JP2005029364A6 - クレーン装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 幅広い用途で使用することができるクレーン装置を提供する。
【解決手段】 クレーン装置20は、塔状の建造物である鉄塔11を構築又は解体するために用いられるものである。このクレーン装置20は、鉄塔11の主柱14に装着される第1及び第2固定部材31a,31b、支持ロッド41、支持線42等の固定手段と、当該固定手段を介して鉄塔11に固定されるマスト21と、当該マスト21によって下方から支持されるクレーン部51とを備えている。前記マスト21は、筒状のメインマスト22と、当該メインマスト22の内部に挿入された筒状のサブマスト23とを有している。このメインマスト22に対してサブマスト23を移動させることにより、マスト21は伸縮自在に構成されている。そして、マスト21の伸縮により、鉄塔11の高さに応じてクレーン装置20が昇降操作されるよう構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、塔状の建造物を構築又は解体するために使用されるクレーン装置であり、より詳しくは、建造物の高さに応じて昇降操作されるクライミング式のクレーン装置に関するものである。
従来、例えば鉄塔等の塔状の建造物を解体する際、山地、市街地等のようにクレーン車等の重機が入り込むことができないような場合には、台棒工法と呼ばれる方法が採用されていた。台棒工法とは、鉄塔の鉄骨に斜め上方へ延びるように固定された棒状をなす台棒を利用し、ワイヤで鉄骨等を吊り下ろす工法である。この台棒は、その下端が鉄骨に支持された状態で上端と地面との間にワイヤ等の支線が帳架されることにより、鉄骨に対して斜め上方へ延びるように固定されている。この台棒工法は、鉄塔の規模、構造等に係わらず柔軟に対応可能な工法ではあるが、支線の一端を地面に固定するための固定部を鉄塔の中心から30〜40m程度離間した位置に設けなければならず、作業のために広範な敷地を必要としていた。そこで、作業に広範な敷地を必要としないクレーン装置として、例えば特許文献1に示すようなクライミング式のクレーン装置が提案された。
すなわち、このクライミング式のクレーン装置は、可動固定リングと、マストと、ジャッキアップ装置と、クレーンとを備えている。前記可動固定リングは、建造物を構成する建造物単位ブロックに着脱可能に取付けられている。前記マストは、当該可動固定リングに対して昇降自在に、かつ既に構築された建造物単位ブロックに固定リングを介して着脱可能に取付けられている。前記ジャッキアップ装置は、可動固定リングとマストとの間に接続されている。クレーンは、マスト上部に設けられ、建造物単位ブロックを吊り込み可能に構成されている。そして、当該クレーン装置は、前記ジャッキアップ装置によって可動固定リング又はマストを尺取り式に昇降させることにより、建造物の高さに応じて自昇を繰り返すよう構成されている。
特開平8−311818号公報
ところが、上記従来のクライミング式のクレーン装置によれば、可動固定リング又はマストを昇降させるためにジャッキアップ装置を設けることで構成が複雑なものとなっており、また昇降時のジャッキアップ装置に加わる負担も大きなものとなる。このため、ジャッキアップ装置は、昇降時の負担に耐え得る強度と、それ自身をも昇降させ得る程度の性能を必要とし、必然的に大きく、重量の嵩むものとなってしまう。一方、クレーンには建造物単位ブロックを十分に吊り下げ、吊り上げ可能な程度の性能が必要とされるため、建造物の規模等が大きくなればクレーンも大きく、重量の嵩むものとせざるを得ない。そして、ジャッキアップ装置、クレーン等の性能を考慮すれば、クレーン装置自身が大掛かりなものとせざるを得ず、鉄塔等といった規模の小さな建造物では当該クレーン装置を支持することができなくなるため、使用用途が限られてしまうという問題があった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、幅広い用途で使用することができるクレーン装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のクレーン装置の発明は、塔状の建造物を構築又は解体するために用いられ、前記建造物の高さに応じて昇降操作されるクレーン装置であって、前記建造物を構成する構造材に装着される固定手段と、当該固定手段を介して建造物に固定されるマストと、当該マストによって下方から支持されるクレーン部とを備え、前記マストは、筒状のメインマストと、当該メインマストの内部に挿入された筒状のサブマストとを有するとともに、該メインマストに対してサブマストを移動させることにより前記昇降操作に応じて伸縮自在に構成されたものであることを要旨とする。
請求項2に記載のクレーン装置の発明は、請求項1に記載の発明において、前記昇降操作は、メインマスト又はサブマストを固定手段により建造物に固定した状態でのマストの伸張及び収縮操作と、当該伸張及び収縮操作に応じてサブマスト又はメインマストを固定手段により建造物に固定する固定操作との繰り返しによって行われることを要旨とする。
請求項3に記載のクレーン装置の発明は、請求項1に記載の発明において、前記昇降操作は、メインマスト又はサブマストを固定手段により建造物に固定した状態でのサブマスト又はメインマストに接続された固定手段の建造物に対する装着位置の変更操作と、当該変更操作に応じたマストの伸張及び収縮操作との繰り返しによって行われることを要旨とする。
以上詳述したように、本発明によれば、幅広い用途で使用することができるクレーン装置を提供することができる。
以下、本発明のクレーン装置を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、図9及び図10に示すように、建造物としての鉄塔11は、地面12の上に固定されたコンクリート製の複数の基台13と、当該基台13の上にそれぞれ立設された鉄製の複数の主柱14とを備えている。これら主柱14は、断面L字状に形成されるとともに、上方へ向かうに従い互いに接近する方向へ傾斜した状態で配設されている。また、図示しないが、各主柱14の間には複数の副柱が斜格子状に架設されている。これら基台13、主柱14、副柱等の構造材によって鉄塔11は、塔状に構成されている。
クレーン装置20は、鉄塔11の構造材に装着された固定手段と、当該固定手段を介して鉄塔11に固定されたマスト21と、当該マスト21によって下方から支持されたクレーン部51とを備えている。まず、固定手段について説明する。当該固定手段は、構造材に固定される固定部材と、固定部材と前記マスト21との間に連結された帳設部材とを備えている。図3(a),(b)に示すように、固定部材31は、挟持板32と、平面略L字状をなす上下一対の締結部33とを有している。挟持板32の外面には連結板34が突設されるとともに、この連結板34は複数の補強板35によって補強され、その上部には第1連結孔34aが、下部には第2連結孔34bが透設されている。締結部33は、連結ボルト36及びナット37により挟持板32に連結されている。連結ボルト36は、中間部で曲げられることにより締結部33と挟持板32との間に主柱14を収容するための空間を形成している。そして、締結部33と挟持板32との間に主柱14を挟み込み、ナット37を締め付けることで固定部材31が主柱14に固定される。固定部材31は、各主柱14に対してそれぞれ上下一対ずつ取付けられており、これ以降、主柱14への取付位置で固定部材31を区別する場合、上方のものを第1固定部材31a、下方のものを第2固定部材31bと記載する。
前記帳設部材は、棒状をなす支持ロッド41と、チェーン、ワイヤ等の金属製線材からなる支持線42とを備えている。図2に示すように、前記支持ロッド41は、筒状のメインロッド43aと、メインロッド43a内に挿入された筒状のサブロッド44とから構成され、マスト21と固定部材31との距離に応じて伸縮させることにより、長さ調節可能に構成されたものである。メインロッド43a及びサブロッド44の間には図示しないラチェット機構が内装されており、このラチェット機構によって長さ調節が簡易化されるとともに、マスト21の揺れに応じて支持ロッド41の長さを微小に変化させて揺れを吸収するように構成されている。また、支持ロッド41の両端には、マスト21又は固定部材31へ連結するための連結部45が取付けられている。そして、支持ロッド41は、一端がマスト21の上端部に、他端が第1固定部材31aの第1連結孔34aにボルト等で連結されており、水平方向に延びるように帳架されている。一方、支持線42は、一端がマスト21の下部に、他端が第1固定部材31aの第2連結孔34bにボルト等で連結されており、斜め方向に延びるように帳架されている。支持ロッド41において、サブロッド44の他端には、張力調整機構として連結棒46が螺合されている。支持線42において、両端のうち少なくともいずれか一方には、張力調整機構として、例えばレバーブロック、ウィンチ等が取付けられている。これら張力調整機構は、マスト21と固定部材31との間で支持ロッド41又は支持線42が帳架された状態とするために張力を調節するものである。前記連結棒46は、サブロッド44に対する螺入又は螺退操作で張力を調節するものである。レバーブロック、ウィンチ等は、支持線42を引っ張ったり、緩めたりすることで張力を調節するものである。なお、支持線42の一端のみに張力調整機構を取付ける場合、他端には支持ロッド41の連結部45のような連結部材が取付けられる。
次いで、前記マスト21について説明する。図1に示すように、マスト21は、筒状のメインマスト22と、当該メインマスト22の内部に挿入された筒状のサブマスト23とを有している。このマスト21には伸縮機構が内装されており、当該伸縮機構でメインマスト22に対しサブマスト23を移動させることにより、伸縮自在に構成されている。なお、伸縮機構としては、例えばエアーシリンダ、油圧シリンダ、油圧モータ、ウィンチ等が挙げられ、マスト21を伸縮自在とすることが可能であれば、如何様な構成としてもよい。特に、エアーシリンダ、油圧モータは、マスト21を作業者が所望する任意の長さで保持することができ、伸縮機構としてより好ましい。
当該メインマスト22の上端部には、帳設部材(支持ロッド41)を連結するための連結突片24が突設されている。メインマスト22及びサブマスト23の下端周面上には、リング状の連結部材25が外嵌されるとともに、この連結部材25の外周面上には帳設部材(支持線42)を連結するための連結突片24が突設されている。連結突片24は、メインマスト22又はサブマスト23の周方向へ等間隔おきとなるように4つずつ設けられている。サブマスト23の下端部において、連結部材25の上方位置には、メインマスト22に対するサブマスト23の移動を規制するための規制リング27が取付けられている。マスト21の伸縮量は、サブマスト23上で当該規制リング27の取付位置を適宜変更することによって調整可能である。
メインマスト22の周面上にはガイドリング26が遊嵌されるとともに、このガイドリング26は、メインマスト22上で連結突片24と連結部材25との間で移動自在に構成されている。ガイドリング26の外周面上には連結部材25と同様の4つの連結突片24が突設されており、この連結突片24と前記第2固定部材31bとの間にはガイド線43が連結されている。ガイド線43は、前記支持線42と略同一の構成であり、金属製線材から形成され、両端のうち少なくともいずれか一方には張力調整機構が取付けられている。この張力調整機構でガイド線43を張った状態とすることにより、ガイドリング26が第2固定部材31bとほぼ同じ高さに位置し、ガイド線43は水平方向へ延びるように張架される。これらガイドリング26、ガイド線43等により、ガイド手段が構成されている。ガイド手段は、マスト21の伸縮方向を案内するものであるとともに、伸縮時、固定時等におけるマスト21の揺れを抑制するものである。
図9及び図10に示すように、サブマスト23の下端面には、支持台28を取付けることが可能である。支持台28は、地面12上に載置される支持板28aと、支持板28aの上面から突設された支持脚28bとを備えている。支持板28aは、その周縁部に帳設部材(支持線42)を連結可能である。支持脚28bは、回動可能に連結された一対の部材からなり、その中間部を回動させ、曲げることにより、クレーン装置20のマスト21を倒すことが可能であり、設置作業、回収作業等の作業性の向上が図られている。
前記クレーン部51は、旋回台52と、この旋回台52上に立設固定された支持アーム53と、当該支持アーム53の上端に回動可能に連結されたブーム54とを備えている。前記旋回台52は、図示しない旋回機構を有しており、マスト21の上端において、当該マスト21の軸線を中心に回転可能に構成されている。前記ブーム54は、基端部と旋回台52との間にシリンダ55が架設されており、当該シリンダ55の伸張又は収縮によって基端部を中心に回動し、その先端部を上昇又は下降させることができるように構成されている。ブーム54の先端部にはワイヤ56を介してフック57が吊り下げられるとともに、ワイヤ56の基端が、例えばウィンチ等の図示しない巻取機構に接続されることにより、フック57を上昇又は下降させることが可能である。そして、当該クレーン部51は構造材に対し、旋回台52を回転させつつ、ブーム54を回動させることで平面的な位置合わせを行い、フック57の上昇又は下降で立体的な位置合わせを行うことにより、構造材の吊り上げ又は吊り下ろしを行う。
次に、前記クレーン装置の作用について以下に記載する。
図1に示すように、当該クレーン装置20は、鉄塔11の解体又は構築を行うため、鉄塔11の内部で上端部に設置され、マスト21の下端を地面に接地させることなく、支持ロッド41、支持線42等の固定手段により鉄塔11内に吊られた状態で使用される。この状態でマスト21は、4方向から延びる支持ロッド41、支持線42等の張設部材により、平面視で鉄塔11の中心に配置される。このマスト21を鉄塔11の中心に配置する構成は、当該マスト21を支持ロッド41、支持線42等で吊った状態に固定することで初めて可能となる。すなわち、支持ロッド41、支持線42等は、それぞれが長さ調節可能であり、建造物の規模、構造等に応じて適宜長さを変更することで、マスト21を建造物の中心に容易に配置可能としている。また、マスト21の下端を接地させないことにより、マスト21を短くすることが可能であり、小型化及び軽量化を図ることができるとともに、地面からの抵抗を受けることがないため、支持ロッド41及び支持線42による位置調節が簡易化される。
また、マスト21を平面視で鉄塔11の中心に配置することで、ブーム54の旋回範囲を必要十分なものとしつつ、同ブーム54の軽量化を図ることも可能である。すなわち、図4(b)に示したように、鉄塔11の外面にクレーン装置20を設置した場合、ブーム54の先端が鉄塔11の何れの箇所にも届くものとするためには、ブーム54の長さを図中のL2とし、図中に鎖線で示した旋回範囲としなければならない。これに対し、図4(a)に示したように、マスト21を鉄塔11の中心に配置した場合、ブーム54の長さを図中のL1とし、図中に鎖線で示した旋回範囲とすれば事足りる。そして、ブーム54の長さL1とL2とを比較した場合、L1の方が短く、このためブーム54を小型化し、軽量化を図ることが可能となる。他に、マスト21を鉄塔11の中心に配置した場合、マスト21及びクレーン部51の荷重を各支持ロッド41、支持線42等にそれぞれ略均等に分散することも可能である。加えて、クレーン部51の操作時において、マスト21は、収縮状態とされてメインマスト22とサブマスト23とが重ねられることにより、強度及び剛性の向上が図られる。従って、マスト21を簡易な構成としながら、当該マスト21にクレーン装置20を昇降させるための伸縮機構と、クレーン部51の旋回、構造材の吊り上げ又は吊り下ろし等の操作に耐え得る強度及び剛性を付与することが可能となる。
次いで、前記クレーン装置の昇降操作について説明する。
当該クレーン装置20は、構築又は解体時の建造物の高さに応じて昇降操作されるクライミング式のものである。まずは、解体時におけるクレーン装置20の昇降操作による降下について説明する。図5に示すように、降下の第1段階では、ブーム54が上方へ回動されて立ち上がった状態とされる。さらに、第2固定部材31bの第2連結孔34bと、サブマスト23の連結部材25の連結突片24との間に新たな支持線42が緩めた状態で連結される。図6に示すように、降下の第2段階では、伸縮機構を作動させ、マスト21を伸張させることにより、メインマスト22に対してサブマスト23が下方へ移動される。この後、マスト21の伸張に応じ、第2固定部材31bと、サブマスト23の連結部材25との間に連結された支持線42が張った状態とされる。図7に示すように、降下の第3段階では、支持ロッド41及び支持線42と第1固定部材31aが取り外され、鉄塔11に対するメインマスト22の固定が解除される。この状態でメインマスト22は、ガイドリング26及びガイド線43を介して第2固定部材31bに支持されつつも、上下方向へ移動可能とされる。一方、サブマスト23は、その下端が支持線42を介して第2固定部材31bに固定されるとともに、上端がメインマスト22を介してガイドリング26等のガイド手段に支持された状態となる。
図8に示すように、降下の第4段階では、伸縮機構を作動させ、マスト21を収縮させることにより、ガイドリング26等のガイド手段に案内されたメインマスト22がサブマスト23に対して下方へ移動される。降下の第5段階では、新たな固定部材31を鉄塔11の主柱14に取付け、当該固定部材31とメインマスト22との間に支持ロッド41及び支持線42を帳架することにより、メインマスト22が鉄塔11に固定される。そして、サブマスト23を固定する支持線42を外すとともに、さらに新たな固定部材31を鉄塔11に取付け、この固定部材31へガイド線43等を付け直すことにより、クレーン装置20が図1に示した状態となり、降下時における昇降操作が完了する。すなわち、降下時における昇降操作は、順番にマスト21の伸張操作、サブマスト23の固定操作、マスト21の収縮操作及びメインマスト22の固定操作を繰り返すことによって行われる。
降下が繰り返され、クレーン装置20の下端が地面12まで達する際には、サブマスト23の下端に支持台28が装着される。その後、支持台28を接地させ、この支持台28と基台13との間に支持線42を帳架させるとともに、支持台28とメインマスト22の上端との間に支持線42を帳架させることにより、クレーン装置20が地面12上に立設固定され、解体作業が再開される。また、解体作業が終了した後、クレーン装置20は、まずブーム54が取外され、その後、図10に示すように、支持台28によって支持させながら支持線42を緩めてマスト21を倒すことにより回収される。
次に、構築時におけるクレーン装置20の昇降操作による上昇について説明する。まず、図10に示すように、マスト21が倒された状態で支持台28と、基台13及びメインマスト22との間に支持線42がそれぞれ連結される。この後、メインマスト22に架設された支持線42を張った状態とすることによりマスト21を起き上がらせ、ブーム54を取付けることにより、クレーン装置20が設置される。そして、クレーン装置20を使用して鉄塔11を所定高さまで組み上げた後、クレーン装置20が上昇される。
上昇の第1段階では、まずブーム54が上方へ回動されることによって立ち上がった状態とされるとともに、鉄塔11の主柱14に第2固定部材31bが取付けられる。この後、図8に示すように、ガイドリング26が上方へ移動され、当該ガイドリング26と第2固定部材31bとの間にガイド線43が帳架されるとともに、サブマスト23の下端と第2固定部材31bとの間に支持線42が帳架される。上昇の第2段階では、図7に示すように、伸縮機構を作動させ、マスト21を伸張させることにより、ガイドリング26等に案内されたメインマスト22がサブマスト23に対して上方へ移動される。上昇の第3段階では、図6に示すように、第1固定部材31aが鉄塔11に装着され、当該第1固定部材31aとメインマスト22との間に支持ロッド41及び支持線42が帳架されて、メインマスト22が鉄塔11に固定される。上昇の第4段階では、図5に示すように、伸縮機構を作動させ、マスト21を収縮させることにより、サブマスト23がメインマスト22に対して上方へ移動される。その後、サブマスト23と第2固定部材31bとの間の支持線42を外して上昇時における昇降操作が完了する。なお、図1に示す状態からクレーン装置20を上昇させる場合は、上昇の第1段階でまず支持ロッド41及び支持線42が取り外される以外は、全く同一である。すなわち、上昇時における昇降操作は、順番にサブマスト23の固定操作、マスト21の伸張操作、メインマスト22の固定操作及びマスト21の収縮操作を繰り返すことによって行われる。
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態のクレーン装置20によれば、クレーン部51を支持するマスト21は、メインマスト22とサブマスト23とを備え、メインマスト22に対してサブマスト23を移動させることにより、伸縮自在に構成されている。そして、このマスト21が伸張又は収縮されることにより、建造物の高さに応じてクレーン装置20が昇降される。当該マスト21は、メインマスト22とサブマスト23とによって伸縮自在に構成されたものであり、構成が簡易で軽量化が図られている。クレーン装置20の昇降時に加わる荷重は、マスト21全体が伸張又は収縮されることから、マスト21の一部のみならず、全体で受けることが可能である。クレーン部51の操作時にはマスト21が収縮され、メインマスト22とサブマスト23を重ねることにより、必要十分な強度及び剛性が確保されている。加えて、マスト21は内装された伸縮機構を作動させることによって伸縮する。従って、昇降操作に係る構成を簡易化することができるとともに、クレーン装置20を幅広い用途で使用することができる。
・ また、クレーン装置20の昇降操作は、マスト21の伸張又は収縮操作と、メインマスト22又はサブマスト23の鉄塔11に対する固定操作との繰り返しによって行われる。従って、昇降操作を、単純な操作の繰り返しで簡易に行うことができる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 建造物は、実施形態で示した鉄塔11に限らず、例えばビルディング、タワー等のように塔状をなすものならばどの様なものであってもよい。
・ マスト21の伸縮機構を省略して構成してもよい。実施形態でマスト21は、伸縮機構により自動的に伸張又は収縮されている。これに対し、伸縮機構を省略した場合、マスト21は、固定手段に設けられた張力調整機構で支持線42等を張った状態又は緩んだ状態とするとき、これに従って伸張又は収縮される。また、この場合、マスト21を伸張した状態又は収縮した状態で保持するため、例えばクランプ、ピン等の伸縮状態保持手段を設けてもよい。
・ 固定手段に設けられた張力調整機構を省略し、マスト21の伸張又は収縮に応じて支持線42等を張った状態又は緩んだ状態としてもよい。
・ クレーン装置20は、必ずしも平面視で建造物の中央に配設することに限らず、建造物の内部であれば何れの箇所に配設してもよい。
・ クレーン装置20は、固定手段によって建造物の内部に吊った状態で固定することに限らず、建造物の外部等に取り付けてもよい。この場合、固定手段としては、建造物の外部にクレーン装置20のマスト21を取付けるためのクリップ、クランプ等が挙げられる。
・ 鉄塔11の構造材である主柱14は、断面L字状のものに限らず、例えば円筒状、円柱状等としてもよい。また、構造材である副柱は、断面L字状、円筒状、円柱状等の何れの形状としてもよい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)前記マストは、建造物の内部に配置されるとともに、当該マストと建造物を構成する構造材との間に帳架された固定手段により、建造物の上部に吊設されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクレーン装置。
(2)前記固定手段は、マストの上部と建造物を構成する構造材との間に帳架された棒状をなす複数の支持ロッドと、マストの下部と建造物を構成する構造材との間に帳架された複数のワイヤとから構成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクレーン装置。
(3)前記マストは、昇降操作時に伸縮方向を案内するためのガイド手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクレーン装置。
(4)前記クレーン部の操作時にマストが収縮された状態とされることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクレーン装置。
実施形態のクレーン装置を示す正面図。 支持ロッドを示す正面図。 (a)は固定部材を示す平面図、(b)は固定部材を示す正面図。 (a)、(b)はクレーン装置の旋回範囲を示す概念図。 クレーン装置が昇降操作される状態を示す正面図。 マストが伸張された状態を示す正面図。 メインマストの固定を解除した状態を示す正面図。 マストが収縮された状態を示す正面図。 接地状態でクレーン装置を使用する状態を示す正面図。 クレーン装置を設置又は回収する状態を示す正面図。
符号の説明
20…クレーン装置、21…マスト、22…メインマスト、23…サブマスト、31…固定手段を構成する固定部材、41…固定手段を構成する支持ロッド、42…固定手段を構成する支持線、51…クレーン部。

Claims (3)

  1. 塔状の建造物を構築又は解体するために用いられ、前記建造物の高さに応じて昇降操作されるクレーン装置であって、
    前記建造物を構成する構造材に装着される固定手段と、当該固定手段を介して建造物に固定されるマストと、当該マストによって下方から支持されるクレーン部とを備え、前記マストは、筒状のメインマストと、当該メインマストの内部に挿入された筒状のサブマストとを有するとともに、該メインマストに対してサブマストを移動させることにより前記昇降操作に応じて伸縮自在に構成されたものであることを特徴とするクレーン装置。
  2. 前記昇降操作は、メインマスト又はサブマストを固定手段により建造物に固定した状態でのマストの伸張及び収縮操作と、当該伸張及び収縮操作に応じてサブマスト又はメインマストを固定手段により建造物に固定する固定操作との繰り返しによって行われることを特徴とする請求項1に記載のクレーン装置。
  3. 前記昇降操作は、メインマスト又はサブマストを固定手段により建造物に固定した状態でのサブマスト又はメインマストに接続された固定手段の建造物に対する装着位置の変更操作と、当該変更操作に応じたマストの伸張及び収縮操作との繰り返しによって行われることを特徴とする請求項1に記載のクレーン装置。
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