JP2005031298A - 反射防止膜付き透明基板 - Google Patents

反射防止膜付き透明基板 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線を充分反射でき、しかも廉価な反射防止膜付透明基板を提供すること。
【解決手段】光を通す透明基板の上に反射防止膜を設けた反射防止膜付き透明基板であって、前記反射防止膜は、高屈折率層と低屈折率層の6層から10層の交互多層膜から成り、この交互多層膜は、450nm〜650nmの波長範囲における反射率が0.5%以下、かつ、波長350nm以下の紫外線を最大限に反射するように最適設計され、しかも前記高屈折率誘電体層として380nm以下の紫外線を吸収する特性を有する誘電体物質を用いることにより、350nm以下に紫外線の遮蔽機能を増した反射防止膜を設けたことを特徴とする反射防止膜付き透明基板。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可視光の表面反射を防止する機能を有する反射防止膜を備えた透明基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜は、古くから、眼鏡、カメラ、望遠鏡などのレンズ、プリズム、光学計測機器のフィルタ類に広く用いられている。
【0003】
一般的な反射防止膜としては、低屈折率誘電体をL、中屈折率誘電体をM,高屈折率誘電体をHとし設計波長をλとすると、基板/(1/4)λ(L)厚の単層タイプ、基板/(1/2)λ(H)/(1/4)λ(L)の2層タイプ、基板/(1/4)λ(M)/(1/2)λ(H)/(1/4)λ(L)の3層タイプなどが多用されて、更に多層膜の広帯域タイプなどの膜構成が使われている。
【0004】
従来、これらの反射防止膜は、一般的には、光学部品に入射する特定波長及び特定波長範囲の光の反射防止、及びそれに伴う透過率向上の目的に限られて用いられていた。これに対して、反射防止膜に他の機能を持たせたものも知られている。その1つには、可視光線以外に紫外光線にも反射防止効果を持たせたものもある(特許文献1参照)。
【0005】
一方、液晶プロジェクタのような装置では内部の光路中に短波長の紫外線を遮断するフィルタを備えたものも知られている(特許文献2参照)。そのほか紫外線ランプ、エキシマレーザを使用したステッパなどの光学部品に用いられる紫外線反射防止膜も知られている。
【0006】
これらの紫外線カットフィルタは、通常、石英、パイレックス(登録商標)、白板ガラスなどの透明基板に、屈折率の異なる層を交互に設けた誘電体多層膜を真空蒸着法やスパッタリング法で成膜したものが用いられあるいは偏光分離フィルタなど他の光学部品の一面又は両面に誘電体多層膜から成る紫外線反射膜を真空蒸着法やスパッタリング法で成膜したものが用いられる。しかし、これらの誘電体多層膜を用いた紫外線カットフィルタは非常に高価で装置本体の価格を上げる要因になっていた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−74905号公報
【0008】
【特許文献2】特開2001−264729号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来の、種々の装置に用いられる反射防止膜付透明基板の問題点にかんがみてなされたもので、紫外線を充分反射でき、しかも廉価な反射防止膜付透明基板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1によれば、光を通す透明基板の上に反射防止膜を設けた反射防止膜付き透明基板であって、前記反射防止膜は、高屈折率層と低屈折率層の6層から10層の交互多層膜から成り、この交互多層膜は、450nm〜650nmの波長範囲における反射率が0.5%以下、かつ、波長350nm以下の紫外線を最大限に反射するように最適設計され、しかも前記高屈折率誘電体層として380nm以下の紫外線を吸収する特性を有する誘電体物質を用いることにより、350nm以下に紫外線の遮蔽機能を増した反射防止膜を設けたことを特徴とする反射防止膜付き透明基板を提供する。
【0011】
本発明の請求項2によれば、前記透明基板は、石英ガラス、サファイア、水晶、硼珪酸ガラス、又はソーダガラスにより構成されることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜付き透明基板を提供する。
【0012】
本発明の請求項3によれば、前記反射防止膜は、高屈折率層と低屈折率層の8層の交互多層膜から成り、これらの8層の厚さを前記透明基板側から、d1、d2、d3,d4,d5,d6,d7,d8とし、前記高屈折率層の屈折率をnh、前記低屈折率層の屈折率をnlとするとき、上記屈折率の範囲を、1.35≦nl≦1.50、1.90≦nh≦2.45、nl−0.1≦ns≦nhとし、第1乃至第8の各層の光学的膜厚を、0.01λ≦d1≦0.04λ、(0.5/ns)λ≦d2≦(0.8/ns)λ、0.07λ≦d3≦0.12λ、0.08λ≦d4≦0.14λ、0.18λ≦d5≦0.28λ、0.02λ≦d6≦0.07λ、0.16λ≦d7≦0.22λ、0.22λ≦d8≦0.30λを満す膜構成とすることを特徴とする請求項1又は2記載の反射防止膜付き透明基板を提供する。
【0013】
本発明の請求項4によれば、前記高屈折率層を構成する誘電体物質は、TiO、Nbのいずれか1種あるいは両者の混合物を主成分とするものであり、前記低屈折率層を構成する誘電体物質は、SiO、MgFのいずれかを主成分とするものであることを特徴とする請求項3記載の反射防止膜付き透明基板を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に述べる実施例では真空蒸着法やスパッタリング法で膜を製作する場合について述べるが、他の方法によって成膜してもよいことは勿論である。
【0015】
図1に示すようにこの透明基板4の上に、膜体6として、高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層を交互に合計8層、設けた。この膜体6は、図示するように、透明基板4上に、高屈折率の誘電体物質層と低屈折率の誘電体物質層が交互に例えば8層、積層された構造とする。
【0016】
透明基板4から順に、第1層11、第2層12、第3層13、第4層14、第5層15、第6層16、第7層17、第8層18が設けられる。第1層11、第3層13、第5層15、第7層17が高屈折率誘電体層であり、第2層12、第4層14、第6層16、第8層18が低屈折率誘電体層である。
【0017】
高屈折率誘電体物質層の屈折率をnh、低屈折率誘電体物質層の屈折率をnl、透明基板の屈折率をnsとし、基板側から空気側へ重ねる、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8の各層の光学的膜厚を、d1、d2、d3、d4、d5、d6、d7、d8とする。
【0018】
(実施例1)
実施例1では、透明基板の材料として石英ガラスを用いた。成膜法としては、五酸化チタン(Ti)と二酸化珪素(SiO)を蒸着剤として、使用し、酸素ガスを反応ガスとする反応性真空蒸着法を用いた。石英ガラス基板上に、高屈折率誘電体物質層として屈折率nd=2.30の酸化チタン(TiO)を用い、低屈折率誘電体物質層として屈折率nd=1.46の二酸化珪素(SiO)を用い、表1に示すような膜圧の交互多層膜を製作した。なお、設計波長λは520nmとした。
【0019】
【表1】
Figure 2005031298
【0020】
この膜体6の反射特性の測定結果を図2に示した。図2において、横軸は波長(nm)を示し、縦軸は反射率(%)を表す。また、上記膜体6の透過率特性の測定結果を図3に示す。図3において横軸は波長(nm)を示し、縦軸は透過率(%)を示す。
【0021】
図2によれば、この膜体では430nm以上の領域において反射率が低くなっており、可視域450nmから650nmの領域で反射率が0.5%以下であることがわかる。また、図3によれば、この膜体では、波長350nmより短波長の紫外線の透過率を大幅に減らすことができた。
【0022】
石英ガラス基板の透過率は図4に示すように、90%以上の一様に高い透過率の特性を有しており、このような特性を有する石英ガラス基板に上記膜体を設けることによって所望の特性の光を得ることができる。
【0023】
(実施例2)
実施例2では、透明基板として、サファイアを用いた。成膜法として金属ニオブとポリシリコンをターゲットとして用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとし、酸素ガスを反応ガスとする反応マグネトロンスパッタリング法を用いた。サファイア基板上に高屈折率誘電体物質層として五酸化ニオブ(Nb)(屈折率nd=2.34)低屈折率誘電体物質層として二酸化珪素(SiO)(屈折率nd=1.47)を用い、設計中心波長λ=520nmで各層の厚さが表2に示す交互多層膜の膜体を製作した。
【0024】
【表2】
Figure 2005031298
【0025】
このようにして製作された膜体の反射特性の測定結果を図5に示した。同図において、横軸は波長(nm)を示し、縦軸は反射率(%)を表す。また、上記膜体の透過率特性の測定結果を図6に示す。図6において横軸は波長(nm)を示し、縦軸は透過率(%)を示す。
【0026】
図5によれば、この膜体では425nm程度以上の領域において反射率が低くなっており、可視域450nmから650nmの領域で反射率が0.5%以下となっていることがわかる。また、図6によれば、この膜体では、波長350nmより短波長の紫外線の透過率を大幅に減らすことができた。
【0027】
透明基板として、サファイア基板を用いるとき、波長450nmから650nmの範囲の反射防止性能を、反射率0.5%以下にし、波長350nm以下の紫外線カット特性を最大にするようにし、設計中心波長λを波長500nmから550nmの範囲にあって、8層構造の膜体とする。この膜体は、基板側から空気側へ高屈折率誘電体物質層と低屈折率の誘電体物質層を交互に重ねる。
【0028】
本発明のこの実施例によれば、透明基板であるサファイア基板を用いているので熱伝導性が良好であり、たとえ熱が生じても放熱することができ、温度上昇をある程度抑えることができる効果がある。また、サファイア基板に本発明による反射防止膜を施すことにより350nmより短波長の紫外線透過率を大幅に減ずることが可能となる。本発明の反射防止膜により可視域の反射防止特性を有し、かつ紫外線カットフィルタ特性の2特性を併せ持つ反射防止膜を安価に製造することができる。
【0029】
上記のように、高屈折率誘電体物質層の屈折率をnh、低屈折率誘電体物質層の屈折率をnl、透明基板の屈折率をnsとし、基板側から空気側へ重ねる、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8の各層の光学的膜厚を、d1、d2、d3、d4、d5、d6、d7、d8とするとき、上記屈折率の範囲を、1.35≦nl≦1.50、1.90≦nh≦2.45、nl−0.1≦ns≦nh、第1乃至第8の各層の光学的膜厚を、0.01λ≦d1≦0.04λ、(0.5/ns)λ≦d2≦(0.8/ns)λ、0.07λ≦d3≦0.12λ、0.08λ≦d4≦0.14λ、0.18λ≦d5≦0.28λ、0.02λ≦d6≦0.07λ、0.16λ≦d7≦0.22λ、0.22λ≦d8≦0.30λを満す膜構成が好ましいことがわかった。
【0030】
ここで基板と反射防止膜との密着性を向上させるために、基板側と第1層の高屈折率誘電体層の間にSiO層を光学的特性に影響を与えない厚さで付加することは差し支えない。ここで、光学的膜厚とは、幾何学的膜厚と屈折率の積である。
【0031】
第2層が、(0.5/ns)λ≦d2≦(0.8/ns)λの範囲で好ましい、即ち第2層が大きく基板の屈折率に依存し、基板の屈折率の3乗に反比例した、膜厚が所望の光学特性の付与に最適となる。
【0032】
このことは、望ましい光学特性が得られる各層の光学膜厚を最適化するソフトウェアを用いて、各種基板に対する多層膜設計を行なった結果から、発明者が共通概念として抽出し数式化した。第2層以外は基板屈折率にかかわらず、所定の数値範囲で最適特性が得られるのに対して、第2層のみは基板屈折率により最適膜厚が大きく異なることを意味している。
【0033】
なお、上記実施例1、実施例2の説明では、高屈折率誘電体物質層と低屈折率誘電体物質層の膜を8層に構成した場合について説明した。しかし本発明ではこれに限られず、一般的には6から10層により交互多層膜を構成すればよい。交互多層膜が6層を下回ると350nm以下の近紫外域の紫外線をカットする機能が充分でなく、10層を超えると生産性が悪くなるためである。
【0034】
380nm以下の紫外線を吸収する特性を有する高屈折率の誘電体物質としては、TiO、Nbのいずれか一種あるいは両者の混合物がもっとも望ましい。しかし、これらとZrO、La、Pr,Pr11、Taなど他の物質との混合物であってもよい。これら他の物質との混合物では、紫外線吸収特性を維持するためにTiO,Nbの割合は50%以上が必要である。またこれらTiO,Nbは、その成膜法によっては酸素不足の状態であるTiOx(1.8<x<2.0)やNbOx(4.5<x<5.0)となる場合がありこのような場合も本発明に含まれる。
【0035】
低屈折率層を構成する誘電体物質としては二酸化珪素(SiO)、フッ化マグネシウム(MgF)のいずれかを主成分とするものを用いる。
【0036】
上述の実施例では、透明基板として石英ガラスやサファイアを用いた場合について述べたが、本発明では、水晶、硼珪酸ガラス、又はソーダガラスにより透明基板を構成してもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、紫外線を充分反射でき、しかも廉価な反射防止膜付透明基板を得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による反射防止膜の構造を示す図。
【図2】本発明の実施例1の反射特性の測定結果を示す図。
【図3】本発明の実施例1の透過特性の測定結果を示す図。
【図4】本発明に透明基板として用いる石英ガラスの透過特性を示す図。
【図5】本発明の実施例2の反射特性の測定結果を示す図。
【図6】本発明の実施例2の透過特性の測定結果を示す図。
【符号の説明】
4・・・透明基板、6・・・膜体、11・・・第1層、12・・・第2層、13・・・第3層、14・・・第4層、15・・・第5層、16・・・第6層、17・・・第7層、18・・・第8層。

Claims (4)

  1. 光を通す透明基板の上に反射防止膜を設けた反射防止膜付き透明基板であって、
    前記反射防止膜は、高屈折率層と低屈折率層の6層から10層の交互多層膜から成り、この交互多層膜は、450nm〜650nmの波長範囲における反射率が0.5%以下、かつ、波長350nm以下の紫外線を最大限に反射するように最適設計され、しかも前記高屈折率誘電体層として380nm以下の紫外線を吸収する特性を有する誘電体物質を用いることにより、350nm以下に紫外線の遮蔽機能を増した反射防止膜を設けたことを特徴とする反射防止膜付き透明基板。
  2. 前記透明基板は、石英ガラス、サファイア、水晶、硼珪酸ガラス、又はソーダガラスにより構成されることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜付き透明基板。
  3. 前記反射防止膜は、高屈折率層と低屈折率層の8層の交互多層膜から成り、これらの8層の厚さを前記透明基板側から、d1、d2、d3,d4,d5,d6,d7,d8とし、前記高屈折率層の屈折率をnh、前記低屈折率層の屈折率をnlとするとき、
    上記屈折率の範囲を、1.35≦nl≦1.50、1.90≦nh≦2.45、nl−0.1≦ns≦nhとし、
    第1乃至第8の各層の光学的膜厚を、0.01λ≦d1≦0.04λ、(0.5/ns)λ≦d2≦(0.8/ns)λ、0.07λ≦d3≦0.12λ、0.08λ≦d4≦0.14λ、0.18λ≦d5≦0.28λ、0.02λ≦d6≦0.07λ、0.16λ≦d7≦0.22λ、0.22λ≦d8≦0.30λを満す膜構成とすることを特徴とする請求項1又は2記載の反射防止膜付き透明基板。
  4. 前記高屈折率層を構成する誘電体物質は、TiO、Nbのいずれか1種あるいは両者の混合物を主成分とするものであり、前記低屈折率層を構成する誘電体物質は、SiO、MgFのいずれかを主成分とするものであることを特徴とする請求項3記載の反射防止膜付き透明基板。
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