しかしながら、このセパレータを用いて形成された燃料電池は、セパレータの表面に形成された溝が燃料及び酸素の通路となるため、アノード及びカソード内での滞留時間は長くなるが、流動させるために高い圧力を必要とする。特に、米国特許第5599638号明細書に開示されている燃料電池システムにおいては、メタノール貯蔵タンクから循環タンクへの燃料給送のポンプも必要となることから、燃料をアノードに供給する補機系でポンプを2つ使用することとなる。このような場合にあっては、燃料電池システムの小型化を図ることができず、携帯電子機器等への適用が困難なものとなるという問題がある。
また、このように燃料供給のための補機系が必要とされるような構成においては、当該補機系の駆動に必要な電力を燃料電池システムによる発電により補う必要がある。そのため、当該補機系の駆動のための電力供給が、燃料電池システムにおける発電の効率化を阻害するという問題もある。特に、このような問題は、燃料電池システム自体の小型化が図られるに連れて、より顕著な問題となる傾向にある。例えば、燃料電池システムの発電出力が12Wであれば、補機の消費電力は2W以下とすることが好ましい。
また、高い発電出力の燃料電池システムとするためには、当該システムに用いられる燃料電池本体を複数搭載すればよいが、独立した燃料電池本体を単純に複数用いるだけでは個々の燃料電池の発電に必要な補機の消費電力も増大し、システム全体が大型化する。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、メタノール等の有機液体燃料を用いて発電を行う燃料電池において、燃料供給系等の補機構成の小型簡素化及び省電力化を図ることができる燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、厚み方向に扁平で表面に凹凸が形成されたアノード側セパレータを有するアノードと、カソードと、上記アノードと上記カソードとの間に存在する膜電極組立体とを有する燃料電池本体を備え、少なくとも上記燃料電池本体の上記アノード側が液体燃料中に浸漬するように配置されることを特徴とする燃料電池を提供する。
本発明の第2態様によれば、上記アノードに供給される液体燃料を貯留し、上記燃料電池本体の少なくとも上記アノード側が上記液体燃料中に浸漬するように配置される容器を備え、
上記燃料電池本体は、上記アノード側セパレータの表面に設けられた凹凸と上記膜電極組立体の表面によって囲まれた領域を、上記液体燃料が流動する燃料用通路として画定し、
上記燃料用通路は、上記液体燃料の導入口から当該導入口よりも高位置に設けられた排出口まで略一方向に延在して、当該導入口と当該排出口とを連通する第1態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第3態様によれば、上記アノード側セパレータは波形状に形成された板体で構成される第1態様又は第2態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第4態様によれば、上記アノード側セパレータは、上記膜電極組立体に接触しない側の表面に形成される谷部に対して、前記膜電極組立体に接触する側の表面に形成される谷部が大きくなるような波形状に形成されている第3態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第5態様によれば、上記アノード側セパレータは、その表面から裏面にまで貫通する貫通穴を有し、当該貫通穴は上記表面側の燃料用通路と上記裏面側の燃料用通路とを連通する燃料用通路となる第3態様又は第4態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第6態様によれば、上記略一方向に延在する燃料用通路は、上記導入口と上記排出口とを結ぶ方向に対して傾斜して配置される第1態様から第5態様のいずれか1つに記載の燃料電池を提供する。
本発明の第7態様によれば、上記カソードは、厚み方向に扁平で表面に凹凸が形成されたカソード側セパレータを有する第1態様から第6態様のいずれか1つに記載の燃料電池を提供する。
本発明の第8態様によれば、第7態様に記載の上記燃料電池に用いられる上記燃料電池本体が厚み方向に複数密着して連結された連結燃料電池本体を有し、
上記それぞれの燃料電池本体にて、上記アノード側セパレータ及び上記カソード側セパレータは、上記膜電極組立体に接している側の表面に上記凹凸を有し、隣接する上記それぞれの燃料電池本体同士にて同じ種類の上記セパレータを共用可能に、当該隣接するそれぞれの燃料電池本体の同じ極が対向して配置される燃料電池を提供する。
本発明の第9態様によれば、上記共用されるカソード側セパレータは非導電性材料で形成され、上記それぞれの膜電極組立体において当該カソード側セパレータと接される表面に配置されたそれぞれの導電性の拡散層が上記それぞれのカソード側の電極となる第8態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第10態様によれば、上記連結燃料電池本体は、その全体が上記容器に収容された液体燃料に浸漬して配置される第8態様又は第9態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第11態様によれば、上記共用されるカソード側セパレータは、厚み方向に貫通して設けられたスリット状の長穴を酸素用通路として備える第8態様から第10態様のいずれか1つに記載の燃料電池を提供する。
本発明の第12態様によれば、上記長穴は蛇行した形状である第11態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第13態様によれば、上記それぞれのアノード側セパレータにおいて、上記略一方向に延在する燃料用通路は、上記導入口と上記排出口とを結ぶ方向に対して傾斜して配置され、かつ、一の上記アノード側セパレータにおける上記傾斜方向が、その隣に配置される上記アノード側セパレータにおける上記傾斜方向と逆向きである第8態様から第12態様のいずれか1つに記載の燃料電池を提供する。
本発明の第14態様によれば、上記アノード側セパレータは、樹脂で形成されている第1態様から第13態様のいずれか1つに記載の燃料電池を提供する。
本発明の第15態様によれば、第7態様に記載の上記燃料電池に用いられる上記燃料電池本体が厚み方向に複数密着して連結された連結燃料電池本体を有し、
上記それぞれの燃料電池本体にて、上記アノード側セパレータ及び上記カソード側セパレータは、上記膜電極組立体に接している側の表面に上記凹凸を有し、隣接する上記それぞれの燃料電池本体の異なる極が対向して配置され、
当該隣接する燃料電池本体間において上記互いに異なる極同士を電気的に接続可能に、当該間に配置される上記セパレータの周部の少なくとも一部に導電性材料にて形成された導電部が形成される燃料電池を提供する。
本発明の第16態様によれば、上記セパレータにおいて、上記凹凸を形成する部分が非導電性材料にて形成され、上記導電部は上記周部全体に配置されて形成されている第15態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の第17態様によれば、厚み方向に扁平で表面に波形形状が形成されたアノード側セパレータを有するアノードと、厚み方向に扁平で表面に凹凸が形成された非導電性のカソード側セパレータを有するカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に存在する膜電極組立体とを有する燃料電池本体を備えることを特徴とする燃料電池を提供する。
本発明の第18態様によれば、厚み方向に扁平で表面に波形形状が形成されたアノード側セパレータを有するアノードと、非導電性のカソード側セパレータを有するカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に存在する膜電極組立体とを有する燃料電池本体を備え、上記燃料電池本体の少なくとも上記アノード側が液体燃料中に浸漬するように配置されることを特徴とする燃料電池を提供する。
本発明の第19態様によれば、厚み方向に扁平で表面に凹凸が形成されたアノード側セパレータを有するアノードと、カソードと、上記アノードと上記カソードとの間に存在する膜電極組立体とを有する燃料電池本体と、
上記アノードに供給される液体燃料を収容し、上記燃料電池本体の少なくとも上記アノードを、当該液体燃料中に浸漬するように配置させる容器とを備え、
上記燃料電池本体は、上記アノード側セパレータの表面に形成された上記凹凸と上記膜電極組立体の表面によって囲まれた領域を、上記液体燃料が流動する燃料用通路として有し、
当該燃料用通路は、当該燃料用通路の導入口から、当該導入口よりも高位置に設けられた排出口まで略一方向に延在するように配置されることを特徴とする燃料電池を提供する。
本発明の第20態様によれば、厚み方向に扁平で表面に凹凸が形成されたアノード側セパレータを有するアノードと、非導電性材料からなる厚み方向に扁平で表面に凹凸が形成されたカソード側セパレータを有するカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に存在する膜電極組立体とを有する燃料電池本体と、
上記アノードに供給される液体燃料を収容し、上記燃料電池本体の少なくとも上記アノードを、当該液体燃料中に浸漬するように配置させる容器とを備え、
上記燃料電池本体は、上記アノード側セパレータの表面に形成された上記凹凸と上記膜電極組立体の表面によって囲まれた領域を、上記液体燃料が流動する燃料用通路として有し、
当該燃料用通路は、当該燃料用通路の導入口から、当該導入口よりも高位置に設けられた排出口まで略一方向に延在するように配置されることを特徴とする燃料電池を提供する。
本発明の第21態様によれば、上記膜電極組立体において、当該カソード側セパレータと接される表面に配置された導電性の拡散層が上記カソード側の電極となる第20態様に記載の燃料電池を提供する。
本発明の上記第1態様によれば、燃料電池本体におけるアノードが容器に収容された液体燃料中に浸漬するように配置され、当該容器に収容された上記液体燃料をアノードに通過させて供給可能とさせるものである。上記燃料電池本体のアノードは、アノード側セパレータと膜電極組立体によって形成された燃料用通路を有し、当該燃料用通路に上記液体燃料を通過させることができる。この上記燃料用通路を通る途中に、当該液体燃料は、アノード反応により分解し、プロトンと二酸化炭素となる。したがって、上記アノード内で発生した二酸化炭素によって、当該アノード内の上記液体燃料の流動が行われ、長時間にわたり発電を行うことができる。
本発明の上記第2態様によれば、上記燃料用通路を導入口から当該導入口よりも高位置に設けられた排出口まで略一方向に延在するように構成しているため、当該燃料用通路を通る途中にアノード反応により発生した二酸化炭素が上昇して上記排出口方向に移動するため、当該排出口側の上記燃料用通路ほど液体密度が低くなり、液体を排出口側に送り出そうとする推力が働くことにより、上記液体燃料の流動が実現可能となる。
したがって、ポンプなどの特別な動力を必要とすることなく、上記液体燃料を上記アノード内に効率よく供給することができ、補機が少なく、小型で軽量な燃料電池を提供することが可能となる。
本発明の上記第3態様によれば、上記アノード側セパレータが波形状に形成されていることにより、当該アノード側セパレータと上記膜電極組立体との接触面積を小さくして、上記燃料用通路内の上記液体燃料が当該膜電極組立体の表面に接触する面積を大きくすることができるので、より効率よくアノード反応を進行させることができる。従って、効率的な発電を行うことができる燃料電池を提供することができる。
本発明の上記第4態様によれば、上記アノード側セパレータにおける上記波形の形状が、上記膜電極組立体に接触しない側の表面に形成される谷部に対して、接触する側の谷部が大きくなるように形成されていることにより、当該膜電極組立体に接触する側の上記燃料用通路の容積を大きくすることができ、より多くの液体燃料を流通可能となることから、上記アノード反応において反応可能な液体燃料の体積を増大させて、生成するプロトン及び二酸化炭素の量を増やすことができる。したがって、上記アノードにおいてより効率よく液体燃料を対流させることができる。
本発明の上記第5態様によれば、上記アノード側セパレータの表面沿いの方向に傾きを持って燃料電池が配置される場合であっても、当該アノード側セパレータに形成された当該貫通穴を通って、当該セパレータにおける一方の表面側から他方の表面側へと二酸化炭素を移動させることができるため、上記液体燃料が上記アノード内で滞留することを防止し、より効率的に液体燃料をアノードに供給することができる。
本発明の上記第6態様によれば、上記燃料用通路が、上記導入口と上記排出口とを結ぶ方向に対して傾斜して配置されていることにより、当該傾斜された燃料用通路に沿って二酸化炭素を移動させることができ、上記液体燃料の上記アノード内での滞留を防止し、より効率的に液体燃料をアノードに供給することができる。
本発明の上記第7態様によれば、上記燃料電池本体において、上記アノード側において配置された上記アノード側セパレータに加えて、上記カソード側においてカソード側セパレータが配置されているような場合であっても、上記それぞれの態様による効果を得ることができる燃料電池を提供することができる。
本発明の上記第8態様によれば、上記それぞれのセパレータにおいて、上記膜電極組立体に接している側の表面に上記凹凸が形成され、隣接する上記それぞれの燃料電池本体同士にて同じ極が対向して配置されることのより、当該隣接するそれぞれの燃料電池本体において、同じ種類のセパレータを共用することができる。したがって、それぞれの燃料電池本体が連結されて形成された連結燃料電池本体を小型に構成することができる。
また、上記連結燃料電池本体が備える上記それぞれの燃料電池本体は、上述したように、上記それぞれの燃料用通路にポンプ等の動力を要するような特別の構成を必要とすることなく、上記液体燃料を効率よくアノードに供給することができるため、上記複数の燃料電池本体を組み合わせたとしても、システム全体として必要な補機の数を増やす必要がなく、自己消費電力の増加割合を少なくすることができる。
本発明の上記第9態様によれば、上記セパレータを非導電性材料で構成することにより、同じ極である隣り合う別の上記燃料電池本体の極の電荷が混在しないようにすることができる。したがって、連結した複数の上記燃料電池本体により発電される電力が低下することなく、上記それぞれの燃料電池本体において発電された電力の和を、上記連結燃料電池本体全体としての出力とすることができる。また、このように上記共用されるカソード側セパレータが非導電性材料にて形成されるような場合であっても、上記それぞれの膜電極組立体において当該カソード側セパレータと接される表面に配置されたそれぞれの導電性の拡散層が、上記それぞれのカソードにおける電極としての機能をも有することで、発電による得られる電力を出力することができる。また、上記カソード側セパレータを導電性材料ではなく、非導電性材料とすることで、上記導電性材料を用いた場合と比べて電圧を高く取ることができる。
本発明の上記第10態様によれば、上記連結燃料電池本体の上記各アノード側セパレータの全ての導入口が上記容器内に配置されることとなり、簡単な構成で上記それぞれのアノードへの上記液体燃料の供給を効率よく行うことができる。
本発明の上記第11態様によれば、上記共用されるカソード側セパレータが、厚み方向に貫通して設けられた長穴を酸素用通路として備えることで、当該酸素用通路を上記隣接する2つの燃料電池本体に対する酸素用通路として用いることができ、簡単な構成で共用可能なカソード側セパレータを形成することができる。
本発明の上記第12態様によれば、上記酸素用通路として形成された上記長穴が蛇行した形状であることにより、当該酸素用通路を通して上記カソードに効率的に酸素を供給することができる。
本発明の上記第13態様によれば、上記それぞれのアノード側セパレータにおいて、上記燃料用通路が上記導入口と上記排出口とを結ぶ方向に対して傾斜して配置され、一の上記アノード側セパレータにおける上記燃料用通路の傾斜方向が、その隣に配置される上記アノード側セパレータにおける上記燃料用通路の傾斜方向と逆向きとされていることにより、上記連結燃料電池本体が傾斜して配置されるような場合であっても、いずれかの上記アノード側セパレータにおいて、二酸化炭素の移動を確保することができる。したがって、上記液体燃料の上記アノード内での滞留を防止し、より効率的に液体燃料をアノードに供給することができる。
本発明の上記第14態様によれば、上記アノード側セパレータが樹脂で形成されることで、当該セパレータを軽量かつその成型を容易とすることができ、複雑な溝形状の量産を可能とすることができる。
本発明の上記第15態様によれば、複数の上記燃料電池本体を連結して連結燃料電池本体が形成されるような場合に、隣接するそれぞれの上記燃料電池本体における互いに異なる極同士を連結、すなわち、直列状態での連結を実現することができる。また、上記互いに異なる極の間に配置される上記セパレータの周部の少なくとも一部に導電性材料にて形成された導電部が形成されていることにより、それぞれの導電部同士を接続することで、連結のための配線等を要することなく、上記直列的な連結を実現することができる。したがって、上記連結燃料電池本体における構成の簡素化を図ることができ、小型軽量化された燃料電池を提供することができる。
本発明の上記第16態様によれば、上記セパレータの外周部分の全体に渡って、上記導電部が形成されていることで、隣接する極同士を電気的により安定した状態で接続することができる。
本発明のその他の態様によれば、上記第1態様による効果に加えて、上記カソードに非導電性材料で形成されたカソード側セパレータが備えられていることにより、例えば、上記非導電性材料として樹脂材料を用いるような場合にあっては、当該セパレータを軽量かつその成型を容易とすることができ、複雑な溝形状の量産を可能とすることができる。
また、当該カソード側セパレータが非導電性材料にて形成されるような場合であっても、上記膜電極組立体において当該カソード側セパレータと接される表面に配置された導電性の拡散層が、上記カソードにおける電極としての機能をも有することで、上記燃料電池本体において発電による得られる電力を出力することができる。また、上記カソード側セパレータを導電性材料ではなく、非導電性材料とすることで、上記導電性材料を用いた場合と比べて電圧を高く取ることができる。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。以下、本発明の各実施形態に係る燃料電池(燃料電池システムというような場合であってもよい)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。図2は、図1の燃料電池システムに用いられる燃料電池本体の概略構成を示す図である。
図1、図2に示すように、燃料電池システム1は、燃料の持つ化学エネルギーを電気化学的に電気エネルギーに変換して発電を行なう発電部である燃料電池本体2と、この発電に必要な燃料等を燃料電池本体2に供給する等の補機系とを備えている。また、この燃料電池システム1は、有機系の液体燃料の一例であるメタノール水溶液を燃料として、このメタノールから直接的にプロトンを取り出すことにより発電を行なう直接型メタノール燃料電池(DMFC)である。
図1に示すように、燃料電池本体2は、アノード(燃料極)3、カソード(空気極)5、及び膜電極組立体4を備えている。膜電極組立体4は電解質膜の両面に触媒層42,44をそれぞれ接着させたものである。アノード3は、供給されるメタノールを酸化して、プロトンと電子を取り出す反応(アノード反応)を行なう。
アノード3は、その内部に上記アノード反応に必要なメタノール水溶液を供給させるための燃料供給口301及び、当該アノード反応により生成された二酸化炭素や、当該反応に用いられなかった残りのメタノール水溶液を上記内部より排出するための排出口302を備えている。排出口302は燃料供給口301よりも高位置に設けられている。
カソード5は、上記カソード反応に必要な酸素を供給するために、例えば、空気を用い、当該空気をその内部に供給するための空気供給口501と、当該カソード反応にて生成される生成物の一例である水(液相又は気相のいずれの状態、あるいは夫々の状態が混在した状態のいずれの場合をも含む)を上記内部より排出させるための排出口502とを備えている。なお、この生成物は水を主成分として含むものであるが、その他に、ギ酸、ギ酸メチル、及びメタノール(いわゆるクロスオーバーによる)等も含まれる場合がある。
当該電子は、アノード3とカソード5に設けられた電極21、22と電気的に接続する電極線21a,22aを通してアノード3へ移動し、当該プロトンは、膜電極組立体4を通してカソード5へ移動する。また、カソード5は、外部から供給される酸素と、アノード3より膜電極組立体4を通して移動してきたプロトンを、上記外部回路を通して流れてきた電子で還元して、水を生成する反応(カソード反応)を行なう。このようにアノード3にて酸化反応を、カソード5にて還元反応を夫々行ない、電極線21a,22aに電子を流すことで発電する。
図2において、燃料電池本体2における膜電極組立体4は、例えば、電解質膜43として、Dupont社製のナフィオン117(商品名)を用い、電解質膜43の一方の表面に、アノード3のアノード触媒42として、炭素系粉末担体に白金とルテニウム、あるいは白金とルテニウムの合金を分散させて担持したものを形成し、他方の表面に、カソード5のカソード触媒44として、炭素系担体に白金微粒子を分散担持したものを形成する。膜電極組立体4の両端には、例えばカーボンペーパからなる電極兼拡散層41、45を上記アノード触媒42及び上記カソード触媒44の夫々に密着させた後、アノード側セパレータ11及びカソード側セパレータ10を介してハウジング20に固定することにより組み上げられる。
図3A及び図3Bは、カソード5に用いられるカソード側セパレータ10の構成を示す図であり、図3Aはカソード側セパレータ10の平面図であり、図3Bは図3AにおけるA−A’線断面図である。カソード側セパレータ10は、厚み方向に扁平な非導電性材料の板状本体101で構成され、その一方の表面に溝102が設けられている。カソード側セパレータ10と膜電極組立体4は、溝102が設けられている側の表面をカソード側電極兼拡散層45に押圧するように接触し、溝102とカソード側電極兼拡散層45とで囲まれる領域を空気の通路として形成する。カソード側セパレータ10の表面に設けられた溝102は、板状本体101の上端と下端との間を蛇行して設けられている。また、溝102は、カソード5の空気供給口501に接続される導入口103とカソード5の排出口502に接続される排出口104につながっているため、カソード5の空気供給口501から供給された空気は、導入口103から溝102を通り、排出口104を経由してカソード5の排出口502から外部に放出可能とされている。
図4A、図4B、及び図4Cのそれぞれは、アノード3に用いられるアノード側セパレータ11の構成を示す図であり、図4Aはアノード側セパレータ11の一部断面斜視図であり、図4Bは上面側断面図であり、図4Cは頂線に沿った液体燃料の流動の説明図である。図4A及び図4Bに示すように、アノード側セパレータ11は、その本体110が厚み方向に扁平な波板形状に構成され、アノード3の燃料供給口301と排出口302とを結ぶ方向に波の頂線115が沿うように組み込まれる。本第1実施形態では、例えば、隣り合う波の頂線115間の距離は概ね1〜5mm程度であり、セパレータの厚み、すなわち、波の振幅は、1〜5mm程度であることが望ましい。例えば、アノード側に溝を4本以上配置できるようにすることが好ましい。
アノード側セパレータ11は、接触するハウジング20の内壁及び電極兼拡散層41の表面と隣り合う波の頂線115によって囲まれた波の谷の部分に、液体燃料を通す通路111、112を形成する。図4Bに示すアノード側セパレータ11は、上面から見てその断面が正弦波形状であるため、ハウジング側通路112と膜電極組立体側通路111との面積はほぼ同じとなる。
また、上述のように、燃料電池本体2は、その排出口302が燃料供給口301よりも高位位置に設けられているため、アノードの通路111、112に流入し、アノード反応により発生した二酸化炭素は、図4Cの矢印97に示すようにアノード3の排出口302の方向に上昇し、排出される。二酸化炭素の上昇に伴いアノード中の燃料も矢印97の方向に移動し、矢印95に示すように、アノードの排出口302から外部に排出される。アノード中の燃料が上昇すると、アノードの燃料供給口からは中間タンク54に貯留されている液体燃料55が矢印94に示すようにアノード内に流入する。このように、アノード内では、アノード反応により発生した二酸化炭素をその推力として、液体燃料の供給と排出が行われ、これにより中間タンク54内での液体燃料55が対流する。
なお、本第1実施形態において、燃料供給口301、排出口302は相対的なものであり、燃料電池本体2の配置方向によって、両者が入れ替わる場合もある。例えば、図2に示した方向の配置と上下が入れ替わったように配置された場合は、符号301で示される口が符号302で示される口よりもが高位置になるため、液体燃料は、符号302で示される口から供給され(すなわち、燃料供給口として機能する。)、符号301で示される口から燃料が排出されることとなる(すなわち、排出口として機能する)。
図5A、図5B、図6A、及び図6Bは、アノード側セパレータの変形例を示す図である。図5Aの第1変形例のアノード側セパレータ11xは、その本体110xが波板形状に構成されているものの、その波形が表裏対象ではなく、電極兼拡散層41側の頂線113がハウジング20側の頂線114に比して、より鋭角状となるように形成されている。その結果として、膜電極組立体側通路111xがハウジング側通路112xに比べて大きくなるように構成されている。図5Aのアノード側セパレータ11xによれば、アノード3に供給された液体燃料のうち、膜電極組立体4に接触する量を増加させることができ、より効率よくアノード反応が進行する。
図5Bの第2変形例のアノード側セパレータ11yは、薄板状の本体110yの表面から垂直な方向に伸びる仕切り壁115yが複数設けられ、それぞれの仕切り壁115yの端部113yが電極兼拡散層41の表面と接触されることで、それぞれの仕切り壁115yにより区分された複数の膜電極組立体側通路111yが形成された構成である。この例のアノード側セパレータ11yは、アノード3に供給されたより多くの液体燃料を膜電極組立体4に接触させることができる。また、本体110yがハウジング20の内側表面全体にわたって設けられているため、アノード側セパレータ11yを強固に構成することができ、アノード側セパレータ11yにより膜電極組立体4へ電極兼拡散層41をしっかりと押圧することができる。
図6A及び図6Bの第3変形例のアノード側セパレータ11zは、波板形状に構成された本体110zに貫通する貫通穴116が複数形成され、また、その本体110zの波形のそれぞれの頂線115zが、アノード3の燃料供給口301と排出口302とを結ぶ線に対して角度αだけ傾斜するように設けられている。このように、波形のそれぞれの頂線115zを傾斜して設けることにより、ハウジング20の側壁20bが下側となるように燃料電池本体2が配置された場合であっても、アノード3内で発生した二酸化炭素が排出口302側に移動させることができ、液体燃料の対流を行うことができる。また、アノード側セパレータ11zにそれぞれの貫通穴116が設けられていることにより、例えば、ハウジング20の壁20cが上側となるように燃料電池本体2が配置された場合であっても、アノード3内で発生した二酸化炭素がそれぞれの貫通穴116を通して、膜電極組立体側通路111zからハウジング側通路112zへ移動させることができるため、液体燃料を対流させることができる。
次に、燃料電池システム1における上記補機系の構成について説明する。上記補機系の構成としては、燃料電池本体2のアノード3にメタノール水溶液を供給するための補機構成と、カソード5に空気を供給するための補機構成が備えられている。
まず、図1に示すように、上記燃料供給のための補機構成としては、メタノール水溶液を液体燃料としてアノード3に供給可能に収容する中間タンク54と、この中間タンク54に収容されているメタノール水溶液55よりもその濃度が高いメタノール水溶液51を液体燃料原液として、中間タンク54に供給可能に収容する燃料タンク50と、燃料タンク50に収容されているメタノール水溶液51を中間タンク54に供給する原液供給装置の一例である燃料ポンプ52と、この燃料ポンプ52をその途中に備え、かつ、燃料タンク50と中間タンク54とを接続する原液供給管72と、原液供給管72を流動する液体燃料原液51の量を変更する燃料バルブ53を備えている。
中間タンク54は、燃料電池本体2と一体的に構成されており、中間タンク54の内部にアノード3が内包され、中間タンク54内に液体燃料55が所定量以上収容されると、アノード3が完全に液体燃料55に浸漬される。このように中間タンク54内にアノード3が配置されていることにより、アノード3の燃料供給口301を通して、内部に液体燃料55を供給することが可能となっている。
なお、図1においては、アノード3の全体が液体燃料55中に浸漬されている場合について示しているが、このような場合に代えて、アノード3の一部のみが液体燃料55中に浸漬されている場合であってもよい。ただし、このような場合であっても、液体燃料の対流を維持するためには少なくとも、燃料供給口301及び排出口302が液体燃料55中に浸漬している必要がある。
また、中間タンク54には、アノードの排出口302から排出されてした二酸化炭素等のガスが流入する。中間タンク54は、このようにして流入されるガスを外部に排気するための排気口542と排気バルブ543を備える。排気口542には、例えば気液分離膜を設置し、二酸化炭素のみを排出するようにすることが好ましい。なお、この排気口542は、中間タンク54に液体燃料55を初期注入する際のガス抜きとしても機能する。
燃料タンク50は、液体燃料原液51を収容しており、原液供給管72の一端が燃料タンク50の底部近傍に位置するように配置される。燃料タンク50内に収容されている液体燃料原液51は、燃料ポンプ52により原液供給管72を通して吸上げられ、中間タンク54に供給される。
燃料ポンプ52としては、例えば、小型なポンプで消費電力が小さいものであること、及び、その駆動時間を制御することで液体燃料原液の供給量が制御できること等の観点より、小型の容積型ポンプ等を用いることが好ましく、例えば、本第1実施形態では、ソレノイド式ポンプ(逆止弁付、吐出量:0〜4ml/分、吐出圧力:10kPa)を用いており、使用時は、例えば間欠駆動させて適量の液体燃料原液を送り出すことができる。
また、中間タンク54には、例えば、重量百分率で1〜10wt%の範囲のいずれかの濃度、好ましくは3〜10wt%の範囲のいずれかの濃度のメタノール水溶液が液体燃料55として収容されており、例えば、初期状態においては、6.5wt%の濃度のメタノール水溶液55が収容されている。一方、燃料タンク4には、中間タンク54に収容されている液体燃料よりも高い濃度を有するメタノール水溶液あるいはメタノール原液(すなわち、濃度が100wt%のメタノール)が収容されており、例えば、初期状態において、68wt%の濃度のメタノール水溶液が収容されている。
次に、空気を供給するための補機構成としては、図1に示すように、カソード5の空気供給口501にその一端が接続された空気供給管73と、空気供給管73の途中に配置され、空気供給管73を通して、空気をカソード5内に供給する空気ポンプ56とが備えられている。この空気ポンプ56としては、小型でかつ消費電力が小さいものを用いることが好ましく、例えば、モータ式ポンプ(逆止弁付、吐出量:0〜2L/分、吐出圧力:30kPa)を用いており、使用時は、例えば、1L/分で空気を供給する。また、燃料電池本体2にて発電が行なわれる際に、空気ポンプ56が駆動されてカソード5内に必要な酸素が供給され、当該発電が停止されるときには、空気ポンプ56の駆動が停止される。なお、この停止の際には、燃料ポンプ52の駆動も停止される。
なお、カソード5でのカソード反応により生成した水は排出口502から水排出管74を通って排出される。なお、この排出された水を回収し、中間タンク54に供給する補機機構を備えてもよい。
また、本第1実施形態の燃料電池システム1においては、燃料電池本体2において、膜電極組立体4を挟むようにして、アノード側セパレータ11及びカソード側セパレータ5が配置されて備えられるような場合について説明したが、本第1実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。例えば、このような場合に代えて、燃料電池本体2において、セパレータとしてアノード側セパレータ11のみが備えられ、カソード側セパレータ10が備えられないような構成が採用されるような場合であってもよい。燃料電池システムにおいて、比較的低い発電量しか要求されないような場合にあっては、カソード5を大気中に開放させた構成とすることで、カソード5への空気の供給を行うことができ、これにより発電を行うことができるからである。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。本実施形態に係る燃料電池システム1aは、第1実施形態に係る燃料電池システム1と概略同じ構成であり、相違点を中心に説明する。
本第2実施形態に係る燃料電池システム1aはメタノールから直接的にプロトンを取り出すことにより発電を行なう直接型メタノール燃料電池(DMFC)を用いた燃料電池システムであり、燃料電池本体2の構成は第1実施形態に係る燃料電池システム1と共通する。
燃料電池本体12は、図7に示すように、その全体が燃料供給のための補機である中間タンク54に完全に浸漬されて配置されている。
ここで、図8、図9A及び図9Bに本第2実施形態に用いられる燃料電池本体12の詳細な構成を示す。図8、図9A及び図9Bに示すように、燃料電池本体12は、4つの膜電極組立体と3つのアノード側セパレータと2つのカソード側セパレータとを所定の配置順に配置した構成であり、4つの燃料電池本体を厚み方向に複数密着して連結したような構成である。なお、図9A及び図9Bにおいては、連結された構成を明確とするように、必要に応じて各構成部にハッチングを施している。
具体的には、図8、図9A及び図9Bに示すように、底壁及び上壁が設けられていないハウジング20に、4つの燃料電池本体を連結したような構成を有する連結体が組み込まれる。連結体は、図9Aの図示右端から順に、第1アノード側セパレータ11a、電極兼拡散層41a、第1膜電極組立体4a、電極兼拡散層45a、第1カソード側セパレータ10a、電極兼拡散層45b、第2膜電極組立体4b、電極兼拡散層41b、第2アノード側セパレータ11b、電極兼拡散層41c、第3膜電極組立体4c、電極兼拡散層45c、第2カソード側セパレータ10b、電極兼拡散層45d、第4膜電極組立体4d、電極兼拡散層41d、第3アノード側セパレータ11cの順に、その主面が対向するように積層された構成である。
すなわち、燃料電池本体は、一般にアノード側セパレータとカソード側セパレータとで挟まれた膜電極組立体の両面にそれぞれ電極が位置するように構成されるため、本第2実施形態に係る燃料電池本体12は、4つの独立した膜電極組立体4a、4b、4c、及び4dが、その同じ種類の電極が対向するように配置されたものである。そして、隣り合う2つの膜電極組立体に本来それぞれ設けられるべきアノード側セパレータとカソード側セパレータを共用する構成を取っている。このようにアノード側セパレータとカソード側セパレータを共用することによって、連結燃料電池本体12を小型に構成することができる。
2枚のカソード側セパレータ10a、10bは、接続管105により直列に連結されており、第1カソード側セパレータ10aの導入口103aが空気供給管73に接続されており、矢印92に示すように空気ポンプ56によって送り込まれた空気が2枚のカソード側セパレータ10a,10bと電極兼拡散層45a〜45dの表面とで形成された酸素用通路を通過し、矢印93に示すように排出口104bからハウジング20の外部へ排出される。
カソード側セパレータ10a,10bは、図10A及び図10Bに示すように、厚み方向に扁平な非導電性の樹脂製の板状本体101aで構成され、両表面107、108を貫通する長穴106が設けられている。材料に樹脂を用いた場合、軽量で成型が容易であること、複雑な溝形状の量産も可能である。長穴106は、その上面109aに設けられた導入口103a,103bから排出口104a,104bまでつながっており、板状本体の上端と下端との間を蛇行する形状であり、カソード側セパレータ10a,10bの上面109a及び下面109bによって外部とは遮断されている。したがって、連結燃料電池本体の酸素用通路には、導入口103a,103b及び排出口104a,104b以外からは、内部に異物が侵入できないように構成されている。
図10A及び図10Bに示す構成のカソード側セパレータ10a,10bを用いることにより、その両表面107、108にそれぞれ密接する4枚の電極兼拡散層45a〜45dはその長穴106を通る空気と接触し、カソード反応がおこなわれる。
一方、アノード側セパレータ11a〜11cは、図8、図9A及び図9Bに示すように、波板状の樹脂で構成されている。このように材料に樹脂を用いた場合、軽量で成型が容易であること、複雑な溝形状の量産も可能である。アノード側セパレータ11a〜11cは、第1の実施形態及びその変形例に用いられるそれぞれのセパレータを使用することができるが、両側が膜電極組立体4b,4c側の電極兼拡散層41b、41cと接触する第2アノード側セパレータ11bについては、その両面に形成される燃料用通路111b,112bは共に膜電極組立体側燃料用通路であるため、両者が同じ体積となるように構成されることが好ましい。一方、両端に位置する第1及び第3アノード側セパレータ11a,11cは、膜電極組立体4a,4dの電極兼拡散層41a、41dと接触する膜電極組立体側燃料用通路111a,111cの体積がハウジング側通路112a,112cよりも大きくなるように、図5A又は図5Bに示した形状のものを使用することができる。
本第2実施形態における連結燃料電池本体12は、図8に示す方向に配置されている場合には、それぞれのアノード側セパレータ11a〜11cの下端が燃料用通路の導入口として機能し、上端が燃料用通路の排出口として機能する。すなわち、中間タンク54に貯留されている液体燃料55に連結燃料電池本体12の全体が浸漬されて配置されており、各燃料用通路111a〜111c、112bには、液体燃料が充填されている。この状態で、発電が開始すると、当該燃料用通路111a〜111c、112bに充填されている液体燃料は、アノード反応により二酸化炭素とプロトンに分解され、二酸化炭素は排出口側に移動する。これにより、当該燃料用通路111a〜111c、112bに充填されている液体燃料は、上昇して排出口側へ移動し、各導入口から中間タンク54に蓄積された液体燃料55が当該燃料用通路へ侵入する。
このように、アノード側セパレータを上記構成とすることにより、発電時において、特別な機構を必要とすることなしに、アノード側へ液体燃料を供給し、流動させることができる。したがって、4つの燃料電池本体を用いた連結燃料電池本体12のそれぞれのアノードに液体燃料を供給するための構成が不要となり、連結燃料電池本体12の出力の増加にともなう自己消費電力の増加を少なくすることができる。なお、本第2実施形態においても、液体燃料の導入口、排出口は相対的なものであり、燃料電池本体の一方向によって、両者が入れ替わる場合がある。
ここで、それぞれのカソード側セパレータ10a及び10bと、それぞれの膜電極組立体4a、4b、4c、及び4dとの間に配置される電極兼拡散層45a、45b、45c、及び45dの中より、代表して電極兼拡散層45aの正面図を図30に示し、その側面図を図31に示し、その背面図を図32に示す。なお、それぞれの電極兼拡散層45a、45b、45c、及び45dは、同じ構成を有しているため、これらを代表して電極兼拡散層45aの構成について説明する。図30、図31、及び図32に示すように、電極兼拡散層45aは、例えば、カーボンペーパにより形成される電極兼拡散部610aを有しており、この電極兼拡散部610aの周囲全体には、例えば導電性ゴムシートにより形成されるパッキン610bが配置されている。このように電極兼拡散部610aの外周全体にパッキン610bが形成されていることにより、それぞれのカソード側セパレータ10a及び10bにおいて、導入口103a、103bから導入された酸素を液体燃料中に漏出させることなく、排出口104a及び104bへ送り出すことが可能となっている。
なお、このような構成に対して、それぞれのアノード側セパレータとそれぞれの膜電極組立体との間に配置されるそれぞれの電極兼拡散層41a、41b、41c、及び41dは、例えばカーボンペーパにより形成されており、パッキン等のシール部は形成されていない。
また、各電池の出力は、カソード側及びアノード側のセパレータが非導電体である樹脂で構成されており、集電体として機能しないため、それぞれの膜電極組立体の両面に付されているそれぞれの電極兼拡散層41a〜41d,45a〜45dから集電する。この際、各電極が、ショートしないように接続することが必要である。具体的には、図11A及び図11Bに示すように、4個直列に接続する場合、あるいは図11C及び図11Dに示すように、2個並列を直列に接続する場合などが挙げられる。
図11A及び図11Bは、図8の燃料電池システムの個々の燃料電池本体を4個直列に接続する場合の配線図である。図11C及び図11Dは、図8の燃料電池システムの個々の燃料電池本体を2個並列に接続し、さらにそれらを直列に接続する場合の配線図である。上述のように、本第2実施形態に係る連結燃料電池本体12においては、それぞれの燃料電池本体の同じ極が対向するように配置されているため、図11A〜図11Dに示すように正極と負極とは交互に配置されないこととなり、4つの燃料電池本体を接続するには、図11A〜図11Dに示すように配線することが必要である。
具体的には、図11A及び図11Bの4個直列に接続する場合は、得られる電圧が各燃料電池本体の4倍となり、高出力を得ることができるが、各燃料電池本体の1つでも電圧効果または使用不可能となると全体に影響を与えるというデメリットを有する。
図11C及び図11Dの2個並列をさらに直列に接続する場合は、燃料電池本体の1つが電圧効果または使用不可能になるような場合が生じたとしても電圧が維持されるというメリットがある。特に、後述するように、その配置方向によってはアノードを流動する液体燃料の量が変化し、電圧が降下するおそれが生じる可能性を有するような場合にあっては、このように接続することで、当該電圧降下に対処することができ、より望ましい。
図12は、図8の燃料電池本体12に用いられるアノード側セパレータの変形例を示す図である。図12に示すアノード側セパレータ11d〜11fは、図6に示すアノード側セパレータ11zと同じ構成であるが、その一方向を互い違いとなるようにハウジング20に組込まれる。すなわち、波形の頂線115d、115f、及び115eにおいて、それぞれが、アノードの燃料供給口と排出口とを結ぶ線に対して角度α又は角度−αとなるように交互に傾斜するように設けられている。
このように構成することにより、燃料用通路を通過する液体燃料の量を、連結燃料電池本体12の配置方向によらずに、連結燃料電池本体12を構成するいずれかの燃料電池本体では確保することができ、出力の低下を少なく抑えることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。図14は、本第3実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。本第3実施形態に係る燃料電池システム1bは、上記第1実施形態に係る燃料電池システム1と概略同じ構成であり、相違点を中心に説明する。
本第3実施形態に係る燃料電池システム1bはメタノールから直接的にプロトンを取り出すことにより発電を行なう直接型メタノール燃料電池(DMFC)を用いた燃料電池システムであり、燃料電池本体212の構成は上記第1実施形態に係る燃料電池システム1と共通する。
図14に示すように燃料電池本体212は、その全体が燃料供給のための補機である中間タンク254の内部に配置されており、中間タンク254に収容されている液体燃料55に完全に浸漬された状態とされている。
また、本第3実施形態に用いられる燃料電池本体212の構成を示す測面図を図15に示し、その正面図を図16に示し、その上面図を図17に示す。図15、図16、及び図17に示すように、燃料電池本体212は、3つの膜電極組立体と、1つのアノード側セパレータと、2つのアノード側及びカソード側兼用セパレータと、1つのカソード側セパレーターとを所定の配置順に配置した構成であり、3つの燃料電池本体を厚み方向に複数密着して連結した構成である。
具体的には、図15〜図17に示すように、底壁及び上壁が設けられていないハウジング220の内側に、例えば樹脂からなる絶縁材301a、301bとの間に3つの燃料電池本体を連結させて配置させた構成を有する連結体が組み込まれている。この連結体は、図15における図示右端から順に、カソード側セパレータ210、電極兼拡散層241a、第1膜電極組立体204a、電極兼拡散層245a、第1アノード側及びカソード側兼用セパレータ211a、電極兼拡散層241b、第2膜電極組立体204b、電極兼拡散層245b、第2アノード側及びカソード側兼用セパレータ211b、電極兼拡散層241c、第3膜電極組立体204c、電極兼拡散層245c、及びアノード側セパレータ213が、互いに密着するように配置された構成を有している。上記第2実施形態においては、同じ極同士が対向するようにそれぞれのアノード及びカソードが配列されているのとは異なり、本第3実施形態においては、電気的に直列でつながるように異なる極同士が対向して配置され、アノードとカソードが交互になるように配置されて連結された構成を有している。なお、図15〜図17において、302はカソードに空気(酸素)を供給する供給口であり、303は空気を排出する排出口である。また、連結燃料電池本体212の両端には、発電される電力を出力可能なそれぞれの接続端子260が設けられている。
また、連結燃料電池本体212が備えるそれぞれの電極兼拡散層241a,245a、241b、245b、241c、及び245cは、互いに同じ構成を有しており、これらの中から代表して電極兼拡散層241aの正面図を図27に示し、その側面図を図28に示し、その背面図を図29に示す。
図27〜図29に示すように、電極兼拡散層241aは、例えばカーボンペーパーからなる電極兼拡散部510aとその周辺に配置された例えば導電性ゴムシート材からなるパッキン510bから構成される。パッキン510bには空気が通る導入口503と排出口504とが貫通穴として形成されている。
また、それぞれのセパレータの外周部分には、例えばカーボン材からなる導電性の材料が配置されており、セパレータの主要部が非導電性の材料で形成されているような場合であっても、上記外周部分を用いて直列に連結することが可能となっている。各セパレータの構成について図面を用いて説明する。
まず、カソード側セパレータ210の正面図を図18に示し、その背面図を図19に示し、図18のセパレータ210におけるC−C’線断面図を図20に示す。図18〜図20に示すように、カソード側セパレータ210は、厚み方向に扁平な非導電性の樹脂製の板状本体210aで構成され、その外周部全体には例えば導電性材料の一例であるカーボン材により形成された導電部210bが設けられている。
また、図18に示すように、カソード側セパレータ210の正面側の表面には、酸素用通路を構成する溝206が形成されており、この溝206は、同じ面に貫通穴として設けられた導入口203から排出口204まで一続きにて形成され、板状本体210aの上端と下端との間を蛇行する形状を有している。また、溝206に導入される空気(酸素)は電極兼拡散層241a等のパッキン510bで液体燃料と遮断することが可能となっている。従って、連結燃料電池本体212の酸素用通路は、導入口203及び排出口204以外からは、その内部に異物が侵入できないように構成されている。なお、図19に示すように、カソード側セパレータ210の背面側表面は、絶縁材301aと連結される端部となるため、溝は形成されていない。
次に、第1アノード側及びカソード側兼用セパレータ211aと第2アノード側及びカソード側兼用セパレータ211bとは、互いに同じ構成を有しているため、これらの中から代表して第1アノード側及びカソード側兼用セパレータ211aの正面図を図21に示し、その背面図を図22に示し、図21のセパレータにおけるD−D’線断面図を図23に示す。
第1アノード側及びカソード側兼用セパレータ211aは、厚み方向に扁平な非導電性の樹脂製の板状本体310aとして形成されており、その外周部全体に例えば導電性材料の一例であるカーボン材により形成された導電部310bが形成されている。また、第1アノード側及びカソード側兼用セパレータ211aにおいて、図21に示す側の表面はカソード側セパレータとしての機能を有しており、また、図22に示す側の表面はアノード側セパレータとしての機能を有している。
図21に示す側の表面には酸素用通路を構成する溝が形成されており、この酸素用通路の溝306は、同じ面に設けられた導入口305から排出口304まで一続きに形成されており、板状本体310aの上端と下端との間を蛇行する形状を有している。
また、図22に示す側の表面には図示上下方向に延在するように形成された縦溝307が複数配列されており、これらの縦溝307により燃料用通路を形成することが可能となっている。このようにそれぞれの縦溝307が形成されていることにより、第1アノード側及びカソード側兼用セパレータ211aの端部よりそれぞれの縦溝307、すなわち燃料用通路内に液体燃料を導入することが可能となっている。なお、これらの縦溝307の形状は図5Bで示した形状のものを採用している。
また、第1アノード側及びカソード側兼用セパレータ211aの導電部310bに形成された導入口305及び排出口304は、図22に示す側の表面に形成された縦溝307とは連通されないように形成されており、さらにそれぞれの配置は、カソード側セパレータ210の導入口203及び排出口204の配置と合致するように形成されている。
また、アノードに用いられるアノード側セパレータの構成を示す正面図を図24に示し、その背面図を図25に示し、図24のアノード側セパレータにおけるE−E’線断面図を図26に示す。
図24〜図26に示すように、アノード側セパレータ213は、例えば非導電性材料の樹脂から作成された薄板状の本体410aと、その外周部に例えば導電性材料の一例であるカーボン材により形成された導電部410bとを備えている。さらに、アノード側セパレータ213は、図24に示す側の表面において、燃料用通路として図示上下方向に延在するように形成された縦溝406を複数配列させて備えている。このアノード側セパレータ213は、アノードに供給された全ての液体燃料を電極兼拡散層245cを介して膜電極組立体204cに接触させることができる。また、図24及び図25に示すように、導電部410bにおける図示両角部分には、貫通穴403、404が形成されており、これらの貫通穴403、404は、図24に示す側の表面に形成された縦溝406とは連通されないように形成されており、さらにそれぞれの配置は、カソード側セパレータ210の導入口203及び排出口204の配置と合致するように形成されている。なお、図25に示すように、アノード側セパレータ213における背面側の表面は絶縁材301bと連結される端部となるため、溝は形成されていない。
それぞれのセパレータ及び電極兼拡散層が上述のような構成を有していることにより、図15に示すような連結燃料電池本体212を形成することができる。このように形成された連結燃料電池本体212においては、アノード側セパレータ210における導入口203と排出口204の位置と、それぞれのアノード側及びカソード側兼用セパレータ211a、211bにおける導入口305と排出口304との位置、さらにカソード側セパレータ213におけるそれぞれの貫通穴403と404との位置は、互いに合致されるように配置されていることより、隣り合うカソードにおけるそれぞれの導入口及び排出口を互いに連結することができるとともに、図15に示すように、連結燃料電池本体212の外部に備えられる1つの供給口302と1つの排出口303とに、それぞれの導入口及び排出口を連通させることができる。
また、図14に示すように、連結燃料電池本体212の外部に備えられた供給口302は、空気供給管を介して中間タンク54の外部に設けられた空気ポンプ56に連通されており、排出口303は、空気排出管を介して中間タンク54の外部に設けられた排出口303bに連通されている。このように構成されていることにより、図14において、空気ポンプ56の駆動により矢印92に示すように空気供給管及び供給口302を通して連結燃料電池本体212の内部に送り込まれた空気が、カソード側セパレータ210の溝206と電極兼拡散層241aの表面とで形成された酸素用通路と、第1及び第2アノード側及びカソード側兼用セパレータ211a、211bにおける溝306と電極兼拡散層241b、241cの表面とで形成された酸素用通路に供給され、当該酸素用通路を通過した余剰空気が、矢印93に示すように排出口303及び303bを通して連結燃料電池本体212の外部に排出される。
また、連結燃料電池本体212においては、第1及び第2アノード側及びカソード側兼用セパレータ211a、211bにおける縦溝307と電極兼拡散層245a、245bの表面とで形成された燃料用通路と、アノード側セパレータ213の縦溝406と電極兼拡散層245cの表面とで形成された燃料用通路とに、中間タンク54内に収容された液体燃料55を供給することが可能となっている。例えば、図14に示すように連結燃料電池本体212が中間タンク54に配置されているような場合にあっては、連結燃料電池本体212における図示下端に位置される上記それぞれの燃料用通路の端部が、液体燃料の導入口として機能し、上端側の端部が排出口として機能する。
すなわち、連結燃料電池本体212は、中間タンク54に収容されている液体燃料55にその全体が浸漬されて配置されており、それぞれの燃料用通路を形成する縦溝307、406内には、液体燃料が充填された状態とされている。この状態で、連結燃料電池本体212にて発電が開始されると、それぞれの縦溝307、406に充填されている液体燃料は、アノード反応により二酸化炭素とプロトンに分解され、二酸化炭素は排出口側に移動する。これにより、それぞれの縦溝307、406に充填されている液体燃料は、上昇して排出口側へ移動するとともに、中間タンク54に収容されている液体燃料55がそれぞれの導入口からそれぞれの燃料用通路へ供給されることとなる。
このように、アノード側セパレータを上記構成とすることにより、発電時において、特別な機構を必要とすることなしに、アノード側へ液体燃料を供給し、流動させることができる。したがって、3つの燃料電池本体を用いた連結燃料電池本体のそれぞれのアノードに液体燃料を供給するための構成が不要となり、連結燃料電池本体の出力の増加にともなう自己消費電力の増加を少なくすることができる。なお、本第3実施形態においても、液体燃料の導入口、排出口は相対的なものであり、燃料電池本体の配置方向によって、両者が入れ替わる場合がある。
なお、本第3実施形態においては電極兼拡散層510の周辺に配置されたパッキン510bの材料として導伝性ゴムシート材を用いた例について示したが、この材料が非導電性の材料であってもよい。また、接着性があるシール材や液性加熱硬化型シール材を用いてもよい。
また、それぞれのセパレータの外周部分において、導電性を有する導電部210b、310b、410bが形成されていることにより、それぞれのセパレータの主要部が非導電性の材料にて形成されるような場合であっても、上記それぞれの導電性の外周部分を用いて、それぞれの燃料電池本体を直列に連結することができる。従って、連結燃料電池本体212の外部に連結用の外部配線を要することなく、アノードとカソードが交互になるように異なる極同士が対向して配置されて連結された連結燃料電池本体を構成することができ、簡単な構成を保ちながら連結における自由度を高めることができる。
なお、上記第2実施形態の連結燃料電池本体12、及び上記第3実施形態の連結燃料電池本体212においては、それぞれの燃料電池本体の密着性を高めるため、ボルトや板を用いて、ハウジング20、220を締結するような場合であってもよい。
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、及び上記第3実施形態の燃料電池システム1、1a、及び1bは、小型で、水分の外部放出がほとんどないため、携帯電子機器などに好適に用いることができる。図13A及び図13Bは、図1、図7、又は図14に示す燃料電池システム1、1a、1bを燃料電池パックとして、ノート型パーソナルコンピュータ用の電池として用いる場合の模式斜視図である。図13A及び図13Bに示すように燃料電池システム1、1a、及び1bは小型に構成することができるため、これを用いてノート型パーソナルコンピュータ用の燃料電池パック9を構成し、ノート型パーソナルコンピュータの本体6に付属させた場合であっても、携帯の邪魔にならず好適に用いることが可能となる。
上記実施の形態において、電極兼拡散層にはカーボンペーパを使用しているが、他の材料を使用してもよい。例えば、例えばステンレス材料からなる発泡金属を用いることもできる。
図7の燃料電池システムでは、2つのカソード側セパレータを連結し、カソードへの空気の導入および排出は1個所ずつで構成したが、これに限られるものではなく、それぞれのカソード側セパレータにそれぞれ空気を導入して排出する構成にしてもよい。
また、例えば、図7の燃料電池システムに用いられるアノード側セパレータ11bに、上端から下端まで所定の傾きを持って直線状に伸びる溝を両面に付して当該両面に燃料用通路を形成するようにした場合、表面と裏面とで溝の傾き方向を互い違いにすることができる。このように構成することにより、図7の燃料電池システムに波板状以外のセパレータを用いることが可能であり、連結燃料電池本体の配置方向によらずに少なくとも1つの燃料電池本体の液体燃料の流量を確保することができる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。