ・クラブの仕様を示す図表である。(実施例1) 試打ロボットによる測定概要を示す説明図である。(実施例1) 試打ロボットにより試打結果(キャリー)を比較例との関係で示すグラフである。(実施例1) 試打ロボットにより試打結果(トータル)を比較例との関係で示すグラフである。(実施例1) ゴルフ・シャフトの焼戻し装置を示す概略図である。(実施例1) ゴルフ・シャフトの焼戻し装置のチャックを示す要部拡大概略断面図である。(実施例1) ゴルフ・シャフトの加熱状況を示す概略説明図である。(実施例1)
形状的な品数増の抑制を可能としながら、シャフトの長手方向での硬度を変えた設計を可能にするという目的を、中空状金属製の管体でなるシャフトであって、前記管体は、長手方向で変化した硬度パターンを有し、前記硬度パターンは、前記管体の長手方向でヤング率又は引張強さを変えて設定したことにより実現した。
前記シャフトを用いたゴルフ・シャフトであって、前記管体は、チップ側にヘッドを取り付けるヘッド取付部を備え、バット側にグリップを取り付けるグリップ取付部を備えて実現した。
前記管体の硬度パターンは、チップ側からバット側へ硬度を直線的に又は曲線的に若しくは直線的及び曲線的に低下させ又は上昇させたゴルフ・シャフトでもよい。
前記ゴルフ・シャフトを用いたゴルフ・クラブであって、ヘッド取付部にヘッドを取り付け、グリップ取付部にグリップを取り付けて実現した。
前記シャフトの製造方法であって、管体を焼入れする焼入れ工程と、前記焼入れ後の管体を焼き戻す焼戻し工程とを備え、前記焼戻し工程は、前記管体の長手方向で焼戻し条件を変えて実現した。
前記焼戻し工程は、管体を設定温度で加熱する加熱部に対し設定速度で通過させ、前記焼戻し条件は、前記設定温度及び設定速度であってもよい。
前記加熱部は、高周波電流が通電制御される加熱コイルであり、設定温度は、通電制御により加熱コイルに印加される電圧に対応し、設定速度は、管体が加熱コイルのコイル中心を通過する速さであってもよい。
前記シャフトの製造方法に用いる焼戻し装置は、シャフトの端部を掴むチャックと、チャックを駆動してシャフトを長手方向に移動させるチャック駆動部と、シャフトを通過させながら加熱する加熱部と、加熱部及びチャック駆動部を制御して設定温度及び設定速度をシャフトの長手方向に対し変化させる焼戻し制御部とを備えてもよい。
前記加熱部は、高周波電源により駆動される加熱コイルであり、設定温度は、焼戻し制御部が高周波電源を制御して変化させ、設定速度は、焼戻し制御部がチャック駆動部を制御して変化させてもよい。
[ゴルフ・クラブ]
図1は、本発明実施例1に係るゴルフ・クラブの全体図である。
図1のように、ゴルフ・クラブ1は、一例としてアイアンが示されている。例えば、7番アイアンの例を示す。
このゴルフ・クラブ1は、ゴルフ・シャフト3のバット(BUTT)側のグリップ取付部に握りとなるグリップ5が取り付けられ、同チップ(TIP)側のヘッド取付部に、ゴルフ・ボールを打つためのヘッド7が取り付けられている。ここで、ゴルフ・シャフト3は、本発明の実施例として焼入れ、焼戻しを施したものである。
つまり、本発明の実施例であるゴルフ・シャフト3は、形状的な品数増の抑制を可能としながら、長手方向で変化した硬度パターンを有し、荷重特性に応じたシャフトにした。
なお、ゴルフ・クラブ1としては、全てのアイアン、さらにはドライバー、パター等にも適用できる。パターにおいても、打つときの微妙な感覚は極めて重要であり、複数種の硬度パターンがあることはユーザーにとっては都合がよい。
[ゴルフ・シャフト]
図2は、ゴルフ・シャフトの全体図、図3は、ゴルフ・シャフトのスペックの例を示す図表である。
このゴルフ・シャフト3は、上記のように7番アイアン用の例を示し、中空状金属製の管体3Aでなるシャフトである。
管体3Aの材質は、スチールである。但し、焼き入れ、焼戻しの熱処理によりに硬度調節ができれば、スチール以外の金属を用いることもできる。
なお、本実施例では、後述のように焼戻しに電磁誘導加熱を用いるため、管体3Aの材質は、電磁誘導可能なスチール等が好ましい。しかし、電磁誘導ができない材質であっても、焼き入れ、焼戻しの熱処理ができるものであればよい。例えば、電磁誘導が可能な材質のパイプ内に管体を通すことで管体を間接的に加熱処理して焼戻しを行わせることも可能である。
管体3Aは、長手方向で変化した硬度パターンを有し、硬度パターンは、管体3Aの長手方向でヤング率又は引張強さを焼戻しにより変えて設定した。硬度パターン及びシャフトの製造方法については、後述する。
前記管体3Aは、ゴルフ・シャフト3としてチップ3a側の先端部3bと、バット3c側のグリップ取付部3dと、両者間の中間部3eとを備えている。グリップ取付部3dは、前記グリップ5を取り付ける部分となる。先端部3bは、先端基部3fとヘッド取付部3ga、3gbとを備えている。ヘッド取付部3ga、3gbは、前記ヘッド7を取り付ける部分となる。
チップ3aからバット3cまでの全長Lmm、先端部3bの長さAmm、グリップ取付部3dの長さBmmとし、寸法Lmm、Amm、Bmmのスペックの例は、図3の図表に示すとおりである。なお、図3において、左欄のSIZE(サイズ)41.0インチ、40.5インチ・・・は、全長Lmmをインチに換算して表示したものである。
一般的なスペックとしてサイズ(SIZE)41.0〜37.0インチ、L=1041〜940mm、A=275〜174、B=241mmとし、ウエイト(WT)は、全て129.5グラムとした。このうち、矢印の段のスペックにおいて後述の使用感の試打に用いた。
ゴルフ・シャフト3の先端部3bにおいて先端基部3fは、均一径で形成されている。同ヘッド取付部3ga、3gbは、2段のテーパー部(図では「TAPERED」(テーパード))からなっている。
ゴルフ・シャフト3のグリップ取付部3dは、均一径で形成されている。
ゴルフ・シャフト3の中間部3eは、漸次径が大きくなる複数段の平行部により先端部3b側からグリップ取付部3d側に至っている。
ゴルフ・シャフト3の肉厚は、チップ3a側で相対的に厚くバット3c側で相対的に薄くなるように形成している。但し、本発明実施例の熱処理を前提として、ゴルフ・シャフト3の肉厚は、要求に応じて種々変更することができる。
[硬度パターン]
図4は、シャフトの硬度パターンを、チップからの距離との関係で示すグラフである。
本実施例では、ゴルフ・シャフト3の硬度パターンは、チップ3a側からバット3c側へ硬度を直線的に低下し又は上昇させた。
図4の横軸は、ゴルフ・シャフト3の長手方向に沿ったチップ3aからの距離(mm)、縦軸は、硬度(Hv)である。
図4のように、硬度パターンP1、P2、P3、P4は、チップ3aからバット3cまで硬度を直線的に低下させた例である。硬度パターンP5は、同硬度を直線的に上昇させた例である。
比較例の硬度パターンCPは、一般的なスチール・シャフトの例であり、チップ側からバット側への硬度の変化はない。
図5は、シャフトの硬度と引張強さとの関係のグラフ、図6は、シャフトの硬度とヤング率との関係のグラフである。
本願発明者らは、図4の硬度パターンを設定する前提として、複数本のサンプルについて、硬度(HV)と引張強さ(MPa)及びヤング率(GPa)との関係を引張試験により求めた。
サンプルは、日新製鋼製社製のスチール・シャフト、材質NSG8655、ストレートパイプ(φ15.50mm、肉厚0.31mm、長さ710mm)を用い、全体で均一に焼入れを行なった後、焼戻しを行なった。
引張試験条件は、以下の通りである。
試験装置:インストロン5586
ロードセル:300kNタイプ(インストロン社製)
試験速度:5mm/min
チャック方式:長さ65mm、径(シャフト内径−0.2mm)の芯金を使用
試験片形状:JIS11号
試験片全長:300mm
原標点距離:50mm
チャック間距離:220mm
ひずみゲージを貼り付け
試験結果は、図5、図6の通りである。図5のように、硬度が高くなると引張強さが大きくなる傾向があった。図6のように、硬度が高くなるとヤング率が小さくなる傾向があった。
このことより、前記のようにゴルフ・シャフト3の長手方向でヤング率又は引張強さを変えて硬度パターンP1〜P5を設定した。
図4の硬度パターンP3は、他の硬度パターンP1、P2、P4、P5と比較してチップ3a側が相対的に硬質、バット3c側が相対的に大きく軟質となっている。これを簡略的に示しP3(チップ硬→バット軟大)と表す。P4、P5についても同様に相対的に簡略表示するとP4(チップ過硬→バット軟大)、P5(チップ軟中→バット硬)となる。
硬度パターンP3、P4、P5のゴルフ・クラブとしての使用感の試打は、同一のプロゴルファーにより行われ、比較例に対して次の通りであった。この場合、比較例は、焼き入れ、焼戻しの熱処理をゴルフ・シャフトの全長で一定とし、長手方向で肉厚を変化させて硬さを変化させたものを用いた。
比較例の使用感としては、インパクトまでにヘッドが遅れてくるフィーリングと手元の重量感の点で、一般的なユーザーに好まれるものとした。
硬度パターンP3は、比較例に対しやや軽く感じると判定された。
硬度パターンP4は、比較例に対しより軽く感じ、遊びがないと判定された。
硬度パターンP5は、重量感と独特のしなり戻り感を感じると判定され、使用感としては比較例に近く、リリースポイントも近いものがあると判定された。
このように、硬度パターンを付与する前のゴルフ・シャフトの形状的なスペックが同じでも、硬度パターンを変えることで、様々な使用感のゴルフ・シャフトにすることができた。
なお、硬度パターンは、図4に限らず、ゴルフ・シャフトの長手方向でヤング率又は引張強さを変えることにより任意に得ることができる。
図7は、シャフトの硬度パターンとチップからの距離との関係のその他のパターンを示すグラフである。
図4と同様に、図7の横軸は、管体3Aの長手方向に沿ったチップ3cからの距離(mm)、縦軸は、硬度(Hv)である。
図7のように、パターンP6、P7、P8は、チップ3cからグリップ・エンド3dまで硬度を曲線的に低下させ又は上昇させた例である。P6は、途中で硬度を低下させ、その後上昇させるようにした。P7は、上に凸、P8は、下に凸となるように変化させた。
さらに、図4と図7との硬度パターンを合わせた直線的及び曲線的に硬度を低下させ又は上昇させてもよい。
このように、ゴルフ・シャフト3の形状を変えずに、任意の硬度パターンとし、使用感を設定することができる。
[試打]
図8は、評価対象のゴルフ・クラブの仕様を示す図表、図9は、試打ロボットによる測定概要を示す説明図、図10は、試打ロボットにより試打結果(キャリー)を比較例との関係で示すグラフ、図11は、試打ロボットにより試打結果(トータル)を比較例との関係で示すグラフである。
図8のように、評価に用いたゴルフ・クラブの仕様は、7番アイアン、クラブ長さ36.75インチ、総重量439.7グラム、バランスD3.0、ライ62.3°、FP3.0mm、ロフト32.0°とした。
比較例は、通常焼戻しを行い、ゴルフ・シャフト全体で均一に焼き入れ、焼戻しを行った。実施例は、硬度パターンP5を用いた。試打に用いた比較例及び実施例は、熱処理以外を同一スペックとした。
図9のように、ゴルフ・ボール9を試打ロボットにより矢印方向に打ち出し、飛距離測定器A、Bにより飛距離を測定した。飛距離測定器Aは、ゴルフ・ボール9の前方150mmで右側350mmの位置に配置した。飛距離測定器Bは、ゴルフ・ボール9の真後ろ3000mmに配置した。
飛距離測定器Aの測定値で左右ブレ平均値(8回測定)が±5ヤード以内になるようにロボットの段取りを行い、その条件下で飛距離測定器Bを、その測定値で左右ブレ平均値が±5ヤード以内になるように設置した。
試打ロボットは、株式会社ミヤマエ製の「ROBO−10」を使用した。
飛距離測定器Aは、株式会社GPRO製の「Vector Pro」、飛距離
測定器Bは、TrackMan社製の「TMANII」を用いた。以下、飛距離測定器Aは、アキュベクター、飛距離測定器Bは、トラックマンとも称する。
ロボットのスイングパターンは、40M−5I−JP2(腰固定)、ロボットライ角は、55°、ヘッドスピードは、35m/sとした。
試打結果は図10、図11の通りである。図10は、キャリー、図11は、ランを含めたトータルの飛距離で比較した。
図10のキャリーにおいて、アキュベクターAでは、比較例が131.8ヤード、実施例が133.0ヤード、トラックマンBでは、比較例が130.2ヤード、実施例が130.8ヤードであった。
図11のランにおいて、アキュベクターAでは、比較例が135.2ヤード、実施例が136.3ヤード、トラックマンBでは、比較例が144.5ヤード、実施例が145.4ヤードであった。
このように、実施例のように硬度パターンを設定することで、同一の形状スペックで熱処理のみが異なる比較例に対し、キャリー、ラン共に上回ることができた。
このことと、プロゴルファーによる使用感を合わせ、硬度パターンの設定による効果は、極めて優れたものであると言える。
[焼戻し装置]
図12は、ゴルフ・シャフトの焼戻し装置を示す概略図、図13は、ゴルフ・シャフトの焼戻し装置のチャックを示す要部拡大概略断面図である。
図12のように、ゴルフ・シャフトの焼戻し装置11は、チャック13とチャック駆動部15と加熱コイル17及び高周波電源19と焼戻し制御部21とを備えている。
チャック13は、シャフトの端部を掴むものであり、ゴルフ・シャフト3のバット側を掴んで加熱コイル17のコイル中心部に対応するように配置させるものである。
チャック駆動部15は、チャック13を支持してゴルフ・シャフト3を長手方向に移動させるように駆動するものであり、ボールねじと駆動モーターで構成されている。このチャック駆動部15は、モーター駆動によりボールねじを回転させる。このボールねじの回転によりチャック13を設定速度で直線的に下降させ、ゴルフ・シャフト3を加熱コイル17のコイル中心部の上から下へ通過させるように移動させる。
また、チャック駆動部15は、チャック13を掴み移動させ、後述するロットの中から焼き入れ後のゴルフ・シャフトを1本ずつ掴み、チャック13を元の位置に戻すことを可能とする。
加熱コイル17は、高周波電流が通電制御される加熱部であり、ゴルフ・シャフト3を通過させながら加熱するものである。具体的には、加熱コイル17への電圧制御による電磁誘導加熱によりコイル中心部を下降するゴルフ・シャフト3を設定温度に加熱する。
高周波電源19は、加熱コイル17に高周波電流を供給し設定電圧を印加するものである。
なお、加熱部は、シャフトを焼戻しのために加熱できればよく、電磁誘導加熱以外にも、輻射熱等で加熱するものなど、各種の加熱部に適用することができる。
焼戻し制御部21は、チャック駆動部15及び加熱コイル17を制御してゴルフ・シャフト3が加熱コイル17を通過する設定速度及び加熱コイル17による加熱の設定温度をゴルフ・シャフト3の長手方向で変化させるものである。
すなわち、焼戻し制御部21は、チャック駆動部15及び高周波電源19に接続され、両者を予め設定されたプログラムに応じて制御する。チャック駆動部15に対しては、その駆動速度を制御し、ゴルフ・シャフト3の加熱コイル17に対する下降速度を設定速度に制御する。高周波電源19に対しては、加熱コイル17に対して高周波電流を通電制御する。この通電制御により加熱コイル17に印加する電圧を制御し、加熱コイル17のコイル中心を下降するゴルフ・シャフト3の加熱温度を設定温度に制御する。
つまり、ゴルフ・シャフト3を加熱するための設定温度は、焼戻し制御部21が高周波電源19を制御して変化させることになる。ゴルフ・シャフト3を下降させる設定速度は、焼戻し制御部21がチャック駆動部15を制御して変化させることになる。
図13のように、チャック13は、チャック・ベース13a、チャック爪13b、チャック芯棒13cを備えている。
チャック・ベース13aは、先端部側に一対のチャック爪13bを回転自在に支持し、軸心部に芯棒ガイド穴13dを備えている。芯棒ガイド穴13dに支持されたチャック芯棒13cの先端がチャック爪13b間に対向している。芯棒ガイド穴13dは、エア供給のON、OFF用の切換え弁13eを介してエア供給部に接続されている。切換え弁13eは、焼戻し制御部21に接続され、焼戻し制御部21により切換え制御される。
したがって、焼戻し制御部21の制御によりチャック13が掴み移動し、切換え弁13eがエア供給のON側に切り替えられると、エア供給部から芯棒ガイド穴13dにエアが供給される。このエアの供給によりチャック芯棒13cの上端にエア圧が働き、チャック芯棒13cが芯棒ガイド穴13dに沿って下降する。このチャック芯棒13cの下降により一対のチャック爪13bが押し広げられる。
押し広げられたチャック爪13bはチャック・ベース13aから側方に突出する。突出したチャック爪13bは、チャック・ベース13aの先端部に嵌合したゴルフ・シャフトに内径側から当接係合する。この当接係合によりチャック13がゴルフ・シャフト3の上部を図12のように掴む。
なお、チャック13は、加熱をゴルフ・シャフト3の円周方向でさらに均一にするために回転できるようにしてもよい。
[熱処理によるゴルフ・シャフトの製造方法]
本発明実施例の熱処理は、管体の全体を一度に焼入れする焼入れ工程と、前記焼入れ後の管体を焼き戻す焼戻し工程とを備え、前記焼戻し工程は、前記管体の長手方向で焼戻し条件を変えている。
焼き入れ工程は、ロットで行われ、熱処理前のゴルフ・シャフトを、バット側を上に向けて籠に一括して収容する。収容されたゴルフ・シャフト群をロットで電気炉により全体均一の温度で加熱処理後、そのまま油槽に入れ、油焼き入れする。この焼き入れ処理により各ゴルフ・シャフトは全体が一度に焼き入れされる。
この焼き入れで、ゴルフ・シャフトの材質がマルテンサイト組織となり、次の焼戻し工程の焼戻し処理により靱性を回復させ、強度と耐久性を持たせる。
焼戻し工程では、前記焼戻し装置11が用いられ、ゴルフ・シャフト3の長手方向で焼戻し条件を変えて焼戻し処理が行われる。つまり、焼戻し装置11によりゴルフ・シャフト3の掴み、加熱コイル17での設定温度による加熱、加熱コイル17に対する設定速度による下降が行われる。設定温度による加熱及び設定速度による下降は、焼戻し条件となる。
したがって、焼戻し制御部21に予め設定したプログラムを記憶させ、設定温度による加熱及び設定速度による下降をゴルフ・シャフト3の長手方向で変化させることで図4、図7等の硬度パターンを容易に得ることができる。
まず、ゴルフ・シャフト3の掴みでは、焼き入れ後に籠ごと搬送されたロットのゴルフ・シャフト群に対し、焼戻し制御部21の制御によりチャック13が掴み移動し、1本のゴルフ・シャフト3を掴む。この掴みは、焼戻し制御部21の制御によるエア供給によりチャック爪13bが押し広げられることで行われる。
1本のゴルフ・シャフト3がチャック13に掴まれると、焼戻し制御部21の制御によりチャック13が元の位置に戻され、掴まれたゴルフ・シャフト3が加熱コイル17のコイル中心に合わせて上方に配置される。
設定温度による加熱では、焼戻し制御部21が高周波電源19を制御し、加熱コイル17によるゴルフ・シャフト3の電磁誘導による発熱が制御される。設定温度は、通電制御により加熱コイル17に印加される電圧に対応する。したがって、設定温度は、加熱コイル17に加える電圧によりコントロールされる。
設定速度による下降では、焼戻し制御部21がチャック駆動部15を制御し、加熱コイル17に対してゴルフ・シャフト3を下降させる。設定速度は、ゴルフ・シャフト3が加熱コイル17のコイル中心を通過する速さである。したがって、設定速度は、ゴルフ・シャフト3が加熱コイル17を下降通過する速度としてコントロールされる。
これら加熱温度及び下降速度により、図14のようにゴルフ・シャフト3のチップ3a側から加熱される。図14では、加熱の程度を濃淡で表現している。
加熱がバット3c側まで完了したら焼戻し制御部21により切換え弁13eがOFFに制御され、チャック芯棒13cに対するエア圧が解除される。このエア圧解除によりチャック爪13bが自重により閉じ動作し、ゴルフ・シャフト3の掴みが解除され、ゴルフ・シャフト3はそのまま落下する。
落下したゴルフ・シャフト3は、そのまま大気により冷やされ、引張強さ、ヤング率がゴルフ・シャフト3の長手方向で変化して設定される。この設定によりゴルフ・シャフト3の長手方向での各部の硬度が設定され、靱性が回復され、強度と耐久性が維持される。
こうして、加熱温度及び下降速度をチップ3a側からバット3c側まで変化させることで任意の硬度パターンを設定することができる。
例えば、図4の硬度パターンP5では、チップ3a側での加熱温度が相対的に高く、バット3c側へ漸次低くなる加熱温度が設定される。下降速度は硬度パターンP5の傾斜に応じたものとなる。同図硬度パターンP1〜P4では、チップ3a側での加熱温度が相対的に低く、バット3c側へ漸次高くなる加熱温度が設定される。
図7の硬度パターンP6、P7、P8では、加熱コイル17に対する下降速度を途中で早めるように、或いは遅くするように設定する。
[実施例の効果]
本発明実施例では、中空状金属製の管体3Aでなるゴルフ・シャフト3であって、ゴルフ・シャフト3は、長手方向で変化した硬度パターンP1〜P8等を有し、硬度パターンP1〜P8等は、ゴルフ・シャフト3の長手方向でヤング率、引張強さを焼戻し処理により変えて設定した。
このため、ゴルフ・シャフト3の長さ、チップ3aからバット3cに至る長手方向に沿った断面形状、肉厚等の形状が同一であっても、長手方向でヤング率又は引張強さを変えることで硬度パターンを設定し、形状の数を抑制しながら使用感、飛距離等の異なるゴルフ・クラブ1を得ることができる。
ゴルフ・シャフト3は、同一形状でありながらゴルフ・クラブ1としての打感を変えることができ、剛性分布を変化させることにより、弾道を変えることができる。
また、ゴルフ・シャフト3として同一形状でありながら強度分布を変えることができ、ゴルフ・クラブ1としてバランスを維持することができる。
同一形状でありながら種々の特性のゴルフ・シャフト3を得ることができ、ゴルフ・シャフト3の形状の数を少なくすることができ、品質が安定する。但し、形状種の異なるゴルフ・シャフト3に同一の熱処理により長手方向で剛性パターンを変化させてもよい。
さらに、軽量化設計と特性の設計とを切り分け、軽量化を維持したまま、ユーザーに合った仕様(キックポイントなど)を持つゴルフ・クラブ1を提供することができる。
前記ゴルフ・シャフト3の硬度パターンは、チップ3側からバット3c側へ硬度を直線的に又は曲線的に若しくは直線的及び曲線的に低下させ又は上昇させた。
このため、硬度パターンP1〜P8等を種々自由に設定することができ、同一形状でありながら使用感、飛距離等の異なる品数を得ることができる。
前記ゴルフ・シャフト3の全体を一度に焼入れする焼入れ工程と、焼入れ後のゴルフ・シャフト3を焼き戻す焼戻し工程とを備え、焼戻し工程は、ゴルフ・シャフト3の長手方向で焼戻し条件を変えた。
このため、ゴルフ・シャフト3の長手方向でヤング率又は引張強さを変え、硬度パターンP1〜P8等を種々自由に設定することができる。
前記焼戻し工程は、ゴルフ・シャフト3を設定温度で加熱を行わせる加熱コイル17に対し設定速度で通過させ、焼戻し条件は、設定温度及び設定速度であり、加熱コイル17は、高周波電流が通電制御され、設定温度は、加熱コイル17に印加される電圧に対応し、設定速度は、ゴルフ・シャフト3が加熱コイル17のコイル中心を通過する速さである。
このため、加熱コイル17に印加される電圧を制御することで設定温度をゴルフ・シャフト3の長手方向で容易に変化させることができ、ゴルフ・シャフト3が加熱コイル17のコイル中心を通過する速さを制御することで設定速度を容易に変化させることができる。
焼戻し装置11は、ゴルフ・シャフト3の端部を掴むチャック13と、チャック13を駆動してゴルフ・シャフト3を長手方向に移動させるチャック駆動部15と、ゴルフ・シャフト3を通過させながら加熱する加熱コイル17と、チャック駆動部15及び加熱コイル17を制御して設定速度及び設定温度をゴルフ・シャフト3の長手方向で変化させる焼戻し制御部21とを備えた。設定温度は、焼戻し制御部21が高周波電源19を制御して変化させ、設定速度は、焼戻し制御部21がチャック駆動部15を制御して変化させる。
このため、チャック13によりゴルフ・シャフト3の端部を掴み、チャック駆動部15によりゴルフ・シャフト3を長手方向に移動させ加熱コイル17のコイル中心で移動させることができる。このとき、ゴルフ・シャフト3が加熱コイル17を通過する設定速度及び加熱コイル17による加熱の設定温度をゴルフ・シャフト3の長手方向で変化させ、長手方向でヤング率又は引張強さを変えることで硬度パターンP1〜P8等を設定することができる。
[その他]
本発明のシャフト、シャフトの製造方法、焼戻し装置は、ゴルフ・シャフト以外にも、焼入れ後、焼戻しにより硬さを設定する可能性のある製品、例えば、野球用、ソフトボール用のバット、スキーやトレッキング用のポール、テレビ用アンテナなども適用することができ、上記同様の効果を奏することができる。
特に、バットでは、形状を変えずに硬度パターンを変化させることで、重量を一定にすることができる。
スキーやトレッキング用のポールでも、軽量化を図りながら競技者に対する当たりのフィーリングを設定することができる。
テレビ用アンテナにおいても、軽量化を図りながら風力等に対抗させることができる。
1 ゴルフ・クラブ
3 ゴルフ・シャフト
3A 管体
3a チップ
3b 先端部
3c バット
3d グリップ取付部
3ga、3gb ヘッド取付部
5 グリップ
7 ヘッド
11 焼戻し装置
13 チャック
15 チャック駆動部
17 加熱コイル(加熱部)
19 高周波電源
21 焼戻し制御部
P1〜P8 硬度パターン

Claims (9)

  1. 中空状金属製の管体でなるシャフトであって、
    前記管体は、長手方向で変化した硬度パターンを有し、
    前記硬度パターンは、前記管体の長手方向でヤング率又は引張強さを焼戻し処理により変えて設定した、
    ことを特徴とするシャフト。
  2. 請求項1記載のシャフトを用いたゴルフ・シャフトであって、
    前記管体は、チップ側にヘッドを取り付けるヘッド取付部を備え、バット側にグリップを取り付けるグリップ取付部を備えた、
    ことを特徴とするゴルフ・シャフト。
  3. 請求項2記載のゴルフ・シャフトであって、
    前記管体の硬度パターンは、前記チップ側から前記バット側へ硬度を直線的に又は曲線的に若しくは直線的及び曲線的に低下させ又は上昇させた、
    ことを特徴とするゴルフ・シャフト。
  4. 請求項2又は3記載のゴルフ・シャフトを用いたゴルフ・クラブであって、
    前記ヘッド取付部にヘッドを取り付け、前記グリップ取付部にグリップを取り付けた、
    ことを特徴とするゴルフ・シャフトを用いたゴルフ・クラブ。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載のシャフトの製造方法であって、
    前記管体を焼入れする焼入れ工程と、
    前記焼入れ後の管体を焼き戻す焼戻し工程とを備え、
    前記焼戻し工程は、前記管体の長手方向で焼戻し条件を変えた、
    ことを特徴とするシャフトの製造方法。
  6. 請求項5記載のシャフトの製造方法であって、
    前記焼戻し工程は、前記管体を設定温度で加熱する加熱部に対し設定速度で通過させ、
    前記焼戻し条件は、前記設定温度及び設定速度である、
    ことを特徴とするシャフトの製造方法。
  7. 請求項6記載のシャフトの製造方法であって、
    前記加熱部は、高周波電流が通電制御される加熱コイルであり、
    前記設定温度は、前記加熱コイルに印加される電圧に対応し、
    前記設定速度は、前記管体が前記加熱コイルのコイル中心を通過する速さである、
    ことを特徴とするシャフトの製造方法。
  8. 請求項5〜7の何れか1項に記載のシャフトの製造方法に用いる焼戻し装置であって、
    前記シャフトの端部を掴むチャックと、
    前記チャックを駆動して前記シャフトを長手方向に移動させるチャック駆動部と、
    前記移動するシャフトを通過させながら加熱する加熱部と、
    前記加熱部及び前記チャック駆動部を制御して前記設定温度及び前記設定速度を前記シャフトの長手方向に対して変化させる焼戻し制御部と、
    を備えたことを特徴とする焼戻し装置。
  9. 請求項8記載の焼戻し装置であって、
    前記加熱部は、高周波電源により駆動される加熱コイルであり、
    前記設定温度は、前記焼戻し制御部が前記高周波電源を制御して変化させ、
    前記設定速度は、前記焼戻し制御部が前記チャック駆動部を制御して変化させる、
    ことを特徴とする焼戻し装置。
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