JP2005028757A - 光学フィルムの製造方法及び光学フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に光学フィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによって流延して支持体上に流延膜(ウェブ)を形成し、このとき、ウェブが支持体上に密着して形成されるように、流延上流側に設置した減圧チャンバからによって減圧し、支持体上からウェブを剥離後、ウェブを乾燥して、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法において、減圧チャンバによる1分あたりの減圧変更速度を1(Pa/min)以上、20(Pa/min)以下とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学用途に利用される光学フィルムの製造方法及び光学フィルム、特に液晶画像表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、あるいはまた有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等で使用される各種機能フィルムなどにも利用することができる光学フィルムの製造方法及び光学フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶画像表示装置が発展し、セルロースエステルフィルムが偏光板用保護フィルムや有機エレクトロルミネッセンス用フィルムなどに使用されるようになり、益々薄手のフィルムが求められるようになってきた。
【0003】
従来から光学フィルムとして用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法は、溶液流延製膜方法によるもので、セルロースエステル溶液(以下ドープとも呼ぶ)を、鏡面処理された表面(キャスト面)を有しかつ無限移行する無端の支持体(ステンレス鋼製ベルトあるいはドラム)上に流延ダイから流延し、ドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を剥離ロール(剥離点)で剥離し、ついでウェブを乾燥装置に導入して乾燥風により乾燥し、さらに、巻取り機により巻き取ることにより、セルロースエステルフィルムを製造していた。
【0004】
そして、このような溶液流延製膜方法において、流延ダイのスリットよりドープを流下する際、流延ダイの幅方向の両端部(以下、流延ダイエッジという)に、いわゆるヒゲ状の皮膜(すなわちスケール、以下、ダイエッジ皮膜という)が発生しやすい。このダイエッジ皮膜は、ダイ・スリットより流延するドープの流れを乱し、安定なセルロースエステルフィルムの製造を阻害するだけでなく、脱落したダイエッジ皮膜の断片がフィルム表面に付着して、乾燥フィルムの品質を損なうという問題があった。
【0005】
一方、無限移行する無端の支持体のキャスト面にドープを流延する際、キャスト面に流延膜が安定に形成されるように、減圧チャンバを使用して流延膜の背面すなわち流延ダイ・スリットから出てくる流延膜に流延上流側から減圧を掛けて、流延膜をキャスト面に密着させていた。
【0006】
ところが、この方法では、減圧チャンバによる減圧がアップすることにより、支持体のキャスト面に対する流延膜の密着度は向上するが、同時に減圧チャンバの左右両サイドからの吹き込み風の風速もアップするため、流延ダイのエッジに皮膜が発生しやすくなるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−1655号公報
この特許文献において、本出願人は、偏光板用保護フィルム等に有用なセルロースエステルフィルムを溶液流延製膜方法により製造する方法であって、流延ダイと減圧チャンバの両者の間隙精度の向上、とりわけ流延ダイ下端部の支持体に対向する面及び減圧チャンバ下端部の支持体に対向する面のそれぞれ間隙精度の向上を図ることにより、ドープ流延時のダイエッジ皮膜の発生を未然に防止し得るセルロースエステルフィルムの製造方法を提案した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の発明によれば、セルロースエステルのドープを支持体上に高速で流延する場合には、充分な効果が得られず、流延ダイのエッジに皮膜(スケール)が発生するのを防止することができないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法において、ドープ流延時のダイエッジ皮膜(スケール)の発生を防止し、これによってダイエッジ皮膜断片がフィルムに付着することなく、品質が向上した光学フィルムを効率良く、安定に製造することができ、歩留まりが向上する、光学フィルムの製造方法及び光学フィルムを提供しようとすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(支持体)上に光学フィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによって流延して支持体上に流延膜(ウェブ)を形成し、このとき、ウェブが支持体上に密着して形成されるように、流延上流側に設置した減圧チャンバからによって減圧し、支持体上からウェブを剥離後、ウェブを乾燥して、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法であって、上記減圧チャンバによる1分あたりの減圧変更速度を1(Pa/min)以上、20(Pa/min)以下とすることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の方法により製造されたことを特徴とする膜厚50μm以下を有する光学フィルムである。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
上記のように、本発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(支持体)上に光学フィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによって流延して支持体上に流延膜(ウェブ)を形成し、このとき、ウェブが支持体上に密着して形成されるように、流延上流側に設置した減圧チャンバからによって減圧する。そして、本発明の光学フィルムの製造方法では、減圧チャンバによる1分あたりの減圧変更速度を1(Pa/min)以上、20(Pa/min)以下とすることを特徴としている。
【0014】
すなわち、本発明者は、光学フィルムの製造方法において、流延ダイ・スリットから出てくる流延膜に減圧を掛けて、エアの混入や、ドープの流延の際の流延リボン(リボン状樹脂溶液)のバタツキを抑制して、フィルム幅手方向に横段状のスジ(横段状の膜厚ムラ)が生じないようにするものであるが、このような光学フィルムの製造時中に、減圧チャンバによる減圧を変更する場合、減圧変更速度が急激であると、リボンの位置が急激に動き、それが起点となってダイエッジ皮膜(スケール)が発生することを見出した。
【0015】
上記本発明の光学フィルムの製造方法において、減圧変更速度が1(Pa/min)未満であれば、所定の減圧値に達するまでに非常に長い時間がかかるため、製造コスト上、不利となる。そして、減圧変更速度が20(Pa/min)以下であれば、リボンの位置の変化が少なく、緩やかであるため、ダイエッジ皮膜(スケール)の発生が見られないが、減圧変更速度が20(Pa/min)を超えると、リボンの位置の変化が大きく、急激なため、ダイエッジ皮膜(スケール)が発生するので、好ましくない。
【0016】
なお、本発明の溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法において、流延ダイ・スリットと支持体表面との間隙は0.3〜2mmの範囲が好ましい。また、減圧チャンバの減圧は、流延膜厚や支持体のウェブ搬送速度によって適点が変わるが、減圧チャンバによる減圧値が、1〜1500Paの範囲であるのが、好ましい。その理由は、減圧チャンバによる減圧値が、1Pa未満であると、減圧が小さすぎて、流延ダイから流下される流延膜が支持体上に密着し難く、泡すじ等の原因になる。逆に、1500Paを超えると、減圧が強すぎて、減圧の際に該間隙から吹き込まれるエアの流速が大きくなり、流延ダイにエッジ皮膜が発生しやすいからである。とくに、50〜800Paの範囲が実用的である。
【0017】
そして、減圧チャンバ下端と支持体との間隙は、吸引風量が大きくなり過ぎず、すなわち吸引風量が大きくなり過ぎると、流延ダイ・スリット端部にドープの乾燥皮膜ができるため、また充分な減圧値を得るために、0.5〜5mm程度が好ましく、減圧チャンバを−100Pa以上まで減圧する場合は、0.5〜3mmがより好ましい。
【0018】
なお、本発明による光学フィルムの製造方法において、ドープを無限移行する無端の支持体(ステンレス鋼製ベルトあるいはドラム)の上部移行部の表面(キャスト面)上に流延する工程では、ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイに送液し、流延位置において、支持体上に流延ダイからドープを流延する。流延ダイとしては、口金部分のスリットの形状を調整できる流延ダイを用いるのが好ましい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力及び支持体の移行速度等をコントロールするのがよい。
【0019】
そして、流延ダイ下端部のドープ流出用開口部(スリット)の前後両側の支持体に対向する面、減圧チャンバの調整プレート下端部の支持体に対向する面、及び減圧チャンバの左右サイドプレート下端部の支持体に対向する面の、それぞれの面の表面粗さを1μm以下とするのが、好ましい。その理由は、これらの面の表面粗さが1μmを超えると、やはり均一な間隙を保つことができず、流延ダイよりドープを流下する時、流延ダイの幅方向の両端部すなわち流延ダイエッジに、いわゆるヒゲ状の皮膜(スケール)が発生しやすいからである。
【0020】
さらに、減圧チャンバのバックプレートの調整プレート下端部の支持体に対向する面と支持体表面(キャスト面)との間隙は、0.2〜7mmであるのが、好ましい。その理由は、この間隙が0.2mm未満であると、狭すぎて、支持体の上下動に伴う間隙の変動率が大きく、減圧が安定せず、流延膜に乱れが発生しやすくなる。また支持体(ベルト)の上下動が大きい場合、支持体(ベルト)にキズが生じてしまう。逆に、この間隙が7mmを超えると、必要減圧を発生させるために、巨大な減圧用ファンが必要になるし、仮に、必要な減圧が得られても、減圧チャンバの左右両端部からの吹込み風量が多いため、流延ダイのエッジに皮膜が発生しやすいからである。
【0021】
本発明の光学フィルムの製造方法において対象となるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートはベース強度が強く、より好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0022】
このセルロースエステルを溶解する溶剤(溶媒)としては、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましい。
【0023】
ここで、本発明の方法において用いる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
【0024】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0025】
ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35%程度であり、好ましくは15〜25%である。ドープを調製する時のセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法があげられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、「ゲル」や「ママコ」と呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
【0026】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないうに定められる。
【0027】
溶解後、ドープは冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0028】
光学フィルム中に、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、加工安定剤、及びマット剤などを含有させることにより、光学フィルムに起因する液晶画像表示装置の性能を向上させることができる。
【0029】
これらの可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0030】
本発明で用いる可塑剤としては、特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れた光学フィルムが得られるため、特に好ましい。
【0031】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量は、セルロースエステルに対して1〜15重量%である。液晶画像表示部材用としては、寸法安定性の観点から5〜15重量%がさらに好ましく、特に好ましくは、7〜12重量%である。また、セルロースエステルに対して凝固点が20℃以下の可塑剤の含有量は1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは、3〜7重量%である。
【0032】
本発明による光学フィルムの製造方法において、好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたもので、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0033】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0034】
また本発明による光学フィルムの製造方法において、光学フィルムに滑り性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。
【0035】
本発明に用いられる微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0036】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0037】
本発明においては、セルロースエステルのドープを濾過した後、ドープを支持体上に流延(キャスト工程)し、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0038】
キャスト工程における支持体には、ステンレス鋼製のベルトもしくはドラムの表面を鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲、すなわち0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ、剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0039】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。
【0040】
製造時の光学フィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残留溶媒量は、10〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは、20〜80重量%であり、特に好ましくは20〜40重量%である。
【0041】
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
【0042】
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
【0043】
支持体からフィルムを剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5〜20℃がより好ましい。
【0044】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、従来よりも薄膜化されている本発明の製造方法による光学フィルムは、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
【0045】
フィルムの乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。
【0046】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40℃〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80℃〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0047】
本発明の光学フィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0048】
本発明による光学フィルムの厚みは、特に限定されないが、LCDに使用される液晶画像表示素子すなわち偏光板用の保護フィルムに用いられることから、通常、100μm以下であることが好ましく、中でも、厚み50μm以下の光学フィルムが好ましい。その理由は、厚み50μm以下の光学フィルムは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いられる際に、より品質に対して厳しい性能が求められるためである。特に好ましい光学フィルムの厚み範囲は、20〜50μmである。
【0049】
上記本発明による光学フィルムの製造方法によれば、ドープ流延時のダイエッジ皮膜(スケール)の発生を防止し、これによってダイエッジ皮膜断片がフィルムに付着することなく、品質が向上した光学フィルムを効率良く、安定に製造することができ、歩留まりが向上するものである。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1と2及び比較例1
(ドープの調製)
セルローストリアセテートのドープを、以下のように調製した。
【0052】
セルローストリアセテート 100重量部
メチレンクロライド 350重量部
エタノール 12重量部
トリフェニルホスフェート 12重量部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5重量部
アエロジル200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
上記の組成物を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解してドープを調整した。つぎに、得られたドープを、図示しない溶液流延製膜装置により、流延ダイを通して駆動回転ステンレス製エンドレスベルトの上部移行部の表面(キャスト面)上に、製膜速度80m/分、減圧300(Pa)で流延した。ただし、流延の開始時は、減圧を0(Pa)とし、上記減圧300(Pa)に達するまでの減圧変更速度をつぎのように変えた。
【0053】
すなわちこの場合、実施例1と2では、減圧変更速度を5(Pa/min)、及び20(Pa/min)と変えて、本発明の範囲内のものとし、比較例1では、減圧変更速度を30(Pa/min)と変えて、本発明の範囲外のものとした。
【0054】
また、エンドレスベルトの温度を25℃に制御し、移動する流延膜(ウェブ)を乾燥し、流延膜中の残留溶媒質量が25%になるまで溶媒を蒸発して剥離した。剥離後、テンター乾燥装置に流延膜(ウェブ)を導入し、その幅を保持しながら乾燥し、引き続いてロール乾燥装置で乾燥し、得られたフィルムを最終的に20℃に冷却して巻取機に巻き取り、それぞれ乾燥膜厚40μmの実施例1と2及び比較例1のセルローストリアセテートフィルムを得た。なお、フィルムの搬送張力は、それぞれ100〜120N/mとした。
【0055】
ついで、こうして製造した各セルローストリアセテートフィルムの品質を、フィルムにダイエッジ皮膜(スケール)断片が付着しているか、どうかを基準として評価し、得られた結果を表1にまとめて示した。
【0056】
【表1】
【0057】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1と2によれば、得られたセルローストリアセテートフィルムにダイエッジ皮膜断片が付着しておらず、ダイエッジ皮膜断片による膜品質の劣化のない光学フィルムとして優れた品質を有するセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができた。
【0058】
これに対し、比較例1によれば、得られたセルローストリアセテートフィルムにダイエッジ皮膜断片が付着しており、光学フィルムとしての品質が劣るものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の発明は、上述のように、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(支持体)上に光学フィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによって流延して支持体上に流延膜(ウェブ)を形成し、このとき、ウェブが支持体上に密着して形成されるように、流延上流側に設置した減圧チャンバからによって減圧し、支持体上からウェブを剥離後、ウェブを乾燥して、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法であって、上記減圧チャンバによる1分あたりの減圧変更速度を1(Pa/min)以上、20(Pa/min)以下とすることを特徴とするもので、本発明の光学フィルムの製造方法によれば、ドープ流延時のダイエッジ皮膜(スケール)の発生を防止し、これによってダイエッジ皮膜断片がフィルムに付着することなく、品質が向上した光学フィルムを効率良く、安定に製造することができ、しかも、歩留まりが向上することから、フィルム製品の製造コストが安くつくという効果を奏する。
【0060】
また、本発明の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の光学フィルムの製造方法により製造された膜厚50μm以下を有することを特徴とする光学フィルムであって、本発明の光学フィルムによれば、ダイエッジ皮膜(スケール)の付着がなく、偏光板の保護フィルム等に適した品質の良い光学フィルムを提供することができるという効果を奏する。
Claims (2)
- 金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(以下、支持体という)上に光学フィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによって流延して支持体上に流延膜(ウェブ)を形成し、このとき、ウェブが支持体上に密着して形成されるように、流延上流側に設置した減圧チャンバからによって減圧し、支持体上からウェブを剥離後、ウェブを乾燥して、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法であって、上記減圧チャンバによる1分あたりの減圧変更速度を1(Pa/min)以上、20(Pa/min)以下とすることを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
- 上記請求項1記載の方法により製造されたことを特徴とする膜厚50μm以下を有する光学フィルム。
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WO2007040129A1 (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-12 | Konica Minolta Opto, Inc. | 光学フィルムの製造方法 |
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- 2003-07-14 JP JP2003196607A patent/JP4296867B2/ja not_active Expired - Lifetime
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WO2007040129A1 (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-12 | Konica Minolta Opto, Inc. | 光学フィルムの製造方法 |
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