JP2005030852A - 間質性肺炎診断剤およびこれを含有する間質性肺炎診断用キット - Google Patents

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Junichi Kadota
淳一 門田
Toshimitsu Kamiide
利光 上出
Tsutomu Kiyofuji
勉 清藤
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MENEKI SEIBUTSU KENKYUSHO KK
Immuno Biological Laboratories Co Ltd
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MENEKI SEIBUTSU KENKYUSHO KK
Immuno Biological Laboratories Co Ltd
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Abstract

【課題】簡便でかつ正確に間質性肺炎を診断することができる技術を提供すること。
【解決手段】オステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する抗体を含有することを特徴とする間質性肺炎診断剤およびこれを含有する間質性肺炎診断用キット。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は間質性肺炎の診断に使用することのできる間質性肺炎診断剤およびこれを含有する間質性肺炎診断用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
間質性肺炎は、間質の炎症と最終的には肺胞の線維化を起こす病気の総称で、様々な種類のものが含まれるものである。具体的には、特発性肺線維症(IPF)、非特異的間質性肺炎(NISP)、特発性器質化肺炎(COP)、急性間質性肺炎(AIP)、細気管支炎に伴う間質性肺疾患(RB―ILD)、剥離性間質性肺炎(DIP)、巨細胞性間質性肺炎(GIP)、膠原病性間質性肺炎(CVD−IP)および薬物性肺炎(drug−induced IP)が知られている。
【0003】
これらの間質性肺炎は、様々な要因で引き起こされるが、原因不明なものもあるため、その診断には既往歴、生活歴、職業歴、薬剤服用歴等について十分な病歴聴取を行い、病因や基礎疾患の有無や様々な測定の結果を検討する必要があった。
【0004】
一方、一般的に間質性肺炎の診断には、例えばサーファクタントタンパク質−A(SP−A)およびサーファクタントタンパク質−D(SP−D)およびシアル化糖鎖抗原であるKL−6のようなマーカーも利用されている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上記マーカーを間質性肺炎の診断に利用した場合、それらのマーカーの測定値と間質の炎症や肺胞の線維化の重症度と関連する動脈血酸素分圧(PaO)の測定値等との相関関係が認められず、診断の信頼性に問題があった。
【0006】
【非特許文献1】
KOBAYASHI, J. and KITAMURA S., ”KL−6:a serum marker for interstitial pneumonia”, Chest, 1995, 108, p311−315.
【非特許文献2】
TAKAHASHI, H., et al.,”Serum surfactant proteins A and D as prognostic factors in idiopathic pulmonary fibrosis and their relationship to desease extent”, Am. J. Respir. Crit. Care Med., 2000, 162, p1109−1114.
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は間質性肺炎を診断することができる技術の提供をその課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先に、オステオポンチンアイソフォームに対する抗体を見出し、更にこれを利用することでオステオポンチン量の測定が簡便に行えることを見出し、別途特許出願をした(特願2001−107578)。
【0009】
本発明者らは、上記オステオポンチンアイソフォームに対する抗体の利用範囲を拡大すべく、種々の疾患の患者について血漿中のオステオポンチン量と疾患の関係を調べていたところ、肺胞の線維化を伴う間質性肺炎に罹っている患者の血漿中のオステオポンチン量が健常人や肺胞の線維化を伴わないサルコイドーシスに罹っている患者と比べて有意に高いことを見出した。また、血漿中のオステオポンチン量が、間質の炎症や肺胞の線維化の重症度と関連する動脈血酸素分圧(PaO)の測定値と相関を示すことを見出した。そして、上記オステオポンチンに対する抗体を含有する試薬は、間質性肺炎診断剤および間質性肺炎診断用キットとして利用しうることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明はオステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する抗体を含有することを特徴とする間質性肺炎診断剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明はオステオポンチンの特定のエピトープを認識するオステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する第一の抗体を含む第一の試薬と、第一の抗体の認識するオステオポンチンのエピトープとは別のエピトープを認識するオステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する第二の抗体を含む第二の試薬とを含有することを特徴とする間質性肺炎診断用キットを提供するものである。
【0012】
更に、血漿または血清中のオステオポンチン量を指標とすることを特徴とする間質性肺炎の診断方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の間質性肺炎診断剤および間質性肺炎診断用キットで用いられる抗体は、オステオポンチン(Osteopontin)またはそのフラグメント部分に対する抗体である。この抗体の抗原であるオステオポンチンは、破骨細胞、活性化T細胞および活性化マクロファージを含む様々な細胞で分泌される、アミノ酸314(ヒト)残基からなる分子量50K〜80Kのリン酸化酸性糖タンパクである。この糖タンパクは、分子のほぼ中央に細胞接着配列であるアルギニン・グリシン・アスパラギン酸(RGD)配列を有し、接着分子のインテグリンファミリーに分類される。そしてその機能は、例えば白血球および平滑筋細胞等の異なる細胞種の走化性および細胞接着を誘導する炎症性サイトカインとして知られている。
【0014】
最近ではこのオステオポンチンと様々な疾患との関係が調べられてきている。例えば、オステオポンチンは試験的な心臓の外傷や心筋梗塞でのマクロファージの湿潤により放出されることや、それらがまた癌細胞の脈管形成と同様に糸状体腎炎の病因と関連することが報告されている。また、オステオポンチンが結核、シリコーシスおよびサルコイドーシス等の肺の肉芽種症と関連することについても報告されている。
【0015】
しかしながら、オステオポンチンと間質性肺炎、特に肺胞の線維化を伴う間質性肺炎との関連については全く知られておらず、また、例えば血漿中のオステオポンチン量を測定することにより間質性肺炎の診断ができることも全く知られていなかった。
【0016】
本発明の間質性肺炎診断剤に用いられる抗体は、上記オステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分(以下、「オステオポンチン類」という)を抗原とし、常法に従って処理をすることによって得ることができるものであって、オステオポンチンを特異的に認識する抗体であれば特に限定されず使用することができる。
【0017】
オステオポンチン類に対する抗体の作成において、抗原となるオステオポンチンは、初乳由来の精製タンパク質として株式会社免疫生物研究所(製品番号50040)より入手することができる。このオステオポンチン類に対する抗体は、前記オステオポンチン精製タンパク質を用いて常法により、ウサギ、マウス等に皮下注射あるいは皮内注射することに作製することができる。
【0018】
また、オステオポンチンのフラグメントペプチド部分とは、オステオポンチンをトロンビン、マトリックスメタロプロテイナーゼ等のタンパク質分解酵素等、好ましくはトロンビンにより分解して得られるフラグメントペプチドまたはオステオポンチンのアミノ酸配列(PubMed Accession No. BAA03554)より、3〜100の長さ、好ましくは5〜40の長さのペプチドを常法により合成して得られるペプチドである(以下、これらを「フラグメントペプチド類」という)。
【0019】
上記のフラグメントペプチド類を用いて抗体を作成するには、例えば、トロンビンにより切断されたフラグメントペプチド等のフラグメントペプチド類をそのまま抗原として用いることもできるが、好ましくは、オステオポンチン分子内に存在する複数の細胞接着ドメインを含むフラグメントペプチド類を生体高分子化合物と結合させた結合物を抗原として用いて調製することが好ましい。
【0020】
このようなフラグメントペプチド類の好ましい具体例としては、例えば、以下の式(a)あるいは(b)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを挙げることができる。
【0021】
(a) IPVKQADSGSSEEKQ
(b) KSKKFRRPDIQYPDATDE
【0022】
このフラグメントペプチド類は、生体高分子化合物と結合させた後、これを抗原とすることにより、効率よくオステオポンチンあるいはそのアイソマーに対する抗体を作成することができる。
【0023】
フラグメントペプチド類に結合させる生体高分子化合物の例としては、スカシ貝のヘモシアニン(以下「KLH」という)、卵白アルブミン(以下、「OVA」という)、ウシ血清アルブミン(以下「BSA」という)、ウサギ血清アルブミン(以下「RSA」という)、サイログロブリン等が挙げられ、このうちKLHおよびサイログリブリンがより好ましい。
【0024】
上記フラグメントプペチド類と生体高分子化合物との結合は、例えば、混合酸無水物法(B. F. Er.langer et al. :J. Biol. Chem. 234 1090−1094(1954))または活性化エステル法(A. E. KARU et al. :J. Agric. Food Chem. 42 301−309(1994))等の公知の方法によって行うことができる。
【0025】
混合酸無水物法において用いられる混合酸無水物は、フラグメントプペチド類を通常のショッテン−バウマン反応に付すことにより得られ、これを生体高分子化合物と反応させることにより目的とするペプチド−高分子化合物結合体が作成される。この混合酸無水物法において使用されるハロ蟻酸エステルとしては、例えばクロロ蟻酸メチル、ブロモ蟻酸メチル、クロロ蟻酸エチル、ブロモ蟻酸エチル、クロロ蟻酸イソブチル等が挙げられる。当該方法におけるペプチドとハロ蟻酸エステルと高分子化合物の使用割合は、広い範囲から適宜選択され得る。
【0026】
なお、ショッテン−バウマン反応は塩基性化合物の存在下に行われるが、当該反応に用いられる塩基性化合物としては、ショッテン−バウマン反応に慣用の化合物、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基等を使用することができる。
【0027】
また上記反応は、通常、−20℃から100℃、好ましくは0℃から50℃において行われ、反応時間は5分から10時間程度、好ましくは5分から2時間である。
【0028】
得られた混合酸無水物と生体高分子化合物との反応は、通常−20℃から150℃、好ましくは0℃から100℃において行われ、反応時間は5分から10時間程度、好ましくは5分から5時間である。混合酸無水物法は一般に溶媒中で行われるが、溶媒としては、混合酸無水物法に慣用されているいずれの溶媒も使用可能であり、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0029】
一方、活性化エステル法は、一般に以下のように行うことができる。まず、フラグメントペプチドを有機溶媒に溶解し、カップリング剤の存在下にてN−ヒドロキシコハク酸イミドと反応させ、N−ヒドロキシコハク酸イミド活性化エステルを生成する。
【0030】
カップリング剤としては、縮合反応に慣用されている通常のカップリング剤を使用でき、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、水溶性カルボジイミド等が挙げられる。また、有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等が使用できる。反応に使用するペプチドとN−ヒドロキシコハク酸イミド等のカップリング剤のモル比は好ましくは1:10〜10:1、最も好ましくは1:1である。反応温度は、0〜50℃、好ましくは22〜27℃で、反応時間は5分〜24時間、好ましくは1〜2時間である。反応温度は各々の融点以上沸点以下の温度で行うことができる。
【0031】
カップリング反応後、反応液を生体高分子化合物を溶解した溶液に加え反応させると、例えば生体高分子化合物が遊離のアミノ基を有する場合、当該アミノ基とペプチドのカルボキシル基の間に酸アミド結合が生成される。反応温度は、0〜60℃、好ましくは5〜40℃、より好ましくは22〜27℃で、反応時間は5分〜24時間、好ましくは1〜16時間、より好ましくは1〜2時間である。
【0032】
上記いずれかの方法により得られた反応物を、透析、脱塩カラム等によって精製することにより、フラグメントペプチド類と生体高分子化合物との結合物(以下、単に「結合物」ということがある)を得ることができる。
【0033】
次に、上のようにして得られた結合物を抗原とし、これを用いる抗体の作成法および当該抗体を用いる免疫化学的測定法について説明する。尚、抗体の調製にあたっては、公知の方法、例えば続生化学実験講座、免疫生化学研究法(日本生化学会編)等に記載の方法を適宜利用することができる。
【0034】
上記結合体を使用して、本発明の間質性肺炎診断剤に用いられる抗体を作成するには、当該結合物で動物を免疫し、当該動物から抗体を採取すれば良い。
【0035】
すなわち、まず、例えば、フラグメントペプチド類−サイログロブリン結合物等の結合物をリン酸ナトリウム緩衝液(以下、「PBS」という)に溶解し、これとフロイント完全アジュバントまたは不完全アジュバント、あるいはミョウバン等の補助剤と混合したものを、免疫原として哺乳動物を免疫する。
【0036】
免疫される動物としては当該分野で常用されたものをいずれも使用できるが、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等を挙げることができる。また、免疫の際の免疫原の投与法は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射のいずれでもよいが、皮下注射または腹腔内注射が好ましい。免疫は1回または適当な間隔で、好ましくは1週間ないし5週間の間隔で複数回行うことができる。
【0037】
次いで、常法に従い、免疫した動物から血液を採取し、そこから分離した血清を用い、オステオポンチンと反応するポリクローナル抗体を得ることができる。
【0038】
また、常法に従い、前記結合物で動物を免疫して得た免疫細胞と、ミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを得、当該ハイブリドーマの培養物から抗体を採取することによってオステオポンチンに対するモノクローナル抗体を得ることもできる(以下、オステオポンチン類に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を総称し、「オステオポンチン抗体」という)。
【0039】
かくして得られたオステオポンチン抗体は、必要により標識ないし固相化することができる。このうち標識は、西洋わさびペルオキシダーゼ(以下「HRP」と言う)、アルカリフォスファターゼ等の酵素、フルオレセインイソシアネート、ローダミン等の蛍光物質、32P、125I等の放射性物質、化学発光物質などを標識物質と、オステオポンチンを結合することにより行われる。また、固相化は、適切な固相にオステオポンチン抗体を結合させることにより行われる。固相としては、免疫化学的測定法において慣用される固相のいずれをも使用することができ、例えば、ポリスチレン製の96穴マイクロタイタープレート、アミノ基結合型のマイクロタイタープレート等のプレートや、各種のピーズ類が挙げられる。オステオポンチン抗体を固相化させるには、例えば、抗体を含む緩衝液を担体上に加え、インキュベーションすればよい。
【0040】
本発明の間質性肺炎診断剤は、上記したオステオポンチン抗体を含有するものであり、下記に示したオステオポンチンを測定する方法に適した剤形にすればよい。そしてこれを利用して血漿、血清等の検体中のオステオポンチン量を測定することができ、この量を指標とすることで、間質性肺炎の診断を行うことができる。
【0041】
具体的な、間質性肺炎の診断としては、間質の炎症や肺胞の線維化を伴う間質性肺炎とその他の肺疾患との鑑別が挙げられる。なお、上記においてその他の肺疾患とは、基本的に肺胞の線維化を伴わない肺疾患のことであり、例えば肺胞性肺炎やサルコイドーシス等の肉芽腫性肺疾患が挙げられる。
【0042】
より具体的に間質の炎症や肺胞の線維化を伴う間質性肺炎とその他の肺疾患との鑑別においては、検体中のオステオポンチン値がカットオフ値である313.3ng/ml以上を示せば間質の炎症や肺胞の線維化を伴う間質性肺炎と診断される。
【0043】
上記オステオポンチン抗体を含有する間質性肺炎診断剤によりオステオポンチンを測定する方法としては、例えば、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Engvall, E, Methods in Enzymol, 70, 419−439(1980))、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、凝集法、オクタロニー(Ouchterlony)等の一般の免疫化学的測定法において使用されている種々の方法(「ハイブリドーマ法とモノクローナル抗体」、株式会社R&Dプランニング発行、第30頁−第53頁、昭和57年3月5日)を利用することができる。
【0044】
そして、これらの測定方法は種々の観点から適宜選択することができるが、オステオポンチンの特定のエピトープを認識するオステオポンチン抗体(第一の抗体)と、この抗体の認識するオステオポンチンのエピトープとは別のエピトープを認識するオステオポンチン抗体(第二の抗体)を利用するものが好ましく、感度、簡便性等の点からはELISA法が好ましい。
【0045】
より具体的には、例えば、前でも説明した、次の式(a)および(b)で表されるペプチドを含むオステオポンチンのフラグメント部分に対する抗体を使用することにより、感度良くオステオポンチンを測定することができ、この結果、間質性肺炎の診断も的確に行うことができる。
(a) IPVKQADSGSSEEKQ
(b) KSKKFRRPDIQYPDATDE
【0046】
また、本発明の間質性肺炎診断剤の使用態様の一例としては、血漿、血清等の検体中のオステオポンチン量を測定し、その量から間質性肺炎を診断することのできる間質性肺炎用キットを挙げることができる。
【0047】
この間質性肺炎診断用キットの一例としては、固相化された第一の抗体を含む第一の試薬と、標識された第二の抗体を含む第二の試薬が組み合わされたものを挙げることができる。この間質性肺炎診断用キットでは、オステオポンチンの検出を正確に行えるように、オステオポンチンの異なる認識部位を有する第一の抗体と第二の抗体が使用される。例えば下記式(a)のペプチドを含むオステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する抗体を第一の抗体とした場合は、式(b)のペプチドを含むオステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する抗体の何れかを第二の抗体とし、サンドイッチ法を用いた間質性肺炎診断用キットを調製することができる。
(a) IPVKQADSGSSEEKQ
(b) KSKKFRRPDIQYPDATDE
【0048】
また、このようなキットは株式会社免疫生物研究所からHuman Osteopontin測定キット−IBL(製品番号:17158)として市販もされているので、これを利用してもよい。
【0049】
【作用】
これまで、間質性肺炎の診断には様々な測定等を行った後に行う必要があったが、本発明の間質性肺炎診断剤やこれを含有する間質性肺炎診断キットは血清や血漿等に含まれるオステオポンチンをマーカーとするため、従来の診断法と比べてより簡便に間質性肺炎の診断を行うことができる。
【0050】
また、このオステオポンチンをマーカーは動脈血酸素分圧(PaO)と相関が認められることから、特に間質の炎症や肺胞の線維化を伴う間質性肺炎を好適に診断することができる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例を上げ本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらにより何ら制約されるものではない。また当業者は、本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができるが、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
実 施 例 1
オステオポンチンのフラグメントペプチド部分の入手:
オステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチドは、HPLCクロマトグラフィー精製した状態の品をオースペップ(Auspep)社より購入した。それらのアミノ酸配列は、下記の(a)および(b)に示す通りである。
【0053】
(a) IPVKQADSGSSEEKQ
(b) KSKKFRRPDIQYPDATDE
【0054】
実 施 例 2
免疫用抗原の作成:
免疫原として、オステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチドとサイログロブリンとの結合体をEMCS(N−(6−Maleimidocaproyloxy)−succinimide)法により、以下のようにして作成した。なお、結合体を作るにあたり、サイログロブリンとオステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチドとEMCSのモル比をそれぞれ1:300:400とした。
【0055】
実施例1の各オステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチド4mgを、それぞれ約1mlの蒸留水に溶解した。一方、1mlの0.01Mリン酸バッファー(pH7.0)に5mgのサイログロブリンを溶解したものと、ジメチルホルムアミドで溶解したEMCS80μg/μlとをそれぞれ上述モル相当量になるように混合し、サイログロブリン−EMCS複合体溶液を作成した。この複合体溶液を3つに分け、その各々に上記オステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチド溶液を上述モル相当量加えることにより、EMCSで架橋されたオステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチドとサイクログロブリンとの結合体溶液を作成した。
【0056】
この結合体溶液を、PBSを用いて透析し、結合体として10μg/μlになるように濃度調製した。このようにして得られたオステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチドとサイログロブリンとの結合体を免疫用抗原として以下の実施例に用いた。
【0057】
実 施 例 3
オステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチド(a)に対する抗体の作成:
免疫用抗原として、実施例2において得られたオステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチド(a)とサイログロブリンとの結合体を用い、ウサギに免疫を行った。免疫は、1週間、または2週間おきに結合体溶液100μl(100μg)を投与することにより行った。抗原は初回免疫のみにフロイント完全アジュバントと混和し、二回目からはフロイント不完全アジュバントと混和した。8回免疫後、採血を行い、血清を分離しこれを抗血清とした。この抗血清は、別途作成したペプチド(a)をチオールセルロファインゲル(生化学工業(株)製)等に結合した抗原カラムを用いて、カラムに結合した分画のみを回収し、これを抗体とした(以下、これを「ペプチド(a)に対する抗体」という)。
【0058】
実 施 例 4
ペプチド(a)に対する抗体のオステオポンチンに対する反応性:
ペプチド(a)に対する抗体の抗原ペプチドに対する反応性は、ペプチド(a)を96穴プレートに濃度1.0μg/mlで4℃、一晩放置し、ブロッキング液(0.1%BSA/PBS/0.05%NaN)を加えたプレートとペプチド(a)を加えないでブロッキング液のみを加えたプレートで比較することにより検討した。その結果、抗原ペプチドに対して、反応性を認めることができた。次にオステオポンチンcDNAをpcDNA3.1ベクター(インビトロジェン社製)に挿入し、CHO−K1細胞に遺伝子導入した培養上清から精製したオステオポンチンタンパク質(以下、これを「CHO/OPN−a」という)を用いてペプチド(a)に対する抗体がOPNと反応を示すかウエスタンブロット法にて調べた。その結果、ペプチド(a)に対する抗体はオステオポンチンと反応性を示すことがわかった。
【0059】
実 施 例 5
オステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチド(b)に対する抗体の作成および抗体のオステオポンチンに対する反応性:
免疫用抗原として、実施例2において得られたオステオポンチンのフラグメントペプチド部分のペプチド(b)とサイログロブリンとの結合体を用いマウスに免疫を行った。免疫したマウスの脾細胞とマウスミエローマ細胞(X63−Ag8−653)とをポリエチレングリコール介在細胞融合技術(Kinebuchi M. et al., J. Immunol. 46:3721−3728(1991).)を用いてハイブリドーマを作成した。これらのハイブリドーマのうちハイブリドーマが産生する抗体とオステオポンチンのフラグメントペプチド部分とが反応するものを選択した。その結果、クローン名10A16のモノクローナル抗体(以下、これを「ペプチド(b)に対する抗体」という)を得た。次に、実施例4で得られたCHO/OPN−aを用いて、ペプチド(b)に対する抗体がオステオポンチンと反応性を示すかをウエスタンブロット法にて調べた。その結果、ペプチド(b)に対する抗体はオステオポンチンと反応性を示すことがわかった。
【0060】
実 施 例 6
ペプチド(b)に対する抗体とHRPとの結合体作成:
実施例5で得られたペプチド(b)に対する抗体とHRPとの結合体作成は以下のように作成した。ペプチド(b)に対する抗体の20mgをペプシン消化し、ゲル濾過することによりペプチド(b)に対する抗体のF(ab’)2フラグメントを精製し、2−メルカプトエタノールを用いることによりF(ab’)2フラグメントをFab’フラグメントに還元した。HRPとEMCSとを、37℃で60分反応させ、ゲル濾過することによりHRP−EMCS結合体を作成し、さらにこれとペプチド(b)に対する抗体のFab’フラグメントとを4℃で一晩反応させ、ゲル濾過することによりEMCS架橋によるペプチド(b)に対する抗体とHRPとの結合体を作成した。
【0061】
実 施 例 7
サンドイッチELISA法の構築:
サンドイッチELISA法の構築は以下のように作成した。10μg/mlのペプチド(a)に対する抗体を100μlずつ96wellELISA用プレートに加えた。4℃一晩反応させた後、10%BSA/PBS/NaN溶液にてブロッキングを行い、これをサンドイッチELISA用プレートとした。また、実施例6で作成したペプチド(b)に対する抗体とHRPとの結合体を標識抗体とした。
【0062】
実 施 例 8
血漿オステオポンチン量の測定:
(1)サンプル
血漿オステオポンチン量の測定は、15歳〜82歳(58.8±15.6歳)の11人の男性の患者と6人の女性の患者で行った。これらの患者の内訳は、特発性肺線維症(IPF;n=9)、非特異的間質性肺炎(NSIP;n=1)、特発性器質化性肺炎(COP;n=2)、巨細胞性間質性肺炎(GIP;n=1)、膠原病性間質性肺炎(CVD−IP;n=3;各患者はリウマチ、混合結合性の組織病か皮膚筋炎があった)そして、薬物誘発性間質性肺炎(n=1)であった。NSIPあるいはCOPの各患者は、コルチコステロイド(10mg)の投与を受けていた。そして、その他の患者のだれもが血液採取時点で、コルチコステロイドおよび他の免疫調節薬の投与を受けていなかった。
【0063】
また、比較対照として23歳〜72歳(52.8±14.9歳)の5人の男性患者と4人の女性患者の血漿オステオポンチン量を測定した。患者の内訳はサルコイドーシス(類肉腫症)のステージIが3人、ステージIIが5人、ステージIIIが1人であった。これらの患者のだれもが血漿のサンプリングの際にコルチコステロイドおよび他の免疫調節薬の投与を受けていなかった。
【0064】
更に、コントロールとして間質性肺炎あるいは他の間質性肺疾患の経歴がなく、胸部レントゲン写真で呼吸器系統疾患が確実にない10人の健常男性と10人の健常女性ボランティアの血漿オステオポンチン量の測定した。
【0065】
なお、これらの測定において、心臓血管疾患、癌患者、悪性腫瘍を持っていると疑われる患者は測定の対象としなかった。
【0066】
(2)実験方法
上記(1)で採取された末梢血液はEDTAを入れてあるチューブの中に集められ、血漿試料は−80℃で保存した。血漿試料採取時に、あるいはその1ヶ月以内に肺機能と動脈血酸素分圧を測定した。
【0067】
各血漿試料中のオステオポンチン量の測定は上記実施例で構築したサンドイッチELISA法を使用した。また、間質性肺炎のマーカーとして知られているKL−6、SP−AおよびSP−Dについても測定した。KL−6は、ECLAキット(Picolumi KL−6;三光純薬社製)で測定し、SP−AおよびSP−DはEIAキット(SP−A test−F;国際試薬製、SP−D kit YAMASASP−D;ヤマサ醤油製)で測定した。なお、これらの測定は各キットのプロトコルに従った。これらのキットにおけるカットオフ値はKL−6が500U/ml、SP−Aが43.8ng/ml、SP−Dが110ng/mlであった。また、すべての測定は2回行われた。
【0068】
(3)統計学的分析
各測定値は、スタットビュー(StatView)J 5.0ソフトウェア(Abacus Concept,Inc.製)を使用して統計的に分析した。この実験におけるすべての測定値は平均値±標準偏差(SD)で表した。異なるグループ間の違いは、多重比較分析(フィッシャーのPLSDテスト)によるANOVAテストを使用することで調べた。また、2つの定義されたパラメーター間は線形最小二乗回帰分析により相関付けた。
【0069】
(4)結果
<間質性肺炎に罹っている患者の血漿OPN濃度>
間質性肺炎に罹っている患者と、サルコイドーシスに罹っている患者および健常人コントロールとの間で血漿OPN濃度を比較した。図1は、間質性肺炎に罹っている患者の血漿OPN濃度が、サルコイドーシスに罹っている患者および健全なコントロールと比べて著しく高かったことを示した(各々945.5±256.0ng/ml、156.7±52.2ng/mlおよび321.2±146.8ng/mlであった;p<0.0001)。
【0070】
また、サルコイドーシスに罹っている患者の血漿OPN濃度はコントロールより高かった(p<0.05)。健常人コントロールから得られた平均値+3SD(313.3ng/ml;図1)をカットオフ値とすると、間質性肺炎に罹っているすべての患者の血漿OPN濃度がカットオフ値よりも高かった(388ng/ml〜1481ng/ml)。一方、サルコイドーシスに罹っている9人の患者のうちの5人(55.6%)および健常人コントロールの血漿OPN濃度は、いずれもカットオフ値よりも低かった。なお、血漿OPN濃度は男女間や喫煙者、非喫煙者間において健常人コントロールおよび患者間のいずれでも大きな差異はなかった。さらに、OPN濃度は年齢に比例して増加しなかった。
【0071】
<間質性肺炎に罹っている患者の血漿OPN濃度と肺機能検査間の相関関係>
間質性肺炎に罹っている患者の血漿OPN濃度と動脈血酸素分圧(PaO)の値とは強い逆相関があるが、肺活量(%VC)あるいは拡散能(%TLCO)とは相関がなかった。一方、臨床パラメーター(間質性肺疾患の病期活動マーカー)であるKL−6、SP−AおよびSP−Dの濃度の相関分析により、KL−6と%VCの間にのみ相関があった(図2および表1)。
【0072】
また、血漿OPN濃度ならびにKL−6、SP−AおよびSP−Dの血清中濃度とは間質性肺炎に罹っている患者において相関はなかった(データは図示せず)。
【0073】
【表1】
Figure 2005030852
【0074】
<間質性肺炎に罹っている代表的な患者の血漿OPN濃度における臨床経過と連続的な変化>
図3は、外科的な肺生検によりGIPと診断された15歳の少年の血漿OPN濃度の連続的な変化と臨床経過との関係を示した。これによりステロイド治療(メチルプレドニソロンの投与)によるPaOの上昇が血漿OPN濃度の低下と関連づけられた。
【0075】
【発明の効果】
本発明の間質性肺炎診断剤および間質性肺炎診断用キットは、従来知られていなかった新規な間質性肺炎マーカーであるオステオポンチンを、このものに対する抗体により測定するものである。そして、本発明の間質性肺炎診断剤および間質性肺炎診断用キットは、例えば、血清、血漿等の検体を利用することができる。
【0076】
従って、本発明の間質性肺炎診断剤および間質性肺炎診断用キットは、従来の診断と比べて短時間で簡単に間質性肺炎の診断が行えるものである。
【0077】
【配列表】
Figure 2005030852
Figure 2005030852

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、間質性肺炎に罹っている患者(IP)、サルコイドーシス(SA)に罹っている患者および健常人コントロール(C)の血漿OPN濃度を示す図面である。
【図2】図2は、間質性肺炎に罹っている患者の血漿OPN濃度と動脈血酸素分圧(PaO)との相関関係を示す図面である。
【図3】図3は、外科的な肺生検によりGIPと診断された15歳の少年の血漿OPN濃度の連続的な変化と臨床経過との関係を示す図面である。図中の矢印は胸腔鏡下手術(VATS)が行われた時期およびメチルプレドニソロンが投与された時期を示す。
以 上

Claims (6)

  1. オステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する抗体を含有することを特徴とする間質性肺炎診断剤。
  2. オステオポンチンのフラグメントペプチド部分が、次の(a)または(b)で表されるペプチドを含むものである請求項第1項記載の間質性肺炎診断剤。
    (a) IPVKQADSGSSEEKQ(配列番号1)
    (b) KSKKFRRPDIQYPDATDE(配列番号2)
  3. オステオポンチンの特定のエピトープを認識するオステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する第一の抗体を含む第一の試薬と、第一の抗体の認識するオステオポンチンのエピトープとは別のエピトープを認識するオステオポンチンまたはそのフラグメントペプチド部分に対する第二の抗体を含む第二の試薬とを含有することを特徴とする間質性肺炎診断用キット。
  4. 第一の試薬が固相化された第一の抗体を含む試薬であり、第二の試薬が標識された第二の抗体を含む試薬である請求項第3項記載の間質性肺炎診断用キット。
  5. 第一の抗体が、下記式(a)、
    (a) IPVKQADSGSSEEKQ(配列番号1)
    で表されるペプチドを含むオステオポンチンのフラグメントペプチド部分に対する抗体であり、
    第二の抗体が、下記式(b)、
    (b) KSKKFRRPDIQYPDATDE(配列番号2)
    で表されるペプチドを含むオステオポンチンのフラグメントペプチド部分に対する抗体である請求項第3項または第4項記載の間質性肺炎診断用キット。
  6. 血漿または血清中のオステオポンチン量を指標とすることを特徴とする間質性肺炎の診断方法。
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