JP2005029832A - 強誘電体薄膜形成用の焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲット - Google Patents
強誘電体薄膜形成用の焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲット Download PDFInfo
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Abstract
【課題】Pb濃度の局所的なばらつきを抑えることで薄膜自体の特性ばらつきを解消することができるPZT薄膜を形成でき、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットに用いる焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】強誘電体薄膜形成用のターゲットに用いる、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、前記組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であるとともに、Pb成分が均一分散されており、また前記組成式中のx、y、z及びaは下記の三つの要件を満たしていることを特徴とする焼結体などによって提供。
1.10≦x/y≦1.40
0.2≦(1−a)/a≦0.7
2.8≦z/y≦3.1
【選択図】 なし
【解決手段】強誘電体薄膜形成用のターゲットに用いる、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、前記組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であるとともに、Pb成分が均一分散されており、また前記組成式中のx、y、z及びaは下記の三つの要件を満たしていることを特徴とする焼結体などによって提供。
1.10≦x/y≦1.40
0.2≦(1−a)/a≦0.7
2.8≦z/y≦3.1
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強誘電体薄膜形成用の焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットに関し、さらに詳しくは、Pb濃度の局所的なばらつきを抑えることで薄膜自体の特性ばらつきを解消することができるチタン酸ジルコン酸鉛薄膜を形成でき、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットに用いる焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットに関する。本発明のターゲットは、不揮発性強誘電体メモリや圧電アクチエーター等に使用される強誘電体薄膜の形成に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
一般に、チタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼称することがある。)等の強誘電体膜は、不揮発メモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリのキャパシタ、圧電素子、光素子等に用いられることが知られている。この中で、強誘電体メモリ用の強誘電体膜を作製する方法として、スパッタリング法、ゾルゲル法、CVD法等を用いて実用化が進められている。ここで、強誘電体膜の中で大きな分極特性を持つPZT薄膜は、高周波(RF)スパッタリング法による方法が注目されている。RFスパッタリング法は、膜形成が容易であることと、それに引き続いて電極形成できることが有利である。
【0003】
RFスパッタリング法で良質なPZT薄膜を得るためには、膜組成の制御が重要である。一般に、PZT薄膜の最も大きな分極特性が得られる組成は、組成式:Pb1.0(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)で表され、原子比:Pb/(Zr+Ti)が1.0の化学量論組成といわれている。良好な特性のPZT薄膜を得るためには、例えば組成式:Pb1.05〜1.3(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)で表される原子比:Pb/(Zr+Ti)が1.05〜1.3の組成範囲の、いわゆるPb過剰型のターゲットが多用されている。薄膜組成とターゲット組成が乖離する理由は、薄膜のPb濃度がスパッタ雰囲気、ガス圧、基板温度、スパッタ電力等のRFスパッタリングの成膜条件によって大きく変化することと、他方膜積層後に行う熱処理中に、高いPb蒸気圧のためPbが優先的に揮発し、PZT薄膜組成は低Pb濃度となり良質な膜特性が得られなくなるためである。
【0004】
しかしながら、Pb過剰型のターゲットでは、過剰Pb酸化物がPZT粒子界面に粗大なガラス相として偏析する場合が多く、PZT薄膜組成のばらつきや変動原因となったり、高電力でスパッタリング成膜を行うときにターゲットの割れが発生しやすくなるという問題がある。
この解決策として、Pb過剰型のPZTターゲットとその製造法が提案されており、代表的な提案としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とした強誘電体薄膜用ターゲット中のPb、Zr、TiがPb/(Zr+Ti)のモル比で1.01〜1.30の範囲でPbが過剰の焼結体からなり、前記過剰のPbがPb3 O4を主体とする酸化鉛で構成される。このチタン酸ジルコン酸鉛焼結体よりなる強誘電体薄膜用ターゲットの焼結密度を7.50g/cm3 以上とする(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
(2)チタン酸ジルコン酸鉛焼結体を主成分とした強誘電体薄膜用ターゲットのPb/(Zr+Ti)のモル比で1.02〜1.30とし、好ましくはこの中にPb1.0Zr0.5 Ti0.5 O3 とPb2.0 Zr0.5 Ti0.5 O3とが共存している。この中のPbの一部をBaあるいはSrで置換した組成をしているターゲットおよびそれから作った強誘電体薄膜である。また、この組成として、Zr、Tiの一部をMn、Fe、Sn、Nbで置換することができる。ターゲットの製造時に焼結を2気圧以上の酸素雰囲気で行う(例えば、特許文献2参照)。
(3)アルカリ金属含有量の合計が2ppm以下の鉛含有ペロブスカイト構造複合酸化物の構成粒子が、平均粒径2μm以下の単位粒子からなる焼結体である高強度かつ高純度鉛含有ペロブスカイト強誘電体薄膜製造用スパッタリングターゲット材である(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
(4)表面にPbO粒子を被覆したPZT複合粉末をホットプレスするPZT強誘電体膜形成用スパッタリングターゲットの製造法である(例えば、特許文献4参照)。
(5)PZT系高誘電体ターゲットの製造方法において、ターゲット構成元素Pb、Zr、Tiの純金属及び/又は酸化物から成る原料粉末をメカニカルアロイングによりPZT系粉末とし、ターゲットとして形成する。構成元素の原料粉末を純金属とするかあるいは酸化物とするかの選択を通して酸素濃度をコントロールする。均一微細な組織の、パーティクル発生量の少ないスパッタ特性のよい低コストターゲットを得る(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
これらの提案は、PZT薄膜の特性の向上に貢献しているが、単にPbO粉末を過剰に添加するか、Pb酸化物の形態をPb3O4としているだけであるので、PZT薄膜のPb濃度が局所的にばらつくのを抑えて、薄膜自体の特性のばらつきの原因を完全に払拭するまでには至っていない。また、メカニカルアロイング法で作製する方法では、製造コストが上昇してしまい、実用的で良好な薄膜を形成できるターゲットを得るためには未だ課題を残している。
以上の状況から、PZT薄膜の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生しないターゲットが求められている。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−1367号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】
特開平11−1768号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献3】
特開平5−320894号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献4】
特開平6−56528号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献5】
特開平6−272033号公報(第1頁、第2頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、Pb濃度の局所的なばらつきを抑えることで薄膜自体の特性ばらつきを解消することができるチタン酸ジルコン酸鉛薄膜を形成でき、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットに用いる焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、チタン酸ジルコン酸鉛系の強誘電体薄膜の形成に用いるターゲット用焼結体について、鋭意研究を重ねた結果、特定の組織と組成式を有する複合酸化物焼結体から得られるターゲットを用いたところ、PZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、強誘電体薄膜形成用のターゲットに用いる、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、
前記組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であるとともに、Pb成分が均一分散されており、また前記組成式中のx、y、z及びaは下記の三つの要件を満たしていることを特徴とする焼結体が提供される。
1.10≦x/y≦1.40
0.2≦(1−a)/a≦0.7
2.8≦z/y≦3.1
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記Pb成分のEPMA定量分析での濃度分布が、前記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.03〜(x/y)+0.03の範囲内にあることを特徴とする焼結体が提供される。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、焼結密度が7.5g/cm3以上であることを特徴とする焼結体が提供される。
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3いずれかの発明において、さらに、前記組織の構成成分として、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を2〜5mol%の濃度で含むことを特徴とする焼結体が提供される。
【0015】
また、本発明の第5の発明によれば、Pb、Zr及びTiの酸化物粉末を用いて、混合、カ焼、解砕を繰返し行いそれを成形し、得られた成形物を加熱処理して、焼結体を製造する方法であって、
(1)前記酸化物粉末を所定の配合比で調合した混合物を湿式粉砕混合し、そのスラリーを乾燥して乾燥造粒物を得る第1の工程、
(2)第1の工程で得られる乾燥造粒物をカ焼に付し、1次カ焼粉末を得る第2の工程、
(3)第2の工程で得られる1次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第3の工程、
(4)第3の工程で得られる乾燥粉末をカ焼に付し、2次カ焼粉末を得る第4の工程、
(5)第4の工程で得られる2次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第5の工程、
(6)第5の工程で得られる乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る第6の工程、及び
(7)第6の工程で得られる成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る第7の工程、を含むことを特徴とする第1〜3いずれかの発明の焼結体の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、第2の工程において、1次カ焼の加熱温度が、700〜750℃であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明において、第4の工程において、2次カ焼の加熱温度が、760〜830℃であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第5の発明において、第7の工程において、Pb蒸気雰囲気のPb濃度が0.2〜1.0g/cm3であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第9の発明によれば、第5の発明において、第7の工程において、加熱処理を880〜920℃、次いで950〜1200℃の二段階の焼結温度で行うことを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、前記加熱処理の温度パターンが、860℃から前記1段目の焼結温度迄を1℃/min以下の速度で昇温して、1段目の焼結温度で0.5〜10時間保持し、次いで950℃から2段目の焼結温度迄を0.5℃/min以上の速度で昇温して、2段目の焼結温度で0.5〜10時間保持するものであることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第11の発明によれば、第5の発明において、第7の工程において、前記容器の底部に焼成セッタ粉末を敷設し、その上に成形体を配置する横型焼結炉を用いる加熱処理であって、
前記容器が外気を遮断できる構造の高純度酸化マグネシア製容器であり、かつ前記焼成セッタ粉末として前記組成式の複合酸化物粉末を用いることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、前記焼成セッタ粉末のPb濃度が、前記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.05〜(x/y)+0.05の範囲内にあることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第13の発明によれば、第11の発明において、前記焼成セッタ粉末が、前記組成式の複合酸化物を予め800℃以上の温度で加熱処理した後、1mm以下の粒径に粉砕して得た粉末であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第14の発明によれば、第5〜13いずれかの発明において、第5の工程において、さらにLaSi及び/又はPbSi酸化物を添加し、前記2次カ焼粉末と同時に湿式粉砕し、LaSi及び/又はPbSi酸化物を2〜5mol%の濃度で含む乾燥粉末を得ることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0025】
また、本発明の第15の発明によれば、本発明の第1〜4のいずれかの焼結体を用いてなるスパッタリングターゲットが提供される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の強誘電体薄膜形成用の焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットを詳細に説明する。
本発明の強誘電体薄膜形成用の焼結体及びそれを用いたスパッタリングターゲットは、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、前記組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であるとともに、Pb成分が均一分散されており、また前記組成式中のx、y、z及びaは、1.10≦x/y≦1.40、0.2≦(1−a)/a≦0.7、及び2.8≦z/y≦3.1の三つの要件を満たしている。
【0027】
その好ましい製造方法は、Pb、Zr及びTiの酸化物粉末を用いて、前記酸化物粉末を所定の配合比で調合した混合物を湿式粉砕混合し、乾燥して乾燥造粒物を得る第1の工程、前記乾燥造粒物をカ焼に付し、1次カ焼粉末を得る第2の工程、前記1次カ焼粉末を湿式解砕し、乾燥造粒して乾燥粉末を得る第3の工程、前記乾燥粉末をカ焼に付し、2次カ焼粉末を得る第4の工程、前記2次カ焼粉末を湿式解砕し、乾燥造粒して乾燥粉末を得る第5の工程、前記乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る第6の工程、及び前記成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る第7の工程を含む。
【0028】
1.焼結体
本発明の焼結体は、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、該組織は、Pb成分が均一分散されており、また該組成式中のx、y、z及びaは特定の要件を満たしていることが重要な意義を持つ。これによって、それを用いたターゲットによって形成されるPZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることができ、安定した強誘電特性、特に分極特性が得られ、またスパッタリングにおいて高電力をかけてもターゲットの割れの発生を抑制できる効果もある。
【0029】
さらに、本発明の焼結体において、前記複合酸化物の結晶組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であることが重要である。これによって、空隙の少ないターゲットが得られるので、スパッタリングによる成膜時にターゲットからの脱ガスが少なく、安定なプラズマ状態が持続するので良質な薄膜が形成できる。
【0030】
本発明の焼結体の組織において、Pb成分は均一分散されている。すなわち、PZT複合酸化物中のPb成分が均一分散されるとともに、化学量論組成より過剰のPb成分は、PbO相として、結晶粒界に均一に、かつ微細に分散している。このため、粗大なPbO相によるスパッタリングの不安定、薄膜組成の変動、ひいては高スパッタリング電力を投入した際のターゲット割れが解消される。
また、結晶粒界に微細に分散されたPb酸化物は、PZT結晶の焼結助剤的な役割をはたす。また、微細に分散しているので、焼結性の悪いTi分が多い組成であっても、焼結体は高密度かつ高強度が容易に達成される。このため、高スパッタリング電力を投入した際のターゲット割れの発生が抑制できる効果がある。このときのPbO相の大きさは直径5μm以下が望ましい。
【0031】
本発明の焼結体の組成は、組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOz中のx、y、z及びaは、1.10≦x/y≦1.40、0.2≦(1−a)/a≦0.7、及び2.8≦z/y≦3.1なる三つの要件を満たしている。これによって、それを用いたターゲットによって形成されるPZT薄膜の組成を、組成式:Pb1.0(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)に制御でき、そこで原子比:Pb/(Zr+Ti)が1.0の化学量論組成に適切に制御されるので、強誘電特性、特に分極特性に優れた薄膜が得られる。すなわち、上記組成式中のx、y、z及びaの値が上記三つの要件を満たしているとき、薄膜組成の制御は、成膜時のArガス圧の調整で行える。これに対して、上記組成式中のx、y、z及びaの値が、この範囲から外れると、薄膜組成の制御ができなくなり、分極特性が劣る。
【0032】
さらに詳しくは、上記組成式のx/yの値は、1.10〜1.40である。すなわち、x/yの値が1.10未満では、成膜時のArガス圧で薄膜のPb濃度を制御することが難しくなる。一方、x/yの値が1.40を超えると、過剰分のPbOは焼結体のPZT結晶の界面部分にガラス相として偏析するので、Pb成分のスパッタリングが不安定になり、薄膜組成が変動したり、成膜バッチによって組成が変動したり、ひいては高スパッタリング電力を投入した際に衝撃に弱いガラス相を起点にしてターゲット割れが発生する。
【0033】
また、上記組成式の(1−a)/aの値は、0.2〜0.7である。すなわち、(1−a)/aの値が0.2未満では、成膜された薄膜のTi濃度が低下して分極特性が低下する。一方、0.7を超えると、結晶異方性が生じて焼結性が悪化し、焼結体の密度及び機械的強度が低下する。また、特に、低電力化のために抗電界を低く抑えるためには、Ti濃度は上記範囲がよい。
【0034】
また、上記組成式のz/yの値は、2.8〜3.1である。すなわち、PZT薄膜の最も大きな分極特性が得られる組成は、組成式:Pb1.0(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)であり、ターゲットの酸素濃度を前記範囲とする。
【0035】
上記の焼結体の組織は、平均結晶粒径が3〜7μm、最大空隙径が2μm以下である。このため、空隙の少ないターゲットが得られるので、スパッタリングによる成膜時にターゲットからの脱ガスが少なく、安定なプラズマ状態が持続するので良質な薄膜が形成できる。すなわち、最大空隙径が2μmを超えると、成膜時にプラズマ状態が不安定となったり、またターゲットの機械的強度が低下する。また、平均結晶粒径が7μmを超えると、最大空隙径が大きくなり、またターゲットの焼結密度が低くなる。一方、3μm未満では、微細化のための粉砕等のコストが過大となるし、また、焼結において粒成長させても緻密化させることができない。
【0036】
上記の焼結密度は、特に限定されるものではないが、7.50g/cm3以上が好ましく、7.60g/cm3以上がさらに好ましい。すなわち、7.50g/cm3未満では、焼結体中に空孔が多くあり、これによってスパッタリングによる成膜時に、空孔を介してPb蒸気が選択的に飛散しターゲット内部の組成ばらつきが大きくなる。
【0037】
上記のPb成分のEPMA定量分析での濃度分布は、特に限定されるものではないが、上記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.03〜(x/y)+0.03の範囲内にある。すなわち、この範囲から外れると、所定の薄膜組成に制御できない。
【0038】
さらに、本発明の焼結体は、特に限定されるものではないが、該組織の構成成分として、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を2〜5mol%の濃度で含むことが好ましい。すなわち、それを用いたターゲットによって形成されるPZT薄膜中に、所定量のLaSi及び/又はPbSi酸化物結晶が含まれると、薄膜の分極特性を発現させる結晶化温度を低くすることができること、また分極特性を低下させずにより薄膜化を行うことができる等の効果がある。ここで、前記濃度が2mol%未満では、上記効果が現れにくく、5mol%を超えると、薄膜の分極特性が悪化する。
【0039】
ここで、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶は、焼結体の結晶組織において、該酸化物結晶として独立し分散して存在していることが、上記効果を得るために不可欠である。また、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶の大きさは、特に限定されるものではないが、上記したPZT結晶と同様の粒径が好ましい。すなわち、焼結体の製造工程で、PZT結晶との反応を極力抑える方策を行い、PZT結晶中に置換挿入されてしまうことを防止する。
【0040】
以上より、本発明の焼結体は、スパッタリングで形成されるPZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲット用として用いられる。
【0041】
2.酸化物原料
本発明の製造方法に用いるPb、Zr又はTiの酸化物粉末は、特に限定されるものではなく、市販の酸化鉛粉末、酸化ジルコニウム粉末若しくは酸化チタン粉末、又はそれらの合成粉末を用いることができる。原料として微細な粉末が好ましく、金属アルコキシド、水酸化物等を熱分解して得られる微細な粉末も使用できる。
上記酸化物粉末の純度は、特に限定されるものではないが、PZT系強誘電体薄膜の所望の特性を得るために、純度99.99重量%以上が好ましい。
【0042】
本発明のLaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を含む製造方法に用いるLaSi酸化物粉末又はPbSi酸化物粉末は、特に限定されるものではないが、所定の組成に調製された酸化物粉末を用いるのが好ましい。その製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば前記酸化物の原料粉末を所定組成に混合後、カ焼して得られる。例えば、La2SiO5は、La(OH)3粉末にSiO2粉末を13.65重量%添加し乾式混合を12時間行い、その後混合物を1300〜1450℃で2時間カ焼して得られる。また、Pb2SiO4は、PbO粉末にSiO2粉末を15重量%添加し乾式混合を12時間行い、その後混合物を600〜680℃で2時間カ焼して得られる。ここで、原料粉末として、炭酸ランタン粉末、酸化ランタン粉末、水酸化ランタン粉末、酸化鉛粉末又は酸化珪素粉末を用いることができる。原料として微細な粉末が好ましく、金属アルコキシド、水酸化物等を熱分解して調製した粉末も使用できる。
【0043】
上記酸化物粉末の粒度は、特に限定されるものではないが、平均粒径が5μm以下であることが好ましい。すなわち、平均粒径が5μmを超えると、混合とカ焼を繰返しても均一な結晶組織が得られない。
【0044】
3.焼結体の製造方法
本発明の焼結体の製造方法は、上記酸化物原料を用いて、混合、カ焼、解砕を繰返し行いそれを成形し、得られた成形物を加熱処理して、焼結体を製造する方法であって、前記酸化物粉末を所定の配合比で調合した混合物を湿式粉砕混合し、そのスラリーを乾燥して乾燥造粒物を得る第1の工程、第1の工程で得られる乾燥造粒物をカ焼に付し、1次カ焼粉末を得る第2の工程、第2の工程で得られる1次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第3の工程、第3の工程で得られる乾燥粉末をカ焼に付し、2次カ焼粉末を得る第4の工程、第4の工程で得られる2次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第5の工程、第5の工程で得られる乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る第6の工程、及び第6の工程で得られる成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る第7の工程を含む。これによって、PZT薄膜形成用ターゲットに用いる焼結体が得られる。
【0045】
また、第5の工程において、さらにLaSi及び/又はPbSi酸化物を添加し、前記2次カ焼粉末と同時に湿式解砕し、LaSi及び/又はPbSi酸化物を2〜5mol%の濃度で含む乾燥粉末を得る。これによって、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を含むPZT系の薄膜形成用ターゲットに用いる焼結体が得られる。
【0046】
本発明の焼結体の製造方法では、上記酸化物原料を用いて、混合、カ焼、解砕を繰返し行いそれを成形し、得られた成形物をPb蒸気雰囲気で加熱処理して、焼結体を製造することが重要である。すなわち、混合、カ焼、解砕を繰返し行うことでPbOの反応性と分散性が高まるので、焼結体の組成のばらつきと偏析を抑えることができる。また、Pb蒸気雰囲気で加熱処理することによって、化学量論組成より過剰に含むPb成分の揮発を防止できる。
【0047】
(1)第1〜第4の工程(混合、カ焼、解砕工程)
本発明の製造方法の第1〜第4の工程は、以下に説明する混合、カ焼、解砕を行う工程である。
上記第1の工程は、上記酸化物粉末を所定の配合比で調合し、その混合物に水を添加して湿式粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る工程である。上記第1の工程で用いる湿式粉砕混合装置としては、特に限定されるものではなく、湿式ボールミル、媒体撹拌ミル、振動ミル等の微粉砕機が用いられるが、この中で、不純物の混入が少ない湿式ボールミルが好ましい。この際、粉砕条件としては、例えば粉末の重量に対し、0.5〜1.5倍の水を添加し、直径5〜10mmのZrO2ボールを充填率60%程度で用いて、回転数100rpm程度で6〜24時間処理することが好ましい。
【0048】
上記第1の工程のスラリーの乾燥造粒方法は、特に限定されるものではなく、市販の乾燥装置及び/又は乾燥造粒装置が用いられるが、例えばスラリーを熱風式オーブン(YAMATO製、DH10)等の乾燥装置で乾燥し、その後手粉砕もしくはボールミル等で粉砕し目開き43μmの篩で篩い分けする方法、又はスラリーをスプレードライヤ(大川原化工機製)等で乾燥造粒する方法がある。
【0049】
上記第2の工程は、前記乾燥造粒物を1次カ焼に付す工程であり、これによって、上記酸化物原料粉末を均一混合する。すなわち、原料に用いられるPbO(ρ=9.53g/cm3)、ZrO2(ρ=5.49g/cm3)、TiO2(ρ=4.25g/cm3)は、それぞれに比重が大きく違うため、湿式混合する際に比重差により分離が起こる。そのため、1段の混合、カ焼、解砕では、PbOの偏析が大きく、均一性に問題が残る。さらに、その後、乾式混合を行っても均一な微細粉末を得ることはできず、やはりPbOの偏析は増大してしまう。
【0050】
上記第2の工程において、1次カ焼の加熱条件は、特に限定されるものではないが、700〜750℃で1〜3時間処理するのが好ましい。すなわち、この条件でカ焼を施しておくことで、粉末間の固相反応が僅かではあるが進行するので、1次カ焼後の第3の工程の湿式混合及び乾燥でのPbOとTiO2の分離が避けられる。
【0051】
上記第3の工程は、前記1次カ焼粉末に水を添加し解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る工程である。上記第3の工程で用いる装置及び条件は、特に限定されるものではなく、前記第1の工程で説明した装置及び条件で行うことが好ましい。
【0052】
上記第4の工程は、第3の工程で得られた乾燥粉末を2次カ焼に付す工程であり、これによって、酸化物粉末の複合酸化物への合成の完全化をはかる。
上記第4の工程において、2次カ焼の加熱条件は、特に限定されるものではないが、密閉したトレイ(高純度Al2O3又はMgO製)内で760〜830℃で1〜10時間処理するのが好ましい。すなわち、加熱温度が760℃未満では、複合酸化物への合成が不十分で、例えばPbO、ZrO2及びTiO2が配合される場合、特にZrO2の反応が不十分である。一方、830℃を超えると、PbOの飛散が多くなり、かつ固相反応が進行してしまい焼結工程での焼結性の低下の問題が生じることになる。
【0053】
(2)第5の工程(湿式解砕工程)
本発明の製造方法の第5の工程は、第4の工程で得られる2次カ焼粉末に水、有機分散媒又はバインダーを添加し解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る工程である。ここで、スラリーを機械的な湿式解砕により微細に粉砕することで、PbOの粗大粒子での偏析抑制による焼結工程の加熱処理での飛散防止、粉末の焼結性の向上、焼結体組成の均一性等が得られる。
【0054】
上記第5の工程で用いる湿式解砕装置としては、特に限定されるものではなく、前記第1の工程で説明した装置及び条件で行うことが好ましい。ここで、所望の粒度分布を得るために、所定時間の粉砕を行う。
【0055】
上記第5の工程において、特に限定されるものではないが、必要に応じて、有機分散媒を用いる。すなわち、ターゲットの純度の制約によっては用いることができないが、これによって構成成分の分散性と解砕効率を向上することができる。有機分散媒としては、特に限定されるものではなく、カ焼時の残留灰分がほとんど発生しないポリカルボン酸アンモニウム塩類が好ましい。
【0056】
上記第5の工程において、特に限定されるものではないが、第6の工程の成形方法として冷間プレスを行う場合には、PVA、酢酸ビニル等のアルカリ成分を含有しないバインダーを1〜3重量%添加して湿式解砕するのが好ましい。
【0057】
上記第5の工程で得られるスラリーの粒度分布は、特に限定されるものではないが、累積粒度分布90重量%にあたる粒径を1.2〜3.0μm、累積粒度分布50重量%にあたる粒径を0.5〜1.8μmの範囲にすることが好ましい。すなわち、粒度分布がこれよりも細かいと、成形体密度の低下やバインダーの抜けのため、成形体強度が悪化したり、加熱処理に際して割れが生じやすい。一方、粒度分布がこれよりも粗いと、局所的な焼結性の違いによる焼結体組織の不均一が起り、空孔の生成等により緻密化しづらく焼結密度が向上しづらい。したがって、この粒度分布範囲を用いることで、圧粉時に充填性に優れた成形体が得られやすく、このため成形体強度が高まる。特に、大きな成形体の製造においては、取り扱い時の破損や焼結時の割れが起こりにくくなるので、有効である。さらに、得られる焼結体においても、緻密化が容易に得られるばかりでなく、組成の均一性、PbO偏析抑制にも効果的である。
【0058】
上記第5の工程のスラリーの乾燥造粒方法は、特に限定されるものではなく、前記第1の工程で説明した装置及び条件で行うことが好ましい。
さらに、上記第5の工程において、LaSi及び/又はPbSi酸化物を添加し、上記2次カ焼粉末と同時に湿式粉砕し、そのスラリーを乾燥造粒してLaSi及び/又はPbSi酸化物を含む乾燥粉末を得る。
【0059】
(3)第6の工程(成形工程)
本発明の製造工程の第6の工程は、上記工程で得られる乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る工程である。
上記成形方法は、特に限定されるものではなく、所定の成形圧力で圧粉できる市販の成形装置を用いて成形体が好適に作製できる条件が選択されるが、例えば耐圧試験機CM−200型(東京衡機製作所製)を用いて、成形圧力を50MPa以上として冷間プレス成形を行うことができる。
【0060】
(4)第7の工程(焼結工程)
本発明の製造工程の第7の工程は、上記工程で得られる成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る工程である。一般に、直径300mm程度の大型焼結体の焼結方法としては、縦型が難しいため、Al2O3等の多孔質材の平板の炉床板又は該多孔質材の粉末を敷設したトレイからなる焼成用セッタの上に成形体を寝かせておいて加熱処理を行う。
【0061】
従来技術では、Pb過剰型のターゲット用の成形体であると、成形体中に遊離しているPbO相が揮発し、また融点を超えた際に焼成用セッタへ浸透し始め、得られた焼結体の組成ずれ、焼結密度の低下、Fe、Al、Na等の不純物の拡散混入を起こす等の問題がある。このため、小型成形体では、白金族類からなる粉末又はシートを焼成用セッタとして用いれば、PbOとの反応は回避されるが、その効果は完全ではなく、また高価となりコスト上の問題となる。
【0062】
本発明の上記工程において、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理することが重要である。これによって、化学量論組成より過剰に含むPb成分の揮発を防止でき、従来技術の問題を解決できる。
【0063】
上記工程において、容器中のPb蒸気雰囲気のPb濃度は、特に限定されるものではないが、0.2〜1.0g/cm3が好ましい。すなわち、Pb濃度が0.2g/cm3未満では、焼結体のPb偏析に対する防止効果がみられず、1.0g/cm3を超えると、Pb蒸気雰囲気と成形体とが反応を起こし、成形体のPb組成分布が不安定になる。
【0064】
上記工程で用いる加熱方式は、特に限定されるものではないが、横型焼結炉を用いる場合には、炉内の底部に焼成セッタを敷設しその上に成形体を配置する容器を設けて、その容器を外気を遮断できる構造にして容器内部の雰囲気を調整しながら加熱処理する方式が好ましい。
【0065】
上記工程で用いる容器としては、特に限定されるものではなく、容器内にPb蒸気雰囲気を保持できるものが用いられるが、成形体からわずかなPbの揮発も起こさないように、外気を遮断した密閉容器中で行うことが好ましい。また,容器の材質としては、特に限定されるものではないが、高純度緻密質のMgO、例えば95%以上の高密度であって、97%以上の純度からなるMgOが好ましい。また、使用する前に、少なくとも1度は焼結処理の加熱条件と同条件で熱処理を行うことが、さらに好ましい。
【0066】
上記工程で用いる焼成用セッタの材料としては、特に限定されるものではないが、成形体とPb濃度差があまりないものが用いられるが、この中で組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物粉末に準じた組成のものが好ましく、該粉末のPb濃度が、該組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.05〜(x/y)+0.05の範囲内にあるものがさらに好ましい。すなわち、前記組成式の組成に準じた粉末を焼成用セッタに用いれば、成形体に接しても、ほぼ同組成の粉末であるため、Pb濃度差によるPb拡散、及び不純物の拡散が避けられる。
【0067】
上記工程で用いる焼成用セッタ用の前記組成式の粉末としては、特に限定されるものではなく、脱ガスの経路が確保され、収縮時の拘束も緩和され、またPb蒸気の発生源として適切な大きさの粗粉が用いられるが、特にPb蒸気の発生源として効果的である、前記組成式の複合酸化物を予め800℃以上の温度で加熱処理した後1mm以下の粒径に粉砕して得た粉末が好ましい。すなわち、粒径が1mmを超えると、加熱処理で成形体が自重で粗粒にめり込んで変形を起こしやすい。一方、粒径が50μm未満では、成形体との反応が起こりやすく、成形体からの脱脂時に焼結割れを起こしやすくなる。したがって、粒径が50μm以上の粗粉が好ましい。また、予め800℃以上で熱処理を施しておくことで、成形体や炉床材との反応性が大きく緩和される。
【0068】
上記粗粉としては、成形体用の原料をカ焼しても作製できるが、焼結体から発生する破材を粉砕して、篩い掛けを行って用いるのが経済的に好ましい。また、前記粗粉は、一度焼結(固相)反応を行っているので成形体との反応性も劣り、さらに好ましい。
【0069】
上記工程で用いる焼成用セッタ用の前記組成式の粉末の添加量は、特に限定されるものではなく、容器中のPb蒸気雰囲気のPb濃度が所定濃度になるように、調整する。すなわち、焼成用セッタ粉末組成が成形体と同組成であっても、加熱によるPb揮発が起こりやすいからである。
【0070】
上記工程において、加熱処理条件は、特に限定されるものではないが、880〜920℃、次いで950〜1200℃の二段階の焼結温度で行うことが好ましい。ここで、上記組成式の複合酸化物の原子比:Pb/(Zr+Ti)が、1.10〜1.20の場合には、2段目の焼結温度を1050〜1200℃で、1〜5時間保持して行うことが、さらに好ましい。すなわち、加熱処理条件がこの範囲であればより効果的に緻密化が行える。一方、1200℃を超えると、Pb揮発が活発になるので、組成変動、焼結密度の低下及びPb偏析の増大を招く。
【0071】
また、前記原子比:Pb/(Zr+Ti)が、1.20〜1.40の場合には、2段目の焼結温度を950〜1050℃で、0.5〜10時間保持して行うことが、さらに好ましい。すなわち、加熱処理条件がこの範囲であればより効果的に緻密化が行える。一方、1050℃を超えると、Pb揮発が活発になるので、組成変動、焼結密度の低下及びPb偏析の増大を招く。
【0072】
上記工程において、加熱処理の温度パターンは、特に限定されるものではないが、860℃から前記1段目の焼結温度迄を1℃/min以下の速度で昇温して、1段目の焼結温度で0.5〜10時間保持し、次いで950℃から2段目の焼結温度迄を0.5℃/min以上の速度で昇温して、2段目の焼結温度で0.5〜10時間保持するものであることが好ましい。
すなわち、前記加熱処理の温度パターンは、PbOの融点近傍では、拡散時間を確保するためゆっくり昇温するが、それを超えた温度域では、高温にさらされている時間を短くするため昇温速度を適度に早めるものである。さらに詳しくは、過剰Pb型の焼結体においては、遊離しているPbO相の取り扱いが重要であり、PbO融点後における液相の生成時点で、Pbの拡散時間を設けてやることにより、焼結体内の組成均一性が良好となり、高温時のPbの揮発が抑制されるからである。
以上の上記工程のPb蒸気雰囲気と加熱処理条件によって、均一なPb濃度分布の焼結体が得られる。
【0073】
4.スパッタリングターゲット
本発明のスパッタリングターゲットは、上記焼結体を用いて得られる。
上記スパッタリングターゲットの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、上記焼結体の表面を研磨加工した後、ろう材を用いてバッキングプレートにボンディングする方法が用いられる。
上記ターゲットは、それを用いてスパッタリング成膜法でPZT薄膜を形成し、該薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットである。
【0074】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析、容器内のPb濃度(Pb蒸気濃度)の測定、粉末の粒径の測定、焼結体の組成分析、密度の測定、平均結晶粒径及び空隙径の測定並びに薄膜組成の分析の方法は、以下の通りである。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)Pb蒸気濃度の測定:投入前後のセッタ粉末重量測定から算出した。
(3)粉末の粒径の測定:SEM観察とレーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD2000)で行った。
【0075】
(4)焼結体の組成分析:板状焼結体の中央部を切断してその断面を研磨後、EPMA定量分析で試料の上面、中心、底面について場所を変えて平均組成を求めた。前記EPMA定量分析は、EPMA―2300装置を用いて、電圧15kV、電流20nA,電子線径1μmで点分析を行い、測定点を左右に100μmずらしながら10点を測定した。
(5)焼結体の密度(焼結密度)の測定:板状焼結体の中央部を切断して、30×30mm角、厚さ10mmの大きさの焼結体を得て、高精度比重計(東京精機製作所製)で測定した。
(6)焼結体の平均結晶粒径と空隙径の測定:板状焼結体の中央部を切断してその断面を研磨後、エッチングを施し、SEM観察で最大空隙径と10点の平均から結晶粒径を求めた。
(7)薄膜の膜組成の分析:上記EPMA定量分析で行った。
【0076】
また、実施例及び比較例で用いた酸化物原料の粒径と純度は、以下の通りである。
[酸化物原料]
(1)酸化鉛粉末:最大粒径5μm、純度99.99重量%。
(2)酸化ジルコニウム粉末:最大粒径3μm、純度99.99重量%。
(3)酸化チタニウム粉末:最大粒径2μm、純度99.99重量%。
【0077】
また、実施例及び比較例で用いたスパッタリング成膜方法は、下記の通りである。
[スパッタリング成膜方法]
基板温度200℃、RF電力300W、Ar圧力4Paで3時間と15時間のプリスパッタ終了後、各々、基板(Si/SiO2/Pt)上に300nmの誘電体膜を成膜した。
【0078】
(実施例1)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
(1)調合
配合組成がPb1.3(Zr0.4Ti0.6)O3になるように、酸化鉛粉末2608.4g、酸化ジルコニウム粉末461.4g及び酸化チタニウム粉末448.8gを調合した。
【0079】
(2)混合、カ焼、湿式解砕
前記調合物と純水2.3kgをボールミルに投入し、直径10mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで6時間の混合を行った。次に、得られたスラリーをスプレードライヤーを用いて乾燥造粒した後、マッフル炉に装入し700℃の温度で2時間カ焼して1次カ焼粉末を得た。次に、この粉末と純水2kgをボールミルに投入し、直径5mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで18時間の解砕を行った。
次いで、得られたスラリーを乾燥造粒した後、800℃の温度で1時間カ焼して2次カ焼粉末を得た。この粉末とともに純水2kgとPVAバインダー40gをボールミルに投入し、直径5mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで18時間の解砕を行った。その後スラリーを乾燥造粒後、造粒粉末を得た。
(3)成形
前記造粒粉末を耐圧試験機CM−200型(東京衡機製作所製)を用いて、成形圧300MPaで成形し、直径180mm×厚さ6mmの成形体を2枚得た。成形体密度は5.65g/cm3であった。
【0080】
(4)焼結
まず、前記成形体と同組成の焼成セッタ用粉末300gを敷いたトレイ上に前記成形体を載せた。これは、Pb蒸気濃度が0.5g/cm3に対応する。なお、焼成セッタ用粉末は、成形体を1100℃で加熱処理して得たPb1.3(Zr0.4Ti0.6)O3焼結体を粒径250μm以下に粉砕して作製した。
次に、前記トレイを密度95%、純度97%MgO容器内に設置して、加熱した。なお、前記MgO容器は1度同様の焼結で用いているものである。ここで、昇温パターンは、600℃で脱脂した後、860℃から1段目の焼結温度900℃までを0.5℃/minで昇温し、900℃で2時間保持した。さらに2段目の焼結温度950℃まで1.0℃/minで昇温して3時間保持して焼結を行い、焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
【0081】
(5)スパッタリング評価
前記焼結体に加工を施してスパッタリングターゲットを作製し、上記方法でスパッタリングした。ここで、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を3L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0082】
(実施例2)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
焼結で用いた焼成セッタ用粉末の粒径が1mm以下であること、焼結での1段目の焼結温度まで昇温速度が0.3℃/minで、保持時間が5時間であること、及び2段目の焼結を行わないこと以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を3L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0083】
(実施例3)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
配合組成比がPb1.1(Zr0.2Ti0.8)O3になるように酸化鉛粉末を2348.4g、酸化ジルコニウム粉末を237.3g、酸化チタニウム粉末を615.0gを調合したこと、前記調合物との混合に純水2.1kgを用いたこと、1次カ焼温度が730℃であること、1次カ焼粉末に純水1.9kgを加えたこと、2次カ焼温度が820℃であること、成形体密度が5.64g/cm3であること、セッタ用粉末100gを用いてPb蒸気濃度を0.2g/cm3としたこと、セッタ用粉末として1000℃で焼結したPb1.3(Zr0.2,Ti0.8)O3焼結体を1mm以下に粉砕したものを用いていること、及び焼結での2段目の焼結温度が1200℃で、保持時間が2時間であること以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を5L/min導入して700℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0084】
(実施例4)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
セッタ用粉末200gを用いてPb蒸気濃度を0.6g/cm3としたこと、セッタ用粉末として800℃で焼結した焼結体を用いていること、及び焼結での1段目の焼結温度までの昇温速度が0.3℃/minであり、保持時間が5時間であること、及び2段目の焼結を行わないこと以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を2L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0085】
(実施例5)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
2次カ焼粉末にLa2SiO5粉末91.5gを添加したこと以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。なお、前記La2SiO5粉末は、La(OH)3粉末にSiO2粉末を13.65重量%添加し乾式混合を12時間行い、その後混合物を1400℃で2時間カ焼して得られた。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を3L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0086】
(比較例1)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
実施例1と同様の調合物を用いた。まず、前記調合物をボールミルに投入し、直径10mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで5時間の乾式混合を行った。次に、得られた粉末をマッフル炉に装入し780℃の温度で1時間カ焼してカ焼粉末を得た。次に、このカ焼粉末、純水2kg及びPVAバインダー40gをボールミルに投入し、直径5mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで65時間の解砕を行った。スラリを乾燥造粒後、造粒粉末を得た。
次に、前記造粒粉末を成形圧300MPaで成形し、直径180mm×厚さ6mmの成形体を2枚得た。成形体密度は5.34g/cm3と低かった。
【0087】
次いで、焼成セッタ用粉末としてPbZrO3粉末200gを敷いたトレイ上に前記成形体を載せた。前記トレイを密度95%、純度97%MgO容器内に設置して、加熱した。ここで、昇温パターンは、600℃で脱脂した後、1200℃まで1.0℃/minで昇温して3時間保持して焼結を行い、焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後において、ターゲットに割れが認められた。その後、得られた薄膜を、酸素を1.5L/min導入して600℃で0.5時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0088】
(比較例2)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
焼成セッタ用粉末として30重量%の遊離PbOを含むPbZrO3粉末200gを用いたこと、及び焼結の容器として、密度70%、純度60%の低密度、低純度のAl2O3容器を用いたこと以外は、比較例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後において、ターゲットにひび割れが認められた。その後、得られた薄膜を、酸素を1.5L/min導入して600℃で0.5時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
表1〜3より、実施例1〜5では、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結の各工程で、本発明の方法に従って行われたので、良好な組織と組成式の焼結体が得られ、それを用いたターゲットによるスパッタリング成膜で好適な膜特性のPZT薄膜が得られることが分かる。これに対して、比較例1又は2では、焼結体とその製造方法が本発明の条件に合わないので、ターゲット性能と膜特性で満足すべき結果が得られないことが分かる。
【0093】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の強誘電体薄膜形成用の焼結体及びそれを用いたスパッタリングターゲットは、スパッタリング成膜法で形成されるPZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットであり、その製造方法は前記焼結体の効率的な製造方法であり、その工業的価値は極めて大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、強誘電体薄膜形成用の焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットに関し、さらに詳しくは、Pb濃度の局所的なばらつきを抑えることで薄膜自体の特性ばらつきを解消することができるチタン酸ジルコン酸鉛薄膜を形成でき、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットに用いる焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットに関する。本発明のターゲットは、不揮発性強誘電体メモリや圧電アクチエーター等に使用される強誘電体薄膜の形成に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
一般に、チタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼称することがある。)等の強誘電体膜は、不揮発メモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリのキャパシタ、圧電素子、光素子等に用いられることが知られている。この中で、強誘電体メモリ用の強誘電体膜を作製する方法として、スパッタリング法、ゾルゲル法、CVD法等を用いて実用化が進められている。ここで、強誘電体膜の中で大きな分極特性を持つPZT薄膜は、高周波(RF)スパッタリング法による方法が注目されている。RFスパッタリング法は、膜形成が容易であることと、それに引き続いて電極形成できることが有利である。
【0003】
RFスパッタリング法で良質なPZT薄膜を得るためには、膜組成の制御が重要である。一般に、PZT薄膜の最も大きな分極特性が得られる組成は、組成式:Pb1.0(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)で表され、原子比:Pb/(Zr+Ti)が1.0の化学量論組成といわれている。良好な特性のPZT薄膜を得るためには、例えば組成式:Pb1.05〜1.3(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)で表される原子比:Pb/(Zr+Ti)が1.05〜1.3の組成範囲の、いわゆるPb過剰型のターゲットが多用されている。薄膜組成とターゲット組成が乖離する理由は、薄膜のPb濃度がスパッタ雰囲気、ガス圧、基板温度、スパッタ電力等のRFスパッタリングの成膜条件によって大きく変化することと、他方膜積層後に行う熱処理中に、高いPb蒸気圧のためPbが優先的に揮発し、PZT薄膜組成は低Pb濃度となり良質な膜特性が得られなくなるためである。
【0004】
しかしながら、Pb過剰型のターゲットでは、過剰Pb酸化物がPZT粒子界面に粗大なガラス相として偏析する場合が多く、PZT薄膜組成のばらつきや変動原因となったり、高電力でスパッタリング成膜を行うときにターゲットの割れが発生しやすくなるという問題がある。
この解決策として、Pb過剰型のPZTターゲットとその製造法が提案されており、代表的な提案としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とした強誘電体薄膜用ターゲット中のPb、Zr、TiがPb/(Zr+Ti)のモル比で1.01〜1.30の範囲でPbが過剰の焼結体からなり、前記過剰のPbがPb3 O4を主体とする酸化鉛で構成される。このチタン酸ジルコン酸鉛焼結体よりなる強誘電体薄膜用ターゲットの焼結密度を7.50g/cm3 以上とする(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
(2)チタン酸ジルコン酸鉛焼結体を主成分とした強誘電体薄膜用ターゲットのPb/(Zr+Ti)のモル比で1.02〜1.30とし、好ましくはこの中にPb1.0Zr0.5 Ti0.5 O3 とPb2.0 Zr0.5 Ti0.5 O3とが共存している。この中のPbの一部をBaあるいはSrで置換した組成をしているターゲットおよびそれから作った強誘電体薄膜である。また、この組成として、Zr、Tiの一部をMn、Fe、Sn、Nbで置換することができる。ターゲットの製造時に焼結を2気圧以上の酸素雰囲気で行う(例えば、特許文献2参照)。
(3)アルカリ金属含有量の合計が2ppm以下の鉛含有ペロブスカイト構造複合酸化物の構成粒子が、平均粒径2μm以下の単位粒子からなる焼結体である高強度かつ高純度鉛含有ペロブスカイト強誘電体薄膜製造用スパッタリングターゲット材である(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
(4)表面にPbO粒子を被覆したPZT複合粉末をホットプレスするPZT強誘電体膜形成用スパッタリングターゲットの製造法である(例えば、特許文献4参照)。
(5)PZT系高誘電体ターゲットの製造方法において、ターゲット構成元素Pb、Zr、Tiの純金属及び/又は酸化物から成る原料粉末をメカニカルアロイングによりPZT系粉末とし、ターゲットとして形成する。構成元素の原料粉末を純金属とするかあるいは酸化物とするかの選択を通して酸素濃度をコントロールする。均一微細な組織の、パーティクル発生量の少ないスパッタ特性のよい低コストターゲットを得る(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
これらの提案は、PZT薄膜の特性の向上に貢献しているが、単にPbO粉末を過剰に添加するか、Pb酸化物の形態をPb3O4としているだけであるので、PZT薄膜のPb濃度が局所的にばらつくのを抑えて、薄膜自体の特性のばらつきの原因を完全に払拭するまでには至っていない。また、メカニカルアロイング法で作製する方法では、製造コストが上昇してしまい、実用的で良好な薄膜を形成できるターゲットを得るためには未だ課題を残している。
以上の状況から、PZT薄膜の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生しないターゲットが求められている。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−1367号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】
特開平11−1768号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献3】
特開平5−320894号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献4】
特開平6−56528号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献5】
特開平6−272033号公報(第1頁、第2頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、Pb濃度の局所的なばらつきを抑えることで薄膜自体の特性ばらつきを解消することができるチタン酸ジルコン酸鉛薄膜を形成でき、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットに用いる焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、チタン酸ジルコン酸鉛系の強誘電体薄膜の形成に用いるターゲット用焼結体について、鋭意研究を重ねた結果、特定の組織と組成式を有する複合酸化物焼結体から得られるターゲットを用いたところ、PZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、強誘電体薄膜形成用のターゲットに用いる、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、
前記組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であるとともに、Pb成分が均一分散されており、また前記組成式中のx、y、z及びaは下記の三つの要件を満たしていることを特徴とする焼結体が提供される。
1.10≦x/y≦1.40
0.2≦(1−a)/a≦0.7
2.8≦z/y≦3.1
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記Pb成分のEPMA定量分析での濃度分布が、前記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.03〜(x/y)+0.03の範囲内にあることを特徴とする焼結体が提供される。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、焼結密度が7.5g/cm3以上であることを特徴とする焼結体が提供される。
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3いずれかの発明において、さらに、前記組織の構成成分として、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を2〜5mol%の濃度で含むことを特徴とする焼結体が提供される。
【0015】
また、本発明の第5の発明によれば、Pb、Zr及びTiの酸化物粉末を用いて、混合、カ焼、解砕を繰返し行いそれを成形し、得られた成形物を加熱処理して、焼結体を製造する方法であって、
(1)前記酸化物粉末を所定の配合比で調合した混合物を湿式粉砕混合し、そのスラリーを乾燥して乾燥造粒物を得る第1の工程、
(2)第1の工程で得られる乾燥造粒物をカ焼に付し、1次カ焼粉末を得る第2の工程、
(3)第2の工程で得られる1次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第3の工程、
(4)第3の工程で得られる乾燥粉末をカ焼に付し、2次カ焼粉末を得る第4の工程、
(5)第4の工程で得られる2次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第5の工程、
(6)第5の工程で得られる乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る第6の工程、及び
(7)第6の工程で得られる成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る第7の工程、を含むことを特徴とする第1〜3いずれかの発明の焼結体の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、第2の工程において、1次カ焼の加熱温度が、700〜750℃であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明において、第4の工程において、2次カ焼の加熱温度が、760〜830℃であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第5の発明において、第7の工程において、Pb蒸気雰囲気のPb濃度が0.2〜1.0g/cm3であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第9の発明によれば、第5の発明において、第7の工程において、加熱処理を880〜920℃、次いで950〜1200℃の二段階の焼結温度で行うことを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、前記加熱処理の温度パターンが、860℃から前記1段目の焼結温度迄を1℃/min以下の速度で昇温して、1段目の焼結温度で0.5〜10時間保持し、次いで950℃から2段目の焼結温度迄を0.5℃/min以上の速度で昇温して、2段目の焼結温度で0.5〜10時間保持するものであることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第11の発明によれば、第5の発明において、第7の工程において、前記容器の底部に焼成セッタ粉末を敷設し、その上に成形体を配置する横型焼結炉を用いる加熱処理であって、
前記容器が外気を遮断できる構造の高純度酸化マグネシア製容器であり、かつ前記焼成セッタ粉末として前記組成式の複合酸化物粉末を用いることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、前記焼成セッタ粉末のPb濃度が、前記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.05〜(x/y)+0.05の範囲内にあることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第13の発明によれば、第11の発明において、前記焼成セッタ粉末が、前記組成式の複合酸化物を予め800℃以上の温度で加熱処理した後、1mm以下の粒径に粉砕して得た粉末であることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第14の発明によれば、第5〜13いずれかの発明において、第5の工程において、さらにLaSi及び/又はPbSi酸化物を添加し、前記2次カ焼粉末と同時に湿式粉砕し、LaSi及び/又はPbSi酸化物を2〜5mol%の濃度で含む乾燥粉末を得ることを特徴とする焼結体の製造方法が提供される。
【0025】
また、本発明の第15の発明によれば、本発明の第1〜4のいずれかの焼結体を用いてなるスパッタリングターゲットが提供される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の強誘電体薄膜形成用の焼結体、その製造方法及びそれを用いたスパッタリングターゲットを詳細に説明する。
本発明の強誘電体薄膜形成用の焼結体及びそれを用いたスパッタリングターゲットは、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、前記組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であるとともに、Pb成分が均一分散されており、また前記組成式中のx、y、z及びaは、1.10≦x/y≦1.40、0.2≦(1−a)/a≦0.7、及び2.8≦z/y≦3.1の三つの要件を満たしている。
【0027】
その好ましい製造方法は、Pb、Zr及びTiの酸化物粉末を用いて、前記酸化物粉末を所定の配合比で調合した混合物を湿式粉砕混合し、乾燥して乾燥造粒物を得る第1の工程、前記乾燥造粒物をカ焼に付し、1次カ焼粉末を得る第2の工程、前記1次カ焼粉末を湿式解砕し、乾燥造粒して乾燥粉末を得る第3の工程、前記乾燥粉末をカ焼に付し、2次カ焼粉末を得る第4の工程、前記2次カ焼粉末を湿式解砕し、乾燥造粒して乾燥粉末を得る第5の工程、前記乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る第6の工程、及び前記成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る第7の工程を含む。
【0028】
1.焼結体
本発明の焼結体は、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、該組織は、Pb成分が均一分散されており、また該組成式中のx、y、z及びaは特定の要件を満たしていることが重要な意義を持つ。これによって、それを用いたターゲットによって形成されるPZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることができ、安定した強誘電特性、特に分極特性が得られ、またスパッタリングにおいて高電力をかけてもターゲットの割れの発生を抑制できる効果もある。
【0029】
さらに、本発明の焼結体において、前記複合酸化物の結晶組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であることが重要である。これによって、空隙の少ないターゲットが得られるので、スパッタリングによる成膜時にターゲットからの脱ガスが少なく、安定なプラズマ状態が持続するので良質な薄膜が形成できる。
【0030】
本発明の焼結体の組織において、Pb成分は均一分散されている。すなわち、PZT複合酸化物中のPb成分が均一分散されるとともに、化学量論組成より過剰のPb成分は、PbO相として、結晶粒界に均一に、かつ微細に分散している。このため、粗大なPbO相によるスパッタリングの不安定、薄膜組成の変動、ひいては高スパッタリング電力を投入した際のターゲット割れが解消される。
また、結晶粒界に微細に分散されたPb酸化物は、PZT結晶の焼結助剤的な役割をはたす。また、微細に分散しているので、焼結性の悪いTi分が多い組成であっても、焼結体は高密度かつ高強度が容易に達成される。このため、高スパッタリング電力を投入した際のターゲット割れの発生が抑制できる効果がある。このときのPbO相の大きさは直径5μm以下が望ましい。
【0031】
本発明の焼結体の組成は、組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOz中のx、y、z及びaは、1.10≦x/y≦1.40、0.2≦(1−a)/a≦0.7、及び2.8≦z/y≦3.1なる三つの要件を満たしている。これによって、それを用いたターゲットによって形成されるPZT薄膜の組成を、組成式:Pb1.0(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)に制御でき、そこで原子比:Pb/(Zr+Ti)が1.0の化学量論組成に適切に制御されるので、強誘電特性、特に分極特性に優れた薄膜が得られる。すなわち、上記組成式中のx、y、z及びaの値が上記三つの要件を満たしているとき、薄膜組成の制御は、成膜時のArガス圧の調整で行える。これに対して、上記組成式中のx、y、z及びaの値が、この範囲から外れると、薄膜組成の制御ができなくなり、分極特性が劣る。
【0032】
さらに詳しくは、上記組成式のx/yの値は、1.10〜1.40である。すなわち、x/yの値が1.10未満では、成膜時のArガス圧で薄膜のPb濃度を制御することが難しくなる。一方、x/yの値が1.40を超えると、過剰分のPbOは焼結体のPZT結晶の界面部分にガラス相として偏析するので、Pb成分のスパッタリングが不安定になり、薄膜組成が変動したり、成膜バッチによって組成が変動したり、ひいては高スパッタリング電力を投入した際に衝撃に弱いガラス相を起点にしてターゲット割れが発生する。
【0033】
また、上記組成式の(1−a)/aの値は、0.2〜0.7である。すなわち、(1−a)/aの値が0.2未満では、成膜された薄膜のTi濃度が低下して分極特性が低下する。一方、0.7を超えると、結晶異方性が生じて焼結性が悪化し、焼結体の密度及び機械的強度が低下する。また、特に、低電力化のために抗電界を低く抑えるためには、Ti濃度は上記範囲がよい。
【0034】
また、上記組成式のz/yの値は、2.8〜3.1である。すなわち、PZT薄膜の最も大きな分極特性が得られる組成は、組成式:Pb1.0(ZrTi)1.0Ob(但し、式中のbはb≒3.0である。)であり、ターゲットの酸素濃度を前記範囲とする。
【0035】
上記の焼結体の組織は、平均結晶粒径が3〜7μm、最大空隙径が2μm以下である。このため、空隙の少ないターゲットが得られるので、スパッタリングによる成膜時にターゲットからの脱ガスが少なく、安定なプラズマ状態が持続するので良質な薄膜が形成できる。すなわち、最大空隙径が2μmを超えると、成膜時にプラズマ状態が不安定となったり、またターゲットの機械的強度が低下する。また、平均結晶粒径が7μmを超えると、最大空隙径が大きくなり、またターゲットの焼結密度が低くなる。一方、3μm未満では、微細化のための粉砕等のコストが過大となるし、また、焼結において粒成長させても緻密化させることができない。
【0036】
上記の焼結密度は、特に限定されるものではないが、7.50g/cm3以上が好ましく、7.60g/cm3以上がさらに好ましい。すなわち、7.50g/cm3未満では、焼結体中に空孔が多くあり、これによってスパッタリングによる成膜時に、空孔を介してPb蒸気が選択的に飛散しターゲット内部の組成ばらつきが大きくなる。
【0037】
上記のPb成分のEPMA定量分析での濃度分布は、特に限定されるものではないが、上記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.03〜(x/y)+0.03の範囲内にある。すなわち、この範囲から外れると、所定の薄膜組成に制御できない。
【0038】
さらに、本発明の焼結体は、特に限定されるものではないが、該組織の構成成分として、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を2〜5mol%の濃度で含むことが好ましい。すなわち、それを用いたターゲットによって形成されるPZT薄膜中に、所定量のLaSi及び/又はPbSi酸化物結晶が含まれると、薄膜の分極特性を発現させる結晶化温度を低くすることができること、また分極特性を低下させずにより薄膜化を行うことができる等の効果がある。ここで、前記濃度が2mol%未満では、上記効果が現れにくく、5mol%を超えると、薄膜の分極特性が悪化する。
【0039】
ここで、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶は、焼結体の結晶組織において、該酸化物結晶として独立し分散して存在していることが、上記効果を得るために不可欠である。また、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶の大きさは、特に限定されるものではないが、上記したPZT結晶と同様の粒径が好ましい。すなわち、焼結体の製造工程で、PZT結晶との反応を極力抑える方策を行い、PZT結晶中に置換挿入されてしまうことを防止する。
【0040】
以上より、本発明の焼結体は、スパッタリングで形成されるPZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲット用として用いられる。
【0041】
2.酸化物原料
本発明の製造方法に用いるPb、Zr又はTiの酸化物粉末は、特に限定されるものではなく、市販の酸化鉛粉末、酸化ジルコニウム粉末若しくは酸化チタン粉末、又はそれらの合成粉末を用いることができる。原料として微細な粉末が好ましく、金属アルコキシド、水酸化物等を熱分解して得られる微細な粉末も使用できる。
上記酸化物粉末の純度は、特に限定されるものではないが、PZT系強誘電体薄膜の所望の特性を得るために、純度99.99重量%以上が好ましい。
【0042】
本発明のLaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を含む製造方法に用いるLaSi酸化物粉末又はPbSi酸化物粉末は、特に限定されるものではないが、所定の組成に調製された酸化物粉末を用いるのが好ましい。その製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば前記酸化物の原料粉末を所定組成に混合後、カ焼して得られる。例えば、La2SiO5は、La(OH)3粉末にSiO2粉末を13.65重量%添加し乾式混合を12時間行い、その後混合物を1300〜1450℃で2時間カ焼して得られる。また、Pb2SiO4は、PbO粉末にSiO2粉末を15重量%添加し乾式混合を12時間行い、その後混合物を600〜680℃で2時間カ焼して得られる。ここで、原料粉末として、炭酸ランタン粉末、酸化ランタン粉末、水酸化ランタン粉末、酸化鉛粉末又は酸化珪素粉末を用いることができる。原料として微細な粉末が好ましく、金属アルコキシド、水酸化物等を熱分解して調製した粉末も使用できる。
【0043】
上記酸化物粉末の粒度は、特に限定されるものではないが、平均粒径が5μm以下であることが好ましい。すなわち、平均粒径が5μmを超えると、混合とカ焼を繰返しても均一な結晶組織が得られない。
【0044】
3.焼結体の製造方法
本発明の焼結体の製造方法は、上記酸化物原料を用いて、混合、カ焼、解砕を繰返し行いそれを成形し、得られた成形物を加熱処理して、焼結体を製造する方法であって、前記酸化物粉末を所定の配合比で調合した混合物を湿式粉砕混合し、そのスラリーを乾燥して乾燥造粒物を得る第1の工程、第1の工程で得られる乾燥造粒物をカ焼に付し、1次カ焼粉末を得る第2の工程、第2の工程で得られる1次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第3の工程、第3の工程で得られる乾燥粉末をカ焼に付し、2次カ焼粉末を得る第4の工程、第4の工程で得られる2次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第5の工程、第5の工程で得られる乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る第6の工程、及び第6の工程で得られる成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る第7の工程を含む。これによって、PZT薄膜形成用ターゲットに用いる焼結体が得られる。
【0045】
また、第5の工程において、さらにLaSi及び/又はPbSi酸化物を添加し、前記2次カ焼粉末と同時に湿式解砕し、LaSi及び/又はPbSi酸化物を2〜5mol%の濃度で含む乾燥粉末を得る。これによって、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を含むPZT系の薄膜形成用ターゲットに用いる焼結体が得られる。
【0046】
本発明の焼結体の製造方法では、上記酸化物原料を用いて、混合、カ焼、解砕を繰返し行いそれを成形し、得られた成形物をPb蒸気雰囲気で加熱処理して、焼結体を製造することが重要である。すなわち、混合、カ焼、解砕を繰返し行うことでPbOの反応性と分散性が高まるので、焼結体の組成のばらつきと偏析を抑えることができる。また、Pb蒸気雰囲気で加熱処理することによって、化学量論組成より過剰に含むPb成分の揮発を防止できる。
【0047】
(1)第1〜第4の工程(混合、カ焼、解砕工程)
本発明の製造方法の第1〜第4の工程は、以下に説明する混合、カ焼、解砕を行う工程である。
上記第1の工程は、上記酸化物粉末を所定の配合比で調合し、その混合物に水を添加して湿式粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る工程である。上記第1の工程で用いる湿式粉砕混合装置としては、特に限定されるものではなく、湿式ボールミル、媒体撹拌ミル、振動ミル等の微粉砕機が用いられるが、この中で、不純物の混入が少ない湿式ボールミルが好ましい。この際、粉砕条件としては、例えば粉末の重量に対し、0.5〜1.5倍の水を添加し、直径5〜10mmのZrO2ボールを充填率60%程度で用いて、回転数100rpm程度で6〜24時間処理することが好ましい。
【0048】
上記第1の工程のスラリーの乾燥造粒方法は、特に限定されるものではなく、市販の乾燥装置及び/又は乾燥造粒装置が用いられるが、例えばスラリーを熱風式オーブン(YAMATO製、DH10)等の乾燥装置で乾燥し、その後手粉砕もしくはボールミル等で粉砕し目開き43μmの篩で篩い分けする方法、又はスラリーをスプレードライヤ(大川原化工機製)等で乾燥造粒する方法がある。
【0049】
上記第2の工程は、前記乾燥造粒物を1次カ焼に付す工程であり、これによって、上記酸化物原料粉末を均一混合する。すなわち、原料に用いられるPbO(ρ=9.53g/cm3)、ZrO2(ρ=5.49g/cm3)、TiO2(ρ=4.25g/cm3)は、それぞれに比重が大きく違うため、湿式混合する際に比重差により分離が起こる。そのため、1段の混合、カ焼、解砕では、PbOの偏析が大きく、均一性に問題が残る。さらに、その後、乾式混合を行っても均一な微細粉末を得ることはできず、やはりPbOの偏析は増大してしまう。
【0050】
上記第2の工程において、1次カ焼の加熱条件は、特に限定されるものではないが、700〜750℃で1〜3時間処理するのが好ましい。すなわち、この条件でカ焼を施しておくことで、粉末間の固相反応が僅かではあるが進行するので、1次カ焼後の第3の工程の湿式混合及び乾燥でのPbOとTiO2の分離が避けられる。
【0051】
上記第3の工程は、前記1次カ焼粉末に水を添加し解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る工程である。上記第3の工程で用いる装置及び条件は、特に限定されるものではなく、前記第1の工程で説明した装置及び条件で行うことが好ましい。
【0052】
上記第4の工程は、第3の工程で得られた乾燥粉末を2次カ焼に付す工程であり、これによって、酸化物粉末の複合酸化物への合成の完全化をはかる。
上記第4の工程において、2次カ焼の加熱条件は、特に限定されるものではないが、密閉したトレイ(高純度Al2O3又はMgO製)内で760〜830℃で1〜10時間処理するのが好ましい。すなわち、加熱温度が760℃未満では、複合酸化物への合成が不十分で、例えばPbO、ZrO2及びTiO2が配合される場合、特にZrO2の反応が不十分である。一方、830℃を超えると、PbOの飛散が多くなり、かつ固相反応が進行してしまい焼結工程での焼結性の低下の問題が生じることになる。
【0053】
(2)第5の工程(湿式解砕工程)
本発明の製造方法の第5の工程は、第4の工程で得られる2次カ焼粉末に水、有機分散媒又はバインダーを添加し解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る工程である。ここで、スラリーを機械的な湿式解砕により微細に粉砕することで、PbOの粗大粒子での偏析抑制による焼結工程の加熱処理での飛散防止、粉末の焼結性の向上、焼結体組成の均一性等が得られる。
【0054】
上記第5の工程で用いる湿式解砕装置としては、特に限定されるものではなく、前記第1の工程で説明した装置及び条件で行うことが好ましい。ここで、所望の粒度分布を得るために、所定時間の粉砕を行う。
【0055】
上記第5の工程において、特に限定されるものではないが、必要に応じて、有機分散媒を用いる。すなわち、ターゲットの純度の制約によっては用いることができないが、これによって構成成分の分散性と解砕効率を向上することができる。有機分散媒としては、特に限定されるものではなく、カ焼時の残留灰分がほとんど発生しないポリカルボン酸アンモニウム塩類が好ましい。
【0056】
上記第5の工程において、特に限定されるものではないが、第6の工程の成形方法として冷間プレスを行う場合には、PVA、酢酸ビニル等のアルカリ成分を含有しないバインダーを1〜3重量%添加して湿式解砕するのが好ましい。
【0057】
上記第5の工程で得られるスラリーの粒度分布は、特に限定されるものではないが、累積粒度分布90重量%にあたる粒径を1.2〜3.0μm、累積粒度分布50重量%にあたる粒径を0.5〜1.8μmの範囲にすることが好ましい。すなわち、粒度分布がこれよりも細かいと、成形体密度の低下やバインダーの抜けのため、成形体強度が悪化したり、加熱処理に際して割れが生じやすい。一方、粒度分布がこれよりも粗いと、局所的な焼結性の違いによる焼結体組織の不均一が起り、空孔の生成等により緻密化しづらく焼結密度が向上しづらい。したがって、この粒度分布範囲を用いることで、圧粉時に充填性に優れた成形体が得られやすく、このため成形体強度が高まる。特に、大きな成形体の製造においては、取り扱い時の破損や焼結時の割れが起こりにくくなるので、有効である。さらに、得られる焼結体においても、緻密化が容易に得られるばかりでなく、組成の均一性、PbO偏析抑制にも効果的である。
【0058】
上記第5の工程のスラリーの乾燥造粒方法は、特に限定されるものではなく、前記第1の工程で説明した装置及び条件で行うことが好ましい。
さらに、上記第5の工程において、LaSi及び/又はPbSi酸化物を添加し、上記2次カ焼粉末と同時に湿式粉砕し、そのスラリーを乾燥造粒してLaSi及び/又はPbSi酸化物を含む乾燥粉末を得る。
【0059】
(3)第6の工程(成形工程)
本発明の製造工程の第6の工程は、上記工程で得られる乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る工程である。
上記成形方法は、特に限定されるものではなく、所定の成形圧力で圧粉できる市販の成形装置を用いて成形体が好適に作製できる条件が選択されるが、例えば耐圧試験機CM−200型(東京衡機製作所製)を用いて、成形圧力を50MPa以上として冷間プレス成形を行うことができる。
【0060】
(4)第7の工程(焼結工程)
本発明の製造工程の第7の工程は、上記工程で得られる成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る工程である。一般に、直径300mm程度の大型焼結体の焼結方法としては、縦型が難しいため、Al2O3等の多孔質材の平板の炉床板又は該多孔質材の粉末を敷設したトレイからなる焼成用セッタの上に成形体を寝かせておいて加熱処理を行う。
【0061】
従来技術では、Pb過剰型のターゲット用の成形体であると、成形体中に遊離しているPbO相が揮発し、また融点を超えた際に焼成用セッタへ浸透し始め、得られた焼結体の組成ずれ、焼結密度の低下、Fe、Al、Na等の不純物の拡散混入を起こす等の問題がある。このため、小型成形体では、白金族類からなる粉末又はシートを焼成用セッタとして用いれば、PbOとの反応は回避されるが、その効果は完全ではなく、また高価となりコスト上の問題となる。
【0062】
本発明の上記工程において、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理することが重要である。これによって、化学量論組成より過剰に含むPb成分の揮発を防止でき、従来技術の問題を解決できる。
【0063】
上記工程において、容器中のPb蒸気雰囲気のPb濃度は、特に限定されるものではないが、0.2〜1.0g/cm3が好ましい。すなわち、Pb濃度が0.2g/cm3未満では、焼結体のPb偏析に対する防止効果がみられず、1.0g/cm3を超えると、Pb蒸気雰囲気と成形体とが反応を起こし、成形体のPb組成分布が不安定になる。
【0064】
上記工程で用いる加熱方式は、特に限定されるものではないが、横型焼結炉を用いる場合には、炉内の底部に焼成セッタを敷設しその上に成形体を配置する容器を設けて、その容器を外気を遮断できる構造にして容器内部の雰囲気を調整しながら加熱処理する方式が好ましい。
【0065】
上記工程で用いる容器としては、特に限定されるものではなく、容器内にPb蒸気雰囲気を保持できるものが用いられるが、成形体からわずかなPbの揮発も起こさないように、外気を遮断した密閉容器中で行うことが好ましい。また,容器の材質としては、特に限定されるものではないが、高純度緻密質のMgO、例えば95%以上の高密度であって、97%以上の純度からなるMgOが好ましい。また、使用する前に、少なくとも1度は焼結処理の加熱条件と同条件で熱処理を行うことが、さらに好ましい。
【0066】
上記工程で用いる焼成用セッタの材料としては、特に限定されるものではないが、成形体とPb濃度差があまりないものが用いられるが、この中で組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物粉末に準じた組成のものが好ましく、該粉末のPb濃度が、該組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.05〜(x/y)+0.05の範囲内にあるものがさらに好ましい。すなわち、前記組成式の組成に準じた粉末を焼成用セッタに用いれば、成形体に接しても、ほぼ同組成の粉末であるため、Pb濃度差によるPb拡散、及び不純物の拡散が避けられる。
【0067】
上記工程で用いる焼成用セッタ用の前記組成式の粉末としては、特に限定されるものではなく、脱ガスの経路が確保され、収縮時の拘束も緩和され、またPb蒸気の発生源として適切な大きさの粗粉が用いられるが、特にPb蒸気の発生源として効果的である、前記組成式の複合酸化物を予め800℃以上の温度で加熱処理した後1mm以下の粒径に粉砕して得た粉末が好ましい。すなわち、粒径が1mmを超えると、加熱処理で成形体が自重で粗粒にめり込んで変形を起こしやすい。一方、粒径が50μm未満では、成形体との反応が起こりやすく、成形体からの脱脂時に焼結割れを起こしやすくなる。したがって、粒径が50μm以上の粗粉が好ましい。また、予め800℃以上で熱処理を施しておくことで、成形体や炉床材との反応性が大きく緩和される。
【0068】
上記粗粉としては、成形体用の原料をカ焼しても作製できるが、焼結体から発生する破材を粉砕して、篩い掛けを行って用いるのが経済的に好ましい。また、前記粗粉は、一度焼結(固相)反応を行っているので成形体との反応性も劣り、さらに好ましい。
【0069】
上記工程で用いる焼成用セッタ用の前記組成式の粉末の添加量は、特に限定されるものではなく、容器中のPb蒸気雰囲気のPb濃度が所定濃度になるように、調整する。すなわち、焼成用セッタ粉末組成が成形体と同組成であっても、加熱によるPb揮発が起こりやすいからである。
【0070】
上記工程において、加熱処理条件は、特に限定されるものではないが、880〜920℃、次いで950〜1200℃の二段階の焼結温度で行うことが好ましい。ここで、上記組成式の複合酸化物の原子比:Pb/(Zr+Ti)が、1.10〜1.20の場合には、2段目の焼結温度を1050〜1200℃で、1〜5時間保持して行うことが、さらに好ましい。すなわち、加熱処理条件がこの範囲であればより効果的に緻密化が行える。一方、1200℃を超えると、Pb揮発が活発になるので、組成変動、焼結密度の低下及びPb偏析の増大を招く。
【0071】
また、前記原子比:Pb/(Zr+Ti)が、1.20〜1.40の場合には、2段目の焼結温度を950〜1050℃で、0.5〜10時間保持して行うことが、さらに好ましい。すなわち、加熱処理条件がこの範囲であればより効果的に緻密化が行える。一方、1050℃を超えると、Pb揮発が活発になるので、組成変動、焼結密度の低下及びPb偏析の増大を招く。
【0072】
上記工程において、加熱処理の温度パターンは、特に限定されるものではないが、860℃から前記1段目の焼結温度迄を1℃/min以下の速度で昇温して、1段目の焼結温度で0.5〜10時間保持し、次いで950℃から2段目の焼結温度迄を0.5℃/min以上の速度で昇温して、2段目の焼結温度で0.5〜10時間保持するものであることが好ましい。
すなわち、前記加熱処理の温度パターンは、PbOの融点近傍では、拡散時間を確保するためゆっくり昇温するが、それを超えた温度域では、高温にさらされている時間を短くするため昇温速度を適度に早めるものである。さらに詳しくは、過剰Pb型の焼結体においては、遊離しているPbO相の取り扱いが重要であり、PbO融点後における液相の生成時点で、Pbの拡散時間を設けてやることにより、焼結体内の組成均一性が良好となり、高温時のPbの揮発が抑制されるからである。
以上の上記工程のPb蒸気雰囲気と加熱処理条件によって、均一なPb濃度分布の焼結体が得られる。
【0073】
4.スパッタリングターゲット
本発明のスパッタリングターゲットは、上記焼結体を用いて得られる。
上記スパッタリングターゲットの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、上記焼結体の表面を研磨加工した後、ろう材を用いてバッキングプレートにボンディングする方法が用いられる。
上記ターゲットは、それを用いてスパッタリング成膜法でPZT薄膜を形成し、該薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットである。
【0074】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析、容器内のPb濃度(Pb蒸気濃度)の測定、粉末の粒径の測定、焼結体の組成分析、密度の測定、平均結晶粒径及び空隙径の測定並びに薄膜組成の分析の方法は、以下の通りである。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)Pb蒸気濃度の測定:投入前後のセッタ粉末重量測定から算出した。
(3)粉末の粒径の測定:SEM観察とレーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD2000)で行った。
【0075】
(4)焼結体の組成分析:板状焼結体の中央部を切断してその断面を研磨後、EPMA定量分析で試料の上面、中心、底面について場所を変えて平均組成を求めた。前記EPMA定量分析は、EPMA―2300装置を用いて、電圧15kV、電流20nA,電子線径1μmで点分析を行い、測定点を左右に100μmずらしながら10点を測定した。
(5)焼結体の密度(焼結密度)の測定:板状焼結体の中央部を切断して、30×30mm角、厚さ10mmの大きさの焼結体を得て、高精度比重計(東京精機製作所製)で測定した。
(6)焼結体の平均結晶粒径と空隙径の測定:板状焼結体の中央部を切断してその断面を研磨後、エッチングを施し、SEM観察で最大空隙径と10点の平均から結晶粒径を求めた。
(7)薄膜の膜組成の分析:上記EPMA定量分析で行った。
【0076】
また、実施例及び比較例で用いた酸化物原料の粒径と純度は、以下の通りである。
[酸化物原料]
(1)酸化鉛粉末:最大粒径5μm、純度99.99重量%。
(2)酸化ジルコニウム粉末:最大粒径3μm、純度99.99重量%。
(3)酸化チタニウム粉末:最大粒径2μm、純度99.99重量%。
【0077】
また、実施例及び比較例で用いたスパッタリング成膜方法は、下記の通りである。
[スパッタリング成膜方法]
基板温度200℃、RF電力300W、Ar圧力4Paで3時間と15時間のプリスパッタ終了後、各々、基板(Si/SiO2/Pt)上に300nmの誘電体膜を成膜した。
【0078】
(実施例1)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
(1)調合
配合組成がPb1.3(Zr0.4Ti0.6)O3になるように、酸化鉛粉末2608.4g、酸化ジルコニウム粉末461.4g及び酸化チタニウム粉末448.8gを調合した。
【0079】
(2)混合、カ焼、湿式解砕
前記調合物と純水2.3kgをボールミルに投入し、直径10mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで6時間の混合を行った。次に、得られたスラリーをスプレードライヤーを用いて乾燥造粒した後、マッフル炉に装入し700℃の温度で2時間カ焼して1次カ焼粉末を得た。次に、この粉末と純水2kgをボールミルに投入し、直径5mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで18時間の解砕を行った。
次いで、得られたスラリーを乾燥造粒した後、800℃の温度で1時間カ焼して2次カ焼粉末を得た。この粉末とともに純水2kgとPVAバインダー40gをボールミルに投入し、直径5mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで18時間の解砕を行った。その後スラリーを乾燥造粒後、造粒粉末を得た。
(3)成形
前記造粒粉末を耐圧試験機CM−200型(東京衡機製作所製)を用いて、成形圧300MPaで成形し、直径180mm×厚さ6mmの成形体を2枚得た。成形体密度は5.65g/cm3であった。
【0080】
(4)焼結
まず、前記成形体と同組成の焼成セッタ用粉末300gを敷いたトレイ上に前記成形体を載せた。これは、Pb蒸気濃度が0.5g/cm3に対応する。なお、焼成セッタ用粉末は、成形体を1100℃で加熱処理して得たPb1.3(Zr0.4Ti0.6)O3焼結体を粒径250μm以下に粉砕して作製した。
次に、前記トレイを密度95%、純度97%MgO容器内に設置して、加熱した。なお、前記MgO容器は1度同様の焼結で用いているものである。ここで、昇温パターンは、600℃で脱脂した後、860℃から1段目の焼結温度900℃までを0.5℃/minで昇温し、900℃で2時間保持した。さらに2段目の焼結温度950℃まで1.0℃/minで昇温して3時間保持して焼結を行い、焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
【0081】
(5)スパッタリング評価
前記焼結体に加工を施してスパッタリングターゲットを作製し、上記方法でスパッタリングした。ここで、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を3L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0082】
(実施例2)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
焼結で用いた焼成セッタ用粉末の粒径が1mm以下であること、焼結での1段目の焼結温度まで昇温速度が0.3℃/minで、保持時間が5時間であること、及び2段目の焼結を行わないこと以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を3L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0083】
(実施例3)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
配合組成比がPb1.1(Zr0.2Ti0.8)O3になるように酸化鉛粉末を2348.4g、酸化ジルコニウム粉末を237.3g、酸化チタニウム粉末を615.0gを調合したこと、前記調合物との混合に純水2.1kgを用いたこと、1次カ焼温度が730℃であること、1次カ焼粉末に純水1.9kgを加えたこと、2次カ焼温度が820℃であること、成形体密度が5.64g/cm3であること、セッタ用粉末100gを用いてPb蒸気濃度を0.2g/cm3としたこと、セッタ用粉末として1000℃で焼結したPb1.3(Zr0.2,Ti0.8)O3焼結体を1mm以下に粉砕したものを用いていること、及び焼結での2段目の焼結温度が1200℃で、保持時間が2時間であること以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を5L/min導入して700℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0084】
(実施例4)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
セッタ用粉末200gを用いてPb蒸気濃度を0.6g/cm3としたこと、セッタ用粉末として800℃で焼結した焼結体を用いていること、及び焼結での1段目の焼結温度までの昇温速度が0.3℃/minであり、保持時間が5時間であること、及び2段目の焼結を行わないこと以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を2L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0085】
(実施例5)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
2次カ焼粉末にLa2SiO5粉末91.5gを添加したこと以外は、実施例1と同様に行って焼結体を得た。なお、前記La2SiO5粉末は、La(OH)3粉末にSiO2粉末を13.65重量%添加し乾式混合を12時間行い、その後混合物を1400℃で2時間カ焼して得られた。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後においてもターゲットに割れは認められなかった。その後、得られた薄膜を、酸素を3L/min導入して600℃で1時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0086】
(比較例1)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
実施例1と同様の調合物を用いた。まず、前記調合物をボールミルに投入し、直径10mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで5時間の乾式混合を行った。次に、得られた粉末をマッフル炉に装入し780℃の温度で1時間カ焼してカ焼粉末を得た。次に、このカ焼粉末、純水2kg及びPVAバインダー40gをボールミルに投入し、直径5mmのZrO2ボールを用いて回転数100rpmで65時間の解砕を行った。スラリを乾燥造粒後、造粒粉末を得た。
次に、前記造粒粉末を成形圧300MPaで成形し、直径180mm×厚さ6mmの成形体を2枚得た。成形体密度は5.34g/cm3と低かった。
【0087】
次いで、焼成セッタ用粉末としてPbZrO3粉末200gを敷いたトレイ上に前記成形体を載せた。前記トレイを密度95%、純度97%MgO容器内に設置して、加熱した。ここで、昇温パターンは、600℃で脱脂した後、1200℃まで1.0℃/minで昇温して3時間保持して焼結を行い、焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後において、ターゲットに割れが認められた。その後、得られた薄膜を、酸素を1.5L/min導入して600℃で0.5時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0088】
(比較例2)
酸化物原料を用いて、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結からなる一連の工程を行って得た焼結体とそれを用いたスパッタリングターゲットを評価した。
焼成セッタ用粉末として30重量%の遊離PbOを含むPbZrO3粉末200gを用いたこと、及び焼結の容器として、密度70%、純度60%の低密度、低純度のAl2O3容器を用いたこと以外は、比較例1と同様に行って焼結体を得た。その後、得られた焼結体の評価を行った。表1に、PZT配合組成、焼成セッタ粉末、焼成セッタ粉末の粒径、Pb蒸気濃度、焼結条件を示す。結果を表2に示す。
さらに、プリスパッタ15時間経過後において、ターゲットにひび割れが認められた。その後、得られた薄膜を、酸素を1.5L/min導入して600℃で0.5時間熱処理を施し、膜組成を評価した。結果を表3に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
表1〜3より、実施例1〜5では、混合、カ焼、湿式解砕、成形、焼結の各工程で、本発明の方法に従って行われたので、良好な組織と組成式の焼結体が得られ、それを用いたターゲットによるスパッタリング成膜で好適な膜特性のPZT薄膜が得られることが分かる。これに対して、比較例1又は2では、焼結体とその製造方法が本発明の条件に合わないので、ターゲット性能と膜特性で満足すべき結果が得られないことが分かる。
【0093】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の強誘電体薄膜形成用の焼結体及びそれを用いたスパッタリングターゲットは、スパッタリング成膜法で形成されるPZT薄膜のPb濃度の局所的なばらつきを抑えることで該薄膜自体の特性ばらつきを解消することができ、かつ高電力をかけても割れが発生せず高速成膜に好適なターゲットであり、その製造方法は前記焼結体の効率的な製造方法であり、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (15)
- 強誘電体薄膜形成用のターゲットに用いる、チタン酸ジルコン酸鉛とPbOの結晶組織からなる組成式:Pbx(Zr1−aTia)yOzで表される複合酸化物焼結体であって、
前記組織は、平均結晶粒径が3〜7μmかつ最大空隙径が2μm以下であるとともに、Pb成分が均一分散されており、また前記組成式中のx、y、z及びaは下記の三つの要件を満たしていることを特徴とする焼結体。
1.10≦x/y≦1.40
0.2≦(1−a)/a≦0.7
2.8≦z/y≦3.1 - 前記Pb成分のEPMA定量分析での濃度分布が、前記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.03〜(x/y)+0.03の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の焼結体。
- 焼結密度が7.5g/cm3以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結体。
- さらに、前記組織の構成成分として、LaSi及び/又はPbSi酸化物結晶を2〜5mol%の濃度で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結体。
- Pb、Zr及びTiの酸化物粉末を用いて、混合、カ焼、解砕を繰返し行いそれを成形し、得られる成形物を加熱処理して、焼結体を製造する方法であって、
(1)前記酸化物粉末を所定の配合比で調合した混合物を湿式粉砕混合し、そのスラリーを乾燥して乾燥造粒物を得る第1の工程、
(2)第1の工程で得られる乾燥造粒物をカ焼に付し、1次カ焼粉末を得る第2の工程、
(3)第2の工程で得られる1次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第3の工程、
(4)第3の工程で得られる乾燥粉末をカ焼に付し、2次カ焼粉末を得る第4の工程、
(5)第4の工程で得られる2次カ焼粉末を湿式解砕し、そのスラリーを乾燥造粒して乾燥粉末を得る第5の工程、
(6)第5の工程で得られる乾燥粉末を成形に付し、成形体を得る第6の工程、及び
(7)第6の工程で得られる成形体を、Pb蒸気雰囲気に保持した容器中で加熱処理に付し、焼結体を得る第7の工程、を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の焼結体の製造方法。 - 第2の工程において、1次カ焼の加熱温度が、700〜750℃であることを特徴とする請求項5に記載の焼結体の製造方法。
- 第4の工程において、2次カ焼の加熱温度が、760〜830℃であることを特徴とする請求項5に記載の焼結体の製造方法。
- 第7の工程において、Pb蒸気雰囲気のPb濃度が0.2〜1.0g/cm3であることを特徴とする請求項5に記載の焼結体の製造方法。
- 第7の工程において、加熱処理を880〜920℃、次いで950〜1200℃の二段階の焼結温度で行うことを特徴とする請求項5に記載の焼結体の製造方法。
- 前記加熱処理の温度パターンが、860℃から前記1段目の焼結温度迄を1℃/min以下の速度で昇温して、1段目の焼結温度で0.5〜10時間保持し、次いで950℃から2段目の焼結温度迄を0.5℃/min以上の速度で昇温して、2段目の焼結温度で0.5〜10時間保持するものであることを特徴とする請求項9に記載の焼結体の製造方法。
- 第7の工程において、前記容器の底部に焼成セッタ粉末を敷設し、その上に成形体を配置する横型焼結炉を用いる加熱処理であって、
前記容器が外気を遮断できる構造の高純度酸化マグネシア製容器であり、かつ前記焼成セッタ粉末として前記組成式の複合酸化物粉末を用いることを特徴とする請求項5に記載の焼結体の製造方法。 - 前記焼成セッタ粉末のPb濃度が、前記組成式中のx/yを用いて表示すると、(x/y)−0.05〜(x/y)+0.05の範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の焼結体の製造方法。
- 前記焼成セッタ粉末が、前記組成式の複合酸化物を予め800℃以上の温度で加熱処理した後、1mm以下の粒径に粉砕して得た粉末であることを特徴とする請求項11に記載の焼結体の製造方法。
- 第5の工程において、さらにLaSi及び/又はPbSi酸化物を添加し、前記2次カ焼粉末と同時に湿式粉砕し、LaSi及び/又はPbSi酸化物を2〜5mol%の濃度で含む乾燥粉末を得ることを特徴とする請求項5〜13のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の焼結体を用いてなるスパッタリングターゲット。
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